説明

車両用前照灯

【課題】カットオフラインを有する配光パターンのスポット部を走行車線側に配光することができる車両用前照灯を提供すること。
【解決手段】この発明は、半導体型光源2L、2Rと、レンズ3L、3Rと、を備える。レンズ3L、3Rの出射面31L、31Rには、ロービーム用配光パターンLPのスポット部SPを形成するピーク部32L、32Rが、レンズ3L、3Rの光軸ZL、ZRに対して走行車線側寄りに設けられている。この結果、この発明は、カットオフラインCLを有するロービーム用配光パターンLPのスポット部SPを走行車線側に配光することができる車両用前照灯を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体型光源を光源とし、カットオフラインを有する配光パターンたとえばロービーム用配光パターン(すれ違い用配光パターン)を車両の前方に照射する車両用前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体型光源を光源とする車両用前照灯は、従来からある(たとえば、特許文献1、特許文献2)。以下、従来の車両用前照灯について説明する。前者は、光源と、光源からの光を、カットオフラインを有する配光パターンとして、前方へ向けて偏向出射させるレンズと、を備えるものである。後者は、発光素子と、発光素子からの光を、カットオフラインを有する配光パターンとして、前面から出射させる透光部材と、を備えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−123447号公報
【特許文献2】特開2010−153076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる車両用前照灯においては、カットオフラインを有する配光パターンのスポット部(高光度部、集光部)を走行車線側に配光することが、走行車線側の遠方の視認性の向上の観点から、重要である。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、カットオフラインを有する配光パターンのスポット部を走行車線側に配光することができる車両用前照灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明(請求項1にかかる発明)は、半導体型光源と、半導体型光源からの光を、カットオフラインを有する配光パターンとして、前方に照射するレンズと、を備え、レンズが、半導体型光源からの光がレンズ中に入射する入射面(レンズ裏面)と、レンズ中に入射した光が出射する出射面(レンズ表面)と、から構成されていて、レンズの入射面が、複合2次曲面から構成されていて、レンズの出射面が、半導体型光源と反対側に突出した凸形状をなし、自由曲面から構成されていて、レンズの出射面には、配光パターンのスポット部を形成するピーク部が、レンズの光軸に対して走行車線側寄りに設けられている、ことを特徴とする。
【0007】
この発明(請求項2にかかる発明)は、レンズの入射面が、半導体型光源側に突出した凸形状をなす、ことを特徴とする。
【0008】
この発明(請求項3にかかる発明)は、レンズの出射面が、レンズの光軸から車両外側への勾配がレンズの光軸から車両内側への勾配より緩やかである、ことを特徴とする。
【0009】
この発明(請求項4にかかる発明)は、レンズの平面視の形状が、レンズの光軸から車両外側の厚さがレンズの光軸から車両内側の厚さより厚い、ことを特徴とする。
【0010】
この発明(請求項5にかかる発明)は、レンズの車両外側の端部が、前側から後側に回り込んだ形状をなす、ことを特徴とする。
【0011】
この発明(請求項6にかかる発明)は、補助半導体型光源と、補助半導体型光源からの光を補助配光パターンとしてカットオフラインを有する配光パターンに対して車両外側に照射する補助レンズと、を備え、補助レンズが、レンズの車両外側の端部に設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用前照灯は、ピーク部をレンズの出射面のうちレンズの光軸に対して走行車線側寄りに設けるので、スポット部を配光パターンのうち走行車線側に配光することができる。これにより、走行車線側の遠方の視認性が向上されて交通安全に貢献することができる。
【0013】
この発明(請求項2にかかる発明)の車両用前照灯は、レンズの入射面が半導体型光源側に突出した凸形状をなすので、スポット部を配光パターンのうち走行車線側に配光することができるレンズの光学設計が容易となり、かつ、スポット部を配光パターンのうち走行車線側に簡単にかつ確実に配光することができる。
【0014】
この発明(請求項3にかかる発明)の車両用前照灯は、レンズの出射面において、レンズの光軸から車両外側への勾配(すなわち、前側から後側への傾斜の度合い)がレンズの光軸から車両内側への勾配(すなわち、前側から後側への傾斜の度合い)より緩やかであるから、レンズの平面視の形状を、レンズの光軸から車両外側の厚さがレンズの光軸から車両内側の厚さより厚くなる形状とすることができる。これにより、配光パターンの左右両端部を左右両外側に広げることができ、理想的なカットオフラインを有する配光パターンを得ることができる。
【0015】
しかも、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用前照灯は、レンズの出射面において、レンズの光軸から車両外側への勾配がレンズの光軸から車両内側への勾配より緩やかである。この結果、車両の前部の左右に搭載(装備)する車両用前照灯のレンズを、車両の前方側から目視したとき(眺めたとき)、レンズ単品においてレンズの出射面はレンズの光軸に対して左右非対称でありながら、車両の中心に対してほぼ左右対称となるので、外観の違和感がなく、外観の見栄えが向上される。
【0016】
この発明(請求項4にかかる発明)の車両用前照灯は、レンズの平面視の形状を、レンズの光軸から車両外側の厚さがレンズの光軸から車両内側の厚さより厚くなる形状とすることができるので、前記の発明(請求項2にかかる発明)の車両用前照灯と同様に、配光パターンの左右両端部を左右両外側に広げることができ、理想的なカットオフラインを有する配光パターンを得ることができる。
【0017】
この発明(請求項5にかかる発明)の車両用前照灯は、レンズの車両外側の端部を前側から後側に回り込んだ形状にすることにより、配光パターンの左右両端部を左右両外側に広げることができ、理想的なカットオフラインを有する配光パターンを得ることができる。しかも、車両に搭載された左右の車両用前照灯のレンズを、車両の前方側から目視したとき、車両の中心に対してさらに左右対称となるので、外観の違和感がさらになく、外観の見栄えがさらに向上される。
【0018】
この発明(請求項6にかかる発明)の車両用前照灯は、補助半導体型光源と補助レンズとにより、配光パターンの左右両端部を左右両外側にさらに広げることができ、さらに理想的なカットオフラインを有する配光パターンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態1を示し、左右両側の車両用前照灯を搭載した車両の平面図である。
【図2】図2は、左側のランプユニットを示す正面図である。
【図3】図3は、左側のランプユニットを示す平面図(図2におけるIII矢視図)である。
【図4】図4は、左側のランプユニットを示す右側面図(図2におけるIV矢視図)である。
【図5】図5は、左側のランプユニットを示す斜視図である。
【図6】図6は、半導体型光源の発光チップを示す説明斜視図である。
【図7】図7は、左右両側のレンズを示す説明平面図である。
【図8】図8は、左右両側のレンズの光路を示す説明平面図である。
【図9】図9は、左側の車両用前照灯のロービーム用配光パターンと、右側の車両用前照灯のロービーム用配光パターンと、左右両側の車両用前照灯の重畳したロービーム用配光パターンと、を示す説明図である。
【図10】図10は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態2を示す左右両側のレンズを示す説明平面図である。
【図11】図11は、左右両側のレンズの光路を示す説明平面図である。
【図12】図12は、左側の車両用前照灯のロービーム用配光パターンと、右側の車両用前照灯のロービーム用配光パターンと、左右両側の車両用前照灯の重畳したロービーム用配光パターンと、を示す説明図である。
【図13】図13は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態3を示す左右両側のレンズの説明平面図である。
【図14】図14は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態4を示す左右両側のレンズの説明平面図である。
【図15】図15は、左側の車両用前照灯のロービーム用配光パターンと、右側の車両用前照灯のロービーム用配光パターンと、左右両側の車両用前照灯の重畳したロービーム用配光パターンと、を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態(実施例)のうちの3例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。この明細書において、前、後、上、下、左、右は、この発明にかかる車両用前照灯を車両に搭載した際の前、後、上、下、左、右である。また、符号「VU−VD」は、スクリーンの上下の垂直線を示す。符号「HL−HR」は、スクリーンの左右の水平線を示す。
【0021】
(実施形態1の構成の説明)
図1〜図9は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態1を示す。以下、この実施形態1における車両用前照灯の構成について説明する。図1中、符号1L、1Rは、この実施例における車両用前照灯(たとえば、ヘッドランプなど)である。前記車両用前照灯1L、1Rは、車両Cの前部の左右両端部に搭載されている。
【0022】
前記車両用前照灯1L、1Rは、図2〜図5に示すように、ランプハウジング(図示せず)と、ランプレンズ(図示せず)と、半導体型光源2L、2Rと、レンズ3L、3Rと、ヒートシンク部材4Lと、を備えるものである。なお、右側の前記車両用前照灯1Rのヒートシンク部材は、左側の前記車両用前照灯1Lの前記ヒートシンク部材4Lとほぼ同一構造をなすので、図示を省略する。
【0023】
前記半導体型光源2L、2Rおよび前記レンズ3L、3Rおよび前記ヒートシンク部材4Lは、ランプユニットを構成する。前記ランプハウジングおよび前記ランプレンズは、灯室(図示せず)を画成する。前記ランプユニット2L、2R、3L、3R、4Lは、前記灯室内に配置されていて、かつ、上下方向用光軸調整機構(図示せず)および左右方向用光軸調整機構(図示せず)を介して前記ランプハウジングに取り付けられている。
【0024】
前記半導体型光源2L、2Rは、この例では、たとえば、LED、EL(有機EL)などの自発光半導体型光源、すなわち、半導体型光源(この実施例ではLED)を使用する。前記半導体型光源2L、2Rは、基板(図示せず)と、前記基板に設けられている発光チップ20と、前記発光チップ20を封止する封止樹脂部材(図示せず)と、から構成されている。前記半導体型光源2L、2Rは、取付部材21L、21Rにより前記ヒートシンク部材4Lに取り付けられている。前記半導体型光源2L、2Rの前記発光チップ20は、前記取付部材21L、21Rおよび前記基板を介して電流が供給されて発光する。
【0025】
前記発光チップ20は、図6に示すように、平面矩形形状(平面長方形状)をなす。すなわち、4個の正方形のチップをX軸方向(水平方向)に配列してなるものである。なお、1個の長方形のチップ、あるいは、1個の正方形のチップ、を使用しても良い。前記発光チップ20の中心Oは、前記レンズ3L、3Rの基準焦点Fもしくはその近傍に位置し、かつ、前記レンズ3L、3Rの基準光軸(基準軸)ZL、ZR上もしくはその近傍に位置する。前記発光チップ20の発光面は、前記レンズ3L、3Rの基準光軸ZL、ZRの前側に向いている。
【0026】
図6において、X、Y、ZL、ZRは、直交座標(X−Y−Z直交座標系)を構成する。X軸は、前記発光チップ20の中心Oを通る左右方向の水平軸であって、対向車線側、すなわち、この実施形態において、右側が+方向であり、左側が−方向である。また、Y軸は、前記発光チップ20の中心Oを通る上下方向の鉛直軸であって、この実施形態において、上側が+方向であり、下側が−方向である。さらに、Z軸は、前記発光チップ20の中心Oを通る法線(垂線)、すなわち、前記X軸および前記Y軸と直交する前後方向の軸であって、この実施形態において、前側が+方向であり、後側が−方向である。
【0027】
前記レンズ3L、3Rは、図7、図8に示すように、前記半導体型光源2L、2Rからの光(図8中の実線矢印を参照)が前記レンズ3L、3R中に入射する入射面30L、30Rと、前記レンズ3L、3R中に入射した光が出射する出射面31L、31Rと、から構成されている。
【0028】
前記レンズ3L、3Rの前記入射面30L、30Rは、前記半導体型光源2L、2R側に突出した凸形状をなし、複合2次曲面(この実施形態においては、前記レンズ3L、3Rの前記光軸ZL、ZRに対して左右対称の複合2次曲面)から構成されている。なお、複合2次曲面は、たとえば、楕円、円、放物、双曲などの曲線、あるいは、平面、などの2次曲面の組み合わせである。
【0029】
前記レンズ3L、3Rの前記出射面31L、31Rは、前記半導体型光源2L、2Rと反対側に突出した凸形状をなし、自由曲面から構成されている。前記レンズ3L、3Rの前記出射面31L、31Rには、図9(C)に示すカットオフラインCLを有する配光パターンこの実施形態においてはロービーム用配光パターン(すれ違い用配光パターン)LPのスポット部SPを形成するピーク部32L、32Rが、前記レンズ3L、3Rの前記光軸ZL、ZRに対して走行車線側この実施形態においては左側寄りに設けられている。
【0030】
前記ピーク部32L、32Rは、前記レンズ3L、3Rの前記出射面31L、31Rの平面視(上方側からの目視)の形状(図7参照)における頂部である。前記ピーク部32L、32Rにおける前記レンズ3L、3Rの前後方向の厚さ(長さ)は、最大となる。
【0031】
ここで、前記レンズ3L、3Rの前記入射面30L、30Rの左側の部分30LL、30RLと右側の部分30LR、30RRとは、前記レンズ3L、3Rの前記光軸ZL、ZRに対してほぼ左右対称である。前記レンズ3L、3Rの前記出射面31L、31Rの左側の部分31LL、31RLと右側の部分31LR、31RRとは、前記レンズ3L、3Rの前記光軸ZL、ZRに対して左右非対称である。
【0032】
前記ヒートシンク部材4Lは、垂直板部40と、前記垂直板部40の一面(後側の面)に一体に設けた複数枚の垂直板形状のフィン部41と、から構成されている。前記ヒートシンク部材4Lの前記垂直板部40の他面(前側の面)には、前記半導体型光源2L、2Rが前記取付部材21L、21Rを介して取り付けられている。前記ヒートシンク部材4Lの前記垂直板部40の左右両側辺には、前記レンズ3L、3Rがホルダ33を介して取り付けられている。前記ホルダ33は、前記レンズ3L、3Rと一体型のものであっても、また、別体型のものであっても良い。
【0033】
(実施形態1の作用の説明)
この実施形態1における車両用前照灯1L、1Rは、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0034】
半導体型光源2L、2Rの発光チップ20を点灯する。すると、図8中の実線矢印に示すように、発光チップ20からの光は、レンズ3L、3Rの入射面30L、30Rからレンズ3L、3R中に入射する。このとき、入射光は、入射面30L、30Rにおいて配光制御される。レンズ3L、3R中に入射した入射光は、レンズ3L、3Rの出射面31L、31Rから出射する。このとき、出射光は、出射面31L、31Rにおいて配光制御される。
【0035】
左側のレンズ3Lからの出射光は、図9(A)に示すように、カットオフラインCLを有し、かつ、走行車線側の左側にスポット部SPを有し、さらに、左右両端部の広がりがほぼ等しい左側のロービーム用配光パターンLPLとして、車両Cの前方に照射される。
【0036】
右側のレンズ3Rからの出射光は、図9(B)に示すように、カットオフラインCLを有し、かつ、走行車線側の左側にスポット部SPを有し、さらに、左右両端部の広がりがほぼ等しい右側のロービーム用配光パターンLPRとして、車両Cの前方に照射される。
【0037】
左側のロービーム用配光パターンLPLと右側のロービーム用配光パターンLPRとが重畳されて、図9(C)に示すように、カットオフラインCLを有し、かつ、走行車線側の左側にスポット部SPを有し、さらに、左右両端部の広がりがほぼ等しいロービーム用配光パターンLPが形成される。
【0038】
(実施形態1の効果の説明)
この実施形態1における車両用前照灯1L、1Rは、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0039】
この実施形態1における車両用前照灯1L、1Rは、ピーク部32L、32Rをレンズ3L、3Rの出射面31L、31Rのうちレンズ3L、3Rの光軸ZL、ZRに対して走行車線側の左側寄りに設けるので、スポット部SPをロービーム用配光パターンLPのうち走行車線側の左側に配光することができる。これにより、走行車線側の遠方の視認性が向上されて交通安全に貢献することができる。
【0040】
この実施形態1における車両用前照灯1L、1Rは、レンズ3L、3Rの入射面30L、30Rが半導体型光源2L、2R側に突出した凸形状をなすので、スポット部SPをロービーム用配光パターンLPのうち走行車線側の左側に配光することができるレンズ3L、3Rの光学設計が容易となり、かつ、スポット部SPをロービーム用配光パターンLPのうち走行車線側の左側に簡単にかつ確実に配光することができる。
【0041】
(実施形態2の説明)
図10〜図12は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態2を示す。以下、この実施形態2における車両用前照灯について説明する。図中、図1〜図9と同符号は、同一のものを示す。
【0042】
この実施形態2における車両用前照灯のレンズ5L、5Rは、図10、図11に示すように、半導体型光源2L、2Rからの光(図11中の実線矢印を参照)が前記レンズ5L、5R中に入射する入射面50L、50Rと、前記レンズ5L、5R中に入射した光が出射する出射面51L、51Rと、から構成されている。
【0043】
前記レンズ5L、5Rの前記入射面50L、50Rは、前記半導体型光源2L、2R側に突出した凸形状をなし、複合2次曲面(この実施形態においては、前記レンズ5L、5Rの光軸ZL、ZRに対して左右対称の複合2次曲面)から構成されている。なお、複合2次曲面は、たとえば、楕円、円、放物、双曲などの曲線、あるいは、平面、などの2次曲面の組み合わせである。
【0044】
前記レンズ5L、5Rの前記出射面51L、51Rは、前記半導体型光源2L、2Rと反対側に突出した凸形状をなし、自由曲面から構成されている。前記レンズ5L、5Rの前記出射面51L、51Rには、図12(A)、(B)、(C)に示すカットオフラインCLを有する配光パターンこの実施形態においてはロービーム用配光パターン(すれ違い用配光パターン)LP1、LPL1、LPR1のスポット部SPを形成するピーク部52L、52Rが、前記レンズ5L、5Rの前記光軸ZL、ZRに対して走行車線側この実施形態においては左側寄りに設けられている。
【0045】
前記ピーク部52L、52Rは、前記レンズ5L、5Rの前記出射面51L、51Rの平面視(上方側からの目視)の形状(図10参照)における頂部である。前記ピーク部52L、52Rにおける前記レンズ5L、5Rの前後方向の厚さ(長さ)は、最大となる。
【0046】
ここで、前記レンズ5L、5Rの前記入射面50L、50Rの左側の部分50LL、50RLと右側の部分50LR、50RRとは、前記レンズ5L、5Rの前記光軸ZL、ZRに対してほぼ左右対称である。前記レンズ5L、5Rの前記出射面51L、51Rの左側の部分51LL、51RLと右側の部分51LR、51RRとは、前記レンズ5L、5Rの前記光軸ZL、ZRに対して左右非対称である。
【0047】
前記レンズ5L、5Rの前記出射面51L、51Rにおいて、前記レンズ5L、5Rの前記光軸ZL、ZRからの外側への勾配(すなわち、左側の前記レンズ5Lの前記出射面51Lの左側の部分51LLの前側から後側への傾斜の度合い、および、右側の前記レンズ5Rの前記出射面51Rの右側の部分51RRの前側から後側への傾斜の度合い)は、前記レンズ5L、5Rの前記光軸ZL、ZRからの内側への勾配(すなわち、左側の前記レンズ5Lの前記出射面51Lの右側の部分51LRの前側から後側への傾斜の度合い、および、右側の前記レンズ5Rの前記出射面51Rの左側の部分51RLの前側から後側への傾斜の度合い)より緩やかである。
【0048】
すなわち、前記レンズ5L、5Rの平面視(上側からの目視)の形状において、前記レンズ5L、5Rの前記光軸ZL、ZRから車両外側の厚さ(すなわち、左側の前記レンズ5Lの前記入射面50Lの左側の部分50LLから前記出射面51Lの左側の部分51LLまでの前後方向の厚さ(長さ)、および、右側の前記レンズ5Rの前記入射面50Rの右側の部分50RRから前記出射面51Rの右側の部分51RRまでの前後方向の厚さ(長さ))は、前記レンズ5L、5Rの前記光軸ZL、ZRから車両内側の厚さ(すなわち、左側の前記レンズ5Lの前記入射面50Lの右側の部分50LRから前記出射面51Lの右側の部分51LRまでの前後方向の厚さ(長さ)、および、右側の前記レンズ5Rの前記入射面50Rの左側の部分50RLから前記出射面51Rの左側の部分51RLまでの前後方向の厚さ(長さ))より厚い。
【0049】
この実施形態2における車両用前照灯は、以上のごとき構成からなるので、前記の実施形態1における車両用前照灯1L、1Rとほぼ同様の作用効果を達成することができる。
【0050】
特に、この実施形態2における車両用前照灯は、レンズ5L、5Rの出射面51L、51Rにおいて、レンズ5L、5Rの光軸ZL、ZRから車両外側への勾配(すなわち、前側から後側への傾斜の度合い)がレンズ5L、5Rの光軸ZL、ZRから車両内側への勾配(すなわち、前側から後側への傾斜の度合い)より緩やかである。このために、この実施形態2における車両用前照灯は、レンズ5L、5Rの平面視の形状を、レンズ5L、5Rの光軸ZL、ZRから車両外側の厚さがレンズ5L、5Rの光軸ZL、ZRから車両内側の厚さより厚くなる形状とすることができる。これにより、この実施形態2における車両用前照灯は、図12(A)、(B)、(C)に示すように、配光パターンの左右両端部を左右両外側に広げることができ、理想的なカットオフラインCLを有するロービーム用配光パターンLP1、LPL1、LPR1を得ることができる。
【0051】
しかも、この実施形態2における車両用前照灯は、レンズ5L、5Rの出射面51L、51Rにおいて、レンズ5L、5Rの光軸ZL、ZRから車両外側への勾配がレンズ5L、5Rの光軸ZL、ZRから車両内側への勾配より緩やかである。この結果、この実施形態2における車両用前照灯は、車両の前部の左右に搭載(装備)する車両用前照灯のレンズ5L、5Rを、車両の前方側から目視したとき(眺めたとき)、レンズ5L、5R単品においてレンズ5L、5Rの出射面51L、51Rはレンズ5L、5Rの光軸ZL、ZRに対して左右非対称でありながら、車両の中心(図1中の符号「O1−O1」を参照)に対してほぼ左右対称となるので、外観の違和感がなく、外観の見栄えが向上される。
【0052】
(実施形態3の説明)
図13は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態3を示す。以下、この実施形態3における車両用前照灯について説明する。図中、図1〜図12と同符号は、同一のものを示す。
【0053】
この実施形態3における車両用前照灯は、補助レンズ7L、7Rを備えるものである。前記補助レンズ7L、7Rは、前記の実施形態2における車両用前照灯のレンズ5L、5Rの車両外側の端部に設けられている。前記の実施形態2における車両用前照灯のレンズ5L、5Rの車両外側の端部の前記補助レンズ7L、7Rは、前側から後側に回り込んだ形状をなす。すなわち、前記補助レンズ7L、7Rは、前記の実施形態2における車両用前照灯のレンズ5L、5Rの車両外側の端部から、前側から後側に回り込んだ形状で設けられている。
【0054】
前記補助レンズ7L、7Rの入射面70L、70Rは、前記の実施形態2における車両用前照灯のレンズ5L、5Rの入射面50L、50Rの車両外側の端部から連続して前側から後側に回り込んだ形状をなす。前記補助レンズ7L、7Rの入射面70L、70Rにおいては、前記の実施形態2における車両用前照灯のレンズ5L、5Rの入射面50L、50Rの曲率方向が変わる変曲点を有している。すなわち、レンズ5L、5R、7L、7Rの入射面50L、50R、70L、70Rは、S字形状をなしている。前記補助レンズ7L、7Rの出射面71L、71Rは、前記入射面70L、70Rの回り込み形状に追従して、前記の実施形態2における車両用前照灯のレンズ5L、5Rの出射面51L、51Rの車両外側の端部から連続して前側から後側に回り込んだ形状をなす。
【0055】
前記補助レンズ7L、7Rは、半導体型光源2L、2Rからの光を、前記入射面70L、70Rから入射してかつ前記出射面71L、71Rから、補助配光パターン(図15(A)、(B)、(C)中の符号「WPL」、「WPR」参照)として、前記の実施形態2における車両用前照灯により得られるロービーム用配光パターンLP1、LPL1、LPR1に対して車両外側に照射する。
【0056】
前記補助レンズ7L、7Rは、前記の実施形態2における車両用前照灯のレンズ5L、5Rと一体のものであっても良いし、別体のものを前記の実施形態2における車両用前照灯のレンズ5L、5Rに繋げたものであっても良い。また、前記補助レンズ7L、7Rは、前記の実施形態1における車両用前照灯1L、1Rのレンズ3L、3Rの車両外側の端部に設けたものであっても良い。
【0057】
この実施形態3における車両用前照灯は、以上のごとき構成からなるので、前記の実施形態1における車両用前照灯1L、1Rおよび前記の実施形態2における車両用前照灯とほぼ同様の作用効果を達成することができる。
【0058】
特に、この実施形態3における車両用前照灯は、補助レンズ7L、7Rにより、前記の実施形態2における車両用前照灯により得られるロービーム用配光パターンLP1、LPL1、LPR1の左右両端部を左右両外側にさらに広げることができ、さらに理想的なカットオフラインを有するロービーム用配光パターンを得ることができる。
【0059】
しかも、この実施形態3における車両用前照灯は、前記の実施形態2における車両用前照灯のレンズ5L、5Rの車両外側の端部を補助レンズ7L、7Rにより前側から後側に回り込んだ形状にする。この結果、車両に搭載された左右の車両用前照灯のレンズ7L、7Rを、車両の前方側から目視したとき、車両の中心に対してさらに左右対称となるので、外観の違和感がさらになく、外観の見栄えがさらに向上される。
【0060】
(実施形態4の説明)
図14、図15は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態4を示す。以下、この実施形態3における車両用前照灯について説明する。図中、図1〜図13と同符号は、同一のものを示す。
【0061】
この実施形態4における車両用前照灯は、補助半導体型光源6L、6Rと、補助レンズ7L、7Rと、を備えるものである。
【0062】
前記補助半導体型光源6L、6Rは、ヒートシンク部材4L、4Rの車両外側の箇所に、前記補助レンズ7L、7Rと対向するように、取付部材61L、61Rを介して取り付けられている。
【0063】
前記補助レンズ7L、7Rは、前記の実施形態2における車両用前照灯のレンズ5L、5Rの車両外側の端部に設けられている。前記の実施形態2における車両用前照灯のレンズ5L、5Rの車両外側の端部の前記補助レンズ7L、7Rは、前側から後側に回り込んだ形状をなす。すなわち、前記補助レンズ7L、7Rは、前記の実施形態2における車両用前照灯のレンズ5L、5Rの車両外側の端部から、前側から後側に回り込んだ形状で設けられている。この実施形態4における補助レンズ7L、7Rは、前記の実施形態3における補助レンズ7L、7R(図14中の二点鎖線で示す部分)よりさらに車両外側に延設してなるものである。
【0064】
前記補助レンズ7L、7Rの入射面70L、70Rは、前記の実施形態2における車両用前照灯のレンズ5L、5Rの入射面50L、50Rの車両外側の端部から連続して前側から後側に回り込んだ形状をなす。前記補助レンズ7L、7Rの入射面70L、70Rにおいては、前記の実施形態2における車両用前照灯のレンズ5L、5Rの入射面50L、50Rの曲率方向が変わる変曲点を有している。すなわち、レンズ5L、5R、7L、7Rの入射面50L、50R、70L、70Rは、S字形状をなしている。前記補助レンズ7L、7Rの出射面71L、71Rは、前記入射面70L、70Rの回り込み形状に追従して、前記の実施形態2における車両用前照灯のレンズ5L、5Rの出射面51L、51Rの車両外側の端部から連続して前側から後側に回り込んだ形状をなす。
【0065】
前記補助レンズ7L、7Rは、前記補助半導体型光源6L、6Rからの光を、前記入射面70L、70Rから入射してかつ前記出射面71L、71Rから、補助配光パターンWPL、WPR(図15(A)、(B)、(C)参照)として、前記の実施形態2における車両用前照灯により得られるロービーム用配光パターンLP1、LPL1、LPR1に対して車両外側に照射する。
【0066】
前記補助レンズ7L、7Rは、前記の実施形態2における車両用前照灯のレンズ5L、5Rと一体のものであっても良いし、別体のものを前記の実施形態2における車両用前照灯のレンズ5L、5Rに繋げたものであっても良い。また、前記補助レンズ7L、7Rは、前記の実施形態1における車両用前照灯1L、1Rのレンズ3L、3Rの車両外側の端部に設けたものであっても良い。
【0067】
この実施形態4における車両用前照灯は、以上のごとき構成からなるので、前記の実施形態1における車両用前照灯1L、1Rおよび前記の実施形態2、3における車両用前照灯とほぼ同様の作用効果を達成することができる。
【0068】
特に、この実施形態4における車両用前照灯は、補助半導体型光源6L、6Rと補助レンズ7L、7Rとにより、前記の実施形態2における車両用前照灯により得られるロービーム用配光パターンLP1、LPL1、LPR1の左右両端部を左右両外側にさらに広げることができ、図15(A)、(B)、(C)に示すように、さらに理想的なカットオフラインCLを有するロービーム用配光パターンLP2、LPL2、LPR2、WPL、WPRを得ることができる。
【0069】
しかも、この実施形態4における車両用前照灯は、前記の実施形態2における車両用前照灯のレンズ5L、5Rの車両外側の端部を補助レンズ7L、7Rにより前側から後側に回り込んだ形状にする。この結果、車両に搭載された左右の車両用前照灯のレンズ7L、7Rを、車両の前方側から目視したとき、車両の中心に対してさらに左右対称となるので、外観の違和感がさらになく、外観の見栄えがさらに向上される。
【0070】
(実施形態1、2、3、4以外の例の説明)
この実施形態1、2、3、4においては、車両Cが左側通行の場合の車両用前照灯1L、1Rについて説明するものである。ところが、この発明においては、車両Cが右側通行の場合の車両用前照灯にも適用することができる。
【0071】
この実施形態1、2、3、4においては、レンズ3L、3Rの入射面30L、30Rが、半導体型光源2L、2R側に突出した凸形状をなすものである。ところが、この発明においては、レンズ3L、3Rの入射面30L、30Rが、平面形状をなすものであっても良いし、半導体型光源2L、2Rと反対側に凹んだ凹形状をなすものであっても良い。
【符号の説明】
【0072】
1L 左側の車両用前照灯
1R 右側の車両用前照灯
2L 左側の半導体型光源
2R 右側の半導体型光源
20 発光チップ
21L 左側の取付部材
21R 右側の取付部材
3L 左側のレンズ
3R 右側のレンズ
30L 左側のレンズの入射面
30LL 左側のレンズの入射面の左側の部分
30LR 左側のレンズの入射面の右側の部分
30R 右側のレンズの入射面
30RL 右側のレンズの入射面の左側の部分
30RR 右側のレンズの入射面の右側の部分
31L 左側のレンズの出射面
31LL 左側のレンズの出射面の左側の部分
31LR 左側のレンズの出射面の右側の部分
31R 右側のレンズの出射面
31RL 右側のレンズの出射面の左側の部分
31RR 右側のレンズの出射面の右側の部分
32L 左側のレンズのピーク部
32R 右側のレンズのピーク部
33 ホルダ
4L 左側のヒートシンク部材
4R 右側のヒートシンク部材
40 垂直板部
41 フィン部
5L 左側のレンズ
5R 右側のレンズ
50L 左側のレンズの入射面
50LL 左側のレンズの入射面の左側の部分
50LR 左側のレンズの入射面の右側の部分
50R 右側のレンズの入射面
50RL 右側のレンズの入射面の左側の部分
50RR 右側のレンズの入射面の右側の部分
51L 左側のレンズの出射面
51LL 左側のレンズの出射面の左側の部分
51LR 左側のレンズの出射面の右側の部分
51R 右側のレンズの出射面
51RL 右側のレンズの出射面の左側の部分
51RR 右側のレンズの出射面の右側の部分
52L 左側のレンズのピーク部
52R 右側のレンズのピーク部
6L 左側の補助半導体型光源
6R 右側の補助半導体型光源
61L 左側の取付部材
61R 右側の取付部材
7L 左側の補助レンズ
7R 右側の補助レンズ
70L 左側の補助レンズの入射面
70R 右側の補助レンズの入射面
71L 左側の補助レンズの出射面
71R 右側の補助レンズの出射面
C 車両
CL カットオフライン
F レンズの基準焦点
HL−HR スクリーンの左右の水平線
LP、LP1、LP2 ロービーム用配光パターン
LPL、LPL1、LPL2 左側のロービーム用配光パターン
LPR、LPR1、LPR2 右側のロービーム用配光パターン
O 発光チップの中心
O1−O1 車両の中心
SP スポット部
VU−VD スクリーンの上下の垂直線
X X軸
Y Y軸
ZL 左側のレンズの基準光軸(Z軸)
ZR 右側のレンズの基準光軸(Z軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体型光源と、
前記半導体型光源からの光を、カットオフラインを有する配光パターンとして、前方に照射するレンズと、
を備え、
前記レンズは、前記半導体型光源からの光が前記レンズ中に入射する入射面と、前記レンズ中に入射した光が出射する出射面と、から構成されていて、
前記レンズの入射面は、複合2次曲面から構成されていて、
前記レンズの出射面は、前記半導体型光源と反対側に突出した凸形状をなし、自由曲面から構成されていて、
前記レンズの出射面には、前記配光パターンのスポット部を形成するピーク部が、前記レンズの光軸に対して走行車線側寄りに設けられている、
ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記レンズの入射面は、前記半導体型光源と反対側に突出した凸形状をなす、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記レンズの出射面は、前記レンズの光軸から車両外側への勾配が前記レンズの光軸から車両内側への勾配より緩やかである、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用前照灯。
【請求項4】
前記レンズの平面視の形状は、前記レンズの光軸から車両外側の厚さが前記レンズの光軸から車両内側の厚さより厚い、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項5】
前記レンズの車両外側の端部は、前側から後側に回り込んだ形状をなす、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項6】
補助半導体型光源と、
前記補助半導体型光源からの光を、補助配光パターンとして、前記配光パターンに対して車両外側に照射する補助レンズと、
を備え、
前記補助レンズは、前記レンズの車両外側の端部に設けられている、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−51166(P2013−51166A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189226(P2011−189226)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】