車両用前照灯
【課題】全体の配光パターンのうち車両外側の部分をさらに車両外側に広げこと。
【解決手段】この発明は、半導体型光源2と、反射面10を有するリフレクタ3と、を備える。反射面10は、8個のセグメントから構成されている。第3セグメント13と第4セグメント14の間には、段差面19が形成されている。段差面19は、抜き勾配θ1から最大勾配θ2まで連続的に変化させた自由曲面からなる。この結果、この発明は、全体の配光パターンのうち車両外側の部分をさらに車両外側に広げことができ、歩行者や歩道や路肩を照明してそれらの視認性を向上させることができる。
【解決手段】この発明は、半導体型光源2と、反射面10を有するリフレクタ3と、を備える。反射面10は、8個のセグメントから構成されている。第3セグメント13と第4セグメント14の間には、段差面19が形成されている。段差面19は、抜き勾配θ1から最大勾配θ2まで連続的に変化させた自由曲面からなる。この結果、この発明は、全体の配光パターンのうち車両外側の部分をさらに車両外側に広げことができ、歩行者や歩道や路肩を照明してそれらの視認性を向上させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光源からの光を所定の配光パターンで反射させる反射面を有するリフレクタタイプの車両用前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用前照灯は、従来からある(たとえば、特許文献1)。以下、従来の車両用前照灯について説明する。従来の車両用前照灯は、光源と、光源からの光を所定の配光パターンで反射させる反射面を有するリフレクタと、を備え、反射面が、複数個のセグメントから構成されている。光源を点灯すると、光源からの光が反射面の複数個のセグメントにおいてそれぞれ反射されて複数個の所定の部分の配光パターンとして車両の前方に照射される。複数個の所定の部分の配光パターンが重畳(合成)されて所定の全体の配光パターンが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−277480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる車両用前照灯においては、全体の配光パターンのうち車両外側の部分(左外側の部分、右外側の部分)をさらに車両外側に広げて、歩行者や歩道や路肩を照明してそれらの視認性を向上させることが交通安全上重要である。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、全体の配光パターンのうち車両外側の部分をさらに車両外側に広げて、歩行者や歩道や路肩を照明してそれらの視認性を向上させることが重要である、という点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明(請求項1にかかる発明)は、光源と、光源からの光を所定の全体の配光パターンとして反射させる反射面を有するリフレクタと、を備え、反射面が、複数個のセグメントから構成されていて、複数個のセグメントが、全体の配光パターンのうち車両の外側の部分の配光パターンを形成する車両外側部分配光パターン形成用セグメントと、車両外側部分配光パターン形成用セグメントの車両の外側に隣接する外側隣接セグメントと、その他の複数個のセグメントと、からなり、車両外側部分配光パターン形成用セグメントと外側隣接セグメントの間には、段差面が形成されていて、段差面が、抜き勾配から抜き勾配より大きい勾配まで連続的に変化させた自由曲面からなる、ことを特徴とする。
【0007】
この発明(請求項2にかかる発明)は、段差面のうち段差が大きい箇所の勾配を大きくする、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用前照灯は、段差面が、抜き勾配から抜き勾配より大きい勾配まで連続的に変化させた自由曲面からなるので、勾配が抜き勾配より大きい段差面において、外側隣接セグメントによって遮られていた光源からの光が車両外側部分配光パターン形成用セグメントに入射することができる。これにより、全体の配光パターンのうち車両外側の部分をさらに車両外側に広げて、歩行者や歩道や路肩を照明してそれらの視認性を向上させることができ、交通安全に貢献することができる。
【0009】
この発明(請求項2にかかる発明)の車両用前照灯は、段差面のうち段差が大きい箇所の勾配を大きくするので、外側隣接セグメントによって遮られる光源からの光をより多く車両外側部分配光パターン形成用セグメントに入射させることができる。これにより、全体の配光パターンのうち車両外側の部分をさらに広く車両外側に広げて、歩行者や歩道や路肩を照明してそれらの視認性をさらに確実に向上させることができ、交通安全にさらに貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態1を示す斜視図である。
【図2】図2は、リフレクタの正面図(図1におけるII矢視図)である。
【図3】図3は、図2におけるIII−III線断面図である。
【図4】図4は、段差面の勾配を示す断面説明図(図2におけるIII−III線断面図)である。
【図5】図5は、段差面における光の損得を示す断面説明図(図2におけるIII−III線断面図)である。
【図6】図6は、図2におけるVI−VI線断面図である。
【図7】図7は、段差面における光の損得を示す断面説明図(図2におけるVI−VI線断面図)である。
【図8】図8は、全体の配光パターンを示す説明図である。
【図9】図9は、各セグメントの部分の配光パターンを示す説明図である。
【図10】図10は、各セグメントの部分の配光パターンを示す説明図である。
【図11】図11は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態2を示すリフレクタの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態(実施例)のうちの2例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。図面において、符号「F」は、車両の前方側(車両の前進方向側)を示す。符号「B」は、車両の後方側を示す。符号「U」は、ドライバー側から前方側を見た上方側を示す。符号「D」は、ドライバー側から前方側を見た下方側を示す。符号「L」は、ドライバー側から前方側を見た場合の左側を示す。符号「R」は、ドライバー側から前方側を見た場合の右側を示す。前記の前、後、上、下、左、右は、この発明にかかる車両用灯具を車両に装備した際の前、後、上、下、左、右である。また、符号「VU−VD」は、スクリーンの上下の垂直線を示す。符号「HL−HR」は、スクリーンの左右の水平線を示す。
【0012】
(実施形態1の構成の説明)
図1〜図10は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態1を示す。以下、この実施形態1における車両用前照灯の構成について説明する。図中、符号1は、この実施形態1における車両用前照灯(たとえば、ヘッドランプやフォグランプなど)である。なお、この実施形態1の車両用前照灯1は、自動車の前部の左側Lに装備されるものであって、自動車の前部の右側Rに装備される車両用前照灯は、この実施形態1の車両用前照灯1とほぼ左右が逆となる。このために、自動車の前部の右側Rに装備される車両用前照灯の構成の説明を省略する。この実施形態1の車両用前照灯1において、車両の外側は左側Lとなり、車両の内側は右側Rとなる。一方、自動車の前部の右側Rに装備される車両用前照灯において、車両の外側は右側Rとなり、車両の内側は左側Lとなる。
【0013】
前記車両用前照灯1は、ランプハウジング(図示せず)と、ランプレンズ(図示せず)と、光源としての半導体型光源2と、リフレクタ3と、ヒートシンク部材4と、を備えるものである。
【0014】
前記ランプハウジングおよび前記ランプレンズは、灯室(図示せず)を画成する。前記灯室内には、前記半導体型光源2および前記リフレクタ3および前記ヒートシンク部材4が配置されている。
【0015】
前記半導体型光源2は、この例では、たとえば、LED、EL(有機EL)などの自発光半導体型光源、すなわち、半導体型光源(この実施例ではLED)を使用する。前記半導体型光源2は、基板(図示せず)と、前記基板に適宜に配置されて設けられている1個もしくは複数個の発光チップ(図示せず)と、前記発光チップを封止する封止樹脂部材(図示せず)と、から構成されている。前記半導体型光源2は、取付部材5および保持部材6を介して前記ヒートシンク部材4に取り付けられている。なお、前記発光チップは、平面から見て、長方形状をなすが、正方形や円形などであっても良い。
【0016】
前記リフレクタ3は、光不透過性の部材、この例では、樹脂部材から構成されている。前記リフレクタ3は、一方側(前方側)7が開口し、かつ、他方側(後方側、上方側、下方側、左方側、右方側)8が閉塞した中空形状をなす。前記閉塞部8の後方側、上方側、左方側、右方側は、回転放物線形状をほぼ2分の1とした湾曲板形状をなす。前記閉塞部8の下方側は、ほぼ水平板形状をなし、前記閉塞部8の奥側(後方側)から前記開口部7側(前方側)にかけて上方側から下方側に傾斜している。前記閉塞部8の下方側の水平板部の傾斜は、前記リフレクタ3の成形金型(図示せず)の抜きのために設けられていて、この例では、約5°である。
【0017】
前記リフレクタ3の前記閉塞部8の水平板部の中央部から後方部にかけての箇所、および、前記リフレクタ3の前記閉塞部8の湾曲板部の中央部の若干の箇所には、窓部9が設けられている。前記窓部9には、前記半導体型光源2および前記取付部材5および前記保持部材6の一部が位置する。前記リフレクタ3の前記閉塞部8の湾曲板部の下部後側には、固定凸部20が一体に設けられている。前記固定凸部20は、前記ヒートシンク部材4にスクリューにより固定されている。
【0018】
前記リフレクタ3の前記閉塞部8の内面(特に、湾曲板部の内面)には、反射面10が形成されている。すなわち、前記リフレクタ3の前記開口部7を上側に向けた状態で、前記リフレクタ3の前記閉塞部8の内面に蒸着を施して、前記反射面10を形成する。
【0019】
前記反射面10は、自由曲面(NURBS曲面)の反射面であって、前記半導体型光源2からの光を反射させて図8(A)に示す左側の全体の配光パターンLLPすなわち左側のロービーム用配光パターン(すれ違い用配光パターン)LLPとして車両の前方に照射する。なお、自動車の前部の右側Rに装備される車両用前照灯は、図8(B)に示す右側の全体の配光パターンRLPすなわち右側のロービーム用配光パターン(すれ違い用配光パターン)RLPとして車両の前方に照射する。前記左側のロービーム用配光パターンLLPと前記右側のロービーム用配光パターンRLPとが重畳(合成)されて、所定のロービーム用配光パターン(図示せず)が形成される。
【0020】
前記反射面10は、複数個、この例では、垂直方向(縦方向)に分割された8個のセグメント11、12、13、14,15、16、17、18から構成されている。1番左側の第1セグメント11は、図9(A)に示すように、第1部分配光パターンP1を形成する。前記第1部分配光パターンP1は、前記左側のロービーム用配光パターンLLPの右側のカットオフラインに沿った部分の集光タイプのパターンである。
【0021】
左側から2番目の第2セグメント12は、図9(B)に示すように、第2部分配光パターンP2を形成する。前記第2部分配光パターンP2は、前記左側のロービーム用配光パターンLLPの左側のカットオフラインに沿った部分の集光タイプのパターンである。
【0022】
左側から3番目の第3セグメント13は、図9(C)に示すように、第3部分配光パターンP3を形成する。前記第3部分配光パターンP3は、前記左側のロービーム用配光パターンLLPの車両の外側(左側L)の部分の拡散タイプのパターンである。前記第3セグメント13は、前記左側のロービーム用配光パターンLLPの車両の外側(左側L)の部分の拡散タイプの配光パターンP3を形成する車両外側部分配光パターン形成用セグメントである。
【0023】
左側から4番目の第4セグメント14は、図9(D)に示すように、第4部分配光パターンP4を形成する。前記第4部分配光パターンP4は、前記左側のロービーム用配光パターンLLPの中央の部分の集光タイプのパターン(いわゆる、ホットゾーン、高光度部分)である。前記第4セグメント14は、前記第3セグメント13の車両の外側(左側L)に隣接する外側隣接セグメントである。
【0024】
左側から5番目の第5セグメント15は、図10(A)に示すように、第5部分配光パターンP5を形成する。前記第5部分配光パターンP5は、前記左側のロービーム用配光パターンLLPの中央の部分のやや集光タイプのパターンである。
【0025】
左側から6番目の第6セグメント16は、図10(B)に示すように、第6部分配光パターンP6を形成する。前記第6部分配光パターンP6は、前記左側のロービーム用配光パターンLLPの車両の内側(右側R)の部分の拡散タイプのパターンである。
【0026】
左側から7番目の第7セグメント17は、図10(C)に示すように、第7部分配光パターンP7を形成する。前記第7部分配光パターンP7は、前記左側のロービーム用配光パターンLLPの中央の部分の拡散タイプのパターンである。
【0027】
左側から8番目(1番右側)の第8セグメント18は、図10(D)に示すように、第8部分配光パターンP8を形成する。前記第8部分配光パターンP8は、前記左側のロービーム用配光パターンLLPの右側のカットオフラインに沿った部分の集光タイプのパターンである。
【0028】
前記第1セグメント11、前記第2セグメント12、前記第5セグメント15、前記第6セグメント16、前記第7セグメント17、前記第8セグメント18は、前記第3セグメント13の車両外側部分配光パターン形成用セグメント、および、前記第4セグメント14の外側隣接セグメント以外の、その他の複数個のセグメントである。
【0029】
前記第4セグメント14および前記第5セグメント15は、前記半導体型光源2に最も近いので、前記半導体型光源2からの光のうち最も明るい光(高光度の光、高照度の光、高光量の光)を反射させて、前記左側のロービーム用配光パターンLLPの中央の部分の遠方を照明して遠方の視認性を向上させる集光タイプの前記第4部分配光パターンP4および前記第5部分配光パターンP5を形成するのに適している。
【0030】
前記第4セグメント14により形成される前記第4部分配光パターンP4は、その他のセグメント(前記第1セグメント11〜前記第3セグメント13、および、前記第5セグメント15〜前記第8セグメント18)により形成される部分配光パターン(前記第1部分配光パターンP1〜前記第3部分配光パターンP3、および、前記第5部分配光パターンP5〜前記第8部分配光パターンP8)によりカバーすること(補うこと)ができる。
【0031】
前記第3セグメント13および前記第6セグメント16は、前記第4セグメント14および前記第5セグメント15の次に前記半導体型光源2に近いので、前記半導体型光源2からの光のうち次ぎに明るい光を反射させて、前記左側のロービーム用配光パターンLLPの左右両側の広い部分を照明して左右両側の視認性を向上させる拡散タイプの前記第3部分配光パターンP3および前記第6部分配光パターンP6を形成するのに適している。
【0032】
前記第3セグメント13により形成される前記第3部分配光パターンP3のうち、車両の外側(左側L)の端の部分(図9(C)中に示す二点鎖線から左側の実線までの部分)は、その他のセグメント(前記第1セグメント11、前記第2セグメント12、および、前記第4セグメント14〜前記第8セグメント18)により形成される部分配光パターン(前記第1部分配光パターンP1、前記第2部分配光パターンP2、および、前記第4部分配光パターンP4〜前記第8部分配光パターンP8)によりカバーすること(補うこと)ができない。
【0033】
自由曲面からなる前記反射面10の8個の前記セグメント11〜18は、前記の通り、タイプが異なる前記部分配光パターンP1〜P8をそれぞれ形成して、かつ、前記左側のロービーム用配光パターンLLPのうち異なる所定の位置にそれぞれ照射するものである。このために、隣り合う前記各セグメントと前記各セグメントとの間の境界線においては、段差面が形成される。なお、形成する部分配光パターンのタイプや照射する位置などの条件によっては、前記段差面が形成されない場合がある。
【0034】
前記車両外側部分配光パターン形成用セグメントとしての前記第3セグメント13と、前記外側隣接セグメントとしての前記第4セグメント14の間には、段差面19が形成されている。なお、その他の前記各セグメントと前記各セグメントの間の段差面の図示は、省略する。
【0035】
前記第3セグメント13と前記第4セグメント14の間の前記段差面19は、図2〜図7に示すように、抜き勾配θ1(たとえば、約15°)から前記抜き勾配θ1より大きい勾配θ2(たとえば、40°。以下、「最大勾配θ2」と称する)まで一定の割合で連続的に変化させた自由曲面からなる。ここで、勾配とは、前記反射面10の基準光軸(図示せず)に平行(もしくはほぼ平行)な線分Z−Zに対しての傾斜を言う。また、抜き勾配θ1とは、前記リフレクタ3を金型(図示せず)から取り出し易くするために、金型に設けた勾配を言う。
【0036】
前記段差面19の段差は、前記リフレクタ3の上部において小さい段差19Sであり、前記リフレクタ3の下部において大きい段差19Lである。前記段差面19の勾配は、前記リフレクタ3の上部から下部にかけて、すなわち、前記段差面19の前記小さい段差19Sから前記大きい段差19Lにかけて、前記抜き勾配θ1から前記最大勾配θ2まで、一定の割合で徐々に大きくなる。この結果、前記段差面19のうち前記大きい段差19Lの箇所における勾配は、大きい。一方、前記段差面19のうち前記小さい段差19Sの箇所における勾配は、小さい。
【0037】
前記ヒートシンク部材4は、放熱性が高い部材、たとえば、アルミダイカストや樹脂から構成されている。前記ヒートシンク部材4は、前方側の垂直板部と、後方側のフィン部と、から構成されている。前記ヒートシンク部材4の前記垂直板部には、前記リフレクタ3の前記固定凸部20がスクリューにより固定されている。なお、前記ヒートシンク部材4と前記保持部材6とを一体に構成しても良い。また、前記保持部材65にフィン部を一体に設けても良い。
【0038】
(実施形態1の作用の説明)
この実施形態1における車両用前照灯1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0039】
半導体型光源2を点灯する。すると、半導体型光源2から放射される光L1は、リフレクタ3の反射面10の各セグメント11〜18に入射してその各セグメント11〜18において反射する。この反射光L2は、所定の各部分の配光パターンP1〜P8として、車両の前部の左側に搭載されているこの実施形態1における車両用前照灯1から車両の前方に照射される。所定の各部分の配光パターンP1〜P8が重畳(合成)されて左側のロービーム用配光パターンLLPが形成される。
【0040】
一方、車両の前部の右側に搭載されている車両用前照灯から右側のロービーム用配光パターンRLPが車両の前方に照射される。この右側のロービーム用配光パターンRLPと前記の左側のロービーム用配光パターンLLPとが重畳(合成)されて所定のロービーム用配光パターンが形成される。
【0041】
(実施形態1の効果の説明)
この実施形態1における車両用前照灯1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0042】
(請求項1にかかる発明の効果の説明)
この実施形態1における車両用前照灯1は、段差面19が、抜き勾配θ1から抜き勾配θ1より大きい勾配θ2(最大勾配θ2)まで連続的に変化させた自由曲面からなる。この結果、図4、図5に示すように、勾配が抜き勾配θ1より大きい段差面19において、第4セグメント14によって遮られていた半導体型光源2からの光L1が第3セグメント13に入射することができる。すなわち、最大勾配θ2の段差面19において、抜き勾配θ1の段差面190の第4セグメント14の右側の部分(すなわち、第3セグメント13と隣接する部分であって、二点鎖線にて示す部分)S10によって遮られていた半導体型光源2からの光L1が第3セグメント13の左側の部分(すなわち、第4セグメント14と隣接する部分であって、実線にて示す部分)S1Lに入射することができる。これにより、全体の配光パターンのうち車両外側の部分が、すなわち、左側のロービーム用配光パターンLLPの左側の部分が、さらに車両外側(左側L)に広げられて、歩行者や歩道や路肩を照明してそれらの視認性を向上させることができ、交通安全に貢献することができる。
【0043】
一方、車両の前部の右側に搭載されている車両用前照灯から右側のロービーム用配光パターンRLPの右側の部分を、さらに車両外側(右側R)に広げることができる。この右側のロービーム用配光パターンRLPと前記の左側のロービーム用配光パターンLLPとが重畳(合成)されることにより、左右両側の部分左右両側に広がった所定のロービーム用配光パターンが形成される。この結果、左右両側の歩行者や歩道や路肩を照明してそれらの視認性を向上させることができ、交通安全に貢献することができる。
【0044】
ここで、この実施形態1における車両用前照灯1の最大勾配θ2の段差面19と、抜き勾配θ1の段差面190と、の差異について図4、図5を参照して説明する。
【0045】
最大勾配θ2の段差面19と抜き勾配θ1の段差面190とは、第3セグメント13と第4セグメント14との間の段差であって、大きい段差19Lの箇所における段差面である。最大勾配θ2の段差面19は、図4、図5中の実線にて示す段差面である。これに対して、抜き勾配θ1の段差面190は、図4、図5中の二点鎖線にて示すように、最大勾配θ2の段差面19より車両の内側(右側R)に突出している段差面である。
【0046】
最大勾配θ2の段差面19において、半導体型光源2からの光は、第3セグメント13と第4セグメント14にそれぞれ入射して、その第3セグメント13と第4セグメント14においてそれぞれ反射する。第3セグメント13からの反射光は、図9(C)の実線にて示す第3部分配光パターンP3として車両の前方に照射される。第4セグメント14からの反射光は、図9(D)の実線にて示す第4部分配光パターンP4として車両の前方に照射される。
【0047】
これに対して、抜き勾配θ1の段差面190において、半導体型光源2からの光は、第3セグメント13と第4セグメント14にそれぞれ入射して、その第3セグメント13と第4セグメント14においてそれぞれ反射する。第3セグメント13からの反射光は、図9(C)の右側および上側および下側の実線と左側の二点鎖線とで示す第3部分配光パターンP3として車両の前方に照射される。第4セグメント14からの反射光は、図9(D)の左側および上側および下側の実線と右側の二点鎖線で示す第4部分配光パターンP4として車両の前方に照射される。
【0048】
このように、最大勾配θ2の段差面19においては、半導体型光源2からの光であって、抜き勾配θ1の段差面190の第4セグメント14の右側の部分S10に入射していてその部分S10によって遮られていた光(図5中の二点鎖線矢印の光L10から図5中の実線矢印の光L1までの光)を、第3セグメント13の左側の部分S1Lに入射させることができる。このために、最大勾配θ2の段差面19においては、第3セグメント13の左側の部分S1Lからの反射光により、図9(C)に示す第3部分配光パターンP3の左側の部分が二点鎖線に示す部分から実線に示す部分に車両の外側(左側L)に広がる。
【0049】
この図9(C)に示す第3部分配光パターンP3の左側の部分であって、二点鎖線に示す部分から実線に示す部分に車両の外側(左側L)に広がった部分は、第3セグメント13により形成される第3部分配光パターンP3のみによってカバーされるものである。すなわち、前記の部分は、第3セグメント13以外のセグメント(第1セグメント11、第2セグメント12、第4セグメント14〜第8セグメント18)により形成される部分配光パターン(第1部分配光パターンP1、第2部分配光パターンP2、第4部分配光パターンP4〜第8部分配光パターンP8)ではカバーできない部分である。
【0050】
このために、この実施形態1における車両用前照灯1は、段差面19を、抜き勾配θ1から最大勾配θ2まで連続的に変化させた自由曲面とすることにより、第3セグメント13の左側の部分S1Lを反射面として確保することができる。この結果、この実施形態1における車両用前照灯1は、第3セグメント13以外のセグメントで形成される部分配光パターンによるカバーがなくても、第3配光パターンP3の車両の外側(左側L)の部分を、さらに車両の外側(左側L)に確実に広げることができる。
【0051】
一方、最大勾配θ2の段差面19においては、半導体型光源2からの光であって、抜き勾配θ1の段差面190の第4セグメント14の右側の部分S10に入射していた光(図5中の二点鎖線矢印の光L10から図5中の実線矢印の光L1までの光)が、第3セグメント13の左側の部分S1Lに入射するので、第4セグメント14の右側の部分S10には入射しない。このために、最大勾配θ2の段差面19においては、第4セグメント14の右側の部分S10からの反射光が喪失する。これにより、図9(D)に示す第4部分配光パターンP4の右側の部分が二点鎖線に示す部分から実線に示す部分に車両の外側(左側L)に狭まる。
【0052】
この図9(D)に示す第4部分配光パターンP4の右側の部分であって、二点鎖線に示す部分から実線に示す部分に車両の外側(左側L)に狭まった部分は、第4セグメント14以外の他のセグメント(第1セグメント11、第3セグメント13、第5セグメント15〜第8セグメント18)により形成される部分配光パターン(第1部分配光パターンP1、第3部分配光パターンP3、第5部分配光パターンP5〜第8部分配光パターンP8)によってカバーすることができる部分である。
【0053】
このために、この実施形態1における車両用前照灯1は、段差面19を、抜き勾配θ1から最大勾配θ2まで連続的に変化させた自由曲面として、第3セグメント13の左側の部分S1Lを反射面として確保することができる一方、第4セグメント14の右側の部分S10の反射面が喪失したとしても、第4セグメント14以外のセグメントの反射面でカバーすることができる。すなわち、図9(C)に示す第3部分配光パターンP3の左側の部分を二点鎖線に示す部分から実線に示す部分に車両の外側(左側L)に広げることができる一方、図9(D)に示す第4部分配光パターンP4の右側の部分を二点鎖線に示す部分から実線に示す部分に車両の外側(左側L)に狭めたとしても、第4セグメント14以外の他のセグメントにより形成される部分配光パターンによってカバーすることができる。
【0054】
(請求項2にかかる発明の効果の説明)
この実施形態1における車両用前照灯1は、段差面19のうち段差が大きい箇所の勾配を大きくするので、第4セグメント14によって遮られる半導体型光源2からの光をより多く第3セグメント13に入射させることができる。これにより、左側のロービーム用配光パターンLLPの車両外側(左側L)の部分をさらに広く車両外側(左側L)に広げて、歩行者や歩道や路肩を照明してそれらの視認性をさらに確実に向上させることができ、交通安全にさらに貢献することができる。
【0055】
ここで、この実施形態1における車両用前照灯1の抜き勾配θ1の段差面19と、最大勾配θ2の段差面191と、の差異について図6、図7を参照して説明する。
【0056】
抜き勾配θ1の段差面19と最大勾配θ2の段差面191とは、第3セグメント13と第4セグメント14との間の段差であって、小さい段差19Sの箇所における段差面である。抜き勾配θ1の段差面19は、図6、図7中の実線にて示す段差面である。これに対して、最大勾配θ2の段差面191は、図6、図7中の二点鎖線にて示すように、抜き勾配θ1の段差面19より車両の外側(左側L)に凹んでいる段差面である。
【0057】
抜き勾配θ1の段差面19においては、半導体型光源2からの光が、第3セグメント13と第4セグメント14にそれぞれ入射して、その第3セグメント13と第4セグメント14においてそれぞれ反射する。このとき、半導体型光源2からの光(図7中の実線矢印の光L1から図7中の二点鎖線矢印の光L11までの光)が第4セグメント14の右側の部分S1Sに入射している。
【0058】
一方、最大勾配θ2の段差面191においては、半導体型光源2からの光が、第3セグメント13と第4セグメント14にそれぞれ入射して、その第3セグメント13と第4セグメント14においてそれぞれ反射する。このとき、半導体型光源2からの光(図7中の実線矢印の光L1から図7中の二点鎖線矢印の光L11までの光)が第3セグメント13の左側の部分S11に入射している。
【0059】
この小さい段差19Sにおける最大勾配θ2の段差面191により確保される反射面S11の大きさは、前記の大きい段差19Lにおける最大勾配θ2の段差面19により確保される反射面S1Lの大きさより、小さい。また、この小さい段差19Sにおける最大勾配θ2の段差面191により喪失する反射面S1Sの大きさは、前記の大きい段差19Lにおける最大勾配θ2の段差面19により喪失する反射面S10の大きさより、小さい。
【0060】
このために、この実施形態1における車両用前照灯1は、段差面19のうち段差が大きい箇所の勾配を大きくするので、第4セグメント14によって遮られる半導体型光源2からの光をより多く第3セグメント13に入射させることができる。これにより、左側のロービーム用配光パターンLLPの車両外側(左側L)の部分をさらに広く車両外側(左側L)に広げて、歩行者や歩道や路肩を照明してそれらの視認性をさらに確実に向上させることができ、交通安全にさらに貢献することができる。
【0061】
(実施形態2の説明)
図11は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態2を示す。以下、この実施形態2における車両用前照灯について説明する。図中、図1〜図10と同符号は、同一のものを示す。
【0062】
前記の実施形態1の車両用前照灯1は、第3セグメント13と第4セグメント14の間の段差面19が、抜き勾配θ1から最大勾配θ2まで一定の割合で連続的に変化させた自由曲面からなる、ものである。この実施形態2における車両用前照灯は、第3セグメント13と第4セグメント14の間の段差面19U、19C、19Dが、抜き勾配θ1から最大勾配θ2まで任意の割合で変化させた自由曲面からなる、ものである。すなわち、リフレクタ3の上部の小さい段差19Sにおいては、抜き勾配θ1で変化させた自由曲面からなる段差面19Uとし、リフレクタ3の下部の大きい段差19Lにおいては、最大勾配θ2で変化させた自由曲面からなる段差面19Dとし、リフレクタ3の中部の段差が中位の箇所においては、抜き勾配θ1から最大勾配θ2まで変化させた自由曲面からなる段差面19Cとする。
【0063】
この実施形態2における車両用前照灯は、以上のごとき構成からなるので、前記の実施形態1の車両用前照灯1の作用効果とほぼ同様の作用効果を達成することができる。特に、この実施形態2における車両用前照灯は、第3セグメント13と第4セグメント14の間の段差面19U、19C、19Dを抜き勾配θ1から最大勾配θ2まで任意の割合で変化させることができる。この結果、最大勾配θ2の段差面19、191により得られる第3セグメント13の反射面S1L、S11の大きさと喪失する第4セグメント14の反射面S10、S1Sの大きさ、あるいは、抜き勾配θ1の段差面190、19により半導体型光源2からの光が入射する第4セグメント14の反射面S10、S1Sの大きさと半導体型光源2からの光が遮られる第3セグメント13の反射面S1L、S11の大きさ、を調整することにより、図9(C)に示す第3部分配光パターンP3の左側の部分を二点鎖線に示す部分から実線に示す部分に車両の外側(左側L)に広げる幅および光量、および、図9(D)に示す第4部分配光パターンP4の右側の部分を二点鎖線に示す部分から実線に示す部分に車両の外側(左側L)に狭める幅および光量、を任意に調整することができる。すなわち、左側のロービーム用配光パターンLLPの車両外側(左側L)の部分を車両外側(左側L)に広げる幅および光量を任意に調整することができる。
【0064】
(実施形態1、2以外の例の説明)
なお、前記の実施形態1,2においては、ロービーム用配光パターンLLP、RLPを照射する車両用前照灯1について説明するものである。ところが、この発明においては、ロービーム用配光パターンLLP、RLP以外の配光パターン、たとえば、ハイビーム用の配光パターン、高速道路用配光パターン、フォグランプ用配光パターンなどを照射する車両用前照灯にも使用することができる。
【0065】
前記の実施形態1,2においては、光源として半導体型光源2を使用するものである。ところが、この発明においては、光源として半導体型光源2以外の光源、たとえば、HIDなどの放電灯、ハロゲンランプ、白熱ランプなどの光源を使用しても良い。
【0066】
前記の実施形態1,2においては、段差面19の段差がリフレクタ3の上部から下部にかけて徐々に大きくなるものである。ところが、段差面19の段差は、形成する部分配光パターンのタイプや照射する位置などの条件によって千差万別に変化する。このために、リフレクタ3の上部における段差が大きく、リフレクタ3の下部における段差が小さい場合がある。また、リフレクタ3の上部および下部における段差が大きく(もしくは小さく)、リフレクタ3の中部における段差が小さい(もしくは大きい)場合がある。
【符号の説明】
【0067】
1 車両用前照灯
2 半導体型光源
3 リフレクタ
4 ヒートシンク部材
5 取付部材
6 保持部材
7 開口部
8 閉塞部
9 窓部
10 反射面
11 第1セグメント
12 第2セグメント
13 第3セグメント
14 第4セグメント
15 第5セグメント
16 第6セグメント
17 第7セグメント
18 第8セグメント
19 段差面
19S 小さい段差
19L 大きい段差
190 抜き勾配の段差面
191 最大勾配の段差面
20 固定凸部
F 前側
B 後側
U 上側
D 下側
L 左側
R 右側
HL−HR スクリーンの左右の水平線
VU−VD スクリーンの上下の垂直線
LLP 左側のロービーム用配光パターン
RLP 右側のロービーム用配光パターン
P1 第1部分配光パターン
P2 第2部分配光パターン
P3 第3部分配光パターン
P4 第4部分配光パターン
P5 第5部分配光パターン
P6 第6部分配光パターン
P7 第7部分配光パターン
P8 第8部分配光パターン
θ1 抜き勾配
θ2 最大勾配
S1L、S11 第3セグメントの左側の反射面
S10、S1S 第4セグメントの右側の反射面
Z−Z 基準光軸に平行な線分
【技術分野】
【0001】
この発明は、光源からの光を所定の配光パターンで反射させる反射面を有するリフレクタタイプの車両用前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用前照灯は、従来からある(たとえば、特許文献1)。以下、従来の車両用前照灯について説明する。従来の車両用前照灯は、光源と、光源からの光を所定の配光パターンで反射させる反射面を有するリフレクタと、を備え、反射面が、複数個のセグメントから構成されている。光源を点灯すると、光源からの光が反射面の複数個のセグメントにおいてそれぞれ反射されて複数個の所定の部分の配光パターンとして車両の前方に照射される。複数個の所定の部分の配光パターンが重畳(合成)されて所定の全体の配光パターンが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−277480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる車両用前照灯においては、全体の配光パターンのうち車両外側の部分(左外側の部分、右外側の部分)をさらに車両外側に広げて、歩行者や歩道や路肩を照明してそれらの視認性を向上させることが交通安全上重要である。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、全体の配光パターンのうち車両外側の部分をさらに車両外側に広げて、歩行者や歩道や路肩を照明してそれらの視認性を向上させることが重要である、という点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明(請求項1にかかる発明)は、光源と、光源からの光を所定の全体の配光パターンとして反射させる反射面を有するリフレクタと、を備え、反射面が、複数個のセグメントから構成されていて、複数個のセグメントが、全体の配光パターンのうち車両の外側の部分の配光パターンを形成する車両外側部分配光パターン形成用セグメントと、車両外側部分配光パターン形成用セグメントの車両の外側に隣接する外側隣接セグメントと、その他の複数個のセグメントと、からなり、車両外側部分配光パターン形成用セグメントと外側隣接セグメントの間には、段差面が形成されていて、段差面が、抜き勾配から抜き勾配より大きい勾配まで連続的に変化させた自由曲面からなる、ことを特徴とする。
【0007】
この発明(請求項2にかかる発明)は、段差面のうち段差が大きい箇所の勾配を大きくする、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用前照灯は、段差面が、抜き勾配から抜き勾配より大きい勾配まで連続的に変化させた自由曲面からなるので、勾配が抜き勾配より大きい段差面において、外側隣接セグメントによって遮られていた光源からの光が車両外側部分配光パターン形成用セグメントに入射することができる。これにより、全体の配光パターンのうち車両外側の部分をさらに車両外側に広げて、歩行者や歩道や路肩を照明してそれらの視認性を向上させることができ、交通安全に貢献することができる。
【0009】
この発明(請求項2にかかる発明)の車両用前照灯は、段差面のうち段差が大きい箇所の勾配を大きくするので、外側隣接セグメントによって遮られる光源からの光をより多く車両外側部分配光パターン形成用セグメントに入射させることができる。これにより、全体の配光パターンのうち車両外側の部分をさらに広く車両外側に広げて、歩行者や歩道や路肩を照明してそれらの視認性をさらに確実に向上させることができ、交通安全にさらに貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態1を示す斜視図である。
【図2】図2は、リフレクタの正面図(図1におけるII矢視図)である。
【図3】図3は、図2におけるIII−III線断面図である。
【図4】図4は、段差面の勾配を示す断面説明図(図2におけるIII−III線断面図)である。
【図5】図5は、段差面における光の損得を示す断面説明図(図2におけるIII−III線断面図)である。
【図6】図6は、図2におけるVI−VI線断面図である。
【図7】図7は、段差面における光の損得を示す断面説明図(図2におけるVI−VI線断面図)である。
【図8】図8は、全体の配光パターンを示す説明図である。
【図9】図9は、各セグメントの部分の配光パターンを示す説明図である。
【図10】図10は、各セグメントの部分の配光パターンを示す説明図である。
【図11】図11は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態2を示すリフレクタの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態(実施例)のうちの2例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。図面において、符号「F」は、車両の前方側(車両の前進方向側)を示す。符号「B」は、車両の後方側を示す。符号「U」は、ドライバー側から前方側を見た上方側を示す。符号「D」は、ドライバー側から前方側を見た下方側を示す。符号「L」は、ドライバー側から前方側を見た場合の左側を示す。符号「R」は、ドライバー側から前方側を見た場合の右側を示す。前記の前、後、上、下、左、右は、この発明にかかる車両用灯具を車両に装備した際の前、後、上、下、左、右である。また、符号「VU−VD」は、スクリーンの上下の垂直線を示す。符号「HL−HR」は、スクリーンの左右の水平線を示す。
【0012】
(実施形態1の構成の説明)
図1〜図10は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態1を示す。以下、この実施形態1における車両用前照灯の構成について説明する。図中、符号1は、この実施形態1における車両用前照灯(たとえば、ヘッドランプやフォグランプなど)である。なお、この実施形態1の車両用前照灯1は、自動車の前部の左側Lに装備されるものであって、自動車の前部の右側Rに装備される車両用前照灯は、この実施形態1の車両用前照灯1とほぼ左右が逆となる。このために、自動車の前部の右側Rに装備される車両用前照灯の構成の説明を省略する。この実施形態1の車両用前照灯1において、車両の外側は左側Lとなり、車両の内側は右側Rとなる。一方、自動車の前部の右側Rに装備される車両用前照灯において、車両の外側は右側Rとなり、車両の内側は左側Lとなる。
【0013】
前記車両用前照灯1は、ランプハウジング(図示せず)と、ランプレンズ(図示せず)と、光源としての半導体型光源2と、リフレクタ3と、ヒートシンク部材4と、を備えるものである。
【0014】
前記ランプハウジングおよび前記ランプレンズは、灯室(図示せず)を画成する。前記灯室内には、前記半導体型光源2および前記リフレクタ3および前記ヒートシンク部材4が配置されている。
【0015】
前記半導体型光源2は、この例では、たとえば、LED、EL(有機EL)などの自発光半導体型光源、すなわち、半導体型光源(この実施例ではLED)を使用する。前記半導体型光源2は、基板(図示せず)と、前記基板に適宜に配置されて設けられている1個もしくは複数個の発光チップ(図示せず)と、前記発光チップを封止する封止樹脂部材(図示せず)と、から構成されている。前記半導体型光源2は、取付部材5および保持部材6を介して前記ヒートシンク部材4に取り付けられている。なお、前記発光チップは、平面から見て、長方形状をなすが、正方形や円形などであっても良い。
【0016】
前記リフレクタ3は、光不透過性の部材、この例では、樹脂部材から構成されている。前記リフレクタ3は、一方側(前方側)7が開口し、かつ、他方側(後方側、上方側、下方側、左方側、右方側)8が閉塞した中空形状をなす。前記閉塞部8の後方側、上方側、左方側、右方側は、回転放物線形状をほぼ2分の1とした湾曲板形状をなす。前記閉塞部8の下方側は、ほぼ水平板形状をなし、前記閉塞部8の奥側(後方側)から前記開口部7側(前方側)にかけて上方側から下方側に傾斜している。前記閉塞部8の下方側の水平板部の傾斜は、前記リフレクタ3の成形金型(図示せず)の抜きのために設けられていて、この例では、約5°である。
【0017】
前記リフレクタ3の前記閉塞部8の水平板部の中央部から後方部にかけての箇所、および、前記リフレクタ3の前記閉塞部8の湾曲板部の中央部の若干の箇所には、窓部9が設けられている。前記窓部9には、前記半導体型光源2および前記取付部材5および前記保持部材6の一部が位置する。前記リフレクタ3の前記閉塞部8の湾曲板部の下部後側には、固定凸部20が一体に設けられている。前記固定凸部20は、前記ヒートシンク部材4にスクリューにより固定されている。
【0018】
前記リフレクタ3の前記閉塞部8の内面(特に、湾曲板部の内面)には、反射面10が形成されている。すなわち、前記リフレクタ3の前記開口部7を上側に向けた状態で、前記リフレクタ3の前記閉塞部8の内面に蒸着を施して、前記反射面10を形成する。
【0019】
前記反射面10は、自由曲面(NURBS曲面)の反射面であって、前記半導体型光源2からの光を反射させて図8(A)に示す左側の全体の配光パターンLLPすなわち左側のロービーム用配光パターン(すれ違い用配光パターン)LLPとして車両の前方に照射する。なお、自動車の前部の右側Rに装備される車両用前照灯は、図8(B)に示す右側の全体の配光パターンRLPすなわち右側のロービーム用配光パターン(すれ違い用配光パターン)RLPとして車両の前方に照射する。前記左側のロービーム用配光パターンLLPと前記右側のロービーム用配光パターンRLPとが重畳(合成)されて、所定のロービーム用配光パターン(図示せず)が形成される。
【0020】
前記反射面10は、複数個、この例では、垂直方向(縦方向)に分割された8個のセグメント11、12、13、14,15、16、17、18から構成されている。1番左側の第1セグメント11は、図9(A)に示すように、第1部分配光パターンP1を形成する。前記第1部分配光パターンP1は、前記左側のロービーム用配光パターンLLPの右側のカットオフラインに沿った部分の集光タイプのパターンである。
【0021】
左側から2番目の第2セグメント12は、図9(B)に示すように、第2部分配光パターンP2を形成する。前記第2部分配光パターンP2は、前記左側のロービーム用配光パターンLLPの左側のカットオフラインに沿った部分の集光タイプのパターンである。
【0022】
左側から3番目の第3セグメント13は、図9(C)に示すように、第3部分配光パターンP3を形成する。前記第3部分配光パターンP3は、前記左側のロービーム用配光パターンLLPの車両の外側(左側L)の部分の拡散タイプのパターンである。前記第3セグメント13は、前記左側のロービーム用配光パターンLLPの車両の外側(左側L)の部分の拡散タイプの配光パターンP3を形成する車両外側部分配光パターン形成用セグメントである。
【0023】
左側から4番目の第4セグメント14は、図9(D)に示すように、第4部分配光パターンP4を形成する。前記第4部分配光パターンP4は、前記左側のロービーム用配光パターンLLPの中央の部分の集光タイプのパターン(いわゆる、ホットゾーン、高光度部分)である。前記第4セグメント14は、前記第3セグメント13の車両の外側(左側L)に隣接する外側隣接セグメントである。
【0024】
左側から5番目の第5セグメント15は、図10(A)に示すように、第5部分配光パターンP5を形成する。前記第5部分配光パターンP5は、前記左側のロービーム用配光パターンLLPの中央の部分のやや集光タイプのパターンである。
【0025】
左側から6番目の第6セグメント16は、図10(B)に示すように、第6部分配光パターンP6を形成する。前記第6部分配光パターンP6は、前記左側のロービーム用配光パターンLLPの車両の内側(右側R)の部分の拡散タイプのパターンである。
【0026】
左側から7番目の第7セグメント17は、図10(C)に示すように、第7部分配光パターンP7を形成する。前記第7部分配光パターンP7は、前記左側のロービーム用配光パターンLLPの中央の部分の拡散タイプのパターンである。
【0027】
左側から8番目(1番右側)の第8セグメント18は、図10(D)に示すように、第8部分配光パターンP8を形成する。前記第8部分配光パターンP8は、前記左側のロービーム用配光パターンLLPの右側のカットオフラインに沿った部分の集光タイプのパターンである。
【0028】
前記第1セグメント11、前記第2セグメント12、前記第5セグメント15、前記第6セグメント16、前記第7セグメント17、前記第8セグメント18は、前記第3セグメント13の車両外側部分配光パターン形成用セグメント、および、前記第4セグメント14の外側隣接セグメント以外の、その他の複数個のセグメントである。
【0029】
前記第4セグメント14および前記第5セグメント15は、前記半導体型光源2に最も近いので、前記半導体型光源2からの光のうち最も明るい光(高光度の光、高照度の光、高光量の光)を反射させて、前記左側のロービーム用配光パターンLLPの中央の部分の遠方を照明して遠方の視認性を向上させる集光タイプの前記第4部分配光パターンP4および前記第5部分配光パターンP5を形成するのに適している。
【0030】
前記第4セグメント14により形成される前記第4部分配光パターンP4は、その他のセグメント(前記第1セグメント11〜前記第3セグメント13、および、前記第5セグメント15〜前記第8セグメント18)により形成される部分配光パターン(前記第1部分配光パターンP1〜前記第3部分配光パターンP3、および、前記第5部分配光パターンP5〜前記第8部分配光パターンP8)によりカバーすること(補うこと)ができる。
【0031】
前記第3セグメント13および前記第6セグメント16は、前記第4セグメント14および前記第5セグメント15の次に前記半導体型光源2に近いので、前記半導体型光源2からの光のうち次ぎに明るい光を反射させて、前記左側のロービーム用配光パターンLLPの左右両側の広い部分を照明して左右両側の視認性を向上させる拡散タイプの前記第3部分配光パターンP3および前記第6部分配光パターンP6を形成するのに適している。
【0032】
前記第3セグメント13により形成される前記第3部分配光パターンP3のうち、車両の外側(左側L)の端の部分(図9(C)中に示す二点鎖線から左側の実線までの部分)は、その他のセグメント(前記第1セグメント11、前記第2セグメント12、および、前記第4セグメント14〜前記第8セグメント18)により形成される部分配光パターン(前記第1部分配光パターンP1、前記第2部分配光パターンP2、および、前記第4部分配光パターンP4〜前記第8部分配光パターンP8)によりカバーすること(補うこと)ができない。
【0033】
自由曲面からなる前記反射面10の8個の前記セグメント11〜18は、前記の通り、タイプが異なる前記部分配光パターンP1〜P8をそれぞれ形成して、かつ、前記左側のロービーム用配光パターンLLPのうち異なる所定の位置にそれぞれ照射するものである。このために、隣り合う前記各セグメントと前記各セグメントとの間の境界線においては、段差面が形成される。なお、形成する部分配光パターンのタイプや照射する位置などの条件によっては、前記段差面が形成されない場合がある。
【0034】
前記車両外側部分配光パターン形成用セグメントとしての前記第3セグメント13と、前記外側隣接セグメントとしての前記第4セグメント14の間には、段差面19が形成されている。なお、その他の前記各セグメントと前記各セグメントの間の段差面の図示は、省略する。
【0035】
前記第3セグメント13と前記第4セグメント14の間の前記段差面19は、図2〜図7に示すように、抜き勾配θ1(たとえば、約15°)から前記抜き勾配θ1より大きい勾配θ2(たとえば、40°。以下、「最大勾配θ2」と称する)まで一定の割合で連続的に変化させた自由曲面からなる。ここで、勾配とは、前記反射面10の基準光軸(図示せず)に平行(もしくはほぼ平行)な線分Z−Zに対しての傾斜を言う。また、抜き勾配θ1とは、前記リフレクタ3を金型(図示せず)から取り出し易くするために、金型に設けた勾配を言う。
【0036】
前記段差面19の段差は、前記リフレクタ3の上部において小さい段差19Sであり、前記リフレクタ3の下部において大きい段差19Lである。前記段差面19の勾配は、前記リフレクタ3の上部から下部にかけて、すなわち、前記段差面19の前記小さい段差19Sから前記大きい段差19Lにかけて、前記抜き勾配θ1から前記最大勾配θ2まで、一定の割合で徐々に大きくなる。この結果、前記段差面19のうち前記大きい段差19Lの箇所における勾配は、大きい。一方、前記段差面19のうち前記小さい段差19Sの箇所における勾配は、小さい。
【0037】
前記ヒートシンク部材4は、放熱性が高い部材、たとえば、アルミダイカストや樹脂から構成されている。前記ヒートシンク部材4は、前方側の垂直板部と、後方側のフィン部と、から構成されている。前記ヒートシンク部材4の前記垂直板部には、前記リフレクタ3の前記固定凸部20がスクリューにより固定されている。なお、前記ヒートシンク部材4と前記保持部材6とを一体に構成しても良い。また、前記保持部材65にフィン部を一体に設けても良い。
【0038】
(実施形態1の作用の説明)
この実施形態1における車両用前照灯1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0039】
半導体型光源2を点灯する。すると、半導体型光源2から放射される光L1は、リフレクタ3の反射面10の各セグメント11〜18に入射してその各セグメント11〜18において反射する。この反射光L2は、所定の各部分の配光パターンP1〜P8として、車両の前部の左側に搭載されているこの実施形態1における車両用前照灯1から車両の前方に照射される。所定の各部分の配光パターンP1〜P8が重畳(合成)されて左側のロービーム用配光パターンLLPが形成される。
【0040】
一方、車両の前部の右側に搭載されている車両用前照灯から右側のロービーム用配光パターンRLPが車両の前方に照射される。この右側のロービーム用配光パターンRLPと前記の左側のロービーム用配光パターンLLPとが重畳(合成)されて所定のロービーム用配光パターンが形成される。
【0041】
(実施形態1の効果の説明)
この実施形態1における車両用前照灯1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0042】
(請求項1にかかる発明の効果の説明)
この実施形態1における車両用前照灯1は、段差面19が、抜き勾配θ1から抜き勾配θ1より大きい勾配θ2(最大勾配θ2)まで連続的に変化させた自由曲面からなる。この結果、図4、図5に示すように、勾配が抜き勾配θ1より大きい段差面19において、第4セグメント14によって遮られていた半導体型光源2からの光L1が第3セグメント13に入射することができる。すなわち、最大勾配θ2の段差面19において、抜き勾配θ1の段差面190の第4セグメント14の右側の部分(すなわち、第3セグメント13と隣接する部分であって、二点鎖線にて示す部分)S10によって遮られていた半導体型光源2からの光L1が第3セグメント13の左側の部分(すなわち、第4セグメント14と隣接する部分であって、実線にて示す部分)S1Lに入射することができる。これにより、全体の配光パターンのうち車両外側の部分が、すなわち、左側のロービーム用配光パターンLLPの左側の部分が、さらに車両外側(左側L)に広げられて、歩行者や歩道や路肩を照明してそれらの視認性を向上させることができ、交通安全に貢献することができる。
【0043】
一方、車両の前部の右側に搭載されている車両用前照灯から右側のロービーム用配光パターンRLPの右側の部分を、さらに車両外側(右側R)に広げることができる。この右側のロービーム用配光パターンRLPと前記の左側のロービーム用配光パターンLLPとが重畳(合成)されることにより、左右両側の部分左右両側に広がった所定のロービーム用配光パターンが形成される。この結果、左右両側の歩行者や歩道や路肩を照明してそれらの視認性を向上させることができ、交通安全に貢献することができる。
【0044】
ここで、この実施形態1における車両用前照灯1の最大勾配θ2の段差面19と、抜き勾配θ1の段差面190と、の差異について図4、図5を参照して説明する。
【0045】
最大勾配θ2の段差面19と抜き勾配θ1の段差面190とは、第3セグメント13と第4セグメント14との間の段差であって、大きい段差19Lの箇所における段差面である。最大勾配θ2の段差面19は、図4、図5中の実線にて示す段差面である。これに対して、抜き勾配θ1の段差面190は、図4、図5中の二点鎖線にて示すように、最大勾配θ2の段差面19より車両の内側(右側R)に突出している段差面である。
【0046】
最大勾配θ2の段差面19において、半導体型光源2からの光は、第3セグメント13と第4セグメント14にそれぞれ入射して、その第3セグメント13と第4セグメント14においてそれぞれ反射する。第3セグメント13からの反射光は、図9(C)の実線にて示す第3部分配光パターンP3として車両の前方に照射される。第4セグメント14からの反射光は、図9(D)の実線にて示す第4部分配光パターンP4として車両の前方に照射される。
【0047】
これに対して、抜き勾配θ1の段差面190において、半導体型光源2からの光は、第3セグメント13と第4セグメント14にそれぞれ入射して、その第3セグメント13と第4セグメント14においてそれぞれ反射する。第3セグメント13からの反射光は、図9(C)の右側および上側および下側の実線と左側の二点鎖線とで示す第3部分配光パターンP3として車両の前方に照射される。第4セグメント14からの反射光は、図9(D)の左側および上側および下側の実線と右側の二点鎖線で示す第4部分配光パターンP4として車両の前方に照射される。
【0048】
このように、最大勾配θ2の段差面19においては、半導体型光源2からの光であって、抜き勾配θ1の段差面190の第4セグメント14の右側の部分S10に入射していてその部分S10によって遮られていた光(図5中の二点鎖線矢印の光L10から図5中の実線矢印の光L1までの光)を、第3セグメント13の左側の部分S1Lに入射させることができる。このために、最大勾配θ2の段差面19においては、第3セグメント13の左側の部分S1Lからの反射光により、図9(C)に示す第3部分配光パターンP3の左側の部分が二点鎖線に示す部分から実線に示す部分に車両の外側(左側L)に広がる。
【0049】
この図9(C)に示す第3部分配光パターンP3の左側の部分であって、二点鎖線に示す部分から実線に示す部分に車両の外側(左側L)に広がった部分は、第3セグメント13により形成される第3部分配光パターンP3のみによってカバーされるものである。すなわち、前記の部分は、第3セグメント13以外のセグメント(第1セグメント11、第2セグメント12、第4セグメント14〜第8セグメント18)により形成される部分配光パターン(第1部分配光パターンP1、第2部分配光パターンP2、第4部分配光パターンP4〜第8部分配光パターンP8)ではカバーできない部分である。
【0050】
このために、この実施形態1における車両用前照灯1は、段差面19を、抜き勾配θ1から最大勾配θ2まで連続的に変化させた自由曲面とすることにより、第3セグメント13の左側の部分S1Lを反射面として確保することができる。この結果、この実施形態1における車両用前照灯1は、第3セグメント13以外のセグメントで形成される部分配光パターンによるカバーがなくても、第3配光パターンP3の車両の外側(左側L)の部分を、さらに車両の外側(左側L)に確実に広げることができる。
【0051】
一方、最大勾配θ2の段差面19においては、半導体型光源2からの光であって、抜き勾配θ1の段差面190の第4セグメント14の右側の部分S10に入射していた光(図5中の二点鎖線矢印の光L10から図5中の実線矢印の光L1までの光)が、第3セグメント13の左側の部分S1Lに入射するので、第4セグメント14の右側の部分S10には入射しない。このために、最大勾配θ2の段差面19においては、第4セグメント14の右側の部分S10からの反射光が喪失する。これにより、図9(D)に示す第4部分配光パターンP4の右側の部分が二点鎖線に示す部分から実線に示す部分に車両の外側(左側L)に狭まる。
【0052】
この図9(D)に示す第4部分配光パターンP4の右側の部分であって、二点鎖線に示す部分から実線に示す部分に車両の外側(左側L)に狭まった部分は、第4セグメント14以外の他のセグメント(第1セグメント11、第3セグメント13、第5セグメント15〜第8セグメント18)により形成される部分配光パターン(第1部分配光パターンP1、第3部分配光パターンP3、第5部分配光パターンP5〜第8部分配光パターンP8)によってカバーすることができる部分である。
【0053】
このために、この実施形態1における車両用前照灯1は、段差面19を、抜き勾配θ1から最大勾配θ2まで連続的に変化させた自由曲面として、第3セグメント13の左側の部分S1Lを反射面として確保することができる一方、第4セグメント14の右側の部分S10の反射面が喪失したとしても、第4セグメント14以外のセグメントの反射面でカバーすることができる。すなわち、図9(C)に示す第3部分配光パターンP3の左側の部分を二点鎖線に示す部分から実線に示す部分に車両の外側(左側L)に広げることができる一方、図9(D)に示す第4部分配光パターンP4の右側の部分を二点鎖線に示す部分から実線に示す部分に車両の外側(左側L)に狭めたとしても、第4セグメント14以外の他のセグメントにより形成される部分配光パターンによってカバーすることができる。
【0054】
(請求項2にかかる発明の効果の説明)
この実施形態1における車両用前照灯1は、段差面19のうち段差が大きい箇所の勾配を大きくするので、第4セグメント14によって遮られる半導体型光源2からの光をより多く第3セグメント13に入射させることができる。これにより、左側のロービーム用配光パターンLLPの車両外側(左側L)の部分をさらに広く車両外側(左側L)に広げて、歩行者や歩道や路肩を照明してそれらの視認性をさらに確実に向上させることができ、交通安全にさらに貢献することができる。
【0055】
ここで、この実施形態1における車両用前照灯1の抜き勾配θ1の段差面19と、最大勾配θ2の段差面191と、の差異について図6、図7を参照して説明する。
【0056】
抜き勾配θ1の段差面19と最大勾配θ2の段差面191とは、第3セグメント13と第4セグメント14との間の段差であって、小さい段差19Sの箇所における段差面である。抜き勾配θ1の段差面19は、図6、図7中の実線にて示す段差面である。これに対して、最大勾配θ2の段差面191は、図6、図7中の二点鎖線にて示すように、抜き勾配θ1の段差面19より車両の外側(左側L)に凹んでいる段差面である。
【0057】
抜き勾配θ1の段差面19においては、半導体型光源2からの光が、第3セグメント13と第4セグメント14にそれぞれ入射して、その第3セグメント13と第4セグメント14においてそれぞれ反射する。このとき、半導体型光源2からの光(図7中の実線矢印の光L1から図7中の二点鎖線矢印の光L11までの光)が第4セグメント14の右側の部分S1Sに入射している。
【0058】
一方、最大勾配θ2の段差面191においては、半導体型光源2からの光が、第3セグメント13と第4セグメント14にそれぞれ入射して、その第3セグメント13と第4セグメント14においてそれぞれ反射する。このとき、半導体型光源2からの光(図7中の実線矢印の光L1から図7中の二点鎖線矢印の光L11までの光)が第3セグメント13の左側の部分S11に入射している。
【0059】
この小さい段差19Sにおける最大勾配θ2の段差面191により確保される反射面S11の大きさは、前記の大きい段差19Lにおける最大勾配θ2の段差面19により確保される反射面S1Lの大きさより、小さい。また、この小さい段差19Sにおける最大勾配θ2の段差面191により喪失する反射面S1Sの大きさは、前記の大きい段差19Lにおける最大勾配θ2の段差面19により喪失する反射面S10の大きさより、小さい。
【0060】
このために、この実施形態1における車両用前照灯1は、段差面19のうち段差が大きい箇所の勾配を大きくするので、第4セグメント14によって遮られる半導体型光源2からの光をより多く第3セグメント13に入射させることができる。これにより、左側のロービーム用配光パターンLLPの車両外側(左側L)の部分をさらに広く車両外側(左側L)に広げて、歩行者や歩道や路肩を照明してそれらの視認性をさらに確実に向上させることができ、交通安全にさらに貢献することができる。
【0061】
(実施形態2の説明)
図11は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態2を示す。以下、この実施形態2における車両用前照灯について説明する。図中、図1〜図10と同符号は、同一のものを示す。
【0062】
前記の実施形態1の車両用前照灯1は、第3セグメント13と第4セグメント14の間の段差面19が、抜き勾配θ1から最大勾配θ2まで一定の割合で連続的に変化させた自由曲面からなる、ものである。この実施形態2における車両用前照灯は、第3セグメント13と第4セグメント14の間の段差面19U、19C、19Dが、抜き勾配θ1から最大勾配θ2まで任意の割合で変化させた自由曲面からなる、ものである。すなわち、リフレクタ3の上部の小さい段差19Sにおいては、抜き勾配θ1で変化させた自由曲面からなる段差面19Uとし、リフレクタ3の下部の大きい段差19Lにおいては、最大勾配θ2で変化させた自由曲面からなる段差面19Dとし、リフレクタ3の中部の段差が中位の箇所においては、抜き勾配θ1から最大勾配θ2まで変化させた自由曲面からなる段差面19Cとする。
【0063】
この実施形態2における車両用前照灯は、以上のごとき構成からなるので、前記の実施形態1の車両用前照灯1の作用効果とほぼ同様の作用効果を達成することができる。特に、この実施形態2における車両用前照灯は、第3セグメント13と第4セグメント14の間の段差面19U、19C、19Dを抜き勾配θ1から最大勾配θ2まで任意の割合で変化させることができる。この結果、最大勾配θ2の段差面19、191により得られる第3セグメント13の反射面S1L、S11の大きさと喪失する第4セグメント14の反射面S10、S1Sの大きさ、あるいは、抜き勾配θ1の段差面190、19により半導体型光源2からの光が入射する第4セグメント14の反射面S10、S1Sの大きさと半導体型光源2からの光が遮られる第3セグメント13の反射面S1L、S11の大きさ、を調整することにより、図9(C)に示す第3部分配光パターンP3の左側の部分を二点鎖線に示す部分から実線に示す部分に車両の外側(左側L)に広げる幅および光量、および、図9(D)に示す第4部分配光パターンP4の右側の部分を二点鎖線に示す部分から実線に示す部分に車両の外側(左側L)に狭める幅および光量、を任意に調整することができる。すなわち、左側のロービーム用配光パターンLLPの車両外側(左側L)の部分を車両外側(左側L)に広げる幅および光量を任意に調整することができる。
【0064】
(実施形態1、2以外の例の説明)
なお、前記の実施形態1,2においては、ロービーム用配光パターンLLP、RLPを照射する車両用前照灯1について説明するものである。ところが、この発明においては、ロービーム用配光パターンLLP、RLP以外の配光パターン、たとえば、ハイビーム用の配光パターン、高速道路用配光パターン、フォグランプ用配光パターンなどを照射する車両用前照灯にも使用することができる。
【0065】
前記の実施形態1,2においては、光源として半導体型光源2を使用するものである。ところが、この発明においては、光源として半導体型光源2以外の光源、たとえば、HIDなどの放電灯、ハロゲンランプ、白熱ランプなどの光源を使用しても良い。
【0066】
前記の実施形態1,2においては、段差面19の段差がリフレクタ3の上部から下部にかけて徐々に大きくなるものである。ところが、段差面19の段差は、形成する部分配光パターンのタイプや照射する位置などの条件によって千差万別に変化する。このために、リフレクタ3の上部における段差が大きく、リフレクタ3の下部における段差が小さい場合がある。また、リフレクタ3の上部および下部における段差が大きく(もしくは小さく)、リフレクタ3の中部における段差が小さい(もしくは大きい)場合がある。
【符号の説明】
【0067】
1 車両用前照灯
2 半導体型光源
3 リフレクタ
4 ヒートシンク部材
5 取付部材
6 保持部材
7 開口部
8 閉塞部
9 窓部
10 反射面
11 第1セグメント
12 第2セグメント
13 第3セグメント
14 第4セグメント
15 第5セグメント
16 第6セグメント
17 第7セグメント
18 第8セグメント
19 段差面
19S 小さい段差
19L 大きい段差
190 抜き勾配の段差面
191 最大勾配の段差面
20 固定凸部
F 前側
B 後側
U 上側
D 下側
L 左側
R 右側
HL−HR スクリーンの左右の水平線
VU−VD スクリーンの上下の垂直線
LLP 左側のロービーム用配光パターン
RLP 右側のロービーム用配光パターン
P1 第1部分配光パターン
P2 第2部分配光パターン
P3 第3部分配光パターン
P4 第4部分配光パターン
P5 第5部分配光パターン
P6 第6部分配光パターン
P7 第7部分配光パターン
P8 第8部分配光パターン
θ1 抜き勾配
θ2 最大勾配
S1L、S11 第3セグメントの左側の反射面
S10、S1S 第4セグメントの右側の反射面
Z−Z 基準光軸に平行な線分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源からの光を所定の全体の配光パターンとして反射させる反射面を有するリフレクタと、
を備え、
前記反射面は、複数個のセグメントから構成されていて、
複数個の前記セグメントは、前記全体の配光パターンのうち車両の外側の部分の配光パターンを形成する車両外側部分配光パターン形成用セグメントと、前記車両外側部分配光パターン形成用セグメントの車両の外側に隣接する外側隣接セグメントと、その他の複数個のセグメントと、からなり、
前記車両外側部分配光パターン形成用セグメントと前記外側隣接セグメントの間には、段差面が形成されていて、
前記段差面は、抜き勾配から前記抜き勾配より大きい勾配まで連続的に変化させた自由曲面からなる、
ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記段差面のうち段差が大きい箇所の勾配を大きくする、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項1】
光源と、
前記光源からの光を所定の全体の配光パターンとして反射させる反射面を有するリフレクタと、
を備え、
前記反射面は、複数個のセグメントから構成されていて、
複数個の前記セグメントは、前記全体の配光パターンのうち車両の外側の部分の配光パターンを形成する車両外側部分配光パターン形成用セグメントと、前記車両外側部分配光パターン形成用セグメントの車両の外側に隣接する外側隣接セグメントと、その他の複数個のセグメントと、からなり、
前記車両外側部分配光パターン形成用セグメントと前記外側隣接セグメントの間には、段差面が形成されていて、
前記段差面は、抜き勾配から前記抜き勾配より大きい勾配まで連続的に変化させた自由曲面からなる、
ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記段差面のうち段差が大きい箇所の勾配を大きくする、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−93157(P2013−93157A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233746(P2011−233746)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】
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