説明

車両用化学蓄熱システム

【課題】長期間に亘って安定的に蓄熱でき、かつ高温が要求される加熱対象の加熱が可能となる車両用化学蓄熱システムを得る。
【解決手段】車両用化学蓄熱システム10は、エンジン12の排気熱により脱水反応を行って蓄熱し水和反応により放熱する化学蓄熱材が内蔵された反応器38と、反応器38から脱水反応に伴って放出された水蒸気を凝縮させる凝縮器52と、エンジン冷却水を熱源として水を蒸発させることで反応器38に水和反応のための水蒸気を供給するための蒸発器70と、エンジン冷却水を保温状態で貯留可能な顕熱蓄熱器142と、反応器38内の化学蓄熱材が放熱した熱をバッテリ16に導く加熱エアライン154と、車両の走行時にエンジンの排気熱を反応器38に蓄熱させ、車両停止時にエンジン冷却水を顕熱蓄熱器142に貯留させ、車両始動時にエンジン冷却水を顕熱蓄熱器142を経由して蒸発器70に供給させるECUと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行に伴い生じる熱を有効利用するための車両用化学蓄熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車において、緊急時に駆動用バッテリに充電するための補助エンジンと、暖房用に温水を加熱する燃焼器と、高温温水を利用して熱を蓄える蓄熱器とを備え、補助エンジンの始動の際に蓄熱器に蓄えた温水を補助エンジンに供給して補助エンジンを予熱する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、エンジン駆動とモータ駆動とを組み合わせたハイブリッド車において、冷却水の一部を保温保持する蓄熱器を備え、車両始動時における蓄熱器内の冷却水温がエンジン内の冷却水温よりも高い場合に蓄熱器からエンジンに冷却水を供給して暖気し、当座の間はモータ駆動によって車両を走行させる技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−11731号公報
【特許文献2】特開2002−122061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の如き従来の技術では、熱を顕熱として蓄える顕熱蓄熱器を用いているため、長期間に亘り蓄熱状態を維持することができず、また蓄えた温水又は冷却水の温度以上の温度への加熱ができない。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、長期間に亘って安定的に蓄熱でき、かつ高温が要求される加熱対象の加熱が可能となる車両用化学蓄熱システムを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明に係る車両用化学蓄熱システムは、車両に搭載された内燃機関の排気熱により脱水反応を行って蓄熱し、水和反応により放熱する化学蓄熱材が内蔵された反応器と、前記反応器から前記脱水反応に伴って放出された水蒸気を凝縮させる凝縮器と、前記内燃機関の冷却水を熱源として水を蒸発させることで、前記反応器に前記水和反応のための水蒸気を供給するための蒸発器と、前記反応器内の前記化学蓄熱材が水和反応により放熱した熱を加熱対象に伝える伝熱構造と、前記車両の走行時に前記内燃機関の排気熱を前記反応器に供給させ、車両始動時に前記冷却水を前記蒸発器に供給させる制御装置と、を備えている。
【0008】
請求項1記載の車両用化学蓄熱システムでは、車両走行時には、制御装置により内燃機関の排気熱が反応器に供給され、反応器内では排気熱の供給を受けた化学蓄熱材が脱水される。すなわち、化学蓄熱材の脱水反応に伴い排気熱が該化学蓄熱材に蓄熱される。一方、車両始動時には、制御装置により蒸発器に冷却水すなわち熱が供給される。この熱により生じた水蒸気が反応器に供給されると、反応器内では、化学蓄熱材の発熱を伴う水和反応が生じ、該化学蓄熱材が発熱した熱が伝熱構造を介して加熱対象(被加熱体)に供給される。すなわち、化学蓄熱材に蓄えられていた熱が加熱対象に放熱される。
【0009】
本車両用化学蓄熱システムでは、脱水、水和反応により蓄熱・放熱を行う化学蓄熱材を用いるので、長期間に亘り安定的に蓄熱することができる。また、冷却水の如き低温熱源を用いて生じさせた水蒸気により化学蓄熱材に水和反応を生じさせるので、低温の熱を利用して(汲み上げて)高温を得ることができる。
【0010】
このように、請求項1記載の車両用化学蓄熱システムでは、長期間に亘って安定的に蓄熱でき、かつ高温が要求される加熱対象の加熱が可能となる。
【0011】
請求項2記載の発明に係る車両用化学蓄熱システムは、請求項1記載の車両用化学蓄熱システムにおいて、前記反応器、前記凝縮器、及び前記蒸発器を連通する水蒸気系統は、予め大気圧未満に減圧されている。
【0012】
請求項2記載の車両用化学蓄熱システムでは、反応器、凝縮器、及び蒸発器における水蒸気系統(水系統)が大気圧未満に減圧されているので、低温の冷却水を用いて多量の水蒸気を得ることができる。すなわち、加熱対象の加熱が要求される低温環境下等で、十分な熱量を放熱させることが可能になる。
【0013】
請求項3記載の発明に係る車両用化学蓄熱システムは、請求項1又は請求項2記載の車両用化学蓄熱システムにおいて、前記車両には、前記冷却水を冷却するためのラジエータ、前記ラジエータに送風するためのファンが設けられており、前記制御装置は、前記冷却水の前記ラジエータ入口での温度が環境温度よりも低い場合に、前記車両始動時に前記冷却水を前記ラジエータと前記蒸発器との間で循環させると共に前記ファンを作動させるようになっている。
【0014】
請求項3記載の車両用化学蓄熱システムでは、車両の始動の際に冷却水温が環境温度よりも低い場合に、ラジエータを利用して周囲空気との熱交換によって冷却水温を高めることができる。これにより、蒸発器での発生水蒸気量を増すことができる。
【0015】
請求項4記載の発明に係る車両用化学蓄熱システムは、請求項1又は請求項2記載の車両用化学蓄熱システムにおいて、前記車両には、前記冷却水と車体との熱交換を行う熱交換部が設けられており、前記制御装置は、前記車両始動時に前記車体の温度が前記冷却水の温度よりも高くかつ環境温度よりも高い場合に、前記冷却水が前記熱交換部を経由して前記蒸発器に供給されるようになっている。
【0016】
請求項4記載の車両用化学蓄熱システムでは、車両の始動の際に冷却水温よりも車体温度が高く、かつ該車体温度が環境温度よりも高い場合に、熱交換部における車体と冷却水との熱交換によって冷却水温を高めることができる。これにより、蒸発器での発生水蒸気量を増すことができる。
【0017】
請求項5記載の発明に係る車両用化学蓄熱システムは、請求項1〜請求項4の何れか1項記載の車両用化学蓄熱システムにおいて、前記凝縮器と前記蒸発器とは、冷媒との熱交換により水蒸気を凝縮させ、熱媒との熱交換により水を蒸発させる蒸発・凝縮器として一体化されている。
【0018】
請求項5記載の車両用化学蓄熱システムでは、蒸発器と凝縮器とが一体化されているので、例えば、凝縮器で凝縮された水を蓄えると共に蒸発器に供給するための循環系統が不要になり、システム全体の構造が簡素化される。
【0019】
請求項6記載の発明に係る車両用化学蓄熱システムは、請求項1〜請求項5の何れか1項記載の車両用化学蓄熱システムにおいて、前記車両は、走行用の駆動力を発揮するモータと、前記モータに電力を供給するバッテリとを備えたハイブリッド車両であり、前記バッテリが前記加熱対象とされている。
【0020】
請求項6記載の車両用化学蓄熱システムでは、化学蓄熱材が蓄熱していた熱によって、一般に低温での出力密度が低いバッテリが車両始動時に加熱されるので、該バッテリの出力密度が増大される。これにより、本車両用化学蓄熱システムが適用された車両では、モータによる低温始動性が向上する。
【0021】
請求項7記載の発明に係る車両用化学蓄熱システムは、請求項1〜請求項5の何れか1項記載の車両用化学蓄熱システムにおいて、前記内燃機関の排気ガスと前記冷却水との熱交換を行う排気熱回収器をさらに備え、前記制御装置は、車両始動時に、前記排気熱を回収した冷却水を前記蒸発器に供給させるようになっている。
【0022】
請求項7記載の車両用化学蓄熱システムでは、排気熱回収器で排気熱を回収(顕熱蓄熱)した冷却水が、車両始動時に蒸発器に供給されるので、換言すれば、より高温の冷却水が蒸発器に供給される(場合が多くなる)ので、化学蓄熱材の発熱温度をより高めることが可能になる。これにより、より高温が要求される加熱対象の有効な加熱が可能になる。
【0023】
請求項8記載の発明に係る車両用化学蓄熱システムは、車両に搭載された内燃機関の排気熱により脱水反応を行って蓄熱し、水和反応により放熱する化学蓄熱材が内蔵された反応器と、前記反応器から前記脱水反応に伴って放出された水蒸気を凝縮させる凝縮器と、前記内燃機関の冷却水を熱源として水を蒸発させることで、前記反応器に前記水和反応のための水蒸気を供給するための蒸発器と、前記冷却水を保温状態で貯留可能に構成された顕熱蓄熱器と、前記反応器内の前記化学蓄熱材が水和反応により放熱した熱を加熱対象に伝える伝熱構造と、前記車両の車両走行時に前記内燃機関の排気熱を前記反応器に供給させ、車両停止時に前記冷却水を前記顕熱蓄熱器に貯留させ、車両始動時に前記冷却水を前記顕熱蓄熱器を経由して前記蒸発器に供給させる制御装置と、を備えている。
【0024】
請求項8記載の車両用化学蓄熱システムでは、車両走行時には、制御装置により内燃機関の排気熱が反応器に供給され、反応器内では排気熱の供給を受けた化学蓄熱材が脱水される。すなわち、化学蓄熱材の脱水反応に伴い排気熱が該化学蓄熱材に蓄熱される。また、車両停止時には、冷却水が顕熱蓄熱器に貯留され、該冷却水の有する熱が蓄熱される。
【0025】
一方、車両始動時には、制御装置により、顕熱蓄熱器を経由した冷却水、すなわち、顕熱蓄熱器で蓄えられていた熱(を含む冷却水の熱)が蒸発器に供給される。この熱により生じた水蒸気が反応器に供給されると、反応器内では、化学蓄熱材の発熱を伴う水和反応が生じ、該化学蓄熱材が発熱した熱が伝熱構造を介して加熱対象(被加熱体)に供給される。すなわち、化学蓄熱材に蓄えられていた熱が加熱対象に放熱される。
【0026】
本車両用化学蓄熱システムでは、脱水、水和反応により蓄熱・放熱を行う化学蓄熱材を用いるので、長期間に亘り安定的に蓄熱することができる。また、冷却水の如き低温熱源を用いて生じさせた水蒸気により化学蓄熱材に水和反応を生じさせるので、低温の熱を利用して(汲み上げて)高温を得ることができる。しかも、顕熱蓄熱器に蓄えた熱を蒸発器での蒸気発生に用いるため、車両始動時には、より高温の冷却水が蒸発器に供給され(る場合が多くなり)、化学蓄熱材の発熱温度をより高めることが可能になる。これにより、より高温が要求される加熱対象の有効な加熱が可能になる。
【0027】
このように、請求項8記載の車両用化学蓄熱システムでは、長期間に亘って安定的に蓄熱でき、かつ高温が要求される加熱対象の加熱が可能となる
【0028】
請求項9記載の発明に係る車両用化学蓄熱システムは、請求項8記載の車両用化学蓄熱システムにおいて、前記反応器、前記凝縮器、及び前記蒸発器を連通する水蒸気系統は、予め大気圧未満に減圧されている。
【0029】
請求項9記載の車両用化学蓄熱システムでは、反応器、凝縮器、及び蒸発器における水蒸気系統(水系統)が大気圧未満に減圧されているので、低温の冷却水を用いて多量の水蒸気を得ることができる。すなわち、加熱対象の加熱が要求される低温環境下等で、十分な熱量を放熱させることが可能になる。
【0030】
請求項10記載の発明に係る車両用化学蓄熱システムは、請求項8又は請求項9記載の車両用化学蓄熱システムにおいて、前記制御装置は、車両始動時に、前記顕熱蓄熱器を経由した前記冷却水を前記蒸発器及び前記内燃機関に供給させるようになっている。
【0031】
請求項10記載の車両用化学蓄熱システムでは、車両始動時に、顕熱蓄熱器に蓄えていた熱を蒸発器で蒸気発生、及び内燃機関の暖機に供することができる。なお、蒸発器と内燃機関とを冷却水の流れについて直列に配置し、蒸発器の下流側に内燃機関を配置することが好ましい。
【0032】
請求項11記載の発明に係る車両用化学蓄熱システムは、請求項8〜請求項10の何れか1項記載の車両用化学蓄熱システムにおいて、前記内燃機関の排気ガスと前記冷却水との熱交換を行う排気熱回収器をさらに備え、前記制御装置は、車両停止時に、前記排気熱を回収した冷却水を前記顕熱蓄熱器に貯留させるようになっている。
【0033】
請求項11記載の車両用化学蓄熱システムでは、排気熱回収器で排気熱を回収(顕熱蓄熱)した冷却水が顕熱蓄熱器に貯留され、該回収熱が顕熱蓄熱されるので、車両始動時に蒸発器に対しより高温の冷却水を供給することができる場合が多くなる。これにより、化学蓄熱材の発熱温度をより高めて、より高温が要求される加熱対象を有効に加熱することができる場合が多くなる。
【0034】
請求項12記載の発明に係る車両用化学蓄熱システムは、車両に搭載された内燃機関の排気熱により脱水反応を行って蓄熱し、水和反応により放熱する化学蓄熱材が内蔵された反応器と、前記反応器から前記脱水反応に伴って放出された水蒸気を冷媒との熱交換により凝縮させる凝縮器と、前記冷媒を熱源として水を蒸発させることで、前記反応器に前記水和反応のための水蒸気を供給するための蒸発器と、前記凝縮器から排出された冷媒を保温状態で貯留可能に構成された顕熱蓄熱器と、前記反応器内の前記化学蓄熱材が水和反応により放熱した熱を加熱対象に伝える伝熱構造と、車両走行時に前記内燃機関の排気熱を前記反応器に供給させ、前記車両の走行時又は停止時に前記冷媒を前記顕熱蓄熱器に貯留させ、車両始動時に前記冷媒を前記顕熱蓄熱器を経由して前記蒸発器に供給させる制御装置と、を備えている。
【0035】
請求項12記載の車両用化学蓄熱システムでは、車両走行時には、制御装置により内燃機関の排気熱が反応器に供給され、反応器内では排気熱の供給を受けた化学蓄熱材が脱水される。すなわち、化学蓄熱材の脱水反応に伴い排気熱が該化学蓄熱材に蓄熱される。また、この蓄熱の終了時又は車両停止時には、凝縮器を冷却するための冷媒が該凝縮器の下流側に位置する顕熱蓄熱器に貯留され、冷媒の凝縮熱が蓄熱される。
【0036】
一方、車両始動時には、制御装置により、顕熱蓄熱器を経由した冷媒、すなわち、顕熱蓄熱器で蓄えられていた熱(を含む冷媒の熱)が蒸発器に供給される。この熱により生じた水蒸気が反応器に供給されると、反応器内では、化学蓄熱材の発熱を伴う水和反応が生じ、該化学蓄熱材が発熱した熱が伝熱構造を介して加熱対象(被加熱体)に供給される。すなわち、化学蓄熱材に蓄えられていた熱が加熱対象に放熱される。
【0037】
本車両用化学蓄熱システムでは、脱水、水和反応により蓄熱・放熱を行う化学蓄熱材を用いるので、長期間に亘り安定的に蓄熱することができ、また、凝縮器を冷却するための冷媒の如き低温熱源を用いて生じさせた水蒸気により化学蓄熱材に水和反応を生じさせるので、低温の熱を利用して(汲み上げて)高温を得ることができる。しかも、顕熱蓄熱器に蓄えた熱を蒸発器での蒸気発生に用いるため、車両始動時には、より高温の冷媒が蒸発器に供給され(る場合が多くなり)、より化学蓄熱材の発熱温度をより高めることが可能になる。これにより、より高温が要求される加熱対象の有効な加熱が可能になる。
【0038】
このように、請求項12記載の車両用化学蓄熱システムでは、長期間に亘って安定的に蓄熱でき、かつ高温が要求される加熱対象の加熱が可能となる
【0039】
請求項13記載の発明に係る車両用化学蓄熱システムは、請求項12記載の車両用化学蓄熱システムにおいて、前記反応器、前記凝縮器、及び前記蒸発器を連通する水蒸気系統は、予め大気圧未満に減圧されている。
【0040】
請求項13記載の車両用化学蓄熱システムでは、反応器、凝縮器、及び蒸発器における水蒸気系統(水系統)が大気圧未満に減圧されているので、低温の冷却水を用いて多量の水蒸気を得ることができる。すなわち、加熱対象の加熱が要求される低温環境下等で、十分な熱量を放熱させることが可能になる。
【0041】
請求項14記載の発明に係る車両用化学蓄熱システムは、請求項7〜請求項13の何れか1項記載の車両用化学蓄熱システムにおいて、前記車両は、前記内燃機関の排気ガスを浄化するための排気触媒を有しており、前記は閾触媒が前記加熱対象とされている。
【0042】
請求項14記載の車両用化学蓄熱システムでは、上記の如く排気熱回収器及び/又は顕熱蓄熱器からの高温の冷却水又は冷媒によって蒸発器で蒸気を発生させるため、化学蓄熱材の放熱により高温の熱を得ることができる。このため、高温(例えば300℃)で反応活性が良好となる排気触媒の加熱を、化学蓄熱材に蓄えた熱にて有効に行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0043】
以上説明したように本発明に係る車両用化学蓄熱システムは、長期間に亘って安定的に蓄熱でき、かつ高温が要求される加熱対象の加熱が可能となるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの概略全体構成を示すシステム構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムを構成する蓄熱ECUの図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの動作モードを説明するための図であって、(A)は蓄熱モードのシステム構成図、(B)は、放熱モードのシステム構成図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの動作モードを概念的に説明する図であって、(A)蓄熱モードの概念図、(B)は、放熱モードの概念図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの蓄熱、放熱サイクルを示すPT線図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムが適用されたハイブリッド車を構成するバッテリの環境温度と出力密度との関係を示す線図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの放熱モードの実行状態を示すシステム構成図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの放熱モードの実行状態を示すシステム構成図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの概略全体構成を示すシステム構成図である。
【図10】本発明の第5の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムを示す図であって、(A)は概略全体構成を示すシステム構成図、(B)は、放熱モードのシステム構成図である。
【図11】本発明の第6の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの概略全体構成を示すシステム構成図である。
【図12】本発明の第6の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムを構成する蓄熱ECUの図である。
【図13】本発明の第6の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの化学蓄熱モードの実行状態を示すシステム構成図である。
【図14】本発明の第6の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの顕熱蓄熱モードの実行状態を示すシステム構成図である。
【図15】本発明の第6の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの放熱モードのシステム構成図である。
【図16】本発明の第6の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの蓄熱、放熱サイクルを示すPT線図である。
【図17】本発明の第7の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの放熱モードのシステム構成図である。
【図18】本発明の第8の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの概略全体構成を示すシステム構成図である。
【図19】本発明の第8の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの動作モードを説明するための図であって、(A)は蓄熱モードのシステム構成図、(B)は、放熱モードのシステム構成図である。
【図20】本発明の第9の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの概略全体構成を示すシステム構成図である。
【図21】本発明の第9の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの動作モードを説明するための図であって、(A)は化学蓄熱モードのシステム構成図、(B)は顕熱蓄熱モードのシステム構成図、(C)は放熱モードのシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム10について、図1〜図6に基づいて説明する。先ず、車両用化学蓄熱システム10が適用された車両としての自動車11の熱系統について簡単に説明し、次いで、車両用化学蓄熱システム10について説明することとする。
【0046】
図1には、自動車11に適用された車両用化学蓄熱システム10の概略全体構成がシステム構成図にて示されている。この図に示される如く、自動車11は、内燃機関としてのエンジン12と、電気モータであるモータ14とを備えている。すなわち、自動車11は、エンジン12とモータ14とを備えたハイブリッド車とされており、モータ14に電力を供給するためのインバータ(パワーコントロールユニット)15、バッテリ16をさらに備える。この実施形態では、エンジン12及びモータ14の双方に車両走行のための駆動力を生じさせ得るパラレル式のハイブリッド車とされている。
【0047】
また、自動車11は、エンジン12からの排気ガスを浄化して大気放出する排気系18を備えている。排気系18は、一端がエンジン12に接続されると共に他端が大気開放端20Aとされた排気ライン(排気管)20と、排気ライン20におけるエンジン12側に設けられた排気触媒としての触媒コンバータ22とを有する。図示は省略するが、排気系18には、排気音を低減するための消音装置が排気ライン20における触媒コンバータ22の下流側に設けられている。
【0048】
さらに、自動車11は、エンジン12を冷却するためのエンジン冷却系24を備えている。エンジン冷却系24は、エンジン12、ヒータコア26、ラジエータ28の順でエンジン冷却水を循環させるための冷却水循環ライン30、冷却水循環ライン30におけるエンジン12の直上流に設けられエンジン冷却水に駆動力を付与するウォータポンプ32と、ラジエータ28をバイパスするバイパスライン34とを含んで構成されている。この実施形態におけるウォータポンプ32は、エンジン12の駆動力で作動する機械式のポンプとされている。
【0049】
この実施形態では、冷却水循環ライン30におけるラジエータ28とウォータポンプ32との間へのバイパスライン34の合流部分には、3ポート弁36が設けられている。3ポート弁36は、冷却水循環ライン30にのみエンジン冷却水が流通される状態と、バイパスライン34によってラジエータ28が完全にバイパスされる状態と、ラジエータ28とバイパスライン34とにエンジン冷却水が流れる割合を調整する状態とをとり得る構成とされている。
【0050】
車両用化学蓄熱システム10は、以上説明した自動車11に適用され、図4(A)に模式的に示される如く排気系18の排気熱を蓄熱し、図4(B)に模式的に示される如く所要の場合に蓄熱した熱を放熱させることで、自動車11を構成する加熱対象(例えばバッテリ16や触媒コンバータ22等)を加熱するようになっている。この実施形態では、後述する如く、自動車11の低温始動時にバッテリ16を加熱する構成とされている。以下、具体的に説明する。
【0051】
車両用化学蓄熱システム10は、容器内に化学蓄熱材が充填された反応器38を備えている。反応器38内の化学蓄熱材は、脱水に伴って蓄熱(吸熱)し、水和(水酸化カルシウムへの復原)に伴って放熱(発熱)する構成とされている。この実施形態では、化学蓄熱材として、アルカリ土類金属水酸化物の1つである水酸化カルシウム(Ca(OH)2)が採用されている。したがって、反応器38内では、以下に示す反応で蓄熱、放熱を可逆的に繰り返し得る構成とされている。
Ca(OH)2 ⇔ CaO + H2O
【0052】
この式に蓄熱量、発熱量Qを併せて示すと、
Ca(OH)2 + Q → CaO + H2O
CaO + H2O → Ca(OH)2 + Q
となる。
【0053】
また、車両用化学蓄熱システム10は、反応器38に排気系18の排気ライン20から排気熱、すなわち高温の排気ガスを導入するための排気供給ライン40、反応器38から排気ライン20に排気ガスを戻す排気戻しライン42を備えている。排気供給ライン40には開閉弁44が設けられ、排気戻しライン42には開閉弁46が設けられている。これにより、開閉弁44、46が共に開放されている場合には反応器38に排気ガスの一部が流通され、開閉弁44、46が共に閉止されている場合には反応器38に排気ガスが導入されない構成とされている。
【0054】
すなわち、この実施形態における反応器38は、化学蓄熱材と排気ガスとの熱交換器として捉えることができる。なお、この実施形態では、自動車11の運転中における化学蓄熱材の温度が略450℃になるように、排気ガスの反応器38への流通量(割合)が設定されている。この設定は、排気ライン20と反応器38側との圧力損失のバランス等で設定されても良く、後述する蓄熱ECU88にて開閉弁44、46の開度を調整することで設定されても良い。化学蓄熱材の温度を略450℃とするのは、500℃以上で生じやすくなる化学蓄熱材の劣化(潮解等)を抑制するためである。
【0055】
さらに、車両用化学蓄熱システム10は、反応器38内の化学蓄熱材が放出した熱を加熱対象に供給するための伝熱構造としての加熱エアライン48を備えている。加熱エアライン48は、一端がブロア50に接続されており、中間部が反応器38内の化学蓄熱材と熱交換可能な熱交換部48Aとされている。この加熱エアライン48における反応器38の下流側部分が、加熱対象としてのバッテリ16との熱交換部48Bとされている。加熱エアライン48の他端は、大気開放端48Cとされている。
【0056】
またさらに、車両用化学蓄熱システム10は、反応器38内の化学蓄熱材の脱水反応に伴い生じた水蒸気を凝縮するための凝縮器52を備えている。凝縮器52は、開閉弁54が設けられた水蒸気回収ライン56を介して反応器38の内部(化学蓄熱材の充填室)に連通されている。凝縮器52は、冷媒としての水蒸気冷却液と反応器38から流入した水蒸気との熱交換によって、該水蒸気を凝縮させる熱交換器とされている。
【0057】
水蒸気冷却液は、凝縮器52とサブラジエータ58とを結ぶ冷却液循環ライン60をリキッドポンプ62の動力で循環するようになっている。これにより、凝縮器52にて供給された凝縮熱がサブラジエータ58にて放出されるようになっている。サブラジエータ58は、外気と冷却液との熱交換器であるため、凝縮器52は、水蒸気を略40℃以下に冷却することができる。
【0058】
以上説明した凝縮器52は、開閉弁64が設けられた水回収ライン66を介して水タンク68に連通されている。水タンク68は、凝縮器52にて凝縮された水を液体のまま貯留するようになっている。
【0059】
さらに、車両用化学蓄熱システム10は、反応器38内に化学蓄熱材に水和反応を生じさせるための水蒸気を供給する蒸発器70を備えている。蒸発器70は、水ポンプ72が設けられた水供給ライン74を介して水タンク68に連通されると共に、開閉弁76が設けられた水蒸気供給ライン78を介して反応器38の内部(化学蓄熱材の充填室)に連通されている。車両用化学蓄熱システム10では、水ポンプ72の駆動力により蒸発器70に供給された水が該蒸発器70において熱媒と熱交換されることによって蒸発され、反応器38内に供給されるようになっている。
【0060】
この実施形態では、反応器38における化学蓄熱材の充填空間、開閉弁54を含む水蒸気回収ライン56、凝縮器52、開閉弁64を含む水回収ライン66、水タンク68、水ポンプ72を含む水供給ライン74、蒸発器70、開閉弁76を含む水蒸気供給ライン78で構成される水蒸気系統としての水・水蒸気循環ライン80は、予め真空脱気されている。したがって、反応器38、凝縮器52、蒸発器70は、その機能を発揮するための反応、熱交換が行われていない状態では、それぞれの内圧が大気圧と比較して十分に小さい構成とされている。
【0061】
これにより、蒸発器70では、低温の熱媒と液相の水との熱交換によって、該液相の水を蒸発させて水蒸気にすることができる構成とされている。この実施形態では、蒸発器70は、エンジン冷却水を熱媒(低温熱源)として、水タンク68から供給された水を蒸発させるようになっている。
【0062】
したがって、車両用化学蓄熱システム10は、蒸発器70にエンジン冷却水を導く低温熱媒ライン82を備えている。この実施形態では、低温熱媒ライン82は、エンジン冷却系24の冷却水循環ライン30におけるラジエータ28の下流から分岐してラジエータ28の上流に合流している。これにより、ラジエータ28と蒸発器70(及びバイパスライン34)とが並列に配置された如き構成とされている。
【0063】
低温熱媒ライン82には、例えば電動式の低温熱媒ポンプ84が設けられており、エンジン12が停止している状態でエンジン冷却水を駆動可能とされている。また、冷却水循環ライン30における低温熱媒ライン82の分岐部分には、3ポート弁86が設けられている。3ポート弁86は、低温熱媒ライン82と冷却水循環ライン30との間を開閉する機能と、冷却水循環ライン30におけるラジエータ28の下流部分を開閉する機能とを有する構成とされている。
【0064】
さらに、車両用化学蓄熱システム10は、制御装置としての蓄熱ECU88を備えている。蓄熱ECU88は、図2に示される如く、開閉弁44、46、54、64、76、3ポート弁36、86、ブロア50、リキッドポンプ62、水ポンプ72、低温熱媒ポンプ84のそれぞれに電気的に接続されており、これらの作動を制御するようになっている。蓄熱ECU88は、自動車11の図示しないスタートスイッチ(運転制御ECUやメインコントローラ)や外気温センサ等にも電気的に接続されており、車両の走行状態や外気温等の情報に基づいて上記した各制御対象を制御するようになっている。
【0065】
この実施形態では、蓄熱ECU88は、自動車11の走行時には、反応器38の化学蓄熱材への蓄熱が行われる蓄熱モードを実行するように、上記した各制御対象を制御するようになっている。具体的には、図3(A)に示される如く、開閉弁44、46、54、64を開放させ、リキッドポンプ62を作動させる一方、3ポート弁86の蒸発器70側のポートを閉止させ、ブロア50、水ポンプ72、低温熱媒ポンプ84を停止状態に維持するようになっている。なお、各図に示す弁類の黒塗りで示すポートは、該ポートが閉止されている状態を示している。
【0066】
一方、蓄熱ECU88は、自動車11の低温環境下での始動時(低温始動時におけるモータ14の作動前)には、反応器38内の化学蓄熱材が放熱を行うと共に、該反応器38から放熱された熱がバッテリ16に導かれる放熱モードを実行するように、上記した各制御対象を制御するようになっている。具体的には、図3(B)に示される如く、開閉弁44、46、54、64を閉止させ、リキッドポンプ62を停止させる一方、開閉弁76、3ポート弁86の各ポートを開放させ、ブロア50、水ポンプ72、低温熱媒ポンプ84を作動させるようになっている。
【0067】
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
【0068】
上記構成の車両用化学蓄熱システム10では、蓄熱ECU88は、自動車11の運転中には、図3(A)に示される如き蓄熱モードを実行する。すると、排気系18の排気ライン20から排気供給ライン40を経由して反応器38に高温の排気ガスが導かれ、該排気ガスからの熱供給を受けて反応器38内の化学蓄熱材が脱水反応を生じ、排気熱が化学蓄熱材に蓄熱される。
【0069】
この蓄熱モード実行の際、反応器38で化学蓄熱材から脱水された水である水蒸気は、水蒸気回収ライン56を介して凝縮器52に流入され、該凝縮器52で冷却液循環ライン60を循環する冷却液との熱交換により冷却、凝縮される。水蒸気の凝縮熱で加熱された冷却液は、サブラジエータ58にて冷却される。また、凝縮器52で凝縮された水は、水回収ライン66を介して水タンク68に回収される。
【0070】
以上により、車両用化学蓄熱システム10が適用された自動車11では、その走行(エンジン12の作動)に伴い生じる排気ガスの排気熱を反応器38に蓄熱する。なお、例えばモータ14による走行モード(エンジン12がバッテリ16の充電用途にも運転されない場合など)には、蓄熱ECU88は、開閉弁44、46、54、64を閉止させ、リキッドポンプ62を停止させ、かつ3ポート弁86の蒸発器70側のポートを閉止状態、ブロア50、水ポンプ72、低温熱媒ポンプ84の停止状態を維持する。
【0071】
また、車両用化学蓄熱システム10では、蓄熱ECU88は、外気温が所定の閾値を下回る低温環境下で自動車11が始動される場合には、図3(B)に示される如き放熱モードを実行する。すると、水タンク68内の水が水ポンプ72の駆動力によって蒸発器70に導かれると共に、冷却水循環ライン30内のエンジン冷却水が低温熱媒ポンプ84の駆動力によって低温熱媒ライン82を介して蒸発器70に導かれる。このエンジン冷却水との熱交換によって、水タンク68から導入された水は蒸発され、これにより生じた水蒸気が水蒸気供給ライン78を介して反応器38内に供給される。なお、3ポート弁86は、ラジエータ28側のポートを閉止して、エンジン冷却水がラジエータ28をバイパスするようにしても良い。
【0072】
反応器38内の化学蓄熱材は、水蒸気との接触に伴い水和反応を行いつつ放熱する。この熱は、ブロア50により加熱エアライン48を流れる空気に供給され、該加熱空気によってバッテリ16が加熱される。蓄熱ECU88は、例えば暖気開始からの経過時間、バッテリ16の温度、加熱エアライン48内の空気の温度変化の何れか1つに基づいて、バッテリ16が十分に加熱されたと判断すると、モータ14の始動許可信号をメインコントローラ等に出力する。また、蓄熱ECU88は、3ポート弁86の蒸発器70側のポートを閉止し、ブロア50、水ポンプ72、低温熱媒ポンプ84を停止させる。すなわち、バッテリ16の暖機を終了する。
【0073】
ここで、車両用化学蓄熱システム10では、脱水、水和反応により蓄熱・放熱を行う化学蓄熱材を用いて蓄熱・放熱を行うため、長期間に亘り安定的に蓄熱することができる。また、エンジン冷却水の如き低温熱源を用いて生じさせた水蒸気により化学蓄熱材に水和反応を生じさせるので、低温の熱を利用して(汲み上げて)高温を得ることができる。特に、車両用化学蓄熱システム10では、反応器38、凝縮器52、蒸発器70を連通する水・水蒸気循環ライン80が減圧(真空脱気)されているので、低温熱源によって十分な蒸発量を得ることができ、十分な熱量を得ることができる。
【0074】
上記したように低温熱源から高温を得る点について、図5に示すサイクル図にて補足する。図5には、PT線図に示された圧力平衡点における車両用化学蓄熱システム10のサイクルが示されている。この図において、上側の等圧線が脱水(吸熱)反応を示し、下側の等圧線が水和(発熱)反応を示している。このサイクルに示す通り、化学蓄熱材の温度が略424℃で加熱(蓄熱)された場合、水蒸気は略50℃の飽和水蒸気圧力となる。この水蒸気は、凝縮器52にて略40℃以下に冷却されるので、凝縮されて水になることが解る。このように凝縮されることで凝縮器内圧力が略一定となるため、蓄熱材平衡圧力との差圧が維持され、連続的に脱水反応を行わせることができる。これにより、化学蓄熱材が酸化物(CaO)の状態となる。次に、車両始動時には、蒸発器70におけるエンジン冷却水(低温熱源)との熱交換により、水タンク68から供給された水の蒸発により水蒸気が生成される。例えば蒸発器70に2〜5℃のエンジン冷却水を供給することで、その温度に応じた圧力の水蒸気を発生させることができる。
【0075】
この水蒸気の供給によって反応器38内では、化学蓄熱材(CaO)の平衡圧力と水蒸気圧力との差圧によって該化学蓄熱材の水和反応が発生し、該水和反応に伴う発熱によって化学蓄熱材が昇温される。図5は、より低温である0℃のエンジン冷却水を供給した場合を例示しており、この場合、反応器38の化学蓄熱材の水和反応によって略330℃の温度を得ることができることを示している。
【0076】
このように、化学蓄熱材を内蔵した反応器38にて蓄熱を行う車両用化学蓄熱システム10では、図4(A)及び図4(B)にも示される如く、424℃程度で反応器38に蓄熱した場合、わずか0°の低温熱源から熱をくみ上げて、330℃の高温を得ることができる。
【0077】
そして、車両用化学蓄熱システム10では、反応器38内で高温の化学蓄熱材との熱交換によって加熱された空気がブロア50によってバッテリ16に送られるので、該バッテリ16が加熱される。これにより、バッテリ16の出力密度が増大する。具体的には、バッテリ16の出力密度は、図6に示される如き温度依存性を有しており、例えば、バッテリ16の温度を環境温度0℃から10℃まで上昇させることができれば、出力密度は略1.7倍になり、また例えばバッテリ16の温度を環境温度5℃から15℃まで上昇させることができれば、出力密度は略1.5倍に増大することが解る。そして、本実施形態に係る車両用化学蓄熱システム10では、略1分間の放熱モードの実行で、バッテリ16の温度を略10℃上昇させることができることが確かめられている。
【0078】
これにより、車両用化学蓄熱システム10が適用されたハイブリッド車である自動車11は、低温環境下において、放熱モードの実行によるバッテリ16の昇温を待ってモータ14をスムースに始動させることができる。換言すれば、自動車11は、バッテリ16の出力密度が低下する低温環境下において、エンジン12に頼ることなく始動することができる。
【0079】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。なお、上記第1の実施形態又は前出の構成と基本的に同一の部品、部分については、上記第1の実施形態又は前出の構成同一の符号を付して説明を省略し、また図示を省略する場合がある。
【0080】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム100について、図7に基づいて説明する。図7には、放熱モードを実行する車両用化学蓄熱システム100がシステム構成図にて示されている。この図に示される如く、車両用化学蓄熱システム100では、放熱モードにおいて、バイパスライン34にエンジン冷却水を流さず、ラジエータ28と蒸発器70とでエンジン冷却水を循環させる運転を採る場合がある点で、第1の実施形態とは異なる。
【0081】
具体的には、図示を省略した蓄熱ECUは、外気温センサの他に、ラジエータ28の入口でのエンジン冷却水温を検出する水温センサ(図示省略)、及びラジエータ28に送風するための電動ファン102に電気的に接続されている。そして、この蓄熱ECUは、放熱モードの実行時において、ラジエータ28の入口でのエンジン冷却水温が環境温度(外気温)よりも低いと判断した場合に、図7に示される如く、3ポート弁86のエンジン12側のポート、3ポート弁36のバイパスライン34側のポートを閉止し、低温熱媒ポンプ84を作動することで、上記の通りエンジン冷却水がラジエータ28と蒸発器70とを循環する流れが生じる構成とされている。この際、蓄熱ECUは、電動ファン102を作動させるようになっている。
【0082】
また、図示は省略するが、車両用化学蓄熱システム100では、エンジン冷却水の水温が環境温度よりも高いと蓄熱ECUが判断した場合には、エンジン冷却水がラジエータ28で放熱しないように該エンジン冷却水がバイパスライン34を流れるように、蓄熱ECUが3ポート弁36、86を制御するようになっている。
【0083】
以上により、車両用化学蓄熱システム100では、エンジン冷却水温が環境温度よりも低い場合に、ラジエータ28において外気と熱交換すなわち昇温されたエンジン冷却水を用いて、蒸発器70において水蒸気を生じさせることができる。すなわち、より低温環境下でも十分な水蒸気を得られる。車両用化学蓄熱システム100の他の構成は、車両用化学蓄熱システム10の対応する構成と同じである。
【0084】
したがって、本発明の第2の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム100によっても、基本的に第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。
【0085】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム110について、図8に基づいて説明する。図8には、放熱モードを実行する車両用化学蓄熱システム110がシステム構成図にて示されている。この図に示される如く、車両用化学蓄熱システム110は、低温熱媒ライン82に設けられた熱交換部としての車体熱交換器112を備える点で、第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム10とは異なる。
【0086】
車体熱交換器112は、車体外板にエンジン冷却水の流通する管を熱交換可能に接触させたものとされ、3ポート弁86と低温熱媒ポンプ84との間に配置されている。また、低温熱媒ライン82には、車体熱交換器112をバイパスするバイパスライン114を有する。低温熱媒ライン82からバイパスライン114への分岐部分には、3ポート弁116が配設されている。
【0087】
また、図示を省略した蓄熱ECUは、車体(車体熱交換器112の車体側部分)の温度を検出するための車体温センサ(図示省略)、及びラジエータ28の入口でのエンジン冷却水温を検出する水温センサ(図示省略)に電気的に接続されている。そして、蓄熱ECUは、放熱モードの実行時において、車体温度が環境温度よりも高く、かつ、該車体温度がエンジン冷却水温よりも高い場合に、図8に示される如くエンジン冷却水が車体熱交換器112に導かれるように3ポート弁116を制御し、他の場合にはエンジン冷却水がバイパスライン114を流れるように3ポート弁116を制御する構成とされている(図示省略)。
【0088】
さらに、蓄熱ECUは、例えば第2の実施形態と同様に、放熱モードの実行時において、ラジエータ28の入口でのエンジン冷却水温が環境温度よりも低いと判断した場合には、エンジン冷却水がラジエータ28に導かれるように3ポート弁86のエンジン12側のポート、3ポート弁36のバイパスライン34側のポートを閉止し、エンジン冷却水の水温が環境温度よりも高いと判断した場合には、エンジン冷却水がバイパスライン34を流れるように、蓄熱ECUが3ポート弁36、86を制御するようになっている。車両用化学蓄熱システム100の他の構成は、車両用化学蓄熱システム10の対応する構成と同じである。
【0089】
したがって、本発明の第3の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム110によっても、基本的に第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。また、車両用化学蓄熱システム110では、例えば環境温度は低温であるが、車体外板が日射等により昇温されている場合等に、より温度の高い低温冷媒を用いることができ、化学蓄熱材からの発熱温度を上昇させることが可能になる。
【0090】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム120について、図9に基づいて説明する。図9には、車両用化学蓄熱システム120のシステム構成図が示されている。この図に示される如く、車両用化学蓄熱システム120は、凝縮器52及び蒸発器70に代えて、これらの機能が集約された蒸発・凝縮器122を備える点で、第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム10とは異なる。
【0091】
蒸発・凝縮器122は、水蒸気ライン124を介して反応器38(化学蓄熱材の充填空間)に連通されており、該水蒸気ライン124には開閉弁126が設けられている。この車両用化学蓄熱システム120では、反応器38、蒸発・凝縮器122における水・水蒸気の貯留・流通空間、水蒸気ライン124が予め真空脱気されている。
【0092】
また、蒸発・凝縮器122は、冷却液循環ライン60を循環する水蒸気冷却液との熱交換で凝縮された水を、自らの内部に貯留(保持)するようになっており、低温熱媒ライン82を流通するエンジン冷却水との熱交換によって貯留していた水を蒸発する構成とされている。したがって、蒸発・凝縮器122は、水・水蒸気の貯留・流通空間(熱交換路)と、水蒸気冷却液の流通空間、エンジン冷却水の流通空間との3流路を有する構成とされている。
【0093】
以上により、車両用化学蓄熱システム120は、開閉弁64、水回収ライン66、水タンク68、水ポンプ72、水供給ライン74を有しない構成とされている。車両用化学蓄熱システム120の他の構成は、車両用化学蓄熱システム10の対応する構成と同じである。
【0094】
したがって、本発明の第4の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム120によっても、基本的に第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。また、車両用化学蓄熱システム120では、凝縮器52の機能と蒸発器70の機能とを蒸発・凝縮器122に集約することで、全体として簡素なシステムとすることができる。また、蓄熱ECUによる制御対象も減るので、制御系を含めシステムの簡素化を図ることができる。
【0095】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム130について、図10に基づいて説明する。図10(A)には、車両用化学蓄熱システム130のシステム構成図が示されており、図10(B)には、放熱モードを実行する車両用化学蓄熱システム130のシステム構成図が示されている。これらの図に示される如く、車両用化学蓄熱システム130は、排気ガスの排気熱をエンジン冷却水に回収するための排気熱回収器132が触媒コンバータ22の下流側に設けられている点で、第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム10とは異なる。
【0096】
排気熱回収器132は、排気ガスとエンジン冷却水との熱交換器とされている。排気熱回収器132のガス流路は、排気ライン20から分岐されると共に該排気ライン20に合流する熱交換ガスライン134の中央部を構成している。排気ライン20における熱交換ガスライン134の分岐部と合流部との間には、バイパス弁135が配置されている。
【0097】
一方、排気熱回収器132のエンジン冷却水流路は、低温熱媒ライン136の一部を構成している。この実施形態に係る低温熱媒ライン136は、冷却水循環ライン30におけるエンジン12とヒータコア26との間から分岐されると共に蒸発器70を経由して3ポート弁86に至っている。すなわち、低温熱媒ライン136は、3ポート弁86から蒸発器70を経由して冷却水循環ライン30におけるヒータコア26とラジエータ28との間に至る低温熱媒ライン82とは異なる。
【0098】
また、車両用化学蓄熱システム130は、冷却水循環ライン30における低温熱媒ライン136の分岐部分に設けられた3ポート弁138を有する。そして、車両用化学蓄熱システム130を構成する蓄熱ECUは、自動車11の走行時(蓄熱モード)では、3ポート弁138の低温熱媒ライン136側のポートを閉止して蒸発器70へのエンジン冷却水の流通を防止するようになっている(図示省略)。
【0099】
そして、車両用化学蓄熱システム130では、蓄熱ECUは、放熱モードの実行時に、図10(B)に示される如く、エンジン12を始動させると共に、3ポート弁36のバイパスライン34側のポート、3ポート弁86のラジエータ28側のポートを共に閉止するようになっている。この放熱モードでは、排気熱回収器132において排気ガスから熱回収したエンジン冷却水が、ウォータポンプ32の駆動力で低温熱媒ライン136を経由して蒸発器70に導かれ、蒸発器70にて水蒸気が発生するようになっている。
【0100】
蒸発器70を通過したエンジン冷却水は、エンジン12に供給された該エンジン12の暖機にも供されるようになっている。車両用化学蓄熱システム130の他の構成は、車両用化学蓄熱システム10の対応する構成と同じである。
【0101】
したがって、本発明の第5の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム130によっても、基本的に第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。また、車両用化学蓄熱システム130では、エンジン12を始動して生じさせた排気ガスの排気熱を回収して蒸発器70での蒸発熱に利用する構成であるため、蒸発器70での水蒸気圧力を高めることができる。このため、車両用化学蓄熱システム130では、化学蓄熱材の発熱温度を車両用化学蓄熱システム10に対し大幅に高めることが可能である。したがって、車両用化学蓄熱システム130においては、例えば後述する車両用化学蓄熱システム150等と同様に、反応器38から放熱させた熱を、350℃以上の温度への加熱が要求される触媒コンバータ22の加熱に利用することができる。
【0102】
なお、上記した第5の実施形態では、低温始動時にヒータコア26にエンジン冷却水が流通されない例を示したが、ヒータコア26にエンジン冷却水を流して暖房要求を満たしても良いことは言うまでもない。
【0103】
(第6の実施形態)
本発明の第6の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム140について、図11〜図15に基づいて説明する。図11には、車両用化学蓄熱システム140のシステム構成図が示されている。この図に示される如く、車両用化学蓄熱システム140は、エンジン冷却水の系統に顕熱蓄熱器142を備える点で、第1の実施形態とは異なる。
【0104】
顕熱蓄熱器142は、冷却水循環ライン30におけるヒータコア26の上下流に連通された蓄熱器ライン144に設けられており、ヒータコア26と並列に配置されているものと捉えることができる。この顕熱蓄熱器142は、断熱容器とされ、高温のエンジン冷却水を貯留することで該エンジン冷却水の顕熱を蓄える構成とされている。
【0105】
冷却水循環ライン30におけるヒータコア26の上流側(エンジン12側)の分岐部には、3ポート弁146が設けられている。また、蓄熱器ライン144における顕熱蓄熱器142に対する3ポート弁146とは反対側には、顕熱蓄熱器142側に向けてエンジン冷却水を圧送するための低温熱媒ポンプ148が設けられている。
【0106】
そして、車両用化学蓄熱システム140は、低温熱媒ポンプ84が設けられた低温熱媒ライン82に代えて、低温熱媒ライン150を備えている。低温熱媒ライン150は、蓄熱器ライン144における顕熱蓄熱器142と3ポート弁146との間の部分から、蒸発器70を経由して3ポート弁86に至っている。この実施形態では、蓄熱器ライン144における低温熱媒ライン150の分岐部には、3ポート弁152が設けられている。なお、3ポート弁152を設けない構成とすることも可能である。
【0107】
以上説明したように車両用化学蓄熱システム140は、車両用化学蓄熱システム10とほぼ同様に構成された化学蓄熱部140Aと、エンジン冷却水の顕熱を蓄熱するための顕熱蓄熱部140Bとを備え、低温熱媒ポンプ148、低温熱媒ライン150によって顕熱蓄熱部140Bから化学蓄熱部140Aにエンジン冷却水の顕熱を輸送可能なシステムとして捉えることができる。
【0108】
この実施形態では、車両用化学蓄熱システム140による加熱対象は、バッテリ16に代えて触媒コンバータ22とされている。したがって、車両用化学蓄熱システム140は、加熱エアライン48に代えて、ブロア50の作動によって反応器38の熱(加熱空気)を触媒コンバータ22に導く加熱エアライン154を備えている。加熱エアライン154は、反応器38との熱交換を行う熱交換部154Aを通過した加熱空気が、触媒コンバータ22の内部に導入されて排気触媒と直接的に熱交換され、排気ライン20を介して大気開放されるように構成されている。この実施形態に係る自動車11は、モータ14及びバッテリ16を備えず、エンジン12の動力のみで走行するものであっても良い(以下、モータ14、バッテリ16に関する説明は省略する)。
【0109】
また、図12に示される如く、車両用化学蓄熱システム140は、制御装置としての蓄熱ECU156を備えている。蓄熱ECU156は、図12に示される如く、開閉弁44、46、54、64、76、3ポート弁36、86、146、152、ブロア50、リキッドポンプ62、水ポンプ72、低温熱媒ポンプ148のそれぞれに電気的に接続されており、これらの作動を制御するようになっている。蓄熱ECU156は、自動車11の図示しないスタートスイッチ(運転制御ECUやメインコントローラ)や外気温センサ等にも電気的に接続されており、車両の走行状態や外気温等の情報に基づいて上記した各制御対象を制御するようになっている。
【0110】
この実施形態では、蓄熱ECU156は、自動車11の走行時には、反応器38の化学蓄熱材への蓄熱が行われる化学蓄熱モードを実行するように、上記した各制御対象を制御するようになっている。具体的には、図13に示される如く、開閉弁44、46、54、64を開放させ、リキッドポンプ62を作動させる一方、3ポート弁86の蒸発器70側のポート、3ポート弁146の蓄熱器ライン144側のポート、3ポート弁152の顕熱蓄熱器142側のポートをそれぞれ閉止させ、ブロア50、水ポンプ72、低温熱媒ポンプ148を停止状態に維持するようになっている。
【0111】
また、蓄熱ECU156は、自動車11の停止の際には、顕熱蓄熱モードを実行するように、上記した各制御対象を制御するようになっている。具体的には、図14に示される如く、開閉弁44、46、54、64を閉止させ、さらにリキッドポンプ62を停止させる(以上、化学蓄熱部140Aを停止させる)一方、3ポート弁36の3ポート弁86側のポート、3ポート弁86のラジエータ28及び蒸発器70側の各ポート、3ポート弁146のヒータコア26側のポート、3ポート弁152の低温熱媒ライン150側のポートをそれぞれ閉止させると共に、3ポート弁152の顕熱蓄熱器142側のポートを開放させ、かつ低温熱媒ポンプ148を作動させるようになっている。
【0112】
さらに、蓄熱ECU156は、自動車11の低温環境下での始動時(低温始動時におけるエンジン12の始動前)には、反応器38内の化学蓄熱材が放熱を行うと共に、該反応器38から放熱された熱が触媒コンバータ22に導かれる放熱モードを実行するように、上記した各制御対象を制御するようになっている。具体的には、図15に示される如く、3ポート弁36のエンジン12側のポート、3ポート弁146の蓄熱器ライン144側のポートを閉止すると共に、3ポート弁86の蒸発器70側のポート、3ポート弁36の3ポート弁86側のポート、3ポート弁152の低温熱媒ライン150側のポート、及び開閉弁76を開放し、かつ、低温熱媒ポンプ148、ブロア50、水ポンプ72を作動させるようになっている。
【0113】
次に、第6の実施形態の作用を説明する。
【0114】
上記構成の車両用化学蓄熱システム140では、蓄熱ECU156は、自動車11の運転中には、図13に示される如く、主に化学蓄熱部140Aにおいて化学蓄熱モードを実行する。すると、排気系18の排気ライン20から排気供給ライン40を経由して反応器38に高温の排気ガスが導かれ、該排気ガスからの熱供給を受けて反応器38内の化学蓄熱材が脱水反応を生じ、排気熱が化学蓄熱材に蓄熱される。
【0115】
この化学蓄熱モードの実行の際、反応器38で化学蓄熱材から脱水された水である水蒸気は、水蒸気回収ライン56を介して凝縮器52に流入され、該凝縮器52で冷却液循環ライン60を循環する冷却液との熱交換により冷却、凝縮される。水蒸気の凝縮熱で加熱された冷却液は、サブラジエータ58にて冷却される。また、凝縮器52で凝縮された水は、水回収ライン66を介して水タンク68に回収される。
【0116】
以上により、車両用化学蓄熱システム140が適用された自動車11では、その走行(エンジン12の作動)に伴い生じる排気ガスの排気熱を反応器38に蓄熱する。また、化学蓄熱モードの実行の際には、顕熱蓄熱部140Bでは、顕熱蓄熱器142がエンジン冷却水の循環系等から切り離されている。
【0117】
また、車両用化学蓄熱システム140では、蓄熱ECU156は、自動車11が停車(エンジン12が停止)された場合には、図14に示される如く、顕熱蓄熱部140Bにおいてエンジン冷却水の顕熱を顕熱蓄熱器142に蓄える顕熱蓄熱モードを実行する。すると、低温熱媒ポンプ148の駆動力によって、エンジン冷却水がエンジン12と顕熱蓄熱器142との間を所定時間だけ循環する。これにより、顕熱蓄熱器142内には、エンジン12との熱交換で加熱された高温のエンジン冷却水が貯留(保持)される。すなわち、エンジン冷却水の熱が顕熱蓄熱器142に蓄えられる。
【0118】
そして、車両用化学蓄熱システム140では、蓄熱ECU156は、外気温が所定の閾値を下回る低温環境下で自動車11が始動される場合には、エンジン12の始動に先立って、図15に示される如き放熱モードを実行する。すると、水タンク68内の水が水ポンプ72の駆動力によって蒸発器70に導かれると共に、顕熱蓄熱器142内のエンジン冷却水が低温熱媒ポンプ148の駆動力によって低温熱媒ライン150を介して蒸発器70に導かれる。このエンジン冷却水との熱交換によって、水タンク68から導入された水は蒸発され、これにより生じた水蒸気が水蒸気供給ライン78を介して反応器38内に供給される。
【0119】
反応器38内の化学蓄熱材は、水蒸気との接触に伴い水和反応を行いつつ放熱する。この熱は、ブロア50により加熱エアライン154を流れる空気に供給され、該加熱空気によって触媒コンバータ22(内の排気触媒)が加熱される。蓄熱ECU156は、例えば暖気開始からの経過時間、触媒コンバータ22の温度、加熱エアライン154内の空気の温度変化の何れか1つに基づいて、触媒コンバータ22が十分に加熱されたと判断すると、エンジン12の始動許可信号をメインコントローラ等に出力する。また、蓄熱ECU156は、3ポート弁86の蒸発器70側のポートを閉止し、ブロア50、水ポンプ72、低温熱媒ポンプ84を停止させる。すなわち、触媒コンバータ22の暖機を終了する。
【0120】
ここで、車両用化学蓄熱システム140では、脱水、水和反応により蓄熱・放熱を行う化学蓄熱材を用いて蓄熱・放熱を行うため、長期間に亘り安定的に蓄熱することができる。また、エンジン冷却水の如き低温熱源を用いて生じさせた水蒸気により化学蓄熱材に水和反応を生じさせるので、低温の熱を利用して(汲み上げて)高温を得ることができる。特に、車両用化学蓄熱システム140では、反応器38、凝縮器52、蒸発器70を連通する水・水蒸気循環ライン80が減圧(真空脱気)されているので、低温熱源によって十分な蒸発量を得ることができ、十分な熱量を得ることができる。
【0121】
上記したように低温熱源から高温を得る点について、図16に示すサイクル図にて補足する。図16には、PT線図に示された圧力平衡点における車両用化学蓄熱システム140のサイクルが示されている。この図において、上側の等圧線が脱水(吸熱)反応を示し、下側の等圧線が水和(発熱)反応を示している。このサイクルに示す通り、化学蓄熱材の温度が略424℃で加熱(蓄熱)された場合、水蒸気は略50℃の飽和水蒸気圧力となる。この水蒸気は、凝縮器52にて略40℃以下に冷却されるので、凝縮されて水になることが解る。このように凝縮されることで凝縮器内圧力が略一定となるため、蓄熱材平衡圧力との差圧が維持され、連続的に脱水反応を行わせることができる。これにより、化学蓄熱材が酸化物(CaO)の状態となる。次に、車両始動時には、蒸発器70におけるエンジン冷却水(低温熱源)との熱交換により、水タンク68から供給された水の蒸発により水蒸気が生成される。
【0122】
そして、車両用化学蓄熱システム140では、顕熱蓄熱器142に蓄えたエンジン冷却水の熱を蒸発器70に供給するため、顕熱蓄熱器142を有しない構成(車両用化学蓄熱システム10)と比較して、高温のエンジン冷却水を利用して蒸発器70にて水蒸気を発生させることができる。例えば顕熱蓄熱器142内のエンジン冷却水が略50℃である場合、蒸発器70を35℃〜45℃とすることができ、蒸発器70では、その温度に応じた水蒸気を発生させることができる。これにより、顕熱蓄熱器142を有しない構成(反応器38の蓄熱量は同じ)と比較して水蒸気圧力が高くなるので、化学蓄熱材に高温で放熱させることができる。
【0123】
図16に示される如く蒸発器70を37℃にして水蒸気を発生させる場合、略400℃の温度を得ることができる。この温度は、触媒コンバータ22内の排気触媒の活性が良好となる300℃に対し十分に高いので、該触媒コンバータ22内の排気触媒の加熱に有効に供することができる。
【0124】
そして、車両用化学蓄熱システム140では、反応器38内で高温の化学蓄熱材との熱交換によって加熱された空気がブロア50によって触媒コンバータ22に送られるので、該触媒コンバータ22内の排気触媒が加熱、昇温される。これにより、エンジン12が作動された場合に、該エンジン12の排気ガスが良好に浄化される。具体的には、この実施形態では、略1分間の放熱モードの実行で、触媒コンバータ22の温度を略350℃まで上昇させることができることが確かめられており、この場合、排気ガス中の未燃炭化水素成分が、放熱モードなしでエンジン12を始動した場合と比較して半減される。
【0125】
以上により、車両用化学蓄熱システム140が適用された自動車11では、低温始動時の排気ガス浄化性能が著しく向上する。
【0126】
(第7の実施形態)
本発明の第7の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム160について、図17に基づいて説明する。図17には、放熱モードを実行する車両用化学蓄熱システム160がシステム構成図にて示されている。この図に示される如く、車両用化学蓄熱システム160では、放熱モードにおいて、顕熱蓄熱器142内のエンジン冷却水(熱)を蒸発器70及びエンジン12に供給する点で、放熱モードでエンジン12をバイパスする第6の実施形態とは異なる。車両用化学蓄熱システム160の他の構成は、車両用化学蓄熱システム140の対応する構成と同じである。すなわち、車両用化学蓄熱システム160は、制御を除き化学蓄熱部140A、顕熱蓄熱部140Bと同様に構成された化学蓄熱部160Aと顕熱蓄熱部160Bとを有して構成されている。
【0127】
したがって、本発明の第7の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム160によっても、基本的に第6の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム140と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。また、車両用化学蓄熱システム160では、顕熱蓄熱器142の熱をエンジン12にも供給するので、低温始動時におけるエンジン12の暖機促進にも寄与する。また、この実施形態では、顕熱蓄熱器142の熱がヒータコア26にも供給されるので、低温始動時の暖房促進にも寄与する。
【0128】
(第8の実施形態)
本発明の第8の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム170について、図18〜図19に基づいて説明する。図18には、車両用化学蓄熱システム130のシステム構成図が示されている。また、図19(A)には、化学蓄熱モード及び顕熱蓄熱モードを実行する車両用化学蓄熱システム170のシステム構成が示されており、図19(B)には、放熱モードを実行する車両用化学蓄熱システム170のシステム構成図が示されている。これらの図に示される如く、車両用化学蓄熱システム170は、排気ガスの排気熱をエンジン冷却水に回収するための排気熱回収器172が触媒コンバータ22の下流側に設けられている点で、第6の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム140とは異なる。
【0129】
排気熱回収器172は、排気ガスとエンジン冷却水との熱交換器とされている。排気熱回収器172のガス流路は、排気ライン20から分岐されると共に該排気ライン20に合流する熱交換ガスライン134の中央部を構成している。排気ライン20における熱交換ガスライン134の分岐部と合流部との間には、バイパス弁135が配置されている。
【0130】
一方、排気熱回収器172のエンジン冷却水流路は、蓄熱器ライン144における顕熱蓄熱器142と3ポート弁146との間の一部を構成している。この実施形態では、低温熱媒ライン150は、蓄熱器ライン144における低温熱媒ポンプ148と冷却水循環ライン30からの分岐部との間から分岐されている。この実施形態では、この分岐部に3ポート弁152が設けられていないが、該3ポート弁152を設ける構成としても良い。また、車両用化学蓄熱システム170では、蓄熱器ライン144における、3ポート弁146と排気熱回収器172との間と、冷却水循環ライン30からの分岐部と低温熱媒ライン150の分岐部との間とを繋ぐエンジン冷却水分離用ライン174が設けられている。
【0131】
さらに、蓄熱器ライン144における冷却水循環ライン30からの分岐部と低温熱媒ライン150の分岐部との間からのエンジン冷却水分離用ライン174の分岐部分には、3ポート弁176が設けられている。
【0132】
そして、車両用化学蓄熱システム170では、蓄熱ECUは、図19(A)に示される如く、自動車11の走行時に化学蓄熱部170Aによる化学蓄熱モード、顕熱蓄熱部170Bによる顕熱蓄熱モードを行う構成とされている。化学蓄熱モードについては、車両用化学蓄熱システム140と同様であるので説明を省略する。顕熱蓄熱モードでは、3ポート弁146の蓄熱器ライン144側のポート、3ポート弁176の冷却水循環ライン30からの分岐側のポートを閉止することで、顕熱蓄熱部170Bには、蓄熱器ライン144とエンジン冷却水分離用ライン174とによって、冷却水循環ライン30とは独立してエンジン冷却水が循環するエンジン冷却水サブ循環ライン178が形成される。
【0133】
このエンジン冷却水サブ循環ライン178でエンジン冷却水を循環させることで、排気熱回収器172で排気熱を回収したエンジン冷却水が顕熱蓄熱器142に蓄えられる。蓄熱ECUは、例えば顕熱蓄熱器142内のエンジン冷却水の温度が所定温度以下に成った場合等に、バイパス弁135を閉止すると共に低温熱媒ポンプ148を作動させることで、顕熱蓄熱器142内に高温のエンジン冷却水を貯留させるようになっている。
【0134】
また、蓄熱ECUは、放熱モードの実行時には、図19(B)に示される如く、3ポート弁176の冷却水循環ライン30からの分岐側のポートを開放すると共に該3ポート弁176の低温熱媒ポンプ148側のポート、3ポート弁146のヒータコア26側のポートを閉止するようになっている。これにより、顕熱蓄熱器142に蓄えられていた高温のエンジン冷却水(エンジン冷却水の顕熱)が蒸発器70に供給される構成である。車両用化学蓄熱システム170の他の構成は、車両用化学蓄熱システム140の対応する構成と同じである。
【0135】
したがって、本発明の第8の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム170によっても、基本的に第6の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム140と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。また、車両用化学蓄熱システム170では、排気熱回収器172で排気熱を回収したエンジン冷却水を顕熱蓄熱器142に貯留させる構成であるため、例えば短時間の運転においても高温のエンジン冷却水すなわち顕熱を蓄えることができ、次回の始動時に触媒コンバータ22を効果的に加熱することができる。
【0136】
なお、車両用化学蓄熱システム170の構成において、放熱モードの実行の際に、3ポート弁36のエンジン12側のポートを開、3ポート弁36のバイパスライン34側のポートを閉、3ポート弁146の144側のポートを開とすることで、顕熱蓄熱器142の熱をエンジン12の暖機にも供するようにしても良い。
【0137】
(第9の実施形態)
本発明の第9の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム180について、図20〜図21に基づいて説明する。図20には、車両用化学蓄熱システム180のシステム構成図が示されている。この図に示される如く、車両用化学蓄熱システム180は、蒸発器70に代えて蒸発・凝縮器122を備えており、該蒸発・凝縮器122で水蒸気を発生させる際の低温熱源として、エンジン冷却水に代えて冷却液循環ライン60を循環する水蒸気冷却液を用いる点で、第1、第6の実施形態とは異なる。
【0138】
具体的には、冷却液循環ライン60は、蒸発・凝縮器122の冷媒流路に連通されており、該冷却液循環ライン60におけるリキッドポンプ62とサブラジエータ58との間(サブラジエータ58の上流側)には顕熱蓄熱器182が設けられている。また、車両用化学蓄熱システム180は、冷却液循環ライン60における顕熱蓄熱器182とサブラジエータ58との間から分岐された低温熱媒ライン184を有する。
【0139】
この実施形態では、低温熱媒ライン184は、蒸発・凝縮器122の熱媒流路(第4の実施形態におけるエンジン冷却水の流通路に相当)を経由して、冷却液循環ライン60におけるサブラジエータ58と蒸発・凝縮器122(冷媒ライン)との間に合流されている。また、車両用化学蓄熱システム180では、冷却液循環ライン60に対する低温熱媒ライン184の分岐部、合流部に3ポート弁186、188がそれぞれ設けられている。さらに、車両用化学蓄熱システム180は、冷却液循環ライン60におけるリキッドポンプ62と182との間から分岐されると共に顕熱蓄熱器182と3ポート弁186との間に合流されることで、顕熱蓄熱器182をバイパス可能なバイパスライン190を有する。冷却液循環ライン60におけるバイパスライン190の分岐部には、3ポート弁192が設けられている。以上により、図20に示される如く、車両用化学蓄熱システム180は、車両用化学蓄熱システム120とほぼ同様に構成された化学蓄熱部180Aと、蒸気冷却液の顕熱を蓄熱するための顕熱蓄熱部180Bとを備えたシステムとして捉えることができる。
【0140】
この車両用化学蓄熱システム180を構成する蓄熱ECU(図示省略)は、開閉弁44、46、126、3ポート弁186、188、192、ブロア50、リキッドポンプ62に電気的に接続されており、これらの作動を制御するようになっている。蓄熱ECUは、自動車11の図示しないスタートスイッチ(運転制御ECUやメインコントローラ)や外気温センサ等にも電気的に接続されており、車両の走行状態や外気温等の情報に基づいて上記した各制御対象を制御するようになっている。また、この実施形態に係るECUは、顕熱蓄熱器182内の水温、凝縮器122(凝縮器として機能している122)の出口水温に応じた信号を出力する各水温センサに電気的に接続されており、これらの情報に基づいて上記した各制御対象を制御するようになっている。
【0141】
この実施形態では、蓄熱ECUは、自動車11の走行時には、反応器38の化学蓄熱材への蓄熱が行われる化学蓄熱モードを実行するように、上記した各制御対象を制御するようになっている。具体的には、図21(A)に示される如く、開閉弁44、46、126を開放させ、リキッドポンプ62を作動させる一方、3ポート弁186、188の各低温熱媒ライン184側のポートを閉止させるようになっている。この実施形態では、3ポート弁192のバイパスライン190側のポートが閉止されることで、化学蓄熱モードと並行して、凝縮器122で水蒸気から水への凝縮熱を回収した蒸気冷却液が顕熱蓄熱器182に貯留される顕熱蓄熱モードが実行される。この顕熱蓄熱モードは、上記各水温センサからの情報に基づいて、ECUが顕熱蓄熱器182内の水温が凝縮器122の出口水温を上回るまで実行する。そして、ECUは、上記各水温センサからの情報に基づいて、顕熱蓄熱器182内の水温が凝縮器122の出口水温を上回ったと判断した場合に、図21(B)に示される如く、3ポート弁192のバイパスライン190側のポートが開放されると共に、該3ポート弁192の顕熱蓄熱器182側のポートが閉止される。これにより、顕熱蓄熱モードが停止される一方、化学蓄熱モードが維持される。
【0142】
一方、蓄熱ECUは、自動車11の低温環境下での始動時(低温始動時におけるエンジン12の始動前)には、反応器38内の化学蓄熱材が放熱を行うと共に、該反応器38から放熱された熱が触媒コンバータ22に導かれる放熱モードを実行するように、上記した各制御対象を制御するようになっている。具体的には、図21(C)に示される如く、開閉弁44、46を閉止させ、3ポート弁186、188の各低温熱媒ライン184側のポートを開放、サブラジエータ58側のポートを閉止させ、3ポート弁192のバイパスライン190側のポートを閉止させると共に該3ポート弁192の顕熱蓄熱器182側のポートを開放させ、かつブロア50、リキッドポンプ62を作動させるようになっている。
【0143】
この図21(C)に示される放熱モードでは、リキッドポンプ62の駆動力によって水蒸気冷却液が顕熱蓄熱器182、蒸発・凝縮器122(の熱媒流路)を循環するので、蒸発器70では、水蒸気冷却液を低温熱源として水の蒸発が行われる。すなわち、水蒸気冷却液の温度に応じた圧力の水蒸気が発生される。
【0144】
ここで、車両用化学蓄熱システム180では、冷却液循環ライン60に設けられた顕熱蓄熱器182に、水蒸気冷却液の顕熱、すなわち蓄熱モードでの水蒸気から水への凝縮に伴う凝縮熱が蓄えられるため、蒸発器70において高温の水蒸気冷却液を用いて高い水蒸気圧力を得ることができる。このため、この実施形態においても、第6の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム140と同様に、触媒コンバータ22を有効に加熱し得る高温を、反応器38にて発生させることができる。
【0145】
なお、上記した各実施形態では、車両用化学蓄熱システム10〜180の概略構成を例示したが、本発明はこれに限定されず、各種変形して実施可能であることは言うまでもない。特に、各実施形態における各ラインの配置、弁類のタイプ、配置、開閉動作等は、対応するモード(蓄熱、放熱の各モード)を実行可能であれば良く、各種の変更が可能である。また、例えば、第4、第9の形態以外の各構成において蒸発・凝縮器122を適用しても良く、第9の実施形態の構成において凝縮器52及び蒸発器70を適用しても良い。
【0146】
また、上記した各実施形態では、化学蓄熱材として水酸化カルシウムを用いた例を示したが、本発明はこれに限定されず、水和・脱水による各種の放熱・蓄熱する各種の化学蓄熱材を用いて実施することができる。
【0147】
さらに、上記した各実施形態では、蓄熱した熱による加熱対象としてバッテリ16、触媒コンバータ22を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、予めされた設定に基づいて又は要求に応じて、エンジン12及び/又はヒータコア26を加熱対象としても良く、また例えば、氷雪等が付着した車体、車輪周り、ウインドシールドガラス等を加熱対象としても良い。また、加熱対象を複数の加熱対象候補から選択する構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0148】
10 車両用化学蓄熱システム
11 自動車(ハイブリッド車)
12 エンジン(内燃機関)
14 モータ
16 バッテリ
22 触媒コンバータ(排気触媒)
28 ラジエータ
38 反応器(化学蓄熱材)
48 加熱エアライン(伝熱構造)
52 凝縮器
70 蒸発器
80 水・水蒸気循環ライン(水蒸気系統)
88 蓄熱ECU(制御装置)
100・110・120・130・140・160・170・180 車両用化学蓄熱システム
102 電動ファン(ファン)
112 車体熱交換器(熱交換部)
122 蒸発・凝縮器(蒸発器、凝縮器)
132・172 排気熱回収器
142・182 顕熱蓄熱器
156 蓄熱ECU(制御装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された内燃機関の排気熱により脱水反応を行って蓄熱し、水和反応により放熱する化学蓄熱材が内蔵された反応器と、
前記反応器から前記脱水反応に伴って放出された水蒸気を凝縮させる凝縮器と、
前記内燃機関の冷却水を熱源として水を蒸発させることで、前記反応器に前記水和反応のための水蒸気を供給するための蒸発器と、
前記反応器内の前記化学蓄熱材が水和反応により放熱した熱を加熱対象に伝える伝熱構造と、
前記車両の走行時に前記内燃機関の排気熱を前記反応器に供給させ、車両始動時に前記冷却水を前記蒸発器に供給させる制御装置と、
を備えた車両用化学蓄熱システム。
【請求項2】
前記反応器、前記凝縮器、及び前記蒸発器を連通する水蒸気系統は、予め大気圧未満に減圧されている請求項1記載の車両用化学蓄熱システム。
【請求項3】
前記車両には、前記冷却水を冷却するためのラジエータ、前記ラジエータに送風するためのファンが設けられており、
前記制御装置は、前記冷却水の前記ラジエータ入口での温度が環境温度よりも低い場合に、前記車両始動時に前記冷却水を前記ラジエータと前記蒸発器との間で循環させると共に前記ファンを作動させるようになっている請求項1又は請求項2記載の車両用化学蓄熱システム。
【請求項4】
前記車両には、前記冷却水と車体との熱交換を行う熱交換部が設けられており、
前記制御装置は、前記車両始動時に前記車体の温度が前記冷却水の温度よりも高くかつ環境温度よりも高い場合に、前記冷却水が前記熱交換部を経由して前記蒸発器に供給されるようになっている請求項1又は請求項2記載の車両用化学蓄熱システム。
【請求項5】
前記凝縮器と前記蒸発器とは、冷媒との熱交換により水蒸気を凝縮させ、熱媒との熱交換により水を蒸発させる蒸発・凝縮器として一体化されている請求項1〜請求項4の何れか1項記載の車両用化学蓄熱システム。
【請求項6】
前記車両は、走行用の駆動力を発揮するモータと、前記モータに電力を供給するバッテリとを備えたハイブリッド車両であり、
前記バッテリが前記加熱対象とされている請求項1〜請求項5の何れか1項記載の車両用化学蓄熱システム。
【請求項7】
前記内燃機関の排気ガスと前記冷却水との熱交換を行う排気熱回収器をさらに備え、
前記制御装置は、車両始動時に、前記排気熱を回収した冷却水を前記蒸発器に供給させるようになっている請求項1〜請求項5の何れか1項記載の車両用化学蓄熱システム。
【請求項8】
車両に搭載された内燃機関の排気熱により脱水反応を行って蓄熱し、水和反応により放熱する化学蓄熱材が内蔵された反応器と、
前記反応器から前記脱水反応に伴って放出された水蒸気を凝縮させる凝縮器と、
前記内燃機関の冷却水を熱源として水を蒸発させることで、前記反応器に前記水和反応のための水蒸気を供給するための蒸発器と、
前記冷却水を保温状態で貯留可能に構成された顕熱蓄熱器と、
前記反応器内の前記化学蓄熱材が水和反応により放熱した熱を加熱対象に伝える伝熱構造と、
前記車両の車両走行時に前記内燃機関の排気熱を前記反応器に供給させ、車両停止時に前記冷却水を前記顕熱蓄熱器に貯留させ、車両始動時に前記冷却水を前記顕熱蓄熱器を経由して前記蒸発器に供給させる制御装置と、
を備えた車両用化学蓄熱システム。
【請求項9】
前記反応器、前記凝縮器、及び前記蒸発器を連通する水蒸気系統は、予め大気圧未満に減圧されている請求項8記載の車両用化学蓄熱システム。
【請求項10】
前記制御装置は、車両始動時に、前記顕熱蓄熱器を経由した前記冷却水を前記蒸発器及び前記内燃機関に供給させるようになっている請求項8又は請求項9記載の車両用化学蓄熱システム。
【請求項11】
前記内燃機関の排気ガスと前記冷却水との熱交換を行う排気熱回収器をさらに備え、
前記制御装置は、車両停止時に、前記排気熱を回収した冷却水を前記顕熱蓄熱器に貯留させるようになっている請求項8〜請求項10の何れか1項記載の車両用化学蓄熱システム。
【請求項12】
車両に搭載された内燃機関の排気熱により脱水反応を行って蓄熱し、水和反応により放熱する化学蓄熱材が内蔵された反応器と、
前記反応器から前記脱水反応に伴って放出された水蒸気を冷媒との熱交換により凝縮させる凝縮器と、
前記冷媒を熱源として水を蒸発させることで、前記反応器に前記水和反応のための水蒸気を供給するための蒸発器と、
前記凝縮器から排出された冷媒を保温状態で貯留可能に構成された顕熱蓄熱器と、
前記反応器内の前記化学蓄熱材が水和反応により放熱した熱を加熱対象に伝える伝熱構造と、
車両走行時に前記内燃機関の排気熱を前記反応器に供給させ、前記車両の走行時又は停止時に前記冷媒を前記顕熱蓄熱器に貯留させ、車両始動時に前記冷媒を前記顕熱蓄熱器を経由して前記蒸発器に供給させる制御装置と、
を備えた車両用化学蓄熱システム。
【請求項13】
前記反応器、前記凝縮器、及び前記蒸発器を連通する水蒸気系統は、予め大気圧未満に減圧されている請求項12記載の車両用化学蓄熱システム。
【請求項14】
前記車両は、前記内燃機関の排気ガスを浄化するための排気触媒を有しており、
前記は閾触媒が前記加熱対象とされている請求項7〜請求項13の何れか1項記載の車両用化学蓄熱システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−108748(P2013−108748A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−4283(P2013−4283)
【出願日】平成25年1月15日(2013.1.15)
【分割の表示】特願2008−109104(P2008−109104)の分割
【原出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)