説明

車両用内装品における装着凹部の形成方法

【課題】 車両用内装品の装着凹部に被装着品を取り付けたときに、装着凹部の側面と内装品の外面との交差部を構成する表皮の曲率半径が大きくなるのを防止する。
【解決手段】 フォーム層3に凹部3aを形成する。表皮4の凹部3aと対向する部分には、貫通孔4cを形成する。この貫通孔4cは、その周囲の表皮4が凹部3aから内側に突出するよう、凹部3aの開口部より小さくする。貫通孔4aの内周面には、その一側部と他側部とを連結する連結部4dを形成する。表皮3の少なくとも装着凹部7を成形するため部分を加熱して軟化させる。その後、金型9を凹部3aに表皮4を介して押し込むことにより、装着凹部7を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用サンバイザー等の車両用内装品に鏡等を装着するための装着凹部を形成するための装着凹部の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用サンバイザー1は、図5及び図6に示すように、硬質の樹脂を平板状に成形してなる芯材2と、樹脂を発泡させてなり、芯材2の外部を覆うようにして芯材2に固着されたフォーム層3と、このフォーム層3を覆う表皮4と、フォーム層3の外周部に沿って埋設された鋼線等からなるフレーム5と、このフレーム5に固定され、車両の車内上部に設けられたステー(図示せず)にサンバイザー1を回転可能に連結するための連結金具6とを備えている。サンバイザー1の外面には、装着凹部7が形成されている。この装着凹部7には、例えば鏡を収容した鏡ケース8が挿入固定されている。装着凹部7の図5における下側部には、傾斜凹部7aが形成されており、この傾斜凹部7aに指先を挿入して鏡ケース8の蓋体を上方へ向かって開くようになっている。なお、フォーム層3が硬質である場合には、芯材2が省略されることもある(特許文献1参照)。
【0003】
従来、上記のように構成された車両用サンバイザーの表面に装着凹部7を形成する場合には、図7に示すように、フォーム層3に凹部3aを予め形成しておく。凹部3aは、フォーム層3を貫通して芯材2に達する貫通孔として形成されているが、深さがフォーム層3の厚さより浅く、底部を有する凹部として形成されることもある。一方、表皮4には、その一部をその表面側から背面側(フォーム層側)へ向かって突出するように成形することにより、表皮4の表面に凹部4aが形成されるとともに、表皮4の裏面に凸部4bが形成される。そして、フォーム層3を表皮4によって覆うときに、表皮4の凸部4bをフォーム層3の凹部3aに挿入する。その後、表皮4をフォーム層3に固定することにより、サンバイザー1の表面に装着凹部7が形成される。
【0004】
【特許文献1】特開平7―69055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにして装着凹部7を形成する場合には、フォーム層3の凹部3aの寸法W1と表皮4の凸部4bの寸法W2とを同一にすると、表皮4が柔軟であるため、凸部4bを凹3aに挿入することが比較的困難になる。そこで、W1>W2にしている。ところが、そのような寸法関係にすると、図8に示すように、凹部3aの内周面と凸部4bの外周面との間に隙間が形成される。しかも、装着凹部7に鏡ケース8を挿入するときに、装着凹部7の内周面を構成する表皮4が装着凹部7の底部側(図8において下側)に引っ張られる。このため、表皮4の装着凹部7の内周面を構成する部分と装着凹部7に隣接する部分との交差部が、成形時には図8において想像線で示すように曲率半径の小さいな曲面によって構成されているにも拘わらず、鏡ケース8の装着後には図8において実線で示すように曲率半径の大きな曲面になってしまう。この結果、当該交差部と鏡ケース8との間に比較的大きな隙間Sが形成されてしまい、サンバイザー1の見栄えが低下するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の問題を解決するために、樹脂を発泡成形してなるフォーム層と、このフォーム層を覆う表皮とを備え、上記フォーム層に形成された凹部の少なくとも内周面が上記表皮によって覆われてなる装着凹部が外面に形成された車両用内装品の上記装着凹部を形成する方法において、上記凹部が形成された上記フォーム層を上記表皮で覆い、次いで上記表皮を加熱して軟化させ、その後上記装着凹部に対応した形状寸法を有する金型を上記表皮の上記凹部と対向する箇所に押し当てた状体で上記凹部の底部側に押し込むことにより、上記装着凹部を形成することを特徴としている。
この場合、上記表皮の上記凹部と対向する箇所に、上記凹部の開口部より小さい貫通孔が形成され、上記表皮の上記貫通孔を囲む部分が上記凹部の内周面より内側へ突出させられており、上記凹部の内周面から内側に突出する上記表皮の突出部に上記金型が押し付けられることが望ましい。
上記凹部の内周面から内側へ突出する上記表皮の突出部の突出長さが、上記凹部の深さより長く設定されていることが望ましい。
上記貫通孔の内周面には、その一側部から他側部まで延びる連結部が上記表皮の一部として表皮と一体に形成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、凹部を有するフォームがあたかも一対の金型の雌型として機能し、表皮を凹部の底部側へ押し込む金型が雄型として機能する。しかも、金型の形状は凹部に対応した形状をなしている。したがって、装着凹部の内周面を構成する表皮は、フォーム層の凹部の内周面に隙間なく接触する。また、装着凹部の内周面の開口側端部及びその近傍におけるサンバイザーの外面を構成する表皮は、凹部の内周面の開口側端部及びその近傍におけるフォーム層の外面によって成形されるので、フォーム層の当該外面と凹部の内周面との交差部を所望の小さい曲率半径の曲面にしておくことにより、表皮の装着凹部の内周面の開口側端部とその近傍部分との交差部を曲率半径の小さい曲面とすることができる。したがって、装着凹部に鏡ケース等の被装着物が装着されたとき、被装着物の側面と装着凹部の側面の開口部側端部との間に大きな隙間が形成されるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。この実施の形態は、この発明に係る車両用内装品における装着凹部の形成方法を図5に示すサンバイザー(車両用内装品)1の装着凹部7の形成に適用したものである。そこで、サンバイザー1の構造についてはその説明を省略する。なお、この発明は、サンバイザー1以外の車両用内装品、例えばアームレスト等のスイッチ類が挿入固定される装着凹部の形成にも適用可能である。
【0009】
この発明に係る装着凹部の形成方法によって上記装着凹部7を形成する場合には、図1及び図2に示すように、まず芯材2にフォーム層3が固着され、フォーム層3に表皮4が固着される。フォーム層3には、装着凹部7を構成するための凹部3aが形成される。凹部3aは、フォーム層3を芯材2に固着する前に形成しておいてもよく、フォーム層3を芯材2に固着した後に形成してもよい。凹部3aの形状は、この実施の形態では長方形状とされているが、装着凹部7の形状、すなわち装着凹部7に装着される被装着品の形状に応じて決定される。また、凹部3aは、貫通孔として形成され、凹部3aの底面が芯材2によって構成されているが、凹部3aの深さをフォーム層3の厚さより浅くし、フォーム層3自体によって凹部3aの底面を構成するようにしてもよい。凹部3aの側面は、表皮4側から芯材2側へ向かうにしたがって凹部3aの内側の寸法が小さくなるように傾斜させられているが、傾斜凹部7aに対応する部分を除き、凹部3aの内側の寸法が開口部側と底部側とで一定になるように、垂直面としてもよい。
【0010】
一方、表皮4は、上記従来例のような凸部4a及び凹部4bが形成されない状態でフォーム層3に固着されおり、表皮4の凹部3aと対向する箇所は、平面状をなしている。したがって、表皮4をフォーム層3に容易に固着することができる。表皮4の凹部3aと対向する箇所には、貫通孔4cが予め形成されている。貫通孔4cは、表皮4をフォーム層3に固着する前に予め形成しておいてもよく、表皮4をフォーム層3に固着した後に形成してもよい。貫通孔4cは、図1に示すように、表皮4を貫通孔4cの軸線方向から見たとき、凹部3aとほぼ相似な形状をなしているが、表皮4の貫通孔4cに隣接する各部が凹部3aの内周面から凹部3aの内側へ突出するよう、貫通孔4cの大きさは凹部3aの開口部より小さくなっている。特に、この実施の形態では、表皮4の凹部3aから内側へ突出する突出量が、凹部3aの周方向におけるいずれの箇所においても凹部3aの深さ(フォーム層3の厚さ)より大きくなっている。
【0011】
貫通孔4cの内周面には、表皮4の一部をなす帯状の連結部4dが表皮4と一体に形成されている。連結部4dは、この実施の形態では二つ形成されているが、一つ又は三つ以上形成してもよい。また、連結部4dは、互いに対向する一対の辺部(側部)間に形成されているが、他の一対の辺部(側部)間に形成してもよく、四角形状をなす貫通孔4cの対角線上に形成してもよい。連結部4dの幅は、後述するように、実験に基づいて適宜決定される。表皮4には、貫通孔4cの内周面から外側に向かって延びるスリット4eを形成するのが望ましい。このスリット4eの長さは、装着凹部7に鏡ケース8を装着固定したとき、スリット4eが鏡ケース8によって隠されて外部から見えないようにするために、表皮4の凹部3aからの突出量より短くする。
【0012】
次に、表皮4を加熱して軟化させる。この場合、表皮4の少なくとも装着凹部7が形成されるべき部分を加熱すればよい。表皮4の加熱温度は、表皮4の材質等に応じて成形に好適な温度に設定される。
【0013】
表皮4の加熱後、図3に示すように、金型9を凹部3aと対向させる。そして、金型9を凹部3a側へ移動させ、金型9の挿入方向における先端面(図3及び図4において下端面)を表皮4の凹部3aから内側へ突出した環状の部分及び連結部4dに押し当てる。その後、金型9を同方向へさらに移動させて、凹部3aに表皮4を介して挿入する。ここで、金型9は、挿入方向における先端部(図3及び図4において下端部)が装着凹部7の断面形状(装着凹部7の深さ方向と直交する断面における形状)とほぼ同一の断面形状を有している。したがって、図4に示すように、金型9の先端面が芯材2に表皮4を介して突き当たるまで金型9を凹部3aに挿入すると、あたかも凹部3aを有するフォーム層3が雌型として機能し、金型9が雄型として機能する。したがって、フォーム層3及び金型9によって表皮4の凹部3aから突出した部分が成形され、それによって装着凹部7が形成される。この場合、表皮4の凹部3aからの突出量が凹部3aの深さより大きく、しかも貫通孔4cの内周面に連結部4dが形成されているので、表皮4は、金型9によって凹部3aの底部側へ引っ張られ、凹部3aの内周面及び凹部3a近傍のフォーム層3の外面に隙間なく押し付けられる。なお、金型9を凹部3aに挿入したときに凹部3aに入ることのない後端部は、先端部と滑らかに連続するように先端部と相似形に形成されている。したがって、仮にフォーム層3の厚さが所定の厚さより厚いものであったとしても、装着凹部7を問題なく形成することができる。
【0014】
装着凹部7には、鏡ケース8が挿入固定される。この場合、表皮4に貫通孔4cが形成されているので、鏡ケース8の貫通孔4cを介して芯材2に対向する箇所を芯材2に接着剤等によって直接固着することができる。
【0015】
上記のようにして装着凹部7を形成した場合には、表皮4のうち、装着凹部7の内周面の開口側端部を構成する部分と、サンバイザー1の外面を構成する部分との交差部(以下、表皮4の交差部と称する。)がフォーム層3を一種の金型として成形されるので、フォーム層3の当該交差部に対応する部分を構成する曲面の曲率半径を小さくしておくことにより、表皮4の交差部の曲率半径を小さくすることができる。しかも、表皮4の装着凹部7の内周面を構成する部分がフォーム層3の凹部3aの内周面に接触しているので、鏡ケース8を装着凹部7に挿入することによって装着凹部7の内周面を構成する表皮4が凹部3aの底部側へ引っ張られたとしても、表皮4の交差部の曲率半径が大きくなることがない。よって、装着凹部7の内周面を構成する表皮4と鏡ケース8の内周面との間に大きな隙間が形成されるのを未然に防止することができる。
【0016】
また、表皮4に貫通孔4cを形成するとともに、連結部4dを形成しているので、表皮4の交差部を構成する曲面の曲率半径を小さくすることができる。すなわち、装着凹部7を単に形成するのであれば、貫通孔4cは必ずしも形成する必要がない。表皮4に貫通孔4cが形成されているか否かに拘わらず、表皮4に金型9を押し当てて凹部3a内に押し込むことにより、装着凹部7を形成することができるからである。しかし、貫通孔4cが形成されていない表皮4に金型9を押し当てて凹部3aに押し込むと、表皮4の装着凹部7の内周面となるべき部分が金型9によって凹部3aの底部側へ強く引っ張られる。この結果、表皮4の交差部に強い引っ張り力が作用し、交差部が当該交差部に接触するフォーム層3の交差部に突き当たる。ここで、フォーム層3の強度は、それほど大きくないので、表皮4の交差部に過度に大きな力が作用すると、当該交差部を成形するはずのフォーム層3の交差部が若干押し潰され、当該交差部を構成する曲面の曲率半径が、従来の形成方法による場合ほどではないにしても若干大きくなる。この結果、表皮4の交差部を構成する曲面の曲率半径が大きくなってしまう。
【0017】
一方、表皮4に貫通孔4cを形成した場合には、金型9の先端面を表皮4に押し付けたときに、表皮4が金型9の先端面の周縁部にしか押し当たらないので、金型9を下方へ移動させたときに表皮4があまり強く引っ張られず、表皮4の交差部がフォーム層3の交差部に強く押し付けられない。このため、表皮4の交差部を構成する曲面の曲率半径が大きくなるおそれがある。
【0018】
その点、貫通孔4cの内周面にその一側部と他側部とを連結する連結部4dを形成すると、この連結部4dに金型9の先端面が押し当たり、表皮4の装着凹部7の側面となるべき部分を強く引っ張る。したがって、表皮4の交差部をフォーム層3に強く押し付けられる。これによって、表皮4の交差部を構成する曲面の曲率半径を小さくすることができる。ただし、連結部4dの幅を過度に広くすると、貫通孔4cが形成されない状態で表皮4を金型9で成形する場合と同様の状況を呈する。そこで、連結部4dの幅については、表皮4の交差部を構成する曲面の曲率半径が所望の大きさになるように、実験に基づいて適宜に決定するのがよい。
【0019】
また、スリット4eを形成すると、金型9を凹部3aに表皮4を介して押し込むときに、表皮4の装着凹部7の側面となるべき部分に皺がよるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明に係る装着凹部の形成方法によって装着凹部が形成されるサンバイザーを、フォーム層に表皮を固着した状態で示す平面図である。
【図2】図1のX−X線に層断面図である。
【図3】この発明に係る装着凹部の形成方法を説明するために、金型を凹部に表皮を介して対向させた状態を示す図1のY−Y線に沿う拡大断面図である。
【図4】金型を凹部に表皮を介して押し込んだ状態を示す図3と同様の断面図である。
【図5】この発明に係る装着凹部の形成方法によって装着凹部が形成されるサンバイザーの一例を示す正面図である。
【図6】図5のX−X線に沿う断面図である。
【図7】装着凹部を形成するための従来の方法を示す図3と同様の断面図である。
【図8】図7に示す従来の装着凹部の形成方法によって形成された装着凹部に鏡ケースを装着した状態を示す要部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 サンバイザー(車両用内装品)
3 フォーム層
3a 凹部
4 表皮
4c 貫通孔
4d 連結部
7 装着凹部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を発泡成形してなるフォーム層と、このフォーム層を覆う表皮とを備え、上記フォーム層に形成された凹部の少なくとも内周面が上記表皮によって覆われてなる装着凹部が外面に形成された車両用内装品の上記装着凹部を形成する方法において、
上記凹部が形成された上記フォーム層を上記表皮で覆い、次いで上記表皮を加熱して軟化させ、その後上記装着凹部に対応した形状寸法を有する金型を上記表皮の上記凹部と対向する箇所に押し当てた状体で上記凹部の底部側に押し込むことにより、上記装着凹部を形成することを特徴とする車両用内装品における装着凹部の形成方法。
【請求項2】
上記表皮の上記凹部と対向する箇所に、上記凹部の開口部より小さい貫通孔が形成され、上記表皮の上記貫通孔を囲む部分が上記凹部の内周面より内側へ突出させられており、上記凹部の内周面から内側に突出する上記表皮の突出部に上記金型が押し付けられることを特徴とする請求項1に記載の車両用内装品における装着凹部の形成方法。
【請求項3】
上記凹部の内周面から内側へ突出する上記表皮の突出部の突出長さが、上記凹部の深さより長く設定されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用内装品における装着凹部の形成方法。
【請求項4】
上記貫通孔の内周面には、その一側部から他側部まで延びる連結部が上記表皮の一部として表皮と一体に形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の車両用内装品における装着凹部の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−192922(P2006−192922A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−3496(P2005−3496)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(000100366)しげる工業株式会社 (95)