説明

車両用冷却システム

【課題】車体前部を構成する車体メンバに、それの中空部内に冷媒を流通させて補助的な熱交換機能を持たせることにより、ラジエータの小型化を可能とする車両用冷却システムを得る。
【解決手段】バンパーレインフォース4bの中空部内に、冷媒循環径路12を循環する冷却水をラジエータ11に対して直列に流通させることにより、そのバンパーレインフォース4bを補助ラジエータ20とすることにより、冷媒循環径路12を循環する冷却水はラジエータ11と補助ラジエータ20の両方によって冷却されてその冷却効率が向上するため、そのラジエータ11自体の小型化が可能となって、ラジエータ11の高さを低くすることが可能となって、車体前部のデザイン性の自由度を広げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載したエンジン等の熱源をラジエータ等の熱交換器によって冷却するようにした車両用冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車では通常、車体前部に設けたエンジンルーム内には、エンジン、エンジンの冷却システムおよび空調装置の冷房用の冷凍サイクル等が搭載され、そのエンジンルームの車体前端部には走行風を導入するフロントグリルやバンパーが配置される。
【0003】
エンジンの冷却システムは、エンジンから冷媒循環径路を介して循環される冷媒(冷却水)を冷却するラジエータを備え、このラジエータの車体後側には、フロントグリルから導入される外気を強制的に通過させるラジエータファンが配置され、これらラジエータファン(ファンシュラウド)およびラジエータは一体化されてラジエータコアサポートによって保持される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−153612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のエンジンの冷却システムでは、冷却能力を高めるためにはラジエータのコア面積を広く取ることになり、どうしてもラジエータの高さが高くなってエンジンフード(ボンネット)を低くすることが困難となり、車体前部のデザイン性が大幅に規制されてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、車体前部を構成する車体メンバに、それの中空部内に冷媒を流通させて補助的な熱交換機能を持たせることにより、ラジエータの小型化を可能とする車両用冷却システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、車両に搭載された熱源から冷媒循環径路を介して循環される冷媒を冷却する主熱交換器と、その主熱交換器の車両前方側に位置して車幅方向に延在する中空閉断面構造のバンパーレインフォースと、を備えた車両用冷却システムにおいて、前記バンパーレインフォースの中空部内に、前記冷媒循環径路を循環する冷媒を前記主熱交換器に対して直列に流通させて、該バンパーレインフォースを補助熱交換器としたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、車両に搭載された熱源から冷媒循環径路を介して循環される冷媒を冷却する主熱交換器と、その主熱交換器の上部タンクおよび下部タンクを保持し、それぞれが車幅方向に延在して中空閉断面構造となるラジエータコアサポートのアッパメンバおよびロワメンバと、を備えた車両用冷却システムにおいて、前記アッパメンバおよび前記ロワメンバの少なくとも一方の中空部内に、前記冷媒循環径路を循環する冷媒を前記主熱交換器に対して直列に流通させて、その冷媒を流通させたアッパメンバおよび/またはロワメンバを補助熱交換器としたことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記補助熱交換器を、この補助熱交換器に連通する主熱交換器の上部タンクおよび/または下部タンクに近接させて配置したことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記補助熱交換器と、この補助熱交換器に連通する主熱交換器の上部タンクおよび/または下部タンクとの連通は、それら両者間に介在されるマウント部材に形成した連通孔を介して行われることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、前記補助熱交換器に放熱フィンを設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、前記補助熱交換器の前方に位置するバンパーに、走行風を補助熱交換器に導入する開口部を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、熱源を通過して高温状態の冷媒は主熱交換器によって冷却されるとともに、補助熱交換器としたバンパーレインフォースによっても冷却される。このため、冷媒循環径路を循環する冷媒は主熱交換器と補助熱交換機の両方によって冷却されるため、主熱交換器単体の場合に比較してその冷却効率が向上し、ひいては、その主熱交換器自体の小型化が可能となる。したがって、主熱交換器の高さを低くすることが可能となって、車体前部のデザイン性の自由度を広げることができるようになる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、熱源を通過して高温状態の冷媒は主熱交換器によって冷却されるとともに、補助熱交換器としたラジエータコアサポートのアッパメンバおよび/またはロワメンバによっても冷却される。このため、冷媒循環径路を循環する冷媒は主熱交換器と補助熱交換機の両方によって冷却されるため、主熱交換器単体の場合に比較してその冷却効率が向上し、ひいては、その主熱交換器自体の小型化が可能となる。したがって、主熱交換器の高さを低くすることが可能となって、車体前部のデザイン性の自由度を広げることができるようになる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2の効果に加えて、補助熱交換器を主熱交換器の上部タンクおよび/または下部タンクに近接させて配置されるので、主熱交換器と補助熱交換器とを接続するための接続管を短縮、若しくは廃止することが可能となって、接続管による冷媒通過抵抗を減少して、冷却水を循環させるポンプの駆動力を低減することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、請求項2および3の効果に加えて、補助熱交換器と主熱交換器とは、両者間に介在するマウント部材に形成した連通孔を介して連通されるので、既存のマウント部材を利用して補助熱交換器と主熱交換器とを連通できるようになり、マウント部材は本来のマウント機能と冷媒の連通路との両機能を兼用できるため、部品点数を削減して組み付け性の向上を図ることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜4の効果に加えて、補助熱交換器は、これに設けた放熱フィンによって熱交換率をより高めることができるようになり、ひいては、主熱交換器の更なる小型化を図ることができる。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1〜5の効果に加えて、バンパーに形成した開口部から走行風が大量に導入され、この導入した風で補助熱交換器の熱交換効率をさらに向上して、主熱交換器の更なる小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1実施形態)図1は、本実施形態にかかる車両用冷却システムの平面図、図2は、冷却システムの側面図、図3は、図1中A−A線に沿った拡大断面図である。
【0019】
本実施形態にかかる車両用冷却システム10は、図1,図2に示すように車体前部のエンジンルーム1内に搭載される熱源としてのエンジン2を冷却するようになっており、主熱交換器としてのラジエータ11と、このラジエータ11とエンジン2の冷却水通路とを結ぶ冷媒循環径路12と、ラジエータ11の車体後側に配置されるファンシュラウド13と、を備えて構成されている。
【0020】
そして、エンジン2の冷却水通路を通過した冷媒としての冷却水が、冷媒循環径路12を循環する間にラジエータ11で外気との熱交換により冷却され、その冷却された冷却水によってエンジン2を冷却できるようになっている。
【0021】
また、本実施形態では、ラジエータ11の車体前側に、図外の空調装置のコンデンサ14が配置され、冷凍サイクルのコンプレッサで加圧した冷媒をコンデンサ14で外気との熱交換により冷却するようになっている。
【0022】
そして、エンジンルーム1の車体前側には、フロントグリル3およびバンパー4が設けられ、フロントグリル3から走行風(外気)をエンジンルーム1内に導入し、その走行風でラジエータ11およびコンデンサ14を冷却するようになっている。
【0023】
また、ファンシュラウド13は、フロントグリル3から導入される外気を強制的に吸引して、ラジエータ11およびコンデンサ14への外気通過量を増大させる。
【0024】
バンパー4は、フロントグリル3から形状的に連続するバンパーフェイシャ4aと、このバンパーフェイシャ4aのエンジンルーム1内側に図外の衝撃吸収材を挟んでバンパーレインフォース4bとを備えている。
【0025】
バンパーレインフォース4bは、断面矩形状の中空閉断面構造となって車幅方向に延在し、図1に示すようにその両端部はバンパーステイ5を介してフロントサイドメンバ6の前端に結合される。
【0026】
ラジエータ11は、上部タンク11aおよび下部タンク11bと、これら上・下部タンク11a,11b間に配置されるコア部11cと、によって構成され、上部タンク11aに導入された冷却水は、コア部11cを通過する間に外気と熱交換されて下部タンク11bに流入し、この下部タンク11bから循環パイプ12aを介してエンジン2へと戻される。
【0027】
また、ラジエータ11とファンシュラウド13は一体的に結合されて、ラジエータコアサポート15によって車体側に支持される。ラジエータコアサポート15は、ラジエータ11の上部タンク11aの上側に配置されて、その上部タンク11aを取り付けるアッパメンバ15aと、下部タンク11bの下側に配置されて、その下部タンク11bを取り付けるロワメンバ15bと、を備え、これらアッパメンバ15aおよびロワメンバ15bは、それぞれが中空閉断面構造となって車幅方向に延在される。
【0028】
ここで、本実施形態では、バンパーレインフォース4bの中空部内に、冷媒循環径路12を循環する冷却水をラジエータ11に対して直列に流通させることにより、該バンパーレインフォース4bを補助熱交換器としての第1の補助ラジエータ20としてある。
【0029】
すなわち、バンパーレインフォース4bは、それの車幅方向中央部分に所定容量の中空部が確保されるように、バンパーレインフォース4b内に所定間隔(例えば、ラジエータ11の左右幅)を設けて左右一対の仕切板21,21aが取り付けられ、それら仕切板21,21a間に形成される密閉された空間部22が第1の補助ラジエータ20となっている。
【0030】
そして、一対の仕切板21,21a間の空間部22には、一方の仕切板21の近傍に入口側コネクタ23が設けられるとともに、他方の仕切板21aの近傍に出口側コネクタ23aが設けられ、出口側コネクタ23aとエンジン2の冷却水通路の出口とが循環パイプ12bを介して接続され、出口側コネクタ23aとラジエータ11の上部タンク11aとが循環パイプ12cを介して接続される。
【0031】
したがって、エンジン2を通過した冷却水は、循環パイプ12bを介して第1の補助ラジエータ20に導入された後、循環パイプ12cを介してラジエータ11の上部タンク11aに導入され、この上部タンク11aからコア部11cを通過して下部タンク11bに導入された後、循環パイプ12aを介してエンジン2へと戻される。
【0032】
また、第1の補助ラジエータ20としたバンパーレインフォース4bには、図3に示すように放熱フィン30が設けられる。
【0033】
すなわち、バンパーレインフォース4bは断面矩形状の閉断面となるが、その前側面4b′と後側面4b″に放熱フィン30が設けられ、この放熱フィン30は、それぞれの側面4b′,4b″から外方に突出して外気に接触する外側フィン30aと、それら側面4b′,4b″からバンパーレインフォース4b内に突出して冷却水に接触する内側フィン30bと、を連続させた状態で形成される。
【0034】
このとき、バンパーレインフォース4bは押出し成形により形成されるようになっており、外側フィン30aおよび内側フィン30bは、バンパーレインフォース4bの押出し方向、つまり、バンパーレインフォース4bの長手方向に沿って連続成形されている。
【0035】
さらに、本実施形態ではバンパー4に、走行風を第1の補助ラジエータ20に導入する開口部31が形成される。
【0036】
すなわち、開口部31は、バンパーフェイシャ4aの下部で、バンパーレインフォース4bの下側近傍に形成され、その開口部31の周縁部31aは、エンジンルーム1側に滑らかに折曲して外観上の見栄えを良くしてあるが、外観的に死角となる上側の周縁部31bは、バンパーレインフォース4bに向けて鋭角に大きく折曲され、または、その上側の周縁部31b自体が切欠かれる。
【0037】
かかる車両用冷却システム10によれば、エンジン2を通過して高温状態となった冷却水は冷媒循環径路12を介してラジエータ11に導入されて冷却され、その冷却された冷却水が再度エンジン2に戻されることによりエンジン2が冷却される。
【0038】
このとき、冷媒循環径路12を流通する冷却水は、バンパーレインフォース4bを利用した第1の補助ラジエータ20をラジエータ11に対して直列に流通、つまり、本実施形態ではラジエータ11の上流側で第1の補助ラジエータ20を通過して、この補助ラジエータ20で予め冷却された冷却水がラジエータ11に導入されることになる。
【0039】
よって、冷媒循環径路12を循環する冷却水は、ラジエータ11と第1の補助ラジエータ20の両方によって冷却されることになるため、全体的な熱交換率を高めてラジエータ11単体の場合に比較してその冷却効率が向上し、ひいては、そのラジエータ11自体の小型化が可能となる。
【0040】
したがって、このようにラジエータ11の小型化が可能となることにより、そのラジエータ11の高さを低くすることが可能となり、ひいては、エンジンフードの前方をより低位置に形成できるようになり、車体前部のデザイン性の自由度を広げることができるようになる。
【0041】
また、本実施形態では第1の補助ラジエータ20に放熱フィン30を設けたので、第1の補助ラジエータ20は、これに設けた放熱フィン30によって熱交換率をより高めることができるようになり、ひいては、ラジエータ11の更なる小型化を図ることができる。
【0042】
さらに、本実施形態ではバンパー4に、走行風を第1の補助ラジエータ20に導入する開口部31を形成したので、この開口部31から走行風がエンジンルーム1内に大量に導入され、この導入した風で第1の補助ラジエータ20の熱交換効率をさらに向上して、ラジエータ11の更なる小型化を図ることができる。
【0043】
図4は、第1実施形態の変形例を示すバンパーレインフォースの要部平面図で、この変形例では、第1の補助ラジエータ20に設けた放熱フィン30が、バンパーレインフォース4bの側面4b′,4b″に、そのバンパーレインフォース4bの長手方向に対して直角となる面に沿って形成され、放熱フィン30を冷却風Wの流れ方向に沿って配置してある。
【0044】
(第2実施形態)図5は、本実施形態にかかる車両用冷却システムの平面図、図6は、冷却システムの側面図、図7(a)は、主熱交換器と補助熱交換器との結合状態を示す正面図、図7(b)は、図7(a)中B−B線に沿った断面図である。なお、本実施形態にかかる車両用冷却システムは、上記第1実施形態にかかる車両用冷却システムと同様の構成要素を備えている。よって、対応する構成要素については共通の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0045】
本実施形態にかかる車両用冷却システム10Aは、基本的に第1実施形態と略同様の構成を備えており、エンジンルーム1内に搭載されて、ラジエータ11と、このラジエータ11とエンジン2の冷却水通路とを結ぶ冷媒循環径路12と、ラジエータ11の車体後側に配置されるファンシュラウド13と、を備えて構成され、これらラジエータ11とファンシュラウド13は一体的に結合されて、ラジエータコアサポート15によって車体側に支持される。
【0046】
もちろん、ラジエータコアサポート15は、第1実施形態に示したと同様にラジエータ11の上部タンク11aの上側に配置されて、その上部タンク11aを取り付けるアッパメンバ15aと、ラジエータ11の下部タンク11bの下側に配置されて、その下部タンク11bを取り付けるロワメンバ15bと、を備え、これらアッパメンバ15aおよびロワメンバ15bは、それぞれが中空閉断面構造となって車幅方向に延在されている。
【0047】
ここで、本実施形態では、ラジエータコアサポート15のアッパメンバ15aおよびロワメンバ15bの少なくとも一方の中空部内に、冷媒循環径路12を循環する冷媒をラジエータ11に対して直列に流通させて、その冷媒を流通させたアッパメンバ15aおよび/またはロワメンバ15bを補助熱交換器としての第2の補助ラジエータ24としてある。
【0048】
すなわち、本実施形態では、図7に示すように、アッパメンバ15aの車幅方向中央部分に所定容量の中空部が確保されるように、そのアッパメンバ15a内に所定間隔(例えば、ラジエータ11の左右幅)を設けて左右一対の仕切板25,25aが取り付けられ、それら仕切板25,25a間に形成される密閉された空間部26が第2の補助ラジエータ24となっている。
【0049】
このとき、ラジエータコアサポート15のアッパメンバ15aは、ラジエータ11の上部タンク11aの上側に近接して配置されるとともに、ラジエータコアサポート15のロワメンバ15bは、ラジエータ11の下部タンク11bの下側に近接して配置される関係上、アッパメンバ15aで形成される第2の補助ラジエータ24は上部タンク11aに対して近接して配置されている。
【0050】
一対の仕切板25,25a間の空間部26には、一方の仕切板25の近傍に入口側コネクタ27が設けられるとともに、他方の仕切板25aの近傍とラジエータ11の上部タンク11aとを連通する連通部28が設けられ、さらには、ラジエータ11の下部タンク11bには出口側コネクタ29が設けられる。
【0051】
そして、エンジン2を通過した冷却水は、図外の循環パイプを介して入口側コネクタ27から第2の補助ラジエータ24に導入され、その第2の補助ラジエータ24から連通部28を介して上部タンク11aに流入され、そして、コア部11cを通過して下部タンク11bに至り、その下部タンク11bから出口側コネクタ29を介してエンジン2へと戻されるようになっている。
【0052】
また、本実施形態にあっても、第2の補助ラジエータ24を構成するアッパメンバ15aには、第1実施形態の図3およびその変形例の図4で示したように放熱フィン30が設けられることが好ましい。
【0053】
さらに、本実施形態にあっても、バンパー4に走行風を第2の補助ラジエータ20に導入する開口部31が形成されており、この開口部31は第1実施形態の図2に示した構造と略同様に形成され、開口部31の周縁部31aをエンジンルーム1側に滑らかに折曲するとともに、外観的に死角となる上側の周縁部31bをバンパーレインフォース4bに向けて鋭角に大きく折曲し、または、その上側の周縁部31bを切り欠いてある。
【0054】
以上の本実施形態にかかる車両用冷却システム10Aによれば、エンジン2を通過して高温状態となった冷却水は、冷媒循環径路12を流通する間にラジエータ11を通過して冷却される。
【0055】
このとき、冷却水をラジエータコアサポート15のアッパメンバ15aを利用した第2の補助ラジエータ24に流通させるようにしたため、冷媒循環径路12を循環する冷却水は、ラジエータ11と第2の補助ラジエータ24の両方によって冷却され、第1実施形態と同様に全体的な熱交換率が高められて、ラジエータ11単体の場合に比較してその冷却効率が向上され、以て、ラジエータ11自体の小型化が可能となる。
【0056】
すなわち、本実施形態にあってもラジエータ11の小型化が可能となることにより、そのラジエータ11の高さを低くすることが可能となり、ひいては、エンジンフードの前方をより低位置に形成できるようになり、車体前部のデザイン性の自由度を広げることができるようになる。
【0057】
このとき、ラジエータコアサポート15のアッパメンバ15aで形成される第2の補助ラジエータ24を、ラジエータ11の上部タンク11aに対して近接して配置したので、ラジエータ11と第2の補助ラジエータ24とを接続するための接続管を短縮、若しくは廃止することが可能となって、接続管による冷媒通過抵抗を減少して、冷却水を循環させるポンプの駆動力を低減することができる。
【0058】
また、本実施形態にあっても第2の補助ラジエータ24に放熱フィン30を設けることにより、第2の補助ラジエータ24の熱交換率をより高めることができるようになり、ひいては、ラジエータ11の更なる小型化を図ることができる。
【0059】
さらにまた、本実施形態にあってもバンパー4に開口部31を形成したことにより、この開口部31から走行風をエンジンルーム1内に大量に導入して、第2の補助ラジエータ24の熱交換効率をさらに向上して、ラジエータ11の更なる小型化を図ることができる。
【0060】
図8は、第2実施形態の第1変形例を示す図であり、(a)は主熱交換器と補助熱交換器との結合状態を示す正面図、(b)は(a)中C−C線に沿った断面図である。なお、以下の変形例では上記第2実施形態と同様の構成部分には共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0061】
この第1変形例の車両用冷却システム10Aは、図8に示すように、ラジエータコアサポート15のアッパメンバ15aおよびロワメンバ15bの両者によって、第2の補助ラジエータ24,24Aを構成したもので、アッパメンバ15aおよびロワメンバ15bのそれぞれの車幅方向中央部分に所定容量の中空部が確保されるように、左右一対の仕切板25,25aおよび25′,25′aが取り付けられ、それら仕切板25,25aおよび25′,25′a間に形成される密閉された空間部26,26Aが第2の補助ラジエータ24,24Aとなっている。
【0062】
アッパメンバ15aで形成される第2の補助ラジエータ24(以下、上方の補助ラジエータ24と称する)では、一対の仕切板25,25a間の空間部26には、一方の仕切板25の近傍に入口側コネクタ27が設けられるとともに、他方の仕切板25aの近傍とラジエータ11の上部タンク11aとを連通する連通部28が設けられる。
【0063】
また、ロワメンバ15bで形成される第2の補助ラジエータ24A(以下、下方の補助ラジエータ24Aと称する)では、一対の仕切板25′,25′a間の空間部には、アッパメンバ15aの仕切板25と対角位置にある一方の仕切板25′aの近傍に出口側コネクタ29が設けられるとともに、他方の仕切板25′aの近傍とラジエータ11の下部タンク11bとを連通する連通部28Aが設けられる。
【0064】
そして、エンジン2を通過した冷却水は、図外の循環パイプを介して入口側コネクタ27から上方の補助ラジエータ24に導入され、その上方の補助ラジエータ24から連通部28を介して上部タンク11aに流入され、そして、コア部11cを通過して下部タンク11bに至る。下部タンク11bの冷却水は、連通部28Aを介して下方の補助ラジエータ24Aに流入した後、出口側コネクタ29から図外の循環パイプを介してエンジン2へと戻されるようになっている。
【0065】
また、この第1変形例にあっても、上方および下方の補助ラジエータ24,24を構成するアッパメンバ15aおよびロワメンバ15bは、ラジエータ11の上部タンク11aおよび下部タンク11bに近接配置されている。
【0066】
さらに、この第1変形例にあっても、アッパメンバ15aおよびロワメンバ15bには、それぞれ放熱フィン30(図3,図4参照)が設けられることが好ましい。
【0067】
したがって、この第1変形例の車両用冷却システム10Aによれば、第2実施形態と同様の作用効果を奏するのはもちろんのこと、特に、補助熱交換器を、ラジエータコアサポート15のアッパメンバ15aを利用した上方の補助ラジエータ24と、ロワメンバ15bを利用した下方の補助ラジエータ24Aと、の2つの熱交換器によって構成したので、ラジエータ11を含めた全体の熱交換率をさらに増大でき、ひいては、ラジエータ11の更なる小型化を可能として、その高さをより低くすることができる。
【0068】
図9,図10は第2実施形態の第2変形例を示す図であり、図9(a)は主熱交換器と補助熱交換器との結合状態を示す正面図、図9(b)は図9(a)中D−D線に沿った断面図、図10は図9(a)中E部の拡大断面図である。なお、以下の変形例では上記第2実施形態と同様の構成部分には共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0069】
この第2変形例の車両用冷却システム10Aは、図9に示すように、第1変形例と同様にラジエータコアサポート15のアッパメンバ15aおよびロワメンバ15bの両者によって、第2の補助ラジエータとしての上方および下方の補助ラジエータ24,24Aを構成してある。
【0070】
もちろん、上方の補助ラジエータ24は、左右一対の仕切板25,25aで密閉された空間部26で形成されるとともに、下方の補助ラジエータ24Aは左右一対の仕切板25′,25′aで密閉された空間部26Aで形成される。
【0071】
また、この第2変形例では、図10に示すように、アッパメンバ15aとラジエータ11の上部タンク11aとの間には、一対の仕切板25,25aの内側近傍に位置して一対の上部マウント部材40が設けられるとともに、ロワメンバ15bとラジエータ11の下部タンク11bとの間には、一対の仕切板25′,25′aの内側近傍に位置して一対の下部マウント部材40Aが設けられている。
【0072】
上部・下部マウント部材40,40Aには、それぞれの中心部に連通孔41が形成されることにより、上方の補助ラジエータ24と上部タンク11aとが相互に連通されるとともに、下方の補助ラジエータ24Aと下部タンク11bとが相互に連通される。
【0073】
また、上方の補助ラジエータ24の車幅方向略中央部に入口側コネクタ27が設けられるとともに、下方の補助ラジエータ24Aの車幅方向略中央部に出口側コネクタ29が設けられる。
【0074】
そして、エンジン2を通過した冷却水は、図外の循環パイプを介して入口側コネクタ27から上方の補助ラジエータ24に導入され、その上方の補助ラジエータ24から上部マウント部材40の連通孔41を介して上部タンク11aに流入された後、コア部11cを通過して下部タンク11bに至る。
【0075】
下部タンク11bの冷却水は下部マウント部材40Aの連通孔41を介して下方の補助ラジエータ24Aに流入した後、出口側コネクタ29から図外の循環パイプを介してエンジン2へと戻されるようになっている。
【0076】
また、この第2変形例にあっても、第2の補助ラジエータとしての上方および下方の補助ラジエータ24,24を構成するアッパメンバ15aおよびロワメンバ15bは、ラジエータ11の上部タンク11aおよび下部タンク11bと近接配置されている。
【0077】
さらに、この第2変形例にあっても、アッパメンバ15aおよびロワメンバ15bには、それぞれ放熱フィン30(図3,図4参照)が設けられることが好ましい。
【0078】
したがって、この第2変形例の車両用冷却システム10Aによれば、第2変形例と同様の作用効果が得られるのはもちろんのこと、特に、上方の補助ラジエータ24と上部タンク11aとの連通、および下方の補助ラジエータ24Aと下部タンク11bとの連通は、それら両者間に介在される上部マウント部材40および下部マウント部材40Aの連通孔41を介して行うようにしたので、既存の上部および下部マウント部材40,40Aを利用して上方および下方の補助ラジエータ24,24Aと、ラジエータ11の上部および下部タンク11a,11bと、を連通できるようになる。このため、上部および下部マウント部材40,40Aは、本来のマウント機能と冷媒の連通路との両機能を兼用できるため、部品点数を削減して組み付け性の向上を図ることができる。
【0079】
ところで、本発明の車両用冷却システムは第1・第2実施形態およびそれらの各変形例に例をとって説明したが、これら実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる冷却システムの平面図。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる冷却システムの側面図。
【図3】図1中のA−A断面図。
【図4】本発明の第1実施形態の変形例を示すバンパーレインフォースの要部平面図。
【図5】本発明の第2実施形態にかかる冷却システムの平面図。
【図6】本発明の第2実施形態にかかる冷却システムの側面図。
【図7】本発明の第2実施形態にかかる主熱交換器と補助熱交換器との結合状態を示す図であって、(a)は正面図、(b)は(a)中のB−B断面図。
【図8】本発明の第2実施形態の第1変形例を示す主熱交換器と補助熱交換器との結合状態を示す図であって、(a)は正面図、(b)は(a)中のC−C断面図。
【図9】本発明の第2実施形態の第2変形例を示す主熱交換器と補助熱交換器との結合状態を示す図であって、(a)は正面図、(b)は(a)中のD−D断面図。
【図10】図9(a)中のE部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0081】
1 エンジンルーム
2 エンジン(熱源)
4 バンパー
4b バンパーレインフォース
10,10A 冷却システム
11 ラジエータ(主熱交換器)
11a 上部タンク
11b 下部タンク
12 冷媒循環径路
15 ラジエータコアサポート
15a アッパメンバ
15b ロワメンバ
20 第1の補助ラジエータ(補助熱交換器)
23,23A 第2の補助ラジエータ(補助熱交換器)
30 放熱フィン
31 開口部
40,40A マウント部材
41 連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された熱源(2)から冷媒循環径路(12)を介して循環される冷媒を冷却する主熱交換器(11)と、
その主熱交換器(11)の車両前方側に位置して車幅方向に延在する中空閉断面構造のバンパーレインフォース(4b)と、を備えた車両用冷却システム(10)において、
前記バンパーレインフォース(4b)の中空部内に、前記冷媒循環径路(12)を循環する冷媒を前記主熱交換器(11)に対して直列に流通させて、該バンパーレインフォース(4b)を補助熱交換器(20)としたことを特徴とする車両用冷却システム。
【請求項2】
車両に搭載された熱源(2)から冷媒循環径路(12)を介して循環される冷媒を冷却する主熱交換器(11)と、
その主熱交換器(11)の上部タンク(11a)および下部タンク(11b)を保持し、それぞれが車幅方向に延在して中空閉断面構造となるラジエータコアサポート(15)のアッパメンバ(15a)およびロワメンバ(15b)と、を備えた車両用冷却システム(10A)において、
前記アッパメンバ(15a)および前記ロワメンバ(15b)の少なくとも一方の中空部内に、前記冷媒循環径路(12)を循環する冷媒を前記主熱交換器(11)に対して直列に流通させて、その冷媒を流通させたアッパメンバ(15a)および/またはロワメンバ(15b)を補助熱交換器(23)としたことを特徴とする車両用冷却システム。
【請求項3】
前記補助熱交換器(23)を、この補助熱交換器(23)に連通する主熱交換器(11)の上部タンク(11a)および/または下部タンク(11b)に近接させて配置したことを特徴とする請求項2に記載の車両用冷却システム。
【請求項4】
前記補助熱交換器(23)と、この補助熱交換器(23)に連通する主熱交換器(11)の上部タンク(11a)および/または下部タンク(11b)との連通は、それら両者間に介在されるマウント部材(40),(40A)に形成した連通孔(41)を介して行われることを特徴とする請求項2または3に記載の車両用冷却システム。
【請求項5】
前記補助熱交換器(20),(23)に放熱フィン(30)を設けたことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1つに記載の車両用冷却システム。
【請求項6】
前記補助熱交換器(20),(23)の前方に位置するバンパー(4)に、走行風を補助熱交換器(20),(23)に導入する開口部(31)を形成したことを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1つに記載の車両用冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−12950(P2008−12950A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−183120(P2006−183120)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】