説明

車両用地図表示装置

【課題】 本発明は、車両用地図表示装置に関し、表示画面の視認性の向上を図りつつ、車両操作判断の容易化を図ることを目的とする。
【解決手段】 車両の進行方向と自車位置Oから目標地点Dへの方位とのなす角が所定角度θ以下である場合は、自車位置Oから目標地点Dへの方位が表示部34の表示画面上で真上方向となるように、道路地図に目的地までの経路及び自車位置を重畳した画面を表示部34に表示する。一方、車両の進行方向と自車位置Oから目標地点Dへの方位とのなす角が所定角度θを超える場合は、車両の進行方向が表示部34の表示画面上で真上方向に対して所定の角度をなすように、道路地図に目的地までの経路及び自車位置を重畳した画面を表示部34に表示する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両用地図表示装置に係り、特に、表示画面上で自車位置を道路地図に重ねて表示するうえで好適な車両用地図表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、例えば特開平10−38588号公報に開示される如く、自車両の走行予定の道路を広範囲にわたって表示画面上で表示できる装置が知られている。この装置は、自車両の現在位置を、原則としてその進行方向が表示画面上で上方となるように地図に表示する一方で、車両が旋回地点に接近した場合には、旋回前における進行方向と旋回後における進行方向との中間の方向が表示画面上で上方向となるように地図に表示する。かかる構成においては、車両が旋回する前に、旋回後に走行予定の道路が広範囲にわたって表示画面上に表示されることとなる。このため、上記従来の装置によれば、車両が急旋回する道路を走行する場合でも、運転者に対してその道路情報を前もって十分に提供することが可能となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このように、旋回前における進行方向と旋回後における進行方向との中間の方向が表示画面上で上方向となるように自車位置が表示されるものとすると、90°以上旋回するような道路形状では、自車両の進行方向が表示画面上で一時的に下方になることがある。この場合、運転者は、旋回地点において車両を何れの方向に操舵させたらいいのかの瞬時の判断を行うことができなくなる。この点、上記従来の装置では、運転者が表示画面に表された状況を速やかにかつ正確に認識するうえで問題があった。
【0004】本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、表示画面における走行予定路の視認性の向上を図りつつ、車両操作判断の容易化を図ることが可能な車両用地図表示装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、請求項1に記載する如く、自車位置から目標地点への方位が表示画面上で真上向きとなるように自車位置を道路地図に重ねて表示し得る車両用地図表示装置において、自車位置と前記目標地点との関係に応じて前記表示を禁止する表示制御手段を備えることを特徴とする車両用地図表示装置により達成される。
【0006】請求項1記載の発明において、自車位置と目標地点との関係に応じて、自車位置から目標地点への方位が表示画面上で真上向きとなるように自車位置を道路地図に重ねた表示が禁止される。すなわち、自車位置と目標地点との関係によっては、自車位置から目標地点への方位が表示画面上で真上向きとなる表示が行われる場合もあれば、行われない場合もある。従って、上記表示を禁止するか否かを判別するための自車位置と目標地点との関係を、運転者の車両操作判断が困難にならない程度に適当に設定することとすれば、自車位置から目標地点までの経路の視認性の向上を図りつつ、車両操作判断の容易化を図ることが可能となる。
【0007】ところで、自車両の進行方向と自車位置から目標地点への方位とのなす角度が小さい場合には、自車位置から目標地点への方位が表示画面上で真上向きとなる表示がなされても、自車両の進行方向が表示画面上で真上向きからあまり傾かないため、運転者の車両操作判断が困難となることはない。一方、上記の角度が大きい場合に、自車位置から目標地点への方位が表示画面上で真上向きとなる表示がなされると、自車両の進行方向が表示画面上で真上向きから大きく傾くこととに起因して、運転者の車両操作判断が困難なものとなる。
【0008】従って、請求項2に記載する如く、請求項1記載の車両用地図表示装置において、前記表示制御手段は、自車両の進行方向と自車位置から前記目標地点への方位とのなす角度が所定しきい値以下である場合は前記表示を行い、一方、前記角度が前記所定しきい値を超える場合は前記表示を禁止することとしてもよい。
【0009】また、上記の角度が大きい場合でも、自車両の進行方向が表示画面上で真上向きに対して運転者の車両操作判断が困難にならない程度の一定角度に維持されていれば、運転者の車両操作判断が困難になることはない。
【0010】従って、請求項3に記載する如く、請求項2記載の車両用地図表示装置において、前記表示制御手段は、前記角度が前記所定しきい値を超える場合は、前記表示画面上で自車両の進行方向が真上向きに対して所定角度だけ傾くように自車位置を道路地図に重ねて表示することとしてもよい。
【0011】また、請求項4に記載する如く、自車両の進行方向が自車位置から目標地点への方位に対してなす角度が時計回り方向において所定角度を超える場合には、表示画面上で該進行方向が真上向きに対して時計回り方向において前記所定角度だけ傾くように、また、前記角度が反時計回り方向において所定角度を超える場合には、前記表示画面上で該進行方向が真上向きに対して反時計回り方向において前記所定角度だけ傾くように、自車位置を道路地図に重ねて表示する表示制御手段を備える車両用地図表示装置において、前記表示制御手段は、前記表示画面上で前記進行方向が真上向きに対して時計回り方向又は反時計回り方向において前記所定角度だけ傾くように自車位置を道路地図に重ねて表示している状況下で、前記角度が時計回り方向又は反時計回り方向において180°を超えることにより反時計回り方向又は時計回り方向において所定角度を超えることとなる場合には、前記表示画面上での表示の切り替えを禁止することを特徴とする車両用地図表示装置は、表示画面上での表示の急な切り替えを防止するうえで有効である。
【0012】請求項4記載の発明においては、原則として、自車両の進行方向が自車位置から目標地点への方位に対してなす角度が時計回り方向又は反時計回り方向に所定角度を超える場合、表示画面上で進行方向が真上向きに対して時計回り方向又は反時計回り方向において所定角度だけ傾くように、自車位置が道路地図に重ねて表示される。ところで、かかる表示が行われている状況下で、自車両の進行方向が自車位置から目標地点への方位に対してなす角度が時計回り方向又は反時計回り方向において180°を超えた場合には、そのなす角度が反時計回り方向又は時計回り方向において所定角度を超える状態が実現される。かかる状況下において表示画面上で上記原則のままに自車位置が表示されるものとすると、表示画面上で進行方向が真上向きに対して時計回り方向において所定角度だけ傾く表示から反時計回り方向において所定角度だけ傾く表示へ、或いは、その逆に反時計回り方向において所定角度だけ傾く表示から時計回り方向において所定角度だけ傾く表示へ、急に切り替わる事態が生じてしまう。
【0013】そこで、本発明においては、表示画面上で進行方向が真上向きに対して時計回り方向又は反時計回り方向において所定角度だけ傾くように自車位置が道路地図に重ねて表示されている状況下で、上記のなす角度が時計回り方向又は反時計回り方向において180°を超えることにより反時計回り方向又は時計回り方向において所定角度を超えることとなる場合、表示画面上での上記表示の切り替えが禁止される。このため、本発明によれば、表示画面上での表示が急に切り替わるのが防止されるので、視認性の低下の防止が図られている。
【0014】ところで、自車位置から目標地点までの経路において自車両の進行方向とは反対方向の延長線と交差する地点が存在しない場合は、自車位置から目標地点への方位に対する進行方向が180°を超えることはない。
【0015】従って、請求項5に記載する如く、請求項4記載の車両用地図表示装置において、前記進行方向とは反対方向への延長線が、自車位置から前記目標地点までの経路と交差するか否かを判別する交差判別手段を備え、前記表示制御装置は、前記交差判別手段の判別結果に応じて前記表示画面上での表示の切り替えを禁止することとしてもよい。
【0016】尚、この場合、請求項6に記載する如く、請求項1、2、4、及び5の何れか一項記載の車両用地図表示装置において、前記目標地点が、自車両の目的地であることとしてもよい。
【0017】また、請求項7に記載する如く、請求項1、2、4、及び5の何れか一項記載の車両用地図表示装置において、前記目標地点が、自車両の目的地までの経路上において自車位置から所定距離離間した中間地であることとしてもよい。
【0018】更に、請求項8に記載する如く、請求項1、2、4、及び5の何れか一項記載の車両用地図表示装置において、前記目標地点が、自車両の目的地までの経路上の、前記表示画面に表示されるもののうち最遠端であることとしてもよい。
【0019】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の一実施例である車両用地図表示装置として機能するナビゲーション装置10のシステム構成図を示す。本実施例のナビゲーション装置10は、アンテナ12が接続されたGPS(Global Positioning System)レシーバ14、方位センサ16、及び、距離センサ18を備えている。GPSレシーバ14は、アンテナ12が複数の所定衛星から送信される電波を受信した際にその受信信号に基づいて自車両の位置(緯度及び経度)を演算し、その位置に応じた信号を出力する。方位センサ16は、車両の進行方向に応じた信号を出力する。また、距離センサ18は、車両の走行距離に応じた信号を出力する。
【0020】GPSレシーバ14、方位センサ16、及び距離センサ18には、自車位置特定部20が接続されている。GPSレシーバ14、方位センサ16、及び距離センサ18の出力信号は、それぞれ、自車位置特定部20に供給される。自車位置特定部20は、GPSレシーバ14、方位センサ16、及び距離センサ18の出力信号に基づいて、自車両の位置、その位置での進行方向、及びその位置までの走行距離を特定する。
【0021】ナビゲーション装置10は、また、各種の演算を行う演算部22を備えている。演算部22は、自車両の走行すべき目的地までの経路を計算する経路計算部24、及び、後述する表示部における表示を制御する地図表示制御部26を備えている。経路計算部24及び地図表示制御部26には、地図情報記憶部28が接続されている。地図情報記憶部28は、例えばDVDやCD−ROM等により構成されており、道路地図を予め記憶している。経路計算部24及び地図表示制御部26は、地図情報記憶部28に格納された道路地図を所定のドライバを用いて読み出す機能を有している。
【0022】経路計算部24には、入力部30及び上記した自車位置特定部20が接続されている。入力部30は、乗員による操作により、自車両の目的地を設定し、後述する表示部に表示すべき道路地図の縮尺を設定し、並びに、各種処理の実行指令を行うための機能を有している。経路計算部24は、入力部30への操作により設定された自車両の目的地と、その時点で自車位置特定部20の特定した自車位置との間における経路を、地図情報記憶部28から読み出した道路地図に基づいて計算する。経路計算部24には、また、経路記憶部32が接続されている。経路記憶部32は、経路計算部24で計算された自車両の現在位置から目的地までの経路を記憶する。
【0023】また、地図表示制御部26には、上記した経路計算部24及び自車位置特定部20が接続されていると共に、車室内に設置され道路地図を表示する表示部34が接続されている。地図表示制御部26は、経路計算部24の計算した目的地までの経路、並びに、自車位置特定部20の特定した自車位置、その位置での自車両の進行方向、及び走行距離に基づいて、後述の如く、表示部34に表示すべき、道路地図に目的地までの経路と自車両の現在位置及びその方位を示す自車マークとを重ねた画像を生成すると共に、その画像が表示されるように表示部34に指令信号を供給する。表示部34は、地図表示制御部26から供給される信号に従って、自車位置が表示画面上において中央下部の特定位置に印されるように自車位置から縮尺に応じた所定範囲内の道路地図上に目的地までの経路と自車マークとを重ねて表示する。
【0024】次に、本実施例のナビゲーション装置10の動作について説明する。
【0025】本実施例において、乗員が入力部30を操作することにより車両の目的地が設定された場合、ナビゲーション装置10は、まず、最短距離や最小コスト法等の所定の方法に従って、その時点での自車位置から設定された目的地までの経路を計算する処理を実行する。そして、その計算された経路及び現時点で特定される自車位置を道路地図に重ね合わせ、その道路地図をその時点での縮尺に応じて表示部34に表示する処理を実行する。
【0026】図2は、本実施例のナビゲーション装置10において、自車位置及び目的地までの経路が道路地図に重畳された画像を表示部34に表示する処理を説明するための図を示す。尚、図2(A)には車両が走行すべき目的地Gまでの経路の一例が、図2(B)には車両が図2(A)に示す経路上の点O1に位置する場合に表示部34に表示される画面を表した図が、また、図2(C)には車両が図2(A)に示す経路上の点O2に位置する場合に表示部34に表示される画面を表した図が、それぞれ示されている。
【0027】本実施例のシステムにおいては、目的地Gまでの経路が設定されると、まず、目的地までの経路及び自車位置Oを道路地図に重ね合わせ、その地図情報を記憶する処理が実行される。次に、目的地Gまでの経路上で自車位置Oから所定の距離(例えば1km)離れた位置を目標地点Dとして設定し、その自車位置Oと目標地点Dとを結んだ線の方向、すなわち、自車位置Oから目標地点Dへ向かう方位(図2(A)に点線矢印で示す)を特定する。そして、上記の如く記憶された、経路及び自車位置Oを道路地図に重ね合わせた地図情報を、自車位置Oから目標地点Dへの方位が表示部34の表示画面上で真上向きとなるように表示部34に表示する。以下、この表示を「ルート方向アップ表示」と称す。尚、この際、表示部34には、乗員の入力部30への操作により設定された縮尺に応じた部分の地図情報のみが表示されることとなる。
【0028】かかるルート方向アップ表示によれば、車両が例えば交差点で左折又は右折しても表示部34の表示画面内で道路地図が急速に回転することはなく、表示画面の急速な切り替えが防止される。また、表示部34の表示画面上において自車位置は上述の如く中央下部の特定位置に印されるので、例えば車両がU字状に旋回しようとする場合でも走行予定の経路が表示画面上に広範囲にわたって表示されることとなる。このため、本実施例によれば、走行予定の経路を表示部34により乗員に視認性よく提供することが可能となる。
【0029】図3は、ルート方向アップ表示の不具合を説明するための図を示す。例えば、図3(A)に示す如く、車両の目標地点D3が車両後方に位置し、車両の進行方向と自車位置O3から目標地点D3への方向との角度が180°近傍の値になっている場合に、ルート方向アップ表示が行われると、車両の進行方向が図3(B)に示す如く表示部34の表示画面上で下方を向くこととなる。この場合、乗員は、自車の直前に存在する交差点で自車を左折・右折の何れの方向に操舵させたらいいのかの瞬時の操作判断を行うことができなくなる。このため、ルート方向アップ表示を厳格に行うものとすると、表示部34における視認性の低下を招くおそれがある。すなわち、ルート方向アップ表示のみでは、乗員が表示部34に表示された状況を速やかにかつ正確に認識するうえで不都合な事態が生ずる。
【0030】そこで、本実施例のシステムは、かかる不都合を解決する点に第1の特徴を有している。以下、その特徴部について説明する。
【0031】図4は、本実施例のシステムにおいて、ルート方向アップ表示の不具合を解消させる手法を説明するための図を示す。また、図5は、本実施例のシステムにおいて、ルート方向アップ表示の不具合を解消する処理を実行したことにより実現される表示部34の表示画面を表した図を示す。尚、図5(A)〜(C)は、図4に示す道路を車両が走行する際の状況を時系列順に並べた図を示す。
【0032】例えば図3(A)に示す状況に至る過程では、図4に示す如く、自車位置Oが点O31であるときに目標地点Dが点D31であり、自車位置Oが点O32であるときに目標地点Dが点D32であり、また、自車位置Oが点O33であるときに目標地点Dが点D33である状況が実現されるものとする。この際、車両の進行方向(又は、自車位置で経路の向く方向)と、自車位置Oから目標地点Dへの方位とのなす角γは、自車位置Oに応じてγ1→γ2(>γ1)→γ3(>γ2)と変化する。
【0033】かかる場合にルート方向アップ表示がなされると、まず、自車位置Oが点O31である場合は、図5(A)に示す如く、表示部34に表示される車両の進行方向が表示画面における上方向に対して時計回り方向に角度γ1だけ傾き、次に自車位置Oが点O32である場合は、図5(B)に示す如く、表示部34に表示される車両の進行方向が表示画面における上方向に対して時計回り方向に角度γ2だけ傾く。
【0034】本実施例において、自車位置Oから目標地点Dへの方位と車両の進行方向とのなす角γがγ2を超えることにより、表示部34に表示される車両の進行方向が表示画面における上方向に対して角度γ2を超えて傾いた場合に、乗員による瞬時の操作判断が困難なものになるとすると、その状況が実現された時点でルート方向アップ表示が禁止される。尚、以下では、表示部34における車両の進行方向が上方向に対してなす角度βの、乗員による瞬時の操作判断が困難であるか否かを示す角度γ2を所定角度θと称す。この所定角度θは、予め例えば60°に設定されている。上記の如くルート方向アップ表示が禁止されると、以後、自車位置Oから目標地点Dへの方位が表示部34の表示画面上で真上向きとなる制約が解除されると共に、表示部34に表示される車両の進行方向が、目標地点Dの位置にかかわらず、表示画面における上方向に対して所定角度θだけ傾いた状態に維持される。
【0035】具体的には、表示部34の表示画面上において車両の進行方向が真上向きに対して時計回り方向に角度θだけ傾いた状況下で、図5に示す如く自車位置Oが点O32から点O33に変化しても、図5(C)に示す如く、表示部34に表示される車両の進行方向は、表示画面における上方向に対して時計回り方向に所定角度θだけ傾いたまま維持されることとなる。
【0036】かかる表示手法によれば、ルート方向アップ表示を行っている状況下で車両の進行方向が表示部34において乗員の操作判断を行い難い方向を向くおそれがある場合に、そのルート方向アップ表示が禁止されることで、表示部34の表示画面上で車両の進行方向が真上向きに対してなす角度βは、時計回り方向を正とし、反時計回り方向を負とすると、−θ≦β≦θの範囲に維持される。このため、かかるシステムによれば、乗員の操作判断を行い難い事態が生じるのを防止することが可能となる。従って、本実施例のシステムによれば、ルート方向アップ表示により走行予定の経路を乗員に視認性よく提供しつつ、乗員による車両の操作判断の容易化を図ることが可能となる。
【0037】図6は、表示部34に生じ得るハンチングを説明するための図を示す。例えば図6(A)に示す道路状況において、自車位置Oが点O4であるときに目標地点Dが点D4であり、自車位置Oが点O5であるときに目標地点Dが点D5である状況が実現されるものとすると、その過程で、車両の進行方向と自車位置Oから目標地点Dへの方位とのなす角γが所定角度θを超えた後に180°を超える場合、すなわち、目標地点Dが車両の進行方向とは反対方向の延長線(図6(A)に一点鎖線で示す)を境界にして一方の領域から他方の領域へ移動する場合がある。かかる場合には、上述した本実施例の表示手法によれば、上記のなす角γが所定角度θを超えた後に180°を超えるまでは、図6(B)に示す如く、車両の進行方向が表示部34の表示画面上において真上向きに対して時計回り方向に所定角度θだけ傾いたまま維持されることとなる。
【0038】しかしながら、自車位置Oから目標地点Dへの方位を基準にした車両の進行方向のなす角度γが時計回り方向から180°を超えた場合、その角度γは反時計回り方向において所定角度θを超える状態が実現される。また、同様に、上記のなす角度γが反時計回り方向から180°を超えた場合、その角度γは時計回り方向において所定角度θを超える状態が実現される。かかる状態が実現された際、表示部34の表示画面が、車両の進行方向が真上向きに対して時計回り方向又は反時計回り方向に所定角度θだけ傾いた状態から突然に、反対の反時計回り方向又は時計回り方向に所定角度θだけ傾いた状態に切り替わるハンチング、すなわち、表示部34における車両の進行方向が真上向きに対してなす角βが所定角度θから所定角度−θへ、又はその逆に所定角度−θから所定角度θへ突然に切り替わるハンチングが生ずるおそれがある。かかるハンチングが生ずると、乗員が表示画面を速やかにかつ容易に認識できなくなることにより、視認性の低下が招来する。
【0039】そこで、本実施例のシステムは、かかるハンチングの発生を回避する点に第2の特徴を有している。以下、その特徴部について説明する。
【0040】図7は、本実施例のシステムにおいて、表示部34のハンチングの発生を回避する処理を実行したことにより実現される表示部34の表示画面を表した図を示す。尚、図7(A)及び(B)は、図6(A)に示す道路を車両が走行する際の状況を時系列順に並べた図を示す。
【0041】上述の如く、本実施例において、自車位置Oから目標地点Dへの方位と車両の進行方向とのなす角γが所定角度θを超えた場合、表示部34における車両の進行方向は、上方向に対して所定角度θをなして維持される。そして、本実施例においては、上記のなす角度γがθを超えた後に180°を超えることとなっても、表示部34において車両の進行方向が真上向きに対してなす角βは、所定角度θから所定角度−θへ、又はその逆に所定角度−θから所定角度θへ切り替わることはなく、上記のなす角度γが180°を超える前と同様に所定角度θ(又は−θ)に維持される。
【0042】具体的には、例えば図6(A)に示す道路状況では、表示部34で車両の進行方向が真上向きに対してなす角βが図7(B)に示す如く時計回り方向に所定角度θ(すなわち、+θ)に維持されている状況下で、自車位置Oから目標地点Dへの方位に対して車両の進行方向のなす角γが時計回り方向から180°(すなわち、+180°)を超えることとなっても、上記のなす角βは、+θから−θへ切り替えることはなく、図7(B)に示す如く従前の+θに維持される。
【0043】かかる制御によれば、車両の走行する道路が蛇腹状の所謂つづら折れルートであっても、表示部34の表示画面においてハンチングが生ずることはなく、表示画面上において車両の進行方向は一定の方向に維持されて表示される。このため、本実施例のシステムによれば、表示部34のハンチングの発生を回避できることで、乗員が表示画面中の状況を速やかにかつ正確に認識することができ、視認性の低下を防止することが可能となる。
【0044】以下、上記した処理の具体的な内容について説明する。
【0045】図8は、表示部34に表示される画面状態を上述の如く制御すべく、本実施例のナビゲーション装置10において地図表示制御部26が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。図8に示すルーチンは、所定時間ごとに繰り返し起動されるルーチンである。図8に示すルーチンが起動されると、まずステップ100の処理が実行される。
【0046】ステップ100では、目的地Gまでの経路上において現在の自車位置Oから所定距離だけ離間する位置を目標地点Dとして設定する処理が実行される。尚、この目標地点Dは、自車位置Oの変化に伴って変化する。
【0047】ステップ102では、自車位置Oから上記ステップ100で設定された目標地点Dへの方位と、その自車位置Oでの車両の進行方向とのなす角γを算出する処理が実行される。以下、自車位置Oから目標地点Dへの方位を基準にして時計回り方向を正とし、また、反時計回り方向を負として、上記のなす角γを表すものとする。
【0048】ステップ104では、車両の進行方向とは反対方向の延長線が、自車位置Oから目標地点Dまでの経路と交差する点C(尚、図6(A)においては点C5として示している)が存在するか否かが判別される。このような点Cが存在しない場合は、上記のなす角γが所定角度θを超えた後に180°を超えていることはなく、表示部34においてハンチングが生じることはない。従って、かかる判別がなされた場合は、次にステップ106の処理が実行される。
【0049】ステップ106では、上記ステップ102で算出された上記のなす角γが時計回り方向に所定角度θを超えている、すなわち、上記のなす角γが所定角度+θを超えているか否かが判別される。尚、所定角度θは、表示部34において車両の進行方向が真上向きに対してなす角度βの、乗員による瞬時の操作判断が困難にならないと予想される上限値(例えば60°)に設定されている。γ>+θが成立する場合は、仮に表示部34の表示画面上において自車位置Oから目標地点Dへの方位が真上向きに設定されると、車両の進行方向が真上向きに対して時計回り方向に所定角度θを超えて傾いて表示されてしまう。従って、γ>+θが成立すると判別された場合は、上記の不都合を回避すべく、次にステップ112の処理が実行される。一方、γ>+θが成立しないと判別された場合は、次にステップ108の処理が実行される。
【0050】ステップ108では、上記ステップ102で算出された上記のなす角γが反時計回り方向に所定角度θを超えている、すなわち、上記のなす角γが所定角度−θを下回っているか否かが判別される。γ<−θが成立する場合は、仮に表示部34の表示画面上において自車位置Oから目標地点Dへの方位が真上向きに設定されると、車両の進行方向が真上向きに対して反時計回り方向に所定角度θを超えて傾いて表示されてしまう。従って、γ<−θが成立すると判別された場合は、かかる不都合を回避すべく、次にステップ114の処理が実行される。一方、γ<−θが成立しない場合は、表示画面上において車両の進行方向が真上向きに対してなす角度βは−θ≦β≦θの範囲に維持されるので、上記した不都合は生じ得ない。従って、かかる判別がなされた場合は、次にステップ110の処理が実行される。
【0051】ステップ110では、自車位置Oから目標地点Dへの方位が表示部34の表示画面上で真上向きとなるように、自車両の目的地Gまでの経路及び自車位置Oを道路地図に重ね合わせた地図情報を表示部34に表示する処理が実行される。
【0052】ステップ112では、車両の進行方向が表示部34の表示画面上で真上向きに対して所定角度+θだけ傾くように、自車両の目的地Gまでの経路及び自車位置Oを道路地図に重ね合わせた地図情報を表示部34に表示する処理が実行される。
【0053】ステップ114では、車両の進行方向が表示部34の表示画面上で真上向きに対して所定角度−θだけ傾くように、自車両の目的地Gまでの経路及び自車位置Oを道路地図に重ね合わせた地図情報を表示部34に表示する処理が実行される。上記ステップ110、112、又は114の処理が終了すると、今回のルーチンは終了される。
【0054】一方、上記ステップ104において点Cが存在する場合は、上記のなす角γが所定角度θを超えた後に180°を超えている場合がある。この場合は、表示部34におけるハンチングの発生を回避する必要がある。従って、かかる判別がなされた場合は、次にステップ116の処理が実行される。
【0055】ステップ116では、点C(尚、点Cが複数存在する場合には自車位置Oに最も近接する点C)に至る直前で経路の向く方向(すなわち、車両が目的地Gへ向かう方向)が、現時点での車両の進行方向に対して時計回り方向側に存在しているか否か、すなわち、点Cに至るまでの経路が車両の進行方向とは反対方向の延長線を境界にして車体左側に存在するか否かが判別される。その結果、点Cに至るまでの経路が車体左側に存在する場合には、その時点まで表示部34に車両の進行方向が真上向きに対して所定角度+θだけ傾いて表示されていたと判断できる。この場合には、自車位置Oと目標地点Dとの位置関係にかかわらず、かかる表示を継続することが適切となる。従って、かかる判別がなされた場合は、次に上記ステップ112の処理が実行される。
【0056】一方、点Cに至るまでの経路が車体右側に存在する場合には、その時点まで表示部34に車両の進行方向が真上向きに対して所定角度−θだけ傾いて表示されていたと判断できる。この場合には、自車位置Oと目標地点Dとの位置関係にかかわらず、かかる表示を継続することが適切となる。従って、かかる判別がなされた場合は、次に上記ステップ114の処理が実行される。
【0057】上記の処理によれば、車両の進行方向が自車位置Oから目標地点Dへの方位に対してなす角γが所定角度θを超えない場合には、表示部34において自車位置Oから目標地点Dへの方位が真上向きとなるルート方向アップ表示を行い、また、かかるルート方向アップ表示が行われている状況下で、車両の進行方向が自車位置Oから目標地点Dへの方位に対してなす角γが所定角度θを超えた場合には、ルート方向アップ表示を禁止し、表示部34において車両の進行方向を真上向きに対して所定角度θだけ傾いた状態に維持することができる。このように、本実施例においては、表示画面の急速な切り替わりを防止し、走行予定の経路を表示画面上に広範囲にわたって表示するというルート方向アップ表示による効果をできるだけ維持しつつ、乗員による車両の操作判断が困難となる表示を禁止することができる。従って、本実施例のシステムによれば、走行予定の経路を乗員に視認性よく提供しつつ、乗員による車両の操作判断の容易化を図っている。
【0058】また、上記の処理によれば、車両の進行方向と自車位置Oから目標地点Dへの方位とのなす角γが所定角度θを超えた後に180°を超えていっても、表示部34における車両の進行方向が真上向きに対してなす角βが、+θから−θへ、又はその逆に−θから+θへ切り替わるのを回避することができる。この場合、表示部34における道路地図が急激に回転して表示されるのも回避される。このため、本実施例のシステムによれば、車両が蛇腹状の所謂つづら折れルートを走行する場合でも、表示部34の表示画面上では車両の進行方向は一定方向に維持されるので、乗員が表示画面上の状況を速やかにかつ正確に認識することができ、視認性の低下を防止することが可能となっている。
【0059】本実施例においては、自車位置Oから目的地Gまでの経路上で自車位置Oから所定の距離(例えば1km)離れた位置が目標地点Dとして設定される。この場合、目標地点Dは、自車位置Oに応じて変化する。このため、目的地Gまでの経路が長くても、自車位置Oから比較的近い位置が目標地点Dとなるので、表示部34による表示を自車位置周辺の経路状況に合わせて行うことが可能となり、その結果、乗員への自車位置周辺の経路状況を把握させることが可能となる。
【0060】尚、上記の実施例においては、目標地点Dが請求項7に記載した「目標地点」に相当すると共に、地図表示制御部26が、上記ステップ106、108、112、及び114の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載された「表示制御手段」が、上記ステップ104の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載された「交差判別手段」が、それぞれ実現されている。
【0061】ところで、上記の実施例においては、道路地図を表示部34に二次元的に表示する場合に適用しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、いわゆる鳥瞰図として道路地図を3次元的に表示する場合に適用することも可能である。
【0062】また、上記の実施例においては、自車位置から乗員の設定した目的地までの経路上において該自車位置から所定の距離離間した位置を目標地点として設定し、原則として、自車位置からその地点への方位が表示部34の表示画面上で真上向きとなるように道路地図の表示を行うこととしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、乗員が入力部30を操作することにより設定した目的地を目標地点として設定する構成に適用することとしてもよい。かかる構成においては、原則として、自車位置から目的地への方位が表示部34の表示画面上で真上向きとなるので、目的地と自車位置との位置関係が容易に乗員に認識されることとなる。この場合には、その目標地点が請求項6に記載した「目標地点」に相当する。
【0063】更に、本発明はこれに限定されるものではなく、乗員の入力部30への操作により変更可能な縮尺に従って表示部34に表示される画面内で、自車位置から目的地までの経路上最も遠くに位置する最遠端を目標地点として設定する構成に適用することとしてもよい。かかる構成においては、目標地点が縮尺に応じて表示画面に設定されることとなるので、経路上の目標地点と自車位置との位置関係が乗員に容易に認識されることとなる。この場合には、その目標地点が請求項8に記載した「目標地点」に相当する。
【発明の効果】上述の如く、請求項1乃至3記載の発明によれば、表示画面の視認性の向上を図りつつ、車両操作判断の容易化を図ることができる。
【0064】請求項4及び5記載の発明によれば、表示画面上での表示が急に切り替わるのを防止することで、視認性の低下を防止することができる。
【0065】請求項6記載の発明によれば、表示画面上で自車位置から目的地への方位を原則として真上方向に向けることで、目的地と自車位置との位置関係を容易に乗員に認識させることができる。
【0066】請求項7記載の発明によれば、目標地点を自車位置の比較的近傍に設定することで、自車位置周辺の経路状況に応じた表示を行うことができる。
【0067】また、請求項8記載の発明によれば、目標地点を縮尺に応じて表示画面に設定することで、経路上の目標地点と自車位置との位置関係を容易に乗員に認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である車両用地図表示装置のシステム構成図である。
【図2】本実施例のシステムにおいて、目的地までの経路及び自車位置を道路地図に重畳した画像を表示部に表示する処理を説明するための図である。
【図3】ルート方向アップ表示の不具合を説明するための図である。
【図4】本実施例のシステムにおいて、ルート方向アップ表示の不具合を解消させる手法を説明するための図である。
【図5】本実施例のシステムにおいて、ルート方向アップ表示の不具合を解消させる手法を実行したことにより実現される表示部の表示画面を表した図である。
【図6】表示部に生じ得るハンチングを説明するための図である。
【図7】本実施例のシステムにおいて、表示部のハンチングの発生を回避する処理を実行したことにより実現される表示部の表示画面を表した図である。
【図8】本実施例のシステムにおいて、表示部に表示される画面状態を制御すべく実行される制御ルーチンの一例のフローチャートである。
【符号の説明】
10 ナビゲーション装置(車両用地図表示装置)
22 演算部
26 地図表示制御部
34 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 自車位置から目標地点への方位が表示画面上で真上向きとなるように自車位置を道路地図に重ねて表示し得る車両用地図表示装置において、自車位置と前記目標地点との関係に応じて前記表示を禁止する表示制御手段を備えることを特徴とする車両用地図表示装置。
【請求項2】 請求項1記載の車両用地図表示装置において、前記表示制御手段は、自車両の進行方向と自車位置から前記目標地点への方位とのなす角度が所定しきい値以下である場合は前記表示を行い、一方、前記角度が前記所定しきい値を超える場合は前記表示を禁止することを特徴とする車両用地図表示装置。
【請求項3】 請求項2記載の車両用地図表示装置において、前記表示制御手段は、前記角度が前記所定しきい値を超える場合は、前記表示画面上で自車両の進行方向が真上向きに対して所定角度だけ傾くように自車位置を道路地図に重ねて表示することを特徴とする車両用地図表示装置。
【請求項4】 自車両の進行方向が自車位置から目標地点への方位に対してなす角度が時計回り方向において所定角度を超える場合には、表示画面上で該進行方向が真上向きに対して時計回り方向において前記所定角度だけ傾くように、また、前記角度が反時計回り方向において所定角度を超える場合には、前記表示画面上で該進行方向が真上向きに対して反時計回り方向において前記所定角度だけ傾くように、自車位置を道路地図に重ねて表示する表示制御手段を備える車両用地図表示装置において、前記表示制御手段は、前記表示画面上で前記進行方向が真上向きに対して時計回り方向又は反時計回り方向において前記所定角度だけ傾くように自車位置を道路地図に重ねて表示している状況下で、前記角度が時計回り方向又は反時計回り方向において180°を超えることにより反時計回り方向又は時計回り方向において所定角度を超えることとなる場合には、前記表示画面上での表示の切り替えを禁止することを特徴とする車両用地図表示装置。
【請求項5】 請求項4記載の車両用地図表示装置において、前記進行方向とは反対方向への延長線が、自車位置から前記目標地点までの経路と交差するか否かを判別する交差判別手段を備え、前記表示制御装置は、前記交差判別手段の判別結果に応じて前記表示画面上での表示の切り替えを禁止することを特徴とする車両用地図表示装置。
【請求項6】 請求項1、2、4、及び5の何れか一項記載の車両用地図表示装置において、前記目標地点が、自車両の目的地であることを特徴とする車両用地図表示装置。
【請求項7】 請求項1、2、4、及び5の何れか一項記載の車両用地図表示装置において、前記目標地点が、自車両の目的地までの経路上において自車位置から所定距離離間した中間地であることを特徴とする車両用地図表示装置。
【請求項8】 請求項1、2、4、及び5の何れか一項記載の車両用地図表示装置において、前記目標地点が、自車両の目的地までの経路上の、前記表示画面に表示されるもののうち最遠端であることを特徴とする車両用地図表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開2002−213978(P2002−213978A)
【公開日】平成14年7月31日(2002.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−14931(P2001−14931)
【出願日】平成13年1月23日(2001.1.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】