説明

車両用内装への繊維材の取り付け方法及び該繊維材を含む車両用内装

【課題】車両において、内装本体の裏側に溶着される繊維材の目付のばらつきに拘わらず、内装本体の表側面に溶着の影響が現れるのを防止する。
【解決手段】車両のピラートリムなどの内装本体11の裏面11bに複数のリブ状の凸部13を設ける。凸部13は、一方向に延びる線状をなし、この延び方向と交差する方向に間隔を置いて複数並べられている。インシュレータなどの繊維材20を、凸部13に当て溶着する。内装本体11の表側面11aと溶着機30との距離が凸部13の分だけ大きくなり、内装本体11の表側面11aに溶着エネルギーが達するのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インシュレータ等の繊維材をピラートリム等の車両用内装に取り付ける方法及び該繊維材を取り付けた車両用内装に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、インシュレータは、ピラートリム等の内装本体の裏側(車室側とは反対側)に設けられ、車外から入って来る音を吸収ないしは遮る役割を担う繊維材である。一般に、内装本体の裏面のインシュレータ取り付け部分は平らになっている。この平らな部分にインシュレータを当て、溶着機を用いて溶着している。
【特許文献1】特開2007−008310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
インシュレータ等の車両用繊維材は、リサイクル品も多くなっており、目付けがばらついていることも少なくない。そのため、高目付の繊維材を取り付けるラインにおいて、流れて来た繊維材の溶着されるべき部分がたまたま低目付になっていることがある。そうすると、設定溶着時間が長すぎ、溶着エネルギーが内装本体に過度に伝わり、内装本体の表側(車室側)の化粧面が白化したり溶解したりする等の損傷が起きることがあった。設定溶着時間を短くすると、繊維材が規格通り高目付のとき充分に溶着できなくなる。目付けに応じて溶着時間を調節することはあまりに煩雑である。内装本体を厚くすれば化粧面に影響が及ぶのを回避できるが、重量が増し、材料コストも上昇してしまう。内装本体における繊維材の溶着される箇所だけ部分的に肉厚にすることも考えられるが、そうすると、内装本体の成形後の冷却時の収縮度の違いなどによって、厚くした箇所の化粧面が凹む等の現象が起きてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題点を解決するために、本発明方法は車両における内装本体の裏側に繊維材を取り付ける方法であって、
前記内装本体の裏面に線状又は点状の1又は複数の凸部を形成し、
前記繊維材を前記凸部に当て溶着することを特徴とする。
また、本発明装置は、内装本体と、この内装本体の裏側に取り付けられた繊維材とを含む車両用内装であって、
前記内装本体の裏面に線状又は点状の1又は複数の凸部が形成され、前記繊維材が、前記凸部に当てられ溶着されていることを特徴とする。
これによって、繊維材の被着箇所が低目付であっても、内装本体の表面に溶着の影響が現れるのを回避することができる。
【0005】
前記凸部が、一方向に延びる直線状をなすとともに、この延び方向と交差する方向に間隔を置いて複数並んで設けられていることが好ましい。
これによって、繊維材を内装本体により安定的に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、繊維材の目付のばらつきに拘わらず、内装本体の表面に溶着の影響が現れるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
図1及び図2は、車両のピラートリム10(車両内装)を示したものである。ピラートリム10は、ピラートリム本体11(内装本体)と、インシュレータ20(繊維材)を備えている。ピラートリム本体11は、例えばポリプロピレン等の樹脂で構成され、大略上下に延びる板状になっている。ピラートリム本体11の肉厚は、全体的に場所に依らず一定になっている。
【0008】
図1において仮想線で示すように、ピラートリム本体11の裏側に車外からの音を吸収ないしは遮るインシュレータ20が設けられている。インシュレータ20は、フェルトなどの繊維で構成され、ピラートリム本体11に沿って上下に延びている。一般的なインシュレータの目付けは400g/m程度であるところ、このインシュレータ20は600g/m程度であり、高目付になっている。
【0009】
インシュレータ20のピラートリム本体11への取り付け構造を説明する。
ピラートリム本体11の裏面11bには、インシュレータ接合領域12が設定されている。この接合領域12に複数のリブ13(線状の凸部)が形成されている。リブ13は、ピラートリム本体11の幅方向(左右方向)に直線状に延びるとともに、その延び方向と直交する方向に互いに間隔を置いて並べられている。リブ13の突出高さは例えば2mm程度であり、リブ13の配置間隔は、例えば4mm程度であるが、これに限定されるものではない。
【0010】
図2に示すように、インシュレータ20がピラートリム本体11の裏面11bに被さっている。インシュレータ20の一箇所21が、接合領域12に接合されている。接合領域12の複数のリブ13の全体がインシュレータ20によって覆われている。リブ13の左右端部や複数のリブ13のうちの一部がインシュレータ20から露出するようになっていてもよい。インシュレータ20の下側部分は、図示しないフックを介してピラートリム本体11に係止されている。
【0011】
インシュレータ20は、次のようにしてピラートリム本体11に取り付けられる。
インシュレータ20をピラートリム本体11の裏面に沿わせ、被着されるべき箇所21を接合領域12に被せるとともにリブ13の先端に当てる。
次に、図2において仮想線で示す溶着ホーン30(溶着機)をインシュレータ20の被着箇所21の背部に当てて駆動する。これにより、被着箇所21がピラートリム本体11のリブ13を含む接合領域12に超音波溶着される。
【0012】
上記のピラートリム10によれば、溶着時にリブ13の高さ分だけ溶着ストローク(溶着ホーン30からピラートリム本体11の化粧面11aまでの距離)を大きくすることができる。したがって、インシュレータ20の被着箇所21が規格通りの高目付(例えば600g/m程度)である場合は勿論、低目付である場合であっても、溶着エネルギーがピラートリム本体11の化粧面11aまで達するのを回避することができる。これによって、化粧面11aが白化したり溶解したりするなどの損傷が生じるのを防止することができ、化粧面11aをきれいな状態に維持することができる。
溶着時間は比較的長く設定しておくことができる。したがって、インシュレータ20の被着箇所21が規格通りの高目付である場合、確実に溶着することができる。被着箇所21の目付けに応じて溶着時間を変更する必要がないため、作業が煩雑化することもない。
ピラートリム本体11のリブ13以外の部分の肉厚は薄く、かつ一定にすることができる。したがって、ピラートリム本体11の重量増加を避けることができるとともに材料コストの上昇を抑えることができる。また、ピラートリム本体11の成形後の冷却時に収縮差が生じることがなく、化粧面11aの一部分が凹むのを回避することができる。
【0013】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、当業者に自明な範囲において適宜改変をなすことができる。
例えば、車両内装は、ピラートリムに限定されず、ドアトリムやルーフトリムなどの他の内装であってもよい。
繊維材は、吸音・遮音用のインシュレータに限られず、断熱用やクッション(衝撃吸収)用などの他の用途に用いられる繊維材でもよく、その材質は、合成繊維でもよく天然繊維でもよく無機繊維(ガラス繊維等)でもよく、特に限定はない。
溶着手段は、超音波溶着に限定されず、高周波溶着、振動溶着、レーザ溶着、赤外線溶着、その他の種々の溶着技術を適用できる。
【0014】
リブ13(凸部)は、直線状に限られず、曲線状になっていてもよく、開曲線に限られず、閉曲線状になっていてもよい。縦に延びるリブと横に延びるリブを格子状に組み合わせてもよい。リブ13の数は特に限定がなく、1つでもよく、複数でもよく、多数でもよい。
【0015】
さらに、凸部は、線状のリブ13に限られない。例えば、図3に示すように、点状(スポット状、ボス状)の凸部14であってもよい。この点状の凸部14が内装本体11の裏面11bの接合領域12に分散して配置されていてもよい。図3の点状凸部14は、正面視で円形になっているが、これに限定されるものではなく、四角形その他の多角形になっていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0016】
この発明は、自動車の製造分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態を示し、ピラー(車両内装)の裏面図であり、インシュレータを二点鎖線で示す。
【図2】図1のII−II線に沿う、上記ピラーの縦断面図であり、溶着ホーンを二点鎖線で示す。
【図3】本発明の凸部の変形例を示し、ピラーの裏面図である。
【符号の説明】
【0018】
10 ピラートリム(車両内装)
11 ピラートリム本体(内装本体)
11a 化粧面(表側面)
11b 裏面
12 接合領域
13 リブ(線状の凸部)
14 点状の凸部
20 インシュレータ
21 被着箇所
30 溶着ホーン(溶着機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両における内装本体の裏側に繊維材を取り付ける方法であって、
前記内装本体の裏面に線状又は点状の1又は複数の凸部を形成し、
前記繊維材を前記凸部に当て溶着することを特徴とする車両用内装への繊維材の取り付け方法。
【請求項2】
内装本体と、この内装本体の裏側に取り付けられた繊維材とを含む車両用内装であって、
前記内装本体の裏面に線状又は点状の1又は複数の凸部が形成され、前記繊維材が、前記凸部に当てられ溶着されていることを特徴とする車両用内装。
【請求項3】
前記凸部が、一方向に延びる直線状をなすとともに、この延び方向と交差する方向に間隔を置いて複数並んで設けられていることを特徴とする請求項2に記載の車両用内装。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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