説明

車両用冷凍装置

【課題】ハイブリッド車両に適した車両用の冷凍装置を提供する。
【解決手段】ハイブリッド型の車両は、エンジン11とモータ12とを有する駆動装置1を備える。冷凍サイクル装置20は、エンジン11によって直接的に駆動され、高い効率を実現する圧縮機21を備える。冷凍サイクル装置20は、HVバッテリ13、または外部電源41を電源として駆動される電動型の圧縮機22を備える。圧縮機22は、エンジン11が停止しているときにも、冷凍サイクル装置20を運転する。HVバッテリ13を使用するときの設定温度T2は、エンジン11または外部電源41を使用するときの設定温度T1より高い(T2>T1)。また、HVバッテリ13の充電状態が閾値を下回ると冷凍サイクル装置20は停止する。これにより、駆動装置1に影響を与えることなく、エンジン11の停止時にも冷凍サイクル装置20を運転でき、庫内温度を維持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車両用冷凍装置に関し、複数の動力源によって冷凍運転を提供できる多動力型の車両用冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2は、エンジンによって駆動される発電機と、商用電源と、冷凍装置に専用のバッテリとのいずれかを選択して冷凍サイクル装置の圧縮機を駆動する冷凍装置を開示している。この技術によると、エンジンの燃料消費を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−283622号公報
【特許文献2】特開2002−81823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の構成では、エンジンによって発電機を駆動し、発電された電力によって電動機を駆動し、この電動機によって圧縮機を駆動している。このため、圧縮機を駆動するための損失が大きいという問題点があった。この損失は、エネルギ効率を低下させ、燃料消費を多くしていた。
【0005】
また、従来技術の構成では、冷凍装置に専用のバッテリを搭載するから、冷凍装置に専用の充電システムが必要となるという問題点があった。さらに、冷凍装置に専用のバッテリは、車両への搭載が困難な場合があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、走行用の動力源として内燃機関と電動機とを備えるハイブリッド車両に適した車両用冷凍装置を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、ハイブリッド型の駆動装置に影響を与えることなく、エンジンの停止時にも冷凍サイクル装置を運転でき、温度を維持できる車両用冷凍装置を提供することである。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、少ない損失で圧縮機を駆動することができ、しかも車両への搭載が容易な車両用冷凍装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0010】
請求項1に記載の発明は、車両の走行用のエンジン(11)、および車両の走行用のモータ(12)に給電するHVバッテリから給電される冷凍装置用のモータ(23)によって運転することができる冷凍サイクル装置(20)と、エンジンが運転されているときにエンジンによって冷凍サイクル装置を運転するエンジンモードと、エンジンが停止されているときにHVバッテリから給電される冷凍装置用のモータにより冷凍サイクル装置を運転するHVバッテリモードとを提供する冷凍制御装置(33)とを備えることを特徴とする。
【0011】
この構成では、車両は、走行用のエンジンと、走行用のモータとを備える。このような車両は、いわゆるハイブリッド(HV)車両と呼ばれる。車両は走行用のモータに給電するHVバッテリを備える。冷凍サイクル装置は、上記エンジン、およびHVバッテリから給電される冷凍装置用のモータによって運転することができる。さらに、冷凍装置は、冷凍制御装置を備える。この冷凍制御装置は、エンジンが運転されているときにはエンジンによって冷凍サイクル装置を運転する。また、冷凍制御装置は、エンジンが停止しているときは、冷凍装置用のモータにより冷凍サイクル装置を運転する。しかも、このとき、冷凍装置用のモータは、HVバッテリから給電される。このため、エンジンが停止しているときでも冷凍サイクル装置が運転される。この結果、ハイブリッド車両は、エンジンを停止することができる。例えば、ハイブリッド車両は、モータのみによる走行、およびアイドルストップ制御を実行することができる。しかも、エンジンが停止されても冷凍サイクル装置の運転を継続できるため、制御対象の温度を適切な温度に維持することができる。また、冷凍サイクル装置は、HVバッテリから給電される冷凍装置用のモータによって運転されるから、HVバッテリに充電された電力を利用することができる。たとえば、車両の走行時に回生された電力を有効に利用することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、冷凍制御装置は、エンジンが停止されているか運転されているかを示す信号を、エンジンの運転および停止を制御するHV制御装置(15)から入力し、当該信号に応答してエンジンモードとHVバッテリモードとを切換えることを特徴とする。この構成では、ハイブリッド車両には、エンジンの運転および停止を制御するHV制御装置が搭載されている。冷凍制御装置は、HV制御装置からエンジンが停止されているか運転されているかを示す信号を入力する。冷凍制御装置は、この入力した信号に応答して、エンジンモードとHVバッテリモードとを切換える。よって、冷凍制御装置は、HV制御装置によるエンジンの制御に連動して、冷凍サイクル装置の運転モードを切換えることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、HV制御装置は、車両が一時停止しているときにエンジンを一時的に停止させるアイドルストップ制御を実行することを特徴とする。この構成では、HV制御装置がアイドルストップ制御を実行することができる。アイドルストップ制御のためにエンジンが停止される場合においても、冷凍サイクル装置は、HVバッテリから給電される冷凍装置用のモータによって運転される。よって、アイドルストップ制御による省燃費を実現しながら、制御対象の温度制御を継続することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、冷凍制御装置は、エンジンモードのとき、制御対象の温度を第1の設定温度(T1)に維持する第1の温度制御手段(179)と、HVバッテリモードのとき、制御対象の温度を第1の設定温度より高い第2の設定温度(T2)に維持する第2の温度制御手段(183)とを備えることを特徴とする。この構成では、エンジンモードにおいては制御対象の温度が第1の設定温度に維持され、HVバッテリモードにおいては制御対象の温度が第2の設定温度に維持される。しかも、第2の設定温度は、第1の設定温度より高く設定されている。このため、HVバッテリモードにおいて冷凍サイクル装置を運転するために必要なエネルギは、エンジンモードにおいて冷凍サイクル装置を運転するために必要なエネルギより小さくなる。この結果、HVバッテリに蓄積された電力の消費量が抑制される。これにより、ハイブリッド車両の駆動装置に与える影響が抑制される。
【0015】
請求項5に記載の発明は、さらに、車両の外部に設けられた電源装置に接続および分離が可能な外部電源(41)と、電源装置と外部電源とが接続されるとき外部電源から冷凍装置用のモータへ給電し、電源装置と外部電源とが分離されるときHVバッテリから冷凍装置用のモータへ給電する切換装置(50、51)を備え、冷凍制御装置は、外部電源から給電される冷凍装置用のモータにより冷凍サイクル装置を運転するスタンバイモードを提供することを特徴とする。この構成では、エンジンモードとHVバッテリモードとに加えて、さらにスタンバイモードが提供される。スタンバイモードにおいては、エンジンが停止されているときに外部電源から給電される冷凍装置用のモータにより冷凍サイクル装置を運転する。外部電源は、車両の外部に設けられた電源装置に接続および分離が可能である。電源装置と外部電源とが接続されるとき外部電源から冷凍装置用のモータへ給電し、電源装置と外部電源とが接続されないときHVバッテリから冷凍装置用のモータへ給電する切換装置が設けられる。これにより、エンジンが停止しているときに、外部電源によって冷凍サイクル装置を運転することができる。よって、HVバッテリに蓄積された電力の消費量を抑制することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、冷凍制御装置は、さらに、スタンバイモードのとき、制御対象の温度を第1の設定温度(T1)に維持する第3の温度制御手段(175)を備えることを特徴とする。この構成では、スタンバイモードにおいては制御対象の温度が第1の設定温度に維持される。
【0017】
請求項7に記載の発明は、冷凍制御装置は、エンジンモードにおいて蒸発器のための除霜運転を実行する第1除霜制御手段(178、176)と、HVバッテリモードにおいて制限された除霜運転を実行する第2除霜制御手段(181、182、184−188)とを備えることを特徴とする。この構成では、エンジンモードにおいては、蒸発器に付着した霜を除去するための除霜運転が実行される。一方で、HVバッテリモードにおいては、制限された除霜運転が実行される。制限された除霜運転のために消費されるエネルギは、エンジンモードにおける通常の除霜運転のために消費されるエネルギより小さい。このため、HVバッテリモードにおける除霜のための電力消費が抑制される。
【0018】
請求項8に記載の発明は、冷凍制御装置は、スタンバイモードにあるときに蒸発器のための除霜運転を実行する第1除霜制御手段(174、176)と、HVバッテリモードにあるときに制限された除霜運転を実行する第2除霜制御手段(181、182、184−188)とを備えることを特徴とする。この構成では、スタンバイモードにおいては、蒸発器に付着した霜を除去するための除霜運転が実行される。一方で、HVバッテリモードにおいては、制限された除霜運転が実行される。制限された除霜運転のために消費されるエネルギは、スタンバイモードにおける通常の除霜運転のために消費されるエネルギより小さい。このため、HVバッテリモードにおける除霜のための電力消費が抑制される。
【0019】
請求項9に記載の発明は、第1除霜制御手段は、所定の除霜条件が成立すると除霜運転を開始するように構成され、第2除霜制御手段は、除霜運転の開始を禁止するように構成されていることを特徴とする。この構成では、エンジンモードまたはスタンバイモードにおいては除霜運転が開始される。一方で、HVバッテリモードにおいては除霜運転の開始が禁止される。この結果、HVバッテリモードにおいては、制限された除霜運転が提供される。
【0020】
請求項10に記載の発明は、第2除霜制御手段は、第1除霜制御手段により開始された除霜運転を継続することを特徴とする。この構成では、HVバッテリモードにおいては、先のモードにおいて開始された除霜運転が継続される。この結果、HVバッテリモードにおいては、制限された除霜運転が提供される。
【0021】
請求項11に記載の発明は、第2除霜制御手段は、HVバッテリの充電状態(SOC)が所定の閾値(St)を下回ると除霜運転を中断する中断手段(185)を備えることを特徴とする。この構成では、HVバッテリモードにおいては、HVバッテリの充電状態が所定の閾値を下回ると除霜運転が中断される。この結果、HVバッテリの過剰な電力消費が抑制される。
【0022】
請求項12に記載の発明は、第2除霜制御手段は、エンジンモードに移行すると除霜運転を再開する再開手段(188、176)を備えることを特徴とする。この構成では、HVバッテリモードが終了すると、除霜運転が再開される。このため、蒸発器に付着した霜の除去を完了することを期待できる。
【0023】
請求項13に記載の発明は、冷凍制御装置は、HVバッテリの充電状態(SOC)が所定の閾値(St)を下回るとHVバッテリから給電される冷凍装置用のモータによる冷凍サイクル装置の運転を禁止する禁止手段(182、184)を備えることを特徴とする。この構成では、HVバッテリモードにおいては、HVバッテリの充電状態が所定の閾値を下回ると冷凍サイクル装置の運転が禁止される。この結果、HVバッテリの過剰な電力消費が抑制される。
【0024】
請求項14に記載の発明は、冷凍サイクル装置(20)は、エンジンによって駆動されるエンジン駆動型の圧縮機(21)と、冷凍装置用のモータ(23)によって駆動される電動型の圧縮機(22)とを備えることを特徴とする。この構成では、冷凍サイクル装置はエンジンによって運転することができる。しかも、冷凍サイクル装置は、HVバッテリから給電される冷凍装置用のモータによっても運転することができる。
【0025】
請求項15に記載の発明は、冷凍サイクル装置(20)は、エンジンおよび冷凍装置用のモータによって駆動される2ウェイ型の圧縮機(222)を備えることを特徴とする。この構成では、冷凍サイクル装置はエンジンによって運転することができる。しかも、冷凍サイクル装置は、HVバッテリから給電される冷凍装置用のモータによっても運転することができる。
【0026】
なお、特許請求の範囲および上記手段の項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を適用した第1実施形態に係る車両用冷凍装置を含む車載システムを示すブロック図である。
【図2】第1実施形態の冷凍サイクル装置を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態の車両用冷凍装置の作動を示すフローチャートである。
【図4】第1実施形態の車両用冷凍装置の温度制御を示すグラフである。
【図5】第1実施形態の車両用冷凍装置の除霜制御を示すグラフである。
【図6】第1実施形態の車両用冷凍装置の除霜制御を示すグラフである。
【図7】第1実施形態の車両用冷凍装置の除霜制御を示すグラフである。
【図8】本発明を適用した第2実施形態に係る冷凍サイクル装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0029】
(第1実施形態)
図1は、本発明を適用した第1実施形態に係る車両用の冷凍装置2を含む車載システムを示すブロック図である。車載システムは、車両の駆動装置1と、車両用の冷凍装置2とを供える。この車両は、いわゆるハイブリッド車両である。また、この車両は、冷蔵または冷凍が可能な荷室を備える貨物車両である。
【0030】
駆動装置1は、車両の走行用の動力源として、走行用のエンジン(ENG)11および走行用のモータ(MG)12の両方を備える。車両は、エンジン11および/またはモータ12によって駆動輪を駆動することができるハイブリッド車両である。駆動装置1は、ハイブリッド駆動装置とも呼ばれる。エンジン11は、内燃機関である。モータ12は、三相回転電機である。モータ12は、電動機または発電機として選択的に機能することができるモータジェネレータである。
【0031】
駆動装置1は、HVバッテリ(HV−BATT)13、インバータ(INV)14、およびHV制御装置(HV−ECU)15を備える。HVバッテリ13は、本来はハイブリッド車のモータ12用に搭載された高電圧バッテリである。HVバッテリ13は、数百ボルトの高電圧を供給する。インバータ14は、HVバッテリ13から供給される直流電力を三相電力に変換し、モータ12に供給する。また、インバータ14は、モータ12が回生運転されるときに、モータ12から出力される交流電力を直流電力に変換し、HVバッテリ13に充電する。HVバッテリ13は、商用電源などの車外の電源によって充電することもできる。HV制御装置15は、インバータ14を制御することにより車両を適切に走行させるようにモータ12の出力を制御する。さらに、HV制御装置15は、エンジン11の始動、運転、および停止を制御する。HV制御装置15は、エンジン11が停止しているときにモータ12だけによる走行を提供する。また、HV制御装置15は、車両が一時停止しているときにエンジン11を一時的に停止させるアイドルストップ制御を実行する。
【0032】
車両用の冷凍装置2は、車両の荷物室内の空気の温度を制御対象とする冷凍装置である。冷凍装置2は、冷凍サイクル装置(RCY)20を備える。冷凍サイクル装置20は、第1の圧縮機(EGCP)21と第2の圧縮機(ELCP)22とを備える。これら圧縮機21、22は、いずれか一方によって冷凍サイクル装置20の冷媒循環経路に冷媒を循環させるように、冷媒循環経路に配置されている。圧縮機21は、車両の走行用のエンジン11によって駆動されるエンジン駆動型の圧縮機21である。圧縮機22は、電力によって駆動される電動型の圧縮機22である。圧縮機22は、冷凍装置用のモータ(MT)23によって駆動される。冷凍装置用のモータ23を回転させるための電力は、HVバッテリ13、または後述する外部電源41から供給される。圧縮機21と圧縮機22とは、エンジン11およびモータ12によって駆動され、冷凍サイクル装置20内に冷媒を循環させる冷媒圧縮手段を提供する。したがって、冷凍サイクル装置20は、エンジン11およびモータ23によって冷媒を循環させる複合動力型の冷凍サイクル装置である。
【0033】
図2は、第1実施形態の冷凍サイクル装置20を示すブロック図である。冷凍サイクル装置20は、冷媒の循環経路24を構成している。循環経路24には、圧縮機21、22、放熱器25、減圧器26、および蒸発器27が、その順に配列されている。2つの圧縮機21、22は、循環経路24において並列に設けられている。圧縮機21は、ベルトとプーリとを含む動力伝達機構を介してエンジン11によって駆動される。圧縮機22は、モータ23によって駆動される。圧縮機21、22は、低圧冷媒を吸引し、圧縮し、高圧冷媒を吐出する。圧縮機21、22から吐出された高圧冷媒は、放熱器25に供給される。放熱器25は、冷媒を冷却する。凝縮性の冷媒が用いられる場合、放熱器25は凝縮器とも呼ばれる。放熱器25を出た冷媒は、減圧器26によって減圧され、膨張する。減圧器26を出た低圧冷媒は、蒸発器27に供給される。低圧冷媒は、蒸発器27において蒸発し、被冷却媒体を冷却する。この実施形態では、被冷却媒体は、車両の荷物室内の空気である。蒸発器27から出た低圧冷媒は、再び圧縮機21、22に吸引される。
【0034】
冷凍サイクル装置20は、除霜装置を備える。除霜装置は、バイパス経路28と、制御弁29とによって構成されている。バイパス経路28は、圧縮機21、22から吐出された高圧冷媒を、蒸発器27に直接に導入する。制御弁29は、バイパス経路28を断続する。したがって、制御弁29が開くと、バイパス経路28を通して高圧冷媒が直接に蒸発器27に導入される。高圧冷媒は、高温でもあるので、蒸発器27は加熱され、蒸発器27に付着した霜が除去される。
【0035】
図1に戻って、冷凍装置2は、制御機器を備える。制御機器は、インバータ(INV)31、ドライバ回路(INDR)32、冷凍制御装置(RCCN)33、電気部品(RCAC)34、およびコンバータ(CONV)35を備える。インバータ31は、圧縮機22のモータ23に電力を供給する。インバータ31は、HVバッテリ13から供給される電力、または後述する外部電源41から供給される電力を三相電力に変換し、モータ23に供給する。ドライバ回路32は、インバータ31を駆動する。
【0036】
冷凍制御装置33は、HV制御装置15と通信可能に構成されている。冷凍制御装置33は、HV制御装置15から、駆動装置1の運転状態に協調して冷凍装置2を運転するために必要な信号を受信し、入力する。具体的には、冷凍制御装置33は、HV制御装置15から、駆動装置1の運転状態を示す信号を入力する。例えば、冷凍制御装置33は、HV制御装置15からHVバッテリ13の充電状態を示す信号を入力する。充電状態は、SOC(State Of Charge)とも呼ばれる。冷凍制御装置33は、HV制御装置15からエンジン11が運転されているか停止されているかを示す信号を入力する。また、冷凍制御装置33は、冷凍装置2の運転状態に協調して駆動装置1を運転するために必要な信号をHV制御装置15へ送信する。HV制御装置15は、アイドルストップ制御によってエンジン11が停止されているときにも、エンジン11の停止を示す信号を出力する。この信号は、冷凍制御装置33に入力される。冷凍制御装置33は、アイドルストップ中にも圧縮機22によって冷凍サイクル装置20を運転する。
【0037】
冷凍制御装置33は、冷凍サイクル装置20が適切な能力を発揮するように、圧縮機21を制御する。例えば、冷凍制御装置33は、車両の荷室の温度、すなわち庫内温度を設定温度の近傍に維持するように、圧縮機21の可変容量装置を制御することによって、圧縮機21の吐出量を調節する。また、冷凍制御装置33は、庫内温度を設定温度の近傍に維持するように、動力伝達機構に設けられた電磁クラッチを制御することによって、圧縮機21の吐出量を調節してもよい。
【0038】
冷凍制御装置33は、冷凍サイクル装置2が適切な能力を発揮するように、ドライバ回路32およびインバータ31を通してモータ23と圧縮機22とを制御する。例えば、冷凍制御装置33は、庫内温度を設定温度の近傍に維持するように、ドライバ回路32およびインバータ31を制御することによって、圧縮機22の吐出量を調節する。冷凍制御装置33は、圧縮機22が運転されるときに、その電源に応じた制御を提供する。例えば、容量が限られたHVバッテリ13を電源とするときには、HVバッテリ13のSOCに応じて圧縮機22を制御する。より具体的には、HVバッテリ13のSOCが所定の閾値を下回っているときには、HVバッテリ13による圧縮機22の駆動を禁止する。
【0039】
さらに、冷凍制御装置33は、蒸発器27への着霜を抑制するために、除霜制御を実行する。冷凍制御装置33は、除霜制御の開始条件が成立すると除霜制御を開始する。冷凍制御装置33は、除霜制御の終了条件が成立すると除霜制御を終了する。この実施形態では、冷凍制御装置33は、除霜制御の間、制御弁29を開く。ただし、HVバッテリ13を電源として圧縮機22を運転しており、かつ、HVバッテリ13のSOCが所定の閾値を下回っているときには、HVバッテリ13による圧縮機22の駆動を禁止することによって除霜制御を禁止する。また、HVバッテリ13を電源として圧縮機22を運転しているときに除霜制御の開始条件が成立した場合には、除霜制御を禁止する。HVバッテリ13を電源として圧縮機22を運転する前から除霜制御が継続している場合には、HVバッテリ13を電源として圧縮機22を運転していても、除霜制御を継続する。ただし、HVバッテリ13を電源として圧縮機22を運転する前から除霜制御が継続している場合に、HVバッテリ13のSOCが所定の閾値を下回ると、除霜制御を中断する。この中断の場合、圧縮機21がエンジン11によって再び運転されるか、または、圧縮機22が外部電源41によって運転されると、除霜制御が再開される。
【0040】
HV制御装置15と冷凍制御装置33とは、車両のハイブリッドシステムを提供する駆動装置1と冷凍装置2との協調制御を提供する。冷凍装置2は、アイドルストップ時や配送先での停車または駐車時のエンジン11停止時に、HVバッテリ13を電力源とした電動冷凍運転を可能としている。この結果、走行時、停車時などエンジン11の運転状況の影響を受けることなく、庫内温度を維持することができる。また、電力源であるHVバッテリ13には、車両の減速時に回生発電によって回収される回生エネルギが蓄電されるため、車両のエネルギを有効に利用することができる。また、エンジン11が停止中には、燃料消費をゼロにできる。このため、冷凍運転のためのアイドリング運転を減らすことができ、燃料消費を抑制することができる。また、エンジン11が運転されている走行時、またはエンジン11が運転されている一時停止時には、圧縮機21を使用する。このため、エンジン11が停止しているアイドルストップ制御中や、エンジン11が停止している駐車中にのみ圧縮機22が使用される。この結果、HVバッテリ13から冷凍装置2への電力供給を抑制することができる。また、HVバッテリ13を電力源とした電動冷凍運転においては、消費電力が大きい除霜運転を極力回避するから、電動冷凍運転時の消費電力を抑えることができる。また、HVバッテリ13を電力源とした電動冷凍運転時には、庫内設定温度を可能な限り高く設定し、消費電力を抑制する。例えば、HVバッテリ13により冷凍サイクル装置20を駆動するときの庫内設定温度は、エンジン11により冷凍サイクル装置20を駆動するときの庫内設定温度より高く設定される。しかし、庫内設定温度は、車両が運搬する荷物のために求められる必要最低温度を越えることはない。この構成によると、省燃費と、庫内温度の維持とを両立することができる。
【0041】
電気部品34は、制御弁29、および送風機などを含む電気部品である。コンバータ35は、後述する車載バッテリ45から供給される中間電圧をインバータ31およびドライバ回路32のための低電圧に変換する。例えば、コンバータ35は、24Vの入力電圧を12Vに変換して出力する。
【0042】
冷凍装置2は、3つの電力源13、41、45を備える。外部電源(EX−PW)41は、車両の外部に設けられた電源装置に接続および分離が可能な受電設備である。外部電源41は、車両の利用者が操作可能なプラグを含むことができる。このプラグが住宅または事業所に設けられた定置型のソケットに差し込まれると、外部電源41は高電圧を供給する。外部電源41は、スタンバイ電源とも呼ばれる。外部電源41が接続されるべき外部の電源装置は、電力供給事業者などが提供する電力網から供給される商用電源、または住宅もしくは事業所に設置された太陽電池、燃料電池などの小規模発電施設である。
【0043】
車両に搭載された第1の電力源は、HVバッテリ13である。車両に搭載された第2の電力源は、車載バッテリ(VH−BATT)45である。車載バッテリ45は、車両に搭載された多くの電気機器に電力を供給する。車載バッテリ45は、いわゆる低電圧バッテリである。車載バッテリ45の電圧は、HVバッテリ13の電圧より明らかに低い。この実施形態では、24Vの直流電力を供給する。
【0044】
冷凍装置2は、インバータ(INV)42を備える。インバータ42は、外部電源41から供給される交流電力を直流電力に変換して車載システムに供給する。インバータ42は、整流回路(RCF)43と、電圧調整回路(VRG)44とを備える。整流回路43は、交流電力を整流し、直流電力を出力する。電圧調整回路44は、整流回路43によって整流された電圧を車載システムの電気機器の電源電圧に変換する。電圧調整回路44は、24Vの直流電力を出力する。
【0045】
さらに、冷凍装置2は、電源切換え回路としてのリレー回路50を備える。リレー回路50は、複数の単極双投型のリレースイッチ51、52、53、54と、これらリレースイッチのリレーコイル55とを備える。リレーコイル55は、電圧調整回路44から直接的に電力供給を受けている。よって、外部電源41から電力が供給されると、リレーコイル55が励磁され、リレースイッチ51、52、53、54を図示の状態から反転させる。リレー回路50は、インバータ31へ供給する電力、すなわちモータ23に供給する電力を、HVバッテリ13と外部電源41とのいずれかに選択的に切換える。リレー回路50は、外部電源41が供給されているときに外部電源41の電力をインバータ31を経由してモータ23に供給する。リレー回路50は、外部電源41が供給されていないときにHVバッテリ13の電力をインバータ31を経由してモータ23に供給する。よって、リレー回路50は、外部の電源装置と外部電源41とが接続されるとき外部電源41から冷凍装置用のモータ23へ給電し、外部の電源装置と外部電源41とが分離されるときHVバッテリ13から冷凍装置用のモータ23へ給電する切換装置を提供する。さらに、リレー回路50は、低電圧で動作する機器の電源を、外部電源41と車載バッテリ45とのいずれかに選択的に切換える。リレー回路50は、外部電源41が供給されているときに、冷凍制御装置33、コンバータ35、および電気部品34に、電圧調整回路44によって調整された外部電源41からの電力を供給する。リレー回路50は、外部電源41が供給されていないときに、冷凍制御装置33、コンバータ35、および電気部品34に、車載バッテリ45からの電力を供給する。
【0046】
HV制御装置15および冷凍制御装置33は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを格納している。記憶媒体は、メモリによって提供されうる。プログラムは、制御装置によって実行されることによって、制御装置をこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される制御方法を実行するように制御装置を機能させる。制御装置が提供する手段は、所定の機能を達成する機能的ブロック、またはモジュールとも呼ぶことができる。
【0047】
図3は、第1実施形態の車両用の冷凍装置2の作動を示すフローチャートである。図中には、冷凍制御装置33によって実行される処理170が図示されている。処理170は、冷凍サイクル装置20の動力源を、外部電源41と、エンジン11と、HVバッテリ13とのいずれかに切換える動力切換手段を提供する。動力切換手段は、ステップ171−172によって提供される。処理170は、庫内温度を設定温度の近傍に調節するように圧縮機21または圧縮機22を制御する温度制御手段を提供する。温度制御手段は、ステップ175、179、および183によって提供される。処理170は、蒸発器27の霜を除去するための除霜制御手段を提供する。除霜制御手段は、残るステップによって提供される。
【0048】
ステップ171では、外部電源41が供給されているか否かを判定する。外部電源41が供給されている場合、ステップ173へ進む。外部電源41が供給されていない場合、ステップ172へ進む。ステップ172では、エンジン11がON状態、すなわち運転されているか否かを判定する。エンジン11がON状態である場合、ステップ177へ進む。エンジン11がON状態ではない場合、ステップ180へ進む。
【0049】
ステップ173−176は、外部電源41を動力源として冷凍サイクル装置20を駆動するスタンバイモード(STBM)を示す。ステップ177−179、およびステップ176は、エンジン11を動力源として冷凍サイクル装置20を駆動するエンジンモード(ENGM)を示す。ステップ180−188は、HVバッテリ13を動力源として冷凍サイクル装置20を駆動するHVバッテリモード(HVBM)を示す。これらの複数の駆動モードは、ステップ171およびステップ172によって切換えられる。したがって、冷凍制御装置33は、エンジン11が運転されているときにエンジン11によって冷凍サイクル装置20を運転するエンジンモードと、エンジン11が停止されているときにHVバッテリ13から給電される冷凍装置用のモータ23により冷凍サイクル装置20を運転するHVバッテリモードとの少なくとも2つのモードを提供する。さらに、冷凍制御装置33は、外部電源41から給電される冷凍装置用のモータ23により冷凍サイクル装置を運転するスタンバイモードを提供する。ステップ172は、エンジンが停止されているか運転されているかを示す信号をHV制御装置15から入力し、当該信号に応答してエンジンモードとHVバッテリモードとを切換える切換手段を提供する。
【0050】
ステップ173では、動力源として外部電源41を選択する。また、ステップ173では、電動型の圧縮機22を使用することを選択する。さらに、ステップ173では、庫内温度の設定温度TcをT1に設定する。ステップ174では、除霜条件が成立しているか否かを判定する。ステップ174では、冷凍サイクル装置2の継続運転時間を積算し、継続運転時間が所定の閾値時間Dtimeを越えると除霜条件の成立を判定する。また、ステップ174では、除霜条件が所定時間継続して成立すると、除霜条件の成立判定を解除し、再び継続運転時間の積算を開始する。除霜条件が成立していない場合、ステップ175へ進む。除霜条件が成立している場合、ステップ176へ進む。
【0051】
ステップ175では、電動型の圧縮機22をON/OFF制御することにより庫内温度を設定温度T1の近傍に制御する。ステップ175では、例えば、設定温度T1を上限温度として、これより所定温度低い下限温度を設定する。ステップ175では、庫内温度が上限温度に到達すると圧縮機22をON状態、すなわち運転状態とし、庫内温度が下限温度に到達すると圧縮機22をOFF状態、すなわち停止状態とする。これにより、庫内温度が設定温度T1の近傍に制御される。ステップ175は、スタンバイモードのとき、制御対象の温度を第1の設定温度T1に維持する第3の温度制御手段を提供する。
【0052】
ステップ176では、除霜制御(DF)を実行する。除霜制御においては、圧縮機22を運転するとともに、制御弁29を開く。これにより、冷凍サイクル装置20が外部電源41によって駆動されるときには、所定時間Dtimeごとに、所定時間にわたる除霜制御が実行される。ステップ174およびステップ176は、スタンバイモードにおいて蒸発器のための除霜運転を実行する第1除霜制御手段を提供する。第1除霜制御手段は、所定の除霜条件が成立すると除霜運転を開始するように構成されている。
【0053】
ステップ177では、動力源としてエンジン11を選択する。また、ステップ177では、エンジン駆動型の圧縮機21を使用することを選択する。さらに、ステップ177では、庫内温度の設定温度TcをT1に設定する。ステップ178では、除霜条件が成立しているか否かを判定する。ステップ178の処理は、ステップ174と同じである。除霜条件が成立していない場合、ステップ179へ進む。除霜条件が成立している場合、ステップ176へ進む。
【0054】
ステップ179では、エンジン駆動型の圧縮機21をON/OFF制御することにより庫内温度を設定温度T1の近傍に制御する。ステップ179では、例えば、設定温度T1を上限温度とし、それより所定温度低い下限温度を設定する。ステップ179では、庫内温度が上限温度に到達すると圧縮機21をON状態、すなわち運転状態とし、庫内温度が下限温度に到達すると圧縮機21をOFF状態、すなわち停止状態とする。これにより、庫内温度が設定温度T1の近傍に制御される。ステップ179は、エンジンモードのとき、制御対象の温度を第1の設定温度T1に維持する第1の温度制御手段を提供する。
【0055】
ステップ176の処理は、上述した。これにより、冷凍サイクル装置20がエンジン11によって駆動されるときにも、所定時間Dtimeごとに、所定時間にわたる除霜制御が実行される。ステップ178およびステップ176は、エンジンモードにおいて蒸発器のための除霜運転を実行する第1除霜制御手段を提供する。
【0056】
ステップ180では、動力源としてHVバッテリ13を選択する。また、ステップ180では、電動型の圧縮機22を使用することを選択する。さらに、ステップ180では、庫内温度の設定温度TcをT2に設定する。ここで、設定温度T2は、ステップ173またはステップ177において設定される設定温度T1より高い。設定温度T1は、荷室内に搭載された物品に必要な温度、すなわち庫内温度として許容される必要温度以下に設定されている。例えば、必要温度が−15°Cである場合、設定温度T1は−20°Cとすることができる。設定温度T2も、必要温度以下に設定されている。例えば、必要温度が−15°Cである場合、設定温度T2は−15°Cとすることができる。すなわち、設定温度T2は、庫内温度として許容される温度を実現するために必要最小限の温度とされている。このような、T1<T2とする設定は、HVバッテリ13を利用するときの消費電力を抑制するために貢献する。ステップ181では、除霜条件が成立しているか否かを判定する。
【0057】
ステップ181では、ステップ176において開始された除霜制御DFがHVバッテリモードにおいても依然として継続しているか否かを判定する。よって、HVバッテリモードにおいては、ステップ174またはステップ178のような除霜条件は判定されない。すなわち、HVバッテリモードにおいては、除霜制御は開始されない。しかし、ステップ176において開始された除霜制御DFを継続するためにステップ181が設けられている。除霜制御DFが継続していない場合、ステップ182へ進む。除霜制御DFが継続している場合、ステップ185へ進む。
【0058】
ステップ182では、HVバッテリ13の充電状態SOCが所定の閾値Stを下回っているか否かを判定する。HVバッテリ13は、本来は駆動装置1のために車両に搭載されている。よって、駆動装置1への給電に影響が出る事態を回避することが望ましい。そこで、ステップ182は、冷凍サイクル装置20によるHVバッテリ13の電力消費を制限するために設けられる。SOC<Stではない場合、ステップ183へ進む。SOC<Stの場合、ステップ184へ進む。
【0059】
ステップ183では、電動型の圧縮機22をON/OFF制御することにより庫内温度を設定温度T2に制御する。ステップ183では、例えば、設定温度T2を上限温度として、それより所定温度低い下限温度を設定する。ステップ179では、庫内温度が上限温度に到達すると圧縮機22をON状態、すなわち運転状態とし、庫内温度が下限温度に到達すると圧縮機23をOFF状態、すなわち停止状態とする。これにより、庫内温度が設定温度T2の近傍に制御される。ステップ183は、HVバッテリモードのとき、制御対象の温度を第1の設定温度T1より高い第2の設定温度T2に維持する第2の温度制御手段を提供する。
【0060】
ステップ184では、電動型の圧縮機22をOFF状態とする。これにより、HVバッテリ13のSOCが閾値Stを下回る場合に、冷凍サイクル装置20によるHVバッテリ13の使用が禁止される。
【0061】
ステップ185の処理は、ステップ182と同じである。SOC<Stではない場合、ステップ186へ進む。SOC<Stの場合、ステップ187へ進む。ステップ186の処理は、ステップ176と同じである。これにより、HVバッテリ13により冷凍サイクル装置20を駆動しているときでも、その前のモードから継続している除霜制御が継続して提供される。
【0062】
ステップ187の処理は、ステップ184と同じである。ステップ187を経由する場合は、除霜制御DFが継続しており、かつ、HVバッテリ13のSOCが閾値Stを下回っている場合である。ステップ188では、エンジン11が運転されるまで、または外部電源41が供給されるまで待機する。やがて、エンジン11が始動されるか、または外部電源41が供給されると、ステップ176へジャンプする。これにより、ステップ187において中断された除霜制御が再開される。つまり、ステップ188により、冷凍サイクル装置20の動力源が、HVバッテリ13から、エンジン11または外部電源41に切換えられるまで、冷凍サイクル装置20の停止状態が継続される。その後、動力源の切換の後に、除霜制御DFが再開される。この結果、一旦は開始された除霜制御がHVバッテリ13のSOCに起因して所定の短い期間にわたり停止されることがあっても、その期間の前後において1回分の除霜制御を完了することができる。
【0063】
ステップ181、182、および184−188は、HVバッテリモードにおいて制限された除霜運転を実行する第2除霜制御手段を提供する。第2除霜制御手段は、除霜運転の開始を禁止するように構成されている。また、第2除霜制御手段は、第1除霜制御手段により開始された除霜運転を継続するように構成されている。ステップ185は、HVバッテリ13の充電状態SOCが所定の閾値Stを下回ると除霜運転を中断する中断手段を提供する。ステップ188、およびステップ188の後に到達するステップ176は、HVバッテリモードにおいて除霜運転が中断された後に、冷凍装置2の運転モードがエンジンモードに移行すると除霜運転を再開する再開手段を提供する。ステップ182および184は、HVバッテリ13の充電状態SOCが所定の閾値Stを下回るとHVバッテリ13から給電される冷凍装置用のモータ23による冷凍サイクル装置20の運転を禁止する禁止手段を提供する。
【0064】
図4は、第1実施形態の車両用の冷凍装置2の温度制御を示すグラフである。横軸は時間を示し、縦軸は荷室内の庫内温度を示す。図中において、STBMは、外部電源41を動力源として冷凍サイクル装置20を駆動するスタンバイモードの期間を示す。ENGMは、エンジン11を動力源として冷凍サイクル装置20を駆動するエンジンモードを示す。HVBMは、HVバッテリ13を動力源として冷凍サイクル装置20を駆動するHVバッテリモードを示す。時刻t0から時刻t1の間、および時刻t2から時刻t3の間のエンジンモードでは、庫内温度が設定温度T1の近傍に制御される。時刻t1から時刻t2の間のHVバッテリモードでは、庫内温度が設定温度T2の近傍に制御される。
【0065】
HVバッテリモードにおける設定温度T2は、エンジンモードおよびスタンバイモードにおける設定温度T1より高く設定される。しかも、設定温度T2は、荷室に要求される必要温度以下に設定されている。よって、駆動装置1においてハイブリッド制御のために、またはアイドルストップ制御のためにエンジン11が停止されることがあっても、HVバッテリ13を動力源とするHVバッテリモードによって冷凍装置2の運転が継続される。しかも、HVバッテリモードにおいては、HVバッテリ13の電力消費を抑制しながら、庫内温度が必要な温度に維持される。
【0066】
図5は、第1実施形態の車両用冷凍装置の除霜制御を示すグラフである。横軸は時間を示し、縦軸は冷凍装置2の運転状態を示す。冷凍装置2は、除霜制御状態DF、予冷状態PR、冷凍制御状態RF、および停止状態OFFのいずれかひとつに制御される。除霜制御状態DFでは、上述の除霜制御が実行される。予冷状態PRでは、室内機の送風機を停止したまま冷凍サイクル装置20を運転し、蒸発器27の温度を低下させる。予冷状態PRは、除霜制御状態DFにおいて高圧冷媒が供給されることによって高温になった蒸発器27を冷却する。予冷状態PRの後に冷凍制御状態RFになると送風機が運転される。これにより、除霜制御状態DFの後に、温風が吹き出すことが回避される。冷凍制御状態RFでは、冷凍装置2は庫内温度を設定温度T1またはT2に制御するように運転される。停止状態OFFでは、冷凍サイクル装置20が停止し、荷室への冷気の供給が停止される。
【0067】
冷凍装置2がHVバッテリモードにあるときに、除霜条件が成立しても、除霜制御は実行されない。例えば、時刻tdにおいて除霜条件が成立しても、冷凍装置2が除霜制御状態DFに切換えられることはない。
【0068】
冷凍装置2がHVバッテリモードにあるときに、HVバッテリ13のSOCが閾値Stを下回ると、冷凍装置2はその運転を停止する。例えば、時刻tsにおいてSOCが閾値Stを下回ると、冷凍装置2はその運転を停止する。この停止状態OFFは、冷凍装置2の運転モードが、エンジンモードまたはスタンバイモードに切換えられるまで継続する。
【0069】
図6は、第1実施形態の車両用冷凍装置の除霜制御を示すグラフである。冷凍装置2がエンジンモードにあるときに、除霜条件が成立すると、除霜制御が実行される。冷凍装置2がスタンバイモードにあるときに除霜条件が成立しても、除霜制御が実行される。例えば、時刻tdにおいて除霜条件が成立すると、冷凍装置2は除霜制御状態DFに切換えられる。冷凍装置2は、所定時間の間、除霜制御を継続する。その後、所定時間にわたって予冷状態PRを継続した後に、冷凍制御状態RFに戻る。
【0070】
エンジンモードまたはスタンバイモードにおいて除霜制御が開始され、しかも、その除霜制御が継続しているときに、冷凍装置2がHVバッテリモードに切換えられた場合、継続中の除霜制御が完了するまで、除霜制御が継続される。この結果、HVバッテリモードにおいても除霜が遂行されるから、HVバッテリモードにおいて蒸発器27による冷却能力を十分に引き出すことができる。
【0071】
図7は、第1実施形態の車両用冷凍装置の除霜制御を示すグラフである。上述のように、エンジンモードまたはスタンバイモードにおいて除霜制御が開始され、しかも、その除霜制御が継続しているときに、冷凍装置2がHVバッテリモードに切換えられた場合、除霜制御が継続される。しかし、さらに、HVバッテリ13のSOCが閾値Stを下回った場合には、除霜制御が中断され、冷凍サイクル装置20が停止状態OFFとなる。これにより、HVバッテリ13の過剰な電力消費が回避される。中断された除霜制御は、冷凍装置2が再びエンジンモードまたはスタンバイモードに切換えられると、再開される。この結果、HVバッテリモードの後に、蒸発器27に残された霜が除去される。よって、冷凍装置2が再びエンジンモードまたはスタンバイモードによって運転されるときには、除霜制御期間が過剰に長くなることが回避される。
【0072】
この実施形態によると、エンジン11が停止しているときでも冷凍サイクル装置20を運転することができる。この結果、ハイブリッド車両は、エンジン11を停止することができる。例えば、ハイブリッド車両は、モータ12のみによる走行、およびアイドルストップ制御を実行することができる。しかも、エンジン11が停止されても冷凍サイクル装置20の運転を継続できるため、制御対象の温度を適切な温度に維持することができる。よって、アイドルストップ制御による省燃費を実現しながら、制御対象の温度制御を継続することができる。また、冷凍サイクル装置20は、HVバッテリ13から給電される冷凍装置用のモータ23によって運転されるから、HVバッテリ13に充電された電力を利用することができる。たとえば、車両の走行時に回生された電力を有効に利用することができる。
【0073】
(第2実施形態)
図8は、本発明を適用した第2実施形態に係る車両用冷凍装置の冷凍サイクル装置を示すブロック図である。先の実施形態では、冷凍サイクル装置20は、エンジン駆動型の圧縮機21と、電動型の圧縮機22との両方を備えた。これに代えて、この実施形態では、冷凍サイクル装置20は、エンジン11およびモータ23の両方によって駆動可能な2ウェイ型の圧縮機222を備える。圧縮機222は、エンジン11およびモータ23のいずれかによって駆動される。モータ23には、外部電源41、またはHVバッテリ13から電力が供給される。この実施形態でも、冷凍サイクル装置20は、エンジン11およびモータ23によって駆動され冷媒を循環させる冷媒圧縮手段を備えるといえる。
【0074】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0075】
例えば、上記実施形態では、エンジンモードとスタンバイモードとの両方において設定温度T1を採用した。これに代えて、エンジンモードにおける設定温度と、スタンバイモードにおける設定温度とを異なる温度に設定してもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、HVバッテリモードにおける除霜制御の開始を禁止し、HVバッテリモードにおいては先のモードから継続する除霜制御を継続することを許容することによってHVバッテリモードにおける制限された除霜運転を提供した。これに代えて、HVバッテリモードにおける除霜制御を完全に禁止することによって、制限された除霜運転を提供してもよい。また、HVバッテリモードにおいても除霜制御の開始を許容するが、HVバッテリモードにおける除霜運転の期間を、エンジンモードにおける除霜運転の期間より短く設定することにより、制限された除霜運転を提供してもよい。これらの変形例においても、制限された除霜運転は、その制限された除霜運転においてモータ23が消費する電力が、エンジンモードにおける除霜運転と同じ除霜運転をモータ23によって実現する場合に消費される電力より少なくなるように設定されている。
【0077】
例えば、制御装置が提供する手段と機能は、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、制御装置をアナログ回路によって構成してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 駆動装置
11 エンジン
12 モータ
13 HVバッテリ
14 インバータ
15 HV制御装置
2 冷凍装置
20 冷凍サイクル装置
21 エンジン駆動型の圧縮機
22 電動型の圧縮機
23 モータ
31 インバータ
32 ドライバ回路
33 制御装置
34 電気部品
35 コンバータ
41 外部電源
42 インバータ
43 整流回路
44 電圧調整回路
45 車載バッテリ
50 リレー回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行用のエンジン(11)、および車両の走行用のモータ(12)に給電するHVバッテリから給電される冷凍装置用のモータ(23)によって運転することができる冷凍サイクル装置(20)と、
前記エンジンが運転されているときに前記エンジンによって前記冷凍サイクル装置を運転するエンジンモードと、前記エンジンが停止されているときに前記HVバッテリから給電される前記冷凍装置用のモータにより前記冷凍サイクル装置を運転するHVバッテリモードとを提供する冷凍制御装置(33)とを備えることを特徴とする車両用冷凍装置。
【請求項2】
前記冷凍制御装置は、前記エンジンが停止されているか運転されているかを示す信号を、前記エンジンの運転および停止を制御するHV制御装置(15)から入力し、当該信号に応答して前記エンジンモードと前記HVバッテリモードとを切換えることを特徴とする請求項1に記載の車両用冷凍装置。
【請求項3】
前記HV制御装置は、前記車両が一時停止しているときに前記エンジンを一時的に停止させるアイドルストップ制御を実行することを特徴とする請求項2に記載の車両用冷凍装置。
【請求項4】
前記冷凍制御装置は、
前記エンジンモードのとき、制御対象の温度を第1の設定温度(T1)に維持する第1の温度制御手段(179)と、
前記HVバッテリモードのとき、前記制御対象の温度を前記第1の設定温度より高い第2の設定温度(T2)に維持する第2の温度制御手段(183)とを備えることを特徴とする請求項3に記載の車両用冷凍装置。
【請求項5】
さらに、前記車両の外部に設けられた電源装置に接続および分離が可能な外部電源(41)と、
前記電源装置と前記外部電源とが接続されるとき前記外部電源から前記冷凍装置用のモータへ給電し、前記電源装置と前記外部電源とが分離されるとき前記HVバッテリから前記冷凍装置用のモータへ給電する切換装置(50、51)を備え、
前記冷凍制御装置は、前記外部電源から給電される前記冷凍装置用のモータにより前記冷凍サイクル装置を運転するスタンバイモードを提供することを特徴とする請求項4に記載の車両用冷凍装置。
【請求項6】
前記冷凍制御装置は、さらに、
前記スタンバイモードのとき、制御対象の温度を前記第1の設定温度(T1)に維持する第3の温度制御手段(175)を備えることを特徴とする請求項5に記載の車両用冷凍装置。
【請求項7】
前記冷凍制御装置は、
前記エンジンモードにおいて蒸発器のための除霜運転を実行する第1除霜制御手段(178、176)と、
前記HVバッテリモードにおいて制限された除霜運転を実行する第2除霜制御手段(181、182、184−188)とを備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の車両用冷凍装置。
【請求項8】
前記冷凍制御装置は、
前記スタンバイモードにあるときに蒸発器のための除霜運転を実行する第1除霜制御手段(174、176)と、
前記HVバッテリモードにあるときに制限された除霜運転を実行する第2除霜制御手段(181、182、184−188)とを備えることを特徴とする請求項6に記載の車両用冷凍装置。
【請求項9】
前記第1除霜制御手段は、所定の除霜条件が成立すると前記除霜運転を開始するように構成され、
前記第2除霜制御手段は、前記除霜運転の開始を禁止するように構成されていることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の車両用冷凍装置。
【請求項10】
前記第2除霜制御手段は、前記第1除霜制御手段により開始された前記除霜運転を継続することを特徴とする請求項9に記載の車両用冷凍装置。
【請求項11】
前記第2除霜制御手段は、前記HVバッテリの充電状態(SOC)が所定の閾値(St)を下回ると前記除霜運転を中断する中断手段(185)を備えることを特徴とする請求項10に記載の車両用冷凍装置。
【請求項12】
前記第2除霜制御手段は、前記エンジンモードに移行すると前記除霜運転を再開する再開手段(188、176)を備えることを特徴とする請求項11に記載の車両用冷凍装置。
【請求項13】
前記冷凍制御装置は、前記HVバッテリの充電状態(SOC)が所定の閾値(St)を下回ると前記HVバッテリから給電される前記冷凍装置用のモータによる前記冷凍サイクル装置の運転を禁止する禁止手段(182、184)を備えることを特徴とする請求項1から請求項12に記載の車両用冷凍装置。
【請求項14】
前記冷凍サイクル装置(20)は、前記エンジンによって駆動されるエンジン駆動型の圧縮機(21)と、前記冷凍装置用のモータ(23)によって駆動される電動型の圧縮機(22)とを備えることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれかに記載の車両用冷凍装置。
【請求項15】
前記冷凍サイクル装置(20)は、前記エンジンおよび前記冷凍装置用のモータによって駆動される2ウェイ型の圧縮機(222)を備えることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれかに記載の車両用冷凍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−189263(P2012−189263A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53374(P2011−53374)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】