説明

車両用内装品

【課題】 遮音性及び吸音性に優れたドアトリムを提供する。
【解決手段】ドアトリムの芯材2を車外側の第1層21と、この第1層21の車内側を向く面に固着された第2層22とによって構成する。第1層21は、樹脂により内部を中実なソリッド構造にする。第2層22は、樹脂によって構成し、内部を多孔質構造にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドアトリム、リヤクォータートリム等の車両用内装品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ドアトリム等の車両用内装品は、下記特許文献1に記載されているように、芯材と表皮材とを有している。芯材は、ポリプロピレン等の樹脂からなるものであり、中実なソリッド構造を有している。一方、表皮材は、互いに固着されたフォーム層と表皮とによって構成されており、フォーム層が芯材の車内側を向く内面に固着されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−50862
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドアトリムは、ドアの室内に臨む内面の美感及び触感を向上させるためのものであるが、同時に遮音及び吸音等の騒音防止効果を有するものであることが望ましい。なぜならば、ドアトリムが取り付けられるドアのインナーパネルには、パワーウィンドウユニット等の各種の部品を取り付けるために多数の孔が形成されており、各孔を通って車外の騒音が車内に侵入する。この騒音の侵入をドアトリムによって阻止することができれば、車内の静粛性を向上させることができるからである。ところが、上記構成の従来のドアトリムは、高い騒音防止効果を有していなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記の問題を解決するために、芯材とこの芯材の表面に固着された表皮材とを備えた車両用内装品において、上記芯材が外側の第1層と内側の第2層とを有しており、上記第1層が上記第2層より密度の高い材質によって構成されていることを特徴としている。
この場合、上記第1層が中実なソリッド材によって構成され、上記第2層が多孔質材によって構成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、密度の高い材質からなる第1層は、高い遮音性を有しており、車外の騒音が車内に侵入するのを阻止する。第1層より密度が低い材質からなる第2層は、高い吸音性を有しており、車外の騒音が第1層を伝播して車内に侵入するのを阻止するとともに、車内の音が第1層において反射するのを阻止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図1及び図2を参照して説明する。
図1は、この発明の第1実施の形態を示す断面図である。この実施の形態のドアトリム1は、芯材2と表皮材3とを備えている。
【0008】
図2に示すように、芯材2は、車外側(図2において右側)の第1層21と、車内側の第2層22とを有している。第1層21と第2層22とは、接着等の手段によって互いに固着されている。第1層21は、第2層22に対して車外側に位置した状態でドアのインナーパネル(図示せず)に取り付けられる。
【0009】
第1層21は、車外の騒音がインナーパネルに形成された孔等から車内に侵入するのを防止する遮音体として機能するものである。そのために、第1層21は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂により内部が中実なソリッド構造体として成形されている。第1層21は、遮音性の向上という観点からすると厚い方が望ましいが、厚さを厚くすると第1層21が中実であるのでドアトリム1全体の重さが増大してしまう。そこで、第1層21の厚さは、遮音性と重さとのバランスを考慮して決定するのがよい。
【0010】
一方、第2層22は、吸音体として機能するものであり、車外の騒音が第1層21を伝播して車内に侵入するのを阻止するとともに、車内の騒音がドアトリム1、特にその第1層21で反射して車内に戻るのを阻止する。第2層22は、吸音性の向上のために、少なくとも内部が多孔質構造を有している。第2層22の厚さは、通常、第1層21より厚く設定される。ただし、芯材2の重量を一定にするという条件の下で第2層22の厚さを厚くすると、第1層21の厚さがその分だけ薄くなってしまう。この結果、第1層21の遮音性が低下するとともに、第2層22が多孔質構造でその強度が第1層21より低いので、芯材2全体を第1層21で構成した場合に比して芯材2の強度が低下する。そこで、第2層22の厚さは、第1層21の遮音性、芯材2の強度を考慮して決定される。
【0011】
多孔質構造を有する第2層22は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂を5〜15倍程度に発泡成形することによって製造することが可能である。この実施の形態では、次のようにして製造されている。
【0012】
すなわち、第2層22の製造に際しては、まずポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂からなる板材が製造される。板材は、次に述べる発泡工程において発泡されて(実際には発泡していない。)多孔質構造とされる。したがって、板材の厚さは、必ず第2層22より薄く設定されるが、その正確な厚さは第2層22の厚さと板材の発泡倍率とを考慮して決定される。板材の内部には、弾性的に、かつランダムに折り曲げられた多数のグラスウールが内蔵される。板材を構成する樹脂とグラスウールとの重量比は、発泡倍率に基づいて定められる。例えば、板材の発泡倍率を5〜15倍にする場合には、グラスウールと樹脂の重量比(グラスウールの重量:樹脂の重量)が60:40〜30:70に設定される。
【0013】
上記のように構成された板材は、第2層22を成形するための金型(図示せず)のキャビティ内に装入される。この場合、板材は、予熱して軟化させておくことにより、キャビティ内に容易に装入することができる。その後、板材を所定の温度に加熱して溶融直前の状態まで軟化させる。すると、板材を構成する樹脂によるグラスウールに対する拘束がほとんどなくなる。しかも、板材の厚さが第2層22より薄いから、第2層22の厚さに対応するキャビティの内部寸法も板材の厚さより大きい。したがって、折り曲げられていたグラスウールは、折り曲げられていた箇所がそれ自体の弾性により大きな曲率を有する状態に復元し、多数のグラスウールが互いにバラケタ状態になる。その結果、板材の内部のグラスウール間に多数の空洞が形成されるとともに、樹脂がキャビティ構成する金型の内面に押し付けられる。これにより、第2層22が成形される。このようにして成形された第2層22は、多数のグラスウール間に多数の空洞が形成されているので、樹脂を発泡させた場合と同様な状況を呈し、その内部が多孔質構造になる。
【0014】
上記表皮材3は、図2に示すように、フォーム層31と表皮32とによって構成されている。フォーム層31は、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂を発泡成形してなるものであり、ソフトな触感を出すために適宜の柔軟性を有している。そのため、フォーム層31の発泡倍率は、強度を必要とする芯材2を構成する第2層22の発泡倍率が3〜8倍であったのに対し、フォーム層31の発泡倍率は、15〜30に設定される。フォーム層31は、第2層22に接着等の手段によって固着されている。表皮32は、ドアトリム1の車内に臨む表面の見栄えを向上させるためのものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂からなる薄膜を真空成形することによって製造されている。表皮32は、フォーム層31に接着等の手段によって固着されている。なお、表皮材3は、フォーム層31を省き、表皮32だけで構成されることもある。その場合には、表皮32が第2層22に直接固着される。
【0015】
上記構成のドアトリム1においては、芯材2の第1層21が中実な内部構造を有しているので、車外の騒音がインナーパネルに形成された多数の孔から車内に侵入しようとするときには、その侵入を第1層21が阻止する。ただし、第1層21は中実であるが故に、騒音が第1層21を伝播して車内に侵入するのを阻止することが困難である。しかるに、第1層21を伝播した外部の騒音は、多孔質な内部構造を有する第2層22によってそれ以上車内に侵入することが阻止される。したがって、このドアトリム1によれば、従来のドアトリムに比して車外の騒音が車内の侵入する量を大幅に低減することができる。
【0016】
また、車内の騒音は、仮に第2層22が存在しないと、第1層21によって反射されるため車内の静粛性が悪化する。ところが、このドアトリム1では、車内において発生し、あるいは車外から侵入した騒音は、第1層21に到達する前に第2層22によって吸収される。しかも、第1層21によって反射されて車内に戻るときに第2層22によって再度吸収される。したがって、車内の静粛性を向上させることができる。
【0017】
図3は、この発明の車両用内装品の一部を拡大して示す断面図である。この図に示す車両用内装品においては、芯材2が第1層21及び第2層22に加えて第1、第2の補強層23,24を有している。第1、第2の補強層23,24は、いずれもガラス繊維マット又はカーボンファイバーマットによって構成されている。第1補強層23は、第1層21と第2層22との間に配置され、第1層21及び第2層22に接着されている。第2補強層24は、第2層22とフォーム層31との間に配置されており、第2層22及びフォーム層31に接着されている。
【実施例1】
【0018】
次に、この発明の上記効果を確認するために行った実験例を説明する。この実験例では前者の実施の形態と従来のドアトリムとの比較を行った。この発明に係る芯材2の第1層21をポリプロピレンによって構成し、その厚さを1.5mmとし、その重さを750g/mにした。芯材2の第2層22をポリプロピレン及びグラスウールによって構成した。それらの重量比は、50:50とした。第2層22の厚さを6mmとし、その重さを750g/mにした。一方、比較例たる従来の芯材を同一の樹脂で中実に構成した。その厚さは3mmとし、重さは芯材2と同一の重さにした。つまり、1500g/mにした。そして、芯材2及び従来の芯材による音の透過損失を測定した。その結果、芯材2の透過損失は、音の周波数が250Hz、500Hz、1000Hzである場合にそれぞれ30.3dB、41.9dB、52.8dBであった。これに対し、従来の芯材の透過損失は、同一の周波数に対し、それぞれ18.6dB、31.9dB、46.4dBであった。したがって、この発明に係る芯材2は、騒音の遮音、吸収能力を従来の芯材に比してほぼ1.3〜1.5倍程度に向上させることができた。
【0019】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、中実構造を有する第1層21と多孔質構造を有する第2層22とをそれぞれ1つずつ用いているが、第1層21を複数用い、第2層22の車外側と車内側とにそれぞれ設けてよい。あるいは、第2層22を複数用い、第1層21の車内側と車外側とにそれぞれ設けてもよい。勿論、第1層21と第2層22とを複数ずつ用い、それらを車外側から車内側に向かって交互に配置してもよい。
また、上記の実施の形態においては、第1層21を中実なソリッド材によって構成しているが、第1層21は発泡材によって構成してもよい。ただし、第1層21は、第2層22より発泡倍率を小さくしてその密度を高くし、第2層22より高い遮音性を有するようにすべきことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の第1実施の形態を示す断面図である。
【図2】同実施の形態の一部を拡大して示す断面図である。
【図3】この発明の第2実施の形態の一部を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 ドアトリム
2 芯材
3 表皮材
21 第1層
22 第2層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材とこの芯材の表面に固着された表皮材とを備えた車両用内装品において、
上記芯材が外側の第1層と内側の第2層とを有しており、上記第1層が上記第2層より密度の高い材質によって構成されていることを特徴とする車両用内装品。
【請求項2】
上記第1層が中実なソリッド材によって構成され、上記第2層が多孔質材によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用内装品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−187907(P2006−187907A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−451(P2005−451)
【出願日】平成17年1月5日(2005.1.5)
【出願人】(000100366)しげる工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】