車両用制動装置
【課題】ブレーキ操作部材が操作されていなくても、マスタ系統の失陥を検出することができる車両用制動装置を提供する。
【解決手段】本発明は、マスタピストン(14、15)が駆動されてマスタシリンダ圧を発生させる車両用制動装置において、ブレーキ液を蓄圧する蓄圧部(431)と、蓄圧部内のブレーキ液を使用して、ブレーキ操作部材の操作に関わらずサーボ圧を発生可能に構成されているサーボ圧発生部(4)と、蓄圧部内のブレーキ液の消費量に相関するブレーキ液消費量相関値を検出するブレーキ液消費量相関値検出手段(73、74、75)と、ブレーキ操作部材が操作されていない状態でサーボ圧発生部によりサーボ圧のみでマスタピストンを駆動させ、その際にブレーキ液消費量相関値検出手段により検出されているブレーキ液消費量相関値に基づいて、マスタ系統の失陥を検出する失陥検出手段(6)と、を備える。
【解決手段】本発明は、マスタピストン(14、15)が駆動されてマスタシリンダ圧を発生させる車両用制動装置において、ブレーキ液を蓄圧する蓄圧部(431)と、蓄圧部内のブレーキ液を使用して、ブレーキ操作部材の操作に関わらずサーボ圧を発生可能に構成されているサーボ圧発生部(4)と、蓄圧部内のブレーキ液の消費量に相関するブレーキ液消費量相関値を検出するブレーキ液消費量相関値検出手段(73、74、75)と、ブレーキ操作部材が操作されていない状態でサーボ圧発生部によりサーボ圧のみでマスタピストンを駆動させ、その際にブレーキ液消費量相関値検出手段により検出されているブレーキ液消費量相関値に基づいて、マスタ系統の失陥を検出する失陥検出手段(6)と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者によるブレーキ操作量に応じて車両に付与する制動力を制御する車両用制動装置に関する。
【0002】
運転者によるブレーキ操作量に応じて車両に付与する制動力を制御する車両用制動装置の一例として、例えば特開2008−87617号公報(特許文献1)に挙げられる車両用制動装置が知られている。この車両用制動装置では、入力ピストンと加圧ピストンが所定間隔(ストローク)をもって離間した状態で保持されており、入力ピストンの移動に応じて、ホイールシリンダにはアキュムレータとリニア弁とによって発生された制御油圧に基づく制動力が付与される。特許文献1に記載の車両用制動装置では、ブレーキペダルが踏まれることでマスタカット弁の故障を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−87617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、ブレーキペダルを踏まなければマスタカット弁の故障を検出できず、しかもマスタ系統の失陥は検出することができない構成となっている。これでは、運転手の協力がなければ故障検出できないこととなる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、ブレーキ操作部材が操作されていなくても、マスタ系統の失陥を検出することができる車両用制動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、ブレーキ操作部材(10)の操作力に対応する力及びサーボ室(1A)内のサーボ圧に対応する力のいずれかによってマスタピストン(14、15)が駆動されて、マスタシリンダ圧を発生させる車両用制動装置において、ブレーキ液を蓄圧する蓄圧部(431)と、前記蓄圧部内のブレーキ液を使用して、前記ブレーキ操作部材の操作に関わらず前記サーボ圧を発生可能に構成されているサーボ圧発生部(4)と、前記蓄圧部内のブレーキ液の消費量に相関するブレーキ液消費量相関値を検出するブレーキ液消費量相関値検出手段(73、74、75)と、前記ブレーキ操作部材が操作されていない状態で前記サーボ圧発生部により前記サーボ圧のみで前記マスタピストンを駆動させ、その際に前記ブレーキ液消費量相関値検出手段により検出されているブレーキ液消費量相関値に基づいて、マスタ系統の失陥を検出する失陥検出手段(6)と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記マスタピストンの前進に伴って体積が減少する検証室(1C)を備え、前記失陥検出手段(6)は、前記ブレーキ液消費量相関値としての前記サーボ圧及び前記検証室の圧力に基づいて、前記マスタ系統の失陥を検出することを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2において、前記マスタピストンの前進に伴って体積が減少し、前記マスタシリンダ圧を発生させる液圧室(1D、1E)と、前記液圧室とホイールシリンダとの間に配置され、前記液圧室から供給されるブレーキ液を調整可能に構成され、調整されたブレーキ液を前記ホイールシリンダに供給する調整供給手段(53)と、を備え、前記失陥検出手段(6)は、前記調整供給手段の入力側に設けられた入力弁(531)を閉弁させた上で、前記マスタ系統の失陥検出を行うことを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項3において、前記マスタピストンの前進に伴って体積が減少し、前記マスタシリンダ圧を発生させる液圧室(1D、1E)と、前記液圧室とホイールシリンダとの間に配置され、前記液圧室から供給されるブレーキ液を調整可能に構成され、調整されたブレーキ液を前記ホイールシリンダに供給する調整供給手段(53)と、前記液圧室と前記調整供給手段との間に配置され、前記液圧室と前記調整供給手段とを接続/非接続させる切替弁を備え、前記失陥検出手段(6)は、前記切替弁を閉弁させた上で、前記マスタ系統の失陥検出を行うことを特徴とする。
【0010】
なお、本明細書において「ブレーキ操作部材の操作力に対応する力」とは、主に運転手がブレーキ操作部材を踏む力によってマスタピストンに加わる力(直接的及び反力室の油圧による間接的な力を含む)であり、それにより機械的・構造的にサーボ圧が生ずる場合、当該サーボ圧によりマスタピストンに加わる力を含む概念である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、サーボ圧発生部がブレーキ操作部材の操作に関わらずサーボ圧を発生させることができ、そのサーボ圧のみでマスタピストンを駆動した場合のブレーキ液消費量相関値を見ることで、マスタ系統の失陥が検出できる。つまり、本発明によれば、ブレーキ操作部材が踏まれることなしに、マスタ系統失陥が検出できる。
【0012】
ここで、マスタ系統に失陥がある場合、サーボ圧の加圧に対して正常時よりもマスタピストンが前進してしまう。請求項2に記載の発明によれば、マスタ系統失陥時、検証室の圧力がサーボ圧に対して正常時よりも大きくなる。したがって、本発明によれば、サーボ圧と検証室の圧力とに基づいてマスタ系統失陥が検出できる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、マスタ系統の失陥のうち液圧室から入力弁までの失陥を検出することができる。すなわち、液圧室から入力弁までの失陥とホイールシリンダ及び調整供給手段の失陥との切り分けが可能となる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3同様、マスタ系統の失陥のうち液圧室から切替弁までの失陥を検出することができる。すなわち、液圧室から切替弁までの失陥とホイールシリンダ及び調整供給手段の失陥との切り分けが可能となる。切替弁としては別途設けたものであっても、あるいは予め設置された別用途の弁であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態の車両用制動装置の構成を示す部分断面説明図である。
【図2】本実施形態のレギュレータの構成を示す部分断面説明図である。
【図3】本実施形態の異常検出制御に関するフローチャートである。
【図4】異常検出制御に関するフローチャートである。
【図5】異常検出制御に関する処理の流れを示す説明図である。
【図6】異常検出制御に関する処理の流れを示す説明図である。
【図7】異常検出制御に関する処理の流れを示す説明図である。
【図8】異常検出制御に関する処理の流れを示す説明図である。
【図9】異常検出制御に関する処理の流れを示す説明図である。
【図10】異常検出制御に関する処理の流れを示す説明図である。
【図11】本実施形態の変形態様の異常検出制御に関するフローチャートである。
【図12】本実施形態の変形態様の車両用制動装置の構成を示す部分断面説明図である。
【図13】本実施形態のレギュレータの変形態様を示す構成図である。
【図14】本実施形態のレギュレータの変形態様を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図は概念図であり、細部構造の寸法まで規定するものではない。
【0017】
本実施形態の車両用制動装置は、図1に示すように、主に、マスタシリンダ1と、反力発生装置2と、離間ロック弁22と、反力弁3と、サーボ圧発生装置4と、ブレーキ装置5と、ブレーキECU6と、ブレーキECU6と通信可能な各種センサ72〜75と、を備えている。なお、本実施形態では、公知のハイブリッドECU(図示なし)がブレーキECU6に接続されている。
【0018】
(マスタシリンダ1)
マスタシリンダ1は、ブレーキ液をブレーキ装置5に提供するものであり、主に、メインシリンダ11と、カバーシリンダ12と、入力ピストン13と、第一マスタピストン14と、第二マスタピストン15と、を有している。
【0019】
メインシリンダ11は、一端に開口を有し他端に底面を有する有底略円筒状のシリンダである。以下、マスタシリンダ1については、メインシリンダ11の開口側を後方、メインシリンダ11の底面側を前方として説明する。メインシリンダ11は、内部に、メインシリンダ11の開口側と底面側とを分離するための内壁部111を有している。内壁部111中央には、軸方向(前後方向)に貫通する貫通孔111aが形成されている。
【0020】
また、メインシリンダ11の内部には、内壁部111よりも前方に、内径が小さくなっている部位112(前方)、113(後方)が存在する。つまり、小径部位112、113は、メインシリンダ11内周面の軸方向の一部全周から突出している。メインシリンダ11内部には、後述する両マスタシリンダ14、15が軸方向に摺動可能に配置されている。なお、内部と外部とを連通させるポート等については後述する。
【0021】
カバーシリンダ12は、略円筒状のシリンダ部121と、カップ状のカバー部122と、を有している。シリンダ部121は、メインシリンダ11の後端側に配置され、メインシリンダ11の開口に同軸的に嵌合されている。シリンダ部121の前方部位121aの内径は、後方部位121bの内径よりも大きい。また、前方部位121aの内径は、内壁部111の貫通孔111aの内径よりも大きい。
【0022】
カバー部122は、メインシリンダ11の開口及びシリンダ部121の後端側開口を塞ぐように、メインシリンダ11の後端部及びシリンダ部121の外周面に組み付けられている。カバー部122の底壁には貫通孔122aが形成されている。カバー部122は、軸方向に伸縮可能な弾性部材からなり、底壁が後方に付勢されている。
【0023】
入力ピストン13は、ブレーキペダル10の操作に応じてカバーシリンダ12内を摺動するピストンである。入力ピストン13は、前方に底面を有し後方に開口を有する有底略円筒状のピストンである。入力ピストン13の底面を構成する底壁131は、入力ピストン13の他の部位よりも径が大きくなっている。入力ピストン13は、底壁131がシリンダ部121の前方部位後端に位置するように配置されている。入力ピストン13は、シリンダ部121の後方部位121bに軸方向に摺動可能且つ液密的に配置されている。
【0024】
入力ピストン13の内部には、ブレーキペダル10の操作ロッド10a及びピボット10bが設置されている。操作ロッド10aは、入力ピストン13の開口及びカバー部材122の貫通孔122aを通って外部に突出し、ブレーキペダル10に接続されている。操作ロッド10aは、ブレーキペダル10の操作に連動して移動し、ブレーキペダル10踏み込み時にはカバー部122を軸方向に押し潰しながら前進する。操作ロッド10aの前進に伴って、入力ピストン13も前進する。
【0025】
第一マスタピストン14は、メインシリンダ11内に軸方向に摺動可能に配置されている。具体的に、第一マスタピストン14は、第一本体部141と、突出部142と、からなっている。第一本体部141は、メインシリンダ11内において、内壁部111の前方側に同軸的に配置されている。第一本体部141は、前方に開口を有し後方に底壁141aを有する有底略円筒状に形成されている。つまり、第一本体部141は、底壁141aと、周壁部141bと、からなっている。
【0026】
底壁141aは、内壁部111の前方でメインシリンダ11に軸方向に摺動可能且つ液密的に配置されている。周壁部141bは、底壁141aよりも小径の円筒状に形成され、底壁141a前方端面中央から前方に同軸的に延伸している。周壁部141bの前方部位は、小径部位112に軸方向に摺動可能且つ液密的に配置されている。周壁部141bの後方部位は、メインシリンダ11の内周面から離間している。
【0027】
突出部142は、第一本体部141の底壁141a端面中央から後方に突出した円柱状の部位である。突出部142は、内壁部111の貫通孔111aに、軸方向に摺動可能且つ液密的に配置されている。突出部142の後方部位は、貫通孔111aを介してシリンダ部121内部に位置している。突出部142の後方部位は、シリンダ部121内周面と離間している。突出部142の後端面は、入力ピストン13の底壁131と所定距離だけ離間している。第一マスタピストン14は、バネ等からなる付勢部材143により後方に付勢されている。
【0028】
ここで、第一本体部141の底壁141a後方端面、内壁部111前方端面、メインシリンダ11内周面、及び突出部142外周面により「サーボ室1A」が区画される。また、内壁部111後方端面、入力ピストン131外表面、シリンダ部121の前方部位121a内周面、及び突出部142外表面により「第一反力室1B」が区画される。また、小径部位112後端面(シール部材91を含む)、第一マスタピストン14の外周面、及びメインシリンダ11内周面により「第二反力室C」が区画されている。
【0029】
第二マスタピストン15は、メインシリンダ11内において、第一マスタピストン14の前方側に同軸的に配置されている。第二マスタピストン15は、前方に開口を有し後方に底壁151を有する有底略円筒状に形成されている。つまり、第二マスタピストン15は、底壁151と、底壁151と同径の周壁部152と、からなっている。底壁151は、第一マスタピストン14の前方で、小径部位112、113間に配置されている。底壁151を含む第二マスタピストン15の後方部位は、メインシリンダ11の内周面から離間している。周壁部152は、円筒状であって、底壁151から前方に同軸的に延伸している。周壁部152は、小径部位113に軸方向に摺動可能且つ液密的に配置されている。第二マスタピストン15は、バネ等からなる付勢部材153により後方に付勢されている。
【0030】
ここで、第二マスタピストン15外側表面、第一マスタピストン14前端面、第一マスタピストン内側表面、小径部位112前端面(シール部材92を含む)、小径部位113後端面(シール部材93を含む)、及び小径部位112、113間のメインシリンダ11内周面により「第一液圧室1D」が区画される。また、メインシリンダ11内底面111d、第二マスタピストン15前端面、第二マスタピストン15内側表面、小径部位113前端面(シール部材94を含む)、及びメインシリンダ11内周面により「第二液圧室1E」が区画される。
【0031】
マスタシリンダ1には、内部と外部を連通するポート11a〜11iが形成されている。ポート11aは、メインシリンダ11のうち内壁部111より後方に形成されている。ポート11bは、ポート11aと軸方向の同様の位置に、ポート11aに対向して形成されている。ポート11aとポート11bは、メインシリンダ11内周面とシリンダ部121の外周面との間の空間を介して連通している。ポート11aは配管161に接続されている。ポート11bは、リザーバ171に接続されている。つまり、ポート11aは、リザーバ171と連通している。
【0032】
また、ポート11bは、シリンダ部121及び入力ピストン13に形成された通路18により第一反力室1Bに連通している。通路18は、入力ピストン13が前進すると分断される。つまり、入力ピストン13が前進すると、第一反力室1Bとリザーバ171とは分断される。
【0033】
ポート11cは、ポート11aより前方に形成され、第一反力室1Bと配管162とを連通させている。ポート11dは、ポート11cより前方に形成され、サーボ室1Aと配管163とを連通させている。ポート11eは、ポート11dより前方に形成され、第二反力室1Cと配管164とを連通させている。
【0034】
ポート11fは、小径部位112の両シール部材91、92間に形成され、リザーバ172とメインシリンダ11内部とを連通させている。ポート11fは、第一マスタピストン14に形成された通路144を介して第一液圧室1Dに連通している。通路144は、第一マスタピストン14が前進するとポート11fと第一液圧室1Dが分断されるように、シール部材92の若干後方位置に形成されている。
【0035】
ポート11gは、ポート11fより前方に形成され、第一液圧室1Dと配管51とを連通させている。ポート11hは、小径部位113の両シール部材93、94間に形成され、リザーバ173とメインシリンダ11内部とを連通させている。ポート11gは、第二マスタピストン15に形成された通路154を介して第二液圧室1Eに連通している。通路154は、第二マスタピストン15が前進するとポート11gと第二液圧室1Eが分断されるように、シール部材94の若干後方位置に形成されている。ポート11iは、ポート11hより前方に形成され、第二液圧室1Eと配管52とを連通させている。
【0036】
また、マスタシリンダ1内には、適宜、Oリング等のシール部材(図面黒丸部分)が配置されている。シール部材91、92は、小径部位112に配置され、第一マスタピストン14の外周面に液密的に当接している。同様に、シール部材93、94は、小径部位113に配置され、第二マスタピストン15の外周面に液密的に当接している。また、入力ピストン13とシリンダ部121との間にもシール部材が配置されている。
【0037】
ストロークセンサ72は、ブレーキペダル10のストローク量(操作量)を検出するセンサであり、検出結果をブレーキECU6に送信する。
【0038】
(反力発生装置2)
反力発生装置2は、ストロークシミュレータ21を備えている。ストロークシミュレータ21は、ブレーキペダル10の操作に応じて第一反力室1B及び第二反力室1Cに反力圧を発生させる装置である。一般的に、ストロークシミュレータ21は、シリンダ211にピストン212が摺動可能に嵌合され、圧縮スプリング213によって前方に付勢されたピストン212の前面側にパイロット液室214が形成されて構成されている。ストロークシミュレータ21は、配管164及びポート11eを介して第二反力室1Cに接続され、配管164を介して離間ロック弁22及び反力弁3に接続されている。
【0039】
(離間ロック弁22)
離間ロック弁22は、常閉型の電磁弁(リニア弁)であり、ブレーキECU6により開閉が制御される。離間ロック弁22は、配管164と配管162とに接続され、両配管162、164とを接続/非接続させる。離間ロック弁22は、第一反力室1Bと第二反力室1Cとを接続/非接続させるための弁である。
【0040】
圧力センサ73は、主に反力室1B、1Cの圧力(反力圧)を検出するセンサであり、配管164に接続されている。圧力センサ73は、離間ロック弁22が開状態の場合、両反力室1B、1Cの圧力を検出し、離間ロック弁22が閉状態の場合、第二反力室1Cの圧力を検出する。
【0041】
(反力弁3)
反力弁3は、常開型の電磁弁であり、ブレーキECU6により開閉が制御される。反力弁3は、配管164と配管161とに接続され、両配管161、164とを接続/非接続させる。反力弁3は、反力室1B、1Cとリザーバ171とを接続/非接続させるための弁である。
【0042】
(離間ロック弁22及び反力弁3の制御)
ここで、ブレーキ操作時において、反力弁3と離間ロック弁22とのブレーキECU6による制御について説明する。ブレーキペダル10が踏まれると、入力ピストン13が前進し、通路18が分断されてリザーバ171と第一反力室1Bは遮断される。同時に、反力弁3が閉状態(開→閉)になり、離間ロック弁22が開状態(閉→開)になる。反力弁3が閉状態となることで、第二反力室1Cとリザーバ171とが遮断される。離間ロック弁22が開状態となることで、第一反力室1Bと第二反力室1Cとが連通する。つまり、入力ピストンが前進し且つ反力弁3が閉状態となることで、両反力室1B、1Cは、リザーバ171から遮断される。そして、ストロークシミュレータ21は、両反力室1B、1Cに、ストローク量に応じた反力圧を発生させる。
【0043】
(サーボ圧発生装置4)
サーボ圧発生装置4は、主に、減圧弁41と、増圧弁42と、圧力供給部43と、レギュレータ44と、を備えている。減圧弁41は、常開型の電磁弁であり、ブレーキECU6により流量が制御される。減圧弁41の一方は配管411を介して配管161に接続され、減圧弁41の他方は配管413に接続されている。つまり、減圧弁41の一方は、配管411、161、及びポート11a、11bを解してリザーバ171に連通している。増圧弁42は、常閉型の電磁弁であり、ブレーキECU6により流量が制御されている。増圧弁42の一方は配管421に接続され、増圧弁42の他方は配管422に接続されている。
【0044】
圧力供給部43は、ブレーキECU6の指示に基づいて、レギュレータ44に高圧のブレーキ液を提供する手段である。圧力供給部43は、主に、アキュムレータ431と、液圧ポンプ432と、モータ433と、リザーバ434と、を有している。
【0045】
アキュムレータ431は、液圧ポンプ432により発生した液圧を蓄圧するものである。アキュムレータ431は、配管431aにより、レギュレータ44、圧力センサ75、及び液圧ポンプ432と接続されている。液圧ポンプ432は、モータ433及びリザーバ434と接続されている。液圧ポンプ432は、リザーバ434に溜まったブレーキ液を、モータ433が駆動することでアキュムレータ431に供給する。圧力センサ75は、アキュムレータ431の圧力を検出するが、その値は、アキュムレータ431に蓄圧されるブレーキ液の消費量に相関する値である。他にブレーキ液消費量相関値に相当するのは、アキュムレータ431のブレーキ液を使用して増圧されるサーボ圧、又はそのサーボ圧が上昇することで上昇する反力圧が挙げられる。
【0046】
アキュムレータ圧が所定値以下に低下したことが圧力センサ75によって検出されると、ブレーキECU6からの制御信号に基づいてモータ433が駆動され、液圧ポンプ432は、アキュムレータ431にブレーキ液を供給してアキュムレータ431に圧力エネルギーを補給する。
【0047】
レギュレータ44は、一般的なレギュレータに対して、主にサブピストン446を加えたものである。つまり、レギュレータ44は、図2に示すように、主に、シリンダ441と、ボール弁442と、付勢部443と、弁座部444と、制御ピストン445と、サブピストン446と、を備えている。
【0048】
シリンダ441は、一方(図面右側)に底面をもつ略有底円筒状のシリンダケース441aと、シリンダケース441aの開口(図面左側)を塞ぐ蓋部材441bと、で構成されている。なお、図面上、蓋部材(441b)は断面コの字状に形成されているが、本実施形態では、蓋部材441bを円柱状とし、シリンダケース441aの開口を塞いでいる部位を蓋部材441bとして説明する。シリンダケース441aには、内部と外部を連通させる複数のポート4a〜4hが形成されている。
【0049】
ポート4aは、配管431aと接続している。ポート4bは、配管422と接続している。ポート4cは、配管163と接続している。ポート4dは、配管411を介して配管161に接続している。ポート4eは、リリーフバルブ423を介して配管422に通じる配管424に接続している。ポート4fは、配管413に接続している。ポート4gは、配管421に接続している。ポート4hは、配管51から分岐した配管511に接続されている。
【0050】
ボール弁442は、ボール型の弁であり、シリンダ441内部において、シリンダケース441aの底面側(以下、シリンダ底面側とも称する)に配置されている。付勢部443は、ボール弁442をシリンダケース441aの開口側(以下、シリンダ開口側とも称する)に付勢するバネ部材であって、シリンダケース441aの底面に設置されている。弁座部444は、シリンダケース441aの内周面に設けられた壁部材であり、シリンダ開口側とシリンダ底面側を区画している。弁座部444の中央には、区画したシリンダ開口側とシリンダ底面側を連通させる貫通路444aが形成されている。弁部材444は、付勢されたボール弁442が貫通路444aを塞ぐ形で、ボール弁442をシリンダ開口側から保持している。
【0051】
ボール弁442、付勢部443、弁座部444、及びシリンダ底面側のシリンダケース441aの内周面で区画された空間を第一室4Aとする。第一室4Aは、ブレーキ液で満たされており、ポート4aを介して配管431aに接続され、ポート4bを介して配管422に接続されている。
【0052】
制御ピストン445は、略円柱状の本体部445aと、本体部445aよりも径が小さい略円柱状の突出部445bとからなっている。本体部445aは、シリンダ441内において、弁座部444のシリンダ開口側に、同軸的且つ液密的に、軸方向に摺動可能に配置されている。本体部445aは、図示しない付勢部材によりシリンダ開口側に付勢されている。本体部445aのシリンダ軸方向略中央には、両端が本体部445a周面に開口した周方向(図面上下方向)に延びる通路445cが形成されている。通路445cの開口の配置位置に対応したシリンダ441の一部内周面は、ポート4dが形成されているとともに、凹状に窪み、本体部445aとにより第三室4Cを形成している。
【0053】
突出部445bは、本体部445aのシリンダ底面側端面の中央からシリンダ底面側に突出している。突出部445bの径は、弁座部444の貫通路444aよりも小さい。突出部445bは、貫通路444aと同軸上に配置されている。突出部445bの先端は、ボール弁442からシリンダ開口側に所定間隔離れている。突出部445bには、突出部445bのシリンダ底面側端面中央に開口したシリンダ軸方向に延びる通路445dが形成されている。通路445dは、本体部445a内にまで延伸し、通路445cに接続している。
【0054】
本体部445aのシリンダ底面側端面、突出部445bの外表面、シリンダ441の内周面、弁座部444、及びボール弁442によって区画された空間を第二室4Bとする。第二室4Bは、通路445c、445d、及び第三室4Cを介してポート4d、4eに連通している。
【0055】
サブピストン446は、サブ本体部446aと、第一突出部446bと、第二突出部446cとからなっている。サブ本体部446aは、略円柱状に形成されている。サブ本体部446aは、シリンダ441内において、本体部445aのシリンダ開口側に、同軸的且つ液密的、軸方向に摺動可能に配置されている。
【0056】
第一突出部446bは、サブ本体部446aより小径の略円柱状であり、サブ本体部446aのシリンダ底面側の端面中央から突出している。第一突出部446bは、本体部445aのシリンダ開口側端面に当接している。第二突出部446cは、第一突出部446bと同形状であり、サブ本体部446aのシリンダ開口側の端面中央から突出している。第二突出部446cは、蓋部材441bと当接している。
【0057】
サブ本体部446aのシリンダ底面側の端面、第一突出部446bの外表面、制御ピストン445のシリンダ開口側の端面、及びシリンダ441の内周面で区画された空間を圧力制御室4Dとする。圧力制御室4Dは、ポート4f及び配管413を介して減圧弁41に連通し、ポート4g及び配管421を介して増圧弁42に連通している。
【0058】
一方、サブ本体部446aのシリンダ開口側の端面、第二突出部446cの外表面、蓋部材441b、及びシリンダ441の内周面で区画された空間を第四室4Eとする。第四室4Eは、ポート4h及び配管511、51を介してポート11gに連通している。各室4A〜4Eは、ブレーキ液で満たされている。圧力センサ74は、サーボ室1Aの圧力(サーボ圧)を検出するためのセンサであり、配管163に接続されている。
【0059】
(ブレーキ5)
マスタシリンダ圧を発生する第一液圧室1D、第二液圧室1Eには、配管51、52、ABS53を介してホイールシリンダ541〜544が連通されている。ホイールシリンダ541〜544は、車輪5FR〜5RLのブレーキ5を構成している。具体的には、第一液圧室1Dのポート11g及び第二液圧室1Eのポート11iには、それぞれ配管51、52を介して、公知のABS(Antilock Brake System)53が連結されている。ABS53には、車輪5FR〜5RLを制動するブレーキ装置を作動させるホイールシリンダ541〜544が連結されている。
【0060】
ここで、ABS53について、4輪のうち1つ(5FR)の構成について説明し、他の構成については同様であるため説明を省略する。ABS53は、保持弁531、減圧弁532、リザーバ533、ポンプ534、及びモータ535を備えている。保持弁531は、常開型の電磁弁であり、ブレーキECU6により開閉が制御される。保持弁531は、一方が配管52に接続され、他方がホイールシリンダ541及び減圧弁532に接続されるよう配置されている。つまり、保持弁531は、ABS53の入力弁である。
【0061】
減圧弁532は、常閉型の電磁弁であり、ブレーキECU6により開閉が制御される。減圧弁532は、一方がホイールシリンダ541及び保持弁531に接続され、他方がリザーバ533に接続されている。減圧弁532が開状態となると、ホイールシリンダ541とリザーバ533が連通する。
【0062】
リザーバ533は、ブレーキ液を貯蔵するものであり、減圧弁532、及びポンプ534を介して配管52に接続されている。ポンプ534は、吸い込み口がリザーバ533に接続され、吐出口が逆止弁zを介して配管52に接続されるよう配置されている。ここでの逆止弁zは、ポンプ534から配管52(第二液圧室1E)への流れを許容し、その逆方向の流れを規制する。ポンプ534は、ブレーキECU6の指令に応じたモータ535の作動によって駆動されている。ポンプ535は、ABS制御の減圧モード時においては、ホイールシリンダ541内のブレーキ液又はリザーバ533内に貯められているブレーキ液を吸い込んで第二液圧室1Eに戻している。なお、ポンプ534が吐出したブレーキ液の脈動を緩和するために、ポンプ534の上流側にはダンパ(図示せず)が配設されている。
【0063】
ABS53は、車輪速度を検出する車輪速度センサ76を備えている。車輪速度センサ76により検出された車輪速度を示す検出信号はブレーキECU6に出力されるようになっている。
【0064】
このように構成されたABS53において、ブレーキECU6は、マスタシリンダ圧、車輪速度の状態、及び前後加速度に基づき、各電磁弁531、532の開閉を切り換え制御し、モータ535を必要に応じて作動してホイールシリンダ541に付与するブレーキ液圧すなわち車輪5FRに付与する制動力を調整するABS制御(アンチロックブレーキ制御)を実行する。ABS53は、マスタシリンダ1から供給されたブレーキ液を、ブレーキECU6の指示に基づいて、量やタイミングを調整してホイールシリンダ5FR〜5RLに供給する装置(「供給液圧調整装置」に相当する)である。
【0065】
後述するリニアモードでは、サーボ圧発生装置4のアキュムレータ431から送出された液圧が増圧弁42及び減圧弁41によって制御されてサーボ圧がサーボ室1Aに発生することにより、第一マスタピストン14及び第二マスタピストン15が前進して第一液圧室1D及び第二液圧室1Eが加圧される。第一液圧室1D及び第二液圧室1Eの液圧はポート11g、11iから配管51、52及びABS53を経由してホイールシリンダ541〜544へマスタシリンダ圧として供給され、車輪5FR〜5RLに液圧制動力が付与される。
【0066】
(ブレーキECU6)
ブレーキECU6は、電子制御ユニットであり、各種センサ72〜75と通信し、各電磁弁22、3、41、42、531、532、及びモータ433、535などを制御する。ブレーキECU6は、リニアモードとREGモードの2つの制御モードを記憶している。リニアモードは、通常のブレーキ制御であり、離間ロック弁22を開弁させ、反力弁3を閉弁させた状態で、減圧弁41及び増圧弁42を制御してサーボ室1Aのサーボ圧を制御するモードである。REGモードは、減圧弁41、増圧弁42、離間ロック弁22、及び反力弁3を非通電状態にするモード、又は故障等により非通電状態(常態維持)になったときのモードである。
【0067】
(リニアモード)
ブレーキペダル115が踏まれていない状態では、上記のような状態、すなわちボール弁442が弁座部444の貫通路444aを塞いでいる状態となる。また、減圧弁41は開状態、増圧弁42は閉状態となっている。つまり、第一室4Aと第二室4Bは隔離されている。
【0068】
第二室4Bは、配管163を介してサーボ室1Aに連通し、互いに同圧力に保たれている。第二室4Bは、制御ピストン445の通路445c、445dを介して第三室4Cに連通している。したがって、第二室4B及び第三室4Cは、配管414、161を介してリザーバ171に連通している。圧力制御室4Dは、一方が増圧弁42で塞がれ、他方が減圧弁41を介してリザーバ171に連通している。圧力制御室4Dと第二室4Bとは同圧力に保たれる。第四室4Eは、配管511、51を介して第一液圧室1Dに連通し、互いに同圧力に保たれる。
【0069】
この状態から、ブレーキペダルが踏まれると、所定の回生期間の後、各種センサ71、72からの情報に基づいてブレーキECU6が減圧弁41、増圧弁42、及びモータ433を制御する。すなわち、ブレーキECU6は、減圧弁41を閉じる方向に制御し、増圧弁42を開ける方向に制御し、モータ433によりアキュムレータ431の圧力を制御する。
【0070】
増圧弁42が開くことでアキュムレータ431と圧力制御室4Dとが連通する。減圧弁41が閉じることで、圧力制御室4Dとリザーバ171とが遮断される。アキュムレータ431から供給される高圧のブレーキ液により、圧力制御室4Dの圧力を上昇させることができる。圧力制御室4Dの圧力が上昇することで、制御ピストン445がシリンダ底面側に摺動する。これにより、制御ピストン445の突出部445b先端がボール弁442に当接し、通路445dがボール弁442により塞がれる。そして、第二室4Bとリザーバ171とは遮断される。
【0071】
さらに、制御ピストン445がシリンダ底面側に摺動することで、突出部445bによりボール弁442がシリンダ底面側に押されて移動し、ボール弁442が弁座部444から離間する。これにより、第一室4Aと第二室4Bは弁座部444の貫通路444aにより連通する。第一室4Aには、アキュムレータ431から高圧のブレーキ液が供給されており、連通により第二室4Bの圧力が上昇する。
【0072】
第二室4Bの圧力上昇に伴って、それに連通するサーボ室1Aの圧力も上昇する。サーボ室1Aの圧力上昇により、第一マスタピストン14が前進し、第一液圧室1Dの圧力が上昇する。そして、第二マスタピストン15も前進し、第二液圧室1Eの圧力が上昇する。第一液圧室1Dの圧力上昇により、高圧のブレーキ液が後述するABS53及び第四室4Eに供給される。第四室4Eの圧力は上昇するが、圧力制御室4Dの圧力も同様に上昇しているため、サブピストン446は移動しない。このように、ABS53に高圧(マスタシリンダ圧)のブレーキ液が供給され、ブレーキ5が作動して車両が制動される。リニアモードにおいて第一マスタピストン14を前進させる力は、サーボ圧に対応する力に相当する。
【0073】
ブレーキ操作を解除する場合、反対に、減圧弁41を開状態とし、増圧弁42を閉状態として、リザーバ171と圧力制御室4Dとを連通させる。これにより、制御ピストン445が後退し、ブレーキペダル10を踏む前の状態に戻る。
【0074】
(REGモード)
REGモードでは、減圧弁41、増圧弁42、離間ロック弁22、及び反力弁3が通電(制御)されず、減圧弁41は開状態、増圧弁42は閉状態、離間ロック弁22は閉状態、反力弁3は開状態となっている。そして、ブレーキペダル10が踏まれた後も非通電状態(無制御状態)が維持される。
【0075】
REGモードにおいて、ブレーキペダル10が踏まれると、入力ピストン13が前進し、通路18が分断されて第一反力室1Bとリザーバ171は遮断される。この状態において、離間ロック弁22が閉状態であるため、第一反力室1Bは、密閉状態となる。ただし、第二反力室1Cは、反力弁3が開状態であるためリザーバ171に連通している。
【0076】
ここで、さらにブレーキペダル10が踏み込まれると、入力ピストン13が前進して第一反力室1Bの圧力が上昇し、その圧力により第一マスタシリンダ14が前進する。このとき減圧弁41及び増圧弁42は通電されていないためサーボ圧は制御されていない。つまり、第一マスタシリンダ14は、ブレーキペダル10の操作力に対応する力(第一圧力室1Bの圧力)のみで前進する。これにより、サーボ室1Aの体積が大きくなるが、レギュレータ44を介してリザーバ171に連通しているため、ブレーキ液は補充される。
【0077】
第一マスタピストン14が前進すると、リニアモード同様、第一液圧室1D及び第二液圧室1Eの圧力は上昇する。そして、第一液圧室1Dの圧力上昇により、第四室4Eの圧力も上昇する。第四室4Eの圧力上昇によりサブピストン446はシリンダ底面側に摺動する。同時に、制御ピストン445は、第一突出部446bに押されてシリンダ底面側に摺動する。これにより、突出部445bはボール弁442に当接し、ボール弁442はシリンダ底面側に押されて移動する。つまり、第一室4Aと第二室4Bは連通し、サーボ室1Aとリザーバ171は遮断され、アキュムレータ431による高圧のブレーキ液がサーボ室1Aに供給される。
【0078】
このように、REGモードでは、ブレーキペダル10の操作力により所定ストローク踏まれると、アキュムレータ431とサーボ室1Aとが連通し、制御なしにサーボ圧が上昇する。そして、第一マスタピストン14が運転手の操作力以上に前進する。これにより、各電磁弁が非通電状態であっても、高圧のブレーキ液がABS53に供給される。REGモードでは、坂道停車時等を考慮して、安全に停車維持可能なブレーキ力が発生するように制御マップが作成されている。
【0079】
REGモードにおいて第一マスタピストン14を前進させる力は、操作力に対応する力に相当する。つまり、操作力に対応する力とは、操作力のみにより第一マスタシリンダ14を前進させる力、及びその駆動に基づいて機械的に発生したサーボ圧により第一マスタピストン14を前進させる力、を意味する。
【0080】
(異常検出に関する制御)
ここで、各電磁弁22、3、41、42、マスタ系統、及びReg系統の異常(故障・失陥)を検出するための制御について、図3及び図4を参照して説明する。Reg系統の異常については後述する。
【0081】
異常チェックでは、まずブレーキECU6が起動直後か否かをブレーキECU6自らチェック(判定)する(S101)。例えば運転手が乗車してイグニッションがONされた直後のように、ブレーキECU6が起動された直後であれば簡易チェックモード(S201)に移行される。簡易チェックモードについては後述する。
【0082】
例えば運転手が降車したときのように、ブレーキECU6が起動直後でない場合(S101:No)、判定許可状態であるか否かがチェックされる(S102)。判定許可状態とは、実際にブレーキペダル10が踏まれていない状態であって、ブレーキペダル10が踏まれる状態でない(例えば運転手がシートに着座していない)状態のことである。判定許可されると(S102:Yes)、ブレーキECU6がサーボ圧発生装置4を制御してサーボ室1Aを自動加圧する(S103)。
【0083】
つまり、ブレーキECU6は、ブレーキペダル10の操作に関わらず、減圧弁41に閉指示(閉状態にさせる指令)し且つ増圧弁42に開指示し、サーボ室1Aに加圧供給しサーボ圧の漸増を開始する。なお、このとき、離間ロック弁22及び反力弁3は、制御(通電)されておらず、正常であれば離間ロック弁22は閉状態、反力弁3は開状態となっている(図1参照)。
【0084】
ここで、圧力センサ74の情報に基づいて、サーボ圧が0であるか否かがチェックされる(S104)。サーボ圧が0の場合(S104:No)、モータ433が作動していないか、あるいは減圧弁41又は増圧弁42が指示通りに動作していないことが分かる。ここで、さらに圧力センサ75の情報に基づいてアキュムレータ圧が減少しているか否かがチェックされる(S105)。
【0085】
アキュムレータ圧が減少していない場合(S105:No)、増圧弁42のOFF故障(OFFのまま、すなわち閉状態で固定)と判定され(S107)、異常フラグが立って記憶される。この判定については、図5(a)を参照できる。反対にアキュムレータ圧が減少している場合(S105:Yes)、減圧弁41のOFF故障(OFFのまま、すなわち開状態で固定)と判定され(S106)、異常フラグが立って記憶される。この判定については図5(b)を参照できる。図中の「開」、「閉」、「ON」、及び「OFF」については、ブレーキECU6からの指示を意味する。なお、モータ433のOFF故障(OFFのままONしない)に関しては図5(c)を参照できる。
【0086】
一方、サーボ圧が上昇している場合(S104:Yes)、サーボ室1Aの加圧制御は正常に行われていることが分かる。ここで、圧力センサ73の情報に基づいて、反力圧が0であるか否かがチェックされる(S108)。反力圧が上昇している場合(S108:No)、本来反力弁3(開)により連通されているはずの第二反力室1Cとリザーバ171とが遮断されていることとなる。つまり、この場合、反力弁3のON故障(ONのまま、すなわち閉状態で固定)と判定され(S109)、異常フラグが立って記憶される。この判定については図6(a)を参照できる。
【0087】
反力圧がほぼ0の場合(S108:Yes)、第二反力室1Cとリザーバ171とが連通していることとなり、反力弁3は正常にOFFされている(開状態)と分かる。続いて、ブレーキECU6は、反力弁3に閉指示を与える(S110)。そして、反力弁3への閉指示から所定時間経過後、反力圧が設定された所定値以上であるか否かがチェックされる(S111)。反力圧が所定値未満である場合(S111:No)、反力弁3が閉指示に対して動作しないOFF故障(OFFのまま、すなわち開状態で固定)であるか、又は離間ロック弁22が開状態であるが故に第二反力室1Cが第一反力室1B及び通路18を介してリザーバ171に連通しているか、の何れかであることが分かる。つまり、この場合、反力弁3のOFF故障又は離間ロック弁22のON故障(ONのまま、すなわち開状態で固定)であると判定され(S112)、異常フラグが立って記憶される。この反力弁3のOFF故障と離間ロック弁22のON故障の判定については、図6(b)を参照できる。また、ここでの切り分け方法については、後述する。
【0088】
一方、反力圧が所定値以上である場合(S111:Yes)、離間ロック弁22は正常にOFFされており(閉状態)、反力弁3は正常にONされた(開→閉)ことが分かる(S113)。
【0089】
続いて、漸増しているサーボ圧が所定値P1になったか否かがチェックされる(S114)。サーボ圧がP1未満である場合(S114:No)、反力圧が所定値P2であるか否かがチェックされる(S115)。サーボ圧がP1に達する前に反力圧がP2に達した場合(S115:Yes)、第一マスタピストン14がサーボ室1Aへのブレーキ液供給に対して摺動しやすい状態であり、正常時よりも第一マスタピストン14が摺動することにより、第二反力室1Cの体積が減少するため、サーボ室1Aに対する反力圧が正常よりも高くなることが分かる。つまり、例えばシール部材92〜94の何れかが破損等し、第一液圧室1D又は第二液圧室1Eがリザーバ172又はリザーバ173と連通するマスタ系統の失陥であると判定される(S116)。そして、異常フラグが立って記憶される。マスタ系統の異常とは、主にマスタシリンダ1内のシール部材破損等による油漏れの失陥、マスタシリンダ1からホイールシリンダ541〜544までの配管の破損、又はホイールシリンダ541〜544の破損を意味する。このマスタ系統失陥の判定については、図7(a)を参照できる。第二反力室1Cは、マスタ系統が異常か否かを検証するための検証室の役割(機能)を兼ねている。なお、反力室が1つの場合(あるいは本実施形態のように反力室が2つの場合でも)、第一マスタピストン14の前進に伴って体積が減少する検証室を別途設けた構成とすることができる。
【0090】
一方、マスタ系統の異常が検出されず(S115:No)且つサーボ圧がP1に達した場合(S114:Yes)、ブレーキECU6は、S103から継続してサーボ圧を漸増させていた制御を止め、サーボ圧が一定となるように制御する(S117)。そして、反力圧が上記P2であるか否かをチェックする(S118)。反力圧がP2でない場合(S118:No)、すなわちサーボ圧=P1且つ反力圧≠P2(反力圧<P2)の場合、Reg系統の異常と判定され(S119)、異常フラグが立って記憶される。この判定については図7(b)を参照できる。
【0091】
Reg系統の異常とは、主にレギュレータ44内のシール部材破損等による油漏れの失陥を意味する。例えば、レギュレータ44内のシール部材の破損により、圧力制御室4Dと第四室4Eとが連通した場合、サーボ圧に相当する圧力制御室4Dの圧力のブレーキ液が、第四室4Eに流入し、第四室4Eから配管511、51を介して第一液圧室1Dに流入する。第一液圧室1Dの圧力が上昇し、第二マスタピストン15が前進する。そして、第一液圧室1Dがサーボ圧の上昇とともに高圧となり、第一マスタピストン14は、軸方向両側から高い圧力で押されることとなる。第一マスタピストン14の前進距離は、所定サーボ圧に対する正常時の前進距離よりも小さくなる。これにより、第二反力室1Cに圧力がかかりにくくなり、所定サーボ圧(P1)に対して検出される反力圧は、所定サーボ圧(P1)に対する正常時の反力圧(P2)よりも小さくなる。したがって、上記状態において、所定サーボ圧の際の反力圧を検出することで、Reg系統の異常が検出できる。
【0092】
なお、P1がある程度大きな値に設定されている。つまり、チェックステップがS114に到達するまでにサーボ圧がP1に到達しないように、P1が設定されている。したがって、サーボ圧がP1に達するまでは、反力圧がP2であるか否かがチェックされる(S115)。本実施形態では、P2は、S114の状態においてどこも異常がない場合の、サーボ圧がP1の際に検出されるべき反力圧の値に設定されている。ただし、若干の誤差を考慮して設定されても良い。
【0093】
一方、サーボ圧がP1の際に反力圧がP2である場合(S118:Yes)、すなわちサーボ圧=P1且つ反力圧=P2である場合、マスタ系統及びReg系統は正常であると判定される(S120)。
【0094】
続いて、図4に示すように、ブレーキECU6は、離間ロック弁22に開指示(開状態にさせる命令)を与える(S121)。そして、反力圧が所定値P3未満であるか否かがチェックされる(S122)。P3は、P2よりも小さい値に設定されている。反力圧がP3以上である場合(S122:No)、離間ロック弁22が指示通り動作していないため第一反力室1Bと第二反力室1Cとが連通せず、反力圧が下がらなかったことが分かる。つまり、この場合、離間ロック弁22のOFF故障(OFFのまま、すなわち閉状態で固定)と判定され(S123)、異常フラグが立って記憶される。一方、反力圧がP3未満である場合(S122:Yes)、離間ロック弁22が正常にON(閉→開)したと判定される(S124)。この離間ロック弁22のOFF故障の判定については、図8を参照できる。
【0095】
その後、サーボ室に対する加圧供給を減らしていきサーボ圧を減圧する(S125)。そして、所定時間経過後も、サーボ圧がほぼ0にならなかった場合(S126:No)、減圧弁41のON故障(ONのまま、すなわち閉状態で固定)又は増圧弁42のON故障(ONのまま、すなわち開状態で固定)であると判定できる。
【0096】
そこで、サーボ圧がほぼ0でない場合(S126:No)、ブレーキECU6は、減圧弁41を開状態にし(S127)、圧力センサ74の情報を基にサーボ圧が変化するか否かをチェックする(S128)。サーボ圧が変化した(上昇した)場合(S128:No)、増圧弁42がON故障であると判定され(S129)、異常フラグが立って記憶される。この判定については図9(a)を参照できる。
【0097】
一方、サーボ圧が変化しなかった場合(S128:Yes)、増圧弁42は正常と判定できる。この場合、さらに増圧弁42を一旦閉じて(S130)、増圧弁42及び減圧弁41を閉状態とする。その後、増圧弁42のみに開指示を行い(S131)、サーボ圧を所定圧(P3)まで上昇させる(S132)。その後、増圧弁42をもう一度閉状態とする(S133)。それ以降で圧力センサ74の情報を基にサーボ圧が所定圧(P3)に保持されていることを確認する(S134)。保持が確認できたら(S134:Yes)、減圧弁41に開指示を与える(S135)。ここで、圧力センサ74の情報からサーボ圧が減少しているか否かがチェックされる(S136)。サーボ圧の減少が確認されない場合(減少していない場合)(S136:No)、減圧弁41のON故障であると判定され(S137)、異常フラグが立って記憶される。この判定については図9(b)を参照できる。なお、サーボ圧の減少が確認された場合(S136:Yes)、その他の異常の可能性ありと判定され(S138)、異常フラグが立って記憶される。
【0098】
一方、減圧指示(S125)の後、所定時間経過後、サーボがほぼ0となった場合(S126:Yes)、減圧弁41及び増圧弁42、ひいてはシステムが正常であると判定される(S139)。図9は、(a)が増圧弁42のON故障に関し、(b)が減圧弁41のON故障に関する。
【0099】
最後に、各電磁弁22、3、41、42をOFF(非通電状態)にする終了処理がなされ(S140)、異常チェックが終了する。なお、参考までに、反力弁3のON故障(ONのまま、すなわち閉状態で固定)の判定については、図10も参照できる。
【0100】
なお、簡易チェックモードの場合(S101:Yes)、まず制動要求の有無がチェックされる(S201)。例えばブレーキペダル10が踏まれて制動要求がある場合(S201:No)、再びS101に戻る。制動要求がない場合(S201:Yes)、短時間モードであるか否かをチェックする(S202)。短時間モードとは、ブレーキECU6の起動したタイミングに関して、STPON起動と、IGON起動の場合が相当する。STPON起動とは、ブレーキペダル10が踏み込み時に起動した場合の起動である。IGON起動とは、イグニッションがONされることで起動した場合の起動である。これらの起動が、この判定(S202)直前に行われた場合、ブレーキペダル10が踏まれるまで時間がないと判断され(S202:Yes)、記憶手段等に記憶された異常フラグがチェックされる(S203)。
【0101】
異常フラグが立っていない場合(S203:No)、終了処理が行われる(S140)。異常フラグが立っている場合(S203:Yes)、他の部分は正常であるとして上記同様の流れで、異常フラグが立っている部分のみをチェックする(S204)。異常がある場合、またそのことが記憶される。その後、サーボ圧減圧や電磁弁OFF等の終了処理が行われる(S140)。なお、異常が検出された場合、ランプなどの通知手段により運転手に通知される。
【0102】
本実施形態によれば、上記(S116)のように、ブレーキペダル10が無操作状態において、サーボ圧発生装置4によりサーボ圧を自動加圧し、その際のサーボ圧及び反力圧(ブレーキ液消費量相関値)に基づいて、マスタ系統の失陥を検出することができる。また、同様に、ブレーキペダル10が無操作状態において、サーボ圧発生装置4によりサーボ圧を自動加圧し、その際のサーボ圧及び反力圧(ブレーキ液消費量相関値)に基づいて、レギュレータ44の失陥を検出することができる。
【0103】
<異常検出制御の変形態様>
ここで、図11に示すように、図3におけるS102とS103の間に、ABS53の入力弁であるすべての保持弁531に閉指示を出す入力弁閉鎖ステップ(S301)を設けても良い。これにより、検出された異常がマスタ系統の異常によるものか、ABS53より下流における油漏れ等によるかを確実に切り分けることができる。すべての保持弁531を閉状態とすることで、S116で検出された異常がマスタ系統の異常であるとより確実に判定することができる。例えば、ホイールシリンダ541〜544の油漏れと切り分けすることができる。
【0104】
あるいは、図12に示すように、配管51、52上に常開型の電磁弁である切替弁51a、52aを設けても良い。ただし、切替弁51aは、配管511との接続点よりも下流側(ABS53側)に設けられる。これにより、上記入力弁閉鎖ステップにおいて、保持弁531でなく切替弁51a、52aを閉状態にすることで上記同様の効果が発揮される。切替弁51a、52aは、開閉制御可能な弁装置であれば良く、常開型に限らず、電磁弁に限られない。
【0105】
また、S112で検出された異常(離間ロック弁22のOF故障又は反力弁3のOFF故障)は、以下の方法で切り分けることができる。S112で異常フラグが立った場合、通知手段が異常を通知するとともに、運転手にブレーキペダル10を踏むように通知する(例えば異常ランプを点灯ではなく点滅させる)。運転手がその通知に従ってブレーキペダル10を踏み、その際に反力圧が上昇しない場合、反力弁3が閉状態になっていないOFF故障(OFFのまま、すなわち開状態で固定)であることが分かる。反力弁3が開状態であれば、第二反力室1Cとリザーバ171が連通しているため、反力圧は上がらない。反対にそうでない場合は、離間ロック弁22のOFF故障と判定できる。
【0106】
また、S127で検出された異常(減圧弁41のON故障又は増圧弁42のON故障)は、以下の方法で切り分けることができる。S127で異常が検出された後、つまり減圧弁41開指示状態且つ増圧弁42閉指示状態で、減圧弁41に閉指示を与える(図9上段参照)。これにより、サーボ圧が上昇すれば、減圧弁41は正常に閉状態となり、増圧弁42が閉指示にも関わらず開状態になっていることが分かり、増圧弁42のON故障であると判定できる。なお、S126gがYesの場合、S128〜S135を飛ばして、終了処理(S137)するように設定しても良い。これにより、再度加圧することなく短時間で網羅的な異常チェックをすることができる。
【0107】
また、減圧弁41、反力弁3、圧力調整部43、及びABS53には適宜逆止弁zが設けられている。ABS53の構成は上記に限られない。例えば、保持弁531の下流側(ホイールシリンダ側)に、ホイールシリンダに対するマスタシリンダ圧をさらに増減圧制御可能なアクチュエータ(図示せず)を設置しても良い。アクチュエータは、例えばシリンダ及びピストンを有し、ピストンがブレーキECU6によって制御される。
【0108】
また、レギュレータ44については、図13に示すように、ポート4hに対応する位置に第四室4Eにつながるポート4iを形成し、ポート4iとABS53(保持弁531)とを配管512で接続する構成であっても良い。配管511が取り除かれ、配管51がポート134とポート4hとを接続する。
【0109】
また、図14に示すように、ポート4gを塞ぎ(又はABS53に接続し)、ポート4fに配管511(又は配管51)を接続させる。そして、ポート4hが配管413を介して減圧弁41に接続され、ポート4iが配管421を介して増圧弁42に接続される。この構成によれば、REGモードにおいて、圧力制御室4Dにマスタピストン圧が加わり、制御ピストン445をシリンダ底面側に摺動させる。つまり、圧力制御室4Dが本実施形態の第四室4Eの役割を果たす。そして、この構成における第四室4Eは、リニアモードにおいて各電磁弁41、42により圧力が制御され、加圧されると、サブピストン446と制御ピストン445をシリンダ底面側に摺動させる。つまり、役割が第四室4Eと圧力制御室4Dとで入れ替わっている。
【0110】
以上、本発明におけるレギュレータ(44)は、シリンダ(441)内に区画され蓄圧部(431)に連通する第一室(4A)と、シリンダ(441)内に区画されサーボ室(1A)に連通する第二室(4B)と、シリンダ(441)内に区画され増圧弁(42)及び減圧弁(41)に連通する圧力制御室(4D)と、シリンダ(441)内に区画され液圧室(1D)に連通する受圧室(第四室4E)と、を少なくとも備えている。そして、レギュレータ(44)は、圧力制御室(4D)の増圧又は受圧室(4E)の増圧に応じて前進するピストン(445、又は、445及び446)と、当該ピストンの前進によって第一室4Aと第二室4Bとを連通させる弁部(442、443、444)と、を備えていれば良い。また、ストロークセンサ72に代えて操作力センサを備え、制御においてストローク量に代えてブレーキペダル10の操作力(踏力)を用いても良く、又は併用しても良い。
【0111】
また、本実施形態の車両用制動装置は、マスタシリンダの内周面及びマスタピストンの後方外周面により区画され、マスタピストンの前進に伴って体積が増大する第一反力室(1B)と、マスタシリンダの内周面及びマスタピストンの後方外周面により第一反力室とは隔離して区画され、マスタピストンの前進に伴って体積が減少する第二反力室(1C)と、第一反力室と第二反力室とを連通させる連通手段(22)と、を備え、失陥検出手段(6)は、ブレーキ液消費量相関値としてのサーボ圧及び反力圧に基づいて、マスタ系統の失陥を検出するともいえる。この場合、第一反力室及び第二反力室に反力圧が発生したとしても、その反力圧はマスタピストンの後方外周面と前方外周面の両外周面に作用し、マスタピストンがサーボ圧により駆動されるため、サーボ圧及び反力圧の関係が簡潔なものになる。よって、サーボ圧及び反力圧に基づいてマスタ系統の失陥を簡素な構成で精度良く検出することができる。さらに、車両用制動装置は、マスタシリンダ内に第一反力室及び第二反力室とは隔離して形成され、入力ピストンの動作に関わらず、マスタピストンの前進に伴って体積が減少する液圧室(1D、1E)と、液圧室とホイールシリンダとの間に配置され、液圧室から供給されるブレーキ液を調整可能に構成され、調整されたブレーキ液を前記ホイールシリンダに供給する調整供給手段(53)と、を備えるともいえる。
【符号の説明】
【0112】
1:マスタシリンダ、
11:メインシリンダ、12:カバーシリンダ、
13:入力ピストン、
14:第一マスタピストン、15:第二マスタピストン、
1A:サーボ室、1B:第一反力室、1C:第二反力室(検証室)、
1D:第一液圧室、1E:第二液圧室、
2:反力発生装置、3:反力弁、
4:サーボ圧発生装置、
41:減圧弁、42:増圧弁、431:アキュムレータ、
5:ブレーキ、 51a、52a:切替弁、 531:保持弁(入力弁)
541、542、543、544:ホイールシリンダ、
5FR、5FL、5RR、5RL:車輪、
6:ブレーキECU、
73、74、75:圧力センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者によるブレーキ操作量に応じて車両に付与する制動力を制御する車両用制動装置に関する。
【0002】
運転者によるブレーキ操作量に応じて車両に付与する制動力を制御する車両用制動装置の一例として、例えば特開2008−87617号公報(特許文献1)に挙げられる車両用制動装置が知られている。この車両用制動装置では、入力ピストンと加圧ピストンが所定間隔(ストローク)をもって離間した状態で保持されており、入力ピストンの移動に応じて、ホイールシリンダにはアキュムレータとリニア弁とによって発生された制御油圧に基づく制動力が付与される。特許文献1に記載の車両用制動装置では、ブレーキペダルが踏まれることでマスタカット弁の故障を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−87617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、ブレーキペダルを踏まなければマスタカット弁の故障を検出できず、しかもマスタ系統の失陥は検出することができない構成となっている。これでは、運転手の協力がなければ故障検出できないこととなる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、ブレーキ操作部材が操作されていなくても、マスタ系統の失陥を検出することができる車両用制動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、ブレーキ操作部材(10)の操作力に対応する力及びサーボ室(1A)内のサーボ圧に対応する力のいずれかによってマスタピストン(14、15)が駆動されて、マスタシリンダ圧を発生させる車両用制動装置において、ブレーキ液を蓄圧する蓄圧部(431)と、前記蓄圧部内のブレーキ液を使用して、前記ブレーキ操作部材の操作に関わらず前記サーボ圧を発生可能に構成されているサーボ圧発生部(4)と、前記蓄圧部内のブレーキ液の消費量に相関するブレーキ液消費量相関値を検出するブレーキ液消費量相関値検出手段(73、74、75)と、前記ブレーキ操作部材が操作されていない状態で前記サーボ圧発生部により前記サーボ圧のみで前記マスタピストンを駆動させ、その際に前記ブレーキ液消費量相関値検出手段により検出されているブレーキ液消費量相関値に基づいて、マスタ系統の失陥を検出する失陥検出手段(6)と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記マスタピストンの前進に伴って体積が減少する検証室(1C)を備え、前記失陥検出手段(6)は、前記ブレーキ液消費量相関値としての前記サーボ圧及び前記検証室の圧力に基づいて、前記マスタ系統の失陥を検出することを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2において、前記マスタピストンの前進に伴って体積が減少し、前記マスタシリンダ圧を発生させる液圧室(1D、1E)と、前記液圧室とホイールシリンダとの間に配置され、前記液圧室から供給されるブレーキ液を調整可能に構成され、調整されたブレーキ液を前記ホイールシリンダに供給する調整供給手段(53)と、を備え、前記失陥検出手段(6)は、前記調整供給手段の入力側に設けられた入力弁(531)を閉弁させた上で、前記マスタ系統の失陥検出を行うことを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項3において、前記マスタピストンの前進に伴って体積が減少し、前記マスタシリンダ圧を発生させる液圧室(1D、1E)と、前記液圧室とホイールシリンダとの間に配置され、前記液圧室から供給されるブレーキ液を調整可能に構成され、調整されたブレーキ液を前記ホイールシリンダに供給する調整供給手段(53)と、前記液圧室と前記調整供給手段との間に配置され、前記液圧室と前記調整供給手段とを接続/非接続させる切替弁を備え、前記失陥検出手段(6)は、前記切替弁を閉弁させた上で、前記マスタ系統の失陥検出を行うことを特徴とする。
【0010】
なお、本明細書において「ブレーキ操作部材の操作力に対応する力」とは、主に運転手がブレーキ操作部材を踏む力によってマスタピストンに加わる力(直接的及び反力室の油圧による間接的な力を含む)であり、それにより機械的・構造的にサーボ圧が生ずる場合、当該サーボ圧によりマスタピストンに加わる力を含む概念である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、サーボ圧発生部がブレーキ操作部材の操作に関わらずサーボ圧を発生させることができ、そのサーボ圧のみでマスタピストンを駆動した場合のブレーキ液消費量相関値を見ることで、マスタ系統の失陥が検出できる。つまり、本発明によれば、ブレーキ操作部材が踏まれることなしに、マスタ系統失陥が検出できる。
【0012】
ここで、マスタ系統に失陥がある場合、サーボ圧の加圧に対して正常時よりもマスタピストンが前進してしまう。請求項2に記載の発明によれば、マスタ系統失陥時、検証室の圧力がサーボ圧に対して正常時よりも大きくなる。したがって、本発明によれば、サーボ圧と検証室の圧力とに基づいてマスタ系統失陥が検出できる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、マスタ系統の失陥のうち液圧室から入力弁までの失陥を検出することができる。すなわち、液圧室から入力弁までの失陥とホイールシリンダ及び調整供給手段の失陥との切り分けが可能となる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3同様、マスタ系統の失陥のうち液圧室から切替弁までの失陥を検出することができる。すなわち、液圧室から切替弁までの失陥とホイールシリンダ及び調整供給手段の失陥との切り分けが可能となる。切替弁としては別途設けたものであっても、あるいは予め設置された別用途の弁であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態の車両用制動装置の構成を示す部分断面説明図である。
【図2】本実施形態のレギュレータの構成を示す部分断面説明図である。
【図3】本実施形態の異常検出制御に関するフローチャートである。
【図4】異常検出制御に関するフローチャートである。
【図5】異常検出制御に関する処理の流れを示す説明図である。
【図6】異常検出制御に関する処理の流れを示す説明図である。
【図7】異常検出制御に関する処理の流れを示す説明図である。
【図8】異常検出制御に関する処理の流れを示す説明図である。
【図9】異常検出制御に関する処理の流れを示す説明図である。
【図10】異常検出制御に関する処理の流れを示す説明図である。
【図11】本実施形態の変形態様の異常検出制御に関するフローチャートである。
【図12】本実施形態の変形態様の車両用制動装置の構成を示す部分断面説明図である。
【図13】本実施形態のレギュレータの変形態様を示す構成図である。
【図14】本実施形態のレギュレータの変形態様を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図は概念図であり、細部構造の寸法まで規定するものではない。
【0017】
本実施形態の車両用制動装置は、図1に示すように、主に、マスタシリンダ1と、反力発生装置2と、離間ロック弁22と、反力弁3と、サーボ圧発生装置4と、ブレーキ装置5と、ブレーキECU6と、ブレーキECU6と通信可能な各種センサ72〜75と、を備えている。なお、本実施形態では、公知のハイブリッドECU(図示なし)がブレーキECU6に接続されている。
【0018】
(マスタシリンダ1)
マスタシリンダ1は、ブレーキ液をブレーキ装置5に提供するものであり、主に、メインシリンダ11と、カバーシリンダ12と、入力ピストン13と、第一マスタピストン14と、第二マスタピストン15と、を有している。
【0019】
メインシリンダ11は、一端に開口を有し他端に底面を有する有底略円筒状のシリンダである。以下、マスタシリンダ1については、メインシリンダ11の開口側を後方、メインシリンダ11の底面側を前方として説明する。メインシリンダ11は、内部に、メインシリンダ11の開口側と底面側とを分離するための内壁部111を有している。内壁部111中央には、軸方向(前後方向)に貫通する貫通孔111aが形成されている。
【0020】
また、メインシリンダ11の内部には、内壁部111よりも前方に、内径が小さくなっている部位112(前方)、113(後方)が存在する。つまり、小径部位112、113は、メインシリンダ11内周面の軸方向の一部全周から突出している。メインシリンダ11内部には、後述する両マスタシリンダ14、15が軸方向に摺動可能に配置されている。なお、内部と外部とを連通させるポート等については後述する。
【0021】
カバーシリンダ12は、略円筒状のシリンダ部121と、カップ状のカバー部122と、を有している。シリンダ部121は、メインシリンダ11の後端側に配置され、メインシリンダ11の開口に同軸的に嵌合されている。シリンダ部121の前方部位121aの内径は、後方部位121bの内径よりも大きい。また、前方部位121aの内径は、内壁部111の貫通孔111aの内径よりも大きい。
【0022】
カバー部122は、メインシリンダ11の開口及びシリンダ部121の後端側開口を塞ぐように、メインシリンダ11の後端部及びシリンダ部121の外周面に組み付けられている。カバー部122の底壁には貫通孔122aが形成されている。カバー部122は、軸方向に伸縮可能な弾性部材からなり、底壁が後方に付勢されている。
【0023】
入力ピストン13は、ブレーキペダル10の操作に応じてカバーシリンダ12内を摺動するピストンである。入力ピストン13は、前方に底面を有し後方に開口を有する有底略円筒状のピストンである。入力ピストン13の底面を構成する底壁131は、入力ピストン13の他の部位よりも径が大きくなっている。入力ピストン13は、底壁131がシリンダ部121の前方部位後端に位置するように配置されている。入力ピストン13は、シリンダ部121の後方部位121bに軸方向に摺動可能且つ液密的に配置されている。
【0024】
入力ピストン13の内部には、ブレーキペダル10の操作ロッド10a及びピボット10bが設置されている。操作ロッド10aは、入力ピストン13の開口及びカバー部材122の貫通孔122aを通って外部に突出し、ブレーキペダル10に接続されている。操作ロッド10aは、ブレーキペダル10の操作に連動して移動し、ブレーキペダル10踏み込み時にはカバー部122を軸方向に押し潰しながら前進する。操作ロッド10aの前進に伴って、入力ピストン13も前進する。
【0025】
第一マスタピストン14は、メインシリンダ11内に軸方向に摺動可能に配置されている。具体的に、第一マスタピストン14は、第一本体部141と、突出部142と、からなっている。第一本体部141は、メインシリンダ11内において、内壁部111の前方側に同軸的に配置されている。第一本体部141は、前方に開口を有し後方に底壁141aを有する有底略円筒状に形成されている。つまり、第一本体部141は、底壁141aと、周壁部141bと、からなっている。
【0026】
底壁141aは、内壁部111の前方でメインシリンダ11に軸方向に摺動可能且つ液密的に配置されている。周壁部141bは、底壁141aよりも小径の円筒状に形成され、底壁141a前方端面中央から前方に同軸的に延伸している。周壁部141bの前方部位は、小径部位112に軸方向に摺動可能且つ液密的に配置されている。周壁部141bの後方部位は、メインシリンダ11の内周面から離間している。
【0027】
突出部142は、第一本体部141の底壁141a端面中央から後方に突出した円柱状の部位である。突出部142は、内壁部111の貫通孔111aに、軸方向に摺動可能且つ液密的に配置されている。突出部142の後方部位は、貫通孔111aを介してシリンダ部121内部に位置している。突出部142の後方部位は、シリンダ部121内周面と離間している。突出部142の後端面は、入力ピストン13の底壁131と所定距離だけ離間している。第一マスタピストン14は、バネ等からなる付勢部材143により後方に付勢されている。
【0028】
ここで、第一本体部141の底壁141a後方端面、内壁部111前方端面、メインシリンダ11内周面、及び突出部142外周面により「サーボ室1A」が区画される。また、内壁部111後方端面、入力ピストン131外表面、シリンダ部121の前方部位121a内周面、及び突出部142外表面により「第一反力室1B」が区画される。また、小径部位112後端面(シール部材91を含む)、第一マスタピストン14の外周面、及びメインシリンダ11内周面により「第二反力室C」が区画されている。
【0029】
第二マスタピストン15は、メインシリンダ11内において、第一マスタピストン14の前方側に同軸的に配置されている。第二マスタピストン15は、前方に開口を有し後方に底壁151を有する有底略円筒状に形成されている。つまり、第二マスタピストン15は、底壁151と、底壁151と同径の周壁部152と、からなっている。底壁151は、第一マスタピストン14の前方で、小径部位112、113間に配置されている。底壁151を含む第二マスタピストン15の後方部位は、メインシリンダ11の内周面から離間している。周壁部152は、円筒状であって、底壁151から前方に同軸的に延伸している。周壁部152は、小径部位113に軸方向に摺動可能且つ液密的に配置されている。第二マスタピストン15は、バネ等からなる付勢部材153により後方に付勢されている。
【0030】
ここで、第二マスタピストン15外側表面、第一マスタピストン14前端面、第一マスタピストン内側表面、小径部位112前端面(シール部材92を含む)、小径部位113後端面(シール部材93を含む)、及び小径部位112、113間のメインシリンダ11内周面により「第一液圧室1D」が区画される。また、メインシリンダ11内底面111d、第二マスタピストン15前端面、第二マスタピストン15内側表面、小径部位113前端面(シール部材94を含む)、及びメインシリンダ11内周面により「第二液圧室1E」が区画される。
【0031】
マスタシリンダ1には、内部と外部を連通するポート11a〜11iが形成されている。ポート11aは、メインシリンダ11のうち内壁部111より後方に形成されている。ポート11bは、ポート11aと軸方向の同様の位置に、ポート11aに対向して形成されている。ポート11aとポート11bは、メインシリンダ11内周面とシリンダ部121の外周面との間の空間を介して連通している。ポート11aは配管161に接続されている。ポート11bは、リザーバ171に接続されている。つまり、ポート11aは、リザーバ171と連通している。
【0032】
また、ポート11bは、シリンダ部121及び入力ピストン13に形成された通路18により第一反力室1Bに連通している。通路18は、入力ピストン13が前進すると分断される。つまり、入力ピストン13が前進すると、第一反力室1Bとリザーバ171とは分断される。
【0033】
ポート11cは、ポート11aより前方に形成され、第一反力室1Bと配管162とを連通させている。ポート11dは、ポート11cより前方に形成され、サーボ室1Aと配管163とを連通させている。ポート11eは、ポート11dより前方に形成され、第二反力室1Cと配管164とを連通させている。
【0034】
ポート11fは、小径部位112の両シール部材91、92間に形成され、リザーバ172とメインシリンダ11内部とを連通させている。ポート11fは、第一マスタピストン14に形成された通路144を介して第一液圧室1Dに連通している。通路144は、第一マスタピストン14が前進するとポート11fと第一液圧室1Dが分断されるように、シール部材92の若干後方位置に形成されている。
【0035】
ポート11gは、ポート11fより前方に形成され、第一液圧室1Dと配管51とを連通させている。ポート11hは、小径部位113の両シール部材93、94間に形成され、リザーバ173とメインシリンダ11内部とを連通させている。ポート11gは、第二マスタピストン15に形成された通路154を介して第二液圧室1Eに連通している。通路154は、第二マスタピストン15が前進するとポート11gと第二液圧室1Eが分断されるように、シール部材94の若干後方位置に形成されている。ポート11iは、ポート11hより前方に形成され、第二液圧室1Eと配管52とを連通させている。
【0036】
また、マスタシリンダ1内には、適宜、Oリング等のシール部材(図面黒丸部分)が配置されている。シール部材91、92は、小径部位112に配置され、第一マスタピストン14の外周面に液密的に当接している。同様に、シール部材93、94は、小径部位113に配置され、第二マスタピストン15の外周面に液密的に当接している。また、入力ピストン13とシリンダ部121との間にもシール部材が配置されている。
【0037】
ストロークセンサ72は、ブレーキペダル10のストローク量(操作量)を検出するセンサであり、検出結果をブレーキECU6に送信する。
【0038】
(反力発生装置2)
反力発生装置2は、ストロークシミュレータ21を備えている。ストロークシミュレータ21は、ブレーキペダル10の操作に応じて第一反力室1B及び第二反力室1Cに反力圧を発生させる装置である。一般的に、ストロークシミュレータ21は、シリンダ211にピストン212が摺動可能に嵌合され、圧縮スプリング213によって前方に付勢されたピストン212の前面側にパイロット液室214が形成されて構成されている。ストロークシミュレータ21は、配管164及びポート11eを介して第二反力室1Cに接続され、配管164を介して離間ロック弁22及び反力弁3に接続されている。
【0039】
(離間ロック弁22)
離間ロック弁22は、常閉型の電磁弁(リニア弁)であり、ブレーキECU6により開閉が制御される。離間ロック弁22は、配管164と配管162とに接続され、両配管162、164とを接続/非接続させる。離間ロック弁22は、第一反力室1Bと第二反力室1Cとを接続/非接続させるための弁である。
【0040】
圧力センサ73は、主に反力室1B、1Cの圧力(反力圧)を検出するセンサであり、配管164に接続されている。圧力センサ73は、離間ロック弁22が開状態の場合、両反力室1B、1Cの圧力を検出し、離間ロック弁22が閉状態の場合、第二反力室1Cの圧力を検出する。
【0041】
(反力弁3)
反力弁3は、常開型の電磁弁であり、ブレーキECU6により開閉が制御される。反力弁3は、配管164と配管161とに接続され、両配管161、164とを接続/非接続させる。反力弁3は、反力室1B、1Cとリザーバ171とを接続/非接続させるための弁である。
【0042】
(離間ロック弁22及び反力弁3の制御)
ここで、ブレーキ操作時において、反力弁3と離間ロック弁22とのブレーキECU6による制御について説明する。ブレーキペダル10が踏まれると、入力ピストン13が前進し、通路18が分断されてリザーバ171と第一反力室1Bは遮断される。同時に、反力弁3が閉状態(開→閉)になり、離間ロック弁22が開状態(閉→開)になる。反力弁3が閉状態となることで、第二反力室1Cとリザーバ171とが遮断される。離間ロック弁22が開状態となることで、第一反力室1Bと第二反力室1Cとが連通する。つまり、入力ピストンが前進し且つ反力弁3が閉状態となることで、両反力室1B、1Cは、リザーバ171から遮断される。そして、ストロークシミュレータ21は、両反力室1B、1Cに、ストローク量に応じた反力圧を発生させる。
【0043】
(サーボ圧発生装置4)
サーボ圧発生装置4は、主に、減圧弁41と、増圧弁42と、圧力供給部43と、レギュレータ44と、を備えている。減圧弁41は、常開型の電磁弁であり、ブレーキECU6により流量が制御される。減圧弁41の一方は配管411を介して配管161に接続され、減圧弁41の他方は配管413に接続されている。つまり、減圧弁41の一方は、配管411、161、及びポート11a、11bを解してリザーバ171に連通している。増圧弁42は、常閉型の電磁弁であり、ブレーキECU6により流量が制御されている。増圧弁42の一方は配管421に接続され、増圧弁42の他方は配管422に接続されている。
【0044】
圧力供給部43は、ブレーキECU6の指示に基づいて、レギュレータ44に高圧のブレーキ液を提供する手段である。圧力供給部43は、主に、アキュムレータ431と、液圧ポンプ432と、モータ433と、リザーバ434と、を有している。
【0045】
アキュムレータ431は、液圧ポンプ432により発生した液圧を蓄圧するものである。アキュムレータ431は、配管431aにより、レギュレータ44、圧力センサ75、及び液圧ポンプ432と接続されている。液圧ポンプ432は、モータ433及びリザーバ434と接続されている。液圧ポンプ432は、リザーバ434に溜まったブレーキ液を、モータ433が駆動することでアキュムレータ431に供給する。圧力センサ75は、アキュムレータ431の圧力を検出するが、その値は、アキュムレータ431に蓄圧されるブレーキ液の消費量に相関する値である。他にブレーキ液消費量相関値に相当するのは、アキュムレータ431のブレーキ液を使用して増圧されるサーボ圧、又はそのサーボ圧が上昇することで上昇する反力圧が挙げられる。
【0046】
アキュムレータ圧が所定値以下に低下したことが圧力センサ75によって検出されると、ブレーキECU6からの制御信号に基づいてモータ433が駆動され、液圧ポンプ432は、アキュムレータ431にブレーキ液を供給してアキュムレータ431に圧力エネルギーを補給する。
【0047】
レギュレータ44は、一般的なレギュレータに対して、主にサブピストン446を加えたものである。つまり、レギュレータ44は、図2に示すように、主に、シリンダ441と、ボール弁442と、付勢部443と、弁座部444と、制御ピストン445と、サブピストン446と、を備えている。
【0048】
シリンダ441は、一方(図面右側)に底面をもつ略有底円筒状のシリンダケース441aと、シリンダケース441aの開口(図面左側)を塞ぐ蓋部材441bと、で構成されている。なお、図面上、蓋部材(441b)は断面コの字状に形成されているが、本実施形態では、蓋部材441bを円柱状とし、シリンダケース441aの開口を塞いでいる部位を蓋部材441bとして説明する。シリンダケース441aには、内部と外部を連通させる複数のポート4a〜4hが形成されている。
【0049】
ポート4aは、配管431aと接続している。ポート4bは、配管422と接続している。ポート4cは、配管163と接続している。ポート4dは、配管411を介して配管161に接続している。ポート4eは、リリーフバルブ423を介して配管422に通じる配管424に接続している。ポート4fは、配管413に接続している。ポート4gは、配管421に接続している。ポート4hは、配管51から分岐した配管511に接続されている。
【0050】
ボール弁442は、ボール型の弁であり、シリンダ441内部において、シリンダケース441aの底面側(以下、シリンダ底面側とも称する)に配置されている。付勢部443は、ボール弁442をシリンダケース441aの開口側(以下、シリンダ開口側とも称する)に付勢するバネ部材であって、シリンダケース441aの底面に設置されている。弁座部444は、シリンダケース441aの内周面に設けられた壁部材であり、シリンダ開口側とシリンダ底面側を区画している。弁座部444の中央には、区画したシリンダ開口側とシリンダ底面側を連通させる貫通路444aが形成されている。弁部材444は、付勢されたボール弁442が貫通路444aを塞ぐ形で、ボール弁442をシリンダ開口側から保持している。
【0051】
ボール弁442、付勢部443、弁座部444、及びシリンダ底面側のシリンダケース441aの内周面で区画された空間を第一室4Aとする。第一室4Aは、ブレーキ液で満たされており、ポート4aを介して配管431aに接続され、ポート4bを介して配管422に接続されている。
【0052】
制御ピストン445は、略円柱状の本体部445aと、本体部445aよりも径が小さい略円柱状の突出部445bとからなっている。本体部445aは、シリンダ441内において、弁座部444のシリンダ開口側に、同軸的且つ液密的に、軸方向に摺動可能に配置されている。本体部445aは、図示しない付勢部材によりシリンダ開口側に付勢されている。本体部445aのシリンダ軸方向略中央には、両端が本体部445a周面に開口した周方向(図面上下方向)に延びる通路445cが形成されている。通路445cの開口の配置位置に対応したシリンダ441の一部内周面は、ポート4dが形成されているとともに、凹状に窪み、本体部445aとにより第三室4Cを形成している。
【0053】
突出部445bは、本体部445aのシリンダ底面側端面の中央からシリンダ底面側に突出している。突出部445bの径は、弁座部444の貫通路444aよりも小さい。突出部445bは、貫通路444aと同軸上に配置されている。突出部445bの先端は、ボール弁442からシリンダ開口側に所定間隔離れている。突出部445bには、突出部445bのシリンダ底面側端面中央に開口したシリンダ軸方向に延びる通路445dが形成されている。通路445dは、本体部445a内にまで延伸し、通路445cに接続している。
【0054】
本体部445aのシリンダ底面側端面、突出部445bの外表面、シリンダ441の内周面、弁座部444、及びボール弁442によって区画された空間を第二室4Bとする。第二室4Bは、通路445c、445d、及び第三室4Cを介してポート4d、4eに連通している。
【0055】
サブピストン446は、サブ本体部446aと、第一突出部446bと、第二突出部446cとからなっている。サブ本体部446aは、略円柱状に形成されている。サブ本体部446aは、シリンダ441内において、本体部445aのシリンダ開口側に、同軸的且つ液密的、軸方向に摺動可能に配置されている。
【0056】
第一突出部446bは、サブ本体部446aより小径の略円柱状であり、サブ本体部446aのシリンダ底面側の端面中央から突出している。第一突出部446bは、本体部445aのシリンダ開口側端面に当接している。第二突出部446cは、第一突出部446bと同形状であり、サブ本体部446aのシリンダ開口側の端面中央から突出している。第二突出部446cは、蓋部材441bと当接している。
【0057】
サブ本体部446aのシリンダ底面側の端面、第一突出部446bの外表面、制御ピストン445のシリンダ開口側の端面、及びシリンダ441の内周面で区画された空間を圧力制御室4Dとする。圧力制御室4Dは、ポート4f及び配管413を介して減圧弁41に連通し、ポート4g及び配管421を介して増圧弁42に連通している。
【0058】
一方、サブ本体部446aのシリンダ開口側の端面、第二突出部446cの外表面、蓋部材441b、及びシリンダ441の内周面で区画された空間を第四室4Eとする。第四室4Eは、ポート4h及び配管511、51を介してポート11gに連通している。各室4A〜4Eは、ブレーキ液で満たされている。圧力センサ74は、サーボ室1Aの圧力(サーボ圧)を検出するためのセンサであり、配管163に接続されている。
【0059】
(ブレーキ5)
マスタシリンダ圧を発生する第一液圧室1D、第二液圧室1Eには、配管51、52、ABS53を介してホイールシリンダ541〜544が連通されている。ホイールシリンダ541〜544は、車輪5FR〜5RLのブレーキ5を構成している。具体的には、第一液圧室1Dのポート11g及び第二液圧室1Eのポート11iには、それぞれ配管51、52を介して、公知のABS(Antilock Brake System)53が連結されている。ABS53には、車輪5FR〜5RLを制動するブレーキ装置を作動させるホイールシリンダ541〜544が連結されている。
【0060】
ここで、ABS53について、4輪のうち1つ(5FR)の構成について説明し、他の構成については同様であるため説明を省略する。ABS53は、保持弁531、減圧弁532、リザーバ533、ポンプ534、及びモータ535を備えている。保持弁531は、常開型の電磁弁であり、ブレーキECU6により開閉が制御される。保持弁531は、一方が配管52に接続され、他方がホイールシリンダ541及び減圧弁532に接続されるよう配置されている。つまり、保持弁531は、ABS53の入力弁である。
【0061】
減圧弁532は、常閉型の電磁弁であり、ブレーキECU6により開閉が制御される。減圧弁532は、一方がホイールシリンダ541及び保持弁531に接続され、他方がリザーバ533に接続されている。減圧弁532が開状態となると、ホイールシリンダ541とリザーバ533が連通する。
【0062】
リザーバ533は、ブレーキ液を貯蔵するものであり、減圧弁532、及びポンプ534を介して配管52に接続されている。ポンプ534は、吸い込み口がリザーバ533に接続され、吐出口が逆止弁zを介して配管52に接続されるよう配置されている。ここでの逆止弁zは、ポンプ534から配管52(第二液圧室1E)への流れを許容し、その逆方向の流れを規制する。ポンプ534は、ブレーキECU6の指令に応じたモータ535の作動によって駆動されている。ポンプ535は、ABS制御の減圧モード時においては、ホイールシリンダ541内のブレーキ液又はリザーバ533内に貯められているブレーキ液を吸い込んで第二液圧室1Eに戻している。なお、ポンプ534が吐出したブレーキ液の脈動を緩和するために、ポンプ534の上流側にはダンパ(図示せず)が配設されている。
【0063】
ABS53は、車輪速度を検出する車輪速度センサ76を備えている。車輪速度センサ76により検出された車輪速度を示す検出信号はブレーキECU6に出力されるようになっている。
【0064】
このように構成されたABS53において、ブレーキECU6は、マスタシリンダ圧、車輪速度の状態、及び前後加速度に基づき、各電磁弁531、532の開閉を切り換え制御し、モータ535を必要に応じて作動してホイールシリンダ541に付与するブレーキ液圧すなわち車輪5FRに付与する制動力を調整するABS制御(アンチロックブレーキ制御)を実行する。ABS53は、マスタシリンダ1から供給されたブレーキ液を、ブレーキECU6の指示に基づいて、量やタイミングを調整してホイールシリンダ5FR〜5RLに供給する装置(「供給液圧調整装置」に相当する)である。
【0065】
後述するリニアモードでは、サーボ圧発生装置4のアキュムレータ431から送出された液圧が増圧弁42及び減圧弁41によって制御されてサーボ圧がサーボ室1Aに発生することにより、第一マスタピストン14及び第二マスタピストン15が前進して第一液圧室1D及び第二液圧室1Eが加圧される。第一液圧室1D及び第二液圧室1Eの液圧はポート11g、11iから配管51、52及びABS53を経由してホイールシリンダ541〜544へマスタシリンダ圧として供給され、車輪5FR〜5RLに液圧制動力が付与される。
【0066】
(ブレーキECU6)
ブレーキECU6は、電子制御ユニットであり、各種センサ72〜75と通信し、各電磁弁22、3、41、42、531、532、及びモータ433、535などを制御する。ブレーキECU6は、リニアモードとREGモードの2つの制御モードを記憶している。リニアモードは、通常のブレーキ制御であり、離間ロック弁22を開弁させ、反力弁3を閉弁させた状態で、減圧弁41及び増圧弁42を制御してサーボ室1Aのサーボ圧を制御するモードである。REGモードは、減圧弁41、増圧弁42、離間ロック弁22、及び反力弁3を非通電状態にするモード、又は故障等により非通電状態(常態維持)になったときのモードである。
【0067】
(リニアモード)
ブレーキペダル115が踏まれていない状態では、上記のような状態、すなわちボール弁442が弁座部444の貫通路444aを塞いでいる状態となる。また、減圧弁41は開状態、増圧弁42は閉状態となっている。つまり、第一室4Aと第二室4Bは隔離されている。
【0068】
第二室4Bは、配管163を介してサーボ室1Aに連通し、互いに同圧力に保たれている。第二室4Bは、制御ピストン445の通路445c、445dを介して第三室4Cに連通している。したがって、第二室4B及び第三室4Cは、配管414、161を介してリザーバ171に連通している。圧力制御室4Dは、一方が増圧弁42で塞がれ、他方が減圧弁41を介してリザーバ171に連通している。圧力制御室4Dと第二室4Bとは同圧力に保たれる。第四室4Eは、配管511、51を介して第一液圧室1Dに連通し、互いに同圧力に保たれる。
【0069】
この状態から、ブレーキペダルが踏まれると、所定の回生期間の後、各種センサ71、72からの情報に基づいてブレーキECU6が減圧弁41、増圧弁42、及びモータ433を制御する。すなわち、ブレーキECU6は、減圧弁41を閉じる方向に制御し、増圧弁42を開ける方向に制御し、モータ433によりアキュムレータ431の圧力を制御する。
【0070】
増圧弁42が開くことでアキュムレータ431と圧力制御室4Dとが連通する。減圧弁41が閉じることで、圧力制御室4Dとリザーバ171とが遮断される。アキュムレータ431から供給される高圧のブレーキ液により、圧力制御室4Dの圧力を上昇させることができる。圧力制御室4Dの圧力が上昇することで、制御ピストン445がシリンダ底面側に摺動する。これにより、制御ピストン445の突出部445b先端がボール弁442に当接し、通路445dがボール弁442により塞がれる。そして、第二室4Bとリザーバ171とは遮断される。
【0071】
さらに、制御ピストン445がシリンダ底面側に摺動することで、突出部445bによりボール弁442がシリンダ底面側に押されて移動し、ボール弁442が弁座部444から離間する。これにより、第一室4Aと第二室4Bは弁座部444の貫通路444aにより連通する。第一室4Aには、アキュムレータ431から高圧のブレーキ液が供給されており、連通により第二室4Bの圧力が上昇する。
【0072】
第二室4Bの圧力上昇に伴って、それに連通するサーボ室1Aの圧力も上昇する。サーボ室1Aの圧力上昇により、第一マスタピストン14が前進し、第一液圧室1Dの圧力が上昇する。そして、第二マスタピストン15も前進し、第二液圧室1Eの圧力が上昇する。第一液圧室1Dの圧力上昇により、高圧のブレーキ液が後述するABS53及び第四室4Eに供給される。第四室4Eの圧力は上昇するが、圧力制御室4Dの圧力も同様に上昇しているため、サブピストン446は移動しない。このように、ABS53に高圧(マスタシリンダ圧)のブレーキ液が供給され、ブレーキ5が作動して車両が制動される。リニアモードにおいて第一マスタピストン14を前進させる力は、サーボ圧に対応する力に相当する。
【0073】
ブレーキ操作を解除する場合、反対に、減圧弁41を開状態とし、増圧弁42を閉状態として、リザーバ171と圧力制御室4Dとを連通させる。これにより、制御ピストン445が後退し、ブレーキペダル10を踏む前の状態に戻る。
【0074】
(REGモード)
REGモードでは、減圧弁41、増圧弁42、離間ロック弁22、及び反力弁3が通電(制御)されず、減圧弁41は開状態、増圧弁42は閉状態、離間ロック弁22は閉状態、反力弁3は開状態となっている。そして、ブレーキペダル10が踏まれた後も非通電状態(無制御状態)が維持される。
【0075】
REGモードにおいて、ブレーキペダル10が踏まれると、入力ピストン13が前進し、通路18が分断されて第一反力室1Bとリザーバ171は遮断される。この状態において、離間ロック弁22が閉状態であるため、第一反力室1Bは、密閉状態となる。ただし、第二反力室1Cは、反力弁3が開状態であるためリザーバ171に連通している。
【0076】
ここで、さらにブレーキペダル10が踏み込まれると、入力ピストン13が前進して第一反力室1Bの圧力が上昇し、その圧力により第一マスタシリンダ14が前進する。このとき減圧弁41及び増圧弁42は通電されていないためサーボ圧は制御されていない。つまり、第一マスタシリンダ14は、ブレーキペダル10の操作力に対応する力(第一圧力室1Bの圧力)のみで前進する。これにより、サーボ室1Aの体積が大きくなるが、レギュレータ44を介してリザーバ171に連通しているため、ブレーキ液は補充される。
【0077】
第一マスタピストン14が前進すると、リニアモード同様、第一液圧室1D及び第二液圧室1Eの圧力は上昇する。そして、第一液圧室1Dの圧力上昇により、第四室4Eの圧力も上昇する。第四室4Eの圧力上昇によりサブピストン446はシリンダ底面側に摺動する。同時に、制御ピストン445は、第一突出部446bに押されてシリンダ底面側に摺動する。これにより、突出部445bはボール弁442に当接し、ボール弁442はシリンダ底面側に押されて移動する。つまり、第一室4Aと第二室4Bは連通し、サーボ室1Aとリザーバ171は遮断され、アキュムレータ431による高圧のブレーキ液がサーボ室1Aに供給される。
【0078】
このように、REGモードでは、ブレーキペダル10の操作力により所定ストローク踏まれると、アキュムレータ431とサーボ室1Aとが連通し、制御なしにサーボ圧が上昇する。そして、第一マスタピストン14が運転手の操作力以上に前進する。これにより、各電磁弁が非通電状態であっても、高圧のブレーキ液がABS53に供給される。REGモードでは、坂道停車時等を考慮して、安全に停車維持可能なブレーキ力が発生するように制御マップが作成されている。
【0079】
REGモードにおいて第一マスタピストン14を前進させる力は、操作力に対応する力に相当する。つまり、操作力に対応する力とは、操作力のみにより第一マスタシリンダ14を前進させる力、及びその駆動に基づいて機械的に発生したサーボ圧により第一マスタピストン14を前進させる力、を意味する。
【0080】
(異常検出に関する制御)
ここで、各電磁弁22、3、41、42、マスタ系統、及びReg系統の異常(故障・失陥)を検出するための制御について、図3及び図4を参照して説明する。Reg系統の異常については後述する。
【0081】
異常チェックでは、まずブレーキECU6が起動直後か否かをブレーキECU6自らチェック(判定)する(S101)。例えば運転手が乗車してイグニッションがONされた直後のように、ブレーキECU6が起動された直後であれば簡易チェックモード(S201)に移行される。簡易チェックモードについては後述する。
【0082】
例えば運転手が降車したときのように、ブレーキECU6が起動直後でない場合(S101:No)、判定許可状態であるか否かがチェックされる(S102)。判定許可状態とは、実際にブレーキペダル10が踏まれていない状態であって、ブレーキペダル10が踏まれる状態でない(例えば運転手がシートに着座していない)状態のことである。判定許可されると(S102:Yes)、ブレーキECU6がサーボ圧発生装置4を制御してサーボ室1Aを自動加圧する(S103)。
【0083】
つまり、ブレーキECU6は、ブレーキペダル10の操作に関わらず、減圧弁41に閉指示(閉状態にさせる指令)し且つ増圧弁42に開指示し、サーボ室1Aに加圧供給しサーボ圧の漸増を開始する。なお、このとき、離間ロック弁22及び反力弁3は、制御(通電)されておらず、正常であれば離間ロック弁22は閉状態、反力弁3は開状態となっている(図1参照)。
【0084】
ここで、圧力センサ74の情報に基づいて、サーボ圧が0であるか否かがチェックされる(S104)。サーボ圧が0の場合(S104:No)、モータ433が作動していないか、あるいは減圧弁41又は増圧弁42が指示通りに動作していないことが分かる。ここで、さらに圧力センサ75の情報に基づいてアキュムレータ圧が減少しているか否かがチェックされる(S105)。
【0085】
アキュムレータ圧が減少していない場合(S105:No)、増圧弁42のOFF故障(OFFのまま、すなわち閉状態で固定)と判定され(S107)、異常フラグが立って記憶される。この判定については、図5(a)を参照できる。反対にアキュムレータ圧が減少している場合(S105:Yes)、減圧弁41のOFF故障(OFFのまま、すなわち開状態で固定)と判定され(S106)、異常フラグが立って記憶される。この判定については図5(b)を参照できる。図中の「開」、「閉」、「ON」、及び「OFF」については、ブレーキECU6からの指示を意味する。なお、モータ433のOFF故障(OFFのままONしない)に関しては図5(c)を参照できる。
【0086】
一方、サーボ圧が上昇している場合(S104:Yes)、サーボ室1Aの加圧制御は正常に行われていることが分かる。ここで、圧力センサ73の情報に基づいて、反力圧が0であるか否かがチェックされる(S108)。反力圧が上昇している場合(S108:No)、本来反力弁3(開)により連通されているはずの第二反力室1Cとリザーバ171とが遮断されていることとなる。つまり、この場合、反力弁3のON故障(ONのまま、すなわち閉状態で固定)と判定され(S109)、異常フラグが立って記憶される。この判定については図6(a)を参照できる。
【0087】
反力圧がほぼ0の場合(S108:Yes)、第二反力室1Cとリザーバ171とが連通していることとなり、反力弁3は正常にOFFされている(開状態)と分かる。続いて、ブレーキECU6は、反力弁3に閉指示を与える(S110)。そして、反力弁3への閉指示から所定時間経過後、反力圧が設定された所定値以上であるか否かがチェックされる(S111)。反力圧が所定値未満である場合(S111:No)、反力弁3が閉指示に対して動作しないOFF故障(OFFのまま、すなわち開状態で固定)であるか、又は離間ロック弁22が開状態であるが故に第二反力室1Cが第一反力室1B及び通路18を介してリザーバ171に連通しているか、の何れかであることが分かる。つまり、この場合、反力弁3のOFF故障又は離間ロック弁22のON故障(ONのまま、すなわち開状態で固定)であると判定され(S112)、異常フラグが立って記憶される。この反力弁3のOFF故障と離間ロック弁22のON故障の判定については、図6(b)を参照できる。また、ここでの切り分け方法については、後述する。
【0088】
一方、反力圧が所定値以上である場合(S111:Yes)、離間ロック弁22は正常にOFFされており(閉状態)、反力弁3は正常にONされた(開→閉)ことが分かる(S113)。
【0089】
続いて、漸増しているサーボ圧が所定値P1になったか否かがチェックされる(S114)。サーボ圧がP1未満である場合(S114:No)、反力圧が所定値P2であるか否かがチェックされる(S115)。サーボ圧がP1に達する前に反力圧がP2に達した場合(S115:Yes)、第一マスタピストン14がサーボ室1Aへのブレーキ液供給に対して摺動しやすい状態であり、正常時よりも第一マスタピストン14が摺動することにより、第二反力室1Cの体積が減少するため、サーボ室1Aに対する反力圧が正常よりも高くなることが分かる。つまり、例えばシール部材92〜94の何れかが破損等し、第一液圧室1D又は第二液圧室1Eがリザーバ172又はリザーバ173と連通するマスタ系統の失陥であると判定される(S116)。そして、異常フラグが立って記憶される。マスタ系統の異常とは、主にマスタシリンダ1内のシール部材破損等による油漏れの失陥、マスタシリンダ1からホイールシリンダ541〜544までの配管の破損、又はホイールシリンダ541〜544の破損を意味する。このマスタ系統失陥の判定については、図7(a)を参照できる。第二反力室1Cは、マスタ系統が異常か否かを検証するための検証室の役割(機能)を兼ねている。なお、反力室が1つの場合(あるいは本実施形態のように反力室が2つの場合でも)、第一マスタピストン14の前進に伴って体積が減少する検証室を別途設けた構成とすることができる。
【0090】
一方、マスタ系統の異常が検出されず(S115:No)且つサーボ圧がP1に達した場合(S114:Yes)、ブレーキECU6は、S103から継続してサーボ圧を漸増させていた制御を止め、サーボ圧が一定となるように制御する(S117)。そして、反力圧が上記P2であるか否かをチェックする(S118)。反力圧がP2でない場合(S118:No)、すなわちサーボ圧=P1且つ反力圧≠P2(反力圧<P2)の場合、Reg系統の異常と判定され(S119)、異常フラグが立って記憶される。この判定については図7(b)を参照できる。
【0091】
Reg系統の異常とは、主にレギュレータ44内のシール部材破損等による油漏れの失陥を意味する。例えば、レギュレータ44内のシール部材の破損により、圧力制御室4Dと第四室4Eとが連通した場合、サーボ圧に相当する圧力制御室4Dの圧力のブレーキ液が、第四室4Eに流入し、第四室4Eから配管511、51を介して第一液圧室1Dに流入する。第一液圧室1Dの圧力が上昇し、第二マスタピストン15が前進する。そして、第一液圧室1Dがサーボ圧の上昇とともに高圧となり、第一マスタピストン14は、軸方向両側から高い圧力で押されることとなる。第一マスタピストン14の前進距離は、所定サーボ圧に対する正常時の前進距離よりも小さくなる。これにより、第二反力室1Cに圧力がかかりにくくなり、所定サーボ圧(P1)に対して検出される反力圧は、所定サーボ圧(P1)に対する正常時の反力圧(P2)よりも小さくなる。したがって、上記状態において、所定サーボ圧の際の反力圧を検出することで、Reg系統の異常が検出できる。
【0092】
なお、P1がある程度大きな値に設定されている。つまり、チェックステップがS114に到達するまでにサーボ圧がP1に到達しないように、P1が設定されている。したがって、サーボ圧がP1に達するまでは、反力圧がP2であるか否かがチェックされる(S115)。本実施形態では、P2は、S114の状態においてどこも異常がない場合の、サーボ圧がP1の際に検出されるべき反力圧の値に設定されている。ただし、若干の誤差を考慮して設定されても良い。
【0093】
一方、サーボ圧がP1の際に反力圧がP2である場合(S118:Yes)、すなわちサーボ圧=P1且つ反力圧=P2である場合、マスタ系統及びReg系統は正常であると判定される(S120)。
【0094】
続いて、図4に示すように、ブレーキECU6は、離間ロック弁22に開指示(開状態にさせる命令)を与える(S121)。そして、反力圧が所定値P3未満であるか否かがチェックされる(S122)。P3は、P2よりも小さい値に設定されている。反力圧がP3以上である場合(S122:No)、離間ロック弁22が指示通り動作していないため第一反力室1Bと第二反力室1Cとが連通せず、反力圧が下がらなかったことが分かる。つまり、この場合、離間ロック弁22のOFF故障(OFFのまま、すなわち閉状態で固定)と判定され(S123)、異常フラグが立って記憶される。一方、反力圧がP3未満である場合(S122:Yes)、離間ロック弁22が正常にON(閉→開)したと判定される(S124)。この離間ロック弁22のOFF故障の判定については、図8を参照できる。
【0095】
その後、サーボ室に対する加圧供給を減らしていきサーボ圧を減圧する(S125)。そして、所定時間経過後も、サーボ圧がほぼ0にならなかった場合(S126:No)、減圧弁41のON故障(ONのまま、すなわち閉状態で固定)又は増圧弁42のON故障(ONのまま、すなわち開状態で固定)であると判定できる。
【0096】
そこで、サーボ圧がほぼ0でない場合(S126:No)、ブレーキECU6は、減圧弁41を開状態にし(S127)、圧力センサ74の情報を基にサーボ圧が変化するか否かをチェックする(S128)。サーボ圧が変化した(上昇した)場合(S128:No)、増圧弁42がON故障であると判定され(S129)、異常フラグが立って記憶される。この判定については図9(a)を参照できる。
【0097】
一方、サーボ圧が変化しなかった場合(S128:Yes)、増圧弁42は正常と判定できる。この場合、さらに増圧弁42を一旦閉じて(S130)、増圧弁42及び減圧弁41を閉状態とする。その後、増圧弁42のみに開指示を行い(S131)、サーボ圧を所定圧(P3)まで上昇させる(S132)。その後、増圧弁42をもう一度閉状態とする(S133)。それ以降で圧力センサ74の情報を基にサーボ圧が所定圧(P3)に保持されていることを確認する(S134)。保持が確認できたら(S134:Yes)、減圧弁41に開指示を与える(S135)。ここで、圧力センサ74の情報からサーボ圧が減少しているか否かがチェックされる(S136)。サーボ圧の減少が確認されない場合(減少していない場合)(S136:No)、減圧弁41のON故障であると判定され(S137)、異常フラグが立って記憶される。この判定については図9(b)を参照できる。なお、サーボ圧の減少が確認された場合(S136:Yes)、その他の異常の可能性ありと判定され(S138)、異常フラグが立って記憶される。
【0098】
一方、減圧指示(S125)の後、所定時間経過後、サーボがほぼ0となった場合(S126:Yes)、減圧弁41及び増圧弁42、ひいてはシステムが正常であると判定される(S139)。図9は、(a)が増圧弁42のON故障に関し、(b)が減圧弁41のON故障に関する。
【0099】
最後に、各電磁弁22、3、41、42をOFF(非通電状態)にする終了処理がなされ(S140)、異常チェックが終了する。なお、参考までに、反力弁3のON故障(ONのまま、すなわち閉状態で固定)の判定については、図10も参照できる。
【0100】
なお、簡易チェックモードの場合(S101:Yes)、まず制動要求の有無がチェックされる(S201)。例えばブレーキペダル10が踏まれて制動要求がある場合(S201:No)、再びS101に戻る。制動要求がない場合(S201:Yes)、短時間モードであるか否かをチェックする(S202)。短時間モードとは、ブレーキECU6の起動したタイミングに関して、STPON起動と、IGON起動の場合が相当する。STPON起動とは、ブレーキペダル10が踏み込み時に起動した場合の起動である。IGON起動とは、イグニッションがONされることで起動した場合の起動である。これらの起動が、この判定(S202)直前に行われた場合、ブレーキペダル10が踏まれるまで時間がないと判断され(S202:Yes)、記憶手段等に記憶された異常フラグがチェックされる(S203)。
【0101】
異常フラグが立っていない場合(S203:No)、終了処理が行われる(S140)。異常フラグが立っている場合(S203:Yes)、他の部分は正常であるとして上記同様の流れで、異常フラグが立っている部分のみをチェックする(S204)。異常がある場合、またそのことが記憶される。その後、サーボ圧減圧や電磁弁OFF等の終了処理が行われる(S140)。なお、異常が検出された場合、ランプなどの通知手段により運転手に通知される。
【0102】
本実施形態によれば、上記(S116)のように、ブレーキペダル10が無操作状態において、サーボ圧発生装置4によりサーボ圧を自動加圧し、その際のサーボ圧及び反力圧(ブレーキ液消費量相関値)に基づいて、マスタ系統の失陥を検出することができる。また、同様に、ブレーキペダル10が無操作状態において、サーボ圧発生装置4によりサーボ圧を自動加圧し、その際のサーボ圧及び反力圧(ブレーキ液消費量相関値)に基づいて、レギュレータ44の失陥を検出することができる。
【0103】
<異常検出制御の変形態様>
ここで、図11に示すように、図3におけるS102とS103の間に、ABS53の入力弁であるすべての保持弁531に閉指示を出す入力弁閉鎖ステップ(S301)を設けても良い。これにより、検出された異常がマスタ系統の異常によるものか、ABS53より下流における油漏れ等によるかを確実に切り分けることができる。すべての保持弁531を閉状態とすることで、S116で検出された異常がマスタ系統の異常であるとより確実に判定することができる。例えば、ホイールシリンダ541〜544の油漏れと切り分けすることができる。
【0104】
あるいは、図12に示すように、配管51、52上に常開型の電磁弁である切替弁51a、52aを設けても良い。ただし、切替弁51aは、配管511との接続点よりも下流側(ABS53側)に設けられる。これにより、上記入力弁閉鎖ステップにおいて、保持弁531でなく切替弁51a、52aを閉状態にすることで上記同様の効果が発揮される。切替弁51a、52aは、開閉制御可能な弁装置であれば良く、常開型に限らず、電磁弁に限られない。
【0105】
また、S112で検出された異常(離間ロック弁22のOF故障又は反力弁3のOFF故障)は、以下の方法で切り分けることができる。S112で異常フラグが立った場合、通知手段が異常を通知するとともに、運転手にブレーキペダル10を踏むように通知する(例えば異常ランプを点灯ではなく点滅させる)。運転手がその通知に従ってブレーキペダル10を踏み、その際に反力圧が上昇しない場合、反力弁3が閉状態になっていないOFF故障(OFFのまま、すなわち開状態で固定)であることが分かる。反力弁3が開状態であれば、第二反力室1Cとリザーバ171が連通しているため、反力圧は上がらない。反対にそうでない場合は、離間ロック弁22のOFF故障と判定できる。
【0106】
また、S127で検出された異常(減圧弁41のON故障又は増圧弁42のON故障)は、以下の方法で切り分けることができる。S127で異常が検出された後、つまり減圧弁41開指示状態且つ増圧弁42閉指示状態で、減圧弁41に閉指示を与える(図9上段参照)。これにより、サーボ圧が上昇すれば、減圧弁41は正常に閉状態となり、増圧弁42が閉指示にも関わらず開状態になっていることが分かり、増圧弁42のON故障であると判定できる。なお、S126gがYesの場合、S128〜S135を飛ばして、終了処理(S137)するように設定しても良い。これにより、再度加圧することなく短時間で網羅的な異常チェックをすることができる。
【0107】
また、減圧弁41、反力弁3、圧力調整部43、及びABS53には適宜逆止弁zが設けられている。ABS53の構成は上記に限られない。例えば、保持弁531の下流側(ホイールシリンダ側)に、ホイールシリンダに対するマスタシリンダ圧をさらに増減圧制御可能なアクチュエータ(図示せず)を設置しても良い。アクチュエータは、例えばシリンダ及びピストンを有し、ピストンがブレーキECU6によって制御される。
【0108】
また、レギュレータ44については、図13に示すように、ポート4hに対応する位置に第四室4Eにつながるポート4iを形成し、ポート4iとABS53(保持弁531)とを配管512で接続する構成であっても良い。配管511が取り除かれ、配管51がポート134とポート4hとを接続する。
【0109】
また、図14に示すように、ポート4gを塞ぎ(又はABS53に接続し)、ポート4fに配管511(又は配管51)を接続させる。そして、ポート4hが配管413を介して減圧弁41に接続され、ポート4iが配管421を介して増圧弁42に接続される。この構成によれば、REGモードにおいて、圧力制御室4Dにマスタピストン圧が加わり、制御ピストン445をシリンダ底面側に摺動させる。つまり、圧力制御室4Dが本実施形態の第四室4Eの役割を果たす。そして、この構成における第四室4Eは、リニアモードにおいて各電磁弁41、42により圧力が制御され、加圧されると、サブピストン446と制御ピストン445をシリンダ底面側に摺動させる。つまり、役割が第四室4Eと圧力制御室4Dとで入れ替わっている。
【0110】
以上、本発明におけるレギュレータ(44)は、シリンダ(441)内に区画され蓄圧部(431)に連通する第一室(4A)と、シリンダ(441)内に区画されサーボ室(1A)に連通する第二室(4B)と、シリンダ(441)内に区画され増圧弁(42)及び減圧弁(41)に連通する圧力制御室(4D)と、シリンダ(441)内に区画され液圧室(1D)に連通する受圧室(第四室4E)と、を少なくとも備えている。そして、レギュレータ(44)は、圧力制御室(4D)の増圧又は受圧室(4E)の増圧に応じて前進するピストン(445、又は、445及び446)と、当該ピストンの前進によって第一室4Aと第二室4Bとを連通させる弁部(442、443、444)と、を備えていれば良い。また、ストロークセンサ72に代えて操作力センサを備え、制御においてストローク量に代えてブレーキペダル10の操作力(踏力)を用いても良く、又は併用しても良い。
【0111】
また、本実施形態の車両用制動装置は、マスタシリンダの内周面及びマスタピストンの後方外周面により区画され、マスタピストンの前進に伴って体積が増大する第一反力室(1B)と、マスタシリンダの内周面及びマスタピストンの後方外周面により第一反力室とは隔離して区画され、マスタピストンの前進に伴って体積が減少する第二反力室(1C)と、第一反力室と第二反力室とを連通させる連通手段(22)と、を備え、失陥検出手段(6)は、ブレーキ液消費量相関値としてのサーボ圧及び反力圧に基づいて、マスタ系統の失陥を検出するともいえる。この場合、第一反力室及び第二反力室に反力圧が発生したとしても、その反力圧はマスタピストンの後方外周面と前方外周面の両外周面に作用し、マスタピストンがサーボ圧により駆動されるため、サーボ圧及び反力圧の関係が簡潔なものになる。よって、サーボ圧及び反力圧に基づいてマスタ系統の失陥を簡素な構成で精度良く検出することができる。さらに、車両用制動装置は、マスタシリンダ内に第一反力室及び第二反力室とは隔離して形成され、入力ピストンの動作に関わらず、マスタピストンの前進に伴って体積が減少する液圧室(1D、1E)と、液圧室とホイールシリンダとの間に配置され、液圧室から供給されるブレーキ液を調整可能に構成され、調整されたブレーキ液を前記ホイールシリンダに供給する調整供給手段(53)と、を備えるともいえる。
【符号の説明】
【0112】
1:マスタシリンダ、
11:メインシリンダ、12:カバーシリンダ、
13:入力ピストン、
14:第一マスタピストン、15:第二マスタピストン、
1A:サーボ室、1B:第一反力室、1C:第二反力室(検証室)、
1D:第一液圧室、1E:第二液圧室、
2:反力発生装置、3:反力弁、
4:サーボ圧発生装置、
41:減圧弁、42:増圧弁、431:アキュムレータ、
5:ブレーキ、 51a、52a:切替弁、 531:保持弁(入力弁)
541、542、543、544:ホイールシリンダ、
5FR、5FL、5RR、5RL:車輪、
6:ブレーキECU、
73、74、75:圧力センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ操作部材(10)の操作力に対応する力及びサーボ室(1A)内のサーボ圧に対応する力のいずれかによってマスタピストン(14、15)が駆動されて、マスタシリンダ圧を発生させる車両用制動装置において、
ブレーキ液を蓄圧する蓄圧部(431)と、
前記蓄圧部内のブレーキ液を使用して、前記ブレーキ操作部材の操作に関わらず前記サーボ圧を発生可能に構成されているサーボ圧発生部(4)と、
前記蓄圧部内のブレーキ液の消費量に相関するブレーキ液消費量相関値を検出するブレーキ液消費量相関値検出手段(73、74、75)と、
前記ブレーキ操作部材が操作されていない状態で前記サーボ圧発生部により前記サーボ圧のみで前記マスタピストンを駆動させ、その際に前記ブレーキ液消費量相関値検出手段により検出されているブレーキ液消費量相関値に基づいて、マスタ系統の失陥を検出する失陥検出手段(6)と、
を備える車両用制動装置。
【請求項2】
前記マスタピストンの前進に伴って体積が減少する検証室(1C)を備え、
前記失陥検出手段(6)は、前記ブレーキ液消費量相関値としての前記サーボ圧及び前記検証室の圧力に基づいて、前記マスタ系統の失陥を検出する請求項1に記載の車両用制動装置。
【請求項3】
前記マスタピストンの前進に伴って体積が減少し、前記マスタシリンダ圧を発生させる液圧室(1D、1E)と、
前記液圧室とホイールシリンダとの間に配置され、前記液圧室から供給されるブレーキ液を調整可能に構成され、調整されたブレーキ液を前記ホイールシリンダに供給する調整供給手段(53)と、
を備え、
前記失陥検出手段(6)は、前記調整供給手段の入力側に設けられた入力弁(531)を閉弁させた上で、前記マスタ系統の失陥検出を行う請求項1又は2に記載の車両用制動装置。
【請求項4】
前記マスタピストンの前進に伴って体積が減少し、前記マスタシリンダ圧を発生させる液圧室(1D、1E)と、
前記液圧室とホイールシリンダとの間に配置され、前記液圧室から供給されるブレーキ液を調整可能に構成され、調整されたブレーキ液を前記ホイールシリンダに供給する調整供給手段(53)と、
前記液圧室と前記調整供給手段との間に配置され、前記液圧室と前記調整供給手段とを接続/非接続させる切替弁(51a、52a)を備え、
前記失陥検出手段(6)は、前記切替弁を閉弁させた上で、前記マスタ系統の失陥検出を行う請求項1又は2に記載の車両用制動装置。
【請求項1】
ブレーキ操作部材(10)の操作力に対応する力及びサーボ室(1A)内のサーボ圧に対応する力のいずれかによってマスタピストン(14、15)が駆動されて、マスタシリンダ圧を発生させる車両用制動装置において、
ブレーキ液を蓄圧する蓄圧部(431)と、
前記蓄圧部内のブレーキ液を使用して、前記ブレーキ操作部材の操作に関わらず前記サーボ圧を発生可能に構成されているサーボ圧発生部(4)と、
前記蓄圧部内のブレーキ液の消費量に相関するブレーキ液消費量相関値を検出するブレーキ液消費量相関値検出手段(73、74、75)と、
前記ブレーキ操作部材が操作されていない状態で前記サーボ圧発生部により前記サーボ圧のみで前記マスタピストンを駆動させ、その際に前記ブレーキ液消費量相関値検出手段により検出されているブレーキ液消費量相関値に基づいて、マスタ系統の失陥を検出する失陥検出手段(6)と、
を備える車両用制動装置。
【請求項2】
前記マスタピストンの前進に伴って体積が減少する検証室(1C)を備え、
前記失陥検出手段(6)は、前記ブレーキ液消費量相関値としての前記サーボ圧及び前記検証室の圧力に基づいて、前記マスタ系統の失陥を検出する請求項1に記載の車両用制動装置。
【請求項3】
前記マスタピストンの前進に伴って体積が減少し、前記マスタシリンダ圧を発生させる液圧室(1D、1E)と、
前記液圧室とホイールシリンダとの間に配置され、前記液圧室から供給されるブレーキ液を調整可能に構成され、調整されたブレーキ液を前記ホイールシリンダに供給する調整供給手段(53)と、
を備え、
前記失陥検出手段(6)は、前記調整供給手段の入力側に設けられた入力弁(531)を閉弁させた上で、前記マスタ系統の失陥検出を行う請求項1又は2に記載の車両用制動装置。
【請求項4】
前記マスタピストンの前進に伴って体積が減少し、前記マスタシリンダ圧を発生させる液圧室(1D、1E)と、
前記液圧室とホイールシリンダとの間に配置され、前記液圧室から供給されるブレーキ液を調整可能に構成され、調整されたブレーキ液を前記ホイールシリンダに供給する調整供給手段(53)と、
前記液圧室と前記調整供給手段との間に配置され、前記液圧室と前記調整供給手段とを接続/非接続させる切替弁(51a、52a)を備え、
前記失陥検出手段(6)は、前記切替弁を閉弁させた上で、前記マスタ系統の失陥検出を行う請求項1又は2に記載の車両用制動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−107560(P2013−107560A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255641(P2011−255641)
【出願日】平成23年11月23日(2011.11.23)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月23日(2011.11.23)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】
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