説明

車両用前照灯

【課題】駆動力伝達機構のラックとピニオンとの噛み合い状態(条件)を安定させること。
【解決手段】この発明は、半導体型光源2U、2Dと、反射面10U、10Dを有する固定リフレクタ3と、反射面12U、12Dを有する可動リフレクタ4U、4Dと、ソレノイド5と、駆動力伝達機構6と、を備える。駆動力伝達機構6は、ソレノイド5に固定されているラック14と、可動リフレクタ4U、4Dに固定されているピニオン15U、15Dと、から構成されている。ピニオン15U、15Dが噛み合うラック14の歯部17U、17Dは、ラック14のソレノイド5との固定中心Oを中心とする円形の一部の円弧形状をなす。この結果、この発明は、駆動力伝達機構6のラック14とピニオン15U、15Dとの噛み合い状態(条件)を安定させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、少なくとも、第1配光パターン、たとえば、ロービーム用配光パターン(すれ違い用配光パターン)と、第2配光パターン、たとえば、ハイビーム用配光パターン(走行用配光パターン)とを切り替えて車両の前方に照射する車両用前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用前照灯は、従来からある(たとえば、特許文献1)。以下、従来の車両用前照灯について説明する。従来の車両用前照灯は、半導体型光源と、固定リフレクタと、可動リフレクタと、駆動源と、ラックアンドピニオンから構成されている駆動力伝達機構と、を備えるものである。以下、従来の車両用前照灯の作用について説明する。可動リフレクタが第1位置に位置するときに、半導体型光源を点灯すると、ロービーム用配光パターンが得られる。その可動リフレクタを駆動源および駆動力伝達機構を介して第2位置に位置させると、ハイビーム用配光パターンが得られる。かかる車両用前照灯においては、駆動力伝達機構のラックとピニオンとの噛み合い状態(条件)が安定していることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−108777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の車両用前照灯は、駆動力伝達機構のラックとピニオンとの組立時や組立後の振動や作動負荷などにより、ラックが駆動源との固定中心を中心として回転して、ラックの平歯部とピニオンの円形歯部との噛み合い状態(条件)が不安定となる場合がある。この場合においては、駆動力伝達機構のラックとピニオンとの作動負荷が増加して駆動源を大型化する必要があり、あるいは、ラックの回転を防止する機構を設ける必要がある。この駆動源の大型化やラックの回転防止機構などの部品増加により、製造コストが高く、質量や消費電力が大きくなる傾向にある。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、駆動力伝達機構のラックとピニオンとの噛み合い状態(条件)を安定させることができる車両用前照灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明(請求項1にかかる発明)は、半導体型光源と、半導体型光源からの光を反射させる反射面を有する固定リフレクタと、半導体型光源からの光を反射させる反射面を有し、かつ、少なくとも第1位置と第2位置との間を回転可能に配置されている可動リフレクタと、駆動源と、駆動源と可動リフレクタとの間に設けられていて、駆動源の駆動力を可動リフレクタに伝達して、可動リフレクタを少なくとも第1位置と第2位置との間を移動させる駆動力伝達機構と、を備え、駆動力伝達機構が、駆動源に固定されているラックと、可動リフレクタに固定されていてラックに噛み合うピニオンと、から構成されていて、ピニオンが噛み合うラックの歯部が、ラックの駆動源との固定中心を中心とする円形の一部の円弧形状をなす、ことを特徴とする。
【0007】
この発明(請求項2にかかる発明)は、半導体型光源と、半導体型光源からの光を反射させる反射面を有する固定リフレクタと、半導体型光源からの光を反射させる反射面を有し、かつ、少なくとも第1位置と第2位置との間を回転可能に配置されている可動リフレクタと、駆動源と、駆動源と可動リフレクタとの間に設けられていて、駆動源の駆動力を可動リフレクタに伝達して、可動リフレクタを少なくとも第1位置と第2位置との間を移動させる駆動力伝達機構と、を備え、駆動力伝達機構が、駆動源に固定されているラックと、可動リフレクタに固定されていてラックに噛み合うピニオンと、から構成されていて、ピニオンが噛み合うラックの歯部が、ラックの駆動源との固定中心を中心とする円形形状をなす、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明(請求項1、2にかかる発明)の車両用前照灯は、ピニオンが噛み合うラックの歯部が、ラックの駆動源との固定中心を中心とする円形の一部の円弧形状、あるいは、円形形状をなすものである。この結果、駆動力伝達機構のラックとピニオンとの組立時や組立後の振動や作動負荷などにより、ラックが駆動源との固定中心を中心として回転した場合であっても、ラックの円弧形状の歯部あるいは円形形状の歯部とピニオンの円形歯部との噛み合い状態(条件)が一定である。このために、駆動力伝達機構のラックとピニオンとの作動負荷が増加して駆動源を大型化する必要がなく、あるいは、ラックの回転を防止する機構を設ける必要がないので、製造コストや質量や消費電力を低く抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態1を示したランプユニットの斜視図である。
【図2】図2は、図1におけるII矢視図(ランプユニットの側面図)である。
【図3】図3は、第1位置に位置する上側可動リフレクタおよび下側可動リフレクタを示す側面図(固定リフレクタを除いた状態の側面図)である。
【図4】図4は、第2位置に位置する上側可動リフレクタおよび下側可動リフレクタを示す側面図(固定リフレクタを除いた状態の側面図)である。
【図5】図5は、ラックの歯部とピニオンの歯部との噛み合い状態を示す説明図である。
【図6】図6は、斜めカットオフラインと水平カットオフラインとを有するロービーム用配光パターンを示す説明図である。
【図7】図7は、ハイビーム用配光パターンを示す説明図である。
【図8】図8は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態2を示したランプユニットの側面図(第1位置に位置する上側可動リフレクタを示す側面図であって、固定リフレクタを除いた状態の側面図)である。
【図9】図9は、ラックの歯部とピニオンの歯部との噛み合い状態を示す説明図である。
【図10】図10は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態3を示したラックの歯部とピニオンの歯部との噛み合い状態の説明図である。
【図11】図11は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態4を示したラックの歯部とピニオンの歯部との噛み合い状態の説明図である。
【図12】図12は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態5を示し、デイタイムランニングライト用配光パターンを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。図面において、符号「VU−VD」は、スクリーンの上下の垂直線を示す。符号「HL−HR」は、スクリーンの左右の水平線を示す。なお、この明細書および特許請求の範囲において、「上、下、前、後、左、右」とは、この発明にかかる車両用前照灯を車両(自動車)に取り付けた際の車両の「上、下、前、後、左、右」である。
【0011】
(実施形態1の構成の説明)
図1〜図7は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態1を示す。以下、この実施形態1における車両用前照灯の構成について説明する。図中、符号1は、この実施形態1における車両用前照灯(自動車用前照灯)である。前記車両用前照灯1は、図6に示すロービーム用配光パターン(すれ違い用配光パターン)LPと、図7に示すハイビーム用配光パターン(走行用配光パターン)、を切り替えて車両の前方に照射するものである。前記ロービーム用配光パターンLPは、エルボー点Eを境に、走行車線側(左側)に斜めカットオフラインCL1を有し、かつ、対向車線側(右側)に水平カットオフラインCL2を有する。前記斜めカットオフラインCL1とスクリーンの水平線HL−HRとのなす角度は、約15°である。前記ハイビーム用配光パターンは、第1ハイビーム用配光パターンHP1および第2ハイビーム用配光パターンHP2および第3ハイビーム用配光パターンHP3および減光ロービーム用配光パターンLP1を有する。
【0012】
図1〜図4に示すように、前記車両用前照灯1は、上側半導体型光源2Uおよび下側半導体型光源2Dと、固定リフレクタ3と、上側可動リフレクタ4Uおよび下側可動リフレクタ4Dと、駆動源としてのソレノイド5と、駆動力伝達機構6と、光源取付部材(LEDベース)7と、取付ブラケット8と、ヒートシンク部材9と、図示しないランプハウジングおよびランプレンズ(たとえば、素通しのアウターレンズなど)と、から構成されている。
【0013】
前記上側半導体型光源2Uおよび前記下側半導体型光源2Dおよび前記固定リフレクタ3および前記上側可動リフレクタ4Uおよび前記下側可動リフレクタ4Dおよび前記ソレノイド5および前記駆動力伝達機構6および前記光源取付部材7および前記取付ブラケット8および前記ヒートシンク部材9は、ランプユニットを構成する。前記ランプユニット2U、2D、3、4U、4D、5、6、7、8、9は、前記ランプハウジングおよび前記ランプレンズにより区画されている灯室内に、たとえば光軸調整機構(図示せず)を介して配置されている。なお、前記灯室内には、前記ランプユニット2U、2D、3、4U、4D、5、6、7、8、9以外に、フォグランプ、コーナリングランプ、クリアランスランプ、ターンシグナルランプなどの他のランプユニットが配置されている場合がある。
【0014】
前記光源取付部材7および前記取付ブラケット8は、前記ヒートシンク部材9にそれぞれ相互に位置決めされた状態で固定されている。前記ヒートシンク部材9は、前記光軸調整機構を介して前記ランプハウジングに取り付けられている。
【0015】
前記半導体型光源2U、2Dは、たとえば、LED、EL(有機EL)などの自発光半導体型光源、すなわち、半導体型光源である。この実施形態では、LEDを使用する。前記上側半導体型光源2Uおよび前記下側半導体型光源2Dは、前記光源取付部材7の上下の取付面にそれぞれ取り付けられている。
【0016】
前記固定リフレクタ3は、前記ヒートシンク部材9に固定されている。前記固定リフレクタ3は、パラボラ系の自由曲面(NURBS曲面)からなる上側反射面10Uおよび下側反射面10Dを有する。前記上側反射面10Uは、前記上側半導体型光源2Uからの光を反射させる。前記下側反射面10Dは、前記下側半導体型光源2Dからの光を反射させる。
【0017】
前記上側可動リフレクタ4Uおよび前記下側可動リフレクタ4Dの左右両側には、上側回転軸11U、下側回転軸11Dがそれぞれ左右水平に一体に設けられている。前記回転軸11U、11Dは、前記取付ブラケット8に回転可能に取り付けられている。この結果、前記上側可動リフレクタ4Uおよび前記下側可動リフレクタ4Dは、前記取付ブラケット8に第1位置(図1および図3に示す位置)と第2位置(図4に示す位置)との間を回転可能に取り付けられている。なお、前記上側可動リフレクタ4Uおよび前記下側可動リフレクタ4Dには、前記上側可動リフレクタ4Uおよび前記下側可動リフレクタ4Dを第2位置から第1位置に自動復帰させるスプリング(図示せず)を設ける場合がある。
【0018】
前記上側可動リフレクタ4Uおよび前記下側可動リフレクタ4Dは、パラボラ系の自由曲面(NURBS曲面)からなる上側反射面12U、下側反射面12Dを有する。前記上側反射面12Uは、前記上側半導体型光源2Uからの光を反射させる。前記下側反射面12Dは、前記下側半導体型光源2Dからの光を反射させる。
【0019】
前記ソレノイド5は、前記ヒートシンク部材9に固定されている。前記ソレノイド5は、プランジャ(進退ロッド)13を有する。前記プランジャ13は、前記ソレノイド5が無通電状態のときには、第1位置(図1〜図3に示す後退位置)に位置し、前記ソレノイド5が通電状態のときには、第2位置(図4に示す前進位置)に位置する。前記ソレノイド5には、前記プランジャ13を第2位置から第1位置に自動復帰させるスプリング(図示せず)が設けられている。
【0020】
前記駆動力伝達機構6は、前記上側可動リフレクタ4Uおよび前記下側可動リフレクタ4Dの前記回転軸11U、11Dと、前記ソレノイド5の前記プランジャ13との間に設けられている。前記駆動力伝達機構6は、前記ソレノイド5の駆動力を前記上側可動リフレクタ4Uおよび前記下側可動リフレクタ4Dに伝達して、前記上側可動リフレクタ4Uおよび前記下側可動リフレクタ4Dを第1位置と第2位置との間を移動させるものである。
【0021】
前記駆動力伝達機構6は、ラック14と、前記ラック14に上下から噛み合う上側ピニオン15Uおよび下側ピニオン15Dと、から構成されている。前記ラック14は、前記プランジャ13の一端(先端)に固定されている。前記上側ピニオン15Uおよび前記下側ピニオン15Dは、前記上側反射面10U、前記下側反射面10Dの一端にそれぞれ固定されている。前記駆動力伝達機構6は、前記ラック14の直線運動を、前記上側ピニオン15Uおよび前記下側ピニオン15Dの回転運動に、変換する機構である。
【0022】
前記ラック14は、この例では、金属部材から構成されている。前記ラック14は、上下に上側歯部17Uおよび下側歯部17Dがそれぞれ設けられていて、左右両側に平面の面取が設けられている。前記上側歯部17Uおよび前記下側歯部17Dは、前記プランジャ13の中心軸、すなわち、前記ラック14が前記ソレノイド5の前記プランジャ13に固定されている中心(前記ラック14の前記ソレノイド5との固定中心)Oを中心とする円形の一部の円弧形状をなす。前記ラック14の円弧形状の前記上側歯部17Uと前記下側歯部17Dとには、前記上側ピニオン15Uの円形歯部と前記下側ピニオン15Dの円形歯部とがそれぞれ噛み合っている。
【0023】
前記駆動力伝達機構6には、前記上側可動リフレクタ4Uおよび前記下側可動リフレクタ4Dを第1位置に位置させるストッパと、前記上側可動リフレクタ4Uおよび前記下側可動リフレクタ4Dを第2位置に位置させるストッパとがそれぞれ設けられている。
【0024】
(実施形態1の作用の説明)
以下、この実施形態1における車両用前照灯1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0025】
まず、上側可動リフレクタ4Uおよび下側可動リフレクタ4Dを第1位置(図1、図3に示す状態の位置)に位置させる。すなわち、ソレノイド5への通電を遮断すると、スプリングの作用および図示しないストッパの作用により、上側可動リフレクタ4Uおよび下側可動リフレクタ4Dが第1位置に位置する。このときに、上側半導体型光源2Uおよび下側半導体型光源2Dを点灯発光させる。すると、上側半導体型光源2Uおよび下側半導体型光源2Dから光が放射される。
【0026】
この光の一部は、上側可動リフレクタ4Uおよび下側可動リフレクタ4Dにより遮蔽される。残りの光は、固定リフレクタ3の上側反射面10Uおよび下側反射面10Dのロービーム用反射面で反射される。この反射光は、図6に示すロービーム用配光パターンLPとして車両の前方に照射される。
【0027】
つぎに、上側可動リフレクタ4Uおよび下側可動リフレクタ4Dを第2位置(図4に示す状態の位置)に位置させる。すなわち、ソレノイド5に通電してソレノイド5を駆動させると、プランジャ13を介してラック14が第1位置から第2位置に前進移動する。すると、ラック14の円弧形状の上側歯部17U、下側歯部17Dに円形歯部がそれぞれ噛み合っている上側ピニオン15U、下側ピニオン15Dが回転する。この駆動力伝達機構6のラック14および上側ピニオン15U、下側ピニオン15Dを介して、ソレノイド5の駆動力が直線運動から回転運動に変換されて上側可動リフレクタ4Uおよび下側可動リフレクタ4Dに伝達される。この結果、上側可動リフレクタ4Uおよび下側可動リフレクタ4Dが第1位置から第2位置に同期して回転し図示しないストッパの作用により第2位置に位置する。また、上側ピニオン15Uおよび下側ピニオン15Dがラック14の他端部(左端部)の高さH1が高い上側歯部17U下側歯部17Dにそれぞれ噛み合っている。このときに、上側半導体型光源2Uおよび下側半導体型光源2Dを点灯発光させる。すると、上側半導体型光源2Uおよび下側半導体型光源2Dから光が放射される。
【0028】
この光は、上側可動リフレクタ4Uの上側反射面12Uおよび下側可動リフレクタ4Dの下側反射面12Dで反射される。また、上側可動リフレクタ4Uの上側反射面12Uおよび下側可動リフレクタ4Dの下側反射面12Dに入射しなかった残りの光は、固定リフレクタ3の上側反射面10Uおよび下側反射面10Dで反射される。この反射光は、図7に示すハイビーム用配光パターンHP1、HP2、HP3、LP1が車両の前方に照射される。
【0029】
ここで、駆動力伝達機構6のラック14と上側ピニオン15Uおよび下側ピニオン15Dとの組立時や組立後の振動や作動負荷などにより、ラック14がソレノイド5との固定中心(プランジャ13の中心軸)Oを中心として回転した場合であっても、ラック14の円弧形状の上側歯部17U、下側歯部17Dと上側ピニオン15Uの円形歯部、下側ピニオン15Dの円形歯部とが一定の状態(条件)で噛み合っている。
【0030】
(実施形態1の効果の説明)
この実施形態1における車両用前照灯1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0031】
この実施形態1における車両用前照灯1は、上側ピニオン15Uの円形歯部、下側ピニオン15Dの円形歯部が噛み合うラック14の上側歯部17U、下側歯部17Dが、ラック14のソレノイド5との固定中心(プランジャ13の中心軸)Oを中心とする円形の一部の円弧形状をなすものである。この結果、駆動力伝達機構6のラック14と上側ピニオン15Uおよび下側ピニオン15Dとの組立時や組立後の振動や作動負荷などにより、ラック14がソレノイド5との固定中心(プランジャ13の中心軸)Oを中心として回転した場合であっても、ラック14の円弧形状の上側歯部17U、下側歯部17Dと上側ピニオン15Uの円形歯部、下側ピニオン15Dの円形歯部との噛み合い状態(条件)が一定である。このために、駆動力伝達機構6のラック14と上側ピニオン15Uおよび下側ピニオン15Dとの作動負荷が増加してソレノイド5を大型化する必要がなく、あるいは、ラック14の回転を防止する機構を設ける必要がないので、製造コストや質量や消費電力を低く抑制することができる。
【0032】
(実施形態2の説明)
図8、図9は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態2を示す。以下、この実施形態2における車両用前照灯について説明する。図中、図1〜図7と同符号は、同一のものを示す。
【0033】
前記の実施形態1における車両用前照灯1は、上側半導体型光源2Uおよび下側半導体型光源2Dと、上側可動リフレクタ4Uおよび下側可動リフレクタ4Dと、固定リフレクタ3の上側反射面10Uおよび下側反射面10Dと、上側回転軸11Uおよび下側回転軸11Dと、上側可動リフレクタ4Uの上側反射面12Uおよび下側可動リフレクタ4Dの下側反射面12Dと、上側ピニオン15Uおよび下側ピニオン15Dと、ラック14の円弧形状の上側歯部17Uおよび下側歯部17Dと、を備えるものである。すなわち、上側ユニットおよび下側ユニットを備えるものである。これに対して、この実施形態2における車両用前照灯1Aは、上側半導体型光源(図示せず)と、上側可動リフレクタ4Uと、固定リフレクタ(図示せず)の上側反射面(図示せず)と、上側回転軸11Uと、上側可動リフレクタ4Uの上側反射面12Uと、上側ピニオン15Uと、ラック14Aの円弧形状の上側歯部17Uと、を備えるものである。すなわち、上側ユニットのみを備えるものである。
【0034】
この実施形態2における車両用前照灯1Aは、前記の実施形態1における車両用前照灯1とほぼ同様の作用効果を達成することができる。特に、この実施形態2における車両用前照灯1Aは、一部の構成部品を半分にすることができるので、部品点数が軽減でき、かつ、組付工程が軽減でき、その分、製造コストを安価にすることができる。このように、この実施形態2における車両用前照灯1Aは、半導体型光源の光量(光出力)が大きい場合には最適である。
【0035】
(実施形態3の説明)
図10は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態3を示す。以下、この実施形態3における車両用前照灯について説明する。図中、図1〜図9と同符号は、同一のものを示す。
【0036】
前記の実施形態2における車両用前照灯1Aは、ラック14Aの上側歯部17Uが円形の一部の円弧形状をなすものである。この実施形態3における車両用前照灯は、ラック14Bの歯部17が円形形状をなすものである。
【0037】
この実施形態3における車両用前照灯は、前記の実施形態2における車両用前照灯1Aとほぼ同様の作用効果を達成することができる。
【0038】
(実施形態4の説明)
図11は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態4を示す。以下、この実施形態4における車両用前照灯について説明する。図中、図1〜図10と同符号は、同一のものを示す。
【0039】
前記の実施形態1における車両用前照灯1は、ラック14の上側歯部17Uおよび下側歯部17Dが円形の一部の円弧形状をなすものである。この実施形態4における車両用前照灯は、ラック14Bの歯部17が円形形状をなすものである。
【0040】
この実施形態4における車両用前照灯は、前記の実施形態1における車両用前照灯1とほぼ同様の作用効果を達成することができる。
【0041】
(実施形態5の説明)
図12は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態5を示す。以下、この実施形態5における車両用前照灯について説明する。図中、図1〜図11と同符号は、同一のものを示す。
【0042】
前記の実施形態1、2、3、4における車両用前照灯1、1Aは、可動リフレクタ4U、4Dが第2位置に位置するときにはハイビーム用配光パターンHP1、HP2、HP3、LP1が得られるものである。これに対して、この実施形態5における車両用前照灯は、可動リフレクタ4U、4Dが少なくとも第2位置、すなわち、可動リフレクタ4U、4Dが第2位置に位置するときには前記のようにハイビーム用配光パターンHP1、HP2、HP3、LP1が得られ、かつ、可動リフレクタ4U、4Dが第3位置に位置するときには図12に示すようにデイタイムランニングライト用配光パターンDP1、DP2、DP3、DP4、DP5が得られるものである。
【0043】
(実施形態1、2、3、4、5以外の例の説明)
なお、前記の実施形態1、2、3、4、5においては、第1配光パターンとしてロービーム用配光パターンLPについて説明するものである。ところが、この発明おいては、第1配光パターンとしてロービーム用配光パターンLP以外の配光パターン、たとえば、高速道路用配光パターン、フォグランプ用配光パターンなど、エルボー点を境に、走行車線側に斜めカットオフラインを有し、かつ、対向車線側に水平カットオフラインを有する配光パターンであっても良い。
【0044】
また、前記の実施形態1、2、3、4、5においては、左側走行車線用の車両用前照灯1について説明する。ところが、この発明においては、右側走行車線用の車両用前照灯についても適用することができる。
【0045】
さらに、前記の実施形態1、2、3、4、5においては、上側ユニットおよび下側ユニットを備えるもの、あるいは、上側ユニットのみを備えるものである。ところが、この発明においては、下側ユニットのみを備える車両用前照灯、左側ユニットおよび右側ユニットを備える車両用前照灯、左側ユニットのみを備える車両用前照灯、右側ユニットのみを備える車両用前照灯、などであっても良い。
【0046】
さらにまた、前記の実施形態1、2、3、4、5においては、駆動源としてソレノイド5を使用するものである。ところが、この発明においては、駆動源としてソレノイド5以外の駆動源、たとえば、モータを使用しても良い。この場合、モータの回転運動をラック14、14A、14Bの直線運動に変換する機構が必要である。
【0047】
さらにまた、前記の実施形態1、2、3、4においては、2個の配光パターンが得られるものであり、前記の実施形態5においては、3個の配光パターンが得られるものである。ところが、この発明においては、4個以上の配光パターンが得られるものであっても良い。
【符号の説明】
【0048】
1、1A 車両用前照灯
2U 上側半導体型光源
2D 下側半導体型光源
3 固定リフレクタ
4U 上側可動リフレクタ
4D 下側可動リフレクタ
5 ソレノイド(駆動源)
6 駆動力伝達機構
7 光源取付部材
8 取付ブラケット
9 ヒートシンク部材
10U 上側反射面
10D 下側反射面
11U 上側回転軸
11D 下側回転軸
12U 上側反射面
12D 下側反射面
13 プランジャ
14、14A、14B ラック
15U 上側ピニオン
15D 下側ピニオン
17 円形形状の歯部
17U 円弧形状の上側歯部
17D 円弧形状の下側歯部
E エルボー点
CL1 斜めカットオフライン
CL2 水平カットオフライン
LP ロービーム用配光パターン
LP1 減光ロービーム用配光パターン(ハイビーム用配光パターン)
HP1 第1ハイビーム用配光パターン
HP2 第2ハイビーム用配光パターン
HP3 第3ハイビーム用配光パターン
HL−HR スクリーンの左右の水平線
VU−VD スクリーンの上下の垂直線
DP1 デイタイムランニングライト用配光パターン
DP2 デイタイムランニングライト用配光パターン
DP3 デイタイムランニングライト用配光パターン
DP4 デイタイムランニングライト用配光パターン
DP5 デイタイムランニングライト用配光パターン
O 固定中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1配光パターンと第2配光パターンとを切り替えて車両の前方に照射する車両用前照灯において、
半導体型光源と、
前記半導体型光源からの光を反射させる反射面を有する固定リフレクタと、
前記半導体型光源からの光を反射させる反射面を有し、かつ、少なくとも第1位置と第2位置との間を回転可能に配置されている可動リフレクタと、
駆動源と、
前記駆動源と前記可動リフレクタとの間に設けられていて、前記駆動源の駆動力を前記可動リフレクタに伝達して、前記可動リフレクタを少なくとも第1位置と第2位置との間を移動させる駆動力伝達機構と、
を備え、
前記駆動力伝達機構は、前記駆動源に固定されているラックと、前記可動リフレクタに固定されていて、前記ラックに噛み合うピニオンと、から構成されていて、
前記ピニオンが噛み合う前記ラックの歯部は、前記ラックの前記駆動源との固定中心を中心とする円形の一部の円弧形状をなす、
ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
少なくとも第1配光パターンと第2配光パターンとを切り替えて車両の前方に照射する車両用前照灯において、
半導体型光源と、
前記半導体型光源からの光を反射させる反射面を有する固定リフレクタと、
前記半導体型光源からの光を反射させる反射面を有し、かつ、少なくとも第1位置と第2位置との間を回転可能に配置されている可動リフレクタと、
駆動源と、
前記駆動源と前記可動リフレクタとの間に設けられていて、前記駆動源の駆動力を前記可動リフレクタに伝達して、前記可動リフレクタを少なくとも第1位置と第2位置との間を移動させる駆動力伝達機構と、
を備え、
前記駆動力伝達機構は、前記駆動源に固定されているラックと、前記可動リフレクタに固定されていて、前記ラックに噛み合うピニオンと、から構成されていて、
前記ピニオンが噛み合う前記ラックの歯部は、前記ラックの前記駆動源との固定中心を中心とする円形形状をなす、
ことを特徴とする車両用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−38027(P2013−38027A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175389(P2011−175389)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】