説明

車両用収納装置

【課題】部品点数の少ない開閉機構を備えた車両用収納装置を提供する。
【解決手段】車両用収納装置に設けられた開閉機構3は、スライド部材35と、第1,第2閂部材33,34と、付勢部材36とを有する。スライド部材35は、リッド2に上下方向に移動可能に支持されており、付勢部材36により一方向に付勢されている。スライド部材35に形成された第1、第2長穴35d、35eには、それぞれ嵌合突部33e、34eが移動可能に嵌合されていて、第1、第2閂部材33、34が左右方向に移動可能に連結されている。第1,第2閂部材33,34が1つのスライド部材35に連結されているため、第1、第2閂部材33,34に設けられた第1,第2操作部31,32の少なくとも一方を操作することで、第1、第2閂部材33,34を同時に解除位置に移動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リッドの開閉機構を備えた車両用収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のインストルメントパネルには、小物を収容するグラブボックスが設けられている。グラブボックスには、車室内側に開口をもつボックス部と、開口を開閉自在に被覆するリッドと、リッドを閉位置にロックし又はロックを解除する開閉機構が備えられている。
【0003】
このような開閉機構としては、例えば特許文献1に開示されたものがある。特許文献1に開示された開閉機構は、図9、図10に示すように、操作ノブ本体920及びキーシリンダ921をもつ操作ノブ92と、ノブ付勢手段93と、リンク部材94と、リンク付勢手段95と、第1閂部96と、第2閂部97と、を備えている。操作ノブ92は、ノブ付勢手段93によりリンク部材94の押圧を開始する位置に付勢されている。リンク部材94は、回動中心となる回動軸940と、操作ノブ92による押圧力を受ける受圧部943,944と、2つの入力部941,942とを有する。リンク部材94は、リンク付勢手段95により第1、第2閂部96,97の係合部961,971が係合孔991,992と係合する方向に付勢されている。
【0004】
特許文献1において、キーシリンダ921を施錠位置に配置すると、キーシリンダ921の押圧部924がリンク部材94を避け、このとき操作ノブ92を揺動させても押圧部924は受圧部943,944と当接しない。キーシリンダ921が解錠位置に配置されると、操作ノブ92の操作により押圧部924が受圧部943を押圧するのでリンク部材94の入力部941,942に連携されている第1、第2閂部96,97をスライドさせる。第1、第2閂部96,97は、ボックス部に設けた係合部961,971との係合が解除され、リッドが回動可能となる。リッドの回動によりボックス部が開口する。
【0005】
上記従来のグラブボックスは、1つのリンク部材94により2つの閂部96,97を同期して操作させることができるため、部品点数を削減できる。
【0006】
しかしながら、発明者は更に開発を重ね、更に部品点数の少ない開閉機構を備えたグラブボックスを開発した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−235794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、部品点数の少ない開閉機構を備えた車両用収納装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の車両用収納装置は、車両の内装部材に凹設されたボックス部と、表面が車室内に対面するアウタパネルをもち、該ボックス部に対して移動することで該ボックス部を開閉させるリッドと、該リッドを閉位置にロックし又は該ロックを解除する開閉機構とを備えた車両用収納装置であって、前記開閉機構は、 前記リッドに上下方向に移動可能に支持されたスライド部材と、前記スライド部材を上下方向の一方に付勢する付勢部材と、基端部が前記スライド部材に移動可能に連結され、該基端部から右側に延び、先端部が前記ボックス部周縁に設けた第1係合部に係脱可能に係合される第1閂部材と、基端部が前記スライド部材に移動可能に連結され、該基端部から左側に延び、先端部が前記ボックス部周縁に設けた第2係合部に係脱可能に係合される第2閂部材と、前記第1閂部材及び前記第2閂部材の少なくとも一方に設けられた操作部と、を備えており、前記スライド部材は、前記第1閂部材を連結させ、前記上下方向の一方側に位置しているときに前記第1閂部材をロック位置に位置させ、前記上下方向の一方側から他方側に移動するときに前記第1閂部材を該ロック位置よりも左側の解除位置に移動させる第1ガイド連結部と、前記第2閂部材を連結させ、前記上下方向の一方側に位置しているときに前記第2閂部材をロック位置に位置させ、前記上下方向の一方側から他方側に移動するときに前記第2閂部材を該ロック位置よりも右側の解除位置に移動させる第2ガイド連結部と、を有し、前記操作部を操作していないときには、前記付勢部材の付勢力により前記スライド部材が前記上下方向の一方側に位置して、前記各第1,第2閂部材を前記各ロック位置に移動させて前記各第1,第2係合部に係合させることにより、前記リッドが閉位置にロックされ、前記操作部を操作したときには、前記スライド部材が前記上下方向の一方側から他方側に移動させるとともに、前記第1、第2閂部材を同期して前記ロック位置から前記解除位置に移動させて前記第1、第2係合部から離脱させることにより、前記リッドのロックを解除することを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、一対の第1、第2閂部材がスライド部材に支持され、しかも1つの付勢部材でスライド部材を付勢することで第1、第2閂部材をロック位置に位置させることができる。このため、部品点数を少なくすることができる。
【0011】
第1、第2操作部の一方を操作したときには、操作した方の第1、第2操作部を固定している第1、第2閂部材がロック位置に移動される。そして、第1、第2ガイド連結部の一方でスライド部材が上下方向の他方に移動される。これにともない、第1、第2ガイド連結部の他方で第1、第2閂部材の他方もロック位置に移動される。これにより、第1、第2閂部材が第1、第2係合部から離脱して、リッドの閉位置でのロックが解除され、ボックス部を開くことができる。このように、操作部の操作により、第1、第2閂部材を同時に解除位置に移動させ、第1、第2係合部から離脱させることができる。
【0012】
また、操作部は第1、第2閂部材の少なくとも一方に設けられている。
【0013】
従って、本発明によれば、部品点数が少なく、操作性もよい。ゆえに、組み付け工数を低減させることができ、製造コストを抑えることができる。
【0014】
(2)前記第1ガイド連結部は、前記上下方向の一方に対して左側に傾斜する方向に延びる長穴であり、前記第2ガイド連結部は、前記上下方向の一方に対して右側に傾斜する方向に延びる長穴であることが好ましい。簡素な構成で、第1、第2閂部材をスライド部材に移動可能に連結することができる。
【0015】
(3)前記スライド部材は、上下方向に延びる長穴スライド部をもち、該長穴スライド部には、前記リッドに突設された嵌合突部が上下方向に相対移動可能に嵌合していることが好ましい。簡素な構成で、スライド部材をリッドに移動可能に支持することができる。
【0016】
(4)前記リッドには、前記第1、2閂部材を左右方向に移動可能にガイドするガイド部が設けられていることが好ましい。第1、第2閂部材の移動が円滑になり、第1、第2閂部材をロック位置に移動させたときに第1、第2係合部に確実に係合させることができる。
【0017】
(5)前記第1、第2閂部材には、それぞれ前記操作部が設けられていることが好ましい。第1、第2閂部材に設けられた操作部のいずれを操作しても、第1、第2閂部材の双方を解除位置に移動させて、リッドのロックを解除することができる。
【0018】
(6)前記第1、第2閂部材、前記スライド部材及び付勢部材は、前記リッドの内側に配設されており、前記操作部は、前記リッドの外側に配設されており、前記リッドに形成された操作窓を通じて前記第1、第2閂部材の少なくとも一方に一体に連結されていることが好ましい。リッドの外面には操作部のみが視認されることになる。このため、リッドの見栄えがよくなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の車両用収納装置によれば、一対の第1、第2閂部材がスライド部材に支持され、しかも1つの付勢部材でスライド部材を付勢することで第1、第2閂部材をロック位置に位置させることができる。このため、部品点数を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態のインストルメントパネルの斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本実施形態のグラブボックスの正面図である。
【図4】本実施形態の、第1、第2操作部を示すためのグラブボックスの一部斜視図である。
【図5】本実施形態の、開閉機構の分解斜視図である。
【図6】本実施形態の、開閉機構の作動を示すためのリッド裏面図であって、(a)はロック時の説明図であって、(b)はロック解除時の説明図である。
【図7】本実施形態の、開閉機構の作動を示すためのリッド断面図であって、(a)はロック時の説明図であって、(b)はロック解除時の説明図である。
【図8】ポケット部を有するリッドに設けられた開閉機構の分解斜視図である。
【図9】従来例のグラブボックスの開閉機構の分解斜視図である。
【図10】従来例のグラブボックスの開閉機構の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
第1の実施形態に係る車両用収納装置について、図1〜図7を用いて説明する。以下の説明において、「左」「右」「前」「後」「上」「下」は、特に断らない限り、車両の運転手席に座したドライバーから見た場合の、「左」「右」「前」「後」「上」「下」をそれぞれ意味する。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る車両用収納装置は、右ハンドル車のインストルメントパネル9(内装部材)に装着されたグラブボックス10である。グラブボックス10は、運転席の左隣の助手席の前に配設される。図2に示すように、グラブボックス10は、小物を収容するための箱状のボックス部1と、ボックス部1を開閉させるリッド2と、リッド2を閉位置にロックし又はロックを解除させる開閉機構3とを備えている。
【0023】
図2、図3に示すように、ボックス部1は、インストルメントパネル9の助手席前方部に凹設されていて、車室内に向けて開口している。ボックス部1の開口周縁には、左右対称位置に一対の第1係合部11a及び第2係合部11bが形成されている。第1係合部11aは、ボックス部1の開口周縁の右側に配置され、第2係合部11bはボックス部1の開口周縁の左側に配置されている。
【0024】
リッド2は、ボックス部1の開口を開閉可能に被覆している。リッド2は、アウタパネル21と、アウタパネル21の前方側に配置されたインナパネル22とからなる。アウタパネル21の周縁部よりも若干内側に位置する部分は前方に屈曲し、インナパネル22の周縁部は後方に屈曲している。アウタパネル21とインナパネル22は、これらの周縁部同士が互いに嵌合又は溶着することで、両者間に若干の厚みの空間部を確保した状態で一体化されている。アウタパネル21の左右両側の下部には、一対のヒンジ部23が突出している。また、ボックス部1の開口周縁の左右両側の下部には、それぞれ軸部13が設けられている。各ヒンジ部23は、各軸部13に回動自在に軸支されている。また、アウタパネル21の左右両側の側面部には、それぞれ窓部21aが開口している。
【0025】
リッド2のアウタパネル21とインナパネル22との間の空間部には、開閉機構3が収容されている。図3〜図5に示すように、開閉機構3は、リッド2のアウタパネル21に設けられた操作領域25と、操作領域25に移動可能に支持されたスライド部材35と、スライド部材35に係止された付勢部材36と、第1操作部31を有し且つスライド部材35の右側に配設された第1閂部材33と、第2操作部32を有しスライド部材35の左側に配設された第2閂部材34とを有する。
【0026】
図5,図7に示すように、リッド2のアウタパネル21の右側部分には、操作領域25が設けられている。操作領域25は、前方側に窪む楕円形状の窪み部25aと、窪み部25aの左右方向中央部に開口する操作窓25bと、窪み部25aの前面側に突設するガイド部25cと、窪み部25aの上部及び下部で前面側に突設された一対の支持軸25dとを有する。また、窪み部25aの後面側は、窪み部25aの上部と下部との間にアーチ状の覆い部25eが架設されている。覆い部25eと窪み部25aの底部との間には空間部が残されており、覆い部25eの左右両側に操作窓25bに通ずる一対の導入口25fが形成されている。
【0027】
スライド部材35は、逆三角形状のベース部35aと、ベース部35aの上部及び下部から後面側に段状に屈曲し更にその先端側に延びる上部35b及び下部35cとを有する。ベース部35aの右側部分には、下方向に対して左側に傾斜する第1長穴35d(第1ガイド連結部)が開口し、ベース部35aの左側部分には、下方向に対して右側に傾斜する第2長穴35e(第2ガイド連結部)が開口している。
【0028】
第1長穴35dの軸線と上下方向の直線との間の傾斜角度A、及び第2長穴35eの軸線と上下方向の直線との間の傾斜角度Bは、どの角度でもよいが、おおむね20〜80°がよく、更には、30〜60°がよい。傾斜角度A、Bは互いに同じ角度であるとよい。本実施形態においては、この傾斜角度A、Bは略45°とする。第1長穴35dと第2長穴35eとは、左右対称形状をなしている。また、スライド部材35の上部35b及び下部35cには、それぞれ上下方向に延びるスライド長穴35fが開口している。
【0029】
付勢部材36は、圧縮コイルばね(引きばね)であり、その一端は、リッド2のアウタパネル21の裏面に係止され、他端はスライド部材35の下部35cの下端に係止されている。
【0030】
第1閂部材33は、基端部から右方向に延びる伝達部33aと、伝達部33aの先端側に一体に固定され上下方向に延び下側に向かって前面側に傾斜するアーム部33bと、アーム部33bの下端部から右方向に屈曲して延びる被係合片33cとを有する。伝達部33aの基端部の後面側には、後方向に延びる固定部33dが延びており、その先端に第1操作部31が一体に設けられている。
【0031】
第1閂部材33の被係合片33cが、アウタパネル21の窓部21aに進退可能に挿通されており、また、伝達部33aが、操作領域25のガイド部25cに左右方向に移動可能に支持されることにより、第1閂部材33は、左右方向にのみ移動可能にリッド2に支持される。第1閂部材33の伝達部33aの基端部の前面には、嵌合突部33eが突設されていて、スライド部材35の第1長穴35dにスライド移動可能に嵌合している。
【0032】
第2閂部材34は、基端部から左方向に延びる伝達部34aを有する。伝達部34aの先端部には、上下方向に延び下側に向かって前面側に傾斜するアーム部34bが一体に設けられている。アーム部34bの下端部には、左方向に屈曲して延びる被係合片34cが設けられている。被係合片34cが、アウタパネル21の窓部21aに進退可能に挿通されており、また、伝達部34aが、操作領域25のガイド部25cに左右方向に移動可能に支持されることにより、第2閂部材34は、左右方向にのみ移動可能にリッド2に支持される。
【0033】
また、第2閂部材34の伝達部34aの基端部の後面側には、後方向に延びる固定部34dが延びており、その先端に第2操作部32が一体に設けられている。伝達部34aの基端部の前面には、嵌合突部34eが突設されていて、スライド部材35の第2長穴35eにスライド移動可能に嵌合している。
【0034】
本実施形態においては、第1、第2閂部材33,34は図5などに示す形状をしているが、スライド部材35に移動可能に連結され第1、第2係合部11a、11bに係脱可能に係合される形状であれば特に限定しない。例えば、本実施形態においては第2閂部材34の伝達部34aが途中で屈曲しているが、直線状に延びていてもよい。また、第1、第2閂部材33,34にはアーム部33b、34bが設けられているが、アーム部33b、34bがなくてもよく、伝達部33a、34aから被係合片33c、34cが直接延びていても良い。
【0035】
図7に示すように、第1、第2操作部31,32は、アウタパネル21の操作領域25の裏面側から操作窓25bを通じて各導入口25fに露出させた後に、操作領域25の裏面側にスライド部材35を配設し、各スライド長穴35fに各支持軸25dを嵌合し、また第1、第2長穴35d、35eに嵌合突部33e、34eを嵌合する。その後、支持軸25dの先端窪み部に嵌合ピン26を嵌合し、支持軸25dがスライド長穴35fから抜け出さないようにする。また、各嵌合突部33e、34eの先端窪み部に後方側から嵌合ピン26を嵌合して、嵌合突部33e、34eが第1、第2長穴33e、34eから抜け出さないようにする。
【0036】
第1,第2閂部材33,34を操作窓25bに挿入させスライド部材35を操作領域25に取り付けたとき、第1閂部材33の基端部と第2閂部材34の基端部との間、及び第1操作部31と第2操作部32との間には、左右方向に近接又は離間するための間隙が確保されている。
【0037】
次に、本実施形態のグラブボックスの作動を説明する。図6(a)、図7(a)に示すように、第1、第2操作部31,32を操作させていないときには、付勢部材36によりスライド部材35が下側に付勢される。スライド部材35は、スライド長穴35fで、リッド2の操作領域25に設けられた支持軸25dに支持されて最下部に位置される。
【0038】
このとき、スライド部材35の第1、第2長穴35d、35eの最上部に、第1,第2閂部材33,34が位置される。第1、第2長穴35d、35eの最上部は、左右方向の最も外側に位置する部分である。このため、第1長穴35dに嵌合された第1閂部材33は、右側に位置され、第1閂部材33の被係合片33cは、ボックス部1の周縁に形成された第1係合部11aに係合する。また、第2長穴35eに嵌合された第2閂部材34は、左側に位置され、第2閂部材34の被係合片34cは、ボックス部1の周縁に形成された第2係合部11bに係合する。これにより、リッド2が閉位置にロックされる。
【0039】
次に、図6(b)、図7(b)に示すように、右側の第1操作部31を左側に押したときには、第1閂部材33は左側に移動され、被係合片33cが第1係合部11aから離脱する。また、第1閂部材33の嵌合突部33eが、スライド部材35の第1長穴35d内面を上側に押し、スライド部材35を上側に移動させる。嵌合突部33eは、第1長穴35dの中を左方下側に相対移動される。これにより、スライド部材35が上側に移動されると、第1閂部材33と同期して、第2閂部材34の嵌合突部34eは、第2長穴35eにガイドされて第2長穴35eの右方下側に相対移動される。これにより、第2閂部材34は、右側に移動され、先端の被係合片34cが第2係合部11bから離脱する。これにより、リッド2のロックが解除される。リッド2を揺動させると、ボックス1が開く。
【0040】
左側の第2操作部32を右側に押したときには、第2閂部材34は右側に移動され、被係合片34cが第2係合部11bから離脱する。第2閂部材34の嵌合突部34eが、第2長穴35eの中を右方下側に相対移動され、スライド部材35が上側に移動される。そして、第1閂部材33は、嵌合突部33eで第1長穴35dの中を左方下側に相対移動される。これにより、第1閂部材33の被係合片33cが第1係合部11aから離脱し、リッド2のロックが解除される。
【0041】
第1操作部31を左側に、第2操作部32を右側に同時に操作したときにも、第1、第2閂部材33,34が同時に解除位置に移動され、リッド2のロックを解除することができる。
【0042】
このように、第1、第2操作部31,32の少なくとも一方を操作したときには、第1,第2閂部材33,34はスライド部材35を介して連携されているため、第1,第2閂部材33,34を同時に解除位置に移動させ、リッド2のロックを解除することができる。したがって、ロック解除の操作性がよい。
【0043】
本実施形態においては、一対の第1、第2閂部材33,34がスライド部材35に支持され、しかも1つの付勢部材36でスライド部材35を付勢することで第1、第2閂部材33,34をロック位置に位置させることができる。更に、また、第1、第2操作部31,32はそれぞれ第1、第2閂部材33,34に一体に固定されている。このため、部品点数を少なくすることができる。ゆえに、組み付け工数を低減させることができ、製造コストを抑えることができる。
【0044】
スライド部材35は、第1長穴35dに嵌合突部33eを嵌合させることで、第1閂部材33を移動可能に連結しており、また、第2長穴35eに嵌合突部34eを嵌合させることで、第2閂部材34を移動可能に連結している。このため、簡素な構成で、第1、第2閂部材33,34をスライド部材35に移動可能に連結することができる。
【0045】
スライド部材35のスライド長穴35fは、アウタパネル21の操作領域25の支持軸25dを上下方向に相対移動可能に支持されている。このため、簡素な構成で、スライド部材35をリッド2に移動可能に支持することができる。
【0046】
操作領域25は、第1、第2閂部材33,34を左右方向に移動可能にガイドするガイド部25cを有している。このため、第1、第2閂部材33,34の移動が円滑になり、第1、第2閂部材33,34をロック位置に移動させたときに第1、第2係合部11a、11bに確実に係合させることができる。
【0047】
第1,第2閂部材33,34には、それぞれ第1,第2操作部31,32が一体に設けられている。このため、第1、第2操作部31,32のいずれを操作しても、第1、第2閂部材33,34の双方を第1,第2係合部11a、11bから離脱させて、リッド2のロックを解除することができる。
【0048】
第1、第2閂部材33,34、スライド部材35及び付勢部材36は、リッド2の内側に配設されており、第1,第2操作部31,32は、リッド2の外側に配設されている。このため、リッド2の外面側からは第1,第2操作部が視認されるのみで、開閉機構3の殆どの部品はリッド2の内面側に配設させることになる。このため、リッド2の見栄えがよくなる。
【0049】
本実施形態においては、第1、第2閂部材33,34の双方が、第1、第2操作部31,32を有していたが、第1、第2閂部材33,34のいずれか一方のみが操作部を有していても良い。
【0050】
また、スライド部材35には、上部及び下部に一対のスライド長穴35fが開口しているが、リッド2に上下方向に移動可能に支持されるのであれば、1つのスライド長穴35fのみにリッド2側の支持軸25dが嵌合されていてもよい。
【0051】
本実施形態においては、スライド部材35にスライド長穴35fを形成してこれに操作領域25の支持軸25dを嵌合することでスライド部材35をリッド2に対して上下方向に移動可能に支持している。しかし、スライド部材35に前面側に突出する凸部を設け、操作領域25に上下方向に延びる長穴を開口させて長穴に凸部を嵌合することでも、スライド部材35を上下方向に移動可能にリッド2に支持することができる。
【0052】
また、本実施形態においては、スライド部材35に第1、第2長穴35d、35eを形成し、第1,第2閂部材33,34に嵌合突部33e、34eを設けてこれを第1、第2長穴35d、35eに嵌合させることで、スライド部材35に第1、第2閂部材33,34を連結している。しかし、スライド部材35に第1,第2嵌合凸部を設け、第1、第2閂部材33,34に第1、第2長穴を設けることでも、第1,第2閂部材33,34をスライド部材35に移動可能に連結させることができる。
【0053】
本実施形態においては、スライド部材35の下端に付勢部材36を係止させているが、スライド部材35の上側に係止させてもよい。この場合、スライド部材35の上下の動きが本実施形態と逆になるため、第1,第2長穴35d、35eの傾斜方向も左右対称にする必要がある。
【0054】
また、本実施形態においては、付勢部材36として圧縮コイルばねを用いたが、引張りコイルばね(押しばね)を用いても良い。この場合、スライド部材35の動きが上下方向で逆になるため、第1,第2長穴35d、35eの傾斜方向も左右対称にする必要がある。
【0055】
本実施形態においては、リッド2の右側に操作領域25を配置しているが、これは、右ハンドル車の運転席に着座した運転者の届きやすい位置であるからである。本実施形態のグラブボックスを左ハンドル車に適用する場合には、左側の運転席に乗車した運転者の便宜を考慮してリッド2の左側に操作領域25を配置させることもできる。もちろん、操作領域25をリッド2の左右方向の中央部に配置することも可能である。
【0056】
本実施形態の車両用収納装置は、図2に示すように、ボックス部1に収納物を収容するタイプのグラブボックス10である。しかし、図8に示すように、リッド2の裏面側(ボックス部側)にポケット部20を設け、このポケット部20に収容物を収容するタイプのグラブボックス10でもよい。図17に示すグラブボックス10においては、リッド2のアウタパネル21の前面側にガイド部21g及び窓部21aが設けられる代わりに、インナパネル22の後面側にガイド部(図示略)及び窓部21aが設けられている。インナパネル22の後面の周縁近傍から後方側に枠状体22sが突出しており、この枠状体22sはアウタパネル21に溶着又は接着される部分である。窓部21aは、枠状体22sの左右両側部分に形成されている。
【0057】
本実施形態の車両用収納装置は、インストルメントパネルに装着されたグラブボックスであるが、車両のセンターコンソールボックスなどにも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1:ボックス部、 10:グラブボックス(車両用収納装置)、
11a:第1係合部、 11b:第2係合部、
13:軸部、 2:リッド、
21:アウタパネル、 21a:窓部、
22:インナパネル、 23:ヒンジ部、
25:操作領域、 25a:窪み部、
25b:操作窓、 25c:ガイド部、
25d:支持軸、 25e:覆い部、
25f:導入口、 26:嵌合ピン、
3:開閉機構、 31:第1操作部、
32:第2操作部、 33:第1閂部材、
34:第2閂部材、 33a、34a:伝達部、
33b、34b:アーム部、 33c、34c:被係合片、
33e、34e:嵌合突部、 34f:延長部、
35:スライド部材、 35a:ベース部、
35b:上部、 35c:下部、
35d:第1長穴(第1ガイド連結部)、35e:第2長穴(第2ガイド連結部)、
35f:スライド長穴、 36:付勢部材、
9:インストルメントパネル(内装部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内装部材に凹設されたボックス部と、表面が車室内に対面するアウタパネルをもち、該ボックス部に対して移動することで該ボックス部を開閉させるリッドと、該リッドを閉位置にロックし又は該ロックを解除する開閉機構とを備えた車両用収納装置であって、
前記開閉機構は、
前記リッドに上下方向に移動可能に支持されたスライド部材と、
前記スライド部材を上下方向の一方に付勢する付勢部材と、
基端部が前記スライド部材に移動可能に連結され、該基端部から右側に延び、先端部が前記ボックス部周縁に設けた第1係合部に係脱可能に係合される第1閂部材と、
基端部が前記スライド部材に移動可能に連結され、該基端部から左側に延び、先端部が前記ボックス部周縁に設けた第2係合部に係脱可能に係合される第2閂部材と、
前記第1閂部材及び前記第2閂部材の少なくとも一方に設けられた操作部と、
を備えており、
前記スライド部材は、
前記第1閂部材を連結させ、前記上下方向の一方側に位置しているときに前記第1閂部材をロック位置に位置させ、前記上下方向の一方側から他方側に移動するときに前記第1閂部材を該ロック位置よりも左側の解除位置に移動させる第1ガイド連結部と、
前記第2閂部材を連結させ、前記上下方向の一方側に位置しているときに前記第2閂部材をロック位置に位置させ、前記上下方向の一方側から他方側に移動するときに前記第2閂部材を該ロック位置よりも右側の解除位置に移動させる第2ガイド連結部と、を有し、
前記操作部を操作していないときには、前記付勢部材の付勢力により前記スライド部材が前記上下方向の一方側に位置して、前記各第1,第2閂部材を前記各ロック位置に移動させて前記各第1,第2係合部に係合させることにより、前記リッドが閉位置にロックされ、
前記操作部を操作したときには、前記スライド部材が前記上下方向の一方側から他方側に移動させるとともに、前記第1、第2閂部材を同期して前記ロック位置から前記解除位置に移動させて前記第1、第2係合部から離脱させることにより、前記リッドのロックを解除することを特徴とする車両用収納装置。
【請求項2】
前記第1ガイド連結部は、前記上下方向の一方に対して左側に傾斜する方向に延びる長穴であり、前記第2ガイド連結部は、前記上下方向の一方に対して右側に傾斜する方向に延びる長穴である請求項1記載の車両用収納装置。
【請求項3】
前記スライド部材は、上下方向に延びる長穴スライド部をもち、該長穴スライド部には、前記リッドに突設された嵌合突部が上下方向に相対移動可能に嵌合している請求項1又は2に記載の車両用収納装置。
【請求項4】
前記リッドには、前記第1、2閂部材を左右方向に移動可能にガイドするガイド部が設けられている請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用収納装置。
【請求項5】
前記第1、第2閂部材には、それぞれ前記操作部が設けられている請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用収納装置。
【請求項6】
前記第1、第2閂部材、前記スライド部材及び付勢部材は、前記リッドの内側に配設されており、
前記操作部は、前記リッドの外側に配設されており、前記リッドに形成された操作窓を通じて前記第1、第2閂部材の少なくとも一方に一体に連結されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−36284(P2013−36284A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175205(P2011−175205)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】