説明

車両用制御装置

【課題】イタズラによるエンジンの緊急停止を予防する一方で、緊急時にエンジンを緊急停止できる車両用制御装置を提供する。
【解決手段】車両2のエンジンを停止する停止操作を検出する停止操作検出手段と、車両2の運転者3aの意識状態を判定する意識状態判定手段と、停止操作の操作者3が運転者3a又は同乗者3bかを判定する操作者判定手段と、意識状態及び操作者3の組み合わせから車両2を緊急停止する緊急状況か非緊急状況かを判定する緊急状況判定手段と、緊急状況ならばエンジンを停止し、非緊急状況ならばエンジンの稼動を継続するエンジン制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンの停止を制御する車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信を利用した電子キーシステムの普及により近年、車両にプッシュ式のエンジンスイッチが備わり、このエンジンスイッチを操作することで、電子キーを直接用いることなくエンジンの始動及び停止を操作できる。このエンジンスイッチの普及当初は、従来の機械式キーに倣いエンジンスイッチを車両ドア側に配置していたが、次第にインパネの中央部にも配置されるようになりつつある。
【0003】
車両ドア側に配置されたエンジンスイッチをインパネ中央部に取り付けることで、運転者はエンジンの始動操作(エンジンスイッチによりエンジンを始動する操作)からシフトの切替操作を片手で操作でき、車両を発進するまでの操作がスムーズとなる。また、一方の片手でエンジンの始動とシフトの切替を操作することで、エンジンの始動操作とシフトの切替操作を必然的に別々に行うこととなり、クランキングの失敗(エンジン始動操作とシフト切替操作を同時にするとクランキング失敗する)を予防できる。更に、仮に走行中、運転者が意識を失った場合でも、エンジンスイッチに同乗者の手が届くため、車両を緊急停止することが可能となる。
【0004】
一方で、エンジンスイッチに同乗者の手が届くため、子供などがイタズラでエンジンスイッチを操作し、車両を緊急停止させてしまうおそれがある。そのため、人体通信装置を利用してエンジンスイッチの操作者を運転者のみに限るエンジン制御システムが開示される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−59887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、人体通信装置によりエンジンスイッチの操作者を運転者に限ると車両走行中に運転者が意識を失った場合、同乗者が車両を緊急停止できない。
【0007】
本発明の課題は、イタズラによるエンジンの緊急停止を予防する一方で、緊急時にエンジンを緊急停止できる車両用制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の車両用制御装置は、
車両のエンジンを停止する停止操作を検出する停止操作検出手段と、
車両の運転者の意識状態を判定する意識状態判定手段と、
停止操作の操作者が運転者又は同乗者かを判定する操作者判定手段と、
意識状態判定手段と操作者判定手段の判定結果に基づいて、車両を緊急停止する緊急状況か非緊急状況かを判定する緊急状況判定手段と、
緊急状況ならばエンジンを停止し、非緊急状況ならばエンジンの稼動を継続するエンジン制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の構成によれば、意識状態判定手段と操作者判定手段の判定結果に基づいて、走行中の車両を緊急停止するかを判定する。具体的には、運転者の意識状態と停止操作の操作者(運転者又は同乗者)の組み合わせにより、走行中の車両を緊急停止するかを判定する。即ち、運転者の意識状態を判定することで、同乗者が車両を緊急停止すべき状況か否かを判定できる。更に、運転者の意識状態に加えて、停止操作の操作者(運転者又は同乗者)を判定するため、運転者の意識状態と停止操作の操作者の組み合わせに基づいて、停止操作が行われた車両の状況を判定(推定)できる。そして、車両の状況に応じてエンジンを稼動又は停止することにより、イタズラによるエンジンの緊急停止を予防する一方、緊急時には緊急停止できる。
【0010】
具体的には、緊急状況判定手段は、意識状態が覚醒状態、操作者が同乗者を条件に、非緊急状況と判定できる。
【0011】
つまり、運転者が覚醒状態なので同乗者が車両を緊急停止する必要ない(運転者が緊急停止できる)ため、停止操作の操作者が同乗者ならば、停止操作は同乗者のイタズラとして車両の状況を非緊急状況と判定する。よって、イタズラによりエンジンが緊急停止するのを防止できる。
【0012】
また、緊急状況判定手段は、運転者の意識状態が睡眠状態、操作者が同乗者を条件に、緊急状況と判定することができる。
【0013】
運転者の意識状態が睡眠状態なので同乗者が車両を緊急停止する必要があるため、停止操作の操作者が同乗者ならば車両が緊急状況としてエンジンを停止することで、車両の走行中に運転者が意識を失っても同乗者が車両を緊急停止できる。
【0014】
更に、緊急状況判定手段は、運転者の意識状態が覚醒状態、操作者が運転者を条件に、緊急状況と判定することができる。
【0015】
運転者が覚醒状態であり、運転者の意識状態が運転に支障がないと判定される場合でも、車両を運転する運転者の操作意思(エンジンを停止する意思)を尊重することにより、車両走行中の不測のトラブル(例えばアクセル故障により車両を停止できないトラブル等)を回避できる。
【0016】
また、停止操作は、車両の停車中にエンジンを停止する通常停止操作と、車両の走行中にエンジンを停止するための通常停止操作よりも操作者による操作負担が大きい緊急停止操作とを有する。
【0017】
緊急停止操作は通常停止操作より操作者の操作負担が大きいため、走行中に何らかの拍子でエンジンスイッチに誤って触れても、緊急停止操作が操作される可能性を低減でき、走行中に意図せずエンジンが停止するのを防止できる。
【0018】
更に、停止操作は、緊急停止操作よりも操作者による操作負担が大きいフェイルセーフ用停止操作を有し、
緊急状況判定手段は、停止操作がフェイルセーフ用停止操作であることを条件に、判定結果に関係なく緊急状況と判定できる。
【0019】
操作者を判定する操作者判定手段の不具合により、操作者の判定が実際の操作者と異なる場合、特に、操作者判定手段の判定が同乗者であり、実際の操作者が運転者の場合、運転者が覚醒状態ならばイタズラによる停止操作が行われたとしてエンジンの稼動が継続することになる。つまり、運転者自らの意思に反してエンジンの稼動が継続してしまう。よって、操作者判定手段の不具合を考慮し、フェイルセーフ用停止操作を緊急停止操作より操作者の操作負担を大きくすることで、操作者判定手段に不具合が生じても、フェイルセーフ用停止操作により運転者がエンジンを停止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の車両用制御装置を用いた車両の一例を示すブロック図。
【図2】図1の人体通信装置により操作者を判定する原理を示す原理図。
【図3】図1の車両制御装置を用いた車両のインパネ周辺を示す説明図。
【図4】意識状態と操作者の組み合わせから車両の状況の判定する表。
【図5】エンジンを制御する一連の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を添付の図面を用いて説明する。図1は本発明の車両用制御装置1を示すブロック図である。図1を用いて車両用制御装置1の概要を説明する。本発明の車両用制御装置1は、車両2走行中にエンジンを停止する停止操作が検出された際、その停止操作の操作者3(運転者3a又は同乗者3b)及び運転者3aの意識状態に基づき停止操作が行われた車両2の状況を判定し、判定した状況からエンジンを停止するかエンジンの稼動を継続する。
【0022】
具体的には、図1の車両用制御装置1のブロック図に示すように、車両用制御装置1は、運転者3aの意識状態を判定する意識状態判定手段と、停止操作を行った操作者3を判定する操作者判定手段と、意識状態判定手段及び操作者判定手段の判定結果に基づいてエンジンを制御する制御ECU4(ECU:Electronic Control Unit)とを有する。
【0023】
意識状態判定手段は、運転者3aの意識状態が覚醒状態か睡眠状態(意識を失っている状態)かを判定する周知の睡眠検知センサー5である。該睡眠検知センサー5としては、例えば、車両2内に設けられたカメラ(図示略)により運転者3aの眼を撮影して、眼の開度から運転者3aが覚醒状態か睡眠状態かを判定するセンサー、又は、車両2の座席シート又はステアリング等から運転者3aの心拍又は脈拍を測定して、心拍又は脈拍の推移から運転者3aが覚醒状態か睡眠状態かを判定するセンサーである。
【0024】
また、操作者判定手段は、車両2のエンジンの停止操作を行った操作者3が運転者3aか同乗者3bかを判定する周知の人体通信装置6である。図2は、人体通信装置6により操作者3を判定する原理図である。人体通信装置6は、人体通信を行う信号を送受信する本体部6aと、人体に信号を送信する人体通信端子部6bと人体に送信した信号を本体部6aに送信する人体通信端子部6cとを有し、人体通信を行う。具体的には、人体通信装置6の本体部6aから人体通信端子6bを介して人体に信号を送信する。そして、送信された信号は、人体通信端子6cを経て人体から本体部6aに送信され、本体部6aが信号を受信することで人体通信が行われる。そのため、本体部6aが送信した信号を所定の時間を置いて本体部6aが受信できれば、人体通信が成功したことになる。
【0025】
図3は、かかる人体通信装置6を備えた車両2内のフロント部を示す説明図であり、人体通信端子6bを運転者3aが握るステアリング7に設けるとともに、インパネ(インストルメントパネル)8の中央部に備わるエンジンの稼動、停止を操作するエンジンボタン9に人体通信端子6cを設けることにより、停止操作を行った操作者3を判定する。具体的には、エンジンボタン9を操作した操作者3が運転者3aの場合には、図2(A)に示すように、人体通信装置6の本体部6aから送信される信号がステアリング7を介して運転者3aの人体に送信される。送信された信号は、運転者3aがエンジンボタン9を操作する際に、エンジンボタン9に触れるとエンジンボタン9を介して本体部6aに送信される。そのため、本体部6aは、自ら送信した信号を受信することで人体通信が成立して、操作者3が運転者3aであると判定する。つまり、操作者3が運転者3aの場合は、ステアリング7、運転者3aの人体、エンジンスイッチ9、及び本体部6aにより通信経路6dを構成するため、人体通信が成立(信号の送受信が成立)する場合には、操作者3を運転者3aであると判定する。
【0026】
一方、エンジンボタンの操作者3が同乗者3bの場合には、図2(B)に示すように、同乗者3bはエンジンスイッチ9のみに触れるため、人体通信装置6における信号を通信する通信経路6dが途中で遮断されるため、本体部6aは送信した信号を受信できない。そのため、所定の時間を置いても本体部6aは送信した信号を受信できず、人体通信が不成立となり、操作者3が同乗者3bであると判定する。つまり、操作者3が同乗者3bの場合は、同乗者3bの人体とステアリング7との間で通信経路6dが遮断されるため、人体通信が不成立(信号の送受信が不成立)の場合、操作者3を同乗者3bであると判定する。
【0027】
以上のように睡眠検知センサー5により運転者3aの意識状態(睡眠状態か覚醒状態か否か)を判定し、人体通信装置6によりエンジンボタン9の操作者3(運転者3aか同乗者3bか否か)を判定して、かかる意識状態と操作者3の組み合わせに基づいて、制御ECU4は車両2のエンジンを制御する。
【0028】
この制御ECU4は、通常のコンピュータと同様の構造を有して、図1に図示されていないが、各種演算や情報処理を司るCPU、CPUの作業領域としての一時記憶部であるRAM、各種情報を記憶する不揮発性のメモリを備える。
【0029】
具体的には、制御ECU4は、図1に示すように、車両2が走行中か否かを判定する車両走行判定部(車両走行判定手段)4aと、車両2のエンジンを停止する停止操作を検出する停止操作検出部(停止操作検出手段)4bと、エンジンを停止する停止操作を判定する停止操作判定部(停止操作判定手段)4cと、運転者3aの意識状態と停止操作の操作者3から停止操作が行われた車両2の状況を判定する緊急状況判定部(緊急状況判定手段)4dと、緊急状況判定部4dにより判定された状況からエンジンを制御するエンジン制御部(エンジン制御手段)4eとを有する。
【0030】
停止操作検出部4bは、車両2のエンジンを停止する停止操作を検出する。停止操作は、車両2の停車中にエンジンを停止する通常停止操作と、車両2の走行中にエンジンを停止するための緊急停止操作があり、緊急停止操作は、通常停止操作よりも操作者3による操作負担が大きく、例えば、通常停止操作がエンジンスイッチ9を1回押す停止操作ならば、緊急停止操作は、エンジンスイッチ9を長押し又は連続押しの操作が緊急停止操作となる。更に、停止操作にはフェイルセーフ用停止操作があり、フェイルセーフ用停止操作は、緊急操作よりも操作者3の操作負担が大きい。例えば、緊急停止操作がエンジンスイッチ9を長押し又は連続押しする停止操作ならば、フェイルセーフ用停止操作は、緊急停止操作の2倍の長押し又は2倍の連続押しの操作がフェイルセーフ用停止操作となる。そのため、フェイルセーフ用停止操作が操作されると、緊急状況と判定されてエンジンが停止する。
【0031】
停止操作判定部4cは、操作者3がエンジンボタン9を操作した操作が、通常停止操作、緊急停止操作、フェイルセーフ用停止操作のいずれかに該当するか判定する。
【0032】
かかる停止操作を停止操作検出手段4bが検出すると、緊急状況判定手段4dは、睡眠検知センサー5による運転者3aの意識状態と人体通信装置6による通信の成否(通信成立ならば操作者3を運転者3aと判定、通信不成立ならば操作者3を同乗者3bと判定)の結果に応じ、車両2が緊急状況か非緊急状況かを判定する。つまり、意識状態が覚醒状態か睡眠状態か、操作者3が運転者3aか同乗者3bかの、計4パターンに応じて、車両2が緊急状況か非緊急状況かを判定する。
【0033】
図4は、意識状態と操作者3の組み合わせにより、車両2が緊急状況か非緊急状況かを示した表である。以下に具体的に説明する。運転者3aの意識状態が覚醒状態で停止操作の操作者3が同乗者3bである場合は、走行中の車両2の運転者3aは意識が正常であり、走行中の車両2を緊急停止する必要はない。よって、同乗者3bによる停止操作はイタズラであるとして、車両2の状況は、非緊急状況であると判定する。
【0034】
また、運転者3aの意識状態が睡眠状態、操作者3が同乗者3bならば、走行中の車両2の状況は緊急状況と判定する。運転者3aが意識を喪失した場合は、同乗者3bが走行中の車両2を緊急停止する必要がある。よって、同乗者3bによる停止操作は緊急停止操作であるとして、車両2の状況は、緊急状況と判定する。
【0035】
更に、運転者3aの意識状態が覚醒状態で操作者3が運転者3aの場合は、走行中の車両2における運転者3aの意識は正常であるが、アクセル故障等の不測のトラブルにより運転者3a自らが停止操作を行う場合があるので、緊急状況であると判定する。また、運転者3aの意識状態が睡眠状態、操作者3が運転者3aの状況は起こり得ないが、睡眠検知センサー5の不具合を考慮し(運転者3aが実際には覚醒状態である場合を考慮し)、運転者3a自らが停止操作を行う緊急状況であると判定する。
【0036】
ただし、フェイルセーフ用停止操作が操作された場合は、緊急状況判定部4dは、運転者3aの意識状態及び操作者3に関係なく、緊急状況と判定する。操作者3の判定は人体通信装置6の人体通信の成否により判定するが、人体通信装置6は、人体と人体通信端子部6b、6cとの接触で信号を通信するため信号が確実に検出できるとは限らず、場合によっては、運転者3aが操作者3であるにも関らず、人体通信が不成立として操作者3が同乗者3bであると判定される可能性がある。特に、操作者3の判定が同乗者3bであるにも関らず、実際の操作者3が運転者3aの場合、運転者3aの車両2停止意思に反してエンジンが稼動し続ける場合があるので、フェイルセーフ用の措置としてエンジンを停止するものである。なお、走行中に通常停止操作が操作された場合には、緊急状況判定部4dは、運転者3aの意識状態及び操作者3に関係なく、非緊急状況と判定する。
【0037】
緊急状況判定部4dの判定結果(緊急状況または非緊急状況)に応じて、エンジン制御部4eは、エンジンを制御する。具体的には、緊急状況判定部4cの判定結果が緊急状況ならばエンジンを停止し、非緊急状況ならばエンジンの稼動を継続する。
【0038】
以上の構成のもとで、本発明の車両用制御装置1は、イタズラによるエンジンの緊急停止を予防する一方で、緊急時にエンジンを緊急停止できる処理を実行する。その処理手順が図5のフローチャートに示されており、この制御の処理手順を予めプログラム化して、例えば、制御ECU4のメモリに記憶しておき、制御ECU4が呼び出して自動的に実行する。
【0039】
図5を用いてエンジンボタン9の停止操作によりエンジンを制御する処理を説明する。先ず、図5の処理は、インパネ8の中央部に備わるエンジンボタン9によりエンジンの停止操作をした後に、車両2の状況を判定することにより、エンジンの停止又は稼動の継続を制御する。具体的には、運転者3aの意識状態及び停止操作の操作者3に基づいてエンジンを制御する。
【0040】
先ず、制御ECU4の停止操作検出部4bがエンジンボタン9による停止操作を検出すると、S1において、制御ECU4の停止操作判定部4cは、停止操作がフェイルセーフ用停止操作か否かを判定する。具体的には、停止操作がフェイルセーフ用停止操作でない場合(S1:NO)は、S2に進む。一方、停止操作がフェイルセーフ用停止操作の場合(S1:YES)は、緊急状況判定部4dは、運転者3aの意識状態及び操作者3に関係なく、緊急状況と判定して、エンジン制御部4eによりエンジンを停止する。よって、人体通信装置6や睡眠検知センサー5の不具合が生じた場合でも車両2のエンジンを停止できる。
【0041】
S2に進むと、制御ECU4の車両走行判定部4aが、車両2が走行中か否かを判定する。車両2が停車等により走行中でない場合(S2:NO)は、S3に進み、車両2が走行中の場合(S2:YES)は、S4に進む。
【0042】
S3に進むと、制御ECU4の停止操作判定部4cは、停止操作が通常停止操作か否かを判定する。具体的には、停止操作が通常停止操作でない場合(S3:NO)は、停止操作によるエンジンを制御する制御処理を抜ける。一方、停止操作が通常停止操作の場合(S3:YES)は、エンジン制御部4eによりエンジンを停止して、停止操作によるエンジンを制御する制御処理を終える。なお、S3においては、停止操作が緊急停止操作である場合が考慮されていないように思われるが、緊急停止操作は、通常停止操作よりも操作者3による操作負担が大きく、通常停止操作に操作動作を付加する操作(通常停止操作がエンジンスイッチ9を1回押す停止操作ならば、緊急停止操作は、エンジンスイッチ9を長押し又は連続押しの操作)であることから、緊急停止操作が操作された場合には、通常停止操作が行われるため、図5のS3においては、緊急停止操作について記載されていない。
【0043】
S4に進むと、制御ECU4の停止操作判定部4cは、停止操作が緊急停止操作か否かを判定する。具体的には、停止操作が緊急停止操作でない場合(S4:NO)は、停止操作をイタズラと判断して、停止操作によるエンジンを制御する制御処理を抜ける。一方、停止操作が緊急停止操作の場合(S4:YES)は、S5に進む。
【0044】
S5に進むと、睡眠検知センサー5が、運転者3aの意識が正常か否かを判定する。具体的には、運転者3aの意識が覚醒状態か睡眠状態か否かを判定する。運転者3aの意識状態が睡眠状態の場合(S5:NO)は、緊急状況判定部4dが緊急状況と判定して、エンジン制御部4eによりエンジンを停止して、停止操作によるエンジンを制御する制御処理を終える。よって、車両2の走行中に運転者3aが意識を失っても同乗者3bが車両2を緊急停止できる。一方、運転者3aの意識状態が覚醒状態の場合(S5:YES)は、S6に進む。
【0045】
S6に進むと、人体通信装置6は、エンジンボタン9を端子とする人体通信が成立するか否かを判定する。具体的には、人体通信装置6は人体通信が不成立の場合(エンジンボタン9の操作者3を同乗者3bと判定する場合)(S6:NO)は、停止操作をイタズラと判断して、停止操作によるエンジンを制御する制御処理を抜ける。よって、イタズラによりエンジンが緊急停止するのを防止できる。また、人体通信装置6は、人体通信が成立の場合(エンジンボタン9の操作者3を運転者3aと判定する場合)(S6:YES)は、緊急状況判定部4dが緊急状況と判定して、エンジン制御部4eによりエンジンを停止して、停止操作によるエンジンを制御する制御処理を終える。よって、運転者3aが覚醒状態でも、運転者の操作意思を尊重し、エンジンを停止することができる。
【0046】
以上の構成のもとで、車両用制御装置1は、イタズラによるエンジンの緊急停止を予防する一方で、緊急時に同乗者がエンジンを緊急停止できる処理を実行する。また、エンジンボタン9をインパネ8の中央部に備えることで、イタズラによるエンジンの緊急停止を予防しつつ、車両の発進操作が円滑になる等の利点を確保できる。
【0047】
以上、本発明の実施例を説明したが、これはあくまでも例示にすぎず、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 車両用制御装置 2 車両
3 操作者 3a 運転者
3b 同乗者 4 制御ECU
4a 車両走行判定部(車両走行判定手段)
4b 停止操作検出部(停止操作検出手段)
4c 停止操作判定部(停止操作判定手段)
4d 緊急状況判定部(緊急状況判定手段)
4e エンジン制御部(エンジン制御手段)
5 睡眠検知センサー(意識状態判定手段)
6 人体通信装置(操作者判定手段)
6a 本体部
6b 人体通信端子部
6c 人体通信端子部
7 ステアリング
8 インパネ
9 エンジンスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンを停止する停止操作を検出する停止操作検出手段と、
前記車両の運転者の意識状態を判定する意識状態判定手段と、
前記停止操作の操作者が前記運転者又は同乗者かを判定する操作者判定手段と、
前記意識状態判定手段と前記操作者判定手段の判定結果に基づいて、前記車両を緊急停止する緊急状況か非緊急状況かを判定する緊急状況判定手段と、
前記緊急状況ならば前記エンジンを停止し、前記非緊急状況ならば前記エンジンの稼動を継続するエンジン制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
前記緊急状況判定手段は、前記運転者の前記意識状態が覚醒状態、前記操作者が前記同乗者を条件に、前記非緊急状況と判定することを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記緊急状況判定手段は、前記運転者の前記意識状態が睡眠状態、前記操作者が前記同乗者を条件に、前記緊急状況と判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記緊急状況判定手段は、前記運転者の前記意識状態が覚醒状態、前記操作者が前記運転者を条件に、前記緊急状況と判定することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項5】
前記停止操作は、前記車両の停車中に前記エンジンを停止する通常停止操作と、前記車両の走行中に前記車両エンジンを停止するための前記通常停止操作よりも前記操作者による操作負担が大きい緊急停止操作とを有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項6】
前記停止操作は、前記緊急停止操作よりも前記操作者による操作負担が大きいフェイルセーフ用停止操作を有し、
前記緊急状況判定手段は、前記停止操作が前記フェイルセーフ用停止操作であることを条件に、前記判定結果に関係なく前記緊急状況と判定することを特徴とする請求項5に記載の車両用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−64332(P2013−64332A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201985(P2011−201985)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】