説明

車両用反射体

【課題】車両が減速中であることを後方車両等により確実に認識させることのできる車両用反射体を提供する。
【解決手段】
マッドガード3にリフレクター6を回動可能に設け、リフレクター6にアーム8を介して錘9を結合する。車両の減速時に錘9の慣性力によってリフレクター6を揺動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光の反射によって車両後方に注意を喚起する車両用反射体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の装備部品には、周囲と異なる着色によって表示等を目立たせ、後方車両の運転者等に視的印象を高めるように工夫されたものがある。
例えば、車体のホイールハウスの後部に装着されてタイヤからの泥等の跳ね上げを防止するマッドガードに着色した表示を付し、後方車両の運転者等にマッドガード上の表示を印象付けたり、デザイン性を高めたりしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭61−226373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この従来の装備部品においては、周囲と異なる着色のみで視覚的印象を高めるものであるため、視認者の注意を引き付けるのには限界があり、例えば、後方車両の運転者に減速時に注意を喚起するには不十分であるものと考えられる。
【0004】
このため、本出願人は、反射体をマッドガード等に一体に取り付け、その反射体の反射光によって後方車両の運転者等(以下、「後方車両等」と呼ぶ。)に注意を喚起することを検討している。しかし、マッドガード等に反射体をただ取り付けただけでは、後方車両等に常に同様な反射体の反射が視認されることになり、車両が減速中であることを後方車両等に把握させにくいうえ、減速時以外では却って後方車両等に目障りになる状況も考えられる。
【0005】
そこで、この発明は、車両が減速中であることを後方車両等により確実に認識させることのできる車両用反射体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決する請求項1に記載の発明は、車両後部に配置され、入射光を受けて車両後方側に光を反射する反射部(例えば、後述の実施形態におけるリフレクター6)と、車両に作用する減速度に応じて前記反射部を変位させる減速度感応変位手段(例えば、後述の実施形態における支持板7,アーム8,錘9,回動軸10)と、を備えたことを特徴とする。
これにより、車両走行時にブレーキ制動等によって車両が減速すると、減速度感応手段がその減速度に応じて反射部を変位させる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用反射体において、前記減速度感応変位手段は、車両に作用する減速度が設定値に満たないときに前記反射部を後方に対して不可視状態にする不可視モードと、車両に作用する減速度が設定値以上のときに前記反射部を後方に対して可視状態にする可視モードを備えることを特徴とする。
これにより、車両が大きく減速されない通常走行時には減速度感応変位手段が不可視モードに維持され、ブレーキ制動等によって減速度が設定値以上になると可視モードに切り換わる。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の車両用反射体において、前記減速度感応変位手段は、前記反射部を中立位置方向に付勢する付勢手段を備えていることを特徴とする。
これにより、反射部は、常に中立位置方向に付勢手段によって付勢されるため、車両の減速時等に大きな慣性力が入力されたときには、初期位置に向けた反復変位を繰り返すようになる。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用反射体において、前記反射部とは別に固定式の副反射部(例えば、後述の実施形態における固定リフレクター30)を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用反射体において、車輪後方のマッドガード(例えば、後述の実施形態におけるマッドガード3)に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、車両の減速時にその減速度に応じて反射部を変位させることができるため、車両が減速中であることを後方車両等に確実に認識させることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、ブレーキ制動等によって減速度が設定値以上になる場合にだけ反射部を可視状態にし、その他の場合に反射部を不可視状態にすることができるため、減速時以外の状況で反射部が後方車両等の目障りになることがないうえ、減速時には反射部によって後方車両等に強く注意を喚起することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、反射部が付勢手段によって常に中立位置方向に付勢されるため、車両の減速時等に反射部の揺れを継続させ、後方車両等に対する注意喚起効果を高めることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、反射部とは別に固定式の副反射部を設けたため、万一反射部が作動できない状況になっても後方車両の運転者等に固定式の副反射部で反射による注意喚起を行うことができる。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、車両後方の支障にならない部位で後方車両の運転者等に確実に注意喚起を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、「上」「下」と「前」「後」は、特別に断らない限り、車体に対しての上下と前後を意味するものとする。また、各実施形態の説明においては、同一部分には同一符号を付して重複する説明を省略するものとする。
【0017】
最初に、図1〜図4に示すこの発明の第1の実施形態について説明する。
この実施形態では、図1に示すように、この発明にかかる車両用反車体(以下、「反射体1」と呼ぶ。)は、後輪タイヤ2の後方側のマッドガード3に一体に設けられている。マッドガード3は、車体のリヤホイールハウス4の後部下端にビス止め等によって固定され、後輪タイヤ2の外周面に対峙するマッドガード本体5が樹脂によって一体に形成されるとともに、このマッドガード本体5のリヤホイールハウス4の下端から下方に突出する下方突出部5aに反車体1が設けられている。
【0018】
反射体1は、図2,図3に示すように、入射光を受けて光を反射する平板状のリフレクター6(反射部)と、このリフレクター6を支持する支持板7と、この支持板7の基部7aにアーム8を介して連結された錘9と、支持板7の基部7aをマッドガード本体5に回動可能に支持させる回動軸10と、この回動軸10の外周に配置され、リフレクター6、支持板7、及び、錘9を、錘9が鉛直下方を向く初期位置に付勢するコイルスプリング22(付勢手段)と、を備えている。回動軸10は車体幅方向に沿うように配置され、支持板7と錘9は回動軸10を中心として上下方向に回動するようになっている。支持板7と錘9側のアーム8は直角よりも若干広い角度に開いて結合され、リフレクター6は支持板7上の錘9と逆側の面に接合されている。したがって、図2,図3に示すように錘9が重力とコイルスプリング22の力によって鉛直下方に向いているときには、支持板7は水平よりも若干後方に持ち上がった状態に維持され、リフレクター6はその状態において車体の下面側に指向する。
なお、マッドガード本体5には、錘9の揺動時に錘9やアーム8との干渉を避けるために図示しない開口が設けられている。
【0019】
この反射体1は、以上のような構成であるため、車両に減速度が作用しない間は前述のように錘9が鉛直下方に位置され、リフレクター6は車体の下面側に指向しており、後方車両等からはリフレクター6が見えない状態(不可視モード)となっている。
【0020】
この状態からブレーキ制動等によって車両が減速されると、図4に示すように減速度に応じて錘9が前方に振れ上がり、その結果、アーム8と支持板7を介してリフレクター6が下方側に振れ下がる。これにより、リフレクター6の反射面は後方側に向き、後方車両等から視認可能な状態(可視モード)となる。そして、このとき錘9は車両の減速度に応じた振れをするため、急制動時等にはリフレクター6が急激に大きく振れ下がり、緩やかな減速時には緩やかに小さく振れ下がる。
なお、この実施形態においては、支持板7、アーム8、錘9および回動軸10がこの発明における減速度感応変位手段を構成している。
【0021】
以上のように、この反射体1は、車両の減速度に応じてリフレクター6が変位するため、リフレクター6の反射効果と振れ下がり効果とが相俟って、車両が減速状態であることを後方車両等に確実に認識させることができる。そして、このときのリフレクター6の振れ下がりの速度と大きさは減速度に応じたものとなるため、後方車両等には車両の減速状態をより正確に認識させることができる。
【0022】
また、この反射体1の場合、車両の減速時にのみリフレクター6が視認可能な位置まで振れ下がるようになっているため、減速時以外の状況でリフレクター6の反射が後方車両等の目障りになるようなこともない。
【0023】
また、この実施形態の反射体1においては、後輪タイヤ2の後方のマッドガード3に一体に設けるようにしているため、揺動作動する反射体1が邪魔になることがなく、しかも、後方車両からの視認も良好となる。
【0024】
次に、図5〜図7に示すこの発明の第2の実施形態について説明する。この実施形態の場合も、反射体101は、後輪タイヤ2の後方に位置されるマッドガード3の下方突出部5aに設けられている。
この実施形態の反射体101は、矩形板状のリフレクター106の延出方向の端部に板状の錘109が連続した長方形状を成すように接合され、リフレクター106の錘109との接合部の近傍部分が車体幅方向に沿う回動軸110を介してマッドガード本体105に軸支されている。以下、リフレクター106と錘109が一体に接合されものを回動プレート20と呼ぶものとする。
【0025】
マッドガード本体105の下方突出部105aの車体後方側面には、回動プレート20よりも一回り大きい方形状の凹部21が形成され、その凹部21に回動プレート20が回動可能に収容されている。凹部21は、回動プレート20の厚みに対して深さ方向の余裕を持ち、回動プレート21の設定角度範囲の上下方向の回動を許容するとともに、回動プレート21の設定角度範囲を超える変位を底壁21aによって規制するようになっている。また、回動軸110の外周には、図7に示すようにコイルスプリング22(付勢手段)が設けられ、回動プレート20がスプリング22によって常時初期位置に向けてに付勢されるようになっている。この実施形態の場合、回動プレート20の初期位置は、リフレクター106の外側面がマッドガード本体105の車体後方側に向く一般面25と面一になる傾斜位置とされている。
なお、この実施形態においては、回動プレート20と回動軸10、コイルスプリング22がこの発明における減速度反応変位手段を構成している。
【0026】
この反射体101においては、ブレーキ制動時等に車両に減速度が作用すると、回動プレート20の上部の錘109に慣性力が作用し、その結果、回動プレート20が一旦上部を前方に傾斜させた後、その前方傾斜を契機としてコイルスプリング22のばね力により、回動軸110を中心に前後に振り子状に変位を繰り返すようになる。これにより、リフレクター106が前後に揺れ、リフレクター106の揺れと反射効果によって後方車両等に車両が減速状態であることを確実に視認させることが可能になる。
【0027】
また、この反射体101は、リフレクター106と錘109が回動プレート20として一体の板状に形成され、この回動プレート20がマッドガード本体5の凹部21内に配置されているため、マッドガード本体5や反射体101の大型化を回避し、マッドガード3全体の小型化を図ることができる。
【0028】
図8は、この発明の第3の実施形態を示すものである。
この実施形態の反射体201は、第2の実施形態と同様に回動プレート20がマッドガード本体205に回動可能に取り付けられたものであるが、マッドガード本体205上の回動プレート20の側方位置には、車体後方側に指向する固定リフレクター30(副反射部)、つまり回動プレート20のように回動変位しない別のリフレクターが一体に取り付けられている。
なお、固定リフレクター30は回動プレート20の側部に限らず、回動プレート20の上下や周囲に配置することも可能である。
【0029】
この反射体201は、基本的に第2の実施形態と同様の機能を得ることができるが、マッドガード本体205上に回動プレート20と隣接して固定リフレクター30が設けられているため、万一、回動プレート20が後方車両等から見えにくい傾斜姿勢で作動できなくなることがあっても、固定リフレクター20によって最低限の反射機能を補償し、後方車両等に対する注意喚起を行うことができる。
【0030】
図9,図10は、この発明の第4の実施形態を示すものである。
この実施形態の反射体301は、上記の各実施形態と同様にマッドガード3の下方突出部に設けられているが、矩形状のリフレクター306が略円柱状の支持部材40の外面に取り付けられ、支持部材40がマッドガード本体305の車体後方側面に形成された円弧状の凹部41内に支持されている。支持部材40には回動軸310が設けられ、この回動軸310が凹部41の側壁間に車体幅方向に沿うように配置され、回動自在に支持されている。
【0031】
支持部材40の外周上の回動軸310を挟んでリフレクター306と反対側位置には錘309が一体に取り付けられ、慣性力等の外力が作用しない状況において錘309がほぼ鉛直下方を向き、リフレクター306がほぼ鉛直上方を向くようになっている。ただし、この実施形態の場合も、回動軸310の外周にはコイルスプリング22(付勢手段)が配置され、支持部材40がこのコイルスプリング22によって常時初期位置方向(錘309がほぼ鉛直下方を向く方向)に付勢されるようになっている。
また、マッドガード本体305の凹部41のうち、支持部材40が初期状態にあるときにリフレクター306に対峙する位置には、先端部がリフレクター306の反射面に当接するブラシ42が設けられている。
【0032】
この反射体301は、車両が大きく減速されない状況においては、図9に示すようにリフレクター306が上方を向き、後方車両等からはリフレクター306が見えない状態となっており、この状態から車両がブレーキ制動等によって大きく減速されると、図10に示すように、錘309が前方側上方に振り上がってリフレクター306が車体後方側に向くようになる。これにより、後方車両等からのリフレクター306の視認が可能となる。したがって、後方車両等に減速時に充分な注意喚起を促すことができる。
【0033】
また、この実施形態の反射体301においては、凹部41の上端位置にブラシ42が設けられているため、このブラシ42によって凹部41と支持部材40の間の隙間に埃や泥等が侵入するのを確実に防止することができるとともに、リフレクター306の反射面に付着した埃等をブラシ42の先端部で払い落とすことができる。したがって、この実施形態の場合、リフレクター306の安定的な回動と反射を長期に亙って維持することができる。
【0034】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の各実施形態においては、反射体をマッドガードに設けたが、反車体は車体後部のマッドガード以外の部分に設けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の第1の実施形態の反車体をマッドガードに用いた車両の側面図。
【図2】同実施形態の反射体のマッドガード上における配置を示す側面図。
【図3】同実施形態の反射体を示す側面図。
【図4】同実施形態の反射体の作動状態を示す側面図。
【図5】この発明の第2の実施形態の反射体のマッドガード上における配置を示す側面図。
【図6】同実施形態の反射体を取り付けた車両の背面図。
【図7】同実施形態を示す図6のA−A断面に対応する断面図。
【図8】この発明の第3の実施形態の反射体を取り付けた車両の背面図。
【図9】この発明の第4の実施形態の反射体のマッドガード上における配置を示す側面図。
【図10】同実施形態の反射体の作動状態を示す側面図。
【符号の説明】
【0036】
1,101,201,301…反射体(車両用反射体)
3…マッドガード
6,106,306…リフレクター(反射部)
7…支持板(減速度感応変位手段)
8…アーム(減速度感応変位手段)
9,109,309…錘(減速度感応変位手段)
10,110,310…回動軸(減速度感応変位手段)
20…回動プレート(減速度感応変位手段)
22…コイルスプリング(付勢手段,減速度感応変位手段)
30…固定リフレクター(副反射部)
40…支持部材(減速度感応変位手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後部に配置され、入射光を受けて車両後方側に光を反射する反射部と、
車両に作用する減速度に応じて前記反射部を変位させる減速度感応変位手段と、
を備えたことを特徴とする車両用反射体。
【請求項2】
前記減速度感応変位手段は、
車両に作用する減速度が設定値に満たないときに前記反射部を後方に対して不可視状態にする不可視モードと、
車両に作用する減速度が設定値以上のときに前記反射部を後方に対して可視状態にする可視モード
を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用反射体。
【請求項3】
前記減速度感応変位手段は、前記反射部を中立位置に付勢する付勢手段を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用反射体。
【請求項4】
前記反射部とは別に固定式の副反射部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用反射体。
【請求項5】
車輪後方のマッドガードに設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用反射体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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