説明

車両用冷暖房装置および集合弁

【課題】複数の受液器の機能を簡易な構成にて効果的に発揮させることが可能な車両用冷暖房装置を提供する。
【解決手段】ある態様の車両用冷暖房装置1は、圧縮機2、室内凝縮器3、室外熱交換器5、膨張弁9および蒸発器7を直列につなぐ冷媒循環通路を備える。この車両用冷暖房装置1は、室外熱交換器5と蒸発器7との間に設けられ、室外熱交換器5を通過した冷媒を気液分離して溜めおき、その液相部が膨張弁9を介して蒸発器7に接続され、その気相部がバイパス通路26を介して蒸発器7を迂回するように圧縮機2に接続される受液器6と、外部から電気的に開閉駆動されてバイパス通路26の開度を調整することにより受液器6における冷媒の圧力を調整し、それにより室外熱交換器5の蒸発圧力を制御する制御弁42と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内を除湿暖房可能なヒートポンプ式の車両用冷暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関を搭載した車両においてはエンジンの燃焼効率が向上したこともあり、熱源として利用してきた冷却水が暖房に必要な温度にまで上昇し難くなっている。一方、内燃機関と電動機を併用したハイブリッド車両においては内燃機関の稼働率が低いため、そのような冷却水の利用がさらに難しい。電気自動車に至っては内燃機関による熱源そのものがない。このため、冷房のみならず暖房にも冷媒を用いたサイクル運転を行い、車室内を除湿暖房可能なヒートポンプ式の車両用冷暖房装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような車両用冷暖房装置は、圧縮機、室外熱交換器、膨張装置、蒸発器、室内熱交換器等を含む冷凍サイクルを有し、暖房運転時と冷房運転時とで室外熱交換器の機能が切り替えられる。暖房運転時においては室外熱交換器が蒸発器として機能する。その際、冷凍サイクルを冷媒が循環する過程で室内熱交換器が放熱し、その熱により車室内の空気が加熱される。一方、冷房運転時においては室外熱交換器が凝縮器として機能する。その際、室外熱交換器にて凝縮された冷媒は、膨張装置により減圧膨張されて気液二相冷媒となり、蒸発器にて蒸発される。その蒸発潜熱により車室内の空気が冷却される。その際、除湿も行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−240266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような冷凍サイクルにおいては、蒸発器における安定した熱交換を維持するために、室外熱交換器から導出された冷媒を気液分離して溜めおくリキッドタンクと呼ばれる受液器が設けられることがある。室外熱交換器による凝縮が不十分であってもリキッドタンクの液相部の冷媒を膨張装置に導出することで、蒸発器での熱交換に必要な気液二相冷媒を供給することが可能となる。また、圧縮機に液冷媒が導入されることによる動作不良を防止するために、蒸発器から導出された冷媒を気液分離して溜めおくアキュムレータと呼ばれる受液器が設けられることもある。蒸発器による蒸発が不十分であってもアキュムレータが液相部に余剰液冷媒を溜めおき、気相部の冷媒を導出することで、圧縮機の良好な作動を維持することが可能となる。
【0006】
このような観点からは、冷凍サイクルにリキッドタンクおよびアキュムレータの2つの受液器を配置するのが望ましいともいえる。しかしながら、2つの受液器の双方を設置するとコストが嵩む。このため、いずれか一方の受液器を設置して間に合わせることも多く、その点で改善の余地があった。
【0007】
本発明の目的の一つは、複数の受液器の機能を簡易な構成にて効果的に発揮させることが可能な車両用冷暖房装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様の車両用冷暖房装置は、圧縮機、凝縮器、第1の蒸発器、膨張装置および第2の蒸発器を直列につなぐ冷媒循環通路を備える。この車両用冷暖房装置は、第1の蒸発器と第2の蒸発器との間に設けられ、第1の蒸発器を通過した冷媒を気液分離して溜めおき、その液相部が膨張装置を介して第2の蒸発器に接続され、その気相部がバイパス通路を介して第2の蒸発器を迂回するように圧縮機に接続される受液器と、外部から電気的に開閉駆動されてバイパス通路の開度を調整することにより受液器における冷媒の圧力を調整し、それにより第1の蒸発器の蒸発圧力を制御する制御弁と、を備える。
【0009】
この態様によると、第1の蒸発器と第2の蒸発器との間に2つの機能を兼ね備えた受液器が設けられる。すなわち、受液器にて気液分離された冷媒のうち、液相部の液冷媒が第2の蒸発器に供給される一方、気相部のガス冷媒が圧縮機に供給される。液相部から導出された液冷媒は膨張装置にて減圧膨張されて気液二相冷媒となり、蒸発器にて蒸発される。一方、気相部から導出されたガス冷媒は、第2の蒸発器を迂回する形で圧縮機に供給される。このため、圧縮機の作動を良好に維持することができる。すなわち、一つの受液器が気液分離して得られたガス冷媒と液冷媒のそれぞれを適宜導出するため、部品点数を削減でき、装置全体の製造コストを抑制することができる。一方、制御弁によって第1の蒸発器の蒸発圧力を制御することにより、第1の蒸発器における冷媒の蒸発量と第2の蒸発器における冷媒の蒸発量との比率を調整することもでき、両蒸発器での蒸発量を適正に調整することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の受液器の機能を簡易な構成にて効果的に発揮させることが可能な車両用冷暖房装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成を表すシステム構成図である。
【図2】車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。
【図3】受液器および制御弁ユニットの具体的構成を表す断面図である。
【図4】制御弁ユニットの具体的構成を表す断面図である。
【図5】制御弁ユニットの動作過程を例示する説明図である。
【図6】制御弁ユニットの動作過程を例示する説明図である。
【図7】第2実施形態に係る受液器および制御弁ユニットの具体的構成を表す断面図である。
【図8】制御弁ユニットの構成を表す断面図である。
【図9】制御弁ユニットの動作過程を例示する説明図である。
【図10】制御弁ユニットの動作過程を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成を表すシステム構成図である。本実施形態は、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車の冷暖房装置として具体化したものである。
【0013】
車両用冷暖房装置1は、圧縮機2、室内凝縮器3、室外熱交換器5、受液器6および蒸発器7を配管にて接続した冷凍サイクル(冷媒循環回路)を備える。車両用冷暖房装置1は、冷媒としての代替フロン(HFC−134a)が冷凍サイクル内を状態変化しながら循環する過程で、その冷媒の熱を利用して車室内の空調を行うヒートポンプ式の冷暖房装置として構成されている。冷媒循環回路には、冷暖房を適切に制御するための各種制御弁が配設されている。
【0014】
車両用冷暖房装置1は、冷房運転時と暖房運転時とで複数の冷媒循環通路を切り替えるように運転される。そして、この冷凍サイクルは、室内凝縮器3と室外熱交換器5とが凝縮器として直列に動作可能に構成され、また、蒸発器7と室外熱交換器5とが蒸発器として直列に動作可能に構成されている。すなわち、冷房運転時に冷媒が循環する第1冷媒循環通路、通常の暖房運転時(通常暖房運転時)に冷媒が循環する第2冷媒循環通路、特殊な暖房運転時(特殊暖房運転時)に冷媒が循環する第3冷媒循環通路が形成される。
【0015】
第1冷媒循環通路は、圧縮機2→室内凝縮器3→室外熱交換器5→受液器6→蒸発器7→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第2冷媒循環通路は、圧縮機2→室内凝縮器3→室外熱交換器5→受液器6→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第3冷媒循環通路は、圧縮機2→室内凝縮器3→受液器6→蒸発器7→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。
【0016】
具体的には、圧縮機2の吐出室は第1通路21を介して室内凝縮器3の入口に接続され、室内凝縮器3の出口は第2通路22を介して室外熱交換器5の入口に接続されている。室外熱交換器5の出口は第3通路23を介して蒸発器7の入口に接続され、蒸発器7の出口は第4通路24(戻り通路)を介して圧縮機2の吸入口に接続されている。第2通路22と第3通路23とはバイパス通路25により接続され、室内凝縮器3から導出された冷媒を室外熱交換器5を迂回させる形で蒸発器7へ供給可能に構成されている。さらに、第3通路23のバイパス通路25との合流点よりも下流側に分岐点が設けられ、圧縮機2の吸入口につながるバイパス通路26が設けられている。
【0017】
第1冷媒循環通路は、第1通路21,第2通路22,第3通路23,第4通路24を接続して構成される。第2冷媒循環通路は、第1通路21,第2通路22,第3通路23,バイパス通路26を接続して構成される。第3冷媒循環通路は、第1通路21,第2通路22,バイパス通路25,第3通路23,第4通路24を接続して構成される。そして、このような冷媒循環通路の切り替えを実現するために、第2通路22におけるバイパス通路25への分岐点には切替弁41が設けられ、バイパス通路26には制御弁42が設けられている。また、第2通路22における切替弁41の下流側には開閉弁43とオリフィス44が並列に設けられている。室外熱交換器5の下流側には逆止弁45が設けられている。受液器6は、第3通路23におけるバイパス通路25との合流点に設けられている。受液器6と蒸発器7との間には、上流側から開閉弁46、膨張弁9が設けられている。
【0018】
車両用冷暖房装置1は、空気の熱交換が行われるダクト10を有し、そのダクト10における空気の流れ方向上流側から室内送風機12、蒸発器7、室内凝縮器3が配設されている。室内凝縮器3の上流側には、エアミックスドア14が回動自在に設けられ、室内凝縮器3を通過する風量と室内凝縮器3を迂回する風量との比率が調節される。また、室外熱交換器5に対向するように室外送風機16が配置されている。
【0019】
圧縮機2は、ハウジング内にモータと圧縮機構を収容する電動圧縮機として構成され、図示しないバッテリからの供給電流により駆動され、モータの回転数に応じて冷媒の吐出容量が変化する。この圧縮機2としては、レシプロ式、ロータリ式、スクロール式など、様々な形式の圧縮機を採用することができるが、電動圧縮機そのものは公知であるため、その説明については省略する。
【0020】
室内凝縮器3は、車室内に設けられ、室外熱交換器5とは別に冷媒を放熱させる補助凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧の冷媒が室内凝縮器3を通過する際に放熱する。エアミックスドア14の開度に応じて振り分けられた空気は、室内凝縮器3を通過する過程でその熱交換が行われる。
【0021】
室外熱交換器5は、車室外に配置され、冷房運転時に内部を通過する冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には内部を通過する冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する。室外送風機16は、吸い込み式の送風機であり、軸流ファンをモータにより回転駆動することにより外気を導入する。室外熱交換器5は、その外気と冷媒との間で熱交換をさせる。
【0022】
受液器6は、室外熱交換器5または室内凝縮器3から送出された冷媒を気液分離して溜めておく装置であり、液相部と気相部とを有する。液相部は第3通路23を介して蒸発器7の入口につながり、気相部はバイパス通路26を介して圧縮機2の吸入口につながっている。受液器6は、開閉弁46の開弁時には液相部の液冷媒を膨張弁9に向けて導出し、制御弁42の開弁時には気相部の冷媒を圧縮機2に向けて導出する。すなわち、受液器6は、従来にいうリキッドタンクとアキュムレータの2つの受液器を兼ね備えたような機能を有する。この受液器6の具体的構成については後述する。
【0023】
蒸発器7は、車室内に配置され、内部を通過する冷媒を蒸発させる室内蒸発器として機能する。すなわち、膨張装置として機能する制御弁の通過により低温・低圧となった冷媒は、蒸発器7を通過する際に蒸発する。ダクト10の上流側から導入された空気は、その蒸発潜熱によって冷却される。このとき冷却・除湿された空気は、エアミックスドア14の開度に応じて室内凝縮器3を通過するものと、室内凝縮器3を迂回するものとに振り分けられる。室内凝縮器3を通過する空気は、その通過過程で加熱される。室内凝縮器3を通過した空気と迂回した空気とが室内凝縮器3の下流側にて混合されて目標の温度に調整され、図示しない吹出口から車内に供給される。例えば、ベント吹出口、フット吹出口、デフ吹出口等から車室内所定場所に向かって吹き出される。
【0024】
膨張弁9は、いわゆる温度式膨張弁として構成されており、蒸発器7の出口側の温度と圧力を感知して弁開度を調整し、熱負荷に応じた液冷媒を蒸発器7へ供給する。膨張弁9は、蒸発器7から導出された冷媒が所定の過熱度をもつように、蒸発器7へ送出する冷媒の流量を制御する温度式膨張弁からなる。このような温度式膨張弁そのものは公知であるため、その詳細な説明については省略する。
【0025】
切替弁41は、第2通路22(室内凝縮器3と室外熱交換器5をつなぐ通路)を開閉する第1弁部と、バイパス通路25を開閉する第2弁部と、一方の弁部を駆動するソレノイドとを備える三方向電磁弁からなる。第1弁部は、その開弁により室内凝縮器3から第2通路22を介した室外熱交換器5への冷媒の流れを許容する。第2弁部は、その開弁により室内凝縮器3からバイパス通路25を介した受液器6への冷媒の流れを許容する。本実施形態では、切替弁41として、ソレノイドへの通電有無によって第1弁部および第2弁部の一方を開弁させて他方を閉弁させる開閉弁(オン/オフ弁)が用いられる。なお、切替弁41を弁部を駆動するアクチュエータはソレノイドでなくてもよく、ステッピングモータ等の電動機であってもよい。
【0026】
制御弁42は、バイパス通路26を開閉する弁部と、その弁部を開閉駆動するアクチュエータとを備える電気駆動弁として構成される。制御弁42は、その開度が設定開度に調整される比例弁として構成され、その開弁により室外熱交換器5からバイパス通路26を介した圧縮機2への冷媒の流れを許容する。一方、開閉弁46は、第3通路23(室外熱交換器5と蒸発器7をつなぐ通路)を開閉する弁部と、その弁部を開閉駆動するアクチュエータとを備える電気駆動弁として構成される。開閉弁46は、その開弁により室外熱交換器5から第3通路23を介した蒸発器7への冷媒の流れを許容する。本実施形態では、制御弁42と開閉弁46とが共用のボディと共用のアクチュエータを有する制御弁ユニットを構成しており、それらの弁部は互いに連動するように駆動される。本実施形態では、そのアクチュエータとしてステッピングモータが採用されるが、ソレノイドであってもよい。なお、制御弁42および開閉弁46を含む制御弁ユニットの具体的構成については後に詳述する。
【0027】
開閉弁43は、室内凝縮器3と室外熱交換器5とをつなぐ主通路の開度を調整する。開閉弁43は、その主通路を開閉する弁部と、その弁部を駆動するソレノイドを備え、供給電流の有無によって弁部を開閉する。また、主通路を開閉弁43の前後で迂回するバイパス通路が設けられ、そのバイパス通路にオリフィス44が設けられている。オリフィス44の開口面積は、開閉弁43の開弁時の開口面積よりも十分に小さいが、このように開閉弁43と並列にオリフィス44が設けられることで、開閉弁43の閉弁時においても所定流量の冷媒の流れが許容される。オリフィス44は、膨張装置としても機能する。
【0028】
逆止弁45は、第3通路23におけるバイパス通路25との合流点の上流側に設けられている。逆止弁45は、バイパス通路25を通過した冷媒が室外熱交換器5側へ逆流することを防止する機械式の弁として構成されている。
【0029】
以上のように構成された車両用冷暖房装置1は、制御部100により制御される。制御部100は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、入出力インターフェース等を備える。制御部100には、車両用冷暖房装置1に設置された図示しない各種センサ・スイッチ類からの信号が入力される。制御部100は、車両の乗員によりセットされた室温を実現するために各アクチュエータの制御量を演算し、各アクチュエータの駆動回路に制御信号を出力する。制御部100は、切替弁41,制御弁42,開閉弁43,開閉弁46などの電気駆動弁の開閉制御のほか、圧縮機2,室内送風機12,室外送風機16およびエアミックスドア14の駆動制御も実行する。
【0030】
制御部100は、車室内外の温度、蒸発器7の吹き出し空気温度等、各種センサにて検出された所定の外部情報に基づいて各電気駆動弁の開閉有無を決定し、各アクチュエータに電流を供給する。このような制御により、図示のように、圧縮機2は、その吸入室を介して吸入圧力Psの冷媒を導入し、これを圧縮して吐出圧力Pdの冷媒として吐出する。
【0031】
次に、本実施形態の冷凍サイクルの動作について説明する。図2は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。(A)は冷房運転時の状態を示し、(B)は特定暖房運転時の状態を示し、(C)は通常暖房運転時の状態を示し、(D)は特殊暖房運転時の状態を示している。なお、「特定暖房運転」は、暖房運転において特に除湿の機能を高めた運転状態である。「特殊暖房運転」は、室外熱交換器5を機能させない運転状態である。
【0032】
各図の上段には冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図が示されている。その横軸がエンタルピーを表し、縦軸が各種圧力を表している。各図の下段には、冷凍サイクルの動作状態が示されている。図中の太線および矢印が冷媒の流れを示し、符号a〜hはモリエル線図のそれと対応している。また、図中の「×」は冷媒の流れが遮断されていることを示している。なお、同図の下段は図1に対応するが、エアミックスドア14等の図示を省略するなど便宜上簡略表記されている。
【0033】
図2(A)に示すように、冷房運転時においては、切替弁41の第1弁部が開弁状態とされ第2弁部が閉弁状態とされる。そして、開閉弁43が開弁状態とされる。一方、制御弁42が閉弁状態とされ開閉弁46が開弁状態とされる。このため、バイパス通路25,26が遮断され、圧縮機2から吐出冷媒は室外熱交換器5および蒸発器7に導かれる。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3および室外熱交換器5を経ることで凝縮される(b点→e点)。そして、室外熱交換器5を経由した冷媒が受液器6にて気液分離され、その液冷媒が膨張弁9にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり(f点→g点)、蒸発器7に導入される。蒸発器7の入口に導入された冷媒は、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し(g点→h点)、車室内の空気を冷却する。図示の例では、蒸発器7の出口側に過熱度SHが発生している。
【0034】
図2(B)に示すように、特定暖房運転時においては、切替弁41の第1弁部が開弁状態とされ第2弁部が閉弁状態とされる。そして、開閉弁43が閉弁状態とされる。一方、制御弁42および開閉弁46がともに開弁状態とされる。このため、室外熱交換器5から導出された冷媒は、一方で蒸発器7に導かれ、他方でバイパス通路26を介して圧縮機2に導かれる。
【0035】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮され(b点→c点)、オリフィス44にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり(c点→d点)、室外熱交換器5を通過して蒸発される(d点→e点)。室外熱交換器5を通過した冷媒は、さらに受液器6にて気液分離される(e点→f点)。そして、受液器6の液相部の液冷媒が膨張弁9にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり(f点→g点)、蒸発器7に導入される。蒸発器7に導入された冷媒は、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し(g点→h点)、車室内の空気を除湿する。一方、受液器6の気相部のガス冷媒がバイパス通路26を介して圧縮機2に導かれる。その際、そのガス冷媒は、蒸発器7から導出された冷媒と第4通路24との合流点にて混合された形で圧縮機2に導かれる。
【0036】
このとき、制御部100は、室外熱交換器5による熱吸収と蒸発器7による除湿とを適正に行うべく、室外熱交換器5における冷媒の蒸発量と蒸発器7における冷媒の蒸発量との比率を適正に調整する。そのために、制御弁42の開度を調整して受液器6における圧力を調整し、それにより室外熱交換器5の蒸発圧力Poを制御する。具体的には、室外熱交換器5の蒸発圧力Poと蒸発器7の出口の圧力Peとの差圧ΔP=Po−Peが適正となるよう制御弁42の開度を制御することで、循環する冷媒を室外熱交換器5と蒸発器7とで蒸発させる比率を調整する。なお、圧力Peは、圧縮機2の吸入圧力Psに実質的に等しくなる。
【0037】
すなわち、差圧ΔPが大きくなると、室外熱交換器5における蒸発量が相対的に小さくなる(蒸発器7における蒸発量が相対的に大きくなる)。逆に、差圧ΔPが小さくなると、室外熱交換器5における蒸発量が相対的に大きくなる(蒸発器7における蒸発量が相対的に小さくなる)。制御部100は、その差圧ΔPが適正となるように制御することで、特定暖房運転時における除湿機能を確保する。なお、本実施形態では、室外熱交換器5の蒸発圧力Poを室外熱交換器5の出口側の温度Toを検出することで特定する。また、蒸発器7の出口の圧力Peを蒸発器7の入口側の温度Teを検出することで特定する。
【0038】
図2(C)に示すように、通常暖房運転時においては切替弁41の第1弁部が開弁状態とされ第2弁部が閉弁状態とされる。そして、開閉弁43が閉弁状態とされる。一方、制御弁42が全開状態とされ、開閉弁46が閉弁状態とされる。このため、室外熱交換器5から導出された冷媒はバイパス通路26を介して圧縮機2に導かれる。つまり、冷媒が蒸発器7を迂回するため蒸発器7が実質的に機能しなくなり、室外熱交換器5のみが蒸発器として機能するようになる。すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮され(b点→c点)、オリフィス44にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり(c点→d点)、室外熱交換器5を通過して蒸発される(d点→e点)。室外熱交換器5を通過した冷媒は、受液器6、制御弁42を経て圧縮機2に戻る。
【0039】
図2(D)に示すように、特殊暖房運転時においては、切替弁41の第1弁部が閉弁状態とされ第2弁部が開弁状態とされる。一方、制御弁42が閉弁状態とされ、開閉弁46が開弁状態とされる。このため、室内凝縮器3から導出された冷媒は、バイパス通路25を介して受液器6に導かれる。つまり、冷媒が室外熱交換器5を迂回するため室外熱交換器5が実質的に機能しなくなる。すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経ることで凝縮される(b点→c点)。そして、室内凝縮器3を経由した冷媒が受液器6にて気液分離され、その液冷媒が膨張弁9にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり(f点→g点)、蒸発器7に導入される。蒸発器7に導入された冷媒は、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し(g点→h点)、車室内の空気を除湿する。このような特殊冷暖房運転は、外部からの吸熱が困難な場合、例えば車両が極寒状況におかれた場合などに有効に機能する。
【0040】
次に、受液器6および制御弁ユニット50(制御弁42,開閉弁46)の具体的構成について説明する。図3は、受液器および制御弁ユニットの具体的構成を表す断面図である。本実施形態では図示のように、受液器6と制御弁ユニット50とが直接接続されて受液供給ユニットを構成している。受液器6は、上流側から導入される冷媒を収容するタンク60と、タンク60内に収容されて気液分離されたガス冷媒を抽出して制御弁42へ導く内部配管62とを備える。タンク60の一方の上端近傍には入口ポート64が設けられ、下端近傍には第1出口ポート66と第2出口ポート68が設けられている。入口ポート64は、第3通路23の上流側配管に接続される。一方、第1出口ポート66は制御弁ユニット50の第1入口ポート112に接続され、第2出口ポート68は制御弁ユニット50の第2入口ポート114に接続されている。
【0041】
内部配管62はL字状に形成され、その一端が第2出口ポート68に接続され、他端がタンク60内の上端近傍の入口ポート64よりも高い位置に開口している。入口ポート64から冷媒が導入されると、タンク60の上下にガス冷媒が溜められる気相部72と液冷媒が溜められる液相部74とが自ずと形成される。液冷媒は、第1出口ポート66および第1入口ポート112を介して制御弁ユニット50に導入され、開閉弁46を経由して第1出口ポート116から蒸発器7に向けて導出される。ガス冷媒は、第2出口ポート68および第2入口ポート114を介して制御弁ユニット50に導入され、制御弁42を経由して第2出口ポート118から圧縮機2に向けて導出される。
【0042】
図4は、制御弁ユニットの具体的構成を表す断面図である。
制御弁ユニット50は、共用のボディ110に制御弁42および開閉弁46を組み付けた集合弁として構成されている。制御弁42と開閉弁46は、共用のアクチュエータであるモータユニット120により駆動される。ボディ110は有底円筒状の本体を有し、その一方の側部の下半部には第1入口ポート112および第2入口ポート114が設けられ、他方の側部には下半部に第1出口ポート116が設けられ、上半部に第2出口ポート118が設けられている。ボディ110の上端開口部はモータユニット120により封止されている。
【0043】
ボディ110における第2入口ポート114と第2出口ポート118とをつなぐ冷媒通路には弁孔122が設けられ、その下流側開口端部に弁座124が形成されている。弁孔122の下流側には弁体126が対向配置され、弁体126が弁座124に着脱することにより制御弁42を開閉する。弁体126は、その中央部を貫通する作動ロッド128により軸線方向に一体動作可能に支持されている。弁体126とボディ110との間には、弁体126を閉弁方向に付勢するスプリング130が介装されている。
【0044】
モータユニット120は、ロータ132とステータ134とを含むステッピングモータとして構成されている。弁作動体136は、作動ロッド128を支持する一方、モータユニット120のロータ132に嵌合している。弁作動体136は、モータユニット120の回転駆動力を受けて回転し、その回転力を並進力に変換する。すなわち、弁作動体136は回転により軸線方向に変位し、作動ロッド128を介して弁体126を開閉方向に駆動する。制御部100は、設定開度に応じた駆動ステップ数を演算し、ステータ134の励磁コイルに駆動電流(駆動パルス)を供給する。それによりロータ132が回転し、弁作動体136が回転駆動されて制御弁42の開度が設定開度に調整される。
【0045】
一方、ボディ110の下半部には、第1入口ポート112と第2入口ポート114とを区画する区画壁140が設けられ、その区画壁140の中央部には円ボス状のガイド部142が形成されている。また、ボディ110における第1入口ポート112と第1出口ポート116とをつなぐ冷媒通路には弁孔144が設けられ、その下流側開口端部に弁座146が形成されている。弁孔144は、弁孔122と同軸状に形成されている。弁孔144の下流側には弁体148が対向配置され、弁体148が弁座146に着脱することにより開閉弁46を開閉する。弁体148は、長尺状の作動ロッド150の下端部に一体に形成されている。
【0046】
作動ロッド150は、その上半部がガイド部142に摺動可能に支持されている。作動ロッド150は、その上端面が作動ロッド128の下端面に当接し、作動ロッド128と同軸状に一体動作可能に設けられている。作動ロッド150の下半部は弁孔144を貫通し、その下端部に弁体148が連設されている。弁体148とボディ110との間には、弁体148を閉弁方向に付勢するスプリング152が介装されている。
【0047】
次に、制御弁ユニット50の動作について説明する。図4〜図6は、制御弁ユニットの動作過程を例示する説明図である。図4は制御弁42の全開状態(開閉弁46の閉弁状態)を表し、図5は制御弁42の閉弁状態(開閉弁46の開弁状態)を表し、図6は制御弁42の制御状態(開閉弁46の開弁状態)を表している。
【0048】
制御部100は、冷凍サイクルの運転状態に応じて制御弁42および開閉弁46の開閉有無および制御弁42の設定開度を演算する。そして、その設定開度に応じたステッピングモータの駆動ステップ数を演算し、ステータ134の励磁コイルに駆動電流(駆動パルス)を供給する。それによりロータ132を回転させて弁作動体136を駆動し、制御弁42および開閉弁46をそれぞれ開閉させる。
【0049】
すなわち、図2(A)の冷房運転状態および図2(D)の特殊暖房運転状態においては、図5に示すように、ロータ132を一方向に回転させて制御弁42を閉弁状態とし、開閉弁46を全開状態とする。すなわち、弁作動体136を下方に駆動することで作動ロッド128が下方に動作する。その結果、スプリング130の付勢力により弁体126が弁座124に着座し、制御弁42が閉弁状態となる。また、その作動ロッド128に作動ロッド150が連動するため、弁体148が下方へ大きく変位し、開閉弁46が全開状態となる。
【0050】
図2(C)の通常暖房運転状態においては、図4に示すように、ロータ132を他方向に回転させて制御弁42を全開状態とし、それにより開閉弁46を閉弁状態とする。このとき、スプリング152の付勢力により弁体148が弁座146に着座し、開閉弁46の閉弁状態が維持される。ただし、第1入口ポート112から導入された液冷媒を、作動ロッド150とガイド部142との間のクリアランスを介して制御弁42側に漏洩させることができ、液冷媒に含まれる潤滑オイルを圧縮機2に戻すことが可能となる。
【0051】
図2(B)の特定暖房運転状態においては、図6に示すように、ロータ132を回転させて制御弁42を設定開度に調整する。すなわち、上述のように、制御部100は、室外熱交換器5の蒸発圧力Poと蒸発器7の出口の圧力Pe(実質的に吸入圧力Psに等しい)との差圧ΔPが適正となるよう制御弁42の開度を制御することで、循環する冷媒を室外熱交換器5と蒸発器7とで蒸発させる比率を調整する。なお、図示のように開閉弁46は制御弁42よりも相当小口径であるため、制御弁42の制御状態においては開閉弁46の全開状態を維持することができる。
【0052】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用冷暖房装置は、制御弁ユニットの構成が異なる以外は第1実施形態とほぼ同様である。このため、第1実施形態と同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図7は、第2実施形態に係る受液器および制御弁ユニットの具体的構成を表す断面図である。図8は、制御弁ユニットの構成を表す断面図である。
【0053】
図7に示すように、本実施形態の受液供給ユニットは、受液器6と制御弁ユニット250とを組み付けて構成されている。制御弁ユニット250は、制御弁242および開閉弁246を一体に組み付けた集合弁として構成されている。制御弁242は、その上流側と下流側との差圧が供給電流値に応じた差圧となるよう流体の流れを制御可能なパイロット作動式の定差圧弁として構成されている点で第1実施形態の制御弁42と異なっている。
【0054】
図8に示すように、制御弁242は、ボディ110に主弁205とパイロット弁206とを同軸状に収容するようにして構成される。ボディ110の内部中央に設けられた区画壁の内周部により主弁孔222が形成され、その上流側開口端部により主弁座224が形成されている。主弁孔222の下流側の圧力室に弁駆動体230が配設され、上流側の圧力室に主弁体226が配設されている。そして、弁駆動体230と主弁体226とが主弁孔222を貫通するようにして軸線方向に一体に組み付けられている。弁駆動体230の内周上半部には、弁作動体136に外周に形成された雄ねじ部に螺合する雌ねじ部が形成されている。すなわち、弁作動体136の回転により弁作動体136と弁駆動体230との相対位置が変化し、それにより後述のように、制御弁242の設定差圧を変更できるようになっている。
【0055】
弁駆動体230は、ボディ110の内周面にそって軸線方向に摺動し、主弁孔222の下流側の圧力室を背圧室260と低圧室262とに区画する。また、弁駆動体230には、背圧室260と低圧室262とを連通するオリフィス264が設けられている。弁駆動体230の内部中央には半径方向内向きに延出した区画壁が設けられており、その内周部によりパイロット弁孔266が形成されている。パイロット弁孔266の上流側開口端部に弁座268が形成され、下流側開口端部により弁座270が形成されている。
【0056】
パイロット弁孔266の上流側の圧力室には小弁体272が配設され、下流側の圧力室にはパイロット弁体274が配設されている。パイロット弁体274は、作動ロッド128の下端部に一体に形成されている。作動ロッド128は、その上半部が弁作動体136に摺動可能に支持されているが、上半部と下半部との境界に設けられた段部が弁作動体136に係止されることで、その弁作動体136に対する相対変位が規制される。そして、パイロット弁体274が下流側から弁座270に着脱することによりパイロット弁206を開閉し、小弁体272が上流側から弁座268に着脱することにより止め弁276が開閉される。なお、止め弁276は、第2入口ポート114と第2出口ポート118とをつなぐ冷媒通路を、主弁205の閉弁時に確実に遮断できるようにするものである。
【0057】
パイロット弁体274と弁作動体136との間には、パイロット弁体274を閉弁方向に付勢するスプリング278が介装されている。一方、小弁体272と弁駆動体230との間には、小弁体272を閉弁方向に付勢するスプリング280が介装されている。その結果、パイロット弁体274と小弁体272とは互いに押し付けられるようにしてパイロット弁206および止め弁276の開閉方向に一体に動作する。そして、スプリング278の設定荷重によりパイロット弁206の開弁圧が設定される。このスプリング278の設定荷重は、弁作動体136とパイロット弁体274との相対位置により変更することができる。すなわち、弁作動体136の回転により弁作動体136と弁駆動体230との相対位置を変化させることでスプリング278の設定荷重を変更でき、それにより制御弁242の設定差圧を変更できるようになっている。
【0058】
一方、開閉弁246は、制御弁242に連動するようボディ110の下半部に設けられている。すなわち、弁孔144の上流側開口端部に弁座146が形成され、弁孔144の上流側の圧力室に弁体148が配設されている。弁体148が上流側から弁座146に着脱することにより開閉弁246を開閉する。弁体148は、作動ロッド249の下端部に一体に形成されている。
【0059】
作動ロッド249は、その上端面が弁駆動体230下端面に当接し、弁駆動体230と同軸状に一体動作可能に設けられている。これにより、主弁体226と弁体148とが一体動作可能となっている。弁体148とボディ110との間には、弁体148を開弁方向に付勢するスプリング152が介装されている。
【0060】
次に、制御弁ユニット250の動作について説明する。図8〜図10は、制御弁ユニットの動作過程を例示する説明図である。図8は制御弁242の閉弁状態(開閉弁246の開弁状態)を表し、図9は制御弁242の全開状態(開閉弁246の閉弁状態)を表し、図10は制御弁242の差圧制御状態(開閉弁246の開弁状態)を表している。
【0061】
制御部100は、冷凍サイクルの運転状態に応じて制御弁242および開閉弁246の開閉有無および制御弁242の設定差圧を演算する。そして、その設定差圧を実現する開度を確保するようステッピングモータの駆動ステップ数を演算し、ステータ134の励磁コイルに駆動電流(駆動パルス)を供給する。それによりロータ132を回転させて弁作動体136を駆動し、制御弁242および開閉弁246をそれぞれ開閉させる。
【0062】
すなわち、図2(A)の冷房運転状態および図2(D)の特殊暖房運転状態においては、図8に示すように、ロータ132を一方向に回転させて制御弁242を閉弁状態とし、開閉弁246を開弁状態とする。すなわち、弁作動体136を上死点まで駆動することで、スプリング278の荷重をほぼゼロにする。その結果、スプリング280の付勢力によって止め弁276を閉弁状態とする。これにより、弁駆動体230の内部通路が遮断されるため、背圧室260の中間圧力Ppが下流側圧力Psとなり、弁駆動体230が閉弁方向に動作する。その結果、主弁体226が主弁座224に着座して主弁205を閉弁状態とする。このように、主弁205と止め弁276が閉弁されるため、第2入口ポート114と第2出口ポート118とをつなぐ冷媒通路は確実に遮断される。
【0063】
図2(C)の通常暖房運転状態においては、図9に示すように、ロータ132を他方向に回転させて制御弁242を全開状態とし、それにより開閉弁246を閉弁状態とする。このとき、弁体148が弁駆動体230に連動して弁座146に着座し、開閉弁246の閉弁状態を維持する。具体的には、設定差圧をゼロの状態とすることで、スプリング278とスプリング280との力をつり合わせてパイロット弁206および止め弁276を開弁状態とする。これにより、第2入口ポート114から導入される上流側圧力Poが弁駆動体230の内部通路を通って背圧室260に導入される。その結果、背圧室260の中間圧力Ppが上昇し、低圧室262の下流側圧力Psとの差圧(Pp−Ps)が大きくなり、弁駆動体230が下死点まで移動する。このとき、作動ロッド249が弁駆動体230に連動し、弁体148が弁座146に着座する。
【0064】
図2(B)の特定暖房運転状態においては、図10に示すように、ロータ132を回転させて制御弁242の設定差圧を調整する。すなわち、制御部100は、室外熱交換器5の蒸発圧力Poと蒸発器7の出口の圧力Pe(実質的に吸入圧力Psに等しい)との差圧ΔPが設定差圧となるよう制御弁242の開度を制御することで、循環する冷媒を室外熱交換器5と蒸発器7とで蒸発させる比率を調整する。なお、図示のように開閉弁246は制御弁242よりも相当小口径であるため、制御弁242の差圧制御状態においても開閉弁246の全開状態を維持できる。
【0065】
この差圧制御状態において、差圧(Po−Ps)が設定差圧よりも小さくなると、上流側圧力Poと中間圧力Ppとの差圧(Po−Pp)が小さくなるため、パイロット弁体274が閉弁方向に動作する。この結果、中間圧力Ppが低下し、主弁体226が閉弁方向に動作して主弁205の開度を小さくする。その結果、差圧(Po−Ps)が大きくなる方向に変化する。一方、差圧(Po−Ps)が設定差圧よりも大きくなると、上流側圧力Poと中間圧力Ppとの差圧(Po−Pp)が大きくなるため、パイロット弁体274が開弁方向に動作する。この結果、中間圧力Ppが上昇し、主弁体226が開弁方向に動作して主弁205の開度を大きくする。その結果、差圧(Po−Ps)が小さくなる方向に変化する。すなわち、パイロット弁206の動作により、差圧(Po−Ps)が設定差圧となるよう主弁205の開度が調整される。
【0066】
なお、上述のように、設定差圧の変更については、モータユニット120を駆動して弁作動体136と弁駆動体230との相対位置を変化させ、スプリング278の設定荷重を変更することで容易に実現することができる。また、図8に示した制御弁242の閉弁状態から開弁させる際にはその前後差圧が大きくなっていることが想定される。その場合には、モータユニット120を駆動して弁作動体136を下死点に変位させることでスプリング278の荷重を最大にし、止め弁276を一旦開弁させる。それにより、背圧室260の中間圧力Ppを高めて主弁205を開弁させることができる。
【0067】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0068】
上記実施形態では、図1に示したように、受液器6と膨張弁9との間に開閉弁46を設ける例を示したが、変形例においては開閉弁46を省略してもよい。
【0069】
上記実施例では、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車に適用した例を示したが、内燃機関を搭載した自動車や、内燃機関と電動機を同載したハイブリッド式の自動車に提供することが可能であることは言うまでもない。上記実施形態では、圧縮機2として電動圧縮機を採用した例を示したが、エンジンの回転を利用して容量可変を行う可変容量圧縮機を採用することもできる。
【符号の説明】
【0070】
1 車両用冷暖房装置、 2 圧縮機、 3 室内凝縮器、 5 室外熱交換器、 6 受液器、 7 蒸発器、 9 膨張弁、 21 第1通路、 22 第2通路、 23 第3通路、 24 第4通路、 25,26 バイパス通路、 27 第1分岐通路、 28 第2分岐通路、 32 差圧弁、 41 切替弁、 100 制御部、 42 制御弁、 46 開閉弁、 50 制御弁ユニット、 64 入口ポート、 66 第1出口ポート、 68 第2出口ポート、 110 ボディ、 112 第1入口ポート、 114 第2入口ポート、 62 内部配管、 60 タンク、 116 第1出口ポート、 118 第2出口ポート、 122 弁孔、 124 弁座、 126 弁体、 128 作動ロッド、 130 スプリング、 140 区画壁、 142 ガイド部、 144 弁孔、 150 作動ロッド、 148 弁体、 152 スプリング、 134 ステータ、 120 モータユニット、 146 弁座、 136 弁作動体、 250 制御弁ユニット、 242 制御弁、 222 主弁孔、 230 弁駆動体、 226 主弁体、 205 主弁、 260 背圧室、 262 低圧室、 266 パイロット弁孔、 272 小弁体、 274 パイロット弁体、 270 弁座、 206 パイロット弁、 268 弁座、 276 止め弁、 278,280 スプリング、 246 開閉弁、 249 作動ロッド、 224 主弁座。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、第1の蒸発器、膨張装置および第2の蒸発器を直列につなぐ冷媒循環通路を備えた車両用冷暖房装置であって、
前記第1の蒸発器と前記第2の蒸発器との間に設けられ、前記第1の蒸発器を通過した冷媒を気液分離して溜めおき、その液相部が前記膨張装置を介して前記第2の蒸発器に接続され、その気相部がバイパス通路を介して前記第2の蒸発器を迂回するように前記圧縮機に接続される受液器と、
外部から電気的に開閉駆動されて前記バイパス通路の開度を調整することにより前記受液器における冷媒の圧力を調整し、それにより前記第1の蒸発器の蒸発圧力を制御する制御弁と、
を備えることを特徴とする車両用冷暖房装置。
【請求項2】
車室外に配置され、冷房運転時に冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時に前記第1の蒸発器として冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する室外熱交換器と、
前記室外熱交換器とは別に前記凝縮器として冷媒を放熱させる補助凝縮器と、
車室内に配置され、前記第2の蒸発器として冷媒を蒸発させる室内蒸発器と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用冷暖房装置。
【請求項3】
前記膨張装置として、前記第2の蒸発器の出口側の温度と圧力を感知して弁開度を調整し、前記受液器から導出された冷媒を減圧膨張させる温度式膨張弁と、
前記受液器と前記温度式膨張弁との間に設けられ、外部から電気的に開閉駆動されて前記受液器から前記第2の蒸発器への冷媒の供給を許容または遮断する開閉弁と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の車両用冷暖房装置。
【請求項4】
前記制御弁と前記開閉弁とが、共用のアクチュエータにより連動するように開閉駆動されることを特徴とする請求項3に記載の車両用冷暖房装置。
【請求項5】
前記制御弁が、弁開度が外部から設定された設定開度となるよう動作する比例弁であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両用冷暖房装置。
【請求項6】
前記制御弁が、前後差圧が外部から設定された設定差圧となるように動作する定差圧弁であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両用冷暖房装置。
【請求項7】
共用のボディとアクチュエータを有する比例弁と開閉弁とを備えた集合弁であって、
前記ボディは、第1入口ポートと、第1出口ポートと、前記第1入口ポートと前記第1出口ポートとをつなぐ第1冷媒通路に設けられた主弁孔と、第2入口ポートと、第2出口ポートと、前記第2入口ポートと前記第2出口ポートとをつなぐ第2冷媒通路に前記主弁孔と同軸状に設けられた副弁孔とを含み、
前記比例弁は、前記アクチュエータにより前記主弁孔の開度が設定開度となるように駆動される主弁体を含み、
前記開閉弁は、前記アクチュエータにより前記主弁体に連動するように駆動されて前記副弁孔を開閉する副弁体を備えることを特徴とする集合弁。
【請求項8】
共用のボディとアクチュエータを有する定差圧弁と開閉弁とを備えた集合弁であって、
前記ボディは、第1入口ポートと、第1出口ポートと、前記第1入口ポートと前記第1出口ポートとをつなぐ第1冷媒通路に設けられた主弁孔と、第2入口ポートと、第2出口ポートと、前記第2入口ポートと前記第2出口ポートとをつなぐ第2冷媒通路に前記主弁孔と同軸状に設けられた副弁孔とを含み、
前記定差圧弁は、前記アクチュエータにより上流側と下流側との設定差圧が設定され、前記主弁孔の開閉方向に駆動される主弁体を含み、
前記開閉弁は、前記アクチュエータにより前記主弁体に連動するように駆動されて前記副弁孔を開閉する副弁体を備えることを特徴とする集合弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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