説明

車両用収納装置

【課題】 部品点数の少ない開閉機構を備えた車両用収納装置を提供する。
【解決手段】車両用収納装置の開閉機構3は、回転支持体32と、第1、第2閂部材33,34と、付勢部材35aと、操作部31とを備えている。回転支持体32は、リッド2に回動自在に軸支された回転中心部32b、及び回転中心部32bを中心に互いに反対側に配設された第1、第2嵌合突部32c、32dを有する。第1、第2閂部材33,34に設けられた第1、第2凹部36f、36gは、回転中心部32bを挟んで互いに反対側に延び、第1、第2嵌合突部32c、32dに嵌合されている。第1、第2閂部材33,34は、ボックス部1周縁に設けられた第1、第2係合部11a、11bに係脱可能に係脱するように進退する。付勢部材35aは、一端が第1閂部材33に係止され他端が第2閂部材34に係止されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リッドの開閉機構を備えた車両用収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のインストルメントパネルには、小物を収容するグラブボックスが設けられている。グラブボックスには、車室内側に開口をもつボックス部と、開口を開閉自在に被覆するリッドと、リッドを閉位置にロックし又はロックを解除する開閉機構が備えられている。
【0003】
このような開閉機構としては、例えば特許文献1に開示されたものがある。特許文献1に開示された開閉機構は、図18、図19に示すように、操作ノブ本体920及びキーシリンダ921をもつ操作ノブ92と、ノブ付勢手段93と、リンク部材94と、リンク付勢手段95と、第1閂部96と、第2閂部97と、を備えている。操作ノブ92は、ノブ付勢手段93によりリンク部材94の押圧を開始する位置に付勢されている。リンク部材94は、回動中心となる回動軸940と、操作ノブ92による押圧力を受ける受圧部943,944と、2つの入力部941,942とを有する。リンク部材94は、リンク付勢手段95により第1、第2閂部96,97の係合部961,971が係合孔991,992と係合する方向に付勢されている。
【0004】
特許文献1において、キーシリンダ921を施錠位置に配置すると、キーシリンダ921の押圧部924がリンク部材94を避け、このとき操作ノブ92を揺動させても押圧部924は受圧部943,944と当接しない。キーシリンダ921が解錠位置に配置されると、操作ノブ92の操作により押圧部924が受圧部943を押圧するのでリンク部材94の入力部941,942に連携されている第1、第2閂部96,97をスライドさせる。第1、第2閂部96,97は、ボックス部に設けた係合部961,971との係合が解除され、リッドが回動可能となる。リッドの回動によりボックス部が開口する。
【0005】
上記従来のグラブボックスは、1つのリンク部材94により2つの閂部96,97を同期して操作させることができるため、部品点数を削減できる。
【0006】
しかしながら、発明者は更に開発を重ね、更に部品点数の少ない開閉機構を備えたグラブボックスを開発した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−235794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、部品点数の少ない開閉機構を備えた車両用収納装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の車両用収納装置は、車両の内装部材に凹設されたボックス部と、該ボックス部に対して移動することで該ボックス部を開閉させるリッドと、該リッドを閉位置にロックし又は該ロックを解除する開閉機構とを備えた車両用収納装置であって、前記リッドに回動自在に軸支された回転中心部、並びに該回転中心部を中心に互いに反対側に配設された第1嵌合部及び第2嵌合部を有する回転支持体と、前記回転支持体の前記第1嵌合部に嵌合された第1被嵌合部を有するとともに、前記ボックス部周縁に設けられた第1係合部に係脱するように進退する第1閂部材と、前記回転支持体の前記回転中心部を挟んで前記第1閂部材と反対側に配置され、且つ、前記回転支持体の前記第2嵌合部に嵌合された第2被嵌合部を有するとともに、前記ボックス部周縁に設けられた第2係合部に係脱するように進退する第2閂部材と、一端が前記第1閂部材に係止され他端が前記第2閂部材に係止されて該第1、第2閂部材を進出させて前記第1、第2係合部に係合するように付勢する付勢部材と、前記付勢部材の付勢力に抗して前記第1、第2閂部材を退去させて前記第1、第2係合部との係合を解除させる操作部とを有し、前記操作部の非操作時には、前記付勢部材の付勢力により前記第1、第2閂部材を前記第1、第2係合部に係合させて前記リッドを前記閉位置にロックし、前記操作部の操作時には、前記回転支持体が回動して該回転支持体とともに前記付勢力に抗して前記第1、第2閂部材同士を互いに同期して移動させることにより前記第1、第2閂部材を前記第1、第2係合部から離脱させて前記リッドの前記ロックを解除することを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、第1、第2閂部材が、ともに回転支持体に嵌合され、付勢部材により第1、第2係合部に係合するように付勢されている。このため、1つの付勢部材により、第1、第2閂部材を第1、第2係合部に係合させた状態を維持することができる。また、操作部の操作により、回転支持体が回動して、回転支持体の第1、第2嵌合部に嵌合された第1、第2被嵌合部が回転中心部を中心に回動する。第1、第2被嵌合部の回動により、第1、第2閂部材は、ともに同期して作動される。従って、本発明によれば、部品点数を少なくすることができ、また、操作性もよい。ゆえに、組み立て工数も少なくてすみ、製造コストを低く抑えることができる。
【0011】
(2)前記第1、第2閂部材は、互いに前記回転支持体の前記回転中心部を挟んで径方向に相対する位置に配置されていることが好ましい。回転支持体には、第1、第2閂部材が径方向で相対する位置に係止される。このため、回転支持体に径方向にバランスよく負荷がかかり、回転支持体が円滑に回動する。回転支持体に支持されている第1、第2閂部材も円滑に移動して、第1、第2閂部材を第1、第2係合部に円滑に係脱させることができる。
【0012】
(3)前記リッドは、前記第1、第2閂部材を揺動可能としつつ進退方向にガイドするガイド部を有し、前記操作部を操作したときに、前記回転支持体が回動するとともに前記第1、第2閂部材の前記前記第1、第2被嵌合部が回動して、前記第1、第2閂部材が前記ガイド部を中心に揺動しながら前記第1、第2係合部から離脱する方向に移動されることが好ましい。第1、第2閂部材は、それぞれ回転支持体とガイド部とで支持される。このため、開閉機構の構造を簡素にすることができる。
【0013】
一方で、上記(3)では、第1、第2閂部材は、ガイド部を中心に揺動しながら進退する。このため、第1、第2閂部材は、第1、第2係合部と係合される部分が揺動しながら、第1、第2係合部に係脱する。ゆえに、第1、第2閂部材と第1、第2係合部との係合に、若干の遊び空間を設けておく必要があり、両者が係合したときにもがたつきが生じるおそれがある。
【0014】
そこで、(4)前記リッドは、前記第1、第2閂部材を進退方向にガイドするガイド部を有し、前記第1、第2嵌合部及び前記第1、第2被嵌合部のいずれか一方は、前記回転支持体の径方向に延びる長穴であり、前記第1、第2嵌合部及び前記第1、第2被嵌合部の他方は、前記長穴に嵌合する凸部であって、前記操作部を操作したときに、前記回転支持体が回動するとともに前記凸部が前記長穴を移動しながら、前記第1、第2閂部材が前記ガイド部にガイドされながら前記第1、第2係合部から離脱する方向に移動されることが好ましい。
【0015】
この場合には、各第1、第2閂部材は、揺動することなく、第1、第2係合部に対して進退方向に移動する。このため、第1、第2閂部材と第1、第2係合部との係合に遊び空間を設ける必要がなく、両者の係合寸法をがたつきが生じないように設計することができる。
【0016】
(5)前記回転支持体には、前記操作部が一体に設けられていることが好ましい。操作部と回転支持体とが一体化されるため、部品点数を更に削減することができる。
【0017】
(6)前記第1、第2閂部材の一方には、前記操作部が一体に設けられていることが好ましい。操作部と、第1、第2閂部材の一方とが一体化されるため、部品点数を更に削減することができる。また、リッドの運転席側に近い位置に操作部を配置することができるため、操作性が向上する。
【0018】
(7)車両のインストルメントパネルに設けられたグラブボックスであることが好ましい。この場合には、開閉機構を最適に用いることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の車両用収納装置によれば、一対の第1、第2閂部材が、回転支持体に支持され、しかも1つの付勢部材によりロック側に付勢されている。このため、部品点数を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態の車両のインストルメントパネルの斜視図である。
【図2】第1の実施形態のグラブボックスの断面図である。
【図3】第1の実施形態のグラブボックスの正面図である。
【図4】第1の実施形態のリッド及び開閉機構の分解斜視図である。
【図5】第1の実施形態のグラブボックスの作動を説明するための、図2のA−A線断面図であって、(a)はロック時の状態を示し、(b)はロック解除時の状態を示す。
【図6】第1の実施形態の第1閂部材と回転支持体の移動軌跡を示す説明図である。
【図7】第2の実施形態のリッド及び開閉機構の分解斜視図である。
【図8】第2の実施形態の操作部及び回転支持体のリッドへの取付状態を説明するためのリッド中央部の断面図である。
【図9】第2の実施形態のグラブボックスの作動を説明するためのリッドの断面図であって、(a)はロック時の状態を示し、(b)は中立時の状態を示し、(c)はロック解除時の状態を示す。
【図10】第2の実施形態の第1閂部材と回転支持体の移動軌跡を示す説明図である。
【図11】第3の実施形態のグラブボックスの作動を説明するためのリッドの断面図であって、(a)はロック時の状態を示し、(b)はロック解除時の状態を示す。
【図12】第4の実施形態のインストルメントパネルの斜視図である。
【図13】第4の実施形態のリッド及び開閉機構の分解斜視図である。
【図14】図13のB−B線断面図である。
【図15】第4の実施形態のグラブボックスの正面図である。
【図16】第5の実施形態のグラブボックスの正面図である。
【図17】ポケット部を設けたリッド及び開閉機構の分解斜視図である。
【図18】従来例のグラブボックスの開閉機構の分解斜視図である。
【図19】従来例のグラブボックスの開閉機構の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る車両用収納装置について、図1〜図6を用いて説明する。以下の説明において、「左」「右」「前」「後」「上」「下」は、特に断らない限り、車両の運転手席に座したドライバーから見た場合の、「左」「右」「前」「後」「上」「下」をそれぞれ意味する。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る車両用収納装置は、右ハンドル車のインストルメントパネル9(内装部材)に装着されたグラブボックス10である。グラブボックス10は、運転席の左隣の助手席の前に配設される。図2に示すように、グラブボックス10は、小物を収容するための箱状のボックス部1と、ボックス部1を開閉させるリッド2と、リッド2を閉位置にロックし又はロックを解除させる開閉機構3とを備えている。
【0023】
図2,図3に示すように、ボックス部1は、インストルメントパネル9の助手席前方部に凹設されていて、車室内に向けて開口している。ボックス部1の開口周縁には、左右対称位置に一対の第1係合部11a及び第2係合部11bが形成されている。第1係合部11aは、ボックス部1の開口周縁の右側に配置され、第2係合部11bはボックス部1の開口周縁の左側に配置されている。
【0024】
リッド2は、ボックス部1の開口を開閉可能に被覆している。リッド2は、アウタパネル21と、アウタパネル21の前方側に配置されたインナパネル22とからなる。アウタパネル21の周縁部は前方に屈曲し、インナパネル22の周縁部は後方に屈曲している。アウタパネル21とインナパネル22の周縁部同士が互いに嵌合又は溶着することで、アウタパネル21とインナパネル22との間に若干の厚みの空間部を確保した状態でアウタパネル21とインナパネル22とが一体化されている。アウタパネル21の下部の左右両側には、一対のヒンジ軸23が前方側に突出している。また、ボックス部1の開口周縁下部の左側部及び右側部には、それぞれ軸受部13が設けられている。各ヒンジ軸23は、各軸受部13に回動自在に軸支されている。
【0025】
図3,図4に示すように、リッド2のアウタパネル21の左右方向の中央部の若干上側部分には、円錐台形状の窪み部21aが前方側に向けて凹設されている。窪み部21aの底部は円形状を呈しており、その中心部に軸孔21bが貫通形成されている。軸孔21bの前面側周縁部は前方側に円筒状に突出していて、軸孔21bの内周面は軸受面21eを構成している。また、アウタパネル21の窪み部21aの底部には、一対のガイド孔21c、21dが貫通形成されている。各ガイド孔21c、21dは、窪み部21aの底部の中心部を中心とする円弧形状を呈しており、当該中心部を中心として上下方向及び左右方向の対称位置に配置されている。
【0026】
リッド2のアウタパネル21とインナパネル22との間の空間部には、開閉機構3が収容されている。図3に示すように、開閉機構3は、互いに一体に形成された操作部31及び回転支持体32と、第1閂部材33及び第2閂部材34と、付勢部材35aとを備えている。付勢部材35aは金属製で、その他の開閉機構3の部品は樹脂製である。
【0027】
図4に示すように、回転支持体32は、円盤形状の基部32aと、基部32aの中心をなす回転中心部32bと、一対の第1、第2嵌合突部32c、32d(第1、第2嵌合部)とを有する。基部32aの後面(車室内側)には、操作部31が一体に成形されている。なお、操作部31は回転支持体32に溶着又は嵌合により一体に固定されていてもよい。操作部31は、基部32aの中心を通る径方向に長く延びた形状をなし、手で把持しやすいように車室内側に向けて長尺状に突出している。基部32aの中心部には、円筒状の回転中心部32bが前面側(車室外側)に向けて突設されている。
【0028】
また、回転支持体32の第1、第2嵌合突部32c、32dは、基部32aの前面に突設されている。第1、第2嵌合突部32c、32dは、回転中心部32bを中心に径方向に対称位置に配設されている。第1嵌合突部32cは、回転中心部32bの下側に位置し、第2嵌合突部32dは回転中心部32bよりも上側に位置している。回転中心部32b及び第1、第2嵌合突部32c、32dは、いずれも基部32aの前面に突設されている。
【0029】
そして、回転中心部32bは、有底円筒形状をなし、アウタパネル21の軸孔21bに嵌挿されていて、軸孔21bの軸受面21eによって回動自在に支持されている。回転中心部32bの先端周縁部には、径方向外側に向けて鈎状に突き出た爪部32eが形成されている。爪部32eの基端部に位置する側壁には、回転中心部32bの軸方向に延びる一対のスリット32fが形成されており、爪部32eが径方向内側に押圧されたとき爪部32eが径方向内側に弾性変形するようになっている。回転中心部32bが軸孔21bに嵌挿されるとき、回転中心部32bの先端は軸孔21bの軸受面21eにより径方向内側に押圧されて、回転中心部32bの先端の爪部32eが径方向内側に撓む。爪部32eが軸受面21eから突き出ると、一対のスリット32fの間の側部の弾性復元力で爪部32eが径方向外側に弾性回復して軸孔21bの端面に係止される。これにより、操作部31がアウタパネル21から外れないように装着される。
【0030】
また、回転支持体32の基部32aは、アウタパネル21の後面側(車室内側)に配置されており、各第1、第2嵌合突部32c、32dは、それぞれリッド2のアウタパネル21に形成した各ガイド孔21c、21dにスライド可能に嵌挿されている。各第1、第2嵌合突部32c、32dの先端は、各ガイド孔21c、21dからアウタパネル21の前方側に突き出している。
【0031】
一対の第1閂部材33及び第2閂部材34は、回転支持体32の中心部を中心に左右対称方向に延びている。本実施形態においては、右側に配置された閂部材を第1閂部材33とし、左側に配置された閂部材を第2閂部材34と称する。第1閂部材33と第2閂部材34は、ともに同じ形状をなし、その作動方向も回転支持体32の回転中心部32bを中心とする点対称である。
【0032】
第1閂部材33は左右方向に延びる長手形状をなしている。第1閂部材33の回転支持体32の近傍に配置された部分は第1伝達部36aであり、第1閂部材33の回転支持体32から遠方に配置された部分は第2伝達部36bであって、第1伝達部36aと第2伝達部36bとの間には中間部36cが設けられている。第1伝達部36aは、第2伝達部36bとともに左右方向に互いに平行に延びている。第1伝達部36aは第2伝達部36bよりも下側に位置するように中央部36cで屈曲した形状をなしている。第1閂部材33の第1伝達部36aは、回転支持体32の下側に位置し、第2伝達部36bは回転支持体32の中心部とほぼ同じ高さに位置している。第1伝達部36aの基端には略直角に屈曲した屈曲部36dが形成されている。第1伝達部36aは回転支持体32の右側に回りこみ、中間部36cを経て第2伝達部36bにつながっている。第1閂部材33の第2伝達部36bは、回転支持体32の右側に配置され、屈曲部36dに対して回転支持体32を挟んで左右反対方向に配置されている。第1伝達部36aの途中には第1凹部36f(第1被嵌合部)が形成されていて、第1凹部36fには、第1嵌合突部32cが回動可能に嵌合している。
【0033】
第1閂部材33の第2伝達部36bの先端は、テーパ状の被係合片36mを設けている。被係合片36mは、アウタパネル21の右側の側部に形成された窓部21fに進退可能に配置されている(図4)。第2伝達部36bの先端の近傍は、アウタパネル21の前面に突設されたガイド部21gの挿通孔21hに挿通されてガイド部21gに移動可能に支持されている。第2伝達部36bの先端部近傍には、径方向に若干張り出した当て部36rが設けられている。当て部36rは、被係合片36mが窓部21fから突き出たときにも、ガイド部21gの内側面に当接して過剰な進出を防止している。
【0034】
第2閂部材34は、第1閂部材33に対して、回転支持体32を中心とする点対称に配置されている。第2閂部材34は、第1閂部材33と対称方向に延び、互いに平行に延びる第1伝達部36a及び第2伝達部36bと、第1伝達部36aと第2伝達部36bとの間に屈曲形成された中間部36cとを有する。第2閂部材34の第1伝達部36aは、回転中心部32bを挟んで、第1閂部材33の第1伝達部36aと上下方向で相対する位置に配置され、いずれも互いに平行に左右方向に延びている。第1伝達部36aの途中に形成された第2凹部36gには、第2嵌合突部32dが回動可能に嵌合されている。第2閂部材34の第2伝達部36bの先端の近傍は、第1閂部材33と同様に、アウタパネル21に突設されたガイド部21gに移動可能に支持されており、また、第2閂部材34の第2伝達部36bの先端は、アウタパネル21の左側の側部に形成された窓部21fに進退可能に配置されている。
【0035】
第1閂部材33の屈曲部36dと第2閂部材34の屈曲部36dとは、回転支持体32を挟んで左右対称位置に配置されており、両者にそれぞれ形成された係止孔36eには、付勢部材35aの一端部と他端部とがそれぞれ係止されている。付勢部材35aは、引張りコイルばね(引きばね)であり、第1閂部材33の屈曲部36dと第2閂部材34の屈曲部36dとを互いに近接させる方向に付勢している。第1閂部材33の屈曲部36dと第2閂部材34の屈曲部36dとが互いに近接する方向に付勢されると、第1閂部材33は図5において右側に付勢され、被係合片36mが、ボックス部1の開口の右側周縁に形成された凹状の第1係合部11aに係合する。また、第2閂部材34は図5において左側に付勢される。そして、図3に示すように、第2伝達部36bの先端に形成された被係合片36mが、ボックス部1の開口の左側周縁に形成された第2係合部11bに係合する。
【0036】
本実施形態のグラブボックスの作動について説明する。図5(a)に示すように、操作部31を操作していないときには、付勢部材35aの引張力により、第1閂部材33の屈曲部36dと第2閂部材34の屈曲部36dとが近接する方向に付勢される。そして、第1閂部材33及び第2閂部材34の双方の被係合片36mが、アウタパネル21の窓部21fから突き出して、ボックス部1の第1、第2係合部11a、11bと係合する。この状態では、リッド2は、ボックス部1の開口を閉止する位置にロックされる。
【0037】
次に、図5(b)に示すように、操作部31を右周り(時計周り)に回転操作させると、回転支持体32と一体となって回転する。このとき、回転支持体32の第1、第2嵌合突部32c、32dは、それぞれアウタパネル21に形成された円弧状の各ガイド孔21c、21dの中をスライドして、各ガイド孔21c、21dの一端側から他端側に相対移動する。第1、第2嵌合突部32c、32dは、それぞれ第1閂部材33の第1凹部36f及び第2閂部材34の第2凹部36gに嵌合している。このため、第1、第2嵌合突部32c、32dの移動により、第1、第2閂部材33,34は、付勢部材35aの付勢力に抗して左右方向内側に引き込まれる。第1閂部材33及び第2閂部材34と各第1、第2係合部11a、11bとの係合が外れて、リッド2の閉止位置でのロックが解除される。この状態で操作部31を把持してリッド2を後方側(車室内側)に引き出すことで、リッド2がヒンジ軸23を中心に回動し、ボックス部1の開口が開く。
【0038】
図5に示すように、各第1、第2閂部材33,34は、各第1、第2凹部36f、36gに第1、第2嵌合突部32c、32dが嵌合することで、回転支持体32に回動自在に支持されている。第1、第2凹部36f、36gは回転支持体32の嵌合突部32c、32dを回動可能に嵌合している。また、第1,第2閂部材33,34の各第2伝達部36bは、アウタパネル21のガイド部21gに揺動可能に且つスライド可能に支持されている。
【0039】
図6は、第1の実施形態の第1閂部材と回転支持体の移動軌跡を示す説明図である。図6において、実線で示された第1,第2閂部材33,34は、中立時の状態、即ち、リッドロック時の最進出位置とリッドロック解除時の最後退位置との中間に位置して第1、第2凹部36f、36gが最上位に位置している場合を示す。点線で示された第1,第2閂部材33,34は、ロック解除時の状態、即ち、前記最後退位置に位置して第1、第2凹部36f、36gが最下位に位置している場合を示す。
【0040】
図6に示すように、操作部の回転操作により回転支持体32が回動して、一対の第1,第2閂部材33,34の各第1、第2凹部36f、36gが同期して回動する。これにともない、第1,第2閂部材33,34が各ガイド部21gの挿通孔21hを中心に揺動しながら各係合部11a、11bから離脱する方向に後退する。
【0041】
図4,図5に示すように、本実施形態においては、第1,第2閂部材33,34の上下方向の揺動幅を少なくするために、アウタパネル21の各ガイド孔21c、21dの円弧状長穴を上下方向の直線に対して左右対称に形成している。第1、第2閂部材33,34が最進出位置と最後退位置に位置するときの第1、第2凹部36f、36gの上下方向の高さはともに最下位と同じである。
【0042】
本実施形態においては、一対の第1、第2閂部材33,34が、1つの回転支持体32に係止されることでリッド2に支持されている。しかも第1、第2閂部材33,34は、1つの付勢部材35aが係止することでロック側に付勢されている。このため、1つの付勢部材35aにより、一対の第1、第2閂部材33,34を各第1、第2係合部11a、11bに係合させた状態を維持することができる。また、操作部31の操作により、2つの第1、第2閂部材33,34を同期して作動させることができる。従って、部品点数を少なくすることができ、また、操作性もよい。ゆえに、組み立て工数も少なくてすみ、製造コストを低く抑えることができる。
【0043】
また回転支持体32には、回転中心部32bを中心とする径方向に対称な位置に一対の第1、第2嵌合突部32c、32dが形成されており、この第1、第2嵌合突部32c、32dが第1、第2閂部材33,34の第1、第2凹部36f、36gに回動可能に嵌合している。このため、第1,第2閂部材33,34は、回転支持体32の径方向で相対する位置に支持され、回転支持体32に径方向にバランスよく負荷がかかる。ゆえに、回転支持体32が円滑に回動し、また回転支持体32に支持されている第1、第2閂部材33,34も円滑に移動する。したがって、第1、第2閂部材33,34をボックス部1の各第1、第2係合部11a、11bに円滑に係脱させることができる。
【0044】
また、操作部31は回転支持体32に一体に形成されている。このため、開閉機構3に要する部品点数が少なくて済み、組み付け工数を削減でき、製造コストを低く抑えることができる。
【0045】
また、第1、第2閂部材33,34は同じ形状を呈している。このため、第1、第2閂部材33,34を同じ製造過程で製造することができ、製造コストを削減できる。更に、操作部31及びこれと一体の回転支持体32は、リッド2の左右方向の中央部に配設されている。このように、開閉機構3のすべての部品は対称に形成されている。このため、開閉機構3を、右ハンドル車と左ハンドル車のいずれにも共用することができる。
【0046】
第1、第2閂部材33,34は、それぞれ第1、第2嵌合突部32c、32dと、ガイド部21gの挿通孔21hとの各2点でリッド2に支持されている。このため、第1、第2閂部材33,34を簡素な構成でリッド2に保持することができ、開閉機構3の構造を簡素にすることができる。
【0047】
本実施形態においては、第1、第2閂部材33,34の第1、第2被嵌合部を第1、第2凹部36f、36gとし、回転支持体32の第1、第2嵌合部を第1、第2嵌合突部32c、32dとしたが、第1、第2閂部材33,34の第1、第2被嵌合部を第1、第2凸部とし、回転支持体32の第1、第2嵌合部を第1、第2嵌合凹部としてもよい。
【0048】
(第2の実施形態)
本実施形態のグラブボックス10は、図7、図8に示すように、第1の実施形態とは異なって、第1、第2閂部材33,34が、左右方向にのみ移動可能にリッド2側に支持されている。
【0049】
リッド2のアウタパネル21には、左右方向の中央部に窪み部21aが設けられ、その底部には軸孔21bが開口している。なお、軸孔21bは、アウタパネル21の前面から突き出しておらず、軸孔21bの周縁部はアウタパネル21と面一である。
【0050】
回転支持体32は、第1の実施形態とは異なって、板部材37と、長尺部材38とからなる。板部材37は、円形板状の基部37aと、回転中心部37bとを有する。基部37aの後面(車室内側)には、操作部31が一体に形成されている。基部37aの前面(車室外側)には、回転中心部37bが突設されていて、その周壁には、上部及び下部にそれぞれ一対のスリット37fが形成されている。一対のスリット37fの先端には径方向外側に鉤状に突出する爪部37eが形成されている。
【0051】
長尺部材38は、長手方向の中央部に回転中心部37bを嵌合させる軸穴38aが貫通形成されている。また、長尺部材38の両側端部には、軸穴38aに対して対称位置に径方向に長い一対の第1、第2長穴38c、38d(第1、第2嵌合部)が貫通形成されている。
【0052】
回転支持体32の板部材37は、アウタパネル21の後面側に配置され、長尺部材38はアウタパネル21の前面側に配置されている。板部材37の回転中心部37bが、アウタパネル21の軸孔21bを突き抜けてアウタパネル21の前面側に突き出している。回転中心部37bは、更に長尺部材38の軸穴38aに嵌挿されている。回転中心部37bの一対の爪部37eは、軸穴38aの周縁部に形成された一対の凹状段部38bにそれぞれ係止されている。このため、長尺部材38は板部材37に対して回動不能に一体的に固定される。板部材37及び長尺部材38はともに、アウタパネル21に対して回動を規制されることなく、軸孔21b内面に回動可能に支持されている。
【0053】
第1、第2閂部材33,34の各係止孔36eには、第1の実施形態と同様に引張りコイルばねからなる付勢部材35aの端部が係止されている。第1,第2閂部材33,34の各第1伝達部36aには、それぞれ第1、第2凸部36i、36j(第1、第2被嵌合部)が突設されていて、長尺部材38の第1、第2長穴38c、38dに移動可能に嵌合されている。第2伝達部36bの2箇所でガイド部21gにスライド移動可能に支持されている。第1、第2閂部材33,34のその他の点は第1の実施形態と同様である。
【0054】
本実施形態のグラブボックスの作動について説明する。
【0055】
図7,図9(a)に示すように、操作部31を操作していないときには、付勢部材35aが、第1、第2閂部材33,34を左右方向外側に進出させて、その各被係合片36mをボックス部1の係合部11a、11bに係合させている。
【0056】
図9(b)に示すように、操作部31を右周りに回転操作させると、回転支持体32を構成する板部材37及び長尺部材38が一体に回動する。長尺部材38の第1長穴38cには、第1閂部材33の第1凸部36iがスライド移動可能に嵌合されている。長尺部材38の第2長穴38dには、第2閂部材34の第2凸部36jがスライド移動可能に嵌合されている。第1、第2閂部材33,34は、それぞれ左右方向に並設された2つのガイド部21gで、スライド可能に支持されている。このため、第1、第2閂部材33,34は、2つのガイド部21gの配列方向、即ち左右方向(進退方向)にのみ移動可能である。長尺部材38の回転により、第1、第2閂部材33,34は、回転支持体32に同期して移動する。このとき、第1、第2閂部材33,34は左右方向にのみ変位が可能であり、上下方向への揺動はできない。そのため、長尺部材38の回動により、第1、第2凸部36i、36jが長尺部材38の第1、第2長穴38c、38dの中を径方向外側から内側に向けてスライド移動する。第1、第2閂部材33,34が、左右方向の内側に引き込まれ、窓部21f内に退去する。
【0057】
図9(c)に示すように、更に、操作部31を右周りに回転操作させると、板部材37及び長尺部材38が一体となって更に右周りに回動する。第1、第2凸部36i、36jが、第1、第2長穴38c、38dの中を径方向内側から外側に向けてスライド移動する。第1、第2閂部材33,34が、左右方向内側に更に引き込まれる。そして、第1、第2閂部材33,34の各被係合片36mが、第1、第2係合部11a、11bから完全に離脱して、リッド2のロックが解除される。
【0058】
図10は、第2の実施形態の第1閂部材と回転支持体の移動軌跡を示す説明図である。図10において、実線で示された第1,第2閂部材33,34は、中立時の状態、即ち最進出位置と最後退位置との中間に位置している場合を示し、点線で示された第1,第2閂部材33,34は、ロック解除時の状態、即ち、前記最後退位置に位置している場合を示す。図10に示すように、長尺部材38が回転している間、第1、第2閂部材33,34の第1凸部36i、36jの上下方向の位置が変わらず、第1、第2閂部材33,34は左右方向(進退方向)にのみ移動する。
【0059】
図10に示すように、一対の第1,第2閂部材33,34は、それぞれ長尺部材38の長穴38c、38dに移動可能に嵌合された第1,第2凸部36i、36jを有する。第1,第2閂部材33,34は、それぞれ2つのガイド部21gにより2カ所で支持されている。
【0060】
操作部31を操作したときに、回転支持体32の長尺部材38が回動し、第1,第2凸部36i、36jが第1,第2長穴38c、38dに対して同期移動することで、一対の第1、第2閂部材33,34がガイド部21gにガイドされながら第1,第2係合部11a、11bから離脱する方向に移動する。このとき、第1,第2閂部材33,34は、上下方向には揺動せず、左右方向にのみ移動する。
【0061】
本実施形態においては、第1、第2閂部材33,34は、上下に揺動することなく、ボックス部1の各第1,第2係合部11a、11bに向けて進退方向に移動する。このため、第1、第2閂部材33,34と各第1,第2係合部11a、11bとの係合に遊び空間を設ける必要がなく、両者の係合寸法をがたつきが生じないように設計することができる。
【0062】
本実施形態においては、第1、第2閂部材33,34の被嵌合部を第1,第2凸部36i、36jとし、回転支持体32の第1,第2嵌合部を長尺部材38の第1,第2長穴38c、38dとしたが、第1、第2閂部材33,34の第1,第2被嵌合部を第1,第2長穴とし、回転支持体32の第1,第2嵌合部を長尺部材38に形成した第1,第2嵌合突部としてもよい。
【0063】
更に、簡素な構成とするために、第1の実施形態において、第1、第2嵌合部である第1,第2凹部36f、36gを上下方向に延びる長穴としてもよい(図4、図5参照)。第1の実施形態の回転支持体32の構成はそのままとする。この場合には、第2の実施形態のように回転支持体を板状部材37と長尺部材38の2部品で構成する必要はなく、回転支持体32を1部品で構成することができる。第1,第2嵌合突部32c、32dは、ガイド孔21c、21dにより円弧状の軌跡を描いて移動するとともに、長穴である第1,第2凹部36f、36gの中を上下方向に移動する。このため、第1、第2閂部材33,34は、上下方向に揺動することなく左右方向にのみ移動することができる。
【0064】
(第3の実施形態)
本実施形態のグラブボックスは、図11に示すように、付勢部材35bとして圧縮コイルばね(押しばね)を用いている点が、第2の実施形態と相違する。
【0065】
付勢部材35bの一端部及び他端部は、第1、第2閂部材33,34の各第2伝達部36bの左右方向の端部に形成された座部36pに保持されている。各座部36pには、棒状の保持部36qが左右方向内側に向けて突設している。各保持部36qは、コイル状の付勢部材35bの両端側から内側に嵌入されて、付勢部材35bを安定に保持している。
【0066】
第1,第2閂部材33,34は、屈曲部は形成していない。第1,第2閂部材33,34のその他の構成、操作部31,回転支持体32、及びリッド2は、第2の実施形態と同様である。
【0067】
本実施形態のグラブボックスの作動について説明する。図11(a)に示すように、操作部31を作動させていないときには、押しばねである付勢部材35bが、第1,第2閂部材33,34を左右方向外側に向けて押し出す。このため、第1,第2閂部材33,34は、それぞれボックス部1の第1,第2係合部11a、11bに係合し、リッド2を閉位置に規制する。
【0068】
図11(b)に示すように、操作部31を右周りに回転操作させると、第2の実施形態の回転支持体32と同様に、長尺部材38が回動し、第1,第2閂部材33,34が同期移動される。ここで、第1,第2閂部材33,34は、2カ所でガイド部21gに支持されて、上下方向の揺動が規制されている。このため、第1閂部材33の第1凸部36i及び第2閂部材34の第2凸部36jが、それぞれ第1,第2長穴38c、38dの中を径方向内側に相対移動した後に、再び径方向外側に相対移動される(図9参照)。これにより、第1,第2閂部材33,34は、上下方向に揺動することなく、左右方向(進退方向)にのみ移動される。第1,第2閂部材33,34に保持された付勢部材35bは、上下方向には揺動することなく左右方向に伸縮するため、上下方向に撓むことはなく、安定に第1、第2閂部材33,34に係止され続ける。
【0069】
(第4の実施形態)
本実施形態のグラブボックスは、図12に示すように、操作部31aが、リッド2の右側に偏った位置に配置されている。リッド2の右側は、右側ハンドル車の運転席から近い位置である。
【0070】
図13、図14に示すように、操作部31aは、リッド2の右側に配置されている第1閂部材33に一体成形されている。第1閂部材33の第2伝達部36bには、車室内側にアーム部36kが突設されていて、その先端部に操作部31aが一体成形されている。操作部31aは、略四角形状の表面部31bと、その右側側面に形成された押さえ部31cと、上下側部に形成されたガイド部31dとを有する。
【0071】
また、図14に示すように、リッド2のアウタパネル21の中央部よりも右側の位置に、操作窓21iが開口している。操作窓21iは、操作部31aの表面部31bが露出する程度に開口しており、その右側には、前方に向けて傾斜する斜面部21jが形成されている。斜面部21jの上下端には、一対の側面部21pが延設されていて、斜面部21j及び一対の側面部21pとで操作窓21iの三方を囲んでいる。斜面部21jの先端は、操作部31aの押さえ部31cの前端から操作部31aの下部まで回り込んでいて、操作部31aが左右に移動しても、アウタパネル21の内部(車室外側)が外観視されないようになっている。また、操作部31aのガイド部31dは、操作窓21iの左側の周縁部21q及び側面部21pにガイドされて、操作部31aの移動を安定化させている。
【0072】
図13に示すように、アウタパネル21の左右方向中央部の裏面には、有底円筒形状の軸部21kが突設されている。軸部21kの周壁には、一対のスリット21mが形成されている。一対のスリット21mの先端には径方向外側に鉤状に突出する爪部21nが形成されている。
【0073】
回転支持体39は、円筒形状の回転中心部39eと、回転中心部39eの周壁から下側及び上側に延びる支持部39a、39bと、下側の支持部39aと上側の支持部39bの前面に突設された第1,第2嵌合突部39c、39d(第1,第2嵌合部)とを有する。回転支持体39の回転中心部39eの内部には、アウタパネル21の軸部21kが嵌挿されて、軸部21k先端の爪部21nによって抜け落ちることなく回動自在に支持されている。回転支持体39の第1,第2嵌合突部39c、39dは、それぞれ第1、第2閂部材33,34の各第1伝達部36aに形成された第1,第2凹部(第1,第2被嵌合部)36f、36gに嵌合されている。その他の点は、第1の実施形態と同様である。
【0074】
本実施形態のグラブボックスの作動を説明する。図15に示すように、操作部31aを作動させていないときには、引張りコイルばねである付勢部材35aが、第1、第2閂部材33,34を左右方向外側に進出させて、先端の被係合片36mが、ボックス部1の第1,第2係合部11a、11bに係合している。
【0075】
操作部31aの押さえ部31cを左側に押すと、第1閂部第33が、左側に移動する。これに伴い回転支持体39の下部の支持部39aが左側に移動されて、回転支持体39全体が右回り(時計回り)に回転する。回転支持体39の上部に設けられた支持部39bは右側に移動するので、この支持部39bの第2嵌合突部39dが嵌合している第2閂部材34は、右側に引き込まれる。回転支持体39の下部に設けられた支持部39aは左側に移動するので、この支持部39aの第1嵌合突部39cが嵌合している第1閂部材33は、左側に引き込まれる。このように、第1閂部材33は左側に、第2閂部材34は右側に移動され、これらの先端に設けられた被係合片36mはアウタパネル21の窓部21fの中に引き込まれ、第1,第2係合部11a、11bとの係合が解除される。この状態でリッド2を車室内側に引き出すと、リッド2が回動して、ボックス部1が開く。
【0076】
本実施形態においては、操作部31aを第1閂部材33に一体に形成して、リッド2の運転席側の位置に配設させている。このため、運転席に着座している運転者から操作部31aが近い位置に配置されることになり、リッド2の開閉操作が容易となる。
【0077】
また、本実施形態においては、右側ハンドル車向けに、車体右側の運転席に着座した運転者の操作容易なために、リッド2の右側に操作部31aを配置した。しかし、運転席が車体左側に配置されている左側ハンドル車の場合にも、本実施形態を適用することができる。即ち、左側ハンドル車の場合には、リッド2の左側に操作部31aを配置して、操作部31aをリッド左側に配置されている第2閂部材34に一体に設ければ、左側ハンドル車に本実施形態を適用することができる。
【0078】
(第5の実施形態)
本実施形態のグラブボックスにおいては、図16に示すように、操作部31aが右側に移動することでリッド2のロックが解除される点が、第4の実施形態と相違する。
【0079】
第1、第2閂部材33、34の基本構成は、第4の実施形態と同様である。本実施形態における第2閂部材34については、その第1伝達部36aから右方向に向けて延長部36nが延設されている。延長部36nの先端部近傍の後面には、第4の実施形態と同様に、アーム部(図示略)が突設されて操作部31aが一体に固定されている。
【0080】
操作部31aの押さえ部31cは、表面部31bの左側の側部に形成されている。右ハンドル車では、車体右側の運転席に運転者が着座する。この運転者が操作部31aの押さえ部31cを右側に引くと、第2閂部材34は右側に移動される。そして、第4の実施形態と同様に、回転支持体39の右回りの回動により、第1閂部材33が左側に移動される。第1,第2閂部材33,34の先端がリッド2の窓部21fの中に引き込まれ、ボックス部1の第1、第2係合部11a、11bとの係合が解除される。これにより、リッド2を回動させることが可能となり、ボックス部1を開くことができる。
【0081】
第5の実施形態においては、右ハンドル車に対して、操作部31aを右側に引くことでリッド2のロックを解除する構成としたが、この構成を左ハンドル車にも適用することができる。即ち、左ハンドル車の場合には、リッド2の左側に操作部31aを配置して、第1閂部材33の第1伝達部36aから左方向に延長部36nを延設し、延長部36nの先端部分に操作部31aを一体に設ける。これにより、左ハンドル車の運転席に着座した運転者は、リッドの左側に配置された操作部31aを左側に引くことで、リッド2のロックを解除することができる。
【0082】
第4、第5の実施形態においては、第1、第2閂部材33,34が、回転支持体39の回動により、左右方向に移動しつつ若干上下に揺動することになる。このため、操作部31aを車室内側に露出させている操作窓21iには、上下方向に若干の遊び空間を設けておく必要がある。そこで、第2の実施形態のように、第1、第2閂部材33,34の凸部36i、36jを回転支持体32の長尺部材38に形成された第1、第2長穴38c、38dに嵌合させ、リッド2の2つのガイド部21gで左右方向にのみスライド可能に支持することで、第1、第2閂部材33,34を上下方向の揺動を規制しつつ左右方向にのみ移動させることができる。また、第1の実施形態において、第1、第2嵌合部である第1,第2凹部36f、36gを上下方向に延びる長穴とし、回転支持体32はそのままとしてもよい。回転支持体32に形成されている第1,第2嵌合突部32c、32dは、それぞれ第1、第2凹部36f、36gに上下方向に移動可能に嵌合される。この場合には、操作窓21iに操作部31aの上下方向の揺動を許すための上下方向に遊び空間を設ける必要がない。このため、操作部31aをがたつくことなくスムーズに操作することができる。
【0083】
上記第1〜第5の実施形態の車両用収納装置は、図2に示すように、ボックス部1に収納物を収容するタイプのグラブボックス10である。しかし、図17に示すように、リッド2の裏面側(ボックス部側)にポケット部20を設け、このポケット部20に収容物を収容するタイプのグラブボックス10でもよい。図17に示すグラブボックス10においては、リッド2のアウタパネル21の前面側にガイド部21g及び窓部21fが設けられる代わりに、インナパネル22の後面側にガイド部(図示略)及び窓部21fが設けられている。インナパネル22の後面の周縁近傍から後方側に枠状体22sが突出しており、この枠状体22sはアウタパネル21に溶着又は接着される部分である。窓部21fは、枠状体22sの左右両側部分に形成されている。
【0084】
上記第1〜第5の実施形態の車両用収納装置は、インストルメントパネルに装着されたグラブボックスであるが、車両のセンターコンソールボックスなどにも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1:ボックス部、 10:グラブボックス(車両用収納装置)、
11a:第1係合部、 11b:第2係合部、
2:リッド、 21:アウタパネル、
21a:窪み部、 21b:軸孔、
21c、21d:ガイド孔、 21e:軸受面、
21f:窓部、 21g:ガイド部、
21h:挿通孔、 21i:操作窓、
21j:斜面部、 21k:軸部、
21m:スリット、 21n:爪部、
21p:側面部、 21q:周縁部、
22:インナパネル、 3:開閉機構、
31、31a:操作部、 31b:表面部、
31c:押さえ部、 31d:ガイド部、
32:回転支持体、 32a:基部、
32b:回転中心部、 32c:第1嵌合突部(第1嵌合部)、
32d:第2嵌合突部(第2嵌合部)、32e:爪部、
32f:スリット、 33:第1閂部材、
34:第2閂部材、 35a、35b:付勢部材、
36a:第1伝達部、 36b:第2伝達部、
36c:中間部、 36d:屈曲部、
36e:係止孔、 36f:第1凹部(第1被嵌合部)、
36g:第2凹部(第2被嵌合部)、 36i:第1凸部(第1被嵌合部)、
36j:第2凸部(第2被嵌合部)、 36k:アーム部、
36m:被係合片、 36n:延長部、
36p:座部、 36q:保持部、
36r:当て部、 37:板部材、
37a:基部、 37b:回転中心部、
37e:爪部、 37f:スリット、
38:長尺部材、 38a:軸穴、
38b:凹状段部、 38c:第1長穴(第1嵌合部)、
38d:第2長穴(第2嵌合部)、 39:回転支持体、
39a、39b:支持部、 39c:第1嵌合突部(第1嵌合部)、
39d:第2嵌合突部(第2嵌合部)、 39e:回転中心部、
9:インストルメントパネル(内装部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内装部材に凹設されたボックス部と、該ボックス部に対して移動することで該ボックス部を開閉させるリッドと、該リッドを閉位置にロックし又は該ロックを解除する開閉機構とを備えた車両用収納装置であって、
前記リッドに回動自在に軸支された回転中心部、並びに該回転中心部を中心に互いに反対側に配設された第1嵌合部及び第2嵌合部を有する回転支持体と、
前記回転支持体の前記第1嵌合部に嵌合された第1被嵌合部を有するとともに、前記ボックス部周縁に設けられた第1係合部に係脱するように進退する第1閂部材と、
前記回転支持体の前記回転中心部を挟んで前記第1閂部材と反対側に配置され、且つ、前記回転支持体の前記第2嵌合部に嵌合された第2被嵌合部を有するとともに、前記ボックス部周縁に設けられた第2係合部に係脱するように進退する第2閂部材と、
一端が前記第1閂部材に係止され他端が前記第2閂部材に係止されて該第1、第2閂部材を進出させて前記第1、第2係合部に係合するように付勢する付勢部材と、
前記付勢部材の付勢力に抗して前記第1、第2閂部材を退去させて前記第1、第2係合部との係合を解除させる操作部とを有し、
前記操作部の非操作時には、前記付勢部材の付勢力により前記第1、第2閂部材を前記第1、第2係合部に係合させて前記リッドを前記閉位置にロックし、
前記操作部の操作時には、前記回転支持体が回動して該回転支持体とともに前記付勢力に抗して前記第1、第2閂部材同士を互いに同期して移動させることにより前記第1、第2閂部材を前記第1、第2係合部から離脱させて前記リッドの前記ロックを解除することを特徴とする車両用収納装置。
【請求項2】
前記第1、第2閂部材は、互いに前記回転支持体の前記回転中心部を挟んで径方向に相対する位置に配置されている請求項1記載の車両用収納装置。
【請求項3】
前記リッドは、前記第1、第2閂部材を揺動可能としつつ進退方向にガイドするガイド部を有し、
前記操作部を操作したときに、前記回転支持体が回動するとともに前記第1、第2閂部材の前記第1、第2被嵌合部が回動して、前記第1、第2閂部材が前記ガイド部を中心に揺動しながら前記第1、第2係合部から離脱する方向に移動される請求項1又は2に記載の車両用収納装置。
【請求項4】
前記リッドは、前記第1、第2閂部材を進退方向にガイドするガイド部を有し、
前記第1、第2嵌合部及び前記第1、第2被嵌合部のいずれか一方は、前記回転支持体の径方向に延びる長穴であり、前記第1、第2嵌合部及び前記第1、第2被嵌合部の他方は、前記長穴に嵌合する凸部であって、
前記操作部を操作したときに、前記回転支持体が回動するとともに前記凸部が前記長穴を移動しながら、前記第1、第2閂部材が前記ガイド部にガイドされながら前記第1、第2係合部から離脱する方向に移動される請求項1又は2に記載の車両用収納装置。
【請求項5】
前記回転支持体には、前記操作部が一体に設けられている請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用収納装置。
【請求項6】
前記第1、第2閂部材の一方には、前記操作部が一体に設けられている請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用収納装置。
【請求項7】
車両のインストルメントパネルに設けられたグラブボックスである請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両用収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−36281(P2013−36281A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175178(P2011−175178)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】