説明

車両用前照灯

【課題】ランプユニットの上側支持軸の先端を押圧させるばね材を該上側支持軸の軸受を保持する軸受保持部とともに形成でき、該ばね材によるブラケットへのダメージを生じさせることのない車両用前照灯を提供することにある。
【解決手段】 AFS型の車両用前照灯であって、ランプユニットの上側支持軸(22)に挿入される軸受を保持する軸受ホルダーを備える。軸受ホルダー(40)は、ブラケットへの固定部(43)、上側支持軸(22)を挿入する軸受を保持する軸受保持部(44)、および上側支持軸(22)の先端を押圧するばね部(42)を一体として形成されている。固定部(43)は、平板部材に軸受(41)をその中心が前記平板部材を含む平面内に位置付けて保持する軸受保持部(44)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用前照灯に係り、特に、車両の走行状況に応じて光の照射方向を追従変化させるAFS(Adaptive Front-lighting System)型の車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用前照灯として、たとえば下記特許文献1に開示されているように、光源を内蔵するランプユニットがその垂直方向に植設される支持軸を介してブラケットに軸支され、前記支持軸のうち下側の支持軸(以下、下側支持軸と称する)がアクチュエータに連結されて構成されたものが知られている。
【0003】
そして、ランプユニットの下側支持軸はアクチュエータ内のスイブル用モータの出力軸に嵌合されて構成され、ランプユニットはスイブル用モータの駆動によって前記支持軸を中心として左右方向に回動され、いわゆるスイブル動作が行われるようになっている。
【0004】
また、ランプユニットの前記支持軸のうちアクチュエータと反対側に植設される支持軸(以下、上側支持軸と称する)は球状軸受を介してブラケットに軸支され、アクチュエータ内のレベリング用モータの駆動によって該アクチュエータはブラケットに対して前後方向に摺動でき、これにより、ランプユニットは前記球状軸受を中心として上下方向に回動され、いわゆるレベリング動作が行われるようになっている。
【0005】
そして、このような構成からなる車両用前照灯は、たとえば下記特許文献2に開示されているように、ブラケットにばね材を固定させ、このばね材によってランプユニットの上側支持軸の先端を押圧させる構成とし、上側支持軸にその軸方向に沿った付勢力を生じさせるようにしたものが知られている。これにより、ランプユニットはアクチュエータが配置される下方側に付勢され、ランプユニットとブラケットあるいはアクチュエータとの間にいわゆるガタが発生するのを回避させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-108867号公報
【特許文献2】特開2010-049862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ランプユニットの上側支持軸の先端を押圧させるばね材は、特許文献2からも明かとなるように、それ単独で構成されたものであり、たとえば、該ばね材と近接して配置される前記上側支持軸の軸受を保持する部材等とは別個のものとして構成されたものとなっている。このため、部品点数が増大するという不都合を有するものであった。
【0008】
また、ランプユニットの上側支持軸の先端を押圧させるばね材は、その押圧点(荷重点)とブラケットとの固定部との間に距離を有する構成となっていたため、ばね材にモーメントが発生し、これにより、ばね材によるブラケットへのダメージが生じ易い構成となっていた。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ランプユニットの上側支持軸の先端を押圧させるばね材を該上側支持軸の軸受を保持する軸受保持部とともに形成でき、該ばね材のブラケットへのダメージを生じさせることのない車両用前照灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するため、本発明の車両用前照灯は、ばね材と、軸受保持部と、これらばね材および軸受保持部をブラケットに固定する固定部とを互いに一体に形成し、かつ、該ばね材において、ランプユニットの上側支持軸の押圧点(荷重点)とブラケットとの固定部との距離をほぼ零とするように構成したものである。
【0011】
本発明の車両用前照灯は以下の構成によって把握される。
(1)本発明は、光源を内蔵するランプユニットと、前記ランプユニットに互いに同軸に形成された上側支持軸と下側支持軸の廻りに回動可能に支持するブラケットと、前記下側支持軸を通して前記ランプユニットを回動させるアクチュエータとを備え、前記上側支持軸は前記ブラケットに軸受ホルダーを介して保持されている車両用前照灯であって、前記軸受ホルダーは、ブラケットへの固定部、前記上側支持軸を挿入する軸受を保持する軸受保持部、および前記上側支持軸の先端を押圧するばね部を一体として形成され、前記固定部は、平板部材に前記軸受をその中心が前記平板部材を含む平面内に位置づけて保持する前記軸受保持部を備え、前記軸受保持部に隣接し前記上側支持軸に交差する方向に延在する長孔が形成され、前記軸受に挿入される上側支持軸の先端は前記長孔内に位置づけられるように構成され、前記ばね部は、前記固定部から前記平板部材に対して屈曲されて延在された第1延在部、湾曲部、さらに前記固定部の前記長孔に遊嵌されるようにして延在された第2延在部を備え、前記第2延在部は、前記固定部の前記平板部材にほぼ直交する方向から前記長孔に遊嵌されて、前記上側支持軸の先端を押圧するように構成されていることを特徴とする。
【0012】
(2)本発明は、(1)の構成において、前記軸受ホルダーは、金属板のプレスによって形成されていることを特徴とする。
(3)本発明は、(1)の構成において、前記軸受ホルダーは、その軸受保持部において、ブラケットとの間に前記軸受を保持することを特徴とする。
(4)本発明は、(1)の構成において、前記ばね部は、前記湾曲部によって、前記第2延在部が第1延在部から離間する方向に付勢力が発生するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
このように構成した本発明の車両用前照灯は、ランプユニットの上側支持軸の先端を押圧させるばね材を該上側支持軸の軸受を保持する軸受保持部とともに形成でき、該ばね材によるブラケットへのダメージを回避できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の車両用前照灯に備えられる軸受ホルダーの構成図で、(a)は斜視図、(b)は上面図、(c)は前面図、(d)は下面図、(e)は(a)のe−e線における断面図である。
【図2】本発明の車両用前照灯の構成図で、(a)は斜視図、(b)は(a)に示した車両用前照灯を分解した斜視図である。
【図3】本発明の車両用前照灯に備えられるアクチュエータ本体を分解した斜視図である。
【図4】ブラケットに固定された軸受ホルダーとその近傍を示した断面図で、(a)は、上側支持軸が垂直方向にある場合を、(b)は、上側支持軸22が垂直方向に対して若干傾倒している場合を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
(実施態様1)
〈全体の構成〉
図2(a)は、本発明の車両用前照灯の斜視図を示し、図2(b)は、図2(a)に示す車両用前照灯を分解した斜視図を示している。
【0016】
なお、図2(a)、図2(b)において、x方向、y方向、z方向を定め、これら矢印方向は、それぞれ、右方向(逆は左方向)、前方向(逆は後方向)、上方向(逆は下方向)に対応させている。
【0017】
車両用前照灯1は、図2(b)に示すように、大略、ランプユニット10、軸固定部20、ブラケット30、軸受ホルダー40、アクチュエータ本体50とから構成されている。
【0018】
ランプユニット10は、光源(図示せず)を内蔵して構成され、この光源からの光は前方のレンズ11を通して外方に照射されるようになっている。ランプユニット10は光源を囲むようにしてリフレクタ(図示せず)を内蔵し、レンズ11に直接照射される光以外の光を該リフレクタによって前記レンズの側に導くように構成されている。
【0019】
軸固定部20は、環状体からなり、ランプユニット10に嵌合され該ランプユニット10の側面を囲んで配置されるようになっている(図2(a)参照)。軸固定部20には上側支持軸22および下側支持軸23が備えられている。上側支持軸22および下側支持軸23は上下方向(z方向)に互いに同軸に配置されている。これにより、ランプユニット10は、該ランプユニット10に嵌め込まれた軸固定部20によって、上側支持軸22および下側支持軸23が備えられたものとして構成される。この趣旨から、上側支持軸22および下側支持軸23は、必ずしも軸固定部20に形成されていなくても、ランプユニット10の外周面に直接形成された構成であってもよい。このことから、以下の説明において、上側支持軸22、下側支持軸23を、それぞれ、ランプユニット10の上側支持軸22、ランプユニット10の下側支持軸23と称する場合がある。
【0020】
ブラケット30は、軸固定部20が取り付けられたランプユニット10を緩く挿入(遊嵌)され該ランプユニット10の側面を囲んで配置されるようになっている。ブラケット30は、支持枠体32とこの支持枠体32の下方部に設けられた支持基板部33を備えて構成されている。支持枠体32は、前方から観た場合ほぼ逆U字状をなし、ランプユニット10の上面および左右側面に対向して配置され、支持板基部33は、支持枠体32の開放端を連結する板状をなし、ランプユニット10の下面に対向して配置されるようになっている。なお、支持基板部33は、その上下面を貫通させる比較的大きな孔35が設けられている。ランプユニット10の下側支持軸23は、該孔35を通して、後述のアクチュエータ53の出力軸63に嵌合されるようになっている。
【0021】
ブラケット30(支持枠体32)の上部には、軸受ホルダー40が固定されるようになっている。この軸受ホルダー40は、ランプユニット10の上側支持軸22を挿入する球状軸受41をブラケット30とで保持するようになっている。球状軸受41は軸受ホルダー40とブラケット30の間に定位置を保持したまま自由に回転できるようになっている。軸受ホルダー40は、球状軸受41に挿入されたランプユニット10の上側支持軸22の先端を軸方向へ押圧するばね部42を備えて構成されている。すなわち、軸受ホルダー40は、たとえばステンレス等の金属板のプレスによって形成され、ブラケット30への固定部43、球状軸受41の軸受保持部44、前記ばね部42を一体に備えて構成されている。このように、軸受ホルダー40を固定部43、軸受保持部44、ばね部42を一体として構成することにより、部品点数の大幅な低減を実現することができる。
【0022】
なお、ランプユニット10の上側支持軸22の先端は、ランプユニット10のレベリング動作の際のばね部42との摺動を滑らかにするため球面に加工されている(図4参照)とともに、該球面は球状軸受41を中心(図4において符号Oで示す)とする半径(図4において符号Rで示す)をもつ曲率を有するように構成されている。後述するように、上側支持軸22の先端のこのような形状はばね部42の上下方向の変動を大幅に抑制することができるようになる。軸受ホルダーの詳細についてはさらに後述する。
【0023】
ブラケット30の支持基板部33には、その下部側にアクチュエータ本体50が取り付けられるようになっている。このアクチュエータ本体50は、後に詳述するように、ブラケット30の支持基板部33に直接に固定されるブラケット固定部51と、このブラケット固定部51に対して前後方向に可動し得る機構収納部(アクチュエータと称する場合がある)53とを有する。
【0024】
ブラケット固定部51にはその上下面を貫通する孔52が設けられ、この孔52を通してランプユニット10の下側支持軸23は、機構収納部53に配置されたスイブル用モータ(図示せず:図3において符号64で示す)のギャ列を介した出力軸63に嵌合されるようになっている。スイブル用モータ64の駆動によってランプユニット10の下側支持軸23が該下側支持軸23の廻りに回動し、ランプユニット10は上側支持軸22および下側支持軸23を中心に左右方向に回動するスイブル動作が行われるようになっている。
【0025】
また、機構収納部53には、この機構収納部53をブラケット固定部51に対して前後方向(y方向)に移動させるレベリング用モータ(図示せず:図3において符号61で示す)が備えられている。機構収納部53がブラケット固定部51に対して移動することによって、ランプユニット10の下側支持軸23が前記球状軸受41を中心として揺動され、ランプユニット10は上下方向に回動するレベリング動作が行われるようになっている。なお、後に詳述するが、ブラケット固定部51の孔52には、ランプユニット10の下側支持軸23に挿嵌されたスライダ54が配置されている。スライダ54は、その左右の端辺においてブラケット固定部51の孔52の左右の周辺と当接され、ランプユニット10のレベリング動作にともなって、ブラケット固定部51に対して前後方向に摺動できるようになっている。
【0026】
〈アクチュエータ〉
図3は、アクチュエータ本体50を分解した斜視図を示している。上述したように、アクチュエータ本体50は、ブラケット固定部51、機構収納部(アクチュエータ)53とから構成されている。また、機構収納部53は、収納基部53Aと収納蓋部53Bとから構成されている。
【0027】
まず、機構収納部53の収納基部53Aには、スイブル用モータ64が配置され、このスイブル用モータ64はギャ列65を介して出力軸63を回転させるようになっている。出力軸63は上下方向に立設され、その先端は、ランプユニット10の下側支持軸23の先端に嵌合されるようになっている。なお、ランプユニット10の下側支持軸23は、支持基板部33の孔35、ブラケット固定部51の孔52、収納蓋部53Aに形成された後述の孔をそれぞれ通して出力軸63に嵌合されるようになっている。出力軸63の先端と下側支持軸23の先端との嵌合は、たとえば一方の先端面に形成された凸部が他方の先端面に形成された凹部に嵌り込ませることによって行っている。
【0028】
また、収納基部53Aには、レベリング用モータ61が配置され、このレベリング用モータ61はギャ列62を介してピニオンギャ66を回転させるようになっている。ピニオンギャ66は上下方向に立設され、収納蓋部53Bに形成された孔67を通して、ブラケット固定部51の裏面に設けられたラック(図示せず:図3において符号56で示す)に噛合されるようになっている。ラック56は、前後方向に並設された多数の歯を有し、ピニオンギャ66の回転によって、収納基部53A(すなわち機構収納部53)はブラケット固定部51(すなわちブラケット30)に対して前後方向に移動できるようになっている。なお、収納基部53Aの裏面側には、スイブル用モータ64、レベリング用モータ61を駆動させる電子回路部品(図示せず)が搭載されるようになっている。
【0029】
機構収納部53の収納蓋部53Bは、収納基部53Aに配置されたスイブル用モータ64、ギャ列65、出力軸63、レベリング用モータ61、ギャ列62、およびピニオンギャ66等を被って収納基部53Aにたとえば係合によって固定されるようになっている。収納蓋部53Bには、その上下面を貫通する孔68および前記孔67が形成され、孔68は出力軸63が露呈されるように設けられ、孔67はピニオンギャ66をブラケット固定部51に設けられたラック56に噛合させるために設けられている。また、収納蓋部53Bは、一対のガイド軸70を介して該ブラケット固定部51に支持されるようになっている。すなわち、収納蓋部53B、ブラケット固定部51は、それぞれ、左右の脇部において、前後方向に離間して並設される複数の軸孔部72を有している。これら軸孔部72の軸孔の中心軸は前後方向に延在され、左右のそれぞれにおいて同軸となっている。
【0030】
収納蓋部53B、ブラケット固定部51は、左右のそれぞれにおいて、ガイド軸70が、たとえば、収納蓋部53Bの軸孔部72とブラケット固定部51の軸孔部72を交互に挿入されることによって、互いに支持されるようになっている。この場合、収納蓋部53Bの軸孔部72とこの軸孔部72と隣接するブラケット固定部51の軸孔部72は間隙を有して形成され、収納蓋部53Bは、ブラケット固定部51に対してガイド軸70の長手方向に沿って可動するように構成されている。これにより、収納蓋部53Bに収納基部53Aを固定させて構成される機構収納部(アクチュエータ)53は、ブラケット固定部51に対して前後方向に移動し得るように構成されるようになる。機構収納部53のブラケット固定部51に対する前後方向の移動はレベリング用モータ61の駆動によってなされる。
【0031】
ブラケット固定部51は、ブラケット30の支持基板部33の下面に固定され、その上下面を貫通する孔52が設けられている。この孔52には、ランプユニット10の下側支持軸23が挿通するようになっている。この孔52は、ライトユニットの上下方向の回動がなされるために前後方向に径の大きな長孔となっている。また、この孔52には、ランプユニット10の下側支持軸23を挿嵌するスライダ54が配置されている。スライダ54は、その左右の端辺においてブラケット固定部51の孔52の左右の周辺と当接されることによって、ランプユニット10をブラケット固定部51によって支持させるとともに、ランプユニット10の上下方向の回動の際に、ブラケット固定部51に対して摺動できるようになっている。
【0032】
このため、スライダ54には、左右の端辺に摺動片部54Aが形成され、ブラケット固定部51の孔52の左右の周辺には前記摺動片部54Aと当接される摺動辺部52Aが形成されている。この場合、摺動片部54Aと摺動辺部52Aとの互いに当接される面は、ランプユニット10の上側支持軸22を軸支する球状軸受41を中心とする曲率を有する円弧状面として形成されている。これにより、ランプユニット10の上下方向の回動の際に、ブラケット固定部51に対してスライダ54の円滑な摺動を行わせることができるようになっている。なお、このブラケット固定部51には、その左右の両脇において、ガイド軸70が挿入される軸孔部72が設けられ、また、裏面においてラック56が設けられていることは上述した通りである。
〈軸受ホルダー〉
次に、前記軸受ホルダー40の詳細について説明をする。
【0033】
図1において、(a)は軸受ホルダー40の斜視図、(b)は軸受ホルダー40の上面図、(c)は軸受ホルダー40の前面図、(d)は軸受ホルダー40の下面図、(e)は(a)のe−e線における断面図である。
【0034】
軸受ホルダー40は、上述したように、たとえばステンレス等の金属板のプレスによって形成され、ブラケット30への固定部43、球状軸受41の軸受保持部44、ばね部42を一体に備えて構成されている。
【0035】
軸受ホルダー40の固定部43は、軸受保持部44を中央に位置づけ左右方向に延在する平板部として形成され、この平板部に複数の螺子孔45が設けられて構成されている。この固定部43のブラケット30への固定は各螺子孔45を通してブラケット30に螺入されるボルト(図2において符号46で示す)によってなされるようになっている。
【0036】
軸受保持部44は、球状軸受41をブラケット30とともに保持するようになっており、その球状軸受41の側の面において球状軸受41のうちのほぼ半分と対向して当接される凹部(図1(e)において符号44Aで示す)を有して(これにより反対側の面において前記凹部によって反映される凸部44Bを有する)構成されている。なお、ブラケット30は、その球状軸受41の側の面において該球状軸受41のうちほぼ半分と対向して当接される凹部(図2において符号36で示す)が形成されている。
【0037】
ここで、球状軸受41は軸受保持部44の凹部44Aとブラケット30の凹部36の間において自由に回転(自転)できるようになっていることは上述した通りである。この場合、球状軸受41の中心は、該球状軸受41の回転に拘わらず、軸受ホルダー40の固定部43(軸受保持部44を除く)を含む平面内に位置づけられるようになっている。
【0038】
そして、固定部43には、軸受保持部44に隣接する上方において左右方向に延在する長孔47が形成されている。これにより、球状軸受41に挿入される上側支持軸22の先端は該長孔47内に位置づけられるようになっている。なお、この長孔47には、後述するばね部42の先端部が前方に若干突出するように遊嵌され、該ばね部42の先端部は上側支持軸22の先端に当接されるとともに該上側支持軸22をその軸方向に押圧するようになっている。
【0039】
そして、軸受ホルダー40は、その固定部43における上方の辺が、固定部43に対してほぼ直交するように屈曲されて延在され(以下、この延在部を第1延在部42Aと称す)、この第1延在部42Aは湾曲部42Cを形成した後に、さらに固定部43の長孔47に遊嵌されるようにして延在されて(以下、この延在部を第2延在部42Bと称す)構成されている。なお、軸受ホルダー40は、たとえば、第1延在部42A、湾曲部42C、第2延在部42Bがブラケット30の上方に配置されるように、ブラケット30に固定されるようになっている。第2延在部42Bの先端は、固定部43にほぼ直交する方向から長孔47に遊嵌(少なくとも長孔の図中上下方向の幅が第2延在部42Bの厚さよりも大きく形成されている)され、長孔47から前方に若干突出するように延在されて構成されている。
【0040】
軸受けホルダー40は、たとえば、第1延在部42A、湾曲部42C、および第2延在部42Bのほぼ途中までにおいて、左右方向の幅がほぼ同一に形成され、第2延在部Bの途中から先端にかけて、左右方向の幅が先端に至るに従い小さくなるように構成されている。しかし、第1延在部42A、湾曲部42C、第2延在部42BBは、必ずしもこのような形状に限定されないことはもちろんである。
【0041】
また、第2延在部42Bは前記湾曲部42Cによってばね力を蓄積させる実質上のばね部を構成し、第2延在部42Bの先端(ばね部42の先端)は第1延在部42Aから離間する方向に付勢力が作用するようになっている。このため、湾曲部42Cにおける湾曲状態を変形させて構成することにより、該付勢力を所定の値に設定することができるようになる。このことから、湾曲部42Cにおける湾曲形状は必ずしも図に示すような形状に限定されないことはもちろんである。
【0042】
軸受ホルダー40をこのように構成することによって、固定部43の長孔47内には、球状軸受41に挿入されたランプユニット10の上側支持軸22の先端が位置づけられ、ばね部42の先端は上側支持軸22の先端に当接されるとともに該上側支持軸22をその軸方向に押圧できるようになる。また、ばね部42の第2延在部42Bは、上述したように固定部43にほぼ直交する方向から長孔47に遊嵌された構成となっていることから、固定部43を含む平面内に位置づけられて配置される上側支持軸22をその軸方向に沿って押圧できるようになっている。
【0043】
これにより、軸受ホルダー40のばね部42による上側支持軸22の押圧点(荷重点)と軸受ホルダー40のブラケット30との固定部43との間の距離をほぼ零にできる。このため、ばね部42にモーメントが発生せず、ブラケット30へのダメージを防ぐことができ、強度的に信頼性のある軸受ホルダー40を得ることができるようになる。
【0044】
また、ランプユニット10の上側支持軸22の先端は、球状軸受41を中心とする半径を曲率とする球面としたものである。これにより、ランプユニット10のレベリング動作において、ランプユニット10の上側支持軸22が球状軸受41を中心として揺動しても、該上側支持軸22の先端を押圧するばね部42の第2延在部42Bは、上下方向に変動しないように構成することができる。
【0045】
図4(a)、(b)は、軸受ホルダー40を、ランプユニット10の上側支持軸22を挿入した球状軸受41を保持した状態で、ブラケット30に固定した場合の断面図を示している。 図4(a)、(b)は、ランプユニット10のレベリング動作における二つの状態を示し、図4(a)は、上側支持軸22が垂直方向にある場合を、図4(b)は、上側支持軸22が垂直方向に対して若干傾倒している場合を示している。図4(a)、(b)から明らかになるように、上側支持軸22のばね部42と当接する先端は、球状軸受41の中心Oから半径Rの曲率を有する球面となっていることから、図4(a)、(b)のいずれの場合においても、ばね部42(特に第2延在部42B)は、その位置を変動させるようなことがなくなる。
【0046】
このことは、ばね部42による上側支持軸22の軸方向への押圧にバラツキが生じることを大幅に抑制することができ、ひいては、ランプユニット10の下側支持軸23に挿嵌されるスライダ54の摺動片部54Aのアクチュエータ本体53(ブラケット固定部51の摺動辺部54A)に対する荷重をほぼ一定にすることができる。すなわち、ランプユニット10の下側支持軸22に設けられたスライダ54とブラケット30に対する固定部との摺動部における摺動を滑らかにでき、ランプユニット10のレベリング動作を信頼性あるものにすることができる。
【0047】
(実施態様2)
実施態様1に示した車両用前照灯1は、ランプユニット10においてスイブル動作できるとともに、レベリング動作できるものを対象としたものである。しかし、本発明は、ランプユニット10においてスイブル動作ができレベリング動作ができない構成のものであっても適用できることはいうまでもない。この場合、軸受ホルダー40が保持する軸受(ランプユニット10の上側支持軸22を挿入する軸受)は必ずしも球状である必要はなく、他の形状の軸受を用いることができる。
【0048】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0049】
1……車両用前照灯、10……ランプユニット、11……レンズ、20……軸固定部、22……上側支持軸、23……下側支持軸、30……ブラケット、32……支持枠体、33……支持基板部、35……孔、36……凹部、40……軸受ホルダー、41……球状軸受、42……ばね部、42A……第1延在部、42B……第2延在部、42C……湾曲部、43……固定部、44……軸受保持部、45……螺子孔、46……ボルト、47……長孔、50……アクチュエータ本体、51……ブラケット固定部、52……孔、52A……摺動辺部、53……機構収納部(アクチュエータ)、53A……収納基部、53B……収納蓋部、54……スライダ、54A……摺動片部、56……ラック、61……レベリング用モータ、62……ギャ列、63……出力軸、64……スイブル用モータ、65……ギャ列、66……ピニオンギャ、67、68……孔、70……ガイド軸、72……軸孔部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を内蔵するランプユニットと、前記ランプユニットに互いに同軸に形成された上側支持軸と下側支持軸の廻りに回動可能に支持するブラケットと、前記下側支持軸を通して前記ランプユニットを回動させるアクチュエータとを備え、前記上側支持軸は前記ブラケットに軸受ホルダーを介して保持されている車両用前照灯であって、
前記軸受ホルダーは、ブラケットへの固定部、前記上側支持軸を挿入する軸受を保持する軸受保持部、および前記上側支持軸の先端を押圧するばね部を一体として形成され、
前記固定部は、平板部材に前記軸受をその中心が前記平板部材を含む平面内に位置づけて保持する前記軸受保持部を備え、前記軸受保持部に隣接し前記上側支持軸に交差する方向に延在する長孔が形成され、前記軸受に挿入される上側支持軸の先端は前記長孔内に位置づけられるように構成され、
前記ばね部は、前記固定部から前記平板部材に対して屈曲されて延在された第1延在部、湾曲部、さらに前記固定部の前記長孔に遊嵌されるようにして延在された第2延在部を備え、前記第2延在部は、前記固定部の前記平板部材にほぼ直交する方向から前記長孔に遊嵌されて、前記上側支持軸の先端を押圧するように構成されていることを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記軸受ホルダーは、金属板のプレスによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記軸受ホルダーは、その軸受保持部において、ブラケットとの間に前記軸受を保持することを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項4】
前記ばね部は、前記湾曲部によって、前記第2延在部が第1延在部から離間する方向に付勢力が発生するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−156017(P2012−156017A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14536(P2011−14536)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】