説明

車両用前照灯

【課題】ランプユニットのレベリング動作において、アクチュエータのブラケットに対する前後方向の摺動を滑らかにした車両用前照灯を提供する。
【解決手段】 互いに同軸に形成された上側支持軸(22)と下側支持軸(23)を備えるランプユニット(10)と、ランプユニット(10)を、その上側支持軸(22)において球状軸受(41)を介し、下軸支持部(23)においてスライダ(54)を介して支持するブラケット(30)と、ランプユニット(10)の下側支持軸(23)を駆動させる機構部を備え、ブラケット(30)に対して前後方向に可動するアクチュエータ(53)と、ブラケット(30)に固定され、上側支持軸(22)の先端を押圧させるばね部(42)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用前照灯に係り、特に、車両の走行状況に応じて光の照射方向を追従変化させるAFS(Adaptive Front-lighting System)型の車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用前照灯として、たとえば下記特許文献1に開示されているように、光源を内蔵するランプユニットがその垂直方向に植設される一対の支持軸を介してブラケットに軸支され、前記支持軸のうち下側の支持軸(以下、下側支持軸と称する)がアクチュエータに連結されて構成されたものが知られている。
【0003】
そして、ランプユニットの下側支持軸はアクチュエータ内のスイブル用モータの出力軸に嵌合されて構成され、ランプユニットはスイブル用モータの駆動によって前記支持軸を中心として左右方向に回動され、いわゆるスイブル動作が行われるようになっている。
【0004】
また、ランプユニットの前記支持軸のうちアクチュエータと反対側に植設される支持軸(以下、上側支持軸と称する)は球状軸受を介してブラケットに軸支され、アクチュエータ内のレベリング用モータの駆動によって該アクチュエータはブラケットに対して前後方向に摺動でき、これにより、ランプユニットは前記球状軸受を中心として上下方向に回動され、いわゆるレベリング動作が行われるようになっている。
【0005】
そして、このような構成からなる車両用前照灯は、たとえば下記特許文献2に開示されているように、ブラケットにばね材を固定させ、このばね材によってランプユニットの上側支持軸の先端を押圧させる構成として、上側支持軸にその軸方向に沿った付勢力を生じさせるようにしたものが知られている。これにより、ランプユニットはアクチュエータが配置される下方側に付勢され、ランプユニットとブラケットあるいはアクチュエータとの間にいわゆるガタが発生するのを回避させている。
【0006】
この場合、上側支持軸のばね材と当接する先端は、ランプユニットの上下回動(レベリング動作)の際に、ばね材に対して摺動し、その摺動を滑らかにさせるために、上側支持軸の半径とほぼ同じ半径を有する半球面状として構成していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-108867号公報
【特許文献2】特開2010-049862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した構成の車両用前照灯において、ランプユニットのレベリング動作に、アクチュエータのブラケットに対する前後方向の摺動が充分に滑らかでないことが見いだされた。
【0009】
本発明者等は、この原因を究明した結果、上側支持軸の球状軸受を中心とする揺動運動によって、ばね材が上下方向に往復動し、ばね材の上側支持軸の軸方向への押圧にバラツキが生じ、ひいては、アクチュエータの摺動部に加わる荷重にバラツキが生じ、この荷重のバラツキがアクチュエータのブラケットに対する前後方向の滑らかな摺動を妨げていることにあることが判明した。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ランプユニットのレベリング動作において、アクチュエータのブラケットに対する前後方向の摺動を滑らかにした車両用前照灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の車両用前照灯は、ランプユニットの上側支持軸のばね材と当接する先端の球面半径を従来と異ならしめることにより、ばね材の上下方向の往復動をなくし、これにより、アクチュエータの摺動部に加わる荷重をほぼ一定にさせるようにしたものである。
【0012】
本発明は、以下に示す構成によって把握される。
(1)本発明の車両用前照灯は、光源を内蔵し、互いに同軸に形成された上側支持軸と下側支持軸を備えるランプユニットと、前記ランプユニットを、その上側支持軸において球状軸受を介し、下軸支持部においてスライダを介して支持するブラケットと、前記ランプユニットの前記下側支持軸を駆動させる機構部を備え、前記ブラケットに対して前後方向に可動するアクチュエータと、前記ブラケットに固定され、前記上側支持軸の先端を押圧させるばね部と、を備え、前記アクチュエータは、その前後方向の可動によって、前記球状軸受を中心にしてランプユニットを上下方向に回動させ、その際に、前記スライダが前記ブラケットの固定部に対して摺動するように構成され、前記スライダと前記ブラケットの固定部との摺動部は、前記球状軸受を中心とする半径からなる曲率を有する円弧面として構成され、前記上側支持軸の前記ばね部に押圧される先端は、前記球状軸受を中心とする半径からなる曲率を有する球面として構成されていることを特徴とする。
【0013】
(2)本発明の車両用前照灯は、(1)の構成において、前記球状軸受は軸受ホルダーによって前記ブラケットにより支持され、前記軸受ホルダーは前記ばね部を一体として構成されていることを特徴とする。
【0014】
(3)本発明の車両用前照灯は、(2)の構成において、前記軸受ホルダーは、前記ブラケットへの固定部、前記球状軸受を保持する軸受保持部、および前記上側支持軸の先端を押圧するばね部を一体として形成され、前記固定部は、平板部材に前記球状軸受をその中心が前記平板部材を含む平面内に位置づけて保持する前記軸受保持部を備え、前記軸受保持部に隣接し前記上側支持軸に交差する方向に延在する長孔が形成され、前記軸受に挿入される上側支持軸の先端は前記長孔内に位置づけられるように構成され、前記ばね部は、前記固定部から前記平板部材に対して屈曲されて延在された第1延在部、湾曲部、さらに前記固定部の前記長孔に遊嵌されるようにして延在された第2延在部を備え、前記第2延在部は、前記固定部の前記平板部材にほぼ直交する方向から前記長孔に遊嵌されて、前記上側支持軸の先端を押圧するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
このような構成からなる車両用前照灯は、ランプユニットのレベリング動作において、アクチュエータのブラケットに対する前後方向の摺動を滑らかにすることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の車両用前照灯のブラケットに固定された軸受ホルダーを上側支持軸とともに示した断面図で、(a)は、上側支持軸が垂直方向にある場合を、(b)は、上側支持軸が垂直方向に対して若干傾倒している場合を示した図である。
【図2】本発明の車両用前照灯の構成図で、(a)は斜視図、(b)は(a)に示した車両用前照灯を分解した斜視図である。
【図3】本発明の車両用前照灯に備えられるアクチュエータ本体を分解した斜視図である。
【図4】本発明の車両用前照灯に備えられる軸受ホルダーの構成図で、(a)は斜視図、(b)は(a)のb−b線における断面図である。
【図5】本発明の車両用前照灯を、その上側支持軸、下側支持軸を含む面で断面をとった図で、(a)は、上側支持軸、下側支持軸を結ぶ中心線が垂直方向にある場合を、(b)は、上側支持軸、下側支持軸を結ぶ中心線が垂直方向に対して若干傾倒している場合を示した図である。
【図6】従来の上側支持軸の構成を示し、(a)は図1(a)に、(b)は図1(b)に対応させて描いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
(実施態様1)
〈全体の構成〉
図2(a)は、本発明の車両用前照灯の斜視図を示し、図2(b)は、図2(a)に示す車両用前照灯を分解した斜視図を示している。
【0018】
なお、図2(a)、図2(b)において、x方向、y方向、z方向を定め、これら矢印方向は、それぞれ、右方向(逆は左方向)、前方向(逆は後方向)、上方向(逆は下方向)に対応させている。
【0019】
車両用前照灯1は、図2(b)に示すように、大略、ランプユニット10、軸固定部20、ブラケット30、軸受ホルダー40、アクチュエータ本体50とから構成されている。
【0020】
ランプユニット10は、光源(図5にて符号12で示す)を内蔵して構成され、この光源からの光は前方のレンズ11を通して外方に照射されるようになっている。ランプユニット10は光源を囲むようにしてリフレクタ(図5にて符号13で示す)を内蔵し、レンズ11に直接照射される光以外の光を該リフレクタによって前記レンズの側に導くように構成されている。
【0021】
軸固定部20は、環状体からなり、ランプユニット10に嵌合され該ランプユニット10の側面を囲んで配置されるようになっている(図2(a)参照)。軸固定部20には上側支持軸22および下側支持軸23が備えられている。上側支持軸22および下側支持軸23は上下方向(z方向)に互いに同軸に配置されている。これにより、ランプユニット10は、該ランプユニット10に嵌め込まれた軸固定部20によって、上側支持軸22および下側支持軸23が備えられたものとして構成される。この趣旨から、上側支持軸22および下側支持軸23は、必ずしも軸固定部20に形成されていなくても、ランプユニット10の外周面に直接形成された構成であってもよい。このことから、以下の説明において、上側支持軸22、下側支持軸23を、それぞれ、ランプユニット10の上側支持軸22、ランプユニット10の下側支持軸23と称する場合がある。
【0022】
ブラケット30は、軸固定部20が取り付けられたランプユニット10を緩く挿入(遊嵌)され該ランプユニット10の側面を囲んで配置されるようになっている。ブラケット30は、支持枠体32とこの支持枠体32の下方部に設けられた支持基板部33を備えて構成されている。支持枠体32は、前方から観た場合ほぼ逆U字状をなし、ランプユニット10の上面および左右側面に対向して配置され、支持板基部33は、支持枠体32の開放端を連結する板状をなし、ランプユニット10の下面に対向して配置されるようになっている。なお、支持基板部33は、その上下面を貫通させる比較的大きな孔35が設けられている。ランプユニット10の下側支持軸23は、該孔35を通して、後述のアクチュエータ53の出力軸63に嵌合されるようになっている。
【0023】
ブラケット30(支持枠体32)の上部には、軸受ホルダー40が固定されるようになっている。この軸受ホルダー40は、ランプユニット10の上側支持軸22を挿入する球状軸受41をブラケット30とで保持するようになっている。球状軸受41は軸受ホルダー40とブラケット30の間に定位置を保持したまま自由に回転できるようになっている。軸受ホルダー40は、球状軸受41に挿入されたランプユニット10の上側支持軸22の先端を軸方向へ押圧するばね部42を備えて構成されている。すなわち、軸受ホルダー40は、たとえばステンレス等の金属板のプレスによって形成され、ブラケット30への固定部43、球状軸受41の軸受保持部44、前記ばね部42を一体に備えて構成されている。このように、軸受ホルダー40を固定部43、軸受保持部44、ばね部42を一体として構成することにより、部品点数の大幅な低減を実現することができる。
【0024】
なお、後に詳述するが、ランプユニット10の上側支持軸22の先端は、ランプユニット10のレベリング動作の際のばね部42との摺動を滑らかにするため球面に加工されている(図1(a)、(b)参照)とともに、該球面は球状軸受41の中心(図1(a)、(b)において符号Oで示す)からの半径(図1(a)、(b)において符号Rで示す)を曲率とするように構成されている。上側支持軸22の先端のこのような形状はばね部42の上下方向の変動を大幅に抑制することができるようになる。軸受ホルダー40についてはさらに後述する。
【0025】
ブラケット30の支持基板部33には、その下部側にアクチュエータ本体50が取り付けられるようになっている。このアクチュエータ本体50は、後に詳述するように、ブラケット30の支持基板部33に直接に固定されるブラケット固定部51と、このブラケット固定部51に対して前後方向に可動し得る機構収納部(アクチュエータと称する場合がある)53とを有する。
【0026】
ブラケット固定部51にはその上下面を貫通する孔52が設けられ、この孔52を通してランプユニット10の下側支持軸23は、機構収納部53に配置されたスイブル用モータ(図示せず:図3において符号64で示す)のギャ列を介した出力軸63に嵌合されるようになっている。スイブル用モータ64の駆動によってランプユニット10の下側支持軸23が該下側支持軸23の廻りに回動し、ランプユニット10は上側支持軸22および下側支持軸23を中心に左右方向に回動するスイブル動作が行われるようになっている。
【0027】
また、機構収納部53には、この機構収納部53をブラケット固定部51に対して前後方向(y方向)に移動させるレベリング用モータ(図示せず:図3において符号61で示す)が備えられている。機構収納部53がブラケット固定部51に対して移動することによって、ランプユニット10の下側支持軸23が前記球状軸受41を中心として揺動され、ランプユニット10は上下方向に回動するレベリング動作が行われるようになっている。なお、後に詳述するが、ブラケット固定部51の孔52には、ランプユニット10の下側支持軸23に挿嵌されたスライダ54が配置されている。スライダ54は、その左右の端辺においてブラケット固定部51の孔52の左右の周辺と当接され、ランプユニット10のレベリング動作にともなって、ブラケット固定部51に対して前後方向に摺動できるようになっている。
【0028】
〈アクチュエータ〉
図3は、アクチュエータ本体50を分解した斜視図を示している。上述したように、アクチュエータ本体50は、ブラケット固定部51、機構収納部(アクチュエータ)53とから構成されている。また、機構収納部53は、収納基部53Aと収納蓋部53Bとから構成されている。
【0029】
まず、機構収納部53の収納基部53Aには、スイブル用モータ64が配置され、このスイブル用モータ64はギャ列65を介して出力軸63を回転させるようになっている。出力軸63は上下方向に立設され、その先端は、ランプユニット10の下側支持軸23の先端に嵌合されるようになっている。なお、ランプユニット10の下側支持軸23は、支持基板部33の孔35、ブラケット固定部51の孔52、収納蓋部53Aに形成された後述の孔をそれぞれ通して出力軸63に嵌合されるようになっている。出力軸63の先端と下側支持軸23の先端との嵌合は、たとえば一方の先端面に形成された凸部が他方の先端面に形成された凹部に嵌り込ませることによって行っている。
【0030】
また、収納基部53Aには、レベリング用モータ61が配置され、このレベリング用モータ61はギャ列62を介してピニオンギャ66を回転させるようになっている。ピニオンギャ66は上下方向に立設され、収納蓋部53Bに形成された孔67を通して、ブラケット固定部51の裏面に設けられたラック56に噛合されるようになっている。ラック56は前後方向に並設された歯を有するように配置され、このラック56に噛合するピニオンギャ66の回転によって、収納基部53A(すなわち機構収納部53)はブラケット固定部51(すなわちブラケット30)に対して前後方向に移動できるようになっている。なお、収納基部53Aの裏面側には、スイブル用モータ64、レベリング用モータ61を駆動させる電子回路部品(図示せず)が搭載されるようになっている。
【0031】
機構収納部53の収納蓋部53Bは、収納基部53Aに配置されたスイブル用モータ64、ギャ列65、出力軸63、レベリング用モータ61、ギャ列62、およびピニオンギャ66等を被って収納基部53Aにたとえば係合によって固定されるようになっている。収納蓋部53Bには、その上下面を貫通する孔68および前記孔67が形成され、孔68は出力軸63が露呈されるように設けられ、孔67はピニオンギャ66をブラケット固定部51に設けられたラック56に噛合させるために設けられている。また、収納蓋部53Bは、一対のガイド軸70を介して該ブラケット固定部51に支持されるようになっている。すなわち、収納蓋部53B、ブラケット固定部51は、それぞれ、左右の脇部において、前後方向に離間して並設される複数の軸孔部72を有している。これら軸孔部72の軸孔の中心軸は前後方向に延在され、左右のそれぞれにおいて同軸となっている。
【0032】
収納蓋部53B、ブラケット固定部51は、左右のそれぞれにおいて、ガイド軸70が、たとえば、収納蓋部53Bの軸孔部72とブラケット固定部51の軸孔部72を交互に挿入されることによって、互いに支持されるようになっている。この場合、収納蓋部53Bの軸孔部72とこの軸孔部72と隣接するブラケット固定部51の軸孔部72は間隙を有して形成され、収納蓋部53Bは、ブラケット固定部51に対してガイド軸70の長手方向に沿って可動するように構成されている。これにより、収納蓋部53Bに収納基部53Aを固定させて構成される機構収納部(アクチュエータ)53は、ブラケット固定部51に対して前後方向に移動し得るように構成されるようになる。機構収納部53のブラケット固定部51に対する前後方向の移動はレベリング用モータ61の駆動によってなされる。
【0033】
ブラケット固定部51は、ブラケット30の支持基板部33の下面に固定され、その上下面を貫通する孔52が設けられている。この孔52には、ランプユニット10の下側支持軸23が挿通するようになっている。この孔52は、ライトユニットの上下方向の回動がなされるために前後方向に径の大きな長孔となっている。また、この孔52には、ランプユニット10の下側支持軸23を挿嵌する環状のスライダ54が配置されている。スライダ54は、その左右の端辺においてブラケット固定部51の孔52の左右の周辺と当接されることによって、ランプユニット10をブラケット固定部51によって支持させるとともに、ランプユニット10の上下方向の回動の際に、ブラケット固定部51に対して摺動できるようになっている。
【0034】
このため、スライダ54には、左右の端辺に摺動片部54Aが形成され、ブラケット固定部51の孔52の左右の周辺には前記摺動片部54Aと当接される摺動辺部52Aが形成されている。この場合、摺動片部54Aと摺動辺部52Aとの互いに当接される面は、ランプユニット10の上側支持軸22を軸支する球状軸受41を中心とする曲率を有する円弧状面として形成されている。これにより、ランプユニット10の上下方向の回動の際に、ブラケット固定部51に対してスライダ54の円滑な摺動を行わせることができるようになっている。なお、このブラケット固定部51には、その左右の両脇において、ガイド軸70が挿入される軸孔部72が設けられ、また、裏面においてラック56が設けられていることは上述した通りである。
〈軸受ホルダー〉
図4は、軸受ホルダー40を示す図で、(a)は斜視図、(b)は(a)のb−b線における断面図である。
【0035】
軸受ホルダー40は、たとえば、ステンレス等の金属板のプレスによって形成され、ブラケット30への固定部43、球状軸受41の軸受保持部44、ばね部42を一体に備えて構成されている。
【0036】
軸受ホルダー40の固定部43は、軸受保持部44を中央に位置づけ左右方向に延在する平板部として形成され、この平板部に複数の螺子孔45が設けられて構成されている。この固定部43のブラケット30への固定は各螺子孔45を通してブラケット30に螺入されるボルト(図2において符号46で示す)によってなされるようになっている。
【0037】
軸受保持部44は、球状軸受41をブラケット30とともに保持するようになっており、その球状軸受41の側の面において球状軸受41のうちのほぼ半分と対向して当接される凹部(図4(b)において符号44Aで示す)を有して(これにより反対側の面において前記凹部によって反映される凸部44Bを有する)構成されている。なお、ブラケット30は、その球状軸受41の側の面において該球状軸受41のうちほぼ半分と対向して当接される凹部(図2において符号36で示す)が形成されている。
【0038】
ここで、球状軸受41は軸受保持部44の凹部44Aとブラケット30の凹部36の間において自由に回転(自転)できるようになっていることは上述した通りである。この場合、球状軸受41の中心Oは、該球状軸受41の回転に拘わらず、軸受ホルダー40の固定部43(軸受保持部44を除く)を含む平面内に位置づけられるようになっている(図1(a)、(b)参照)。
【0039】
そして、固定部43には、軸受保持部44に隣接する上方において左右方向に延在する長孔47が形成されている。これにより、球状軸受41に挿入される上側支持軸22の先端は該長孔47内に位置づけられるようになっている。なお、この長孔47には、後述するばね部42の先端部が前方に若干突出するように遊嵌され、該ばね部42の先端部は上側支持軸22の先端に当接されるとともに該上側支持軸22をその軸方向に押圧するようになっている。
【0040】
そして、軸受ホルダー40は、その固定部43における上方の辺が、固定部43に対してほぼ直交するように屈曲されて延在され(以下、この延在部を第1延在部42Aと称す)、この第1延在部42Aは湾曲部42Cを形成した後に、さらに固定部43の長孔47に遊嵌されるようにして延在されて(以下、この延在部を第2延在部42Bと称す)構成されている。なお、軸受ホルダー40は、たとえば、第1延在部42A、湾曲部42C、第2延在部42Bがブラケット30の上方に配置されるように、ブラケット30に固定されるようになっている。第2延在部42Bの先端は、固定部43にほぼ直交する方向から長孔47に遊嵌(少なくとも長孔の図中上下方向の幅が第2延在部42Bの厚さよりも大きく形成されている)され、長孔47から前方に若干突出するように延在されて構成されている。
【0041】
また、第2延在部42Bは前記湾曲部42Cによってばね力を蓄積させる実質上のばね部を構成し、第2延在部42Bの先端(ばね部42の先端)は第1延在部42Aから離間する方向に付勢力が作用するようになっている。このため、湾曲部42Cにおける湾曲状態を変形させて構成することにより、該付勢力を所定の値に設定することができるようになる。このことから、湾曲部42Cにおける湾曲形状は必ずしも図に示すような形状に限定されないことはもちろんである。
【0042】
軸受ホルダー40をこのように構成することによって、固定部43の長孔47内には、球状軸受41に挿入されたランプユニット10の上側支持軸22の先端が位置づけられ、ばね部42の先端は上側支持軸22の先端に当接されるとともに該上側支持軸22をその軸方向に押圧できるようになる。また、ばね部42の第2延在部42Bは、上述したように固定部43にほぼ直交する方向から長孔47に遊嵌された構成となっていることから、固定部43を含む平面内に位置づけられて配置される上側支持軸22をその軸方向に沿って押圧できるようになっている。これにより、軸受ホルダー40のばね部42による上側支持軸22の押圧点(荷重点)と軸受ホルダー40のブラケット30との固定部43との間の距離をほぼ零にできる。このため、ばね部42にモーメントが発生せず、ブラケット30へのダメージを防ぎ、強度的に信頼性のある軸受ホルダー40を得ることができる効果を奏する。
【0043】
図5(a)、(b)は、車両用前照灯1を、その上側支持軸22、下側支持軸23を含む面で断面をとった図を示している。 図5(a)、(b)は、ランプユニット10のレベリング動作における二つの状態を示し、図5(a)は、上側支持軸22、下側支持軸23を結ぶ中心線が垂直方向にある場合を、図5(b)は、上側支持軸22、下側支持軸23を結ぶ中心線が垂直方向に対して若干傾倒している場合を示している。図5(a)、(b)から明らかとなるように、機構収納部(アクチュエータ)53が、たとえば後方に移動することによって、ランプユニット10は上側支持軸22を支軸する球状軸受41を中心として上下方向に回動するようになっている。
【0044】
ここで、ランプユニット10の上側支持軸22の先端は、上述したように、球状軸受41の中心Oからの半径Rを曲率とする球面としたものである。これにより、ランプユニット10の上述したレベリング動作において、ランプユニット10の上側支持軸22が球状軸受41を中心として揺動しても、該上側支持軸22の先端を押圧するばね部42の第2延在部42Bは、上下方向に変動しないように構成することができる。図1(a)、(b)は、ブラケット30に固定された軸受ホルダー40とその近傍を示した断面図である。図1(a)は、ランプユニット10が図5(a)の状態にある軸受ホルダー40の近傍部を示し、図1(b)は、ランプユニット10が図5(b)の状態にある軸受ホルダー40の近傍部を示している。
【0045】
図1(a)、(b)から明らかなように、上側支持軸22のばね部42と当接する先端は、球状軸受41の中心Oからの半径Rを曲率とする球面となっていることから、図1(a)、(b)のいずれの場合においても、ばね部42(特に第2延在部42B)は、その位置を変動させるようなことがなくなる。このことは、ばね部42による上側支持軸22の軸方向への押圧にバラツキが生じることを大幅に抑制することができ、ひいては、ランプユニット10の下側支持軸23に挿嵌されるスライダ54の摺動片部54Aのアクチュエータ本体53(ブラケット固定部51の摺動辺部54A)に対する荷重をほぼ一定にすることができる。すなわち、ランプユニット10の下側支持軸22に設けられたスライダ54とブラケット30に対する固定部との摺動部における摺動を滑らかにでき、ランプユニット10のレベリング動作を信頼性あるものにすることができる。
【0046】
ちなみに、図6(a)、(b)は、上側支持軸22の先端が上側支持軸22の半径とほぼ同じ半径を有する半球面として構成されている従来の場合を示した図で、図6(a)は図1(a)に対応させ、図6(b)は図1(b)に対応させて描いている。このようにした場合、ランプユニット10のレベリング動作において、球状軸受の中心Oから上側支持軸22の先端のばね部42と当接する面との距離(図6(a)の場合r、図6(b)の場合r’で示している)が変動し(r≠r’)、これにより、ばね部42が上下に変動するようになる。このことは、ばね部42による上側支持軸22の軸方向への押圧にバラツキが生じ、スライダ54とブラケット30に対する固定部との摺動部における滑らかな摺動を妨げることになる。
【0047】
(実施態様2)
実施態様1に示した軸受ホルダー40は、ブラケット30への固定部43、球状軸受41の軸受保持部44、ばね部42を一体に備えて構成したものである。しかし、これに限定されることはなく、たとえば、ばね部42を軸受ホルダー40と別個の部材で構成し、ばね部42と軸受ホルダー40とをそれぞれ独立にブラケット30に取り付けられるように構成してもよい。
【0048】
また、実施態様1に示した軸受ホルダー40は、ばね部42による上側支持軸22の押圧点(荷重点)と軸受ホルダー40のブラケット30との固定部43との間の距離をほぼ零にし、ばね部42にモーメントを発生しないようにすることによってブラケット30へのダメージを防ぐ構成としたものである。しかし、これに限定されることはなく、ばね部42による上側支持軸22の押圧点(荷重点)と固定部43とが離間するような構成であってもよい。このように構成した軸受ホルダーであっても、本発明の効果を奏することができるからである。
【0049】
(実施態様3)
上述した実施態様1では、アクチュエータ本体50は、図3に示したように、ブラケット固定部51、機構収納部(アクチュエータ)53とから構成されるものとして説明したものである。しかし、ブラケット固定部51は、たとえば、ブラケット30の支持基板部33に固定させて形成され、ブラケット30の範疇に含まれるように構成されたものであってもよい。このことから、スライダ54と摺動する摺動部を備える前記ブラケット固定部51に近似する部材を、この明細書では、ブラケットの固定部と称する場合がある。
【0050】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0051】
1……車両用前照灯、10……ランプユニット、11……レンズ、12……光源、13……リフレクタ、20……軸固定部、22……上側支持軸、23……下側支持軸、30……ブラケット、32……支持枠体、33……支持基板部、35……孔、36……凹部、40……軸受ホルダー、41……球状軸受、42……ばね部、42A……第1延在部、42B……第2延在部、42C……湾曲部、43……固定部、44……軸受保持部、45……螺子孔、46……ボルト、47……長孔、50……アクチュエータ本体、51……ブラケット固定部、52……孔、52A……摺動辺部、53……機構収納部(アクチュエータ)、53A……収納基部、53B……収納蓋部、54……スライダ、54A……摺動片部、56……ラック、61……レベリング用モータ、62……ギャ列、63……出力軸、64……スイブル用モータ、65……ギャ列、66……ピニオンギャ、67、68……孔、70……ガイド軸、72……軸孔部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を内蔵し、互いに同軸に形成された上側支持軸と下側支持軸を備えるランプユニットと、
前記ランプユニットを、その上側支持軸において球状軸受を介し、下軸支持部においてスライダを介して支持するブラケットと、
前記ランプユニットの前記下側支持軸を駆動させる機構部を備え、前記ブラケットに対して前後方向に可動するアクチュエータと、
前記ブラケットに固定され、前記上側支持軸の先端を押圧させるばね部と、を備え、
前記アクチュエータは、その前後方向の可動によって、前記球状軸受を中心にしてランプユニットを上下方向に回動させ、その際に、前記スライダが前記ブラケットの固定部に対して摺動するように構成され、
前記スライダと前記ブラケットの固定部との摺動部は、前記球状軸受を中心とする半径からなる曲率を有する円弧面として構成され、
前記上側支持軸の前記ばね部に押圧される先端は、前記球状軸受を中心とする半径からなる曲率を有する球面として構成されていることを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記球状軸受は軸受ホルダーによって前記ブラケットにより支持され、前記軸受ホルダーは前記ばね部を一体として構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記軸受ホルダーは、前記ブラケットへの固定部、前記球状軸受を保持する軸受保持部、および前記上側支持軸の先端を押圧するばね部を一体として形成され、
前記固定部は、平板部材に前記球状軸受をその中心が前記平板部材を含む平面内に位置づけて保持する前記軸受保持部を備え、前記軸受保持部に隣接し前記上側支持軸に交差する方向に延在する長孔が形成され、前記軸受に挿入される上側支持軸の先端は前記長孔内に位置づけられるように構成され、
前記ばね部は、前記固定部から前記平板部材に対して屈曲されて延在された第1延在部、湾曲部、さらに前記固定部の前記長孔に遊嵌されるようにして延在された第2延在部を備え、前記第2延在部は、前記固定部の前記平板部材にほぼ直交する方向から前記長孔に遊嵌されて、前記上側支持軸の先端を押圧するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−156018(P2012−156018A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14537(P2011−14537)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】