説明

車両用収容ボックス

【課題】 小物入れとして用いられる車両用収容ボックスを、カップ受けとしても利用することができるようにする。
【解決手段】ボックス部3を突出位置に位置させ、かつ蓋体4を開位置に位置させたとき、蓋体4がほほ水平になるようにする。蓋体4の背面4aと対向するボックス部3の上壁部31bには、貫通孔33を形成する。この貫通孔33に飲料缶Cを上から挿入して蓋体4の背面4aに載置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、小物入れとして用いられる車両用収容ボックス、特にカップホルダーとしての機能が付加された車両用収容ボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用収容ボックスは、下記特許文献1に記載のように、前面が開口した収容部を有する本体部と、この本体部の下部に下端部が水平な軸線を中心として収容部の開口部を閉じた閉位置と開いた開位置との間を回動可能に設けられた蓋体とを有している。収容部の内部の下部には、水平な仕切り板が設けられており、この仕切り板と収容部の下壁部との間の空間には、トレイが前後方向へ出没可能に設けられている。トレイには、これを上下に貫通する貫通孔が形成されている。
【0003】
上記収容ボックスは、蓋体を開位置に開くことによって小物入れとして利用することができる。この場合、仕切り板から上側の収容部の内部が収容空間として用いられる。また、蓋体を開いた上体でトレイを引き出すことによってカップホルダーとして利用することができる。その場合、カップや飲料缶は、トレイの貫通孔に挿入され、蓋体の上に載置される。
【0004】
【特許文献1】特開閉7−172241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構成の収容ボックスにおいては、小物入れとして利用することができる収容部の内部空間を広くするために、仕切り板及びトレイはできる限り収容部の下部に配置される。ところが、トレイを下部に配置すると、閉位置に回動した蓋体とトレイとの上下方向の距離が短くなり、飲料缶等に対する貫通孔の保持位置と蓋体による載置位置との間の上下方向の距離が短くなる。このため、飲料缶等の安定性が悪いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の問題を解決するために、前面に開口する挿入孔を有する本体部と、上記挿入孔に挿入され、かつ前面部が開放された収容部を有するボックス部と、このボックス部の前面部の下部に下端部が水平な軸線を中心として上下方向へ回動可能に設けられた蓋体とを備え、上記ボックス部が、上記収容部のほぼ全部が上記挿入孔に挿入された収容位置と上記収容部の前端部が上記挿入孔から前方に突出した突出位置との間を移動可能とされ、上記蓋体が上記収容部の開口部を閉じた閉位置と上記収容部の開口部を開いた開位置との間を回動可能とされ、上記ボックス部が上記突出位置に位置し、かつ上記蓋体が上記開位置に位置したときに、上記挿入孔から突出し、かつ上記蓋体の上方に位置する上記収容部の上壁部には、当該上壁部を上下に貫通する貫通孔が形成されていることを特徴としている。
この場合、上記ボックス部が上記突出位置に位置しているとき、上記収容部の上壁部がその下壁部より前方に突出し、その突出した部分に上記貫通孔が形成されていることが望ましい。
また、上記ボックス部が上記収容位置と上記突出位置との間を円弧に沿って移動可能とされ、上記円弧の曲率中心が上記収容部の前端より斜め下前方に配置されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
上記特徴構成を有するこの発明において、車両用収容ボックスを小物入れとして用いる場合には、ボックス部を収容位置に位置させるとともに、蓋体を開位置に位置させる。そして、収容部に対してその開口部から小物を出し入れする。
また、収容ボックスをカップホルダーとして用いる場合には、ボックス部を突出位置に位置させるとともに、蓋体を開位置に位置させる。そして、飲料缶等を貫通孔にその上方から挿入し、蓋体に載置する。これにより、飲料缶等がボックス部及び蓋体によって支持される。ここで、貫通孔がボックス部の上壁部に形成されているので、貫通孔と蓋体との間の距離を大きくすることができる。したがって、飲料缶等を安定して支持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1〜図4は、この発明に係る車両用収容ボックスの一実施の形態を示す。この実施の形態の車両用収容ボックス1は、本体部2、ボックス部3及び蓋体4を有している。
【0009】
本体部2は、格納箱部21と取付板部22とから構成されている。格納箱部21は、車室に臨む前面部が開放された箱状をなしており、ほぼ水平な下壁部21aと、曲率中心Oを中心とする円弧に沿って延びる上壁部21bと、下壁部21aと上壁部21bとの両側部間にそれぞれ設けられた側壁部21cと、格納箱部21の後端開口部を閉じる奥壁部21dとによって構成されている。上壁部21bの曲率中心Oは、下壁部21aより下側で、上壁部21bの前端より前方に配置されている。つまり、斜め下前方に配置されている。格納箱部21の前端は、下方へ向かうにしたがって車両の前方(格納箱部21の後方)へ向かうように傾斜させられている。この結果、上壁部21bの前端が下壁部21aの前端より前方にしている。格納箱部21の内部が収容孔23になっている。
【0010】
取付板部22は、格納箱部21の前端部外面にその全周にわたって形成されており、前端部外面から外側に突出させられている。取付板部22は、格納箱部21の前端と同様に傾斜させられている。特にこの実施の形態では、格納箱部21の前端及び取付板部22が、中凸になるように湾曲した状態で傾斜させられている。取付板部22は、車室の前端に配置されたインストルメントパネル(図示せず)の助手席の前方下部に形成された切欠き部にほとんど隙間なく嵌合されるとともに、インストルメントパネルに固定されている。取付板部22は、インストルメントパネルと一体に形成してもよい。その場合には、格納箱部21もインストルメントパネルに一体に形成される。
【0011】
ボックス部3は、収容部31とフランジ部32とから構成されている。収容部31は、車室に臨む前面部が開放された箱状をなしており、格納箱部21とほぼ相似な形状に形成されている。したがって、収容部31も、水平な下壁部31aと、曲率中心Cを中心とする円弧に沿って延びる上壁部31bと、下壁部31aと上壁部31bとの両側部間に設けられた側壁部31cと、収容部31の後端開口部を閉じる奥壁部31dとによって構成されている。また、収容部31においても、上壁部31bの前端が下壁部31aの前端より前方に位置するよう、収容部31の前端が格納箱部21の前端と同様に傾斜させられている。フランジ部32は、収容部31の前端部外面にその全周にわたって形成されており、前端部外面から外側に突出させられている。フランジ部32は、取付板部22より一回り小さく形成されており、取付板部22と同様な形状に形成されるとともに、同様に傾斜させられている。
【0012】
収容部31は、挿入孔23に移動可能に挿入されており、それによってボックス部3が本体部2に対し図2に示す収容位置と図4に示す突出位置との間を移動可能になっているボックス部3の収容位置は、フランジ部32の背面が取付板部22の前面に突き当たることによって定められている。ボックス部3が収容位置に位置すると、収容部31のほぼ全体が挿入孔23内に収容される。ボックス部31の突出位置は、本体部2とボックス部3との間に設けられたストッパ機構(図示せず)によって定められており、ボックス部3が突出位置に位置すると、収容部31の前部のうちの所定の長さの範囲が挿入孔23から車室内に突出する。
【0013】
ボックス部3は、収容位置と突出位置との間を、曲率中心Oを中心とする円弧上を移動するようになっている。すなわち、格納箱部21の側壁部21cの内面の上部には、曲率中心Oを中心とする円弧上を延びるガイド溝24が形成されている。一方、収容部31の側壁部31cの外面の上部には、ガイド溝24と同一の円周上を延びる突条(図示せず)が形成されている。この突条がガイド溝24にその長手方向へ移動可能に嵌り込むことにより、収容部31が曲率中心Oを中心とする円弧に沿って移動し、ひいてはボックス部3が本体部2に対し曲率中心Oを中心とする円弧上を移動するようになっている。なお、ガイド溝24を側壁部31cの外面の上部に形成し、突条を側壁部21cの内面の上部に形成してもよい。
【0014】
蓋体4は、収容部31の開口部の形状とほぼ同様な断面形状を有する板材からなるものであり、その下端部が収容部31の下端部に左右方向に延びる水平な軸線を中心として回動可能に連結されている。蓋体4の回動範囲は、図2に示す閉位置と図4に示す開位置との間に規制されている。蓋体4の閉位置及び開位置は、蓋体4とボックス部3との間に設けられたストッパ機構(図示せず)によって定められている。蓋体4は、閉位置に回動すると、収容部31の開口部にほとんど隙間なく嵌合して開口部を閉じる。その一方、開位置に回動すると、収容部31の開口部を車室側に向かって開く。開位置に回動した蓋体4は、ボックス部3が収容位置に位置しているときには、前方(車両の後方)へ向かって上り勾配をなすように傾斜している。しかし、ボックス部3が突出位置に回動したときには、曲率中心Oが収容部31の斜め下前方に配置された円弧に沿ってボックス部3が収容位置から突出位置まで回動し、ボックス部3と一緒に蓋体4が回動する結果、蓋体4はほぼ水平になる。
【0015】
収容部31の上壁部31bには、これを上下に貫通する貫通孔33が形成されている。この貫通孔33は、ボックス3が突出位置に位置しているときに挿入孔23から車室内に突出する上壁部21bの前端部に配置されている。しかも、貫通孔33は、蓋体4が開位置に位置しているとき、蓋体4の背面4aと上下に対向するように配置されている。貫通孔33の大きさは、飲料缶Cやコップ等の飲料容器を上から挿入することができる大きさに設定されている。貫通孔33に挿入された飲料缶C等は、開位置に位置している蓋体4の背面4a上に、特にこの実施の形態では背面4aの下端部(閉位置に位置しているときに下側に位置する蓋体4の端部)上に載置される。貫通孔33は、収容部31及び蓋体4の大きさにより、一つだけ形成されることもあり、複数形成されることもある。
【0016】
上記構成の車両用収容ボックス1においては、ボックス部3を収容位置に位置させるとともに、蓋体4を開く。これにより、小物を収容部31内にその開口部から出し入れすることができ、ボックス1を小物入れとして使用することができる。
【0017】
また、ボックス部3を突出位置に位置させるとともに、蓋体4を開くと、貫通孔33が車室内に露出する。そこで、貫通孔33にその上方から飲料缶Cを挿入して蓋体4の背面4a上に載置する。これによって、ボックス1をコップ受けとして使用することができる。ここで、貫通孔33が上壁部31bに形成されているので、貫通孔33と蓋体4の背面4aとの間の距離を十分に長くすることができる。したがって、飲料缶C等を安定して支持することができる。
【0018】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、ボックス部3を本体部2に対して曲率中心Oを中心とする円弧に沿って移動させているが、下壁部21aに沿って、つまり前後方向へほぼ水平に移動させるようにしてもよい。その場合には、蓋体4を開位置に位置したときにほぼ水平になるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の一実施の形態を示す正面図である。
【図2】ボックス部を収容位置に位置させるとともに、蓋体を閉位置に位置させた状態で示す図1のX−X線に沿う断面図である。
【図3】ボックス部を収容位置に位置させるとともに、蓋体を開位置に位置させた状態で示す図2と同様の断面図である。
【図4】ボックス部を突出位置に位置させるとともに、蓋体を開位置に位置させた状態で示す図2と同様の断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 車両用収容ボックス
2 本体部
3 ボックス部
4 蓋体
23 挿入孔
31b 上壁部
33 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開口する挿入孔を有する本体部と、上記挿入孔に挿入され、かつ前面部が開放された収容部を有するボックス部と、このボックス部の前面部の下部に下端部が水平な軸線を中心として上下方向へ回動可能に設けられた蓋体とを備え、上記ボックス部が、上記収容部のほぼ全部が上記挿入孔に挿入された収容位置と上記収容部の前端部が上記挿入孔から前方に突出した突出位置との間を移動可能とされ、上記蓋体が上記収容部の開口部を閉じた閉位置と上記収容部の開口部を開いた開位置との間を回動可能とされ、上記ボックス部が上記突出位置に位置し、かつ上記蓋体が上記開位置に位置したときに、上記挿入孔から突出し、かつ上記蓋体の上方に位置する上記収容部の上壁部には、当該上壁部を上下に貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とする車両用収容ボックス。
【請求項2】
上記ボックス部が上記突出位置に位置しているとき、上記収容部の上壁部がその下壁部より前方に突出し、その突出した部分に上記貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用収容ボックス。
【請求項3】
上記ボックス部が上記収容位置と上記突出位置との間を円弧に沿って移動可能とされ、上記円弧の曲率中心が上記収容部の前端より斜め下前方に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用収容ボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−100537(P2008−100537A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282279(P2006−282279)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(000100366)しげる工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】