説明

車両用動力伝達装置の噛合伝達誤差測定装置

【課題】車両用動力伝達装置の実動温度における噛合伝達誤差を高い精度で測定することができる車両用動力伝達装置の噛合伝達誤差測定装置を提供する。
【解決手段】噛合伝達誤差測定装置10によれば、恒温装置50により、噛合伝達誤差の測定中にトランスアクスル12が加温されてそのトランスアクスル12が予め定められた測定温度に維持されるので、その測定温度をトランスアクスル12の実働温度に設定することにより、トランスアクスル12の実動温度における噛合伝達誤差を高い精度で測定することができ、トランスアクスル12の噛合伝達誤差を正確に評価することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用動力伝達装置の噛合伝達誤差測定装置に関し、特に、車両用動力伝達装置の実動温度における噛合伝達誤差を高い精度で測定できる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
動力伝達のために互いに噛み合って回転する一対の歯車を含む車両用動力伝達装置では、歯面の形状誤差や歯のたわみなどによって噛合伝達誤差を生じ、動力伝達性能に影響を与えたり振動が発生したりする。かかる噛合伝達誤差を検出するために、互いに噛み合う一対の第1歯車および第2歯車に所定の噛合荷重を付与した状態で回転させ、それら第1歯車および第2歯車の回転角をそれぞれロータリエンコーダによって測定することにより、その回転角のずれを検出する車両用動力伝達装置の噛合伝達誤差測定装置が提案されている。
【0003】
たとえば、特許文献1および特許文献2に開示されている噛合伝達誤差測定装置においては、車両の終減速機において、そのドライブピニオンに連結された入力側モータによって速度制御した回転を与え、従動側であるサイドギヤに連結された出力側モータによってトルク制御した負荷トルクを与えながらロータリエンコーダで入力側および出力側それぞれの回転角を検出し相互の位相差を演算することで噛合伝達誤差を測定している。この噛合伝達誤差の測定では、一般に、測定機振動の影響を回避するため、極低速回転下で実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−145197号公報
【特許文献2】特開平06−074868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の噛合伝達誤差測定装置は、常温下において車両用動力伝達装置を構成する歯車機構の噛合伝達誤差を測定していたが、たとえば80℃程度の実働温度を大きく下まわる温度であって、しかもその温度がばらつく温度環境での測定であるため、歯車機構の構成部品が熱膨張した実動状態における歯車のミスアライメントを考慮できていなかった。このため、噛合伝達誤差の測定値の精度が得られず、伝達誤差の評価が正確とは言い難いものであった。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、車両用動力伝達装置の実動温度における噛合伝達誤差を高い精度で測定することができる車両用動力伝達装置の噛合伝達誤差測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための、本発明の要旨とするところは、(a) 車両に搭載されてその車両の駆動力源から入力された回転を歯車機構を介して出力する動力伝達装置の噛合伝達誤差を、その動力伝達装置の入力部材の回転と出力部材の回転とに基づいて測定する車両用動力伝達装置の噛合伝達誤差測定装置であって、(b) 前記噛合伝達誤差の測定中に、前記動力伝達装置を加温してその動力伝達装置を予め定められた測定温度に維持する恒温装置を含むことにある。
【発明の効果】
【0008】
このように構成された本発明の噛合伝達誤差測定装置によれば、恒温装置により、噛合伝達誤差の測定中に車両用動力伝達装置が加温されてその動力伝達装置が予め定められた測定温度に維持されるので、その測定温度を車両用動力伝達装置の実働温度とすることにより、車両用動力伝達装置の実動温度における噛合伝達誤差を高い精度で測定することができ、車両用動力伝達装置の噛合伝達誤差を正確に評価することが可能となる。
【0009】
ここで、前記恒温装置は、(c) 前記車両用動力伝達装置内の潤滑油を外部へ取り出して再びその車両用動力伝達装置内へ戻す外部循環路と、(d) その外部循環路に介挿されてその外部循環路内の潤滑油を一方向へ送り出すオイルポンプと、(e) その外部循環路に設けられ、その外部循環路を流通する潤滑油を空気冷却するラジエータと、(f) そのラジエータと直列に設けられ、前記潤滑油が予め定められた温度を超えると開いてそのラジエータを流通する潤滑油量を増加させる温度開閉弁と、(g) 前記ラジエータおよび温度開閉弁と並列に設けられ、前記潤滑油が予め定められた温度を下回るとその潤滑油を加熱する電気ヒータとを、含むことを特徴とする。このようにすれば、車両用動力伝達装置内の潤滑油が予め定められた測定温度に維持されることから、車両用動力伝達装置内の歯車機構全体の温度が均一となるので、噛合伝達誤差を高い精度で測定することができ、車両用動力伝達装置の噛合伝達誤差を正確に評価することが可能となる。
【0010】
また、好適には、噛合伝達誤差測定装置は、(h) 測定用駆動源の回転を前記動力伝達装置の入力部材に伝達する回転入力軸と、(i) その動力伝達装置の出力部材に連結された回転出力軸と、その回転入力軸の回転を検出する入力側ロータリエンコーダと、(j)その回転出力軸の回転を検出する出力側ロータリエンコーダとを、含み、(k)前記入力側ロータリエンコーダは断熱材を介して前記入力軸に連結され、前記出力側ロータリエンコーダは断熱材を介して前記出力軸に連結されていることを特徴とする。このようにすれば、高い精度で測定するための精密な機器であるロータリエンコーダが車両用動力伝達装置から断熱されるので、噛合伝達誤差を高い精度で測定することができ、車両用動力伝達装置の噛合伝達誤差を正確に評価することが可能となる。
【0011】
また、好適には、(l) 前記入力側ロータリエンコーダのロータは、前記回転入力軸に同心に連結された、その回転入力軸よりも低熱膨張率を有するセラミックス製のアダプタを介してその回転入力軸に連結され、(m) 前記出力側ロータリエンコーダのロータは、前記回転出力軸に同心に連結された、その回転出力軸よりも低熱膨張率を有するセラミックス製のアダプタを介してその回転出力軸に連結されていることを特徴とする。このようにすれば、高い精度で測定するための精密な機器であるロータリエンコーダが車両用動力伝達装置から断熱されるので、噛合伝達誤差を高い精度で測定することができ、車両用動力伝達装置の噛合伝達誤差を正確に評価することが可能となる。
【0012】
また、好適には、(n) 前記入力側ロータリエンコーダのロータは、前記回転入力軸に同心に連結されたアダプタおよび断熱板材を介してその回転入力軸に連結され、(o) 前記出力側ロータリエンコーダのロータは、前記回転出力軸に同心に連結されたアダプタおよび断熱板材を介してその回転出力軸に連結されていることを特徴とする。このようにすれば、高い精度で測定するための精密な機器であるロータリエンコーダが車両用動力伝達装置から断熱されるので、噛合伝達誤差を高い精度で測定することができ、車両用動力伝達装置の噛合伝達誤差を正確に評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明が適用された噛合伝達誤差測定装置の構成を説明する概略図である。
【図2】図1の恒温装置の構成を説明する概略図である。
【図3】図1のロータリエンコーダの取付け構造を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明が適用された、車両用動力伝達装置の噛合伝達誤差測定装置10の構成を説明する概略図である。図1の噛合伝達誤差測定装置10には、車両用動力伝達装置としてトランスアクスル12が噛合伝達誤差の測定のために固定されている。このトランスアクスル12内には、歯車機構が収容されている。たとえば、トランスアクスル12内には、複数組の遊星歯車装置から構成され、複数の摩擦係合装置がそれら遊星歯車装置の回転要素のいずれかを相互に或いはケースに連結することで複数の変速段を択一的に達成させる遊星歯車式自動変速機、互いに平行な軸にそれぞれ設けられた変速比が相違する複数対の常時噛合歯車による動力伝達が、同期噛合装置によって択一的に選択される平行軸式変速機、或いは、有効径が可変の一対の可変プーリに伝動ベルトが捲き掛けられたベルト式無段変速機のいずれかから構成された変速機14と、その変速機14の出力トルクを左右一対の駆動輪へ伝達するための差動歯車装置( 終減速機) 16とが収容されている。
【0016】
噛合伝達誤差測定装置10は、トランスアクスル12の入力部材を回転させるための測定用駆動源として機能する入力側電動機20および入力側減速機22と、トランスアクスル12の一対の出力部材に回転負荷すなわち負荷トルクを付与するための第1出力側電動機( 発電機)24および第1出力側減速機26、第2出力側電動機( 発電機)28および第2出力側減速機30とを備えている。
【0017】
上記トランスアクスル12の入力部材すなわち変速機14の入力軸( インプットシャフト)と入力側減速機22との間は、ベルト式伝動機31、入力側トルクメータ32および入力側ロータリエンコーダ34を介して、トーションバー( 捩ればね) としても機能するように比較的細い鋼ロッドから構成された回転入力軸36により連結されている。回転入力軸36は、噛合伝達誤差の測定時に、測定用駆動源として機能する入力側電動機20および入力側減速機22からの回転をトランスアクスル12の入力部材に入力させるためのものである。また、上記トランスアクスル12の出力部材すなわち差動歯車装置16の一対のサイドギヤの一方と第1出力側減速機26との間は、第1出力側トルクメータ38および第1出力側ロータリエンコーダ40を介して、トーションバーとしても機能するように比較的細い鋼ロッドから構成された第1回転出力軸42により連結され、差動歯車装置16の一対のサイドギヤの他方と第2出力側減速機30との間は、第2出力側トルクメータ44および第2出力側ロータリエンコーダ46を介して、トーションバーとしても機能するように比較的細い鋼ロッドから構成された第2回転出力軸48により連結されている。
【0018】
噛合伝達誤差測定装置10は、噛合伝達誤差の測定中にトランスアクスル12を加温してそのトランスアクスル12を予め定められた測定温度に維持するための恒温装置50を備えている。図2は、恒温装置50の一例を示している。図2において、恒温装置50は、トランスアクスル12内の潤滑油を外部へ取り出して再びそのトランスアクスル12内へ戻す外部循環路52と、その外部循環路52に介挿されてその外部循環路52内の潤滑油を一方向へ送り出すオイルポンプ54と、その外部循環路52に設けられ、その外部循環路52を流通する潤滑油を空気冷却するラジエータ56と、そのラジエータ56と直列に設けられ、ラジエータ56および外部循環路52内の潤滑油が予め定められた目標温度を超えると開いてそのラジエータ56を流通する潤滑油量を増加させる流量制御弁である温度開閉弁( サーモスタット) 58と、ラジエータ56および温度開閉弁58と並列に設けられ、上記潤滑油が予め定められた温度を下回るとその潤滑油を加熱するための電気ヒータ60と、外部循環路52に設けられた温度センサ62からの潤滑油温度が予め設定された目標温度となるように電気ヒータ60を制御する温度制御装置64とを、備えている。これにより、外部循環路52内の潤滑油温度が上記目標温度を超えようとするとラジエータ56により冷却され、外部循環路52内の潤滑油温度が上記目標温度を下回ろうとすると電気ヒータ60により加熱されることにより、トランスアクスル12内および外部循環路52内の潤滑油が上記目標温度付近に一定に維持される。この目標温度は、噛合伝達誤差の測定中では測定温度となる。この測定温度は、たとえば80℃程度のトランスアクスル12の実動温度に設定される。
【0019】
入力側ロータリエンコーダ34、第1出力側ロータリエンコーダ40、第2出力側ロータリエンコーダ46は、同様に高い分解能を有する精密機器から構成されているため、その測定精度を維持するためには、たとえば50℃以下でしか用いることはできないが、軸のねじれの影響を少なくするためにトランスアクスル12に接近した位置に設けられる。そして、それら入力側ロータリエンコーダ34、第1出力側ロータリエンコーダ40、第2出力側ロータリエンコーダ46は、トランスアクスル12から熱伝導する熱が遮断されるように、同様の断熱構造により装着されている。たとえば入力側ロータリエンコーダ34を用いて例示すると、図3に示すように、トランスアクスル12側の回転入力軸36aの軸端部には、鋼製の回転入力軸36aの1/10以下の比較的低い熱伝導率を有するジルコニアセラミックス製の連結フランジ70が固定されているとともに、入力側トルクメータ32側の回転入力軸36bの軸端部には、テーパ状外周面72tを有するボス部材72が固定されており、ボルト74によってそのボス部材72には連結フランジ70が断熱シート76を介して同心に固定されている。入力側ロータリエンコーダ34のロータ34rには、テーパ状内周面34tが形成されており、そのテーパ状内周面34tに上記テーパ状外周面72tが圧入により嵌め着けられている。上記連結フランジ70は、入力側ロータリエンコーダ34のロータ34rとトランスアクスル12側の回転入力軸36aとを連結するためのアダプタとして機能している。また、上記連結フランジ70および断熱シート76は、トランスアクスル12側の熱が入力側ロータリエンコーダ34へ伝導されることを阻止する断熱材として機能している。これにより、トランスアクスル12側の回転入力軸36aの軸端とボス部材72との間には空間が形成され、専ら熱伝導率が低い連結フランジ70を介してトランスアクスル12側の熱が入力側ロータリエンコーダ34へ伝導されるようになっている。
【0020】
上記のように構成された噛合伝達誤差測定装置10は、電子制御装置80によって制御されるようになっている。恒温装置50によってトランスアクスル12が所定の実働温度に維持されている状態で、電子制御装置80は、入力側電動機20を用いてトランスアクスル12の入力部材を所定の低速回転で回転駆動させると同時に、第1出力側電動機24および第2出力側電動機28を用いてトランスアクスル12の出力部材に対して、噛合伝達誤差測定に必要な負荷トルクを付与する。トランスアクスル12の実働トルク伝達状態の噛合伝達誤差測定を行う場合には、その実働トルクを発生させるように設定された負荷トルクを付与する。このとき、トランスアクスル12の入力部材への入力トルクは入力側トルクメータ32により検出され、トランスアクスル12の出力部材からの出力トルクは第1出力側トルクメータ38および第2出力側トルクメータ44により検出されるので、電子制御装置80は、検出されたトルクが予め定められた試験条件と一致するように、入力側電動機20、第1出力側電動機24および第2出力側電動機28を制御する。
【0021】
上記のトランスアクスル12の入力部材および出力部材の回転中において、電子制御装置80は、入力側ロータリエンコーダ34により検出された回転数( 回転角) と、第1出力側ロータリエンコーダ40および第2出力側ロータリエンコーダ46により検出された回転数( 回転角) とから、必要に応じてその時のトランスアクスル12の変速比γを用いて回転数を一致させた後で、それぞれの回転角の位相のずれから噛合伝達誤差を算出する。
【0022】
上述のように、本実施例の噛合伝達誤差測定装置10によれば、恒温装置50により、噛合伝達誤差の測定中にトランスアクスル12が加温されてそのトランスアクスル12が予め定められた測定温度に維持されるので、その測定温度をトランスアクスル12の実働温度に設定することにより、トランスアクスル12の実動温度における噛合伝達誤差を高い精度で測定することができ、トランスアクスル12の噛合伝達誤差を正確に評価することが可能となる。
【0023】
また、本実施例の噛合伝達誤差測定装置10において、恒温装置50は、トランスアクスル12内の潤滑油を外部へ取り出して再びそのトランスアクスル12内へ戻す外部循環路52と、その外部循環路52に介挿されてその外部循環路52内の潤滑油を一方向へ送り出すオイルポンプ54と、その外部循環路52に設けられ、その外部循環路52を流通する潤滑油を空気冷却するラジエータ56と、そのラジエータ56と直列に設けられ、潤滑油が予め定められた温度を超えると開いてそのラジエータ56を流通する潤滑油量を増加させる温度開閉弁58と、そのラジエータ56および温度開閉弁58と並列に設けられ、潤滑油が予め定められた温度を下回るとその潤滑油を加熱するための電気ヒータ60とを、備えることから、トランスアクスル12内の潤滑油が予め定められた測定温度に維持されるので、トランスアクスル12内の歯車機構全体の温度が均一となるので、噛合伝達誤差を高い精度で測定することができ、トランスアクスル12の噛合伝達誤差を正確に評価することが可能となる。
【0024】
また、本実施例の噛合伝達誤差測定装置10は、測定用駆動源である入力側電動機20の回転をトランスアクスル12の入力部材に伝達する回転入力軸36と、その動力伝達装置の出力部材に連結された第1回転出力軸42、第2回転出力軸48と、その回転入力軸36の回転を検出する入力側ロータリエンコーダ34と、それら第1回転出力軸42および第2回転出力軸48の回転を検出する第1出力側ロータリエンコーダ40、第2出力側ロータリエンコーダ46とを、含み、入力側ロータリエンコーダ34は断熱材( 連結フランジ70および/または断熱シート76) を介してトランスアクスル12側の回転入力軸36aに連結され、第1出力側ロータリエンコーダ40および第2出力側ロータリエンコーダ46も同様に断熱材を介して第1回転出力軸42および第2回転出力軸48に連結されていることから、高い精度で測定するための精密な機器である入力側ロータリエンコーダ34、第1出力側ロータリエンコーダ40および第2出力側ロータリエンコーダ46がトランスアクスル12の実働温度による熱から断熱されるので、噛合伝達誤差を高い精度で測定することができ、トランスアクスル12の噛合伝達誤差を正確に評価することが可能となる。
【0025】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0026】
たとえば、前述の噛合伝達誤差測定装置10の図3において、実働温度のトランスアクスル12から入力側ロータリエンコーダ34への熱伝導を抑制するために、比較的低熱伝導率のジルコニアセラミックス製の連結フランジ70および断熱シート76が用いられていたが、それらのうちの一方が断熱性を有していてもよい。たとえば、比較的低熱伝導率のジルコニアセラミックス製の連結フランジ70が用いられる場合は、断熱シート76が必ずしも用いられなくてもよいし、断熱シート76が用いられる場合は、金属製の連結フランジ70が用いられてもよい。
【0027】
また、前述の噛合伝達誤差測定装置10において、前輪駆動方式車両に用いられるトランスアクスル12の噛合伝達誤差が測定されていたが、それに替えて、後輪駆動方式車両に用いられる変速機たとえば自動変速機、手動変速機、無段変速機や、後輪用の差動歯車装置、或いは、ドライブピニオンとそれに噛み合うリングギヤから成るギヤ対が用いられてもよい。また、それら変速機に備えられる歯車機構は、平歯車、傘歯車、ハイポイドギヤなど他の態様の歯車であってもよい。
【0028】
また、前述の噛合伝達誤差測定装置10において、入力側電動機20と入力側減速機22、第1出力側電動機24と第1出力側減速機26、第2出力側電動機28と第2出力側減速機30は、相互に分離されているが、一体型になっているものであってもよいし、第1出力側電動機24および第2出力側電動機28は電磁式のブレーキであってもよい。
【0029】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0030】
10:噛合伝達誤差測定装置
12:トランスアクスル( 車両用動力伝達装置)
20:入力側電動機( 測定用駆動源)
34:入力側ロータリエンコーダ( ロータリエンコーダ)
36:回転入力軸
40:第1出力側ロータリエンコーダ( ロータリエンコーダ)
42:第1回転出力軸
46:第2出力側ロータリエンコーダ( ロータリエンコーダ)
48:第2回転出力軸
50:恒温装置
52:外部循環路
54:オイルポンプ
56:ラジエータ
58:温度開閉弁
60:電気ヒータ
70:連結フランジ( 断熱材、アダプタ)
76:断熱シート( 断熱材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されて該車両の駆動力源から入力された回転を歯車機構を介して出力する動力伝達装置の噛合伝達誤差を、該動力伝達装置の入力部材の回転と出力部材の回転とに基づいて測定する車両用動力伝達装置の噛合伝達誤差測定装置であって、
前記噛合伝達誤差の測定中に、前記動力伝達装置を加温して該動力伝達装置を予め定められた測定温度に維持する恒温装置を含むことを特徴とする車両用動力伝達装置の噛合伝達誤差測定装置。
【請求項2】
前記恒温装置は、
前記車両用動力伝達装置内の潤滑油を外部へ取り出して再び該車両用動力伝達装置内へ戻す外部循環路と、
該外部循環路に介挿されて該外部循環路内の潤滑油を一方向へ送り出すオイルポンプと、
該外部循環路に設けられ、該外部循環路を流通する潤滑油を空気冷却するラジエータと、
該ラジエータと直列に設けられ、前記潤滑油が予め定められた温度を超えると開いて該ラジエータを流通する潤滑油量を増加させる温度開閉弁と、
前記ラジエータおよび温度開閉弁と並列に設けられ、前記潤滑油が予め定められた温度を下回ると該潤滑油を加熱する電気ヒータと
を、含むことを特徴とする請求項1の噛合伝達誤差測定装置。
【請求項3】
測定用駆動源の回転を前記動力伝達装置の入力部材に伝達する回転入力軸と、該動力伝達装置の出力部材に連結された回転出力軸と、該回転入力軸の回転を検出する入力側ロータリエンコーダと、該回転出力軸の回転を検出する出力側ロータリエンコーダとを、含み、
前記入力側ロータリエンコーダは断熱材を介して前記入力軸に連結され、前記出力側ロータリエンコーダは断熱材を介して前記出力軸に連結されていることを特徴とする請求項1または2の車両用動力伝達装置の噛合伝達誤差測定装置。
【請求項4】
前記入力側ロータリエンコーダのロータは、前記回転入力軸に同心に連結された、該回転入力軸よりも低熱膨張率を有するセラミックス製のアダプタを介して該回転入力軸に連結され、
前記出力側ロータリエンコーダのロータは、前記回転出力軸に同心に連結された、該回転出力軸よりも低熱膨張率を有するセラミックス製のアダプタを介して該回転出力軸に連結されていることを特徴とする請求項3の車両用動力伝達装置の噛合伝達誤差測定装置。
【請求項5】
前記入力側ロータリエンコーダのロータは、前記回転入力軸に同心に連結されたアダプタおよび断熱板材を介して該回転入力軸に連結され、
前記出力側ロータリエンコーダのロータは、前記回転出力軸に同心に連結されたアダプタおよび断熱板材を介して該回転出力軸に連結されていることを特徴とする請求項3の車両用動力伝達装置の噛合伝達誤差測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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