説明

車両用冷却部品支持装置

【課題】エンジンサイズに応じて冷却部品の配設位置を変更可能な車両用冷却部品支持装置を、少ない部品点数で簡単且つ安価に構成できるようにする。
【解決手段】ラジエータサポートロア14に複数のサポートサイド連結部32、34を設け、ラジエータサポートサイド16、18に対する連結位置を変更できるようにしたため、エンジンサイズに応じてラジエータ本体20の配設位置を変更でき、部品の共通化を図ることができるとともに、エンジンサイズが小さい時にラジエータ本体20が後側に配設されることにより、低車速での車両衝突時におけるラジエータ本体20の損傷を抑制できる等の効果が得られる。その場合に、ラジエータサポートサイド16、18に対するラジエータサポートロア14の連結位置を車両の前後方向へ変更するだけで良いため、少ない部品点数で簡単且つ安価に構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用冷却部品支持装置に係り、特に、エンジンサイズに応じて冷却部品の配設位置を変更可能な簡易な構成の冷却部品支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(a) 車両の左右方向に配設されるとともに、冷却部品の上部を固定するための上側取付部が設けられたラジエータサポートアッパと、(b) そのラジエータサポートアッパの下方において車両の左右方向に配設されるとともに、前記冷却部品の下部を固定するための下側取付部が設けられたラジエータサポートロアと、(c) 車両の左右方向に離間して前記ラジエータサポートアッパと前記ラジエータサポートロアとに跨がって上下方向に配設され、それ等を一体的に連結する一対のラジエータサポートサイドと、を有し、(d) 前記ラジエータサポートアッパ、前記ラジエータサポートロア、および前記一対のラジエータサポートサイドによって囲まれた略四角形の空間内に前記冷却部品を支持する車両用冷却部品支持装置が知られている。特許文献1に記載の装置はその一例で、冷却部品として空調用コンデンサおよびラジエータ本体を支持するようになっているとともに、それ等の冷却部品を取り付けるための上側取付部および下側取付部としてそれぞれ複数のブラケット群が設けられ、エンジンサイズに応じて冷却部品の配設位置を変更できるようになっている。
【特許文献1】特開2006−327259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の冷却部品支持装置においては、複数のブラケット群を必要とするため、部品点数が多くなって製造コストが増加するとともに、重量が大きくなるという問題があった。
【0004】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、エンジンサイズに応じて冷却部品の配設位置を変更可能な車両用冷却部品支持装置を、少ない部品点数で簡単且つ安価に構成できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) 車両の左右方向に配設されるとともに、冷却部品の上部を固定するための上側取付部が設けられたラジエータサポートアッパと、(b) そのラジエータサポートアッパの下方において車両の左右方向に配設されるとともに、前記冷却部品の下部を固定するための下側取付部が設けられたラジエータサポートロアと、(c) 車両の左右方向に離間して前記ラジエータサポートアッパと前記ラジエータサポートロアとに跨がって上下方向に配設され、それ等を一体的に連結する一対のラジエータサポートサイドと、を有し、(d) 前記ラジエータサポートアッパ、前記ラジエータサポートロア、および前記一対のラジエータサポートサイドによって囲まれた略四角形の空間内に前記冷却部品を支持する車両用冷却部品支持装置において、(e) 前記ラジエータサポートロアのうち前記一対のラジエータサポートサイドと連結される部分には、それぞれ車両の前後方向に変位した複数位置でそのラジエータサポートサイドの下端と連結されるように複数のサポートサイド連結部が設けられているとともに、(f) 前記下側取付部は、前記ラジエータサポートロアが車両の前後方向の最も前側に位置する前端位置で前記ラジエータサポートサイドに連結された場合には、前記上側取付部よりも車両の前後方向の前側に位置し、そのラジエータサポートロアが車両の前後方向の最も後側に位置する後端位置で前記ラジエータサポートサイドに連結された場合には、前記上側取付部よりも車両の前後方向の後側に位置するように設けられていることを特徴とする。
【0006】
第2発明は、第1発明の車両用冷却部品支持装置において、(a) 前記上側取付部および前記下側取付部の少なくとも一方は、車両鉛直方向へ突き出す円筒状突起を有する保持穴で、その円筒状突起が嵌合される環状溝が外周面に設けられた弾性体がその保持穴に一体的に配設され、その弾性体を介して前記冷却部品が取り付けられる一方、(b) 前記円筒状突起は前記冷却部品と反対方向へ向かうに従って小径となるテーパ形状を成しており、前記ラジエータサポートロアと前記ラジエータサポートサイドとの連結位置の相違に応じて前記冷却部品の姿勢が変化し、それに伴って前記弾性体の姿勢が車両の前後方向に揺動変位することを許容することを特徴とする。
【0007】
第3発明は、第1発明または第2発明の車両用冷却部品支持装置において、(a) 前記サポートサイド連結部は複数の連結穴から成り、その複数の連結穴が車両の前後方向に隣接して2組設けられており、前記ラジエータサポートロアは車両の前後方向に変位した2位置で前記ラジエータサポートサイドの下端と連結される一方、(b) 前記下側取付部は、車両の前後方向において前記2組の複数の連結穴の各々の中心位置の間に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このような車両用冷却部品支持装置においては、ラジエータサポートロアに車両の前後方向に変位して複数のサポートサイド連結部が設けられ、ラジエータサポートサイドに対する連結位置を車両の前後方向で変更できるようになっているため、エンジンサイズが大きい時にはラジエータサポートロアを前側に配置する一方、エンジンサイズが小さい時にはラジエータサポートロアを後側に配置することにより、エンジンサイズに応じて冷却部品の配設位置を変更することが可能で、部品の共通化を図ることができるとともに、エンジンサイズが小さい時に冷却部品が後側に配設されることにより、低車速での車両衝突時に冷却部品の損傷を抑制できる等の効果が得られる。その場合に、本発明の車両用冷却部品支持装置は、ラジエータサポートサイドに対するラジエータサポートロアの連結位置を車両の前後方向に変更するだけで良いため、前記特許文献1に比較して少ない部品点数で簡単且つ安価に構成することができる。
【0009】
また、上記ラジエータサポートロアに設けられる下側取付部は、ラジエータサポートロアが最も前側に位置する前端位置でラジエータサポートサイドに連結された場合には上側取付部よりも前側に位置し、ラジエータサポートロアが最も後側に位置する後端位置でラジエータサポートサイドに連結された場合には上側取付部よりも後側に位置するように設けられているため、それ等の上側取付部および下側取付部に上部および下部がそれぞれ取り付けられる冷却部品は、鉛直方向から下部が前側へ突き出す後傾姿勢と下部が後側へ後退する前傾姿勢との間で姿勢変化させられる。このため、鉛直方向からの傾斜角度が小さく、略鉛直方向に配設される通常の支持装置に比較して、下側取付部や上側取付部の取付構造を変更することなく、或いは大幅な設計変更を行うことなく対応できる。
【0010】
すなわち、例えば第2発明のように、上側取付部が上方へ突き出す円筒状突起を有する保持穴で、その円筒状突起が嵌合される環状溝が外周面に設けられた弾性体がその保持穴に一体的に配設され、その弾性体を介して冷却部品の上部が取り付けられる場合には、その円筒状突起を上方へ向かうに従って小径となるテーパ形状とすることにより、ラジエータサポートロアとラジエータサポートサイドとの連結位置の相違に応じて冷却部品の姿勢が前記後傾姿勢や前傾姿勢に変化しても、それに伴って弾性体の姿勢が車両の前後方向に揺動変位することが許容され、冷却部品の姿勢変化に拘らず上側取付部に対して冷却部品を無理なく良好に取り付けることができるとともに、冷却部品を略鉛直方向に配設する通常の支持装置で用いられる弾性体をそのまま使用することが可能で、部品の共通化を図ることができる。下側取付部についても、例えば上記上側取付部と上下対称に構成することが可能で、同様の作用効果が得られる。
【0011】
第3発明は、ラジエータサポートロアにサポートサイド連結部として複数の連結穴が車両の前後方向に隣接して2組設けられ、ラジエータサポートロアが車両の前後方向に変位した2位置でラジエータサポートサイドに連結される場合で、下側取付部が、車両の前後方向において上記2組の複数の連結穴の各々の中心位置の間に設けられているため、例えばサポートサイド連結部に連結されるラジエータサポートサイドの車両前後方向における中心付近に上側取付部が位置するように、その上側取付部の配設位置を設定すれば、ラジエータサポートロアが前側位置でラジエータサポートサイドに連結された場合に上側取付部が下側取付部よりも後側に位置し、ラジエータサポートロアが後側位置でラジエータサポートサイドに連結された場合に上側取付部が下側取付部よりも前側に位置するようになり、その上側取付部と下側取付部との位置関係を簡単に設定できるとともに、支持装置を車両の前後方向においてコンパクトに構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の車両用冷却部品支持装置が支持する冷却部品は、主としてエンジン冷却用等の冷却流体を冷却するラジエータ本体であるが、空調設備の空調用コンデンサ等の他の冷却部品を支持する場合にも適用され得る。ラジエータ本体と空調用コンデンサなど複数種類の冷却部品を支持するように構成することも可能である。
【0013】
ラジエータサポートアッパは、例えば車両のフレーム等に一体的に固設されるが、フレーム等と一体に構成することも可能であり、そのラジエータサポートアッパの所定位置に一対のラジエータサポートサイドがボルト等の締結手段や溶接等により一体的に固設され、その一対のラジエータサポートサイドの下端に跨がってラジエータサポートロアが一体的に連結される。ラジエータサポートロアには、一対のラジエータサポートサイドとの連結位置にそれぞれ複数のサポートサイド連結部が設けられ、車両前後方向の連結位置を変更できるが、一対のラジエータサポートサイドとの連結位置は互いに同じである。すなわち、一方のラジエータサポートサイドとの連結位置が車両前側であれば、他方のラジエータサポートサイドとの連結位置も車両前側とされ、一方のラジエータサポートサイドとの連結位置が車両後側であれば、他方のラジエータサポートサイドとの連結位置も車両後側とされる。
【0014】
ラジエータサポートアッパに設けられる上側取付部とラジエータサポートロアに設けられる下側取付部との車両前後方向における位置関係は、ラジエータサポートロアが前端位置でラジエータサポートサイドに連結された場合の下側取付部と、ラジエータサポートロアが後端位置でラジエータサポートサイドに連結された場合の下側取付部との間に上側取付部が位置するように定められれば良いが、前端位置および後端位置における下側取付部の車両前後方向の中央に上側取付部が位置するように設定すれば、鉛直方向に対して対称的に冷却部品が傾斜させられるようになり、下側取付部の所定の変位量を確保しつつ鉛直方向に対する冷却部品の傾斜角度を最小にすることができる。
【0015】
複数のサポートサイド連結部は、例えば第3発明のように車両の前後方向に隣接して2箇所に設けられるが、3箇所以上設けてラジエータサポートロアの車両前後方向における連結位置、更には冷却部品の車両前後方向における傾斜姿勢を、3段階以上で変更できるようにすることも可能である。
【0016】
第2発明のテーパ形状の円筒状突起は、ラジエータサポートアッパの略水平な平坦部に、そのラジエータサポートアッパのプレス成形時等に同時にプレス加工でバーリング穴を形成することにより簡単に設けることができるが、テーパ形状の円筒状突起を別体に構成して溶接等によりラジエータサポートアッパに一体的に固設するようにしても良いなど種々の態様が可能である。第1発明の実施に際しては、必ずしも円筒状突起を設ける必要はなく、ブラケット等を設けて冷却部品の上端がボルト等により固定されるようにしても良いなど種々の態様が可能である。
【0017】
第3発明では、サポートサイド連結部が複数の連結穴にて構成されており、例えば複数のボルト等の締結手段を介してラジエータサポートサイドに一体的に連結されるが、他の発明の実施に際しては、連結穴の代りにボルト等の締結部材を設けることもできるし、位置決め用のパイロットピンやパイロット穴などを利用することにより単一の連結穴、或いは締結部材を設けるだけでも良いなど、種々の態様が可能である。サポートサイド連結部として位置決め突起や位置決め凹所等を設け、車両前後方向の複数位置でラジエータサポートサイドの下端に位置決めできるようにして、スポット溶接等の溶接手段によりラジエータサポートサイドに一体的に連結することも可能である。
【0018】
上記第3発明ではまた、下側取付部が車両の前後方向において2組の複数の連結穴の各々の中心位置の間、すなわち最前端のサポートサイド連結部と最後端のサポートサイド連結部との間に設けられているが、他の発明の実施に際しては、最前端のサポートサイド連結部よりも車両前側に下側取付部を設けたり、最後端のサポートサイド連結部よりも車両後側に下側取付部を設けたりすることも可能である。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例である車両用冷却部品支持装置10を説明する図で、この車両用冷却部品支持装置10は、車両の左右方向に略水平に配設されるラジエータサポートアッパ12、そのラジエータサポートアッパ12の下方に略平行に配設されるラジエータサポートロア14、および車両の左右方向に離間してラジエータサポートアッパ12とラジエータサポートロア14とに跨がって上下方向(略垂直方向)に配設され、それ等を一体的に連結する一対のラジエータサポートサイド16、18とを備えている。そして、それ等のラジエータサポートアッパ12、ラジエータサポートロア14、および一対のラジエータサポートサイド16、18によって略四角形の枠体が構成され、その枠体によって囲まれた略四角形の空間内にエンジン冷却用の冷却流体を冷却するラジエータ本体20が一体的に取り付けられて支持されるようになっている。ラジエータ本体20は冷却部品に相当する。
【0020】
図1の(a) は、車両用冷却部品支持装置10の概略斜視図で、(b) はラジエータサポートロア14の左端部を示す概略平面図である。前記ラジエータサポートアッパ12は、断面が略コの字状の長手形状を成しているプレス成形品で、図4から明らかなようにコの字状の開口側が下向きとなる姿勢で車両の左右方向に略水平に配設され、長手方向の両端部において図示しない車両のフレーム等に一体的に固設されるとともに、前記ラジエータ本体20の上端を固定するための上側取付部として一対の保持穴22が左右方向に離間して設けられている。保持穴22は、車両への配設状態において略水平となる平坦部、すなわちコの字状の背面部分に、ラジエータサポートアッパ12のプレス成形時に同時にプレス加工によって設けられたバーリング穴で、上方へ突き出す円筒状突起を一体に備えている。この保持穴22には、円筒状突起が嵌合される環状溝24が外周面に設けられたゴム等の弾性体26が離脱不能に一体的に配設され、その弾性体26を介してラジエータ本体20の上部が一体的に取り付けられるようになっている。また、この保持穴22の円筒状突起は、上方へ向かうに従って小径となるテーパ形状を成しており、図4の(a) 、(b) に示すように弾性体26およびラジエータ本体20の姿勢が、保持穴22の中心線と略一致する鉛直線Oを挟んで車両の前後方向に所定の角度範囲で揺動変位することを許容するようになっている。図4の(a) 、(b) は、図1の(a) におけるIV−IV断面に相当する図で、ラジエータ本体20が取り付けられた状態である。
【0021】
前記ラジエータサポートサイド16、18は、ラジエータサポートアッパ12と同様にプレス加工によって形成されたプレス成形品で、ラジエータサポートロア14の長さ寸法に相当する距離だけ左右方向に離間して配設され、それぞれその上端においてボルト等の固設手段によりラジエータサポートアッパ12に一体的に固定されている。
【0022】
前記ラジエータサポートロア14は、ラジエータサポートアッパ12と同様に断面が略コの字状の長手形状を成しているプレス成形品で、コの字状の開口側が下向きとなる姿勢で車両の左右方向に略水平に配設され、その両端部において前記一対のラジエータサポートサイド16、18の下端に一体的に連結されるとともに、前記ラジエータ本体20の下端を固定するための下側取付部として一対の保持穴28が左右に離間して設けられている。この保持穴28は、前記上側取付部の保持穴22と同様に車両への配設状態において略水平となる平坦部、すなわちコの字状の背面部分に、ラジエータサポートロア14のプレス成形時に同時にプレス加工によって設けられたバーリング穴で、下方へ突き出す円筒状突起を一体に備えている。この保持穴28にも、図示は省略するが前記弾性体26と同様の弾性体が離脱不能に一体的に配設され、その弾性体を介してラジエータ本体20の下部が一体的に取り付けられるとともに、円筒状突起は下方へ向かうに従って小径となるテーパ形状を成しており、弾性体やラジエータ本体20の姿勢が図4の(a) 、(b) に示すように車両の前後方向に所定の角度範囲で揺動変位することを許容するようになっている。
【0023】
上記ラジエータサポートロア14の左右の両端部、すなわち前記一対のラジエータサポートサイド16、18と連結される連結部位30には、それぞれ車両の前後方向に隣接して2箇所のサポートサイド連結部32、34が設けられており、これ等のサポートサイド連結部32、34の何れか一方でラジエータサポートサイド16、18の下端に一体的に連結される。車両前方に向かって左側の連結部位30を示す図1の(b) から明らかなように、それ等のサポートサイド連結部32、34は、何れも四角形の角部に位置するように設けられた4つの連結穴36から成り、それぞれボルト等の締結手段によってラジエータサポートサイド16の下端に一体的に固定される。各サポートサイド連結部32、34の4つの連結穴36のうち隣接する側、すなわち車両前後方向における中央の2つの連結穴36は、両方のサポートサイド連結部32、34に共通に用いられ、計6つの連結穴36によって両サポートサイド連結部32、34が構成されている。図1の(b) において一点鎖線で示すラジエータサポートサイド16は、車両前後方向の後側のサポートサイド連結部32に連結された場合で、破線で示すラジエータサポートサイド16は、車両前後方向の前側のサポートサイド連結部32に連結された場合である。
【0024】
また、図1の(b) から明らかなように、前記下側取付部としての保持穴28は、車両の前後方向において前記2箇所のサポートサイド連結部32、34の各々の中心位置の間に位置するように設けられている一方、前記上側取付部としての保持穴22は、ラジエータサポートサイド16、18がラジエータサポートアッパ12に固設された状態で、サポートサイド連結部32、34に固定されるラジエータサポートサイド16、18の下端の連結部の車両前後方向における中心付近に位置するように、ラジエータサポートアッパ12に設けられている。これにより、図2に示すようにラジエータサポートロア14がサポートサイド連結部32でラジエータサポートサイド16、18に連結される前側位置の場合には、上側取付部の保持穴22が下側取付部の保持穴28よりも所定のずれ寸法d1だけ後側に位置し、図3に示すようにラジエータサポートロア14がサポートサイド連結部34でラジエータサポートサイド16、18に連結される後側位置の場合には、上側取付部の保持穴22が下側取付部の保持穴28よりも所定のずれ寸法d2だけ前側に位置する。
【0025】
図2および図3の(b) は、何れも車両用冷却部品支持装置10の車両前方に向かって左側に位置する左端部を示す平面図で、ラジエータサポートアッパ12とラジエータサポートロア14との位置関係を示すため、ラジエータサポートロア14を実線で示し、ラジエータサポートサイド16およびラジエータサポートアッパ12を一点鎖線で示したものである。また、図2および図3の(a) は、車両の左側から見た側面図で、車体40に搭載された車両用冷却部品支持装置10に支持されるラジエータ本体20の姿勢を一点鎖線で示し、そのラジエータ本体20とエンジン42およびバンパリインフォースメント44との位置関係を示す図である。そして、図2のようにラジエータサポートロア14が前側位置に固定されると、ラジエータ本体20は下端が前側へ突き出す後傾姿勢となり、サイズが大きなエンジン42を搭載することができる一方、図3のようにラジエータサポートロア14が後側位置に固定されると、ラジエータ本体20は下端が後側へ後退する前傾姿勢となり、サイズが小さなエンジン42であれば搭載することが可能で、且つ、バンパリインフォースメント44とラジエータ本体20との間に大きな空間が形成されるため、低車速での車両衝突時にラジエータ本体20が損傷することが抑制される。図4の(a) は図2に対応し、図4の(b) は図3に対応する。
【0026】
前記保持穴22、28の円筒状突起のテーパ角は、図2に示すようにラジエータ本体20を後傾姿勢で取り付けたり、図3に示すようにラジエータ本体20を前傾姿勢で取り付けたりする場合に、弾性体26に無理な力が作用して塑性変形することがないように定められる。また、図2の後傾姿勢および図3の前傾姿勢における鉛直方向からの傾斜角度θ1、θ2が互いに略等しくなるように、言い換えれば前記ずれ寸法d1およびd2が略同じ寸法になるように、保持穴22、28の配設位置は設定されている。すなわち、ラジエータサポートロア14の前側位置および後側位置における保持穴28の車両前後方向の中央に上側取付部の保持穴22が位置するように、それ等の配設位置が設定されているのであり、これによりラジエータ本体20の下端の車両前後方向への所定の変位量(例えば35mm〜45mm程度)を確保しつつ、鉛直方向から前後への傾斜角度θ1、θ2をできるだけ小さくすることが可能で、上記保持穴22、28の円筒状突起のテーパ角をできるだけ小さくすることができる。ラジエータ本体20の下端の車両前後方向への変位量は、ラジエータサポートロア14の前側位置と後側位置との変位量に対応し、そのラジエータサポートロア14の前側位置と後側位置との変位量はずれ寸法d1とd2との和である。
【0027】
このように、本実施例の車両用冷却部品支持装置10においては、ラジエータサポートロア14に車両の前後方向に変位して複数のサポートサイド連結部32、34が設けられ、ラジエータサポートサイド16、18に対する連結位置を車両の前後方向で変更できるようになっているため、エンジン42のサイズが大きい時には図2に示すようにラジエータサポートロア14を前側に配置する一方、エンジン42のサイズが小さい時には図3に示すようにラジエータサポートロア14を後側に配置することにより、エンジンサイズに応じてラジエータ本体20の配設位置を変更することができる。これにより、エンジンサイズに応じてラジエータ本体20の配設位置を変更する場合の部品の共通化を図ることができるとともに、エンジン42のサイズが小さい時にラジエータ本体20が後側に配設されることにより、バンパリインフォースメント44とラジエータ本体20との間に大きな空間を確保して、低車速での車両衝突時におけるラジエータ本体20の損傷を抑制できる等の効果が得られる。
【0028】
ここで、本実施例の車両用冷却部品支持装置10は、ラジエータサポートサイド16、18に対するラジエータサポートロア14の連結位置を車両の前後方向へ変更するだけで良いため、前記特許文献1のように複数のブラケット群等を配設する場合に比較して、少ない部品点数で簡単且つ安価に構成することができる。
【0029】
一方、ラジエータサポートロア14に設けられる下側取付部の保持穴28は、ラジエータサポートロア14が前側位置でラジエータサポートサイド16、18に連結された場合には上側取付部の保持穴22よりもずれ寸法d1だけ前側に位置し、ラジエータサポートロア14が後側位置でラジエータサポートサイド16、18に連結された場合には上側取付部の保持穴22よりもずれ寸法d2だけ後側に位置するように設けられているため、それ等の保持穴22、28に上部および下部がそれぞれ取り付けられるラジエータ本体20は、鉛直方向から下部が前側へ突き出す後傾姿勢と下部が後側へ後退する前傾姿勢との間で姿勢変化させられる。このため、鉛直方向からの傾斜角度θ1、θ2が小さく、略鉛直方向に配設される通常の支持装置に比較して、保持穴22、28等の取付構造を大幅に設計変更することなく対応できる。
【0030】
すなわち、本実施例では、上側取付部が円筒状突起を有する保持穴22で、その円筒状突起が嵌合される環状溝24が外周面に設けられた弾性体26がその保持穴22に一体的に配設され、その弾性体26を介してラジエータ本体20の上部が取り付けられるが、その円筒状突起を上方へ向かうに従って小径となるテーパ形状とするだけで、ラジエータサポートロア14とラジエータサポートサイド16、18との連結位置の相違に応じてラジエータ本体20の姿勢が後傾姿勢や前傾姿勢に変化しても、それに伴って弾性体26の姿勢が車両の前後方向に揺動変位することが許容され、ラジエータ本体20の姿勢変化に拘らず保持穴22に対してラジエータ本体20を無理なく良好に取り付けることができるとともに、ラジエータ本体20を略鉛直方向に配設する通常の支持装置で用いられる弾性体をそのまま使用することが可能で、部品の共通化を図ることができる。特に、本実施例では傾斜角度θ1≒θ2、言い換えればずれ寸法d1≒d2となるように保持穴22、28の配設位置が設定されているため、ラジエータ本体20の下端の車両前後方向への所定の変位量を確保しつつ、鉛直方向から車両前後方向への傾斜角度θ1、θ2ができるだけ小さくされ、保持穴22の円筒状突起のテーパ角ができるだけ小さくされて設計変更が最小に抑制されるとともに、弾性体26を共用できるのである。保持穴28側の下側取付部についても同様である。
【0031】
また、本実施例では、ラジエータサポートロア14に車両前後方向に隣接して2箇所のサポートサイド連結部32、34が設けられ、車両の前後方向に変位した前側位置および後側位置の2位置でラジエータサポートサイド16、18に連結されるが、下側取付部の保持穴28が、車両の前後方向において上記2箇所のサポートサイド連結部32、34の各々の中心位置の間に設けられているため、それ等のサポートサイド連結部32、34に連結されるラジエータサポートサイド16、18の車両前後方向における中心付近に上側取付部の保持穴22が位置するように、その保持穴22の配設位置を設定すれば、ラジエータサポートロア14が前側位置でラジエータサポートサイド16、18に連結された場合に上側取付部の保持穴22が下側取付部の保持穴28よりも後側に位置し、ラジエータサポートロア14が後側位置でラジエータサポートサイド16、18に連結された場合に上側取付部の保持穴22が下側取付部の保持穴28よりも前側に位置するようになり、それ等の保持穴22、28の位置関係を簡単に設定できるとともに、車両用冷却部品支持装置10を車両の前後方向においてコンパクトに構成することができる。
【0032】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施例である車両用冷却部品支持装置を説明する図で、(a) は斜視図、(b) はラジエータサポートロアの左端部を示す平面図である。
【図2】ラジエータサポートロアが前側位置でラジエータサポートサイドに連結された場合を説明する図で、(a) は車両の左側から見た側面図、(b) は車両用冷却部品支持装置の車両前方に向かって左側に位置する左端部におけるラジエータサポートアッパとラジエータサポートロアとの位置関係を示す平面図である。
【図3】ラジエータサポートロアが後側位置でラジエータサポートサイドに連結された場合を説明する図で、(a) は車両の左側から見た側面図、(b) は車両用冷却部品支持装置の車両前方に向かって左側に位置する左端部におけるラジエータサポートアッパとラジエータサポートロアとの位置関係を示す平面図である。
【図4】ラジエータサポートアッパに設けられた上側取付部の保持穴に弾性体を介してラジエータ本体の上部が取り付けられた状態を示す図で、(a) はラジエータサポートロアが前側位置でラジエータサポートサイドに連結された場合、(b) はラジエータサポートロアが後側位置でラジエータサポートサイドに連結された場合である。
【符号の説明】
【0034】
10:車両用冷却部品支持装置 12:ラジエータサポートアッパ 14:ラジエータサポートロア 16、18:ラジエータサポートサイド 20:ラジエータ本体(冷却部品) 22:保持穴(上側取付部) 24:環状溝 26:弾性体 28:保持穴(下側取付部) 32、34:サポートサイド連結部 36:連結穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の左右方向に配設されるとともに、冷却部品の上部を固定するための上側取付部が設けられたラジエータサポートアッパと、
該ラジエータサポートアッパの下方において車両の左右方向に配設されるとともに、前記冷却部品の下部を固定するための下側取付部が設けられたラジエータサポートロアと、
車両の左右方向に離間して前記ラジエータサポートアッパと前記ラジエータサポートロアとに跨がって上下方向に配設され、それ等を一体的に連結する一対のラジエータサポートサイドと、
を有し、前記ラジエータサポートアッパ、前記ラジエータサポートロア、および前記一対のラジエータサポートサイドによって囲まれた略四角形の空間内に前記冷却部品を支持する車両用冷却部品支持装置において、
前記ラジエータサポートロアのうち前記一対のラジエータサポートサイドと連結される部分には、それぞれ車両の前後方向に変位した複数位置で該ラジエータサポートサイドの下端と連結されるように複数のサポートサイド連結部が設けられているとともに、
前記下側取付部は、前記ラジエータサポートロアが車両の前後方向の最も前側に位置する前端位置で前記ラジエータサポートサイドに連結された場合には、前記上側取付部よりも車両の前後方向の前側に位置し、該ラジエータサポートロアが車両の前後方向の最も後側に位置する後端位置で前記ラジエータサポートサイドに連結された場合には、前記上側取付部よりも車両の前後方向の後側に位置するように設けられている
ことを特徴とする車両用冷却部品支持装置。
【請求項2】
前記上側取付部および前記下側取付部の少なくとも一方は、車両鉛直方向へ突き出す円筒状突起を有する保持穴で、該円筒状突起が嵌合される環状溝が外周面に設けられた弾性体が該保持穴に一体的に配設され、該弾性体を介して前記冷却部品が取り付けられる一方、
前記円筒状突起は前記冷却部品と反対方向へ向かうに従って小径となるテーパ形状を成しており、前記ラジエータサポートロアと前記ラジエータサポートサイドとの連結位置の相違に応じて前記冷却部品の姿勢が変化し、それに伴って前記弾性体の姿勢が車両の前後方向に揺動変位することを許容する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用冷却部品支持装置。
【請求項3】
前記サポートサイド連結部は複数の連結穴から成り、該複数の連結穴が車両の前後方向に隣接して2組設けられており、前記ラジエータサポートロアは車両の前後方向に変位した2位置で前記ラジエータサポートサイドの下端と連結される一方、
前記下側取付部は、車両の前後方向において前記2組の複数の連結穴の各々の中心位置の間に設けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用冷却部品支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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