車両用収納箱

【課題】本発明は、より簡素な構造を有し、製造コストの安価な車両用収納箱を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係る車両用収納箱は、前面2に開口部5が形成される収納箱本体1と、前記開口部5に対して開閉自在に取り付けられる蓋体10とを備える車両用収納箱であって、前記収納箱本体1には、該収納箱本体1の奥行方向に沿って延びるレール30が設けられるとともに、前記収納箱本体1の高さ方向及び奥行方向に沿う平面内で回転可能にして前記レール30に保持され且つ該レール30をスライド可能な連結体20によって、前記収納箱本体1と蓋体10と連結されることを特徴とする。
【解決手段】本発明に係る車両用収納箱は、前面2に開口部5が形成される収納箱本体1と、前記開口部5に対して開閉自在に取り付けられる蓋体10とを備える車両用収納箱であって、前記収納箱本体1には、該収納箱本体1の奥行方向に沿って延びるレール30が設けられるとともに、前記収納箱本体1の高さ方向及び奥行方向に沿う平面内で回転可能にして前記レール30に保持され且つ該レール30をスライド可能な連結体20によって、前記収納箱本体1と蓋体10と連結されることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック等の車両に搭載され、工具や備品等の被収納物(以下、単に「被収納物」という)を収納する車両用収納箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラック等の車両では、荷台の下に、被収納物を収納するための収納箱が搭載されるのが一般的である。これら車両用収納箱は、車両の側面側から被収納物を出し入れする態様とすべく、収納箱本体に設けられる開口部を車両の側面側に向けて車両に取り付けられる。そして、この種の車両用収納箱としては、蓋体及び収納箱本体が該開口部の下側に取り付けられたヒンジによって連結され、蓋体を下側を中心として回転させる態様(即ち、上方から下方に向けて開き、下方から上方に向けて閉じる態様)で開閉されるものが一般的であった。なお、これら車両用収納箱は、長尺な被収納物をも収納可能なように、幅が高さや奥行に比して大きく構成されるものが一般的である。
【0003】
ところで、近年、巻き込み防止を図るべく、車両には、荷台の下の側面に沿って巻き込み防止用のサイドバンパーが備えられている。このため、蓋体を下側を回転中心として回転させる上記のような従来の車両用収納箱では、蓋体とサイドバンパーとが干渉してしまい、蓋体の開閉が困難な場合があるとともに、被収納物の出し入れが困難となる場合もあった。
【0004】
このような不都合を解消すべく、近年、蓋体を上側を中心として回転させる態様(即ち、下方から上方に向けて開き、上方から下方に向けて閉じる態様)で開閉する車両用収納箱が種々提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2等)。これらの収納箱は、収納箱本体と蓋体とを連結する連結体が収納箱本体の両側部の所定箇所を回転中心として該所定箇所において回転自在に設けられており、即ち、回転動作のみによって蓋体を開閉するように構成されるものである。
【特許文献1】特許第3631811号公報
【特許文献2】特開平11−222280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの車両用収納箱では、蓋体の開閉を回転動作のみで実現可能とするために構造が複雑となってしまい、結果として製造コストが高くならざるを得ない。また、収納箱本体の両側部において回転可能に保持される蓋体は、車両用収納箱の幅に対応して横幅が大きくなりがちである。このため、僅かな寸法の誤差であっても両側同士の回転中心のずれに影響を及ぼし、蓋体の回転がスムーズでなくなるなどの問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、より簡素な構造を有し、製造コストの安価な車両用収納箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両用収納箱は、前面に開口部が形成される収納箱本体と、前記開口部に対して開閉自在に取り付けられる蓋体とを備える車両用収納箱であって、前記収納箱本体には、該収納箱本体の奥行方向に沿って延びるレールが設けられるとともに、前記収納箱本体の高さ方向及び奥行方向に沿う平面内で回転可能にして前記レールに保持され且つ該レールをスライド可能な連結体によって、前記収納箱本体と蓋体とが連結されることを特徴とする。
【0008】
上記構成からなる車両用収納箱によれば、連結体がレールに対して回転可能且つスライド可能であり、そこで、蓋体を上方へ移動させ且つ奥行方向へ移動させて、閉塞状態にある蓋体の開放が行われる。例えば、蓋体を収納箱本体の開口部から前方側に跳ね上げる態様で回転させて蓋体を収納箱本体より上方に移動させた後に奥行方向にスライドさせる方法を採れば、蓋体の開閉に必要な収納箱本体の上方のスペースを小さく止めることができ、近年主流となっている低床化型の車両に搭載される車両用収納箱として好適である。
【0009】
ところで、上記構成からなる車両用収納箱においては、前記レールは、前記収納箱本体の側面における高さ方向上端部に設けられるものが好ましい。このようにすれば、蓋体を奥行方向にスライドさせる際の蓋体とレールの高さ位置が同等となるため、蓋体をスライドさせるべくかけられる力を損失させることなく、容易に蓋体をスライドさせることができる。
【0010】
また、前記蓋体と連結体とは、相対回転可能に接続される構成を採用することができる。このようにすれば、蓋体に対して連結体を相対回転させつつ該連結体を奥行方向にスライドさせることにより、蓋体を収納箱本体の開口部に沿わせる態様で上方にスライドさせることができ、蓋体を前方に張り出させることなく蓋体の開放を行うことができる。即ち、蓋体の操作においては、上述のように、蓋体を収納箱本体の開口部から前方側に跳ね上げる態様で回転させて蓋体を収納箱本体より上方に移動させた後に奥行方向にスライドさせるだけでなく、蓋体を回転可能な所定の高さまでスライドさせた後、蓋体を回転させ、奥行方向に沿ってスライドさせる方法を採用することもできる。
【0011】
さらに、前記蓋体と連結体とは、固定されて相対回転不能な状態と、相対回転可能な状態とを切り換え可能な構成を採用することもできる。このようにすれば、車両用収納箱が搭載される車両に合わせて上述した二つの操作方法の何れかに適宜切り替え可能な車両用収納箱とすることができる。
【0012】
また、前記レールの前方箇所には、前記蓋体の閉塞時に前記連結体の一部が当接して、該連結体に対して奥行方向への付勢力を発生させる弾性部材が備えられる構成を採用した場合には、弾性部材の付勢力により蓋体が開口部側に押し付けられた状態となり、閉塞状態を密なものとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、車両用収納箱の構造をより簡素なものとし、製造コストを安価にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明に係る車両用収納箱の一実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0015】
本実施形態に係る車両用収納箱は、車両のシャーシなどにステーを用いて取り付けられるものであり、図1に示すように、直方体状の概略形状を有し、工具や備品等の被収納物を出し入れするための開口部5を有する収納箱本体1と、前記開口部5に対して開閉自在に取り付けられる蓋体10とを備える。また、収納箱本体1と蓋体10とは、所定の長さを有する連結体20により連結される。
【0016】
収納箱本体1の前面2は、図2(A)に示すように、高さ方向上方に偏った位置に前記開口部5を有する。また、前面2は、高さ方向に平行な下方の部分と、高さ方向に対して傾斜する上方の部分とで構成され、前記開口部5は、かかる上方の部分に位置する。さらに、前記開口部5の外周は、雨水等の浸入を防止すべく、前方側に向けて端縁から突出するとともに外側に折り返された形状を有する突出部6によって縁取りされる。
【0017】
収納箱本体1の側面3は、図2(B)に示すように、奥行方向前方側の端縁が高さ方向に対して傾斜し、台形状の概略形状を有する。該側面3の上端部には、収納箱本体1の奥行方向に沿って延びるレール30が設けられる。なお、奥行方向には、水平方向に平行なものの他、水平方向に対して傾斜するものも含まれ、奥行方向に沿って延びるレールとしては、連続的でありつつも位置によって水平方向に対する傾斜角度が異なるものも考えられる。
【0018】
前記蓋体10は、前記開口部5に対応した形状を有し、該開口部5よりも大きく、且つ、少なくとも収納箱本体1の前面2よりも小さく構成される。具体的には、蓋体10は、所定の厚みを有する四角形状の部材であり、収納箱本体の前面2と同等の幅(横寸法)を有する。また、蓋体10には、取っ手17が取り付けられる。そして、蓋体10には、前記収納箱本体1の開口部5の外周に設けられる突出部6に位置合わせされる突出部が設けられており、蓋体10が閉塞される際には、これら突出部同士が密接するか若しくは近接することにより雨水等の浸入経路を断つ状態となって、防水効果をより高めることができる。
【0019】
また、蓋体10の幅方向両側には、連結体20と接続する接続部11が設けられる。該接続部11は、蓋体10の幅方向に直交する縦方向の略中間位置に設けられる。なお、接続部11の位置は、これに限られず、蓋体10の縦方向のいずれの位置にあってもよい。
【0020】
この接続部11は、蓋体10の幅方向両側面から蓋体10の厚み方向に向かって収納箱本体1側に突出させて形成される。また、接続部11は、蓋体10が収納箱本体1に取り付けられると収納箱本体1の側面3との間に連結体20の他端部が配置される空間が存在することとなるように形成される。具体的には、接続部11は、蓋体10の厚み方向における中間位置で屈曲しており、厚み方向先端側ほど幅方向外側に拡がるように傾斜する傾斜部11aと、厚み方向に沿う先端部11bとを有する。
【0021】
前記レール30は、車両用収納箱が有する前記二つの側面3,3のそれぞれに設けられる。また、レール30は、収納箱本体1の幅方向外側を向いて設けられ、前記連結体20は、収納箱本体1の外側からレール30に保持される態様となる。そして、レール30は、収納箱本体1の内側に収まるように設けられる。具体的には、レール30は、収納箱本体1の側面3と上面4とで画される角部の一部を構成する態様で設けられる。前記レール30は、前記連結体20の一部(具体的には、後述するスライド部材22)を収容するとともに脱落を防止するように構成される。
【0022】
レール30と収納箱本体1との具体的な関連構成を、図3に基づいて説明する。図3(A)に示すように、収納箱本体1の側面3を構成する板部材の上端部は、幅方向内側に屈曲させて階段状に形成され、上面4を構成する板部材と組み合わさって、前記レール30を受け入れる凹部を形成する。一方、レール30は、側面部分にスリットが形成される長尺な筒状部材であり、前記凹部に嵌め込まれる。具体的には、レール30は、細長い板部材を端縁部同士が所定の間隔をおいて対向するように屈曲させて形成された断面矩形C字状の部材である。
【0023】
レール30の前方箇所には、図3(B)に示すように、例えばスポンジ等の弾性部材31が備えられており、蓋体10が開口部5を閉塞して連結体20がレール30の奥行方向前方側箇所に位置する際に、連結体20が当接して該連結体20を奥行方向に付勢する。
【0024】
前記連結体20は、所定の長さを有し、一端部が前記レール30にスライド可能に保持され、他端部が前記蓋体10と回転可能に接続する。具体的には、連結体20は、該連結体20の一端側に位置し、前記レール30によって案内されるスライド部材22と、所定長さを有する腕部材23とを備えて構成される。
【0025】
前記スライド部材22は、図3に示すように、円形状の断面を有する車輪状の部材であり、腕部材23の一端部24と相対回転可能に連結される。具体的には、前記スライド部材22と腕部材23とは、ワッシャーを挟んで軸部材に支持され、該軸部材がレール30の前記スリットを通過する態様で該レール30に保持される。また、腕部材23の他端部25は、蓋体10の接続部11と相対回転可能に連結される。
【0026】
図4(A)に基づいて説明すると、腕部材23は、前記スライド部材22と相対回転可能に連結される一端部24と、接続部11と相対回転可能に連結される他端部25とを有する。他端部25は、蓋体10に対向する端縁25aが、蓋体10と連結体20との相対回転の際に蓋体10の接続部11(具体的には、前記傾斜部11a)に当接若しくは干渉しないように形成される。具体的には、他端部25の回転中心25bから端縁25aまでの寸法が、接続部11の傾斜部11aまでの距離よりも小さくなるように形成される。また、端縁25aは、円弧状に形成される。
【0027】
なお、この車両用収納箱は、通常、上述のような構成を有する腕部材23を用い、連結体20と蓋体10とが相対回転可能な状態で用いられるものであるが、腕部材23を別に用意される腕部材23’と交換することにより、相対回転不能な状態とすることができる。その場合の腕部材23’は、蓋体10に対向する端縁25a’が、蓋体10と連結体20との相対回転の際に蓋体10の接続部11(具体的には、前記傾斜部11a)に当接若しくは干渉するように形成される。具体的には、図4(B)に示すように、端縁25a’は、直線状に形成され、角が蓋体10の接続部11に当接若しくは干渉する。
【0028】
また、車両用収納箱には、蓋体10の開放をロックするロック機構12及び施錠機構16が備えられる。ロック機構12は、蓋体10の縦方向下方位置に取り付けられるフック部材12aと、該フック部材12aに係止される鈎杆12cを有し、収納箱本体1の前面2(具体的には、前面2における前記下方の部分)に取り付けられるキャッチ12bとで構成される。なお、ロック機構12は、蓋体10及び収納箱本体1の前面2の幅方向両側に離間して二箇所に設けられる。また、前記施錠機構16は、蓋体10及び収納箱本体1の前面2の幅方向中間位置に一つ設けられる。
【0029】
次に、本実施形態に係る車両用収納箱の蓋体10の操作方法について説明する。蓋体10の操作方法としては、主に以下の二つが挙げられる。
【0030】
まず、第一の操作方法について、図5及び図2(B)に基づいて説明する。通常、車両用収納箱は、蓋体10が開口部5を閉塞する状態となっている(図2(B)参照)。次に、蓋体10を前方側に跳ね上げる態様で上方に回転させる(図5(A)参照)。そして、蓋体10が収納箱本体1より上方の高さ(図では、レール30と蓋体10とが同程度の高さ)且つ蓋体10と収納箱本体1の上面4とが略平行となるまで回転させる(図5(B)参照)。最後に、連結体20をレール30に案内させる要領で、蓋体10を収納箱本体1の上面4内に収まる位置まで奥行方向にスライドさせて(図5(C)参照)、蓋体10の開放動作が終了する。なお、閉塞動作は、逆の手順で行われる。
【0031】
次に、第二の操作方法について、図6及び図2(B)に基づいて説明する。初期の状態は、第一の場合と同様であり(図2(B)参照)、次に、蓋体10を開口部5に沿わせる態様で所定高さまで上方にスライドさせる。このとき、蓋体10の動きに伴って、連結体20の前記他端部が奥行方向にスライドし、連結体20が蓋体10に対して相対回転する。具体的には、連結体20と蓋体10との接続部分である接続部11(より具体的には、蓋体10の回転中心)が収納箱本体1より上方の高さとなるまでスライドさせる(図6(A)参照)。そして、蓋体10の上半分が収納箱本体1の上面4の上に配置される態様となるように蓋体を回転させる(図6(B)参照)。これにより、蓋体10全体が収納箱本体1の上面4より上方の高さとなる。最後に、蓋体10を収納箱本体1の上面4内に収まる位置までスライドさせて(図6(C)参照)、蓋体10の開放動作が終了する。なお、閉塞動作は、逆の手順で行われる。
【0032】
なお、蓋体10は、上記のどちらかの操作方法に従うことによってのみ開閉可能であるというものではなく、蓋体10を周囲の物体(例えばサイドバンパーや荷箱など)に不用意に当ててしまわない程度に、より自然に操作されるものであって構わない。即ち、開放動作において、蓋体10を上方にスライドさせつつ前方に引き寄せ、蓋体10の高さが増すに従って蓋体10を回転させて収納箱本体1の上面4に沿うようにし、蓋体10を奥行方向に沿ってスライドさせつつ、最終的に蓋体10を収納箱本体1の上面4内に収めるようにする方法であってもよい。
【0033】
以上のように、本実施形態に係る車両用収納箱によれば、車両用収納箱の構造をより簡素なものとし、製造コストを安価にすることができる。また、連結体20が収納箱本体1に対して回転可能且つスライド可能であるとともに蓋体10に対しても回転可能であることにより、連結体20が比較的自由に動き易く、操作者の手の動きに追随する蓋体10の自然な動きによって蓋体10の開閉をスムーズに行うことができる。その際、蓋体10の回転中心となる連結体20がスライド可能であるため、回転中心の位置が常時微調整されることで、収納箱本体1や蓋体10の寸法誤差による影響を小さくして開閉動作を容易に行うことができる。
【0034】
なお、上記の第一の操作方法に則れば、蓋体10を収納箱本体1の上面4程度の高さ位置以上に回転させることを要しないので、蓋体10の開閉に必要な収納箱本体1の上方のスペースを小さく止めることができ、近年主流となっている低床化型の車両に搭載される車両用収納箱として好適である。一方、第二の操作方法に則れば、蓋体10を前方に張り出させることなく蓋体10の開閉を行うことができるため、車両用収納箱の前方に存在するサイドバンパーに蓋体10を当ててしまうことを防止できる。また、前記連結体20と蓋体10とは、蓋体10の縦方向の略中間位置において接続されるため、第二の操作方法において蓋体10を回転させる際に、蓋体10が前方に張り出す量を少なく抑えることができる。
【0035】
また、レール30が側面3の上端部に設けられることにより、奥行方向にスライドさせる際には、高さ方向にコンパクトに圧縮されて、蓋体10と連結体20とレール30とが並ぶ状態(より具体的には、略平行な状態)となるため、結果として開閉動作を行うために必要なスペースが小さくて済む。また、蓋体10とレール30の高さ位置が同等となるため、蓋体10をスライドさせるべくかけられる力を損失させることなく、容易に蓋体10をスライドさせることができる。
【0036】
そして、レール30が収納箱本体1の内側に収まるように設けられるため、車両用収納箱の外観形状は、全体的に不要な突出部分のないものとなる。これにより、車両用収納箱を車両のシャーシなどに据え付ける際に用いるステーなどを取り付けやすく、従って、車両用収納箱をシャーシに確実に据え付けることができる。
【0037】
また、上記車両用収納箱においては、ロックがかけられると、ロック機構12は、蓋体10を前方且つ下方に引き寄せるように力を作用させる。このとき、連結体20のスライド部材22は、レール30の奥行方向前方に位置する弾性部材31に圧接し、逆の方向への付勢力を受ける。従って、蓋体10の全体が収納箱本体1に対してより密接した状態で開口部5を閉塞し、防水等の効果を高めることができる。
【0038】
なお、本発明に係る収納箱は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0039】
例えば、上記実施形態に係る車両用収納箱においては、連結体20と蓋体10とが相対回転不能な状態及び相対回転可能な状態を切り替え可能に構成されるものであったが、これに限定されるものではなく、蓋体10と連結体20(具体的には、腕部材23の他端部25)とが一体的に固定され、常時回転不能な状態で用いられるものであってもよい。この場合には、上述した蓋体10の操作方法のうち後者は実現できないものの前者を利用できるため、近年の低床化の要請に十分対応した車両用収納箱とすることができ、また、部品点数及び工程数を減らしてより安価に製造することができる。
【0040】
また、上記実施形態に係る車両用収納箱においては、腕部材23を他端部25の端縁25aの形状が異なるものに変更することにより、相対回転可能な状態及び相対回転不能な状態を切り替えるものであったが、状態を切り替え可能な構成は、これに限定されるものではなく、例えば、腕部材23を特に取り替えることなく、接続部11と腕部材23とを固定して相対回転不能な状態とする一方、固定を解除して相対回転可能な状態とするものであってもよい。具体的には、腕部材23の他端部25と蓋体10の接続部11とを連結するボルトを締め付けたり緩めたりすることにより、圧接度合いを変更する方法が考えられる。
【0041】
さらに、上記実施形態に係る車両用収納箱おいては、レール30は両側面3,3に設けられるものであったが、片方に一つのみ設けられるものであってもよく、また、レール30が収納箱本体1の上面4に設けられ、連結体20が収納箱本体1の上面4及び前面2を横切って該収納箱本体1内に入り込むように動くものであってもよい。そして、レール30は側面3の上端部に設けられるものであったが、これに限定されるものではなく、側面3の上端部よりも下方の位置(例えば、側面3の高さ方向中間の位置)に設けられるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用収納箱を示す図であって、(A)は、全体斜視図を示し、(B)は、部分斜視図を示す。
【図2】同実施形態に係る車両用収納箱を示す図であって、(A)は、正面図を示し、(B)は、側面図を示す。
【図3】同実施形態に係る車両用収納箱のレール近傍を示す図であって、(A)は、正面断面図を示し、(B)は、側面図を示す。
【図4】同実施形態に係る車両用収納箱の連結体を構成する腕部材を示す図であって、(A)は、蓋体と連結体とを相対回転可能とする腕部材を示し、(B)は、蓋体と連結体とを相対回転不能とする腕部材を示す。
【図5】同実施形態に係る車両用収納箱の操作方法を説明する図であって、蓋体を前方側に跳ね上げる態様で開放する場合(第一の操作方法)の図を示す。
【図6】同実施形態に係る車両用収納箱の操作方法を説明する図であって、蓋体を上方にスライドさせる態様で開放する場合(第二の操作方法)の図を示す。
【符号の説明】
【0043】
1…収納箱本体、2…前面、3…側面、4…上面、5…開口部、6…突出部、10…蓋体、11…接続部、11a…傾斜部、11b…先端部、12…ロック機構、12a…フック部材、12b…キャッチ、12c…鈎杆、16…施錠機構、17…取っ手、20…連結体、22…スライド部材、23…腕部材、24…一端部、25…他端部、25a…端縁、25b…回転中心、30…レール、31…弾性部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック等の車両に搭載され、工具や備品等の被収納物(以下、単に「被収納物」という)を収納する車両用収納箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラック等の車両では、荷台の下に、被収納物を収納するための収納箱が搭載されるのが一般的である。これら車両用収納箱は、車両の側面側から被収納物を出し入れする態様とすべく、収納箱本体に設けられる開口部を車両の側面側に向けて車両に取り付けられる。そして、この種の車両用収納箱としては、蓋体及び収納箱本体が該開口部の下側に取り付けられたヒンジによって連結され、蓋体を下側を中心として回転させる態様(即ち、上方から下方に向けて開き、下方から上方に向けて閉じる態様)で開閉されるものが一般的であった。なお、これら車両用収納箱は、長尺な被収納物をも収納可能なように、幅が高さや奥行に比して大きく構成されるものが一般的である。
【0003】
ところで、近年、巻き込み防止を図るべく、車両には、荷台の下の側面に沿って巻き込み防止用のサイドバンパーが備えられている。このため、蓋体を下側を回転中心として回転させる上記のような従来の車両用収納箱では、蓋体とサイドバンパーとが干渉してしまい、蓋体の開閉が困難な場合があるとともに、被収納物の出し入れが困難となる場合もあった。
【0004】
このような不都合を解消すべく、近年、蓋体を上側を中心として回転させる態様(即ち、下方から上方に向けて開き、上方から下方に向けて閉じる態様)で開閉する車両用収納箱が種々提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2等)。これらの収納箱は、収納箱本体と蓋体とを連結する連結体が収納箱本体の両側部の所定箇所を回転中心として該所定箇所において回転自在に設けられており、即ち、回転動作のみによって蓋体を開閉するように構成されるものである。
【特許文献1】特許第3631811号公報
【特許文献2】特開平11−222280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの車両用収納箱では、蓋体の開閉を回転動作のみで実現可能とするために構造が複雑となってしまい、結果として製造コストが高くならざるを得ない。また、収納箱本体の両側部において回転可能に保持される蓋体は、車両用収納箱の幅に対応して横幅が大きくなりがちである。このため、僅かな寸法の誤差であっても両側同士の回転中心のずれに影響を及ぼし、蓋体の回転がスムーズでなくなるなどの問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、より簡素な構造を有し、製造コストの安価な車両用収納箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両用収納箱は、前面に開口部が形成される収納箱本体と、前記開口部に対して開閉自在に取り付けられる蓋体とを備える車両用収納箱であって、前記収納箱本体には、該収納箱本体の奥行方向に沿って延びるレールが設けられるとともに、前記収納箱本体の高さ方向及び奥行方向に沿う平面内で回転可能にして前記レールに保持され且つ該レールをスライド可能な連結体によって、前記収納箱本体と蓋体とが連結されることを特徴とする。
【0008】
上記構成からなる車両用収納箱によれば、連結体がレールに対して回転可能且つスライド可能であり、そこで、蓋体を上方へ移動させ且つ奥行方向へ移動させて、閉塞状態にある蓋体の開放が行われる。例えば、蓋体を収納箱本体の開口部から前方側に跳ね上げる態様で回転させて蓋体を収納箱本体より上方に移動させた後に奥行方向にスライドさせる方法を採れば、蓋体の開閉に必要な収納箱本体の上方のスペースを小さく止めることができ、近年主流となっている低床化型の車両に搭載される車両用収納箱として好適である。
【0009】
ところで、上記構成からなる車両用収納箱においては、前記レールは、前記収納箱本体の側面における高さ方向上端部に設けられるものが好ましい。このようにすれば、蓋体を奥行方向にスライドさせる際の蓋体とレールの高さ位置が同等となるため、蓋体をスライドさせるべくかけられる力を損失させることなく、容易に蓋体をスライドさせることができる。
【0010】
また、前記蓋体と連結体とは、相対回転可能に接続される構成を採用することができる。このようにすれば、蓋体に対して連結体を相対回転させつつ該連結体を奥行方向にスライドさせることにより、蓋体を収納箱本体の開口部に沿わせる態様で上方にスライドさせることができ、蓋体を前方に張り出させることなく蓋体の開放を行うことができる。即ち、蓋体の操作においては、上述のように、蓋体を収納箱本体の開口部から前方側に跳ね上げる態様で回転させて蓋体を収納箱本体より上方に移動させた後に奥行方向にスライドさせるだけでなく、蓋体を回転可能な所定の高さまでスライドさせた後、蓋体を回転させ、奥行方向に沿ってスライドさせる方法を採用することもできる。
【0011】
さらに、前記蓋体と連結体とは、固定されて相対回転不能な状態と、相対回転可能な状態とを切り換え可能な構成を採用することもできる。このようにすれば、車両用収納箱が搭載される車両に合わせて上述した二つの操作方法の何れかに適宜切り替え可能な車両用収納箱とすることができる。
【0012】
また、前記レールの前方箇所には、前記蓋体の閉塞時に前記連結体の一部が当接して、該連結体に対して奥行方向への付勢力を発生させる弾性部材が備えられる構成を採用した場合には、弾性部材の付勢力により蓋体が開口部側に押し付けられた状態となり、閉塞状態を密なものとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、車両用収納箱の構造をより簡素なものとし、製造コストを安価にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明に係る車両用収納箱の一実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0015】
本実施形態に係る車両用収納箱は、車両のシャーシなどにステーを用いて取り付けられるものであり、図1に示すように、直方体状の概略形状を有し、工具や備品等の被収納物を出し入れするための開口部5を有する収納箱本体1と、前記開口部5に対して開閉自在に取り付けられる蓋体10とを備える。また、収納箱本体1と蓋体10とは、所定の長さを有する連結体20により連結される。
【0016】
収納箱本体1の前面2は、図2(A)に示すように、高さ方向上方に偏った位置に前記開口部5を有する。また、前面2は、高さ方向に平行な下方の部分と、高さ方向に対して傾斜する上方の部分とで構成され、前記開口部5は、かかる上方の部分に位置する。さらに、前記開口部5の外周は、雨水等の浸入を防止すべく、前方側に向けて端縁から突出するとともに外側に折り返された形状を有する突出部6によって縁取りされる。
【0017】
収納箱本体1の側面3は、図2(B)に示すように、奥行方向前方側の端縁が高さ方向に対して傾斜し、台形状の概略形状を有する。該側面3の上端部には、収納箱本体1の奥行方向に沿って延びるレール30が設けられる。なお、奥行方向には、水平方向に平行なものの他、水平方向に対して傾斜するものも含まれ、奥行方向に沿って延びるレールとしては、連続的でありつつも位置によって水平方向に対する傾斜角度が異なるものも考えられる。
【0018】
前記蓋体10は、前記開口部5に対応した形状を有し、該開口部5よりも大きく、且つ、少なくとも収納箱本体1の前面2よりも小さく構成される。具体的には、蓋体10は、所定の厚みを有する四角形状の部材であり、収納箱本体の前面2と同等の幅(横寸法)を有する。また、蓋体10には、取っ手17が取り付けられる。そして、蓋体10には、前記収納箱本体1の開口部5の外周に設けられる突出部6に位置合わせされる突出部が設けられており、蓋体10が閉塞される際には、これら突出部同士が密接するか若しくは近接することにより雨水等の浸入経路を断つ状態となって、防水効果をより高めることができる。
【0019】
また、蓋体10の幅方向両側には、連結体20と接続する接続部11が設けられる。該接続部11は、蓋体10の幅方向に直交する縦方向の略中間位置に設けられる。なお、接続部11の位置は、これに限られず、蓋体10の縦方向のいずれの位置にあってもよい。
【0020】
この接続部11は、蓋体10の幅方向両側面から蓋体10の厚み方向に向かって収納箱本体1側に突出させて形成される。また、接続部11は、蓋体10が収納箱本体1に取り付けられると収納箱本体1の側面3との間に連結体20の他端部が配置される空間が存在することとなるように形成される。具体的には、接続部11は、蓋体10の厚み方向における中間位置で屈曲しており、厚み方向先端側ほど幅方向外側に拡がるように傾斜する傾斜部11aと、厚み方向に沿う先端部11bとを有する。
【0021】
前記レール30は、車両用収納箱が有する前記二つの側面3,3のそれぞれに設けられる。また、レール30は、収納箱本体1の幅方向外側を向いて設けられ、前記連結体20は、収納箱本体1の外側からレール30に保持される態様となる。そして、レール30は、収納箱本体1の内側に収まるように設けられる。具体的には、レール30は、収納箱本体1の側面3と上面4とで画される角部の一部を構成する態様で設けられる。前記レール30は、前記連結体20の一部(具体的には、後述するスライド部材22)を収容するとともに脱落を防止するように構成される。
【0022】
レール30と収納箱本体1との具体的な関連構成を、図3に基づいて説明する。図3(A)に示すように、収納箱本体1の側面3を構成する板部材の上端部は、幅方向内側に屈曲させて階段状に形成され、上面4を構成する板部材と組み合わさって、前記レール30を受け入れる凹部を形成する。一方、レール30は、側面部分にスリットが形成される長尺な筒状部材であり、前記凹部に嵌め込まれる。具体的には、レール30は、細長い板部材を端縁部同士が所定の間隔をおいて対向するように屈曲させて形成された断面矩形C字状の部材である。
【0023】
レール30の前方箇所には、図3(B)に示すように、例えばスポンジ等の弾性部材31が備えられており、蓋体10が開口部5を閉塞して連結体20がレール30の奥行方向前方側箇所に位置する際に、連結体20が当接して該連結体20を奥行方向に付勢する。
【0024】
前記連結体20は、所定の長さを有し、一端部が前記レール30にスライド可能に保持され、他端部が前記蓋体10と回転可能に接続する。具体的には、連結体20は、該連結体20の一端側に位置し、前記レール30によって案内されるスライド部材22と、所定長さを有する腕部材23とを備えて構成される。
【0025】
前記スライド部材22は、図3に示すように、円形状の断面を有する車輪状の部材であり、腕部材23の一端部24と相対回転可能に連結される。具体的には、前記スライド部材22と腕部材23とは、ワッシャーを挟んで軸部材に支持され、該軸部材がレール30の前記スリットを通過する態様で該レール30に保持される。また、腕部材23の他端部25は、蓋体10の接続部11と相対回転可能に連結される。
【0026】
図4(A)に基づいて説明すると、腕部材23は、前記スライド部材22と相対回転可能に連結される一端部24と、接続部11と相対回転可能に連結される他端部25とを有する。他端部25は、蓋体10に対向する端縁25aが、蓋体10と連結体20との相対回転の際に蓋体10の接続部11(具体的には、前記傾斜部11a)に当接若しくは干渉しないように形成される。具体的には、他端部25の回転中心25bから端縁25aまでの寸法が、接続部11の傾斜部11aまでの距離よりも小さくなるように形成される。また、端縁25aは、円弧状に形成される。
【0027】
なお、この車両用収納箱は、通常、上述のような構成を有する腕部材23を用い、連結体20と蓋体10とが相対回転可能な状態で用いられるものであるが、腕部材23を別に用意される腕部材23’と交換することにより、相対回転不能な状態とすることができる。その場合の腕部材23’は、蓋体10に対向する端縁25a’が、蓋体10と連結体20との相対回転の際に蓋体10の接続部11(具体的には、前記傾斜部11a)に当接若しくは干渉するように形成される。具体的には、図4(B)に示すように、端縁25a’は、直線状に形成され、角が蓋体10の接続部11に当接若しくは干渉する。
【0028】
また、車両用収納箱には、蓋体10の開放をロックするロック機構12及び施錠機構16が備えられる。ロック機構12は、蓋体10の縦方向下方位置に取り付けられるフック部材12aと、該フック部材12aに係止される鈎杆12cを有し、収納箱本体1の前面2(具体的には、前面2における前記下方の部分)に取り付けられるキャッチ12bとで構成される。なお、ロック機構12は、蓋体10及び収納箱本体1の前面2の幅方向両側に離間して二箇所に設けられる。また、前記施錠機構16は、蓋体10及び収納箱本体1の前面2の幅方向中間位置に一つ設けられる。
【0029】
次に、本実施形態に係る車両用収納箱の蓋体10の操作方法について説明する。蓋体10の操作方法としては、主に以下の二つが挙げられる。
【0030】
まず、第一の操作方法について、図5及び図2(B)に基づいて説明する。通常、車両用収納箱は、蓋体10が開口部5を閉塞する状態となっている(図2(B)参照)。次に、蓋体10を前方側に跳ね上げる態様で上方に回転させる(図5(A)参照)。そして、蓋体10が収納箱本体1より上方の高さ(図では、レール30と蓋体10とが同程度の高さ)且つ蓋体10と収納箱本体1の上面4とが略平行となるまで回転させる(図5(B)参照)。最後に、連結体20をレール30に案内させる要領で、蓋体10を収納箱本体1の上面4内に収まる位置まで奥行方向にスライドさせて(図5(C)参照)、蓋体10の開放動作が終了する。なお、閉塞動作は、逆の手順で行われる。
【0031】
次に、第二の操作方法について、図6及び図2(B)に基づいて説明する。初期の状態は、第一の場合と同様であり(図2(B)参照)、次に、蓋体10を開口部5に沿わせる態様で所定高さまで上方にスライドさせる。このとき、蓋体10の動きに伴って、連結体20の前記他端部が奥行方向にスライドし、連結体20が蓋体10に対して相対回転する。具体的には、連結体20と蓋体10との接続部分である接続部11(より具体的には、蓋体10の回転中心)が収納箱本体1より上方の高さとなるまでスライドさせる(図6(A)参照)。そして、蓋体10の上半分が収納箱本体1の上面4の上に配置される態様となるように蓋体を回転させる(図6(B)参照)。これにより、蓋体10全体が収納箱本体1の上面4より上方の高さとなる。最後に、蓋体10を収納箱本体1の上面4内に収まる位置までスライドさせて(図6(C)参照)、蓋体10の開放動作が終了する。なお、閉塞動作は、逆の手順で行われる。
【0032】
なお、蓋体10は、上記のどちらかの操作方法に従うことによってのみ開閉可能であるというものではなく、蓋体10を周囲の物体(例えばサイドバンパーや荷箱など)に不用意に当ててしまわない程度に、より自然に操作されるものであって構わない。即ち、開放動作において、蓋体10を上方にスライドさせつつ前方に引き寄せ、蓋体10の高さが増すに従って蓋体10を回転させて収納箱本体1の上面4に沿うようにし、蓋体10を奥行方向に沿ってスライドさせつつ、最終的に蓋体10を収納箱本体1の上面4内に収めるようにする方法であってもよい。
【0033】
以上のように、本実施形態に係る車両用収納箱によれば、車両用収納箱の構造をより簡素なものとし、製造コストを安価にすることができる。また、連結体20が収納箱本体1に対して回転可能且つスライド可能であるとともに蓋体10に対しても回転可能であることにより、連結体20が比較的自由に動き易く、操作者の手の動きに追随する蓋体10の自然な動きによって蓋体10の開閉をスムーズに行うことができる。その際、蓋体10の回転中心となる連結体20がスライド可能であるため、回転中心の位置が常時微調整されることで、収納箱本体1や蓋体10の寸法誤差による影響を小さくして開閉動作を容易に行うことができる。
【0034】
なお、上記の第一の操作方法に則れば、蓋体10を収納箱本体1の上面4程度の高さ位置以上に回転させることを要しないので、蓋体10の開閉に必要な収納箱本体1の上方のスペースを小さく止めることができ、近年主流となっている低床化型の車両に搭載される車両用収納箱として好適である。一方、第二の操作方法に則れば、蓋体10を前方に張り出させることなく蓋体10の開閉を行うことができるため、車両用収納箱の前方に存在するサイドバンパーに蓋体10を当ててしまうことを防止できる。また、前記連結体20と蓋体10とは、蓋体10の縦方向の略中間位置において接続されるため、第二の操作方法において蓋体10を回転させる際に、蓋体10が前方に張り出す量を少なく抑えることができる。
【0035】
また、レール30が側面3の上端部に設けられることにより、奥行方向にスライドさせる際には、高さ方向にコンパクトに圧縮されて、蓋体10と連結体20とレール30とが並ぶ状態(より具体的には、略平行な状態)となるため、結果として開閉動作を行うために必要なスペースが小さくて済む。また、蓋体10とレール30の高さ位置が同等となるため、蓋体10をスライドさせるべくかけられる力を損失させることなく、容易に蓋体10をスライドさせることができる。
【0036】
そして、レール30が収納箱本体1の内側に収まるように設けられるため、車両用収納箱の外観形状は、全体的に不要な突出部分のないものとなる。これにより、車両用収納箱を車両のシャーシなどに据え付ける際に用いるステーなどを取り付けやすく、従って、車両用収納箱をシャーシに確実に据え付けることができる。
【0037】
また、上記車両用収納箱においては、ロックがかけられると、ロック機構12は、蓋体10を前方且つ下方に引き寄せるように力を作用させる。このとき、連結体20のスライド部材22は、レール30の奥行方向前方に位置する弾性部材31に圧接し、逆の方向への付勢力を受ける。従って、蓋体10の全体が収納箱本体1に対してより密接した状態で開口部5を閉塞し、防水等の効果を高めることができる。
【0038】
なお、本発明に係る収納箱は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0039】
例えば、上記実施形態に係る車両用収納箱においては、連結体20と蓋体10とが相対回転不能な状態及び相対回転可能な状態を切り替え可能に構成されるものであったが、これに限定されるものではなく、蓋体10と連結体20(具体的には、腕部材23の他端部25)とが一体的に固定され、常時回転不能な状態で用いられるものであってもよい。この場合には、上述した蓋体10の操作方法のうち後者は実現できないものの前者を利用できるため、近年の低床化の要請に十分対応した車両用収納箱とすることができ、また、部品点数及び工程数を減らしてより安価に製造することができる。
【0040】
また、上記実施形態に係る車両用収納箱においては、腕部材23を他端部25の端縁25aの形状が異なるものに変更することにより、相対回転可能な状態及び相対回転不能な状態を切り替えるものであったが、状態を切り替え可能な構成は、これに限定されるものではなく、例えば、腕部材23を特に取り替えることなく、接続部11と腕部材23とを固定して相対回転不能な状態とする一方、固定を解除して相対回転可能な状態とするものであってもよい。具体的には、腕部材23の他端部25と蓋体10の接続部11とを連結するボルトを締め付けたり緩めたりすることにより、圧接度合いを変更する方法が考えられる。
【0041】
さらに、上記実施形態に係る車両用収納箱おいては、レール30は両側面3,3に設けられるものであったが、片方に一つのみ設けられるものであってもよく、また、レール30が収納箱本体1の上面4に設けられ、連結体20が収納箱本体1の上面4及び前面2を横切って該収納箱本体1内に入り込むように動くものであってもよい。そして、レール30は側面3の上端部に設けられるものであったが、これに限定されるものではなく、側面3の上端部よりも下方の位置(例えば、側面3の高さ方向中間の位置)に設けられるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用収納箱を示す図であって、(A)は、全体斜視図を示し、(B)は、部分斜視図を示す。
【図2】同実施形態に係る車両用収納箱を示す図であって、(A)は、正面図を示し、(B)は、側面図を示す。
【図3】同実施形態に係る車両用収納箱のレール近傍を示す図であって、(A)は、正面断面図を示し、(B)は、側面図を示す。
【図4】同実施形態に係る車両用収納箱の連結体を構成する腕部材を示す図であって、(A)は、蓋体と連結体とを相対回転可能とする腕部材を示し、(B)は、蓋体と連結体とを相対回転不能とする腕部材を示す。
【図5】同実施形態に係る車両用収納箱の操作方法を説明する図であって、蓋体を前方側に跳ね上げる態様で開放する場合(第一の操作方法)の図を示す。
【図6】同実施形態に係る車両用収納箱の操作方法を説明する図であって、蓋体を上方にスライドさせる態様で開放する場合(第二の操作方法)の図を示す。
【符号の説明】
【0043】
1…収納箱本体、2…前面、3…側面、4…上面、5…開口部、6…突出部、10…蓋体、11…接続部、11a…傾斜部、11b…先端部、12…ロック機構、12a…フック部材、12b…キャッチ、12c…鈎杆、16…施錠機構、17…取っ手、20…連結体、22…スライド部材、23…腕部材、24…一端部、25…他端部、25a…端縁、25b…回転中心、30…レール、31…弾性部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開口部が形成される収納箱本体と、前記開口部に対して開閉自在に取り付けられる蓋体とを備える車両用収納箱であって、
前記収納箱本体には、該収納箱本体の奥行方向に沿って延びるレールが設けられるとともに、
前記収納箱本体の高さ方向及び奥行方向に沿う平面内で回転可能にして前記レールに保持され且つ該レールをスライド可能な連結体によって、前記収納箱本体と蓋体とが連結されることを特徴とする車両用収納箱。
【請求項2】
前記レールは、前記収納箱本体の側面における高さ方向上端部に設けられることを特徴とする請求項1に記載の車両用収納箱。
【請求項3】
前記蓋体と連結体とは、相対回転可能に接続されることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用収納箱。
【請求項4】
前記蓋体と連結体とは、固定されて相対回転不能な状態と、相対回転可能な状態とを切り換え可能に構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用収納箱。
【請求項5】
前記レールの前方箇所には、前記蓋体の閉塞時に前記連結体の一部が当接して、該連結体に対して奥行方向への付勢力を発生させる弾性部材が備えられることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用収納箱。
【請求項1】
前面に開口部が形成される収納箱本体と、前記開口部に対して開閉自在に取り付けられる蓋体とを備える車両用収納箱であって、
前記収納箱本体には、該収納箱本体の奥行方向に沿って延びるレールが設けられるとともに、
前記収納箱本体の高さ方向及び奥行方向に沿う平面内で回転可能にして前記レールに保持され且つ該レールをスライド可能な連結体によって、前記収納箱本体と蓋体とが連結されることを特徴とする車両用収納箱。
【請求項2】
前記レールは、前記収納箱本体の側面における高さ方向上端部に設けられることを特徴とする請求項1に記載の車両用収納箱。
【請求項3】
前記蓋体と連結体とは、相対回転可能に接続されることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用収納箱。
【請求項4】
前記蓋体と連結体とは、固定されて相対回転不能な状態と、相対回転可能な状態とを切り換え可能に構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用収納箱。
【請求項5】
前記レールの前方箇所には、前記蓋体の閉塞時に前記連結体の一部が当接して、該連結体に対して奥行方向への付勢力を発生させる弾性部材が備えられることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用収納箱。
【図1】


【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】




【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【公開番号】特開2007−161130(P2007−161130A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−361274(P2005−361274)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(598051082)日本ボデーパーツ工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(598051082)日本ボデーパーツ工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
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