車両用内装部品
【課題】部品表面に繊維織布を模した立体感のある絵柄を描画し、繊維織布の質感を低コストで得ることができる車両用内装部品を提供すること。
【解決手段】車両用内装部品1は、立体的形状に成形された樹脂成形体2と、樹脂成形体2の表面を被覆するように形成された黒色の塗装膜3とを有する。車両用内装部品1において、塗装膜3の表面には、炭素繊維織布を模した絵柄4が描画されている。絵柄4は、縦方向に細長形状の複数の柄パターン5を配向してなる第1ブロック6と、横方向に細長形状の複数の柄パターン7を配向してなる第2ブロック8とを複数個ずつ組み合わせて描画されている。
【解決手段】車両用内装部品1は、立体的形状に成形された樹脂成形体2と、樹脂成形体2の表面を被覆するように形成された黒色の塗装膜3とを有する。車両用内装部品1において、塗装膜3の表面には、炭素繊維織布を模した絵柄4が描画されている。絵柄4は、縦方向に細長形状の複数の柄パターン5を配向してなる第1ブロック6と、横方向に細長形状の複数の柄パターン7を配向してなる第2ブロック8とを複数個ずつ組み合わせて描画されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品表面に繊維織布を模した絵柄が描画された車両用内装部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の内装部品などでは、デザイン性や品質を高めるために樹脂成形体の表面に装飾を加えるようにした加飾部品(例えば、コンソールボックス、インストルメントパネル、アームレストなど)が多く実用化されている。このような加飾部品に装飾を加える加飾方法としては、水圧転写が一般的に用いられている。水圧転写とは、水面上に特殊フィルムを浮かべ、そのフィルムに印刷された所定の絵柄(木目模様や幾何学模様などの絵柄)を水圧によって樹脂成形体の表面に転写する技術である。この技術によれば、三次元曲面への印刷を行うことができる。
【0003】
また、水圧転写以外の手法として、絵柄が印刷された絵柄付きシートを樹脂成形体の表面に一体化する手法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。詳しくは、特許文献1における絵柄付きシートには、炭素繊維織布を模したカーボン調の絵柄が印刷されている。そして、絵柄付きシートを射出成形金型内に配置させた状態で、溶融した樹脂を金型内に射出する。その結果、樹脂成形体を得るのと同時に成形体表面に絵柄付きシートが一体化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−44186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本発明者は、比較的に安価な樹脂成形体の表面に炭素繊維織布を模した絵柄(カーボン調の絵柄)を加え、高価なカーボン素材の質感を再現した製品を検討している。このカーボン調の絵柄を水圧転写によって樹脂成形体の表面に転写する場合、炭素繊維織布に応じた凹凸を形成することができず、立体感のない絵柄となるため、カーボン素材の質感を得ることができない。
【0006】
特許文献1のように絵柄付きシートを樹脂成形体に一体化する場合、絵柄付きシートの絵柄は、印刷にて形成されているため、実際の炭素繊維織布と比較すると、立体感や繊維の光沢、反射の表現が乏しい。また、カーボン調の絵柄は、円弧状の線群にて構成されているため、見る角度によって絵柄の風合いが変わって違和感が生じる場合がある。さらに、印刷のための製版やシート等の材料費が必要となることに加え、金型費用などの設備コストが嵩んでしまう。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品表面に繊維織布を模した立体感のある絵柄を描画し、繊維織布の質感を低コストで得ることができる車両用内装部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、手段1に記載の発明は、立体的形状に成形された有色の樹脂成形体を有し、前記樹脂成形体の表面に繊維織布を模した絵柄が描画された車両用内装部品であって、前記絵柄は、端部領域が放物線状かつ全体として細長形状の複数の柄パターンを配向してなる第1ブロックと、前記第1ブロックにおける柄パターン配向方向とは異なる方向に前記複数の柄パターンを配向してなる第2ブロックとを複数個ずつ規則的に組み合わせてなることを特徴とする車両用内装部品をその要旨とする。
【0009】
手段1に記載の発明によると、立体的形状に成形された樹脂成形体の表面に、複数の柄パターンを配向してなる第1ブロックと第2ブロックとを複数個ずつ規則的に組み合わせることで繊維織布を模した絵柄が描画される。より詳しくは、第1ブロックにおける複数の柄パターンの配向方向と第2ブロックにおける複数の柄パターンの配向方向とが異なり、それら柄パターンの交差によって繊維織布の織目を表現することができる。また、第1ブロック及び第2ブロックにおける柄パターンは、端部領域が放物線状かつ全体として細長形状である。この場合、柄パターンにおいて、端部領域では光が分散的に反射するのに対し、中央部分では光の分散が少なくなる。従って、繊維織布を模した絵柄を目視した場合、各ブロックの中央部分は明るく、端部は暗く見える。また、柄パターンの端部領域が放物線状(曲線状)に描画されるため、反射光は緩やかに変化する。このような視覚変化によって、繊維織布の織目の陰影を表現することができる。さらに、陰影は視線方向に応じて変化するため、繊維のもつ立体感をリアルに表現することができる。また、本発明の車両用内装部品では、樹脂成形体の表面に絵柄が直接描画されているので、その表面に塗装して皮膜を形成する必要がなく、部品コストを低減することができる。
【0010】
手段2に記載の発明は、立体的形状に成形された樹脂成形体と、前記樹脂成形体の表面を被覆するように形成された有色の皮膜とを有し、前記皮膜の表面に繊維織布を模した絵柄が描画された車両用内装部品であって、前記絵柄は、端部領域が放物線状かつ全体として細長形状の複数の柄パターンを配向してなる第1ブロックと、前記第1ブロックにおける柄パターン配向方向とは異なる方向に前記複数の柄パターンを配向してなる第2ブロックとを複数個ずつ規則的に組み合わせてなることを特徴とする車両用内装部品をその要旨とする。
【0011】
手段2に記載の発明によると、立体的形状に成形された樹脂成形体の表面が有色の皮膜で被覆されている。そして、その被覆の表面に、複数の柄パターンを配向してなる第1ブロックと第2ブロックとを複数個ずつ規則的に組み合わせることで繊維織布を模した絵柄が描画される。より詳しくは、第1ブロックにおける複数の柄パターンの配向方向と第2ブロックにおける複数の柄パターンの配向方向とが異なり、それら柄パターンの交差によって繊維織布の織目を表現することができる。また、第1ブロック及び第2ブロックにおける柄パターンは、端部領域が放物線状かつ全体として細長形状である。この場合、柄パターンにおいて、端部領域では光が分散的に反射するのに対し、中央部分では光の分散が少なくなる。従って、繊維織布を模した絵柄を目視した場合、各ブロックの中央部分は明るく、端部は暗く見える。また、柄パターンの端部領域が放物線状(曲線状)に描画されるため、反射光は緩やかに変化する。このような視覚変化によって、繊維織布の織目の陰影を表現することができる。さらに、陰影は視線方向に応じて変化するため、繊維のもつ立体感をリアルに表現することができる。また、本発明の車両用内装部品では、比較的柔らかい樹脂成形体の表面ではなく、樹脂成形体よりも硬い皮膜(例えば、塗装膜)に絵柄を描画することができるため、部品表面の絵柄が傷つき難くなる。
【0012】
手段3に記載の発明は、手段2において、前記樹脂成形体は黒色に着色され、前記皮膜は黒色の塗料により形成された塗装膜であり、前記絵柄は炭素繊維織布を模した絵柄であることをその要旨とする。
【0013】
手段3に記載の発明によれば、黒色の塗装膜に絵柄が描画されているので、車両用内装部品の外観を実際の炭素繊維織布の外観に近づけることができる。また、絵柄が炭素繊維織布であるので、高品質、高性能な印象を車両用内装部品に付加することができる。
【0014】
手段4に記載の発明は、手段1乃至3のいずれかにおいて、前記複数の柄パターンは、レーザ照射によって描画された線幅が0.03mm以上0.1mm以下のレーザ加工部からなることをその要旨とする。
【0015】
手段4に記載の発明によれば、線幅が0.03mm以上0.1mm以下のレーザ加工部であるので、微細な柄パターンを正確かつ迅速に形成することができる。ここで、線幅を0.1mmよりも大きくすると、絵柄の緻密さが乏しくなることに加え、加工時に比較的高いエネルギーが必要となり、素材にダメージを与えてしまうおそれがある。一方、線幅を0.03mm未満とすると、絵柄全体のコントラストが低下してしまう。従って、0.03mm以上0.1mm以下の線幅で柄パターンを形成することにより、繊維織布の実物に近い立体感のある絵柄を確実に描画することができる。
【0016】
手段5に記載の発明は、手段4において、前記複数の柄パターンは長楕円パターンであり、前記レーザ加工部はレーザアブレーション加工によって描画されたレーザ加工溝であり、前記レーザ加工溝の深さは前記線幅の1/10以上1/2以下の大きさであり、前記長楕円パターンの短径は前記線幅の2倍以上10倍以下であり、前記長楕円パターンの長径は前記短径の10倍以上であることをその要旨とする。
【0017】
手段5に記載の発明によれば、複数の柄パターンは、長楕円パターンであり、レーザアブレーション加工によって描画されたレーザ加工溝であるので、繊維織布の織目の陰影を確実に表現することができる。また、レーザ加工溝の深さは線幅の1/10以上1/2以下の大きさであるため、樹脂成形体や皮膜の素材にダメージを与えることなく、比較的低いエネルギーでレーザ加工を行うことができる。この結果、加工痕にデブリ等が蓄積されることなく、十分な加工品質を得ることができる。さらに、長楕円パターンの短径は線幅の2倍以上10倍以下であり、長楕円パターンの長径は短径の10倍以上であるので、繊維織布の織目に応じたサイズの柄パターンを正確に描画することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上詳述したように、手段1〜5に記載の発明によると、部品表面に繊維織布を模した立体感のある絵柄を描画し、質感のある車両用内装部品を低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一実施の形態の車両用内装部品を示す拡大平面図。
【図2】一実施の形態の車両用内装部品を示す拡大断面図。
【図3】絵柄の第1ブロックを示す拡大平面図。
【図4】一実施の形態の車両用内装部品の加飾装置を示す概略構成図。
【図5】(a)〜(c)は、カーボン調の絵柄の加飾方法を示す説明図。
【図6】カーボン調の絵柄の加飾方法を示す説明図。
【図7】カーボン調の絵柄の加飾方法を示す説明図。
【図8】柄パターンを示す斜視図。
【図9】図8におけるA−A線での断面図。
【図10】図8におけるB−B線での断面図。
【図11】柄パターンにおける反射光を示す説明図。
【図12】(a)〜(c)は、別の実施の形態における加飾方法を示す説明図。
【図13】(a),(b)は、別の実施の形態における加飾方法を示す説明図。
【図14】(a),(b)は、別の実施の形態における柄パターンを示す平面図。
【図15】別の実施の形態における絵柄を示す平面図。
【図16】別の実施の形態における絵柄を示す平面図。
【図17】別の実施の形態の車両用内装部品を示す拡大断面図。
【図18】別の実施の形態の車両用内装部品を示す拡大断面図。
【図19】別の実施の形態の車両用内装部品を示す拡大断面図。
【図20】別の実施の形態の車両用内装部品を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0021】
図1は、車両用内装部品1の表面の一部を示す拡大平面図であり、図2は、その車両用内装部品1を示す拡大断面図である。図1及び図2に示されるように、車両用内装部品1は、立体的形状の樹脂成形体2と、その樹脂成形体2の表面を被覆するように形成された塗装膜3(皮膜)とを有し、塗装膜3の表面に炭素繊維織布を模したカーボン調の絵柄4が描かれている。本実施の形態の車両用内装部品1は、ドアのアームレストを構成する部品である。樹脂成形体2は、ABS樹脂を用いて成形された樹脂成形品であり、黒色に着色されている。また、樹脂成形体2の表面を覆う塗装膜3は、高光沢黒色(ピアノブラック)の塗料を用いて形成されている。絵柄4は、レーザ描画(具体的には、レーザアブレーション加工)によって塗装膜3に加飾されている。なお、レーザアブレーション加工とは、レーザを固体に照射し、溶融を経ずに原子、分子、クラスターが直接蒸発して、固体表面が削り取られる現象を利用した非加熱加工である。
【0022】
本実施の形態の絵柄4は、縦方向に細長形状の複数の柄パターン5を配向してなる第1ブロック6と、横方向に細長形状の複数の柄パターン7を配向してなる第2ブロック8とを複数ずつ組み合わせて描画されている。絵柄4において、第1ブロック6の柄パターン配向方向と第2ブロック8の柄パターン配向方向とは直交する関係にある。具体的には、第1ブロック6の柄パターン5は、横方向の直径よりも縦方向の直径が長い縦長の長楕円パターンであり、第2ブロック8の柄パターン7は、縦方向の直径よりも横方向の直径が長い横長の長楕円パターンである。
【0023】
図2及び図3に示されるように、各柄パターン5,7は、レーザ照射によって描画された線幅W1が0.03mm以上0.1mm以下のレーザ加工溝(レーザ加工部)からなる。レーザ加工溝の深さD1は、線幅W1の1/10以上1/2以下の大きさである。また、各柄パターン5,7において、長楕円パターンの短径X1は、線幅W1の2倍以上5倍以下であり、長楕円パターンの長径X2は、短径X1の10倍以上である。具体的には、本実施の形態の絵柄4において、各柄パターン5,7の線幅W1を0.05mm、レーザ加工溝の深さD1を約0.015mm、長楕円パターンの短径X1を0.2mm、長楕円パターンの長径X2を4mmとしている。
【0024】
本実施の形態の絵柄4において、第1ブロック6の縦幅は、長楕円パターンの長径X2と等しく、第1ブロック6の縦幅X2と横幅X3との比が2:1である。また、第2ブロック8の縦幅と横幅との比は1:2である。そして、複数の第1ブロック6は、横方向に1ブロック、縦方向に半ブロックずつずらした位置にそれぞれ連続して配置されている。一方、複数の第2ブロック8は、横方向に半ブロック、縦方向に1ブロックずつずらした位置にそれぞれ連続して配置されている。また、第1ブロック6と第2ブロック8とは、縦方向及び横方向に交互に配置されている。これら第1ブロック6及び第2ブロック8の長楕円パターン5,7によって、朱子織の炭素繊維織布を模した絵柄4が形成される。
【0025】
図4には、車両用内装部品1に絵柄4を加飾するための加飾装置11を示している。本実施の形態の加飾装置11は、車両用内装部品1を支持する支持台12と、車両用内装部品1の部品表面にレーザLを照射するレーザ照射装置13と、レーザ照射装置13を制御するための制御装置14とを備えている。
【0026】
レーザ照射装置13は、例えばYVO4レーザの照射装置であって、波長が1064nmであるレーザLを発生させるレーザ発生部21と、レーザLを偏向させるレーザ偏向部22と、レーザ発生部21及びレーザ偏向部22を制御するレーザ制御部23とを備えている。レーザ偏向部22は、レンズ24と反射ミラー25とを複合させてなる光学系であり、これらレンズ24及び反射ミラー25の位置を変更することにより、レーザLの照射位置や焦点位置を調整するようになっている。レーザ制御部23は、レーザ発生部21及びレーザ偏向部22を制御することで、レーザLの照射強度、レーザLの走査速度などのレーザ照射条件を調整する。
【0027】
制御装置14は、CPU31、メモリ32(記憶部)及び入出力ポート33等からなる周知のコンピュータにより構成されている。制御装置14は、レーザ照射装置13に電気的に接続されており、各種の駆動信号によってレーザ照射装置13を制御する。
【0028】
制御装置14のメモリ32には、絵柄4の柄パターン5,7に応じた柄データやレーザ照射装置13のレーザ照射条件(レーザLの照射時間、レーザLの照射強度、レーザLのスポット径など)を示す照射パラメータが予め記憶されている。制御装置14は、メモリ32に記憶されているデータに基づいてレーザ照射装置13を制御することで、車両用内装部品1に絵柄4を加飾する。
【0029】
次に、車両用内装部品1の加飾方法について図5〜図7を用いて説明する。
【0030】
先ず、レーザ照射装置13によるレーザ照射が行われ、第1ブロック6を構成する複数の長楕円パターン5が順次描画される(第1レーザ加工ステップ)。具体的には、絵柄4の左上に配置される第1ブロック6の左端の長楕円パターン5から描画が開始される。この際、図5(a)に示されるように、長楕円パターン5の円弧と短径との交点部分を描画開始点P1とし、レーザLの照射点が移動されることで長楕円パターン5が描かれる。そして、図5(b)に示されるように、レーザLの軌跡が長楕円パターン5の描画開始点P1に戻ったところでレーザ照射が一旦停止される。つまり、本実施の形態において、長楕円パターン5の描画完了点は描画開始点P1と一致している。
【0031】
その後、図5(b)及び図5(c)に示されるように、レーザLの照射点が右隣の長楕円パターン5の位置に移動された後、長楕円パターン5の円弧と短径との交点部分を描画開始点P1とし、再度レーザ照射が行われることで長楕円パターン5が描かれる。このような手順で1つの第1ブロック6を構成する複数の長楕円パターン5を順次描画する。
【0032】
次いで、1つの第1ブロック6における各長楕円パターン5の描画完了後に、右下に隣接する別の第1ブロック6の描画開始点P1にレーザLの照射点を移動し、同様に複数の長楕円パターン5をレーザ照射によって順次描画するといった動作を繰り返し行う。この結果、図6に示されるように、複数の第1ブロック6における長楕円パターン5を順次描画していく。そして、絵柄4の右下に位置する第1ブロック6の右端の長楕円パターン5を描画した後、第2ブロック8を構成する複数の長楕円パターン7をレーザ照射によって順次描画する(第2レーザ加工ステップ)。
【0033】
ここで、第1レーザ加工ステップから第2レーザ加工ステップへの移行を行う場合、第1ブロック6の描画完了点P1から最も近い位置にある第2ブロック6の描画開始点P1に移動してレーザ照射による描画を開始する。つまり、絵柄4の右下にある第1ブロック6の長楕円パターン5の描画完了点P1からから最短距離にある第2ブロック8の描画開始点P1にレーザLの照射点を移動する。この第2ブロック8においても、長楕円パターン7の円弧と短径との交点部分を描画開始点P1としており、レーザLの照射点が移動されることで長楕円パターン7が描かれる。そして、レーザLの軌跡が長楕円パターン7の描画開始点P1に戻ったところでレーザ照射が一旦停止される。その後、レーザLの照射点が上方に隣接する長楕円パターン7の位置に移動された後、長楕円パターン7の円弧と短径との交点部分を描画開始点P1とし、再度レーザ照射が行われることで長楕円パターン7が描かれる。このような手順で1つの第2ブロック8を構成する複数の長楕円パターン7を順次描画する。
【0034】
次いで、1つの第2ブロック8における各長楕円パターン7の描画完了後に、左上に隣接する別の第2ブロック8の描画開始点P1にレーザLの照射点を移動し、同様に複数の長楕円パターン7をレーザ照射によって順次描画するといった動作を繰り返し行う。この結果、図7に示されるように、複数の第2ブロック8における長楕円パターン7を順次描画する。
【0035】
そして、上述した第1レーザ加工ステップ及び第2レーザ加工ステップを繰り返すことにより、図1に示されるようなカーボン調の絵柄4が車両用内装部品1の表面に描画される。
【0036】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0037】
(1)本実施の形態の車両用内装部品1の表面には、炭素繊維織布を模した絵柄4がレーザ描画されている。この絵柄4は、長楕円の柄パターン5,7を複数配列した各ブロック6,8にて構成されているため、炭素繊維織布の持つ立体感を表現することができる。より詳しくは、長楕円の柄パターン5,7に入射した光は、レーザ加工溝の凹形状に応じて分散される。図9及び図10に示されるように、ブロック6の中央部と比較して、ブロック6の端部では、塗装膜3の表面が柄パターン5の加工溝でより多く分断されている。なお、図9はブロック6の中央部(図8におけるA−A線)での断面図であり、図10はブロック6の端部(図8におけるB−B線)での断面図である。図11に示されるように、ブロック6を正面視した場合、ブロック6の中央部分に入射した光は、塗装膜3の表面で多く鏡面反射されるため、視点に届く反射光の強度が強くなる。一方、ブロック6の端部に入射した光は、多方向に分散(乱反射)されるため、視点に届く反射光の強度が弱くなる。このため、ブロック6において、中央部は明るく、端部は暗く見える。また、柄パターン5が楕円であるので、反射光の強度は、中央部から端部に向けて緩やかに変化する。この変化によって、炭素繊維織布の織目の陰影を表現することができ、視覚的な奥ゆきが出る。さらに、陰影は視線方向に応じて変化するため、炭素繊維のもつ立体感をリアルに表現することができる。このように炭素繊維織布を模した絵柄4を描画することにより、高品質、高性能な印象を車両用内装部品1に付加することができる。
【0038】
(2)本実施の形態では、車両用内装部品1の表面に絵柄4をレーザ描画しているので、従来技術のような絵柄付きシートや射出成形金型等が不要となる。このため、車両用内装部品1の製造コストを低く抑えることができる。
【0039】
(3)本実施の形態では、樹脂成形体2は黒色に着色され、黒色の塗料を用いて形成された塗装膜3に絵柄4が描画されている。この場合、車両用内装部品1の外観を実際の炭素繊維織布の外観に近づけることができる。また、塗装膜3は樹脂成形体2の表面よりも硬いため、その塗装膜3に絵柄4を描画することで、部品表面の絵柄4が傷つき難くなる。
【0040】
(4)本実施の形態において、絵柄4を構成する複数の柄パターン5,7は、レーザ照射によって描画された線幅W1が0.05mmのレーザ加工溝からなり、レーザ加工溝の深さD1は線幅W1の1/10以上1/2以下となっている。このようにすると、塗装膜3にダメージを与えることなく、比較的低いエネルギーでレーザ加工を行うことができる。この結果、加工痕にデブリ等が蓄積されることなく、微細な柄パターン5,7を正確かつ迅速に形成することができる。従って、炭素繊維織布の実物に近い立体感のある絵柄4を描画することができる。
【0041】
(5)本実施の形態の各柄パターン5,7(長楕円パターン)において、短径X1は線幅W1の2倍以上10倍以下であり、長径X2は短径X1の10倍以上である。ここで、長楕円パターン5,7の短径X1が線幅W1の5倍よりも大きくなる場合、絵柄4の緻密さが乏しくなる。また、長楕円パターン5,7の短径X1が線幅W1の2倍未満であると、線同士が重なり合い、乱反射が生じることにより絵柄全体のコントラストが低下してしまう。さらに、長楕円パターン5,7の長径X2が短径X1の10倍未満となると、炭素繊維織布における編み込んだ織目をリアルに表現できなくなる。従って、長楕円パターン5,7の短径X1を線幅W1の2倍以上5倍以下とし、長楕円パターン5,7の長径X2を短径X1の10倍以上とすると、炭素繊維織布の織目に応じたサイズの各パターン5,7を正確に描画することができる。
【0042】
(6)本実施の形態において、第1レーザ加工ステップでは、複数の第1ブロック6において同一方向(縦方向)に配向してなる複数の長楕円パターン7がレーザ照射によって順次描画される。また、第2レーザ加工ステップでは、複数の第2ブロック8において第1ブロック6の長楕円パターン5とは異なる方向(横方向)に配向してなる複数の長楕円パターン7がレーザ照射によって順次描画される。このように、同じ方向を向いた細長形状の複数の長楕円パターン5,7を同一のレーザ加工ステップで一括して描画することにより、炭素繊維織布を模した絵柄4を短時間で確実に形成することができる。
【0043】
(7)本実施の形態において、第1レーザ加工ステップ及び第2レーザ加工ステップでは、複数の長楕円パターン5,7をレーザ照射によって順次描画する際、長楕円パターン5,7の円弧と短径との交点部分を各々の描画開始点P1としている。また、第1レーザ加工ステップから第2レーザ加工ステップへの移行を行う場合、描画完了点P1から最も近い位置にある描画開始点P1に移動してレーザ照射による描画を開始している。このようにすると、各ブロック6,8を構成する複数の長楕円パターン5,7を描画する際に、レーザLの軌跡が短くなる。このため、レーザ加工時間を短縮することができ、車両用内装部品1の製造コストを低減することができる。
【0044】
なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0045】
・上記実施の形態では、長楕円パターン5,7の円弧と短径との交点部分を各々の描画開始点P1としてレーザ描画を行っていたが、この描画方法は適宜変更してもよい。例えば、図12(a)〜(c)に示されるように、長楕円パターン5,7の円弧と長径との交点部分を各々の描画開始点P1としてレーザ描画を行ってもよい。また、上記実施の形態では、複数の第1ブロック6を描画した後に複数の第2ブロック8を描画する手法(図6及び図7参照)を採用していたが、第1ブロック6と第2ブロック8とを交互に描画してもよい。具体的には、図13(a),(b)に示されるように、1つの第1ブロック6における各長楕円パターン5の描画完了後に、隣接する第2ブロック8の描画開始点P1にレーザLの照射点を移動し、複数の長楕円パターン7をレーザ照射によって順次描画する。そして、1つの第2ブロック8における各長楕円パターン7の描画完了後に、隣接する第1ブロック6の描画開始点P1にレーザLの照射点を移動し、複数の長楕円パターン5をレーザ照射によって順次描画する。このようにしても、レーザLの軌跡を短くすることができ、レーザ加工時間を短縮することができる。
【0046】
・上記実施の形態では、第1ブロック6を構成する柄パターン5及び第2ブロック8を構成する柄パターン7は、長楕円パターンであったが、これに限定されるものではない。各柄パターン5,7は、端部領域が放物線状かつ全体として細長形状のパターンであればよく、例えば、長楕円の一部を切り欠いた形状に変更してもよい。具体的には、図14(a)に示すように、半円弧状のパターンを上下に配置させた形状の柄パターン5aや、図14(b)に示すように、略C字形状の柄パターン5bに変更してもよい。
【0047】
・上記実施の形態における絵柄4は、朱子織の炭素繊維織布を模した絵柄あったが、これに限定されるものではない。例えば、図15に示すような綾織の織布を模した絵柄4aや図16に示すような平織の織布を模した絵柄4bに変更してもよい。図15及び図16に示すように、綾織の絵柄4aや平織の絵柄4bでも、第1ブロック6における柄パターン配向方向と、第2ブロック8における柄パターン配向方向とは直交する関係にある。また、綾織の絵柄4aでは、第1ブロック6の縦幅と横幅との比が2:1であり、第2ブロック8の縦幅と横幅との比が1:1である。平織の絵柄4bでは、第1ブロック6の縦幅と横幅との比が1:1であり、第2ブロック8の縦幅と横幅との比が1:1である。このように、綾織の絵柄4aや平織の絵柄4bを車両用内装部品1の表面に描画しても、高品質、高性能な印象をその車両用内装部品1に付加することができる。
【0048】
・上記実施の形態において、部品表面に加飾される絵柄4,4a,4bは、炭素繊維織布を模したカーボン調の絵柄であったが、これ以外の他の繊維織布を模した絵柄であってもよい。また、横方向と縦方向との2方向に配向してなる長楕円パターン5,7のブロック群で絵柄4,4a,4bを描画していたが、これに限定されるものではなく、3方向以上の方向に配向してなる長楕円パターンのブロック群で絵柄を描画してもよい。
【0049】
・上記実施の形態の絵柄4,4a,4bは、黒色の塗装膜3に形成されていたが、繊維織布の種類に応じて他の有色の塗装膜3に形成されるものでもよい。また、塗装によって形成される塗装膜3以外に、めっきによって形成される皮膜や蒸着によって形成される皮膜に絵柄4,4a,4bを形成してもよい。
【0050】
・上記実施の形態では、樹脂成形体2の表面を被覆する塗装膜3に絵柄4,4a,4bを描画するものであったが、これに限定されるものでない。例えば、図17に示されるように、塗装膜3を省略して樹脂成形体2の表面に絵柄4,4a,4bを直接描画してもよい。また、樹脂成形体2の表面において、塗装膜3を保護するクリアコート層を形成し、そのクリアコート層に絵柄4,4a,4bを描画してもよい。さらに、図18に示されるように、絵柄4を描画した塗装膜3の表面に保護層41(クリアコート層)を形成してもよいし、図19に示されるように、絵柄4を描画した樹脂成形体2の表面に保護層41を形成してもよい。
【0051】
・上記実施の形態では、車両用内装部品1の表面にレーザアブレーション加工を施して絵柄4を描画していたが、これに限定されれるものではなく、他の手法(例えばフォトエッチングによる加工や型押しの加工など)によって絵柄4を描画してもよい。また、レーザ照射によって凹状のレーザ加工溝を形成して絵柄4を描画していたが、これに限定されるものではない。例えば、図20に示すように、レーザ照射によって樹脂成形体2の表面を凸状に膨らませたレーザ加工部42を形成し、そのレーザ加工部42によって絵柄4を描画してもよい。なお、このレーザ加工部42は、例えばレーザ照射による発泡現象(樹脂を溶融させる際に泡が発生する現象)を利用して形成する。
【0052】
・上記実施の形態は、車両用内装部品1をドアのアームレストに具体化するものであったが、これ以外に、コンソールボックス、インストルメントパネルなどの他の部品に具体化してもよい。
【0053】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0054】
(1)手段1乃至5のいずれか1項において、前記第1ブロックにおける柄パターン配向方向と、前記第2ブロックにおける柄パターン配向方向とは直交する関係にあり、前記第1ブロックの縦幅と横幅との比が2:1であり、前記第2ブロックの縦幅と横幅との比が1:2であり、前記絵柄が朱子織の織布を模した絵柄であることを特徴とする車両用内装部品。
【0055】
(2)手段1乃至5のいずれか1項において、前記第1ブロックにおける柄パターン配向方向と、前記第2ブロックにおける柄パターン配向方向とは直交する関係にあり、前記第1ブロックの縦幅と横幅との比が2:1であり、前記第2ブロックの縦幅と横幅との比が1:1であり、前記絵柄が綾織の織布を模した絵柄であることを特徴とする車両用内装部品。
【0056】
(3)手段1乃至5のいずれか1項において、前記第1ブロックにおける柄パターン配向方向と、前記第2ブロックにおける柄パターンとン配向方向とは直交する関係にあり、前記第1ブロックの縦幅と横幅との比が1:1であり、前記第2ブロックの縦幅と横幅との比が1:1であり、前記絵柄が平織の織布を模した絵柄であることを特徴とする車両用内装部品。
【符号の説明】
【0057】
1…自動車用内装部品
2…樹脂成形体
3…皮膜としての塗装膜
4,4a,4b…絵柄
5,7…柄パターンとしての長楕円パターン
5a,5b…柄パターン
6…第1ブロック
8…第2ブロック
D1…加工溝の深さ
X1…短径
X2…長径
W1…線幅
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品表面に繊維織布を模した絵柄が描画された車両用内装部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の内装部品などでは、デザイン性や品質を高めるために樹脂成形体の表面に装飾を加えるようにした加飾部品(例えば、コンソールボックス、インストルメントパネル、アームレストなど)が多く実用化されている。このような加飾部品に装飾を加える加飾方法としては、水圧転写が一般的に用いられている。水圧転写とは、水面上に特殊フィルムを浮かべ、そのフィルムに印刷された所定の絵柄(木目模様や幾何学模様などの絵柄)を水圧によって樹脂成形体の表面に転写する技術である。この技術によれば、三次元曲面への印刷を行うことができる。
【0003】
また、水圧転写以外の手法として、絵柄が印刷された絵柄付きシートを樹脂成形体の表面に一体化する手法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。詳しくは、特許文献1における絵柄付きシートには、炭素繊維織布を模したカーボン調の絵柄が印刷されている。そして、絵柄付きシートを射出成形金型内に配置させた状態で、溶融した樹脂を金型内に射出する。その結果、樹脂成形体を得るのと同時に成形体表面に絵柄付きシートが一体化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−44186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本発明者は、比較的に安価な樹脂成形体の表面に炭素繊維織布を模した絵柄(カーボン調の絵柄)を加え、高価なカーボン素材の質感を再現した製品を検討している。このカーボン調の絵柄を水圧転写によって樹脂成形体の表面に転写する場合、炭素繊維織布に応じた凹凸を形成することができず、立体感のない絵柄となるため、カーボン素材の質感を得ることができない。
【0006】
特許文献1のように絵柄付きシートを樹脂成形体に一体化する場合、絵柄付きシートの絵柄は、印刷にて形成されているため、実際の炭素繊維織布と比較すると、立体感や繊維の光沢、反射の表現が乏しい。また、カーボン調の絵柄は、円弧状の線群にて構成されているため、見る角度によって絵柄の風合いが変わって違和感が生じる場合がある。さらに、印刷のための製版やシート等の材料費が必要となることに加え、金型費用などの設備コストが嵩んでしまう。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品表面に繊維織布を模した立体感のある絵柄を描画し、繊維織布の質感を低コストで得ることができる車両用内装部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、手段1に記載の発明は、立体的形状に成形された有色の樹脂成形体を有し、前記樹脂成形体の表面に繊維織布を模した絵柄が描画された車両用内装部品であって、前記絵柄は、端部領域が放物線状かつ全体として細長形状の複数の柄パターンを配向してなる第1ブロックと、前記第1ブロックにおける柄パターン配向方向とは異なる方向に前記複数の柄パターンを配向してなる第2ブロックとを複数個ずつ規則的に組み合わせてなることを特徴とする車両用内装部品をその要旨とする。
【0009】
手段1に記載の発明によると、立体的形状に成形された樹脂成形体の表面に、複数の柄パターンを配向してなる第1ブロックと第2ブロックとを複数個ずつ規則的に組み合わせることで繊維織布を模した絵柄が描画される。より詳しくは、第1ブロックにおける複数の柄パターンの配向方向と第2ブロックにおける複数の柄パターンの配向方向とが異なり、それら柄パターンの交差によって繊維織布の織目を表現することができる。また、第1ブロック及び第2ブロックにおける柄パターンは、端部領域が放物線状かつ全体として細長形状である。この場合、柄パターンにおいて、端部領域では光が分散的に反射するのに対し、中央部分では光の分散が少なくなる。従って、繊維織布を模した絵柄を目視した場合、各ブロックの中央部分は明るく、端部は暗く見える。また、柄パターンの端部領域が放物線状(曲線状)に描画されるため、反射光は緩やかに変化する。このような視覚変化によって、繊維織布の織目の陰影を表現することができる。さらに、陰影は視線方向に応じて変化するため、繊維のもつ立体感をリアルに表現することができる。また、本発明の車両用内装部品では、樹脂成形体の表面に絵柄が直接描画されているので、その表面に塗装して皮膜を形成する必要がなく、部品コストを低減することができる。
【0010】
手段2に記載の発明は、立体的形状に成形された樹脂成形体と、前記樹脂成形体の表面を被覆するように形成された有色の皮膜とを有し、前記皮膜の表面に繊維織布を模した絵柄が描画された車両用内装部品であって、前記絵柄は、端部領域が放物線状かつ全体として細長形状の複数の柄パターンを配向してなる第1ブロックと、前記第1ブロックにおける柄パターン配向方向とは異なる方向に前記複数の柄パターンを配向してなる第2ブロックとを複数個ずつ規則的に組み合わせてなることを特徴とする車両用内装部品をその要旨とする。
【0011】
手段2に記載の発明によると、立体的形状に成形された樹脂成形体の表面が有色の皮膜で被覆されている。そして、その被覆の表面に、複数の柄パターンを配向してなる第1ブロックと第2ブロックとを複数個ずつ規則的に組み合わせることで繊維織布を模した絵柄が描画される。より詳しくは、第1ブロックにおける複数の柄パターンの配向方向と第2ブロックにおける複数の柄パターンの配向方向とが異なり、それら柄パターンの交差によって繊維織布の織目を表現することができる。また、第1ブロック及び第2ブロックにおける柄パターンは、端部領域が放物線状かつ全体として細長形状である。この場合、柄パターンにおいて、端部領域では光が分散的に反射するのに対し、中央部分では光の分散が少なくなる。従って、繊維織布を模した絵柄を目視した場合、各ブロックの中央部分は明るく、端部は暗く見える。また、柄パターンの端部領域が放物線状(曲線状)に描画されるため、反射光は緩やかに変化する。このような視覚変化によって、繊維織布の織目の陰影を表現することができる。さらに、陰影は視線方向に応じて変化するため、繊維のもつ立体感をリアルに表現することができる。また、本発明の車両用内装部品では、比較的柔らかい樹脂成形体の表面ではなく、樹脂成形体よりも硬い皮膜(例えば、塗装膜)に絵柄を描画することができるため、部品表面の絵柄が傷つき難くなる。
【0012】
手段3に記載の発明は、手段2において、前記樹脂成形体は黒色に着色され、前記皮膜は黒色の塗料により形成された塗装膜であり、前記絵柄は炭素繊維織布を模した絵柄であることをその要旨とする。
【0013】
手段3に記載の発明によれば、黒色の塗装膜に絵柄が描画されているので、車両用内装部品の外観を実際の炭素繊維織布の外観に近づけることができる。また、絵柄が炭素繊維織布であるので、高品質、高性能な印象を車両用内装部品に付加することができる。
【0014】
手段4に記載の発明は、手段1乃至3のいずれかにおいて、前記複数の柄パターンは、レーザ照射によって描画された線幅が0.03mm以上0.1mm以下のレーザ加工部からなることをその要旨とする。
【0015】
手段4に記載の発明によれば、線幅が0.03mm以上0.1mm以下のレーザ加工部であるので、微細な柄パターンを正確かつ迅速に形成することができる。ここで、線幅を0.1mmよりも大きくすると、絵柄の緻密さが乏しくなることに加え、加工時に比較的高いエネルギーが必要となり、素材にダメージを与えてしまうおそれがある。一方、線幅を0.03mm未満とすると、絵柄全体のコントラストが低下してしまう。従って、0.03mm以上0.1mm以下の線幅で柄パターンを形成することにより、繊維織布の実物に近い立体感のある絵柄を確実に描画することができる。
【0016】
手段5に記載の発明は、手段4において、前記複数の柄パターンは長楕円パターンであり、前記レーザ加工部はレーザアブレーション加工によって描画されたレーザ加工溝であり、前記レーザ加工溝の深さは前記線幅の1/10以上1/2以下の大きさであり、前記長楕円パターンの短径は前記線幅の2倍以上10倍以下であり、前記長楕円パターンの長径は前記短径の10倍以上であることをその要旨とする。
【0017】
手段5に記載の発明によれば、複数の柄パターンは、長楕円パターンであり、レーザアブレーション加工によって描画されたレーザ加工溝であるので、繊維織布の織目の陰影を確実に表現することができる。また、レーザ加工溝の深さは線幅の1/10以上1/2以下の大きさであるため、樹脂成形体や皮膜の素材にダメージを与えることなく、比較的低いエネルギーでレーザ加工を行うことができる。この結果、加工痕にデブリ等が蓄積されることなく、十分な加工品質を得ることができる。さらに、長楕円パターンの短径は線幅の2倍以上10倍以下であり、長楕円パターンの長径は短径の10倍以上であるので、繊維織布の織目に応じたサイズの柄パターンを正確に描画することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上詳述したように、手段1〜5に記載の発明によると、部品表面に繊維織布を模した立体感のある絵柄を描画し、質感のある車両用内装部品を低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一実施の形態の車両用内装部品を示す拡大平面図。
【図2】一実施の形態の車両用内装部品を示す拡大断面図。
【図3】絵柄の第1ブロックを示す拡大平面図。
【図4】一実施の形態の車両用内装部品の加飾装置を示す概略構成図。
【図5】(a)〜(c)は、カーボン調の絵柄の加飾方法を示す説明図。
【図6】カーボン調の絵柄の加飾方法を示す説明図。
【図7】カーボン調の絵柄の加飾方法を示す説明図。
【図8】柄パターンを示す斜視図。
【図9】図8におけるA−A線での断面図。
【図10】図8におけるB−B線での断面図。
【図11】柄パターンにおける反射光を示す説明図。
【図12】(a)〜(c)は、別の実施の形態における加飾方法を示す説明図。
【図13】(a),(b)は、別の実施の形態における加飾方法を示す説明図。
【図14】(a),(b)は、別の実施の形態における柄パターンを示す平面図。
【図15】別の実施の形態における絵柄を示す平面図。
【図16】別の実施の形態における絵柄を示す平面図。
【図17】別の実施の形態の車両用内装部品を示す拡大断面図。
【図18】別の実施の形態の車両用内装部品を示す拡大断面図。
【図19】別の実施の形態の車両用内装部品を示す拡大断面図。
【図20】別の実施の形態の車両用内装部品を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0021】
図1は、車両用内装部品1の表面の一部を示す拡大平面図であり、図2は、その車両用内装部品1を示す拡大断面図である。図1及び図2に示されるように、車両用内装部品1は、立体的形状の樹脂成形体2と、その樹脂成形体2の表面を被覆するように形成された塗装膜3(皮膜)とを有し、塗装膜3の表面に炭素繊維織布を模したカーボン調の絵柄4が描かれている。本実施の形態の車両用内装部品1は、ドアのアームレストを構成する部品である。樹脂成形体2は、ABS樹脂を用いて成形された樹脂成形品であり、黒色に着色されている。また、樹脂成形体2の表面を覆う塗装膜3は、高光沢黒色(ピアノブラック)の塗料を用いて形成されている。絵柄4は、レーザ描画(具体的には、レーザアブレーション加工)によって塗装膜3に加飾されている。なお、レーザアブレーション加工とは、レーザを固体に照射し、溶融を経ずに原子、分子、クラスターが直接蒸発して、固体表面が削り取られる現象を利用した非加熱加工である。
【0022】
本実施の形態の絵柄4は、縦方向に細長形状の複数の柄パターン5を配向してなる第1ブロック6と、横方向に細長形状の複数の柄パターン7を配向してなる第2ブロック8とを複数ずつ組み合わせて描画されている。絵柄4において、第1ブロック6の柄パターン配向方向と第2ブロック8の柄パターン配向方向とは直交する関係にある。具体的には、第1ブロック6の柄パターン5は、横方向の直径よりも縦方向の直径が長い縦長の長楕円パターンであり、第2ブロック8の柄パターン7は、縦方向の直径よりも横方向の直径が長い横長の長楕円パターンである。
【0023】
図2及び図3に示されるように、各柄パターン5,7は、レーザ照射によって描画された線幅W1が0.03mm以上0.1mm以下のレーザ加工溝(レーザ加工部)からなる。レーザ加工溝の深さD1は、線幅W1の1/10以上1/2以下の大きさである。また、各柄パターン5,7において、長楕円パターンの短径X1は、線幅W1の2倍以上5倍以下であり、長楕円パターンの長径X2は、短径X1の10倍以上である。具体的には、本実施の形態の絵柄4において、各柄パターン5,7の線幅W1を0.05mm、レーザ加工溝の深さD1を約0.015mm、長楕円パターンの短径X1を0.2mm、長楕円パターンの長径X2を4mmとしている。
【0024】
本実施の形態の絵柄4において、第1ブロック6の縦幅は、長楕円パターンの長径X2と等しく、第1ブロック6の縦幅X2と横幅X3との比が2:1である。また、第2ブロック8の縦幅と横幅との比は1:2である。そして、複数の第1ブロック6は、横方向に1ブロック、縦方向に半ブロックずつずらした位置にそれぞれ連続して配置されている。一方、複数の第2ブロック8は、横方向に半ブロック、縦方向に1ブロックずつずらした位置にそれぞれ連続して配置されている。また、第1ブロック6と第2ブロック8とは、縦方向及び横方向に交互に配置されている。これら第1ブロック6及び第2ブロック8の長楕円パターン5,7によって、朱子織の炭素繊維織布を模した絵柄4が形成される。
【0025】
図4には、車両用内装部品1に絵柄4を加飾するための加飾装置11を示している。本実施の形態の加飾装置11は、車両用内装部品1を支持する支持台12と、車両用内装部品1の部品表面にレーザLを照射するレーザ照射装置13と、レーザ照射装置13を制御するための制御装置14とを備えている。
【0026】
レーザ照射装置13は、例えばYVO4レーザの照射装置であって、波長が1064nmであるレーザLを発生させるレーザ発生部21と、レーザLを偏向させるレーザ偏向部22と、レーザ発生部21及びレーザ偏向部22を制御するレーザ制御部23とを備えている。レーザ偏向部22は、レンズ24と反射ミラー25とを複合させてなる光学系であり、これらレンズ24及び反射ミラー25の位置を変更することにより、レーザLの照射位置や焦点位置を調整するようになっている。レーザ制御部23は、レーザ発生部21及びレーザ偏向部22を制御することで、レーザLの照射強度、レーザLの走査速度などのレーザ照射条件を調整する。
【0027】
制御装置14は、CPU31、メモリ32(記憶部)及び入出力ポート33等からなる周知のコンピュータにより構成されている。制御装置14は、レーザ照射装置13に電気的に接続されており、各種の駆動信号によってレーザ照射装置13を制御する。
【0028】
制御装置14のメモリ32には、絵柄4の柄パターン5,7に応じた柄データやレーザ照射装置13のレーザ照射条件(レーザLの照射時間、レーザLの照射強度、レーザLのスポット径など)を示す照射パラメータが予め記憶されている。制御装置14は、メモリ32に記憶されているデータに基づいてレーザ照射装置13を制御することで、車両用内装部品1に絵柄4を加飾する。
【0029】
次に、車両用内装部品1の加飾方法について図5〜図7を用いて説明する。
【0030】
先ず、レーザ照射装置13によるレーザ照射が行われ、第1ブロック6を構成する複数の長楕円パターン5が順次描画される(第1レーザ加工ステップ)。具体的には、絵柄4の左上に配置される第1ブロック6の左端の長楕円パターン5から描画が開始される。この際、図5(a)に示されるように、長楕円パターン5の円弧と短径との交点部分を描画開始点P1とし、レーザLの照射点が移動されることで長楕円パターン5が描かれる。そして、図5(b)に示されるように、レーザLの軌跡が長楕円パターン5の描画開始点P1に戻ったところでレーザ照射が一旦停止される。つまり、本実施の形態において、長楕円パターン5の描画完了点は描画開始点P1と一致している。
【0031】
その後、図5(b)及び図5(c)に示されるように、レーザLの照射点が右隣の長楕円パターン5の位置に移動された後、長楕円パターン5の円弧と短径との交点部分を描画開始点P1とし、再度レーザ照射が行われることで長楕円パターン5が描かれる。このような手順で1つの第1ブロック6を構成する複数の長楕円パターン5を順次描画する。
【0032】
次いで、1つの第1ブロック6における各長楕円パターン5の描画完了後に、右下に隣接する別の第1ブロック6の描画開始点P1にレーザLの照射点を移動し、同様に複数の長楕円パターン5をレーザ照射によって順次描画するといった動作を繰り返し行う。この結果、図6に示されるように、複数の第1ブロック6における長楕円パターン5を順次描画していく。そして、絵柄4の右下に位置する第1ブロック6の右端の長楕円パターン5を描画した後、第2ブロック8を構成する複数の長楕円パターン7をレーザ照射によって順次描画する(第2レーザ加工ステップ)。
【0033】
ここで、第1レーザ加工ステップから第2レーザ加工ステップへの移行を行う場合、第1ブロック6の描画完了点P1から最も近い位置にある第2ブロック6の描画開始点P1に移動してレーザ照射による描画を開始する。つまり、絵柄4の右下にある第1ブロック6の長楕円パターン5の描画完了点P1からから最短距離にある第2ブロック8の描画開始点P1にレーザLの照射点を移動する。この第2ブロック8においても、長楕円パターン7の円弧と短径との交点部分を描画開始点P1としており、レーザLの照射点が移動されることで長楕円パターン7が描かれる。そして、レーザLの軌跡が長楕円パターン7の描画開始点P1に戻ったところでレーザ照射が一旦停止される。その後、レーザLの照射点が上方に隣接する長楕円パターン7の位置に移動された後、長楕円パターン7の円弧と短径との交点部分を描画開始点P1とし、再度レーザ照射が行われることで長楕円パターン7が描かれる。このような手順で1つの第2ブロック8を構成する複数の長楕円パターン7を順次描画する。
【0034】
次いで、1つの第2ブロック8における各長楕円パターン7の描画完了後に、左上に隣接する別の第2ブロック8の描画開始点P1にレーザLの照射点を移動し、同様に複数の長楕円パターン7をレーザ照射によって順次描画するといった動作を繰り返し行う。この結果、図7に示されるように、複数の第2ブロック8における長楕円パターン7を順次描画する。
【0035】
そして、上述した第1レーザ加工ステップ及び第2レーザ加工ステップを繰り返すことにより、図1に示されるようなカーボン調の絵柄4が車両用内装部品1の表面に描画される。
【0036】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0037】
(1)本実施の形態の車両用内装部品1の表面には、炭素繊維織布を模した絵柄4がレーザ描画されている。この絵柄4は、長楕円の柄パターン5,7を複数配列した各ブロック6,8にて構成されているため、炭素繊維織布の持つ立体感を表現することができる。より詳しくは、長楕円の柄パターン5,7に入射した光は、レーザ加工溝の凹形状に応じて分散される。図9及び図10に示されるように、ブロック6の中央部と比較して、ブロック6の端部では、塗装膜3の表面が柄パターン5の加工溝でより多く分断されている。なお、図9はブロック6の中央部(図8におけるA−A線)での断面図であり、図10はブロック6の端部(図8におけるB−B線)での断面図である。図11に示されるように、ブロック6を正面視した場合、ブロック6の中央部分に入射した光は、塗装膜3の表面で多く鏡面反射されるため、視点に届く反射光の強度が強くなる。一方、ブロック6の端部に入射した光は、多方向に分散(乱反射)されるため、視点に届く反射光の強度が弱くなる。このため、ブロック6において、中央部は明るく、端部は暗く見える。また、柄パターン5が楕円であるので、反射光の強度は、中央部から端部に向けて緩やかに変化する。この変化によって、炭素繊維織布の織目の陰影を表現することができ、視覚的な奥ゆきが出る。さらに、陰影は視線方向に応じて変化するため、炭素繊維のもつ立体感をリアルに表現することができる。このように炭素繊維織布を模した絵柄4を描画することにより、高品質、高性能な印象を車両用内装部品1に付加することができる。
【0038】
(2)本実施の形態では、車両用内装部品1の表面に絵柄4をレーザ描画しているので、従来技術のような絵柄付きシートや射出成形金型等が不要となる。このため、車両用内装部品1の製造コストを低く抑えることができる。
【0039】
(3)本実施の形態では、樹脂成形体2は黒色に着色され、黒色の塗料を用いて形成された塗装膜3に絵柄4が描画されている。この場合、車両用内装部品1の外観を実際の炭素繊維織布の外観に近づけることができる。また、塗装膜3は樹脂成形体2の表面よりも硬いため、その塗装膜3に絵柄4を描画することで、部品表面の絵柄4が傷つき難くなる。
【0040】
(4)本実施の形態において、絵柄4を構成する複数の柄パターン5,7は、レーザ照射によって描画された線幅W1が0.05mmのレーザ加工溝からなり、レーザ加工溝の深さD1は線幅W1の1/10以上1/2以下となっている。このようにすると、塗装膜3にダメージを与えることなく、比較的低いエネルギーでレーザ加工を行うことができる。この結果、加工痕にデブリ等が蓄積されることなく、微細な柄パターン5,7を正確かつ迅速に形成することができる。従って、炭素繊維織布の実物に近い立体感のある絵柄4を描画することができる。
【0041】
(5)本実施の形態の各柄パターン5,7(長楕円パターン)において、短径X1は線幅W1の2倍以上10倍以下であり、長径X2は短径X1の10倍以上である。ここで、長楕円パターン5,7の短径X1が線幅W1の5倍よりも大きくなる場合、絵柄4の緻密さが乏しくなる。また、長楕円パターン5,7の短径X1が線幅W1の2倍未満であると、線同士が重なり合い、乱反射が生じることにより絵柄全体のコントラストが低下してしまう。さらに、長楕円パターン5,7の長径X2が短径X1の10倍未満となると、炭素繊維織布における編み込んだ織目をリアルに表現できなくなる。従って、長楕円パターン5,7の短径X1を線幅W1の2倍以上5倍以下とし、長楕円パターン5,7の長径X2を短径X1の10倍以上とすると、炭素繊維織布の織目に応じたサイズの各パターン5,7を正確に描画することができる。
【0042】
(6)本実施の形態において、第1レーザ加工ステップでは、複数の第1ブロック6において同一方向(縦方向)に配向してなる複数の長楕円パターン7がレーザ照射によって順次描画される。また、第2レーザ加工ステップでは、複数の第2ブロック8において第1ブロック6の長楕円パターン5とは異なる方向(横方向)に配向してなる複数の長楕円パターン7がレーザ照射によって順次描画される。このように、同じ方向を向いた細長形状の複数の長楕円パターン5,7を同一のレーザ加工ステップで一括して描画することにより、炭素繊維織布を模した絵柄4を短時間で確実に形成することができる。
【0043】
(7)本実施の形態において、第1レーザ加工ステップ及び第2レーザ加工ステップでは、複数の長楕円パターン5,7をレーザ照射によって順次描画する際、長楕円パターン5,7の円弧と短径との交点部分を各々の描画開始点P1としている。また、第1レーザ加工ステップから第2レーザ加工ステップへの移行を行う場合、描画完了点P1から最も近い位置にある描画開始点P1に移動してレーザ照射による描画を開始している。このようにすると、各ブロック6,8を構成する複数の長楕円パターン5,7を描画する際に、レーザLの軌跡が短くなる。このため、レーザ加工時間を短縮することができ、車両用内装部品1の製造コストを低減することができる。
【0044】
なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0045】
・上記実施の形態では、長楕円パターン5,7の円弧と短径との交点部分を各々の描画開始点P1としてレーザ描画を行っていたが、この描画方法は適宜変更してもよい。例えば、図12(a)〜(c)に示されるように、長楕円パターン5,7の円弧と長径との交点部分を各々の描画開始点P1としてレーザ描画を行ってもよい。また、上記実施の形態では、複数の第1ブロック6を描画した後に複数の第2ブロック8を描画する手法(図6及び図7参照)を採用していたが、第1ブロック6と第2ブロック8とを交互に描画してもよい。具体的には、図13(a),(b)に示されるように、1つの第1ブロック6における各長楕円パターン5の描画完了後に、隣接する第2ブロック8の描画開始点P1にレーザLの照射点を移動し、複数の長楕円パターン7をレーザ照射によって順次描画する。そして、1つの第2ブロック8における各長楕円パターン7の描画完了後に、隣接する第1ブロック6の描画開始点P1にレーザLの照射点を移動し、複数の長楕円パターン5をレーザ照射によって順次描画する。このようにしても、レーザLの軌跡を短くすることができ、レーザ加工時間を短縮することができる。
【0046】
・上記実施の形態では、第1ブロック6を構成する柄パターン5及び第2ブロック8を構成する柄パターン7は、長楕円パターンであったが、これに限定されるものではない。各柄パターン5,7は、端部領域が放物線状かつ全体として細長形状のパターンであればよく、例えば、長楕円の一部を切り欠いた形状に変更してもよい。具体的には、図14(a)に示すように、半円弧状のパターンを上下に配置させた形状の柄パターン5aや、図14(b)に示すように、略C字形状の柄パターン5bに変更してもよい。
【0047】
・上記実施の形態における絵柄4は、朱子織の炭素繊維織布を模した絵柄あったが、これに限定されるものではない。例えば、図15に示すような綾織の織布を模した絵柄4aや図16に示すような平織の織布を模した絵柄4bに変更してもよい。図15及び図16に示すように、綾織の絵柄4aや平織の絵柄4bでも、第1ブロック6における柄パターン配向方向と、第2ブロック8における柄パターン配向方向とは直交する関係にある。また、綾織の絵柄4aでは、第1ブロック6の縦幅と横幅との比が2:1であり、第2ブロック8の縦幅と横幅との比が1:1である。平織の絵柄4bでは、第1ブロック6の縦幅と横幅との比が1:1であり、第2ブロック8の縦幅と横幅との比が1:1である。このように、綾織の絵柄4aや平織の絵柄4bを車両用内装部品1の表面に描画しても、高品質、高性能な印象をその車両用内装部品1に付加することができる。
【0048】
・上記実施の形態において、部品表面に加飾される絵柄4,4a,4bは、炭素繊維織布を模したカーボン調の絵柄であったが、これ以外の他の繊維織布を模した絵柄であってもよい。また、横方向と縦方向との2方向に配向してなる長楕円パターン5,7のブロック群で絵柄4,4a,4bを描画していたが、これに限定されるものではなく、3方向以上の方向に配向してなる長楕円パターンのブロック群で絵柄を描画してもよい。
【0049】
・上記実施の形態の絵柄4,4a,4bは、黒色の塗装膜3に形成されていたが、繊維織布の種類に応じて他の有色の塗装膜3に形成されるものでもよい。また、塗装によって形成される塗装膜3以外に、めっきによって形成される皮膜や蒸着によって形成される皮膜に絵柄4,4a,4bを形成してもよい。
【0050】
・上記実施の形態では、樹脂成形体2の表面を被覆する塗装膜3に絵柄4,4a,4bを描画するものであったが、これに限定されるものでない。例えば、図17に示されるように、塗装膜3を省略して樹脂成形体2の表面に絵柄4,4a,4bを直接描画してもよい。また、樹脂成形体2の表面において、塗装膜3を保護するクリアコート層を形成し、そのクリアコート層に絵柄4,4a,4bを描画してもよい。さらに、図18に示されるように、絵柄4を描画した塗装膜3の表面に保護層41(クリアコート層)を形成してもよいし、図19に示されるように、絵柄4を描画した樹脂成形体2の表面に保護層41を形成してもよい。
【0051】
・上記実施の形態では、車両用内装部品1の表面にレーザアブレーション加工を施して絵柄4を描画していたが、これに限定されれるものではなく、他の手法(例えばフォトエッチングによる加工や型押しの加工など)によって絵柄4を描画してもよい。また、レーザ照射によって凹状のレーザ加工溝を形成して絵柄4を描画していたが、これに限定されるものではない。例えば、図20に示すように、レーザ照射によって樹脂成形体2の表面を凸状に膨らませたレーザ加工部42を形成し、そのレーザ加工部42によって絵柄4を描画してもよい。なお、このレーザ加工部42は、例えばレーザ照射による発泡現象(樹脂を溶融させる際に泡が発生する現象)を利用して形成する。
【0052】
・上記実施の形態は、車両用内装部品1をドアのアームレストに具体化するものであったが、これ以外に、コンソールボックス、インストルメントパネルなどの他の部品に具体化してもよい。
【0053】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0054】
(1)手段1乃至5のいずれか1項において、前記第1ブロックにおける柄パターン配向方向と、前記第2ブロックにおける柄パターン配向方向とは直交する関係にあり、前記第1ブロックの縦幅と横幅との比が2:1であり、前記第2ブロックの縦幅と横幅との比が1:2であり、前記絵柄が朱子織の織布を模した絵柄であることを特徴とする車両用内装部品。
【0055】
(2)手段1乃至5のいずれか1項において、前記第1ブロックにおける柄パターン配向方向と、前記第2ブロックにおける柄パターン配向方向とは直交する関係にあり、前記第1ブロックの縦幅と横幅との比が2:1であり、前記第2ブロックの縦幅と横幅との比が1:1であり、前記絵柄が綾織の織布を模した絵柄であることを特徴とする車両用内装部品。
【0056】
(3)手段1乃至5のいずれか1項において、前記第1ブロックにおける柄パターン配向方向と、前記第2ブロックにおける柄パターンとン配向方向とは直交する関係にあり、前記第1ブロックの縦幅と横幅との比が1:1であり、前記第2ブロックの縦幅と横幅との比が1:1であり、前記絵柄が平織の織布を模した絵柄であることを特徴とする車両用内装部品。
【符号の説明】
【0057】
1…自動車用内装部品
2…樹脂成形体
3…皮膜としての塗装膜
4,4a,4b…絵柄
5,7…柄パターンとしての長楕円パターン
5a,5b…柄パターン
6…第1ブロック
8…第2ブロック
D1…加工溝の深さ
X1…短径
X2…長径
W1…線幅
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体的形状に成形された有色の樹脂成形体を有し、前記樹脂成形体の表面に繊維織布を模した絵柄が描画された車両用内装部品であって、
前記絵柄は、端部領域が放物線状かつ全体として細長形状の複数の柄パターンを配向してなる第1ブロックと、前記第1ブロックにおける柄パターン配向方向とは異なる方向に前記複数の柄パターンを配向してなる第2ブロックとを複数個ずつ規則的に組み合わせてなる
ことを特徴とする車両用内装部品。
【請求項2】
立体的形状に成形された樹脂成形体と、前記樹脂成形体の表面を被覆するように形成された有色の皮膜とを有し、前記皮膜の表面に繊維織布を模した絵柄が描画された車両用内装部品であって、
前記絵柄は、端部領域が放物線状かつ全体として細長形状の複数の柄パターンを配向してなる第1ブロックと、前記第1ブロックにおける柄パターン配向方向とは異なる方向に前記複数の柄パターンを配向してなる第2ブロックとを複数個ずつ規則的に組み合わせてなる
ことを特徴とする車両用内装部品。
【請求項3】
前記樹脂成形体は黒色に着色され、前記皮膜は黒色の塗料により形成された塗装膜であり、前記絵柄は炭素繊維織布を模した絵柄であることを特徴とする請求項2に記載の車両用内装部品。
【請求項4】
前記複数の柄パターンは、レーザ照射によって描画された線幅が0.03mm以上0.1mm以下のレーザ加工部からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両用内装部品。
【請求項5】
前記複数の柄パターンは長楕円パターンであり、前記レーザ加工部はレーザアブレーション加工によって描画されたレーザ加工溝であり、前記レーザ加工溝の深さは前記線幅の1/10以上1/2以下の大きさであり、前記長楕円パターンの短径は前記線幅の2倍以上10倍以下であり、前記長楕円パターンの長径は前記短径の10倍以上であることを特徴とする請求項4に記載の車両用内装部品。
【請求項1】
立体的形状に成形された有色の樹脂成形体を有し、前記樹脂成形体の表面に繊維織布を模した絵柄が描画された車両用内装部品であって、
前記絵柄は、端部領域が放物線状かつ全体として細長形状の複数の柄パターンを配向してなる第1ブロックと、前記第1ブロックにおける柄パターン配向方向とは異なる方向に前記複数の柄パターンを配向してなる第2ブロックとを複数個ずつ規則的に組み合わせてなる
ことを特徴とする車両用内装部品。
【請求項2】
立体的形状に成形された樹脂成形体と、前記樹脂成形体の表面を被覆するように形成された有色の皮膜とを有し、前記皮膜の表面に繊維織布を模した絵柄が描画された車両用内装部品であって、
前記絵柄は、端部領域が放物線状かつ全体として細長形状の複数の柄パターンを配向してなる第1ブロックと、前記第1ブロックにおける柄パターン配向方向とは異なる方向に前記複数の柄パターンを配向してなる第2ブロックとを複数個ずつ規則的に組み合わせてなる
ことを特徴とする車両用内装部品。
【請求項3】
前記樹脂成形体は黒色に着色され、前記皮膜は黒色の塗料により形成された塗装膜であり、前記絵柄は炭素繊維織布を模した絵柄であることを特徴とする請求項2に記載の車両用内装部品。
【請求項4】
前記複数の柄パターンは、レーザ照射によって描画された線幅が0.03mm以上0.1mm以下のレーザ加工部からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両用内装部品。
【請求項5】
前記複数の柄パターンは長楕円パターンであり、前記レーザ加工部はレーザアブレーション加工によって描画されたレーザ加工溝であり、前記レーザ加工溝の深さは前記線幅の1/10以上1/2以下の大きさであり、前記長楕円パターンの短径は前記線幅の2倍以上10倍以下であり、前記長楕円パターンの長径は前記短径の10倍以上であることを特徴とする請求項4に記載の車両用内装部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−176744(P2012−176744A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−13553(P2012−13553)
【出願日】平成24年1月25日(2012.1.25)
【出願人】(000110343)トリニティ工業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年1月25日(2012.1.25)
【出願人】(000110343)トリニティ工業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】
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