説明

車両用前照灯の配光制御システム

【課題】比較的急なカーブを走行する際に、運転者が無意識のうち速度を上げてしまうことを抑制することができる車両用前照灯の配光制御システムを提供する。
【解決手段】自車両の車速を算出する車速算出手段と、自車両の走行する道路の曲率を算出する曲率算出手段(41)と、車速算出手段から得られる自車両の車速と曲率算出手段(41)から得られる道路の曲率を関連付けて記録する走行記録手段(42)と、現在走行する自車両の車速が、走行記録手段(42)の記録に基づき、現在走行する道路とほぼ同様の曲率を有する道路の前記曲率に関連付けられた車速よりも上昇傾向にあることを検知する車速上昇検知手段(46)と、車速上昇検知手段(46)によって自車両の車速が上昇傾向にある場合、前照灯のそれまでの配光から減速を促す他の配光に切り替える配光切替手段(47)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用前照灯の配光制御システムに係り、特に、配光可変型走行用前照灯の配光制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
配光可変型走行用前照灯としては、たとえば下記特許文献1に開示されているように、車両走行状況に応じて灯具ユニットをハイビームあるいはロービームに切り換えることにより配光パターンを変化させるとともに、車両走行状況に応じて灯具ユニットのシェードを移動させて配光パターンを変化させる構成のものが知られている。
【0003】
ここで、車両走行状況とは、車両走行に関する状態量や外部情報を意味し、たとえば車速、舵角、車両姿勢、前走車との車間距離、ナビゲーション等から得られる情報に該当する。
【0004】
このような構成からなる車両用前照灯は、車両走行状況に即応した配光パターンおよび照射角度でビーム照射を行うことができ、たとえば、他車両へのグレア抑制と自車両の視認性向上という相反する性能を両立させる効果が得られるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-082072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このように構成された車両用前照灯は、上述したように、自車両の視認性が向上することから、たとえば夜間において、無意識のうちに速度を必要以上に上げてしまう運転手の発生が予想される。
【0007】
この場合、比較的急なカーブに走行する際にも、視認性が良好なことから、普段(過去)において同様な曲率を有するカーブを走行する場合よりも、無意識のうち速度を上げてしまうというようなことが生じ、安全性の面で憂慮されるところとなる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的急なカーブを走行する際に、運転者が無意識のうち速度を上げてしまうことを抑制することができる車両用前照灯の配光制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明は、比較的急なカーブを走行する際に、その車速が、普段において同様の曲率を有するカーブを走行する場合の車速よりも上昇傾向にある場合に、前照灯のそれまでの配光パターンから減速を促す他の配光パターンに切り替えるように構成したものである。これにより、運転者は、前方の視認性の低下から車速を減速しようとするので、無意識のうちに速度を上げてしまうということを回避できるようになる。
【0010】
本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の車両用灯具の配光制御システムは、車両走行状況に応じて前照灯の配光を可変する車両用前照灯の配光制御システムであって、少なくとも、自車両の車速を算出する車速算出手段と、自車両の走行する道路の曲率を算出する曲率算出手段と、前記車速算出手段から得られる自車両の車速と前記曲率算出手段から得られる道路の曲率を関連付けて記録する走行記録手段と、現在走行する自車両の車速が、前記走行記録手段の記録に基づき、現在走行する道路とほぼ同様の曲率を有する道路の前記曲率に関連付けられた車速よりも上昇傾向にあることを検知する車速上昇検知手段と、前記車速上昇検知手段によって自車両の車速が上昇傾向にある場合、前照灯のそれまでの配光から減速を促す他の配光に切り替える配光切替手段と、を備えることを特徴とする。
(2)本発明の車両用灯具の配光制御システムは、(1)の構成において、前記減速を促す他の配光は、すれ違い用配光パターンとすることを特徴とする。
(3)本発明の車両用灯具の配光制御システムは、(2)の構成において、車両の左右に取り付けられる前照灯のうち、道路がカーブする側の前照灯においてすれ違い用配光パターンとすることを特徴とする。
(4)本発明の車両用灯具の配光制御システムは、(1)の構成において、前記減速を促す他の配光は、現在走行する道路の曲率に応じて設定されたスイブル角から道路がカーブする側にさらに角度を大きくスイブルさせた配光とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このように構成された車両用前照灯の配光制御システムによれば、比較的急なカーブを走行する際に、運転者が無意識のうちに速度を上げてしまうことを抑制することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の車両用前消灯の配光制御システムで行われる動作を示したフローチャートである。
【図2】本発明の車両用前照灯の配光制御システムに用いられる配光パターンの例を示した説明図である。
【図3】図2に示した配光パターンを用いた車両用前照灯の配光制御の一例を示す説明図である。
【図4】本発明の車両用前消灯の配光制御システムを示す機能ブロック図である。
【図5】本発明の車両用前消灯の配光制御システムの制御例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
(実施態様1)
本発明の車両用前照灯の配光制御システムは、たとえば、車両用前照灯において各種の配光パターンが切り替えられて用いられるもの(配光可変型走行用前照灯)を対象として適用されるようになっている。
【0014】
このため、本発明の車両用前照灯の配光制御システムの説明に先立ち、該前照灯の配光パターンについて、図2を用いて説明をする。図2に示すように、たとえば“走行用ビーム”、“L字ビーム”、“すれ違い用ビーム”と称される配光パターンがある。
【0015】
走行用ビーム10は、左右のそれぞれの前照灯において同様の配光パターンとなっており、図中路面等照度の欄に示すように、ビームの長手方向に対して左右ほぼ対称のパターンとなっている。すなわち、走行用ビーム10は前照灯側(図中下側)から該前照灯から離れるに従い、一旦は幅広となるが、その後に順次幅狭となってビーム先端(図中上側)に至る形状となっている。スクリーンに投影させた走行用ビーム10は、図中スクリーン投影の欄に示すように、水平方向(図中H)に幅広で垂直方向(図中V)に幅狭となる楕円形状をなしている。
【0016】
L字ビーム20は、前記走行用ビーム10と類似する配光パターンとなっているが、図中路面等照度の欄に示すように、左側の前照灯におけるL字ビーム20は、その右側の辺において一部切り欠かれた形状をなし、右側の前照灯におけるL字ビーム20は、その左側の辺において一部切り欠かれた形状をなしている。これにより、左右のそれぞれのL字ビーム20は、その中心軸(図中点線Pで示す)に対して線対称の関係になっている。ここで、たとえば右側のL字ビーム20を詳細に示すと、前照灯側(図中下側)から該前照灯から離れるに従い、一旦は幅広となるが、その後、左側の辺において大きく抉られ右側の辺との距離を狭めながらビーム先端(図中上側)に至る形状となっている。スクリーンに投影させたL字ビーム20は、やはり右側のL字ビーム20を例にとると、図中スクリーン投影の欄に示すように、水平方向(図中H)に幅広で垂直方向(図中V)に幅狭となる楕円形状において、その左上の部分が欠けた形状をなしている。
【0017】
すれ違い用ビーム30は、左右のそれぞれの前照灯において同様の配光パターンとなっており、図中路面等照度の欄に示すように、走行用ビーム10あるいはL字ビーム20よりも照射方向への距離が短くなっており、しかも、前照灯側(図中下側)から該前照灯から離れるに従い、一端は幅広となるが、その後、右側の辺において大きく抉られ左側の辺との距離を狭めながらビーム先端(図中上側)に至る形状となっている。スクリーンに投影させたすれ違い用ビーム30は、図中スクリーン投影の欄に示すように、水平方向(図中H)に幅広で垂直方向(図中V)に幅狭となる楕円形状において、その左上の部分が小さく欠け、右上の部分が大きく欠けた形状をなしている。
【0018】
このような各種の配光パターンの切り替えは、たとえば、灯具ユニット内のシェードを移動させ、あるいは別光源を追加点灯することによって行うようになっている。
【0019】
なお、実施態様1においては、これら3つの配光パターンを用いて以下の説明を行うが、必ずしもこれらの配光パターンに限定はされず、他の配光パターンからなるビームを用いるにようにしてもよいことはいうまでもない。
【0020】
また、図3(a)、(b)、(c)は、道路上の自車両の走行状況に応じて前記配光パターンのうちたとえば走行用ビーム10およびL字ビーム20を切り替える場合の例を示した図である。図3(a)、(b)、(c)では、前方に先行車があり、直線状の道路からカーブにさしかかる場合を想定して描いている。
【0021】
まず、図3(a)に示すように、直線状の道路1に自車両3と先行車5が走行しており、それらの間の距離は比較的大きく離れている。この場合、自車両3の左右の前照灯からは走行用ビーム10によって配光が形成される。走行用ビーム10の先端は先行車5に至っておらず、先行車5へのグレア抑制と自車両3の視認性が確保できるようになっている。
【0022】
そして、直線上の道路1を走行する自車両3と先行車5は、図3(b)に示すように、それらの間の距離を狭めるようになったとする。この場合、自車両3の左右の前照灯はL字ビーム20に切り替わってビーム照射がなされるようになっている。この場合、L字ビーム20は、その先端が先行車を超えて至るようになるが、上述したように、左側の前照灯において右側の辺が抉られた配光パターンをなし、右側の前照灯において左側の辺抉られた配光パターンをなしていることから、L字ビーム20の先端は先行車5の両脇を照射するだけとなる。このため、先行車5へのグレア抑制と自車両3の視認性が確保できるようになっている。
【0023】
さらに、図3(c)に示すように、先行車5がたとえば図中右側に湾曲するカーブ1Bを走行するようになった場合、先行車5は図中右方向へ走行するようになることから、自車両3の右側のL字ビーム20を左側のL字ビーム20に対して角度が大きくなるようにスイブルさせるようになる。この場合、右側のL字ビーム20と左側のL字ビーム20の開き角度θは、走行する道路1の当該カーブ1Bの曲率を算出すること等によって設定されるようになっている。この場合においても、L字ビーム20の先端は先行車5の両脇を照射するだけとなり、先行車5へのグレア抑制と自車両3の視認性が確保できるようになっている。
【0024】
図4は、本発明の車両用前照灯の配光制御システムの実施態様1を示すブロック図である。図2に示す車両用前照灯の配光制御システムは、図3(a)、(b)、(c)に示した配光制御ができるとともに、本発明による配光制御(図5(a)(b)参照)をも行うことができるようになっている。
【0025】
図4において、まず、曲率算出手段41を有し、この曲率算出手段41は、自車両のたとえば車速および操舵角を取り込み、これら車速および操舵角によって現在走行する道路の曲率を随時算出するようになっている。なお、車速および操舵角は、それぞれ、図示しない車速算出手段および操舵角算出手段によって検出され、それらの出力は曲率算出手段41に入力されるようになっている。
【0026】
曲率算出手段41によって算出された道路の曲率は前記車速とともに走行記録手段42に入力されるようになっている。走行記録手段42では、前記曲率および車速を時間的に関連づけて記録するようになっている。時間的に関連付けられた曲率および車速はたとえばRAM(Random Access Memory)からなる半導体メモリに記録されるようになっている。走行記録手段42によって記録された道路の曲率および車速は後述の配光種類決定手段46に入力されるようになっている。
【0027】
一方、曲率算出手段41によって算出された道路の曲率は前記車速とともにスイブル角算出手段43に入力されるようになっている。スイブル角算出手段43は、前記曲率および車速の値によって前照灯の適正なスイブル角を算出するようになっている。スイブル角の算出値はスイブルユニット44に入力され、このスイブルユニット44によって前照灯が前記算出値に基づいてスイブル駆動されるようになっている。また、スイブル角算出手段43によって算出されたスイブル角は、配光種類決定手段46に入力されるようになっている。
【0028】
さらに、周辺環境検出手段45があり、この周辺環境検出手段45は、車両周辺の照度、あるいは他の車両の存在等を含む周辺環境の情報を検出するようになっている。また、先行車との間の距離を算出する場合もこの周辺環境検出手段45によって計測されるようになっている。この周辺環境検出手段45は、たとえばカメラあるいは画像処理手段を組み合わせた装置から構成され、この装置の撮影された映像から周辺環境の情報を検出するようになっている。周辺環境検出手段45によって検出された周辺環境の情報は、配光種類決定手段46に入力されるようになっている。
【0029】
配光種類決定手段46は、走行記録手段42、スイブル角算出手段43、および周辺環境検出手段45からのそれぞれの算出値、情報に基づいて、予め用意されている数種類の配光パターンから適正な配光パターンを決定するようになっている。図3(a)に示した走行用ビーム10の選定、図3(b)に示したL字ビーム20の選定、さらに図3(c)に示したL字ビーム20のスイブル角の設定等は、前記配光種類決定手段46が、走行記録手段42、スイブル角算出手段43、および周辺環境検出手段45からのそれぞれの算出値、情報に基づいて行うようになっている。
【0030】
配光種類決定手段46によって決定された配光パターンの情報は、配光切替手段47に入力されるようになっている。配光切替手段47は、前記情報に基づいて前照灯の照射光を切替え、前記情報の配光パターンで照射光を出射させるようになっている。このような各種の配光パターンの切り替えは、上述したように、たとえば、前照灯に具備される灯具ユニットを、灯具ユニット内のシェードを移動させ、あるいは別光源を追加点灯することによって行うようになっている。
【0031】
図1は、本発明の車両用前消灯の配光制御システムで行われる動作を示したフローチャートである。図1に示す動作は、図4で示した配光種類決定手段46の上述した動作にさらに付け加えられたものとして機能するようになっている。図1に示すように、まず、曲率算出処理が開始される(ステップS1)。この曲率算出処理は曲率算出手段41でなされるようになっている。曲率算出手段41による曲率算出処理は、たとえば、予め設定された所定時間ごとに実行されるようになっている。また、これに限定されることはなく、たとえば操舵角が所定角度を超えた場合等の所定のイベントが発生している場合に実行するようにしてもよい。曲率算出手段41では、車速(車輪速)、操舵角などの車両データ、あるいはGPS(Global Positioning System)データなどに基づいて、現在走行している道路の曲率の算出がなされる(ステップS2)。
【0032】
そして、配光種類決定手段46によって、曲率算出手段41で算出された道路の曲率が、予め設定された曲率に該当(車速記録の対象曲率)するか否かが判断される(ステップS3)。予め設定された曲率に該当しない場合には曲率算出処理は終了される(ステップS12)。曲率算出手段41で算出された道路の曲率が、予め設定された曲率に該当(車速記録の対象曲率)する場合、たとえば半導体メモリに記録されているデータのうち最古の車速記憶を削除し(ステップS4)、最新の車速記憶を記録する(ステップS5)ようになっている。そして、該半導体メモリに記録されている各データから平均化処理を行い車速の平均値を算出するようになっている(ステップS6)。その後、車速の平均値が、予め設定された車速の上限(閾値)を超えているか否かが判断される(ステップS7)。車速の上限(閾値)を超えていない場合には配光制御抑制フラグをクリア(本来の配光制御)する(ステップS11)。車速の上限(閾値)を超えている場合、該車速をすでに記録されているデータであって、当該曲率の道路を走行した際の車速履歴と比較する(ステップS8)。そして、車速が加速の傾向にあるか否かが判断される(ステップS9)。車速が加速の傾向にない場合には配光制御抑制フラグをクリア(本来の配光制御)する(ステップS11)。車速が加速の傾向にある場合、配光制御抑制フラグをセットし、これにより速度を抑制する配光制御を行う(ステップS10)。
【0033】
この配光制御の一例として、図5(a)を用いて説明する。図5(a)は、たとえば、前述した図3(c)の状態から引き継がれる状態を示した図となっている。図5(a)に示すように、道路1のカーブ1Bが湾曲する側の前照灯(図中右側の前照灯)から照射されるL字ビーム20がすれ違い用ビーム30に切り替えられるようになっている。この場合、道路1のカーブ1Bが湾曲する側と反対側の前照灯(図中左側の前照灯)は、いままで通り、L字ビーム20による照射を保持するようになっている。すれ違い用ビーム30への切り替えは、配光種類決定手段46からの情報に基づいて駆動する配光切替手段47によって行われるようになっている。
【0034】
このようにした場合、自車両3の運転車は、道路1のカーブ1Bが湾曲する側において、図中点線枠Qで示す部分の視認性が低下していることを認識でき、運転者は、即、速度を落とすように行動することになる。すなわち、すれ違い用ビーム30の切り替えは、前照灯のそれまでの配光から減速を促す配光に切り替えられることを意味する。したがって、自車両の走行の安全性が確保されることになる。
【0035】
また、前記配光制御の他の例として、図5(b)を用いて説明をする。図5(b)も、前述した図3(c)の状態から引き継がれる状態を示した図となっている。図5(b)に示すように、道路1がカーブ1Bにおいて湾曲する側の前照灯(図中右側の前照灯)から照射される
L字ビーム20が、道路1の湾曲側へスイブルされ、左側の前照灯から照射されるL字ビーム20に対する広がり角θ’が増大する(θ’>θ)ようになっている。すなわち、現在走行する道路の曲率に応じて設定されたスイブル角(θ)から道路がカーブする側にさらに角度を大きくスイブルさせたスイブル角(θ’)で配光がなされるようになっている。図中右側の前照灯のL字ビーム20のスイブルは、配光種類決定手段46からの情報に基づいて駆動するスイブルユニット44によって行われるようになっている。
【0036】
このようにした場合も、自車両3の運転車は、道路1のカーブ1Bが湾曲する側において、視認性が低下していることを認識でき、運転者は、即、速度を落とすように行動することになる。したがって、自車両の走行の安全性が確保されることになる。
【0037】
その後、図1に戻り、曲率算出処理を終了する(ステップS12)。
(実施態様2)
実施態様1では、図5(a)の説明において、自車両3の道路1のカーブ1Bが湾曲する側の前照灯からの配光パターンをすれ違い用ビーム30へ切り替えるだけとしたものである。しかし、これに限定されることはなく、切り替えられたすれ違い用ビーム30を、さらに、他方の前照灯におけるL字ビーム20に対して開き角が大きくなるようなスイブル操作をさせるようにしてもよいことはいうまでもない。
(実施態様3)
実施態様1では、自車両3の前方に先行車5が存在する場合を例に挙げて示したものである。しかし、先行車5は存在していなくても本発明が適用できることはいうまでもない。先行車5に変わって人が歩行している場合もあり、必要以上に速度を上げて走行するのは好ましくないからである。要は、自車両3がカーブにさしかかった際に、過去の記録から、同様の曲率を有するカーブにおいて走行した車速記録から、上昇傾向にある場合において、それまでの配光から減速を促す他の配光に切り替えるようにすればよい。この場合において、車両の走行の安全性を充分に確保できるからである。
【0038】
以上説明したことから明らかとなるように、本発明による車両用前照灯の配光制御システムによれば、比較的急なカーブを走行する際に、運転者が無意識のうちに速度を上げてしまうことを抑制することができるようになる。
【0039】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0040】
1……道路、3……自車両、5……先行車、10……走行用ビーム、20……L字ビーム、30……すれ違い用ビーム、41……曲率算出手段、42……走行記録手段、43……スイブル角算出手段、44……スイブルユニット、45……周辺環境検出手段、46……配光種類決定手段、47……配光切替手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両走行状況に応じて前照灯の配光を可変する車両用前照灯の配光制御システムであって、少なくとも、
自車両の車速を算出する車速算出手段と、
自車両の走行する道路の曲率を算出する曲率算出手段と、
前記車速算出手段から得られる自車両の車速と前記曲率算出手段から得られる道路の曲率を関連付けて記録する走行記録手段と、
現在走行する自車両の車速が、前記走行記録手段の記録に基づき、現在走行する道路とほぼ同様の曲率を有する道路の前記曲率に関連付けられた車速よりも上昇傾向にあることを検知する車速上昇検知手段と、
前記車速上昇検知手段によって自車両の車速が上昇傾向にある場合、前照灯のそれまでの配光から減速を促す他の配光に切り替える配光切替手段と、を備えることを特徴とする前照灯の配光制御システム。
【請求項2】
前記減速を促す他の配光は、すれ違い用配光パターンとすることを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯の配光制御システム。
【請求項3】
車両の左右に取り付けられる前照灯のうち、道路がカーブする側の前照灯においてすれ違い用配光パターンとすることを特徴とする請求項2に記載の車両用前照灯の配光制御システム。
【請求項4】
前記減速を促す他の配光は、現在走行する道路の曲率に応じて設定されたスイブル角から道路がカーブする側にさらに角度を大きくスイブルさせた配光とすることを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯の配光制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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