説明

車両用前照灯

【課題】限られた前面投影面積内において信号用ランプの機能の向上と、下部領域部分等の被視認性を向上させることができる車両用前照灯を提供することにある。
【解決手段】ランプボディ5と該ランプボディ5の前端開口部に光軸に対しスラントして取り付けた透明なレンズカバー6とにより画成されている灯室7内に、複数の機能のランプを一体的に組み込んでなるコンビネーション型の車両用前照灯であって、信号用の光を発する光源17と、該光源17からの光が入射されて該光を内面反射により他端側に向かって導光し、かつ、該導光途中の光の一部を前方に向けて出射させる導光体21とを有してなる導光板4を備え、導光体21をレンズカバー6の内面に沿わせて配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用前照灯に関するものであり、特に、複数の機能のランプが組み合わされたコンビネーション型の車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用前照灯には、ランプボディとその前端開口部に取り付けた透明なカバーとで画成されている灯室内に、ヘッドランプとフロントターンシグナルランプ、及びフロントクリアランスランプ等、複数の機能のランプを一体的に組み込んでなるコンビネーション型の前照灯がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このコンビネーション型の前照灯では、ランプボディ内に配設している複数の機能のランプのそれぞれに、光源及びリフレクタ等が必要とされるため、全体の規模が大きくなり前照灯全体が大型化するという問題がある。
【0004】
また、複数の機能のランプを上下に積層した前照灯では、自動車の車体フロント部の流線型デザインとのマッチングから、ランプボディ内の下部領域が上部領域よりも前方に突出し、前端開口部及び該前端開口部に取り付けたレンズカバーが光軸に対しスラント(傾斜)したデザイン形状にせざるを得ない。
【0005】
さらに、特許文献1に示す車両用前照灯では、小型化を図るために、フロントクリアランスランプの光源にLED(発光ダイオード)等の発光素子を用い、LEDから出射した光を透明材料からなる透光カバーの背後より該透光カバー内に導光させて、該透光カバーの前方に向けて透過させる照明を行っている。この構造では、フロントクリアランスランプ用の透光カバーを、ランプボディ内の下部領域に配設している。
【特許文献1】特開2006−236588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されるような、複数の機能のランプを上下に積層した前照灯では、ランプボディ内の下部領域が上部領域よりも前方に突出し、前端開口部、及びこの前端開口部に取り付けたレンズカバーが、光軸に対しスラントしたデザイン形状にせざるを得ないため、ランプ面積に対する前面投影面積が減少の傾向にある。
【0007】
このため、灯室内の各機能は法規で定められた配光を満足する必要最小限の前面投影面積での設定が強いられ、当然、ランプボディ内の下部領域に配設しているフロントクリアランスランプ用の透光カバーの大きさも小さくせざるを得ない。したがって、必要最小限の大きさで、法規で定められた配光を満足するフロントクリアランスランプ等における信号灯の組み込みが望まれている。
【0008】
また、大きくスラントした形状になると、その下部領域部分がレンズカバーを通して外部に露見し、外観状の見栄えを低下させるという問題もあった。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、限られた前面投影面積内において信号用ランプの機能の向上と、下部領域部分等の被視認性を向上させることができる車両用前照灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る車両用前照灯は、ランプボディと該ランプボディの前端開口部に光軸に対しスラントして取り付けた透明なレンズカバーとにより画成されている灯室内に、複数の機能のランプを一体的に組み込んでなるコンビネーション型の車両用前照灯であって、信号用の光を発する光源と、前記光源からの光が入射されたて該光を内面反射により他端側に向かって導光し、かつ、該導光途中の光の一部を前方に向けて出射させる導光体とを有してなる導光板を備える。この構成によれば、光源からの光を導光体で均一に輝かせ信号灯の機能を満足させることができる。
【0011】
前記導光体を前記レンズカバーの内面に沿わせて配置してなることを特徴とする。この構成によれば、導光体をレンズカバーの内面に沿わせて配置しているので、導光体から前方に向かって出射される光は、直ぐに、レンズカバーを透過して外部へ出る。これにより、光損失がなく、外部から明るく輝いた導光体を見ることができる。
【0012】
上記構成において、前記複数の機能のランプの間を仕切るインナーパネルを有し、前記導光体から出射された光の一部を前記インナーパネルの表面反射を介して間接配光するようにしたことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、上記導光体から出射された光の一部は、前記インナーパネルの表面反射を介して間接配光の形で、導光体から直接出射された光の一部と共に前方へ配光されるので光の損失が少ない。これにより、小さな前面投影面積であっても、明るい信号光が得られる。また、インナーパネルの表面で光の一部を反射させて間接配光することにより、外部からはインナーパネル自体が輝いているように視認され、外観上の見栄えも向上し、下部領域部分等の被視認性も高まる。また、前記インナーパネルは、球形状のインナーパネルであり、導光体は棒状の曲形状をなすことを特徴とする。この構成によれば、導光体は、球形状のインナーパネルの形状に対応することができ、導光体により導いた光を均一に発光させ視認性を良くできる。
【0014】
上記構成において、上記導光体は、上記光源からの距離が光学的に遠くなるに従って徐々に断面積を小さく形成してなる、構成を採用できる。
【0015】
この構成によれば、光源からの距離が遠くなるに従って導光量は徐々に減って行くが、これに伴って断面積も減少するので光密度は変わらない。これにより、導光体は光源側から先端側まで均一の明るさで輝くことになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、導光体から前方に向かって出射される光の損失が少ないので、限られた前面投影面積内において、外部から明るく輝いた導光体を見ることができ、信号用ランプの機能の向上が図れる。また、インナーパネルの表面で光の一部を反射させることにより、外部からはインナーパネル自体が輝いているように視認され、外観上の見栄えが向上するとともに、下部領域部分等の被視認性も高まる。さらに、導光体を光源側から先端側まで、均一の明るさで輝かせることもできるので、さらに見栄えの向上が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の最良の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。図1は本発明を適用した自動車のコンビネーション型前照灯の正面図で、図2は図1のA−A線断面図である。
【0018】
図1に示すコンビネーション型前照灯1は、自動車の進行方向で、かつ、ドライバー側から見た右側に搭載されるものである。なお、左側に搭載されるコンビネーション型前照灯は、図示のコンビネーション型前照灯に対して左右逆となる。
【0019】
前記コンビネーション型前照灯1は、自動車の前部の中央部側に配置された前照灯の機能を有する走行ビームランプ(ハイビームランプ)2と、サイド側に配置されたすれ違いビームランプ(ロービームランプ)3と、走行ビームランプ2及びすれ違いビームランプ3の各サイド側にそれぞれ位置した状態で配置され、夜間の走行中に前から見て車の存在が分かるようにする信号灯、すなわちクリアランスランプの機能を有する複数個(本例では3個)の導光板4,4,4とから組み合わされている。
【0020】
前記コンビネーション型前照灯1は、図2に示すように、ランプボディ5と該ランプボディ5の前面開口部に光軸に対しスラントして取り付けられた透明なレンズカバー6(図1では取り外している)とで灯室7が画成されており、この灯室7内に図1に示すように上記走行ビームランプ2とすれ違いビームランプ3と導光板4,4とを配置している。また、灯室7内には、インナーパネル8(もしくは、インナーハウジングやエクステンション)と、すれ違いビームランプ3用の光源9及びリフレクタ10及びインナーレンズ11と、光源部12及びリフレクタ13と導光板4,4,4が、それぞれ配置されている。
【0021】
前記インナーパネル8は、灯室7内を走行ビームランプ2とすれ違いビームランプ3との間を機能別に仕切る仕切壁である。このインナーパネル8には、走行ビームランプ2用のリフレクタ13からの光とすれ違いビームランプ3用のリフレクタ10及びインナーレンズ11からの光を前記レンズカバー6を介して透過させて外部に照射させ、正面視がほぼ円形の円筒形状をなす走行ビームランプ2用の開口部14とすれ違いビームランプ3用の開口部15とを設けている。そして、走行ビームランプ2とすれ違いビームランプ3との間の空間を覆い隠すようにして、ランプボディ5に適宜の固定手段により固定され、レンズカバー6から内部構造物、例えば灯室7内のリフレクタ10,13の後部に配置されている光軸調整機構、配線機構等が見えないように隠蔽している。
【0022】
また、前記インナーパネル8の少なくとも表側(レンズカバー6と対向する側、またはレンズカバー6を通して見える側)とランプボディ5の内面との間の隙間には、このインナーパネル8及びランプボディ5とレンズカバー6とで画成された補助灯室16が設けられている。この補助灯室16内における少なくともインナーパネル8の表面には、アルミ蒸着や銀色塗装等の鏡面が施されている。
【0023】
前記導光板4は、上記補助灯室16内にクリアランスランプを形成するもので、光源17と、導光体21とで構成されている。
【0024】
前記導光板4の構成について、図3を用いてさらに説明する。図3は導光板4の入光部を示すものである。光源17は、例えばLED(発光ダイオード)であり、ランプボディ5に取り付けられた基板18に実装され、灯室7内の下部にインナーパネル8で隠蔽した状態にして配置されている。光源17の点灯制御は車両の運転席からの操作によって実行される。
【0025】
前記導光体21は、ガラス製または合成樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂、メタクリル樹脂、ポリメチルメタクリエート樹脂等)からなる透光性素材で形成された断面概略四角形状をした細長く、また適宜に屈曲された棒状の導光レンズである。その導光体21の表側(レンズカバー6と対向する側、またはレンズカバー6を通して見える側)は光を出射する発光面21aで、その裏面が乱反射面21bであり、左右の両側面21c,21cも間接配光用の光を作り出すために光りの漏れを許可する面になっている。また、乱反射面21bには、乱反射がよく行われるようにするために、例えば図4に導光体21の裏面(乱反射面21b)を一部拡大して示しているように、多数の錐形をした凹部23を設けたプリズム加工あるいはシボ加工をほぼ全面に亘って設けている。なお、凹部23のプリズム形状は、四角錐形だけでなく、多角形錐あるいは円錐等であってもよい。
【0026】
そして、導光体21は、導光体21の一端部、すなわち発光面21aと面交差する一端面を、光源17の先端発光部17aが対向配設される入光面22とし、この入光面22に光源17の先端発光部17aが収容配置される光源収容室24を設けている。また、導光体21は、入光面22から他端側に向かって離れて行く、すなわち入光面22から光学的に遠くになるに従い、徐々に断面積が小さくなるようにして、先細状に形成されている。
【0027】
このように構成された導光体21は、光源17が配置されている灯室7内の下部において、光源収容室24に光源17の先端発光部17aの一部を収容させるようにして、一端側の入光面22の部分を光源17に連結させ、その灯室7内の下部からインナーパネル8の前面に露見し、かつレンズカバー6の内面をはわせて灯室7のほぼ上端部まで向かい、さらに補助灯室16内の奥部(後端部)へ向かって延びるように湾曲させて設けられ、ランプボディ5に適宜の固定手段により固定されている。
【0028】
そして、光源17が点灯されると、光源17から出射された光が入光面22から導光体21内に放射状に広がって入射され、これが内部で乱反射を繰り返して他端側に向かって導光されて行き、途中、一部の光が正面の発光面17からレンズカバー6を透過して外部に出射する(図2中に符号25で示す直接配光)。これと同時に、左右の両側面21c,21cからも一部の光が漏れ出て、これがインナーパネル8の鏡面をなす外表面で反射し、間接配光(図2中に符号26で示す)としてレンズカバー6を透過して外部に出射する。これにより、導光体21による直接配光25及びインナーパネル8で反射させる補助灯室16内の間接配光26をもってクリアランスランプ等の信号灯として使用される。
【0029】
したがって、本実施の形態に係る車両用前照灯1によれば、導光体21をレンズカバー6の内面に沿わせて配置しているので、導光体21から前方に向かって出射される光は、直ぐにレンズカバーを透過して外部に出ることになる。これにより、光損失がなく、外部から明るく輝いた導光体21を見ることができ、信号用ランプの機能の向上が図れる。
【0030】
また、導光体21の左右の両側面21c,21cから漏れ出た光は、インナーパネル8の鏡面をなす表面で反射し、間接配光26としてレンズカバー6を透過して外部に配光されるので光の損失が少ない。これにより、小さな前面投影面積であっても、明るい信号用の光が得られる。また、インナーパネル8の鏡面で光の一部を反射させて間接配光することにより、外部からはインナーパネル8自体が輝いて視認され、外観上の見栄えも向上し、下部領域部分の被視認性も高まることになる。
【0031】
さらに、導光体21の断面積を光源17からの距離が遠くなるに従い、徐々に小さくなるように先細状に形成しているので、光源17からの距離が遠くなり、導光量が徐々に減っても光密度は変わらない。これにより、導光体21は、光源側から先端側まで均一の明るさで輝かせることができる。
【0032】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は、特許請求の範囲の概念を逸脱しない範囲で、上記実施の形態の構造に種々の変形や変更を施すことも可能である。
【0033】
例えば、上記実施の形態では、導光板4をクリアランスランプとして使用した場合について説明したが、これ以外にターンシグナルランプ等の信号灯として使用することも可能である。
【0034】
また、信号灯として必要な色を出す場合には、光源17側の色を変えても、あるいは導光体21の色を変えてもよい。さらに、導光板4の数は適宜に変更しても差し支えないものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明を適用した車両用前照灯の使用面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1及び図2に示す導光板における入光部の拡大断面図である。
【図4】同上導光板の乱反射面の拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
1 車両用前照灯
2 走行ビームランプ
3 すれ違いビームランプ
4 導光板(クリアランスランプ)
5 ランプボディ
6 レンズカバー
7 灯室
8 インナーパネル
17 光源
21 導光体
21a 発光面
21b 乱反射面
22 入光面
23 凹部
25 直接配光
26 間接配光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプボディと該ランプボディの前端開口部に光軸に対しスラントして取り付けた透明なレンズカバーとにより画成されている灯室内に、複数の機能のランプを一体的に組み込んでなるコンビネーション型の車両用前照灯であって、
信号用の光を発する光源と、前記光源からの光が入射されて該光を内面反射により他端側に向かって導光し、かつ、該導光途中の光の一部を前方に向けて出射させる導光体とを有してなる導光板を備えることを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記複数の機能のランプの間を仕切るインナーパネルを有し、前記導光体から出射された光の一部を前記インナーパネルの表面反射を介して間接配光するようにしたことを特徴とする請求項1記載の車両用前照灯。
【請求項3】
上記導光体は、上記光源からの距離が光学的に遠くなるに従って徐々に断面積を小さく形成してなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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