説明

車両用制御装置

【課題】車輪のキャンバ角をアクチュエータの駆動力により調整可能な車両に対し、アクチュエータの消費エネルギーを低減することができる車両用制御装置を提供する。
【解決手段】車輪を保持するキャリア部材41をアッパーアーム42及びロアアーム43により上下動可能に車体に連結し、アッパーアーム42の一側をホイール部材93aの軸心O1から偏心した位置(軸心O2)に連結する。サスストロークに伴い、軸心O1が軸心O1及び軸心O3を結ぶ直線上に位置しなくなった場合には、その分、ホイール部材93aを回転駆動して補正する。これにより、車輪のキャンバ角を機械的な摩擦力により維持し易くすることができるので、車輪のキャンバ角を所定角度に維持するために必要なモータの駆動力を小さく又は解除して、その消費エネルギーの低減を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪のキャンバ角をアクチュエータの駆動力により調整可能な車両を制御する車両用制御装置に関し、特に、アクチュエータの消費エネルギーを低減することができる車両用制御装置を提供することを目的としている。
に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、アクチュエータを利用して、車輪のキャンバ角を調整する技術が知られている。例えば、特許文献1には、車輪を支持するアクスル532が車体に対してボールジョイント533の1点で支持されると共に、ボールジョイント533による支持点を跨ぐアクスル532上の2点がアクチュエータ534,535を介して車体に連結された車両に対して、アクチュエータ534,535の伸縮駆動を制御することで、アクスル532を車体に対して変位させ、車輪のキャンバ角を調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−122932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術では、アクチュエータの駆動力により車輪のキャンバ角を所定角度に維持する構造であるので、アクチュエータを常に駆動し続ける必要があり、消費エネルギーが嵩む。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、車輪のキャンバ角をアクチュエータの駆動力により調整可能な車両に対し、アクチュエータの消費エネルギーを低減することができる車両用制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
請求項1記載の車両用制御装置によれば、車輪を保持するキャリア部材が第1サスペンションアーム及び第2サスペンションアームにより車体に上下動可能に連結されており、第1サスペンションアームは、一端側がホイール部材のホイール軸に対して偏心して位置する偏心連結軸を回転中心としてホイール部材に回転可能に連結されているので、回転駆動手段から付与される回転駆動力によりホイール部材がホイール軸を中心として回転されると、偏心連結軸の位置がホイール軸を中心とする回転軌跡上で移動される。これにより、車輪のキャンバ角が調整される。
【0007】
この場合、第1サスペンションアームの一端および他端をホイール部材およびキャリア部材にそれぞれ連結する偏心連結軸および他端連結軸を結ぶ直線上に、ホイール部材が回転する際の回転中心となるホイール軸が位置する状態とすることで、偏心連結軸および他端連結軸を結ぶ直線と、偏心連結軸の回転軌跡の偏心連結軸における接線とを直角とすることができるので、第1サスペンションアームからホイール部材へ力が加わっても、ホイール部材を回転させる力成分が発生せず、ホイール部材の回転を規制することができる。よって、車輪のキャンバ角を所定角度に機械的に維持することができるので、回転駆動手段の駆動力を解除しておくことができる。その結果、車輪のキャンバ角を所定角度に維持するために必要な回転駆動手段の消費エネルギーの低減を図ることができるという効果がある。
【0008】
ここで、偏心連結軸および他端連結軸を結ぶ直線上にホイール軸が位置する状態から、キャリア部材が車体に対して上下動して、偏心連結軸および他端連結軸を結ぶ直線上にホイール軸が位置しない状態になると、偏心連結軸および他端連結軸を結ぶ直線と、偏心連結軸の回転軌跡の偏心連結軸における接線とが直角ではなくなるため、第1サスペンションアームからホイール部材へ力が加わると、ホイール部材を回転させる力成分が発生し、その結果、ホイール部材が回転されることで、キャンバ角が変化される。
【0009】
この場合、偏心連結軸および他端連結軸を結ぶ直線上にホイール軸が位置しない状態となった場合に、回転駆動手段を作動させ、偏心連結軸およびホイール軸を結ぶ直線と偏心連結軸および他端連結軸を結ぶ直線とのなす角度が少なくとも小さくなるように、ホイール部材を回転させる補正手段を備えているので、かかる補正手段の制御に基づくホイール部材の回転によって、偏心連結軸および他端連結軸を結ぶ直線上にホイール軸が位置する状態へ少なくとも近づけることができる。よって、車輪のキャンバ角を所定角度に機械的に維持し易くすることができるので、車輪のキャンバ角を所定角度に維持するために必要な回転駆動手段の駆動力を少なくとも小さくする又は解除することができ、その結果、消費エネルギーの低減を図ることができるという効果がある。
【0010】
請求項2記載の車両用制御装置によれば、請求項1記載の車両用制御装置の奏する効果に加え、キャリア部材が上下動した際の変位量を検出する変位量取得手段と、その変位量取得手段により取得された変位量の値が閾値以上であるかを判断する変位量判断手段とを備え、その変位量判断手段によりキャリア部材の変位量の値が閾値以上であると判断された場合に、補正手段による回転駆動手段の作動が行われるので、回転駆動手段の無駄な作動を抑制して、その消費エネルギーを低減することができるという効果がある。
【0011】
即ち、偏心連結軸および他端連結軸を結ぶ直線上にホイール軸が位置する状態から、キャリア部材が車体に対して上下動して、偏心連結軸および他端連結軸を結ぶ直線上にホイール軸が位置しない状態になったとしても、キャリア部材の変位量が比較的小さな場合には、偏心連結軸および他端連結軸を結ぶ直線と、偏心連結軸の回転軌跡の偏心連結軸における接線とが直角ではなくなるが、それら直線と接線とのなす角度は比較的小さいため、第1サスペンションアームからホイール部材へ加わった力の内、ホイール部材を回転させる力成分も比較的小さくなる。そのため、ホイール部材を回転させる力成分よりも、機械的な摩擦力が上回り、ホイール部材の回転を規制することができる。よって、このような場合にも、補正手段による回転駆動手段の作動を行うことは、かかる回転駆動手段の作動を無駄に行うことになる。
【0012】
これに対し、請求項2では、変位量判断手段によりキャリア部材の変位量の値が閾値以上であると判断された場合(即ち、機械的な摩擦力ではホイール部材の回転を規制できない程度にキャリア部材の変位量が大きい場合)に、補正手段による回転駆動手段の作動を行うので、回転駆動手段の無駄な作動を抑制して、その消費エネルギーを低減することができる。
【0013】
請求項3記載の車両用制御装置によれば、請求項2記載の車両用制御装置の奏する効果に加え、変位量判断手段による判断は、各軸が他端連結軸、偏心連結軸およびホイール軸の順に並ぶ第1状態の場合と、各軸が他端連結軸、ホイール軸および偏心連結軸の順に並ぶ第2状態の場合とで、異なる大きさの閾値に基づいて行われるので、回転駆動手段の無駄な作動を抑制して、消費エネルギーを効率的に低減することができると共に、ホイール部材が回転して、車輪のキャンバ角が変化することを効率的に抑制することができるという効果がある。
【0014】
即ち、第1状態の場合と第2状態の場合とでは、キャリア部材の変位量が同一であっても、偏心連結軸および他端連結軸を結ぶ直線と、偏心連結軸の回転軌跡の偏心連結軸における接線とのなす角度がそれぞれ異なる角度となる。そのため、第1状態と第2状態とでは、機械的な摩擦力でホイール部材の回転を規制するために許容できるキャリア部材の変位量が異なることとなるため、変位量判断手段による判断が第1状態と第2状態とで同じ閾値に基づいて行われたのでは、例えば、第1状態(又は第2状態)では、機械的な摩擦力でホイール部材の回転を規制できる範囲であるのに、回転駆動手段が無駄に作動されることで、消費エネルギーが増加する一方、第2状態(又は第1状態)では、機械的な摩擦力でホイール部材の回転を規制できる範囲を越えているのに、回転駆動手段の作動がなされず、ホイール部材が回転されることで、車輪のキャンバ角の変化を招く。
【0015】
これに対し、請求項3では、第1状態の場合と第2状態の場合とにそれぞれ対応した閾値に基づいて、変位量判断手段の判断を行うことができるので、補正手段による回転駆動手段の作動を第1状態と第2状態とにそれぞれ適したタイミングで行うことができる。その結果、回転駆動手段の無駄な作動を抑制して、消費エネルギーを効率的に低減することができると共に、ホイール部材が回転して、車輪のキャンバ角が変化することを効率的に抑制することができる。
【0016】
請求項4記載の車両用制御装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の車両用制御装置の奏する効果に加え、回転駆動手段は、電動モータと、その電動モータの両端子を短絡する短絡回路とを備え、少なくとも前記第1状態または第2状態において、電動モータの両端子が短絡回路により短絡されるので、かかる短絡状態で電動モータが回転された場合に、電動モータにより発電された電流を短絡回路に流し、その発電電流により電動モータの回転に制動をかけることができる。これにより、第1サスペンションアームからホイール部材へ力が加わり、ホイール部材が回転される場合に、そのホイール部材の回転に制動をかけることができる。よって、例えば、キャリア部材の上下動として比較的短時間に大きな変位が入力され、補正手段による回転駆動手段の作動が間に合わないような場合に、ホイール部材に制動をかけることができ、その結果、車輪のキャンバ角が変化することを抑制することができるという効果がある。
【0017】
請求項5記載の車両用制御装置によれば、請求項3記載の車両用制御装置の奏する効果に加え、車両は、第1サスペンションアームがアッパーアームとしてホイール部材とキャリア部材とを連結すると共に、第2サスペンションアームがロアアームとして第1サスペンションの下方に対向配置されつつ車体とキャリア部材とを連結することで構成されたダブルウィッシュボーン式サスペンション構造により車輪を懸架するので、ストロークする際のキャンバ角の変化を抑制することができるという効果がある。
【0018】
また、ホイール部材に連結される第1サスペンションアームがアッパーアームとして構成されているので、ロアアーム側となる第2サスペンションアームに連結される場合と比較して、車輪の接地面側を支点として車輪のキャンバ角を調整する動作を行うことができるので、かかるキャンバ角を調整するための駆動力を低減することができるという効果がある。
【0019】
この場合、キャリア部材の変位量が同一であっても、偏心連結軸および他端連結軸を結ぶ直線と、偏心連結軸の回転軌跡の偏心連結軸における接線とのなす角度は、第1状態の場合よりも第2状態の場合の方が大きな角度となる。即ち、機械的な摩擦力でホイール部材の回転を規制するために許容できるキャリア部材の変位量は、第2状態の場合の方が、第1状態の場合よりも小さくなる。これに対し、請求項5では、変位量判断手段による判断が、第1状態の場合よりも、第2状態の場合の方が小さな値の閾値に基づいて行われるので、第2状態において、機械的な摩擦力でホイール部材の回転を規制できる範囲を越える前に、回転駆動手段を作動させ、ホイール部材の回転を規制することができ、その結果、キャンバ角の変化を確実に抑制することができる。一方、第1状態において、機械的な摩擦力でホイール部材の回転を規制できる範囲であるのに、回転駆動手段が無駄に作動されることを抑制して、消費エネルギーの低減を図ることができる。即ち、回転駆動手段の無駄な作動を抑制して、消費エネルギーを低減することができると共に、ホイール部材が回転して、車輪のキャンバ角が変化することを抑制することができる。
【0020】
請求項6記載の車両用制御装置によれば、請求項1から5のいずれかに記載の車両用制御装置の奏する効果に加え、補正手段は、偏心連結軸および他端連結軸を結ぶ直線上にホイール軸が位置する状態から、キャリア部材が車体に対して上下動して、偏心連結軸および他端連結軸を結ぶ直線上にホイール軸が位置しない状態となった場合に、偏心連結軸および他端連結軸を結ぶ直線上にホイール軸が位置するように、ホイール部材を回転させるので、第1サスペンションアームからホイール部材へ力が加わっても、ホイール部材が回転することを確実に規制することができる。よって、その後に、キャリア部材の車体に対する上下動が発生した場合でも、補正手段による回転駆動手段の作動を最小限とすることができる。その結果、回転駆動手段の作動を効率的に抑制して、消費エネルギーを低減することができるという効果がある。
【0021】
請求項7記載の車両用制御装置によれば、請求項1から6のいずれかに記載の車両用制御装置の奏する効果に加え、設定動作判断手段により第1キャンバ角設定手段または第2キャンバ角設定手段によるキャンバ角の設定動作が行われていると判断されない場合に、補正手段による回転駆動手段の作動が行われるので、回転駆動手段の無駄な作動を抑制して、消費エネルギーを低減することができる。即ち、偏心連結軸および他端連結軸を結ぶ直線上にホイール軸が位置しない状態となった場合であっても、第1キャンバ角設定手段または第2キャンバ角設定手段によるキャンバ角の設定動作が行われる場合には、偏心連結軸および他端連結軸を結ぶ直線上にホイール軸が位置する状態とすることができる。よって、このような場合に、回転駆動手段が無駄に作動されることを抑制して、消費エネルギーの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施の形態における車両用制御装置が搭載される車両を模式的に示した模式図である。
【図2】懸架装置の斜視図である。
【図3】(a)は、キャンバ角調整装置の上面模式図であり、(b)は、図3(a)のIIIb−IIIb線におけるキャンバ角調整装置の断面模式図である。
【図4】(a)は、第1状態における懸架装置の正面模式図であり、(b)は、第2状態における懸架装置の正面模式図である。
【図5】車両用制御装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図6】(a)は、RRモータを駆動制御する駆動制御回路の模式図であり、(b)は正回転回路が形成された状態を、(c)は逆回転回路が形成された状態を、(d)は短絡回路が形成された状態を、それぞれ示す駆動制御回路の模式図である。
【図7】状態量判断処理を示すフローチャートである。
【図8】走行状態判断処理を示すフローチャートである。
【図9】偏摩耗荷重判断処理について説明する。
【図10】キャンバ制御処理を示すフローチャートである。
【図11】(a)は、第1状態における懸架装置を模式的に図示する模式図であり、(b)は、第2状態における懸架装置を模式的に図示する模式図である。
【図12】(a)は、図11(a)の部分拡大図であり、(b)は、図11(b)の部分拡大図である。
【図13】ストローク量判断処理を示すフローチャートである。
【図14】補正処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施の形態における車両用制御装置100が搭載される車両1を模式的に示した模式図である。なお、図1の矢印U−D,L−R,F−Bは、車両1の上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示している。
【0024】
まず、車両1の概略構成について説明する。車両1は、図1に示すように、車体BFと、その車体BFを支持する複数(本実施の形態では4輪)の車輪2と、それら複数の車輪2の内の一部(本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FR)を回転駆動する車輪駆動装置3と、各車輪2を車体BFに独立に懸架する懸架装置4,14と、複数の車輪2の内の一部(本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FR)を操舵する操舵装置5とを主に備えて構成されている。
【0025】
次いで、各部の詳細構成について説明する。車輪2は、図1に示すように、車両1の前方側(矢印F方向側)に位置する左右の前輪2FL,2FRと、車両1の後方側(矢印B方向側)に位置する左右の後輪2RL,2RRとを備えている。なお、本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FRは、車輪駆動装置3により回転駆動される駆動輪として構成される一方、左右の後輪2RL,2RRは、車両1の走行に伴って従動される従動輪として構成されている。
【0026】
また、車輪2は、左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RRが全て同じ形状および特性に構成され、それら左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RRのトレッドの幅(図1左右方向の寸法)が全て同じ幅に構成されている。
【0027】
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FRを回転駆動するための装置であり、後述するように電動モータ3aにより構成されている(図5参照)。また、電動モータ3aは、図1に示すように、デファレンシャルギヤ(図示せず)及び一対のドライブシャフト31を介して左右の前輪2FL,2FRに接続されている。
【0028】
運転者がアクセルペダル61を操作した場合には、車輪駆動装置3から左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力が付与され、それら左右の前輪2FL,2FRがアクセルペダル61の操作量に応じて回転駆動される。なお、左右の前輪2FL,2FRの回転差は、デファレンシャルギヤにより吸収される。
【0029】
懸架装置4,14は、路面から車輪2を介して車体BFに伝わる振動を緩和するための装置、いわゆるサスペンションとして機能するものであり、伸縮可能に構成され、図1に示すように、懸架装置4が左右の前輪2FL,2FRを、懸架装置14が左右の後輪2RL,2RRを、それぞれ車体BFに懸架する。なお、左右の後輪2RL,2RRを懸架する懸架装置14は、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を調整するキャンバ角調整機構としての機能を兼ね備えている。
【0030】
ここで、図2から図4を参照して、懸架装置14の詳細構成について説明する。図2は、懸架装置14の斜視図である。なお、懸架装置14の構成は左右共通であるので、以下においては右の後輪2RRを懸架する懸架装置14についてのみ説明し、左の後輪2RLを懸架する懸架装置14についての説明を省略する。
【0031】
図2に示すように、懸架装置14は、ダブルウィッシュボーン式サスペンション構造として構成され、車輪2(右の後輪2RR)を回転可能に保持するキャリア部材41と、そのキャリア部材41を車体BFに上下動可能に連結すると共に互いに所定間隔を隔てて上下に配置されるアッパーアーム42及びロアアーム43と、ロアアーム43及びアッパーブラケットUBの間に介装され緩衝装置として機能するコイルスプリングCS及びショックアブソーバSAと、キャリア部材41の上下動を許容しつつ前後方向の変位を規制するトレーリングアーム44と、アッパーアーム42及び車体BFとの間に介装されるキャンバ角調整装置45とを主に備えて構成される。なお、ロアアーム43は2本が配設されている。
【0032】
このように、本実施の形態では、ダブルウィッシュボーン式サスペンション構造により車輪2を懸架するので、車輪2が車体BFに対して上下動し、懸架装置14が伸縮(以下「サスストローク)と称す)する際のキャンバ角の変化を最小限に抑制することができる。キャンバ角調整装置45がアッパーアーム42に連結されるので、ロアアーム43に連結される場合と比較して、車輪2の接地面側を支点として車輪2のキャンバ角を調整する動作を行うことができるので、かかるキャンバ角を調整するための駆動力を低減することができる。
【0033】
図3を参照して、キャンバ角調整装置45の詳細構成を説明する。図3(a)は、キャンバ角調整装置45の上面模式図であり、図3(b)は、図3(a)のIIIb−IIIb線におけるキャンバ角調整装置45の断面模式図である。なお、図3(a)では、一部の構成を部分的に断面視した状態が図示されている。
【0034】
キャンバ角調整装置45は、車輪2(右の後輪2RR)のキャンバ角を調整するための装置であり、回転駆動力を発生するRRモータ91RRと、そのRRモータ91RRから入力される回転を減速して出力する減速装置92と、その減速装置92から出力される回転駆動力により回転駆動されるクランク部材93と、そのクランク部材93の位相を検出するRRポジションセンサ94RRとを主に備えて構成される。
【0035】
RRモータ91RRは、DCモータにより構成され、そのRRモータ91RRの回転駆動力は、減速装置92により減速された後、クランク部材93に付与される。クランク部材93は、RRモータ91RRの軸回転運動をアッパーアーム42の往復運動に変換するクランク機構として構成される部位であり、所定間隔を隔てて対向配置される一対のホイール部材93aと、それら一対のホイール部材93aの対向面間を連結するクランクピン93bとを備える。
【0036】
ホイール部材93aは、軸心O1を有する円盤状に形成され、減速装置92から付与される回転駆動力により軸心O1を回転中心として回転可能な状態で車体BF(図2参照)に配設される。クランクピン93bは、アッパーアーム42の一端側に設けられた連結部42aが回転可能に連結される軸状部材であり、ホイール部材93aの軸心O1に対して偏心して配設されている。
【0037】
即ち、クランクピン93bの軸心O2は、ホイール部材93aの軸心O1に対して、距離Erだけ偏心して位置する。よって、ホイール部材93aが軸心O1を中心として回転されると、クランクピン93bは、ホイール部材93aの軸心O1を中心とし距離Erを回転半径とする回転軌跡TRに沿って移動される。これにより、クランク部材93が回転されると、クランクピン93bに連結されたアッパーアーム42が車体BF(図2参照)に近接または離間する方向(図3上下方向)へ往復運動される。
【0038】
RRポジションセンサ94RRは、ホイール部材93aの中央に軸心O1と同軸に連結されるポジション軸94aと、そのポジション軸94aに配設されポジション軸94aの回転角に応じて抵抗値が変化する可変抵抗器(図示せず)とを備える。よって、クランク部材93が回転された場合には、可変抵抗器の抵抗値に基づいて、クランク部材93の回転角(即ち、クランクピン93bの位相)を検出できる。
【0039】
図4(a)は、第1状態における懸架装置14の正面模式図であり、図4(b)は、第2状態における懸架装置14の正面模式図である。上述したように、アッパーアーム42は、一端側に設けられた連結部42a(図3参照)がクランク軸93bを介してホイール部材93aの軸心O1から偏心した位置(軸心O2)に回転可能に連結される一方、他端側(図4左側)がキャリア部材41の上端側(図4上側)に回転可能に連結される。
【0040】
よって、RRモータ91RRから付与される回転駆動力によりクランク部材45のホイール部材93aが軸心O1を回転中心として回転されると、クランクピン93bが回転軌跡TRに沿って移動され(図3(b)参照)、アッパーアーム42が往復移動される。これにより、アッパーアーム42を介して、キャリア部材41の上端側(図4上側)が車体BFに対して近接または離間されることで、キャリア部材41に保持される車輪2のキャンバ角が調整される。
【0041】
ここで、アッパーアーム42の他端側(図4左側)をキャリア部材41の上端側に回転可能に連結する際の回転中心を軸心O3と定義する。本実施の形態では、各軸心O1,O2,O3が、車輪2から車体BFへ向かう方向(図4左から右に向かう方向)において、軸心O3、軸心O2、軸心O1の順に一直線上に並んで位置する第1状態(図4(a)に示す状態)と、軸心O3、軸心O1、軸心O2の順に一直線上に並んで位置する第2状態(図4(b)に示す状態)とのいずれか一方の状態となるように、車輪2のキャンバ角を調整する。
【0042】
なお、本実施の形態では、図4(b)に示す第2状態において、車輪2のキャンバ角がマイナス方向(車輪2の中心線が垂直線に対して車体BF側に傾いた状態)の所定角度(本実施の形態では−3°、以下「第2キャンバ角」と称す)に調整され、車輪2にネガティブキャンバが付与される。一方、図4(a)に示す第1キャンバ状態では、車輪2へのキャンバ角の付与が解除され、そのキャンバ角が0°(以下「第1キャンバ角」と称す)に調整される。
【0043】
この場合、第1状態および第2状態では、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線と、軸心O2の回転軌跡TR(図3(b)参照)の軸心O2における接線とを直角とすることができるので、アッパーアーム42からホイール部材93aへ力が加わっても、ホイール部材93aを回転させる力成分が発生せず、ホイール部材93aが回転しないようにすることができる。よって、車輪2のキャンバ角を所定角度(第1キャンバ角または第2キャンバ角)に機械的に維持することができるので、第1状態または第2状態においてRRモータ91RRの駆動力を解除しておくことができる。その結果、車輪2のキャンバ角を所定角度に維持するために必要なRRモータ91RRの消費エネルギーの低減を図ることができる。
【0044】
なお、左右の前輪2FL,2FRに対応して設けられる懸架装置4は、左右の前輪2FL,2FRのキャンバ角を調整する機能が省略されている点(即ち、キャンバ角調整装置45が省略され、アッパーアーム42の一端側が車体BFに回転可能に連結されている点)と、操舵機能を有して構成される点を除き、その他の構成は懸架装置14と同一の構成であるので、その説明を省略する。
【0045】
図1に戻って説明する。操舵装置5は、運転者によるステアリング63の操作を左右の前輪2FL,2FRに伝えて操舵するための装置であり、いわゆるラック&ピニオン式のステアリングギヤとして構成されている。
【0046】
この操舵装置5によれば、運転者によるステアリング63の操作(回転)は、まず、ステアリングコラム51を介してユニバーサルジョイント52に伝達され、ユニバーサルジョイント52により角度を変えられつつステアリングボックス53のピニオン53aに回転運動として伝達される。そして、ピニオン53aに伝達された回転運動は、ラック53bの直線運動に変換され、ラック53bが直線運動することで、ラック53bの両端に接続されたタイロッド54が移動する。その結果、タイロッド54がナックル55を押し引きすることで、車輪2に所定の舵角が付与される。
【0047】
アクセルペダル61及びブレーキペダル62は、運転者により操作される操作部材であり、各ペダル61,62の操作状態(踏み込み量、踏み込み速度など)に応じて、車両1の走行速度や制動力が決定され、車輪駆動装置3が駆動制御される。ステアリング63は、運転者により操作される操作部材であり、その操作状態(ステア角、ステア角速度など)に応じて、操舵装置5により左右の前輪2FL,2FRが操舵される。
【0048】
車両用制御装置100は、上述したように構成される車両1の各部を制御するための装置であり、例えば、各ペダル61,62やステアリング63の操作状態、或いは、サスストロークセンサ装置83の検出結果に応じてキャンバ角調整装置45(図3参照)を作動制御する。
【0049】
次いで、図5を参照して、車両用制御装置100の詳細構成について説明する。図5は、車両用制御装置100の電気的構成を示したブロック図である。車両用制御装置100は、図5に示すように、CPU71、ROM72及びRAM73を備え、それらがバスライン74を介して入出力ポート75に接続されている。また、入出力ポート75には、車輪駆動装置3等の装置が接続されている。
【0050】
CPU71は、バスライン74により接続された各部を制御する演算装置である。ROM72は、CPU71により実行される制御プログラム(例えば、図7から図10、図13及び図14に図示されるフローチャートのプログラム)や固定値データ等を記憶する書き換え不能な不揮発性のメモリである。
【0051】
RAM73は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリであり、キャンバフラグ73a、状態量フラグ73b、走行状態フラグ73c、偏摩耗荷重フラグ73d、第1輪オフ時ストロークフラグ73e1、第1輪オン時ストロークフラグ73e2、第2輪オフ時ストロークフラグ73f1及び第2輪オン時ストロークフラグ73f2が設けられている。
【0052】
キャンバフラグ73aは、車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角が第2キャンバ角に調整された状態にあるか否かを示すフラグであり、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角に調整された場合(即ち、ネガティブキャンバが付与された場合)にオンに切り替えられ、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整された場合(即ち、ネガティブキャンバの付与が解除された場合)にオフに切り替えられる。
【0053】
状態量フラグ73bは、車両1の状態量が所定の条件を満たすか否かを示すフラグであり、後述する状態量判断処理(図7参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。なお、本実施の形態における状態量フラグ73bは、アクセルペダル61、ブレーキペダル62及びステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上である場合にオンに切り替えられ、CPU71は、この状態量フラグ73bがオンである場合に、車両1の状態量が所定の条件を満たしていると判断する。
【0054】
走行状態フラグ73bは、車両1の走行状態が所定の直進状態であるか否かを示すフラグであり、後述する走行状態判断処理(図8参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。なお、本実施の形態における走行状態フラグ73cは、車両1の走行速度が所定の走行速度以上であり、且つ、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下である場合にオンに切り替えられ、CPU71は、この走行状態フラグ73cがオンである場合に、車両1の走行状態が所定の直進状態であると判断する。
【0055】
偏摩耗荷重フラグ73dは、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角の状態、即ち、車輪2にネガティブキャンバが付与された状態で車両1が走行する場合に、車輪2の接地荷重がタイヤ(トレッド)に偏摩耗を引き起こす恐れのある接地荷重(以下「偏摩耗荷重」と称す)であるか否かを示すフラグであり、後述する偏摩耗荷重判断処理(図9参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。CPU71は、この偏摩耗荷重フラグ73dがオンである場合に、車輪2の接地荷重がタイヤに偏摩耗を引き起こす恐れのある偏摩耗荷重であると判断する。
【0056】
第1輪オフ時ストロークフラグ73e1は、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整された状態(即ち、ネガティブキャンバの付与が解除された状態)において、第1輪(本実施の形態では右の後輪2RR)を懸架する懸架装置14の伸縮量(以下「サスストローク量」と称す)が所定の閾値(即ち、ROM72に記憶されている「キャンバオフ時閾値(図示せず)」)以上となったか否かを示すフラグであり、後述するサスストローク量判断処理(図13参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。
【0057】
第1輪オン時ストロークフラグ73e2は、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角に調整された状態(即ち、ネガティブキャンバが付与された状態)において、第1輪(本実施の形態では右の後輪2RR)を懸架する懸架装置14の伸縮量(サスストローク)が所定の閾値(即ち、ROM72に記憶されている「キャンバオン時閾値(図示せず)」)以上となったか否かを示すフラグであり、後述するサスストローク量判断処理(図13参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。
【0058】
第2輪オフ時ストロークフラグ73f1及び第2輪オン時ストロークフラグ73f2は、第1輪オフ時ストロークフラグ73e1及び第1輪オン時ストロークフラグ73e2にそれぞれ対応するフラグであり、左の後輪2RLを対象とする点を除き、基準とする車輪2の状態や使用する閾値は同一であるので、その説明は省略する。
【0059】
なお、これら第1輪オフ時ストロークフラグ73e1〜第2輪オン時ストロークフラグ73f2は、所定の閾値を超えた場合にオンに切り替えられ、所定の閾値以下である場合にオフに切り替えられる。CPU71は、各ストロークフラグ73e1〜73f2がオンである場合に、キャンバ角調整装置45の作動角(クランク部材93の位相、図3参照)を補正する。
【0060】
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FR(図1参照)を回転駆動するための装置であり、それら左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力を付与する電動モータ3aと、その電動モータ3aをCPU71からの指示に基づいて駆動制御する駆動制御回路(図示せず)とを主に備えている。但し、車輪駆動装置3は、電動モータ3aに限られず、他の駆動源を採用することは当然可能である。他の駆動源としては、例えば、油圧モータやエンジン等が例示される。
【0061】
キャンバ角調整装置45は、車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を調整するための装置であり、上述したように、各懸架装置14のクランク部材93(図3参照)へ回転駆動力を付与するRLモータ91RL及びRRモータ91RRと、それら各モータ91RL,91RRの回転駆動力により回転されたクランク部材93の位相をそれぞれ検出するRLポジションセンサ94RL及びRRポジションセンサ94RRと、それら各ポジションセンサ94RL,94RRの検出結果を処理してCPU71へ出力する出力回路(図示せず)と、CPU71からの指示に基づいて各モータ91RL,91RRをそれぞれ駆動制御する駆動制御回路とを主に備えている。
【0062】
ここで、図6を参照して、駆動制御回路について説明する。図6(a)は、RRモータ91RRを駆動制御する駆動制御回路の模式図であり、図6(b)は正回転回路が形成された状態を、図6(c)は逆回転回路が形成された状態を、図6(d)は短絡回路が形成された状態を、それぞれ示す駆動制御回路の模式図である。
【0063】
なお、RLモータ91RL及びRRモータRRを駆動制御する駆動制御回路は互いに同一の構成であるので、以下においてはRRモータ91RRを駆動制御する駆動制御回路についてのみ説明し、RLモータ91RLを駆動制御する駆動制御回路についての説明を省略する。また、図6では、抵抗の図示が省略されている。
【0064】
図6(a)に示すように、駆動制御回路は、RRモータ91RRへ所定の電圧を印加する電源PWと、4個のスイッチSW1〜SW4とを備え、RRモータ91RRの両端子を短絡する短絡回路を形成している。即ち、駆動制御回路は、電源PWの出力端子が、スイッチSW1の一端と、スイッチSW2の一端とに接続され、スイッチSW1の他端は、RRモータ91RRの両端子の一方と、スイッチSW3の一端とに接続され、スイッチSW2の他端は、RRモータ91RRの両端子の他方と、スイッチSW4の他端とに接続されている。また、スイッチSW4の他端は、スイッチSW3の他端と、電源PWのグランド端子に接続されている。
【0065】
この駆動制御回路によれば、図6(b)に示すように、スイッチSW1及びスイッチSW4を閉じ、かつ、スイッチSW2及びスイッチSW3を開くことで、正回転回路を形成することができる。これにより、RRモータ91RRに正回転方向への電圧を印加して、RRモータ91RRを正回転させることができる。一方、図6(c)に示すように、スイッチSW2及びスイッチSW3を閉じ、かつ、スイッチSW1及びスイッチSW4を開くことで、逆回転回路を形成して、RRモータ91RRへ印加される電圧極性を反転させることができる。これにより、RRモータ91RRに逆回転方向への電圧を印加して、RRモータ91RRを逆回転させることができる。
【0066】
一方、図6(d)に示すように、スイッチSW1及びスイッチSW2を開き、かつ、スイッチSW3及びスイッチSW4を閉じることで、RRモータ91RRの両端子が短絡された短絡回路を形成することができる。これにより、RRモータ91RRが外力により回転された場合には、RRモータ91RRにより発電された電流を短絡回路に流し、その発電電流によりRRモータ91RRの回転に制動をかけることができる。
【0067】
なお、本実施の形態では、車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角が第1キャンバ角または第2キャンバ角に調整され、キャンバ角調整装置45(図3参照)が第1状態または第2状態となった場合に、上述した短絡回路が形成される。これにより、アッパーアーム42からクランク部材93(即ち、クランクピン93bを介してホイール部材93a)へ力が加わり、ホイール部材93aが回転される場合に、そのホイール部材93aの回転に制動をかけることができる。よって、例えば、車輪2が段差を乗り越えた場合など、キャリア部材41の上下動として比較的短時間に大きな変位(即ち、懸架装置14のサスペンションストローク)が入力され、後述する補正処理(図14参照)による各モータ91RL,91RRの作動が間に合わないような場合に、ホイール部材93aに短絡回路による制動をかけることができ、その結果、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角または第2キャンバ角から変化することを抑制することができる。
【0068】
図5に戻って説明する。加速度センサ装置80は、車両1の加速度を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、前後方向加速度センサ80a及び左右方向加速度センサ80bと、それら各加速度センサ80a,80bの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
【0069】
前後方向加速度センサ80aは、車両1(車体フレームBF)の前後方向(図1矢印F−B方向)の加速度、いわゆる前後Gを検出するセンサであり、左右方向加速度センサ80bは、車両1(車体フレームBF)の左右方向(図1矢印L−R方向)の加速度、いわゆる横Gを検出するセンサである。なお、本実施の形態では、これら各加速度センサ80a,80bが圧電素子を利用した圧電型センサとして構成されている。
【0070】
また、CPU71は、加速度センサ装置80から入力された各加速度センサ80a,80bの検出結果(前後G、横G)を時間積分して、2方向(前後方向および左右方向)の速度をそれぞれ算出すると共に、それら2方向成分を合成することで、車両1の走行速度を取得することができる。
【0071】
ヨーレートセンサ装置81は、車両1のヨーレートを検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、車両1の重心を通る鉛直軸(図1矢印U−D方向軸)回りの車両1(車体フレームBF)の回転角速度を検出するヨーレートセンサ81aと、そのヨーレートセンサ81aの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
【0072】
ロール角センサ装置82は、車両1のロール角を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、車両1の重心を通る前後軸(図1矢印F−B方向軸)回りの車両1(車体フレームBF)の回転角を検出するロール角センサ82aと、そのロール角センサ82aの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
【0073】
なお、本実施の形態では、ヨーレートセンサ81a及びロール角センサ82aがサニャック効果により回転角速度および回転角を検出する光学式ジャイロセンサにより構成されている。但し、他の種類のジャイロセンサを採用することは当然可能である。他の種類のジャイロセンサとしては、例えば、機械式や流体式などのジャイロセンサが例示される。
【0074】
サスストロークセンサ装置83は、左右の後輪2RL,2RRを車体BFに懸架する各懸架装置14の伸縮量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各懸架装置14の伸縮量をそれぞれ検出する合計2個のRLサスストロークセンサ83RL及びRRサスストロークセンサ83RRと、それら各サスストロークセンサ83RL,83RRの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを備えている。
【0075】
本実施の形態では、各サスストロークセンサ83RL,83RRがひずみゲージとして構成されており、これら各サスストロークセンサ83RL,83RRは、各懸架装置14のショックアブソーバ(図示せず)にそれぞれ配設されている。
【0076】
なお、CPU71は、サスストロークセンサ装置83から入力された各サスストロークセンサ83RL,83RRの検出結果(伸縮量)に基づいて、左右の後輪2RL,2RRの接地荷重を取得することもできる。即ち、車輪2の接地荷重と懸架装置4の伸縮量とは比例関係を有しているので、懸架装置4の伸縮量をXとし、懸架装置4の減衰定数をkとすると、車輪2の接地荷重Fは、F=kXとなる。
【0077】
接地荷重センサ装置84は、左右の後輪2RL,2RRの接地荷重を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各車輪2の接地荷重をそれぞれ検出する合計2個のRL,RR接地荷重センサ84RL,84RRと、それら各接地荷重センサ84RL,84RRの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを備えている。
【0078】
なお、本実施の形態では、各接地荷重センサ84RL,84RRがピエゾ抵抗型の荷重センサとして構成されており、これら各接地荷重センサ84RL,84RRは、各懸架装置14のショックアブソーバSA(図2参照)にそれぞれ配設されている。
【0079】
サイドウォール潰れ代センサ装置85は、左右の後輪2RL,2RRのタイヤサイドウォールの潰れ代を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各車輪2のタイヤサイドウォールの潰れ代をそれぞれ検出する合計2個のRL,RRサイドウォール潰れ代センサ85RL,85RRと、それら各サイドウォール潰れ代センサ85RL,85RRの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを備えている。
【0080】
なお、本実施の形態では、各サイドウォール潰れ代センサ85RL,85RRがひずみゲージとして構成されており、これら各サイドウォール潰れ代センサ85RL,85RRは、各車輪2内にそれぞれ配設されている。
【0081】
アクセルペダルセンサ装置61aは、アクセルペダル61の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、アクセルペダル61の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
【0082】
ブレーキペダルセンサ装置62aは、ブレーキペダル62の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ブレーキペダル62の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
【0083】
ステアリングセンサ装置63aは、ステアリング63の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ステアリング63のステア角を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
【0084】
なお、本実施の形態では、各角度センサが電気抵抗を利用した接触型のポテンショメータとして構成されている。また、CPU71は、各センサ装置61a,62a,63aから入力された各角度センサの検出結果(操作量)を時間微分して、各ペダル61,62の踏み込み速度およびステアリング63のステア角速度を取得することができる。更に、CPU71は、取得したステアリング63のステア角速度を時間微分して、ステアリング63のステア角加速度を取得することができる。
【0085】
図3に示す他の入出力装置90としては、例えば、GPSを利用して車両1の現在位置を取得すると共にその取得した車両1の現在位置を道路に関する情報が記憶された地図データに対応付けて取得するナビゲーション装置などが例示される。
【0086】
次いで、図7を参照して、状態量判断処理について説明する。図7は、状態量判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、車両1の状態量が所定の条件を満たすかを判断する処理である。
【0087】
CPU71は、状態量判断処理に関し、まず、アクセルペダル61の操作量(踏み込み量)、ブレーキペダル62の操作量(踏み込み量)及びステアリング63の操作量(ステア角)をそれぞれ取得し(S1、S2、S3)、それら取得した各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断する(S4)。なお、S4の処理では、S1〜S3の処理でそれぞれ取得した各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量と、それら各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量にそれぞれ対応してROM72に予め記憶されている閾値(本実施の形態では、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角の状態で車両1が加速、制動または旋回する場合に、車輪2がスリップする恐れがあると判断される限界値)とを比較して、現在の各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断する。
【0088】
その結果、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上であると判断される場合には(S4:Yes)、状態量フラグ73bをオンして(S5)、この状態量判断処理を終了する。即ち、この状態量判断処理では、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上である場合に、車両1の状態量が所定の条件を満たすと判断する。
【0089】
一方、S4の処理の結果、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量のいずれもが所定の操作量より小さいと判断される場合には(S4:No)、状態量フラグ73bをオフして(S6)、この状態量判断処理を終了する。
【0090】
次いで、図8を参照して、走行状態判断処理について説明する。図8は、走行状態判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、車両1の走行状態が所定の直進状態であるか否かを判断する処理である。
【0091】
CPU71は、走行状態判断処理に関し、まず、車両1の走行速度を取得し(S11)、その取得した車両1の走行速度が所定の速度以上であるか否かを判断する(S12)。なお、S12の処理では、S11の処理で取得した車両1の走行速度と、ROM72に予め記憶されている閾値とを比較して、現在の車両1の走行速度が所定の速度以上であるか否かを判断する。
【0092】
その結果、車両1の走行速度が所定の速度より小さいと判断される場合には(S12:No)、走行状態フラグ73cをオフして(S16)、この走行状態判断処理を終了する。
【0093】
一方、S12の処理の結果、車両1の走行速度が所定の速度以上であると判断される場合には(S12:Yes)、ステアリング63の操作量(ステア角)を取得し(S13)、その取得したステアリング63の操作量が所定の操作量以下であるか否かを判断する(S14)。なお、S14の処理では、S13の処理で取得したステアリング63の操作量と、ROM72に予め記憶されている閾値(本実施の形態では、図7に示す状態量判断処理において、車両1の状態量が所定の条件を満たすか否かを判断するためのステアリング63の操作量より小さい値)とを比較して、現在のステアリング63の操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断する。
【0094】
その結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下であると判断される場合には(S14:Yes)、走行状態フラグ73cをオンして(S15)、この走行状態判断処理を終了する。即ち、この走行状態判断手段では、車両1の走行速度が所定の速度以上であり、且つ、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下である場合に、車両1の走行状態が所定の直進状態であると判断する。
【0095】
一方、S14の処理の結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量より大きいと判断される場合には(S14:No)、走行状態フラグ73cをオフして(S16)、この走行状態判断処理を終了する。
【0096】
次いで、図9を参照して、偏摩耗荷重判断処理について説明する。図9は、偏摩耗荷重判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、車輪2にネガティブキャンバが付与された状態で車両1が走行する場合に、車輪2の接地荷重がタイヤ(トレッド)に偏摩耗を引き起こす恐れのある偏摩耗荷重であるか否かを判断する処理である。
【0097】
CPU71は、偏摩耗荷重判断処理に関し、まず、各懸架装置14の伸縮量が所定の伸縮量以下であるか否かを判断する(S21)。なお、S21の処理では、サスストロークセンサ装置83により各懸架装置14の伸縮量を検出すると共に、その検出された各懸架装置14の伸縮量と、ROM72に予め記憶されている閾値とを比較して、現在の各懸架装置14の伸縮量が所定の伸縮量以下であるか否かを判断する。
【0098】
その結果、各懸架装置14の内の少なくとも1の懸架装置14の伸縮量が所定の伸縮量(即ち、ROM72に記憶されている閾値)より大きいと判断される場合には(S21:No)、その伸縮量の大きい懸架装置14に対応する車輪2(左右の後輪2RL,2RR)の接地荷重が所定の接地荷重より大きく、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
【0099】
一方、S21の処理の結果、各懸架装置14の伸縮量が所定の伸縮量以下であると判断される場合には(S21:Yes)、車両1の前後Gが所定の加速度以下であるか否かを判断する(S22)。その結果、車両1の前後Gが所定の加速度より大きいと判断される場合には(S22:No)、左右の後輪2RL,2RRの接地荷重が所定の接地荷重より大きい可能性があると推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
【0100】
一方、S22の処理の結果、車両1の前後Gが所定の加速度以下であると判断される場合には(S22:Yes)、車両1の横Gが所定の加速度以下であるか否かを判断する(S23)。その結果、車両1の横Gが所定の加速度より大きいと判断される場合には(S23:No)、左の後輪2RL又は右の後輪2RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
【0101】
一方、S23の処理の結果、車両1の横Gが所定の加速度以下であると判断される場合には(S23:Yes)、車両1のヨーレートが所定のヨーレート以下であるか否かを判断する(S24)。その結果、車両1のヨーレートが所定のヨーレートより大きいと判断される場合には(S24:No)、左の後輪2RL又は右の後輪2RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
【0102】
一方、S24の処理の結果、車両1のヨーレートが所定のヨーレート以下であると判断される場合には(S24:Yes)、車両1のロール角が所定のロール角以下であるか否かを判断する(S25)。その結果、車両1のロール角が所定のロール角より大きいと判断される場合には(S25:No)、左右の後輪2RL,2RRの接地荷重が所定の接地荷重より大きい可能性があると推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
【0103】
一方、S25の処理の結果、車両1のロール角が所定のロール角以下であると判断される場合には(S25:Yes)、左右の後輪2RL,2RRの接地荷重が所定の接地荷重以下であるか否かを判断する(S26)。なお、S26の処理では、接地荷重センサ装置84により検出された左右の後輪2RL,2RRの接地荷重と、ROM72に予め記憶されている閾値とを比較して、現在の左右の後輪2RL,2RRの接地荷重が所定の接地荷重以下であるか否かを判断する。
【0104】
その結果、左右の後輪2RL,2RRの内の少なくとも1の車輪2の接地荷重が所定の接地荷重より大きいと判断される場合には(S26:No)、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
【0105】
一方、S26の処理の結果、左右の後輪2RL,2RRの接地荷重が所定の荷重以下であると判断される場合には(S26:Yes)、左右の後輪2RL,2RRのタイヤサイドウォールの潰れ代が所定の潰れ代以下であるか否かを判断する(S27)。なお、S27の処理では、サイドウォール潰れ代センサ装置85により検出された左右の後輪2RL,2RRのタイヤサイドウォールの潰れ代と、ROM72に予め記憶されている閾値とを比較して、現在の左右の後輪2RL,2RRのタイヤサイドウォールの潰れ代が所定の潰れ代以下であるか否かを判断する。
【0106】
その結果、左右の後輪2RL,2RRの内の少なくとも1の車輪2のタイヤサイドウォールの潰れ代が所定の潰れ代より大きいと判断される場合には(S27:No)、その潰れ代の大きい車輪2の接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
【0107】
一方、S27の処理の結果、左右の後輪2RL,2RRのタイヤサイドウォールの潰れ代が所定の潰れ代以下であると判断される場合には(S27:Yes)、アクセルペダル61の操作量(踏み込み量)が所定の操作量以下であるか否かを判断する(S28)。その結果、アクセルペダル61の操作量が所定の操作量より大きいと判断される場合には(S28:No)、左右の後輪2RL,2RRの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
【0108】
一方、S28の処理の結果、アクセルペダル61の操作量が所定の操作量以下であると判断される場合には(S28:Yes)、ステアリング63の操作量(ステア角)が所定の操作量以下であるか否かを判断する(S30)。その結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量より大きいと判断される場合には(S30:No)、左の後輪2RL又は右の後輪2RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
【0109】
一方、S30の処理の結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下であると判断される場合には(S30:Yes)、ステアリング63の操作速度(ステア角速度)が所定の速度以下であるか否かを判断する(S31)。その結果、ステアリング63の操作速度が所定の速度より大きいと判断される場合には(S31:No)、左の後輪2RL又は右の後輪2RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
【0110】
一方、S31の処理の結果、ステアリング63の操作速度が所定の速度以下であると判断される場合には(S31:Yes)、ステアリング63の操作加速度(ステア角加速度)が所定の加速度以下であるか否かを判断する(S32)。その結果、ステアリング63の操作加速度が所定の加速度より大きいと判断される場合には(S32:No)、左の後輪2RL又は右の後輪2RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
【0111】
一方、S32の処理の結果、ステアリング63の操作加速度が所定の加速度以下であると判断される場合には(S32:Yes)、偏摩耗フラグ73dをオフして(S34)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
【0112】
次いで、図10を参照して、キャンバ制御処理について説明する。図10は、キャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、各車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を調整する処理である。
【0113】
CPU71は、キャンバ制御処理に関し、まず、状態量フラグ73bがオンであるか否かを判断し(S41)、状態量フラグ73bがオンであると判断される場合には(S41:Yes)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S42)。その結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S42:No)、RL,RRモータ91RL,91RRを作動させて、各車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を第2キャンバ角に調整し、各車輪2にネガティブキャンバを付与すると共に(S43)、キャンバフラグ73aをオンして(S44)、このキャンバ制御処理を終了する。
【0114】
これにより、車両1の状態量が所定の条件を満たす場合、即ち、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上であり、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角の状態で車両1が加速、制動または旋回すると車輪2がスリップする恐れがあると判断される場合には、車輪2にネガティブキャンバを付与することで、車輪2に発生するキャンバスラストを利用して、車両1の走行安定性を確保することができる。
【0115】
一方、S42の処理の結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S42:Yes)、車輪2のキャンバ角は既に第2キャンバ角に調整されているので、S43及びS44の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
【0116】
これに対し、S41の処理の結果、状態量フラグ73bがオフであると判断される場合には(S41:No)、走行状態フラグ73cがオンであるか否かを判断し(S45)、走行状態フラグ73cがオンであると判断される場合には(S45:Yes)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S46)。その結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S46:No)、RL,RRモータ91RL,91RRを作動させて、各車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を第2キャンバ角に調整し、各車輪2にネガティブキャンバを付与すると共に(S47)、キャンバフラグ73aをオンして(S48)、S49の処理を実行する。
【0117】
これにより、車両1の走行状態が所定の直進状態である場合、即ち、車両1の走行速度が所定の速度以上であると共にステアリング63の操作量が所定の操作量以下であり、車両1が比較的高速で直進している場合には、車輪2にネガティブキャンバを付与することで、車輪2の横剛性を利用して、車両1の直進安定性を確保することができる。
【0118】
一方、S46の処理の結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S46:Yes)、車輪2のキャンバ角は既に第2キャンバ角に調整されているので、S47及びS48の処理をスキップして、偏摩耗荷重フラグ73dがオンであるか否かを判断する(S49)。その結果、偏摩耗荷重フラグ73dがオンであると判断される場合には(S49:Yes)、RL,RRモータ91RL,91RRを作動させて、各車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を第1キャンバ角に調整し、各車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除すると共に(S50)、キャンバフラグ73aをオフして(S51)、このキャンバ制御処理を終了する。
【0119】
これにより、車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重である場合、即ち、車輪2にネガティブキャンバが付与された状態で車両1が走行すると、タイヤ(トレッド)に偏摩耗を引き起こす恐れがある場合には、車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除することで、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。
【0120】
一方、S49の処理の結果、偏摩耗荷重フラグ73dがオフであると判断される場合には(S49:No)、車輪2の接地荷重は偏摩耗荷重ではなく、車輪2にネガティブキャンバが付与された状態で車両1が走行しても、タイヤ(トレッド)が偏摩耗する恐れはないと判断されるので、S50及びS51の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
【0121】
これに対し、S45の処理の結果、走行状態フラグ73cがオフであると判断される場合には(S45:No)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S52)。その結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S52:Yes)、RL,RRモータ91RL,91RRを作動させて、各車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を第1キャンバ角に調整し、各車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除すると共に(S53)、キャンバフラグ73aをオフして(S54)、このキャンバ制御処理を終了する。
【0122】
これにより、車両1の状態量が所定の条件を満たしておらず車両1の走行状態が所定の直進状態でない場合、即ち、車両1の走行安定性を優先して確保する必要がない場合には、車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除することで、キャンバスラストの影響を回避して、省燃費化を図ることができる。
【0123】
一方、S52の処理の結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S52:No)、車輪2のキャンバ角は既に第1キャンバ角に調整されているので、S53及びS54の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
【0124】
このように、キャンバ制御処理を実行することで、車輪2の接地荷重が所定の接地荷重以上であると判断される場合に、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角(第2キャンバ角よりも絶対値が小さいキャンバ角)に調整され、車輪2へのネガティブキャンバの付与が解除されるので、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。即ち、車輪2の接地荷重が大きいほどタイヤの摩耗が進行し易いので、車輪2の接地荷重が所定の接地荷重以上である場合には、車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除することで、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。その結果、タイヤの寿命を向上させることができる。また、タイヤの偏摩耗を抑制することで、タイヤの接地面が不均一となるのを防止して、車両1の走行安定性を確保することができる。更に、タイヤの偏摩耗を抑制できるので、その分、省燃費化を図ることができる。
【0125】
また、車両1の状態量が所定の条件を満たすと判断される場合に、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角に調整され、車輪2にネガティブキャンバが付与されるので、車輪2に発生するキャンバスラストを利用して、車両1の走行安定性を確保することができる。また、車両1の状態量が所定の条件を満たしていないと判断され、且つ、車輪2の接地荷重が所定の接地荷重以上であると判断される場合には、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角(第2キャンバ角よりも絶対値が小さいキャンバ角)に調整され、車輪2へのネガティブキャンバの付与が解除されるので、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。よって、走行安定性の確保とタイヤの偏摩耗の抑制との両立を図ることができる。
【0126】
また、車両1の走行状態が所定の直進状態であると判断される場合に、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角に調整され、車輪2にネガティブキャンバが付与されるので、車輪2の横剛性を利用して、車両1の直進安定性を確保することができる。また、車両1の走行状態が所定の直進状態であると判断され、且つ、車輪2の接地荷重が所定の接地荷重以上であると判断される場合には、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角(第2キャンバ角よりも絶対値が小さいキャンバ角)に調整され、車輪2へのネガティブキャンバの付与が解除されるので、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。よって、直進安定性の確保とタイヤの偏摩耗の抑制との両立を図ることができる。
【0127】
次いで、図11及び図12を参照して、キャリア部材41の上下動(即ち、懸架装置14の伸縮)に対するキャンバ角調整装置45の状態変化について説明する。なお、図11及び図12では、キャリア部材41がバウンド方向へ変位して、懸架装置14が短縮される場合を説明するが、キャリア部材41がリバウンド方向へ変位して、懸架装置14が伸長される場合も考え方は短縮される場合と同様であるので、その説明は省略する。
【0128】
図11(a)は、第1状態における懸架装置14を模式的に図示する模式図であり、図11(b)は、第2状態における懸架装置14を模式的に図示する模式図である。なお、図11では、懸架装置14が短縮される前の状態(即ち、車両1の重量以外の外力が作用しないしていない通常走行状態)が実線により、懸架装置14が短縮された状態(例えば、段差の通過などでキャリア部材41をバウンド方向へ移動させる変位が懸架装置14に入力された状態)が破線により、それぞれ図示されている。
【0129】
また、図12(a)及び図12(b)は、それぞれ図11(a)及び図11(b)の部分拡大図である。但し、図12(a)及び図12(b)では、懸架装置14が短縮された図11(a)及び図11(b)に対応する状態(即ち、補正前の状態)が破線により、その状態から後述する補正処理により補正された後の状態が実線により、それぞれ図示されている。
【0130】
図11(a)に示すように、第1状態(左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角が第1キャンバ角(=0°)に調整された状態、図4(a)参照)では、ホイール部材93aの軸心O1、クランクピン93b及びアッパーアーム42の連結軸となる軸心02、及び、アッパーアーム42及びキャリア部材41の連結軸となる軸心O3が、車輪2から車体BFへ向かう方向(図11(a)左から右に向かう方向)において、軸心O1、軸心O2、軸心O3の順に一直線上に並んで位置する。
【0131】
よって、上述したように、第1状態では、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線と、軸心O2の回転軌跡TR(図3(b)参照)の軸心O2における接線とが直角となるため、例えば、路面からの外力が車輪2に作用することによって、アッパーアーム42からホイール部材93aへ力が加わっても、ホイール部材93aを回転させる力成分が発生せず、ホイール部材93aの回転が規制される。従って、RL,RRモータ91RL,91RRの駆動力を解除しても、車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に機械的に維持可能とできる。その結果、車輪2のキャンバ角を所定角度に維持するために必要なRL,RRモータ91RL,91RRの消費エネルギーの低減を図ることができる。
【0132】
この場合、キャリア部材41をバウンド方向(図11(a)上方)へ移動させる変位が懸架装置14に入力されると、図11(a)に破線で示すように、かかるキャリア部材41の変位に伴い、アッパーアーム42が軸心O2を回転中心として回転される。これにより、図12(a)に破線で示すように、軸心O1、軸心O2及び軸心O3が一直線上に並ばなくなり、軸心O1及び軸心O2を結ぶ直線と、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線とが所定の角度を有する。
【0133】
よって、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線と、回転軌跡TRの軸心O2における接線とが直角をなさなくなる。そのため、アッパーアーム42からホイール部材93aへ力が加わると、ホイール部材93aを回転させる力成分が発生して、ホイール部材93aが回転し、その結果、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角から変化してしまう。
【0134】
そこで、本実施の形態では、第1状態から懸架装置14が短縮した場合には、図12(a)に示すように、キャンバ角調整装置45によりホイール部材93aを角度θoffだけ回転させる補正処理を実行することで、各軸心を軸心O1、軸心O2、軸心O3の順に一直線上に並ばせる。これにより、アッパーアーム42からホイール部材93aへ力が加わっても、ホイール部材93aの回転を規制して、車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に機械的に維持可能とすることで、RL,RRモータ91RL,91RRの消費エネルギーの低減を図る。
【0135】
一方、第2状態(左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角が第2キャンバ角(=−3°)に調整された状態、図4(b)参照)では、図11(b)に示すように、軸心O1、軸心O2及び軸心O3が一直線上に並んで位置するため、第1状態の場合と同様に、ホイール部材93aの回転を規制でき、RL,RRモータ91RL,91RRの駆動力を解除しても、車輪2のキャンバ角を第2キャンバ角に機械的に維持できる。
【0136】
この場合も、キャリア部材41をバウンド方向(図11(b)上方)へ移動させる変位が懸架装置14に入力されると、第1状態の場合と同様に、アッパーアーム42が軸心O2を回転中心として回転され、図12(b)に破線で示すように、軸心O1及び軸心O2を結ぶ直線と、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線とが所定の角度を有する。そのため、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線と、回転軌跡TRの軸心O2における接線とが直角をなさなくなり、アッパーアーム42からホイール部材93aへ力が加わると、ホイール部材93aが回転して、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角から変化する。
【0137】
そこで、本実施の形態では、第2状態から懸架装置14が短縮した場合には、図12(b)に示すように、キャンバ角調整装置45によりホイール部材93aを角度θonだけ回転させる補正処理を実行することで、各軸心を軸心O2、軸心O1、軸心O3の順に一直線上に並ばせる。これにより、第1状態の場合と同様に、ホイール部材93aの回転を規制して、車輪2のキャンバ角を第2キャンバ角に機械的に維持可能とすることで、RL,RRモータ91RL,91RRの消費エネルギーの低減を図る。
【0138】
ここで、懸架装置14の伸縮量(サスストローク)とホイール部材93aの補正の角度θoff,θonとの関係について説明する。図11(a)及び図11(b)に示すように、懸架装置14のサスストロークを距離B、アッパーアーム42の両端の軸心O2,03間の距離を距離Luと定義する。なお、上述したように、軸心O1及び軸心O2間の距離は距離Erである。
【0139】
図11及び図12に示す懸架装置14が伸縮する前後における各距離B,Lu,Erの幾何学的な関係より、第1状態における補正の角度θoffの値は(図12(a)参照)、tan−1(B/(Lu+Er))と近似することができ、第2状態における補正の角度θonの値は(図12(b)参照)、tan−1(B/(Lu−Er))と近似することができる。よって、距離Lu及び距離Erは固定値としてRAM72に予め記憶されているので、CPU71は、懸架装置14のサスストロークである距離Bをサスストロークセンサ装置83から取得することで(図5参照)、これら各距離B,Lu,Erに基づいて、角度θoff,θonの値を算出することができる。
【0140】
なお、第2状態における補正の角度θonは、上述した近似式より、第1状態における補正の角度θoffよりも大きな値となる(θoff<θon)。よって、懸架装置14のサスストロークである距離Bが同じであれば、第2状態の場合の方が、第1状態の場合よりも、補正に要する角度が大きいこととなる。
【0141】
言い換えれば、懸架装置14が同じ距離Bだけサスストロークした場合でも、軸心O3及び軸心O2を結ぶ直線と、回転軌跡TRの軸心O2における接線とのなす角度が、第2状態の場合の方が、第1状態の場合よりも、小さな角度(即ち、直角から離れる)となるため、アッパーアーム42からホイール部材93aへ同じ力が加わったとしても、ホイール部材93aを回転させる力成分が大きくなるため、ホイール部材93aが回転され易くなる。
【0142】
よって、機械的な摩擦力でホイール部材93aの回転を規制するために許容できる懸架装置14のサスストローク量(「キャンバオフ時閾値」及び「キャンバオン時閾値」)は、第2状態の場合の方が、第1状態の場合よりも小さくなる。即ち、第2状態における「キャンバオン時閾値」の値が、第1状態における「キャンバオフ時閾値」の値よりも小さい値となる。
【0143】
次いで、図13を参照して、サスストローク量判断処理について説明する。図13は、サスストローク量判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、左右の後輪2RL,2RRを懸架する懸架装置14の伸縮量(サスストローク)が所定の閾値を超えたか否かを判断する処理である。
【0144】
CPU71は、サスストローク量判断処理に関し、まず、RAM73に設けられた値n(図示せず)にn=1を書き込み(S61)、第n輪のサスストローク量を取得する(S62)。なお、サスストローク量判断手段では、説明の便宜上、第1輪(n=1)を右の後輪2RRと、第2輪(n=2)を左の後輪2RLと、それぞれ定義する。
【0145】
次いで、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S63)。その結果、S63の処理において、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S63:Yes)、第n輪を懸架する懸架装置14のサスストローク量がキャンバオン時閾値以上であるかを判断する一方(S64)、S63の処理において、キャンバフラグ73aがオンではない(即ち、オフである)と判断される場合には(S63:No)、第n輪を懸架する懸架装置14のサスストローク量がキャンバオフ時閾値以上であるかを判断する(S65)。
【0146】
ここで、「キャンバオフ時閾値」とは、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角(=0°)に設定された第1状態で、懸架装置14が伸縮した場合に(図11(a)及び図12(a)参照)、キャンバ角調整装置45による角度θoffの補正処理を実行しなくても、アッパーアーム42からの力に対してホイール部材93aの回転を機械的な摩擦力により規制できる懸架装置14の伸縮量の限界値である。
【0147】
同様に、「キャンバオン時閾値」とは、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角(=−3°)に設定された第2状態で、懸架装置14が伸縮した場合に(図11(b)及び図12(b)参照)、キャンバ角調整装置45による角度θonの補正処理を実行しなくても、アッパーアーム42からの力に対してホイール部材93aの回転を機械的な摩擦力により規制できる懸架装置14の伸縮量の限界値である。
【0148】
よって、第1状態または第2状態において、懸架装置14のサスストローク量がキャンバオフ閾値またはキャンバオン時閾値に達していない状態であれば、車輪2に想定最大外力が作用しても、ホイール部材93aの回転は機械的な摩擦力により規制される(各モータ91RL,91RRによる回転駆動力が解除されていてもホイール部材93aが回転されない)。
【0149】
なお、これらキャンバオフ時閾値およびキャンバオン時閾値は、実車を用いた試験(第1状態および第2状態において、車輪2に想定最大外力を作用させた際に、ホイール部材93aが回転される限界のサスストロークを求める試験)により測定値として求められており、これら各測定値は、RAM72に事前に記憶されている。また、上述したように、第2状態における「キャンバオン時閾値」の値が、第1状態における「キャンバオフ時閾値」の値よりも小さい値となる。
【0150】
S64の処理において、第n輪のサスストローク量がキャンバオン時閾値以上であると判断された場合には(S64:Yes)、第n輪が第2状態にある懸架装置14のサスストローク量が限界値を超えているということなので、第n輪オン時ストロークフラグ(第1輪オン時ストロークフラグ73e2又は第2輪オン時ストロークフラグ73f2の内の第n輪に対応するフラグ)をオンし(S66)、かつ、第n輪オフ時ストロークフラグ(第1輪オフ時ストロークフラグ73e1又は第2輪オフ時ストロークフラグ73f1の内の第n輪に対応するフラグ)をオフした後(S67)、S71の処理へ移行する。
【0151】
一方、S65の処理において、第n輪のサスストローク量がキャンバオフ時閾値以上であると判断された場合には(S65:Yes)、第n輪が第1状態にある懸架装置14のサスストローク量が限界値を超えているということなので、第n輪オン時ストロークフラグ(第1輪オン時ストロークフラグ73e2又は第2輪オン時ストロークフラグ73f2の内の第n輪に対応するフラグ)をオフし(S68)、かつ、第n輪オフ時ストロークフラグ(第1輪オフ時ストロークフラグ73e1又は第2輪オフ時ストロークフラグ73f1の内の第n輪に対応するフラグ)をオンした後(S69)、S71の処理へ移行する。
【0152】
また、S64の処理において、第n輪のサスストローク量がキャンバオン時閾値以上ではない(即ち、キャンバオン時閾値に達していない)と判断された場合(S64:No)、及び、S65の処理において、第n輪のサスストローク量がキャンバオフ時閾値以上ではない(即ち、キャンバオフ時閾値に達していない)と判断された場合(S65:No)には、第n輪が第1状態にある懸架装置14、及び、第n輪が第2状態にある懸架装置14のいずれのサスストローク量も限界値に達していないということなので、第n輪オン時ストロークフラグ(第1輪オン時ストロークフラグ73e2又は第2輪オン時ストロークフラグ73f2の内の第n輪に対応するフラグ)、及び、第n輪オフ時ストロークフラグ(第1輪オフ時ストロークフラグ73e1又は第2輪オフ時ストロークフラグ73f1の内の第n輪に対応するフラグ)を共にオフした後(S70)、S71の処理へ移行する。
【0153】
S71の処理では、RAM73に設けられた値nが2に達したか否かを判断する(S71)。その結果、値nが2に達していない(即ち、n=1である)場合には(S71:No)、第2輪(左の後輪2RL)についての各処理S62〜S69が未実行であるということなので、第2輪についてもこれら各処理を実行するべく、値nにn=n+1を書き込んだ後(S72)、S62の処理へ移行する。一方、値nが2に達している(即ち、n=2である)場合には(S71:Yes)、第1輪および第2輪(即ち、左右の後輪2RL,2RR)に対する各処理S62〜S69の実行が完了しているということであるので、このサスストローク量判断処理を終了する。
【0154】
次いで、図14を参照して、補正処理について説明する。図14は、補正処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、各懸架装置14のサスストローク量に応じて各車輪2(左右の後輪2RL,2RR)におけるホイール軸(ホイール部材93の軸心O1)の角度を補正する(即ち、第1状態または第2状態とする)処理である。
【0155】
CPU71は、補正処理に関し、まず、キャンバ角の設定動作中であるか否か、即ち、左右の後輪2RL,2RRにネガティブキャンバを付与(キャンバ角を第1キャンバ角(0°)から第2キャンバ角(−3°)に変更)する動作中または左右の後輪2RL,2RRへのネガティブキャンバの付与を解除(キャンバ角を第1キャンバ角(0°)から第2キャンバ角(−3°)に変更)する動作中であるか否かを判断する(S80)。
【0156】
S80の処理の結果、キャンバ角の設定動作中であると判断される場合には(S80:Yes)、たとえ左右の車輪2RL,2RRにおけるホイール軸(ホイール部材93の軸心O1)の角度がずれ、キャンバ角調整装置45が第1状態または第2状態から外れていたとしても、上述したキャンバ角の設定動作により第1状態または第2状態に復帰するため、S81移行の処理により補正処理を行うことが無駄となる。よって、この場合には(S80:Yes)、S81移行の処理をスキップして、この補正処理を終了する。
【0157】
一方、S80の処理の結果、キャンバ角の設定動作中ではないと判断される場合には(S80:No)、左右の車輪2RL,2RRにおけるホイール軸(ホイール部材93の軸心O1)の角度がずれ、キャンバ角調整装置45が第1状態または第2状態から外れているので、これを第1状態または第2状態とするべく、S81移行の処理を実行する。
【0158】
即ち、まず、RAM73に設けられた値m(図示せず)にm=1を書き込む(S81)。なお、補正処理では、説明の便宜上、第1輪(m=1)を右の後輪2RRと、第2輪(m=2)を左の後輪2RLと、それぞれ定義する。
【0159】
次いで、第m輪オン時サスストロークフラグ(第1輪オン時ストロークフラグ73e2又は第2輪オン時ストロークフラグ73f2の内の第m輪に対応するフラグ)がオンであるか否かを判断する(S82)。その結果、S82の処理において、第m輪オン時サスストロークフラグがオンであると判断される場合には(S82:Yes)、第m輪が第2状態(車輪2にネガティブキャンバが付与された状態)にある懸架装置14のサスストローク量が限界値(キャンバオン時閾値)以上になっているということであるので、かかる第m輪を懸架する側におけるキャンバ角調整装置45の補正角(角度θon、図11(b)及び図12(b)参照)を算出し(S83)、その算出した角度θon分だけホイール部材93aをキャンバ角調整装置45により回転させることで、第m輪におけるホイール軸(ホイール部材93の軸心O1)の角度を補正した後(S84)、S88の処理へ移行する。
【0160】
これにより、第m輪を懸架するキャンバ角調整装置45において、各軸心を軸心O2、軸心O1、軸心O3の順に一直線上に並ばせる(第2状態とする)ことができるので(図12(b)参照)、アッパーアーム42からホイール部材93aへ力が加わっても、ホイール部材93aの回転を規制して、車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に機械的に維持可能とすることができる。よって、RL,RRモータ91RL,91RRの回転駆動力を解除することができるので、その消費エネルギーの低減を図る。
【0161】
一方、S82の処理において、第m輪オン時サスストロークフラグがオンではない(即ち、オフである)と判断される場合には(S82:No)、第m輪オフ時サスストロークフラグ(第1輪オフ時ストロークフラグ73e1又は第2輪オフ時ストロークフラグ73f1の内の第m輪に対応するフラグ)がオフであるか否かを判断する(S85)。
【0162】
その結果、S82の処理において、第m輪オフ時サスストロークフラグがオンであると判断される場合には(S85:Yes)、第m輪が第1状態(車輪2に付与されたネガティブキャンバが解除された状態)にある懸架装置14のサスストローク量が限界値(キャンバオフ時閾値)以上になっているということであるので、かかる第m輪を懸架する側におけるキャンバ角調整装置45の補正角(角度θoff、図11(a)及び図12(a)参照)を算出し(S86)、その算出した角度θoff分だけホイール部材93aをキャンバ角調整装置45により回転させることで、第m輪におけるホイール軸(ホイール部材93の軸心O1)の角度を補正した後(S87)、S88の処理へ移行する。
【0163】
これにより、第m輪を懸架するキャンバ角調整装置45において、各軸心を軸心O1、軸心O2、軸心O3の順に一直線上に並ばせる(第1状態とする)ことができるので(図12(a)参照)、アッパーアーム42からホイール部材93aへ力が加わっても、ホイール部材93aの回転を規制して、車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に機械的に維持可能とすることができる。よって、RL,RRモータ91RL,91RRの回転駆動力を解除することができるので、その消費エネルギーの低減を図る。
【0164】
ここで、第1状態の場合と第2状態の場合とでは(図11参照)、懸架装置14のサスストローク量が同一であっても、機械的な摩擦力でホイール部材93aの回転を規制するために許容できる懸架装置14のサスストローク量が異なる。そのため、第1状態と第2状態とで同じ閾値に基づいて行われたのでは、第1状態では、機械的な摩擦力でホイール部材93aの回転を規制できる範囲であるのに、各モータ91RL,91RRが無駄に作動されることで、消費エネルギーが増加する一方、第2状態では、機械的な摩擦力でホイール部材93aの回転を規制できる範囲を越えているのに、各モータ91RL,91RRによる補正処理がなされず、アッパーアーム42から受ける力によりホイール部材93aが回転されることで、車輪2のキャンバ角の変化を招く。
【0165】
これに対し、本実施の形態では、第1状態の場合と第2状態の場合とのそれぞれに対して異なる閾値(キャンバオフ時閾値およびキャンバオン時閾値)を設定しておき、それら各閾値に基づいて、各懸架装置14のサスストローク量が限界値を超えているかの判断を行う(各フラグのオン・オフを行う)ので(図13参照)、各車輪2のキャンバ角の補正を第1状態と第2状態とにそれぞれ適したタイミングで行うことができる。その結果、各モータ91RL,91RRの無駄な作動を抑制して、消費エネルギーを効率的に低減することができると共に、アッパーアーム42から受ける力によりホイール部材93aが回転して、車輪2のキャンバ角が変化することを効率的に抑制できる。
【0166】
特に、本実施の形態では、第2状態の場合の閾値(キャンバオン時閾値)の値が、第1状態における閾値(キャンバオフ時閾値)の値よりも小さな値に設定されているので、懸架装置14のサスストローク量の限界値が低い第2状態においては、機械的な摩擦力でホイール部材93aの回転を規制できる範囲を越える前に、各モータ91RL,91RRを作動させて角度θonの補正を行い、アッパーアーム42から受ける力によるホイール部材93aの回転を確実に規制することができる。その結果、キャンバ角の変化を確実に抑制することができる。一方、懸架装置14のサスストローク量の限界値が高い第1状態においては、アッパーアーム42から受ける力に対して機械的な摩擦力でホイール部材93aの回転を規制できる範囲であるのに、各モータ91RL,91RRが無駄に作動されることを抑制して、消費エネルギーの低減を図ることができる。
【0167】
なお、S84及びS87の各処理において、各車輪2におけるホイール軸(ホイール部材93の軸心O1)の角度の補正は、各軸O1〜O3が一直線上に並ぶように、ホイール部材93aを回転させるので、アッパーアーム42からホイール部材93aへ力が加わっても、ホイール部材93aが回転することを確実に規制することができる。よって、その後に、懸架装置14のサスストロークが発生した場合でも、かかる補正の再実行を最小限とすることができる。その結果、車輪2のキャンバ角が変化することを抑制しつつ、各モータ91RL,91RRの作動を効率的に抑制して、消費エネルギーを低減することができる。
【0168】
S85の処理において、第m輪オフ時サスストロークフラグがオンではない(即ち、オフである)と判断される場合には(S85:No)、第1状態または第2状態によらず、第m輪を懸架する懸架装置14のサスストローク量が未だ限界値(即ち、キャンバオフ時閾値およびキャンバオン時閾値)に達していないということであり、かかる第m輪のキャンバ角調整装置45によるキャンバ角の補正を行う必要がないので、S83、S84、S86及びS87の各処理を実行せず、S88の処理へ移行する。
【0169】
このように、懸架装置14のサスストロークの値が所定の閾値(キャンバオフ時閾値およびキャンバオン時閾値)に達していないと判断される場合(即ち、アッパーアーム42から作用する力の内のホイール部材93aを回転させる力成分よりも、機械的な摩擦力が上回り、かかる機械的な摩擦力によりホイール部材93aの回転を規制できる場合)には、キャンバ角調整装置45によるキャンバ角の補正(S83、S84、S86及びS87)を行わないので、各モータ91RL,91RRの無駄な作動を抑制して、その消費エネルギーを低減することができる。
【0170】
S88の処理では、RAM73に設けられた値mが2に達したか否かを判断する(S88)。その結果、値mが2に達していない(即ち、m=1である)場合には(S88:No)、第2輪(左の後輪2RL)についての各処理S82〜S87が未実行であるということなので、第2輪についてもこれら各処理を実行するべく、値mにm=m+1を書き込んだ後(S89)、S82の処理へ移行する。一方、値mが2に達している(即ち、m=2である)場合には(S88:Yes)、第1輪および第2輪(即ち、左右の後輪2RL,2RR)に対する各処理S82〜S87の実行が完了しているということであるので、この補正処理を終了する。
【0171】
なお、図13に示すフローチャート(サスストローク量判断処理)において、請求項2記載の変位量取得手段としてはS62の処理が、変位量判断手段としてはS64及びS64の処理が、図14に示すフローチャート(補正処理)において、請求項1記載の補正手段としてはS84及びS86の処理が、それぞれ該当する。
【0172】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0173】
上記実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。例えば、上記各実施の形態で説明した第1キャンバ角および第2キャンバ角の値は任意に設定することができる。
【0174】
上記実施の形態では、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角をキャンバ角調整装置45により調整する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、これに替えて又はこれに加えて、左右の前輪2FL,2FRのキャンバ角をキャンバ角調整装置45により調整することは当然可能である。
【0175】
上記実施の形態では、第1状態および第2状態のいずれにおいても、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線上に軸心O1が位置する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第1状態または第2状態の一方のみにおいて、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線上に軸心O1が位置し、第1状態または第2状態の他方においては、軸心O2及び軸心O3を結ぶ直線上に軸心O1が位置しないように制御することは当然可能である。
【0176】
上記実施の形態では、キャンバ角調整機構45が、アッパーアーム42と車体BFとの間に介装される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ロアアーム43と車体BFとの間にキャンバ角調整機構45を介装しても良い。
【符号の説明】
【0177】
100 車両用制御装置
1 車両
2 車輪
2RL 左の後輪(車輪の一部)
2RR 右の後輪(車輪の一部)
41 キャリア部材
42 アッパーアーム(第1サスペンションアーム)
43 ロアアーム(第2サスペンションアーム)
91RL RLモータ(回転駆動手段、電動モータ)
91RR RRモータ(回転駆動手段、電動モータ)
93a ホイール部材
O1 軸心(ホイール軸)
O2 軸心(偏心連結軸)
O3 他端連結軸
BF 車体
TR 軸心O2の回転軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動力を発生する回転駆動手段と、
その回転駆動手段から付与される回転駆動力によりホイール軸を回転中心として回転されると共に車体に配設されるホイール部材と、
そのホイール部材の前記ホイール軸に対して偏心して位置する偏心連結軸を回転中心として前記ホイール部材に一端側が回転可能に連結される第1サスペンションアームと、
前記第1サスペンションアームの他端側が他端連結軸を回転中心として回転可能に連結されると共に車輪を保持するキャリア部材と、
そのキャリア部材を前記第1サスペンションアームと共に前記車体に上下動可能に連結する第2サスペンションアームと、を備えた車両に対し、
前記回転駆動手段を作動させ、前記ホイール部材を回転させることで、前記車輪のキャンバ角を調整する車両用制御装置であって、
前記偏心連結軸および他端連結軸を結ぶ直線上に前記ホイール軸が位置する状態から、前記キャリア部材が前記車体に対して上下動して、前記偏心連結軸および他端連結軸を結ぶ直線上に前記ホイール軸が位置しない状態となった場合に、前記回転駆動手段を作動させ、前記偏心連結軸およびホイール軸を結ぶ直線と前記偏心連結軸および他端連結軸を結ぶ直線とのなす角度が少なくとも小さくなるように、前記ホイール部材を回転させる補正手段を備えていることを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
前記キャリア部材が上下動した際の変位量を取得する変位量取得手段と、
その変位量取得手段により検出された変位量の値が閾値以上であるかを判断する変位量判断手段と、を備え、
その変位量判断手段により前記変位量の値が閾値以上であると判断された場合に、前記補正手段による前記回転駆動手段の作動が行われることを特徴とする請求項1記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記変位量判断手段による判断は、前記各軸が前記他端連結軸、偏心連結軸およびホイール軸の順に並ぶ第1状態の場合と、前記各軸が前記他端連結軸、ホイール軸および偏心連結軸の順に並ぶ第2状態の場合とで、異なる大きさの閾値に基づいて行われることを特徴とする請求項2記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記回転駆動手段は、電動モータと、その電動モータの両端子を短絡する短絡回路と、を備え、少なくとも前記第1状態または第2状態において、前記電動モータの両端子が前記短絡回路により短絡されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車輌用制御装置。
【請求項5】
前記車両は、前記第1サスペンションアームがアッパーアームとして前記ホイール部材と前記キャリア部材とを連結すると共に、前記第2サスペンションアームがロアアームとして前記第1サスペンションの下方に対向配置されつつ前記車体とキャリア部材とを連結することで構成されたダブルウィッシュボーン式サスペンション構造により前記車輪を懸架し、
前記変位量判断手段による判断は、前記第1状態の場合よりも、第2状態の場合の方が小さな値の閾値に基づいて行われることを特徴とする請求項3記載の車両用制御装置。
【請求項6】
前記補正手段は、前記偏心連結軸および他端連結軸を結ぶ直線上に前記ホイール軸が位置する状態から、前記キャリア部材が前記車体に対して上下動して、前記偏心連結軸および他端連結軸を結ぶ直線上に前記ホイール軸が位置しない状態となった場合に、前記偏心連結軸および他端連結軸を結ぶ直線上に前記ホイール軸が位置するように、前記ホイール部材を回転させることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の車両用制御装置。
【請求項7】
前記各軸が前記他端連結軸、偏心連結軸およびホイール軸の順に直線上に並ぶことで形成される第1キャンバ角に前記車輪のキャンバ角を設定する第1キャンバ角設定手段と、
前記各軸が前記他端連結軸、ホイール軸および偏心連結軸の順に直線上に並ぶことで形成される第2キャンバ角に前記車輪のキャンバ角を設定する第2キャンバ角設定手段と、
それら第1キャンバ角設定手段または第2キャンバ角設定手段によるキャンバ角の設定動作が行われているかを判断する設定動作判断手段と、を備え、
その設定動作判断手段により第1キャンバ角設定手段または第2キャンバ角設定手段によるキャンバ角の設定動作が行われていると判断されない場合に、前記補正手段による前記回転駆動手段の作動が行われることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の車両用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−230709(P2011−230709A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104453(P2010−104453)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】