車両用報知装置及び追従走行制御システム
【課題】追従走行の追従先の先行車のドライバが、自車が追従先として選択されていると知ることができるようにする。
【解決手段】後続車に搭載された無線通信装置7から車車間通信によって送信される、自車を追従走行の追従先と選択していることを示す追従先選択情報を取得した場合に、自車が当該後続車の追従走行の追従先に選択されていることをユーザに認識させるための被捕捉通知情報の表示を表示装置10に行わせる。
【解決手段】後続車に搭載された無線通信装置7から車車間通信によって送信される、自車を追従走行の追従先と選択していることを示す追従先選択情報を取得した場合に、自車が当該後続車の追従走行の追従先に選択されていることをユーザに認識させるための被捕捉通知情報の表示を表示装置10に行わせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用報知装置及びこの車両用報知装置を含む追従走行制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、先行車に自動的に追従する追従走行を行う技術が知られている。追従走行を行う技術としては、ドライバの設定した車速を上限として、レーダ等の測距センサを用いて検出した先行車との車間距離や相対速度に応じた車速となるように制御するACC(Adaptive Cruise Control)が知られている。上記ACCを行う車両では、追従先の先行車を選択した場合に、追従先の先行車を選択した旨を示す表示を例えばメータ内に行うことが知られている。
【0003】
また、他の方法として、特許文献1には、ドライバが前方から視線をそらすことなく自車の追従状態を把握できるように、先行車の後方部分に設けられたランプを点滅させることが開示されている。詳しくは、特許文献1に開示の技術では、追従走行を開始したことを示す信号を車車間通信によって先行車に送信し、この信号をもとに先行車に設けられたランプを点滅させることで、追従状態にあることを自車のドライバに把握させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−247116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、追従走行を行う側の車両のドライバが追従状態にあることを知ることができるものの、追従走行の追従先の先行車のドライバは、自車が追従先として選択されていることを知ることができないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、追従走行の追従先の先行車のドライバが、自車が追従先として選択されていると知ることができるようにする車両用報知装置及び追従走行制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の車両用報知装置は、車両に搭載され、後続車に搭載された無線通信装置から車車間通信によって送信される、自車を追従走行の追従先と選択していることを示す追従先選択情報を取得する追従先選択情報取得手段と、追従先選択情報取得手段で追従先選択情報を取得した場合に、自車が後続車の追従走行の追従先に選択されていることをユーザに認識させるための情報の報知を自車の車室内に向けて行わせる報知手段とを備える。
【0008】
これによれば、追従先選択情報取得手段で追従先選択情報を取得した場合に、自車が後続車の追従走行の追従先に選択されていることをユーザに認識させるための情報の報知を自車の車室内に向けて行わせるので、追従先情報を取得した場合に、自車が追従先として選択されていると車室内のユーザが知ることができる。また、追従先選択情報は、後続車が自車を追従走行の追従先と選択していることを示すものであるので、追従先選択情報取得手段で追従先選択情報を取得した場合には、自車が後続車に追従先として選択されていることになる。従って、請求項1の構成によれば、自車が後続車に追従先として選択されている場合に、自車が追従先として選択されていると車室内のユーザが知ることができる。その結果、追従走行の追従先の先行車のドライバが、自車が追従先として選択されていると知ることができるようになる。
【0009】
請求項2のように、追従先選択情報取得手段で追従先選択情報を取得できなくなったか否かを判断する取得判断手段を備え、報知手段は、取得判断手段で追従先選択情報を取得できていると判断した場合には、自車が前記後続車の追従走行の追従先に選択されていることをユーザに認識させるための情報の報知を継続する一方、取得判断手段で追従先選択情報を取得できなくなったと判断した場合には、後続車から車車間通信によって追従先選択情報を取得できなくなっていることをユーザに認識させるための情報の報知を自車の車室内に向けて行わせることが好ましい。
【0010】
これによれば、追従先選択情報を取得できなくなったと判断した場合に、後続車から車車間通信によって追従先選択情報を取得できなくなっていることをユーザに認識させることができる。また、後続車から車車間通信によって追従先選択情報を取得できなくなっている場合とは、後続車が車車間通信によって自車の情報を取得できなくなっている場合でもあると考えられるので、後続車が車車間通信によって自車の情報を取得できなくなっていることをユーザに認識させることもできる。
【0011】
さらに、例えば、車車間通信が可能な仲間内の車両同士や同一会社の商用車同士が、同じ目的地へ隊列を成して追従走行するような場面において、以下のような利点がある。詳しくは、上記場面において、後続車が自車から離れすぎて車車間通信によって自車の情報を取得できなくなっている場合に、その後続車の先行車のドライバが、後続車が自車の情報を取得できなくなっていることを知ることができる。そして、後続車が自車の情報を取得できなくなっていることを知った先行車のドライバが、例えば減速するなどして後続車が自車に追いつくようにすることで、後続車が自車の情報を取得できるようにすることが可能になる。
【0012】
また、請求項2のように追従先選択情報取得手段で追従先選択情報を取得できなくなったか否かを判断する場合には、請求項3のように、追従先選択情報取得手段で追従先選択情報を所定時間以上取得しなかった場合に、追従先選択情報を取得できなくなったと判断する態様とすればよい。
【0013】
さらに、請求項2及び3のようにする場合には、請求項4のように、追従先選択情報取得手段は、無線通信を介して取得する他車の情報を用いて追従走行制御を行うことが可能な後続車に搭載された無線通信装置から車車間通信によって送信される追従先選択情報を取得するものであって、報知手段は、取得判断手段で追従先選択情報を取得できなくなったと判断した場合には、後続車が自車を追従先とする追従走行を行うことができなくなっていることを示す情報の報知を行わせる態様としてもよい。
【0014】
前述したように、後続車から車車間通信によって追従先選択情報を取得できなくなっている場合とは、後続車が車車間通信によって自車の情報を取得できなくなっている場合でもあると考えられる。また、後続車が車車間通信によって自車の情報を取得できなくなっている場合には、後続車が自車の情報を用いて追従走行を行うことができなくなっている。よって、請求項4の構成によれば、後続車が自車を追従先とする追従走行を行うことができなくなっていると考えられる場合に、後続車が自車を追従先とする追従走行を行うことができなくなっていることをユーザに認識させることができる。
【0015】
また、請求項4の構成によれば、例えば、車車間通信が可能な仲間内の車両同士や同一会社の商用車同士が、同じ目的地へ隊列を成して追従走行するような場面において、以下のような利点がある。詳しくは、上記場面において、後続車が自車から離れすぎて車車間通信によって自車の情報を取得できなくなり、自車を追従先とする追従走行を行うことができなくなっている場合に、その後続車の先行車のドライバが、後続車が自車を追従先とする追従走行を行うことができなくなっていることを知ることができる。そして、後続車が自車を追従先とする追従走行を行うことができなくなっていることを知った先行車のドライバが、例えば減速するなどして後続車が自車に追いつくようにすることで、後続車が自車の情報を取得できるようにし、自車を追従先とする追従走行を行うことができるようにすることが可能になる。
【0016】
請求項5のように、報知手段は、画像及びテキストのうちの少なくともいずれかを、自車の車室内で使用される表示装置に表示させることで報知を行わせることが好ましい。これによれば、ユーザは報知される情報を自車の車室内で視覚的に認識することができる。
【0017】
請求項6の追従走行制御システムは、車両に搭載され、車車間通信によって情報を送受信する無線通信装置を介して他車の情報を取得するとともに、追従先に選択した先行車に対して、当該先行車の情報を用いて追従走行制御を行うことが可能であって、追従先に選択した先行車に対して、当該先行車を追従走行の追従先と選択したことを示す追従先選択情報を、無線通信装置から車車間通信によって送信する追従走行制御装置と、先行車に搭載される前記のいずれかの車両用報知装置とを含む。
【0018】
これによれば、後続車に搭載された追従走行制御装置から車車間通信によって送信される追従先選択情報を、当該後続車の先行車で受信した場合に、当該先行車のドライバは、当該先行車に搭載された車両用報知装置によって、自車が後続車に追従先として選択されていることを知ることができる。従って、追従走行の追従先の先行車のドライバが、自車が追従先として選択されていると知ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】追従走行制御システム100の概略的な構成を示すブロック図である。
【図2】車両制御ECU1の概略的な構成を示すブロック図である。
【図3】車両制御ECU1での追従先行車決定処理のフローの一例を示すフローチャートである。
【図4】車車間通信可能な先行車を後続車がレーダ8で捕捉している状態を示す模式図である。
【図5】追従可能先行車捕捉情報の表示の一例を示す模式図である。
【図6】追従走行中情報の表示の一例を示す模式図である。
【図7】車両制御ECU1での報知変更処理のフローの一例を示すフローチャートである。
【図8】後続車がレーダ8で先行車を捕捉できなくなったが、先行車との車車間通信はできている状態を示す模式図である。
【図9】レーダロスト通知情報の表示の一例を示す模式図である。
【図10】後続車がレーダ8で先行車を捕捉できなくなったとともに、先行車との車車間通信もできなくなっている状態を示す模式図である。
【図11】追従走行不可通知情報の表示の一例を示す模式図である。
【図12】車両制御ECU1での被捕捉関連処理のフローの一例を示すフローチャートである。
【図13】被捕捉通知情報の表示の一例を示す模式図である。
【図14】被捕捉通知情報の表示前の表示の一例を示す模式図である。
【図15】後続車追従不可通知情報の表示の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明が適用された追従走行制御システム100の概略的な構成を示すブロック図である。図1に示す追従走行制御システム100は、複数の車両(車両A、B)の各々に1つずつ搭載された2つの追従走行制御装置(具体的には車両制御ECU1)を含んでいる。
【0021】
なお、図1では、追従走行制御システム100に2つの追従走行制御装置を含む構成を示したが、必ずしもこれに限らない。追従走行制御システム100に各車両に搭載された3つ以外の数の追従走行制御装置が含まれる構成としてもよい。しかしながら、以降では便宜上、追従走行制御システム100には、車両A、Bの各々に1つずつ搭載された2つの追従走行制御装置が含まれるものとして説明を続ける。
【0022】
ここで、図2を用いて、車両制御ECU1の概略的な構成について説明を行う。図2は、車両制御ECU1の概略的な構成を示すブロック図である。図2に示すように車両制御ECU1は、VSC_ECU2、舵角センサ3、Gセンサ4、ヨーレートセンサ5、ENG_ECU6、無線通信装置7、レーダ8、操作SW9、表示装置10と電子情報のやり取り可能に接続されている。例えば本実施形態では、車両制御ECU1、VSC_ECU2、舵角センサ3、Gセンサ4、ヨーレートセンサ5、ENG_ECU6、無線通信装置7は、CAN(controller area network)などの通信プロトコルに準拠した車内LANで各々接続されているものとする。
【0023】
VSC_ECU2は、自車に制動力を印加するブレーキアクチュエータ(図示せず)を制御するもので、自車の横滑りを抑制するVSC(Vehicle Stability Control、登録商標)の制御機能を備える。このVSC_ECU2は、車内LANから要求減速度の情報を受信し、この要求減速度が自車に発生するように、ブレーキアクチュエータを制御する。また、VSC_ECU2は、自車の速度(車速)Vo、及びブレーキ圧力の情報を車内LANに送信する。舵角センサ3は、自車のステアリングの操舵角の情報を検出するセンサであり、検出した操舵角の情報を車内LANに送信する。
【0024】
Gセンサ4は、自車の前後方向に発生する加速度(前後G)と、横(左右)方向に発生する加速度(横G)を検出する加速度センサであり、検出した前後G及び横Gの情報を車内LANに送信する。ヨーレートセンサ5は、自車の鉛直軸まわりの角速度(ヨーレート)を検出するセンサであり、検出したヨーレートの情報を車内LANに送信する。ENG_ECU6は、車内LANから要求加速度の情報を受信し、自車が要求加速度を発生するように、図示しないスロットルアクチュエータを制御する。また、要求減速度の情報を受信した場合にも、スロットルアクチュエータを制御してエンジンブレーキを発生させる。
【0025】
無線通信装置7は、送受信アンテナを備え、自車位置の周囲に存在する他車との間で、電話網を介さずに無線通信によって自車の情報の配信や他車両の情報の受信(つまり、車車間通信)を行う。車車間通信の通信範囲は所定範囲内(半径数百m〜1km程度が好ましい)に制限されているものとする。例えば、700MHz帯の電波を用いた無線通信の場合には、自車両位置を中心とした例えば半径約1kmの範囲に存在する他車との間で車車間通信を行い、5.9GHz帯の電波を用いた無線通信の場合には、自車位置を中心とした例えば半径約500mの範囲に存在する他車との間で車車間通信を行う。
【0026】
無線通信装置7は、自車の情報として、車内LANから得られる例えば自車の速度Vo、自車の後続車までの距離といった車両情報を100msecごとなどの一定の送信周期で送信するものとする。また、無線通信装置7は、自車以外の車両である他車に搭載されている無線通信装置7から送信される他車の車両情報を受信するものとする。無線通信装置7は、受信した情報を車両制御ECU1に出力する。
【0027】
レーダ8は、例えば周知のレーザレーダであって、レーザ光を自車前方の所定範囲に照射し、その反射光を受信して、自車の先行車、先行車との車間距離D、先行車との相対速度Vr、自車幅中心軸と先行車の中心軸とのズレ量(横ずれ量)等を検出し、車両制御ECU1へ出力する。なお、先行車との車間距離D、先行車との相対速度Vr、自車幅中心軸と先行車の中心軸とのズレ量(横ずれ量)等の検出は、車両制御ECU1で行う構成としてもよい。本実施形態では上記検出はレーダ8の信号をもとに車両制御ECU1で行うものとして以降の説明を続ける。
【0028】
なお、上述のレーダ8以外にも、自車後方の所定範囲にレーザ光を照射するレーダ8を備え、当該レーダ8の信号をもとに、自車の後続車までの距離を車両制御ECU1で検出する構成としてもよい。本実施形態では、自車後方の所定範囲にレーザ光を照射するレーダ8の信号をもとに、自車の後続車までの距離を車両制御ECU1で検出する場合を例に挙げて説明を行う。
【0029】
また、障害物センサとしてレーダ8を用いる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。障害物センサとしては、他車までの距離や相対速度を検出するのに用いることのできるものであれば、他のものを用いる構成としてもよい。例えば、ミリ波レーダやカメラ等を用いることもできる。例えばカメラを用いる場合には、2台のカメラのステレオ画像を利用して車両制御ECU1で他車の存在及びその他車との間の距離を検出したり、逐次撮像される画像中の他車の大きさの変化をもとに車両制御ECU1で相対速度を検出したりする構成とすればよい。
【0030】
操作SW9は、自車のドライバが操作するスイッチ群であり、スイッチ群の操作情報は車両制御ECU1へ出力される。表示装置10は、テキストや画像を表示するものであり、車室内に設けられている。また、表示装置10は、自車の乗員がテキストや画像を目にすることができるように設けられている。例えば表示装置10としては、ヘッドアップディスプレイ(HUD)を用いる構成としてもよいし、車載ナビゲーション装置に用いられるディスプレイを利用する構成としてもよい。また、車載ナビゲーション装置に用いられるディスプレイとは別に、インストゥルメントパネル等に設けたディスプレイを用いる構成としてもよい。
【0031】
車両制御ECU1は、主にマイクロコンピュータとして構成され、何れも周知のCPU、ROM、RAM、I/O、及びこれらを接続するバスによって構成される。車両制御ECU1は、VSC_ECU2、舵角センサ3、Gセンサ4、ヨーレートセンサ5、ENG_ECU6、無線通信装置7、レーダ8、操作SW9から入力された各種情報に基づき、各種の処理を実行する。車両制御ECU1が請求項の車両用報知装置に相当する。
【0032】
車両制御ECU1は、車内LANから得られる例えば自車の速度Vo、自車の後続車までの距離といった車両情報を逐次取得する。車両制御ECU1は、例えば一定の時間ごとにこれらの車両情報を取得し、無線通信装置7から送信させる。例えば車両情報として、自車の速度VoについてはVSC_ECU2から得るものとし、自車の後続車までの距離はレーダ8の信号をもとに検出することで得るものとすればよい。
【0033】
車両情報を送信する場合には、自車を特定することができる識別情報を付与して送信するものとする。識別情報としては、例えば車両IDや無線通信装置7の機器IDなどを用いることができる。また、車両情報を送信する場合には、例えばその車両情報を検出した時刻を示すタイムスタンプを付与して送信してもよい。ここで言うところの時刻としては、衛星測位システムにおける衛星の原子時計の時刻に同期した時刻(例えばGPS時刻を用いればよい。本実施形態では、車両情報を送信する場合には、無線通信装置7の機器ID及びタイムスタンプとしてのGPS時刻を付与して送信するものとして以降の説明を続ける。
【0034】
また、車両制御ECU1は、車車間通信によって他車の無線通信装置7から送信される他車の上記車両情報を、自車の無線通信装置7を介して取得する。車両制御ECU1は、他車から取得した車両情報をRAM等のメモリに格納するものとすればよい。また、取得してから一定時間以上経過した車両情報については消去する一方、新たに取得した車両情報のうち、既に格納済みの車両情報に付与されている機器IDと同じ機器IDが付与されているものについては、古い車両情報に上書きする。また、新たに取得した車両情報のうち、既に格納済みの車両情報に付与されている機器IDと異なる機器IDが付与されているものについてはメモリに格納するものとする。ここで言うところの一定時間とは、任意に設定可能な値であって、例えば数秒に設定する構成とすればよい。これにより、定期的に車車間通信を行うことができている他車の最新の車両情報のみがメモリに格納されることになる。
【0035】
車両制御ECU1は、車内LAN等により接続される各種機器を利用して追従走行制御を行う。なお、追従走行制御は、ドライバが操作SW9を操作して、追従走行制御開始指示を行ったことにより開始し、また、ドライバの終了操作により、追従走行制御は終了する。本実施形態では、例えば操作SW9としてのクルーズコントロールスイッチのメインスイッチをオンした状態において、クルーズコントロールスイッチの制御開始スイッチをオンにすることで追従走行制御を開始し、制御終了スイッチをオンにすることで追従走行制御を終了する場合を例に挙げて説明を行う。なお、クルーズコントロールスイッチのメインスイッチをオフした状態では、追従走行制御開始指示を行うことはできず、後述の追従先行車決定処理も実行されないものとする。
【0036】
また、車両制御ECU1は、レーダ8の信号をもとに、追従走行制御開始指示を行った時点においてレーダ8で検出している先行車との距離を検出し、検出したこの距離(つまり、先行車との初期車間距離)を例えば目標車間距離Dtとして設定するものとする。
【0037】
追従走行制御は、他にも自車のブレーキ操作を検出した場合や先行車から車車間通信で送信される情報を受信できなくなった場合に終了するものとする。車車間通信で送信される情報を受信できなくなった場合としては、例えば先行車から車車間通信で送信される情報を一定時間以上の間受信しなかった場合が挙げられる。
【0038】
追従走行制御は、自車にとっての先行車とすべき車車間通信が可能な車両の決定(以下、追従先行車決定処理)が行われた上で開始されるものとする。ここで、追従先行車決定処理について図3を用いて説明を行う。図3は、車両制御ECU1での追従先行車決定処理のフローの一例を示すフローチャートである。図3のフローは、例えばクルーズコントロールスイッチのメインスイッチがオンとなったときに開始されるものとする。なお、図3のフローは、メインスイッチがオフとなったときにも終了するものとする。
【0039】
まず、ステップS1では、自車が直進状態か否かを判定する。自車が直進状態か否かは、舵角センサ3から得られる自車の操舵角をもとに判定する構成とすればよい。例えば、ステアリングの中立位置からの操舵角が所定角以内である場合に自車が直進状態と判定する構成とすればよい。そして、自車が直進状態と判定した場合(ステップS1でYES)には、ステップS2に移る。また、自車が直進状態でないと判定した場合(ステップS1でNO)には、ステップS1のフローを繰り返す。
【0040】
ステップS2では、センサ検出処理を行って、ステップS3に移る。センサ検出処理では、レーダ8の信号をもとに、自車の先行車の検出を開始する。詳しくは、レーダ8の信号をもとに障害物が何も検出されなかった場合には、自車の先行車の検出が行われなかったものとする。また、レーダ8の信号をもとに障害物が検出された場合には、その障害物の相対速度や距離から、周知の技術と同様にして先行車以外の他車や構造物と先行車とを判別し、先行車が判別された場合に、自車の先行車の検出が行われたものとする。
【0041】
なお、自車が直進状態にある場合には、レーダ8の信号をもとに検出する先行車(つまり、先行車とみなす車両)は実際の先行車であるが、自車が直進状態にない場合には、レーダ8の信号をもとに検出する先行車が実際の先行車でない場合もある。これに対して、本実施形態の構成によれば、自車が直進状態と判定した場合にセンサ検出処理を行うので、レーダ8の信号をもとに検出する先行車は、実際の先行車であることが確実である。
【0042】
ステップS3では、自車の先行車の検出が行われた場合(ステップS3でYES)には、ステップS4に移る。また、自車の先行車の検出が行われなかった場合(ステップS3でNO)には、ステップS1に戻ってフローを繰り返す。
【0043】
ステップS4では、他車の無線通信装置7から送信される車両情報(具体的には他車の速度及び他車の後続車までの距離の情報)を取得しているか否かを判定する。例えば、無線通信装置7で受信した車両情報が1つでもメモリに格納されていることをもとに、他車の車両情報を取得していると判定する構成とすればよい。
【0044】
そして、他車の車両情報を取得したと判定した場合(ステップS4でYES)には、ステップS5に移る。また、他車の車両情報を取得していないと判定した場合(ステップS4でNO)には、ステップS1に戻ってフローを繰り返す。
【0045】
ステップS5では、先行車位置決定処理を行って、ステップS6に移る。先行車位置決定処理では、レーダ8の信号をもとに、前述したようにして、先行車との車間距離D(つまり、自車から先行車までの距離)を検出し、先行車との車間距離Dを決定する。また、先行車位置決定処理では、レーダ8の信号をもとに、前述したようにして、先行車との相対速度Vrを検出する。そして、レーダ8の信号をもとに検出した先行車との相対速度Vrと車内LANから得られる自車の速度Voとから、先行車の速度Vpを算出し、先行車の速度Vpを決定する。よって、車両制御ECU1が請求項の先行車速度決定手段に相当する。
【0046】
ステップS6では、他車位置決定処理を行って、ステップS7に移る。他車位置決定処理では、取得していた車両情報をメモリから読み出すことで、車両情報に付与された機器IDによって特定される他車の速度及び当該他車から後続車までの距離を決定する。
【0047】
なお、本実施形態では、先行車位置決定処理を行った後に他車位置決定処理を行う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、他車位置決定処理を行った後に先行車位置決定処理を行う構成としてもよいし、先行車位置決定処理と他車位置決定処理とを並行して行う構成としてもよい。
【0048】
ステップS7では、同一判別処理を行って、ステップS8に移る。同一判別処理では、レーダ8の信号をもとに検出した先行車と、受信した車両情報の送信元の他車とが、車間距離及び速度に関して近似しているか否かに応じて、同一の車両であるか否かを判別する。具体的には、先行車位置決定処理で決定した自車と先行車との車間距離D及び先行車の速度Vpと、他車位置決定処理で決定した他車から後続車までの距離及び他車の速度とが、一定の範囲内で一致しているか否かに応じて、先行車と他車とが同一の車両であるか否かを判別する。詳しくは、距離及び速度のいずれについても差が所定値以下の場合に、先行車と他車とが同一の車両であると判別すればよい。ここで言うところの所定値とは任意に設定可能な値である。例えば同一判別処理は、メモリに格納されている車両情報の送信元の他車全てについて行う構成とすればよい。
【0049】
ステップS8では、同一判別処理で先行車と同一と判別される他車があった場合(ステップS8でYES)には、ステップS9に移る。また、同一判別処理で先行車と同一と判別される他車が1つもなかった場合(ステップS8でNO)には、ステップS1に戻ってフローを繰り返す。
【0050】
ステップS9では、追従可能先行車捕捉通知処理を行って、ステップS10に移る。追従可能先行車捕捉通知処理では、レーダ8の信号をもとに検出している(つまり、レーダ8で捕捉している)先行車が車車間通信可能な先行車であることをユーザに認識させるための情報(以下、追従可能先行車捕捉情報)の表示を表示装置10で行わせる。
【0051】
ここで、図4及び図5を用いて、追従可能先行車捕捉情報の表示についての説明を行う。図4は、車車間通信可能な先行車を後続車がレーダ8で捕捉している状態を示す模式図である。なお、ここでは図4中のAが自車、Bが先行車、Cが自車のレーダ8の検出範囲を示しているものとして説明を行う。また、図5は、追従可能先行車捕捉情報の表示の一例を示す模式図である。
【0052】
図4に示すように、車車間通信可能な先行車をレーダ8で捕捉している状態にある場合に、本実施形態では、例えば図5に示すような表示を表示装置10で行わせる。具体的には、図5に示すように、自車と先行車とを示す画像表示(自車については図中のD、先行車については図中のE)を行うとともに、先行車の表示を強調表示する。また、「自動追従セット可能」といったテキスト表示(図中のF)などの先行車を追従先に選択可能であることを示す表示も行わせる。そして、これらの表示により、車車間通信可能な先行車をレーダ8で捕捉している状態にあることをユーザに認識させる。
【0053】
追従可能先行車捕捉情報の表示は、例えば継続的に行わせる構成とする。なお、追従可能先行車捕捉情報の表示は、断続的に行わせる構成としてもよい。追従可能先行車捕捉情報の表示は、車車間通信可能な先行車をレーダ8で捕捉していない状態となった場合に中止したり、後述の追従走行中情報の表示に切り替わる場合に中止したりする構成とすればよい。
【0054】
図3に戻って、ステップS10では、選択判定処理を行って、ステップS11に移る。選択判定処理では、先行車を追従先として選択したか否かを判定する。本実施形態では、例えば車車間通信可能な先行車をレーダ8で捕捉している状態において、クルーズコントロールスイッチの制御開始スイッチがユーザによってオンされた場合に、先行車を追従先として選択するものとする。従って、制御開始スイッチがユーザにオンされた場合に、先行車を追従先として選択したと判定する。また、制御開始スイッチがユーザによってオンされていない場合には、先行車を追従先として選択していないと判定する。
【0055】
なお、車車間通信可能な先行車をレーダ8で捕捉していない場合には、追従可能先行車捕捉情報の表示を行わせなかったり、制御開始スイッチがユーザにオンされた場合にも先行車を追従先として選択しなかったりする構成とすることが好ましい。これによれば、車車間通信可能でない先行車を追従先とすることを避けることができる。
【0056】
ステップS11では、選択判定処理で先行車を追従先として選択したと判定した場合(ステップS11でYES)には、ステップS12に移る。また、選択判定処理で先行車を追従先として選択していないと判定した場合(ステップS11でNO)には、ステップS10に戻ってフローを繰り返す。なお、追従可能先行車捕捉情報を表示してから時間が経過した後に、割り込み等によって先行車が入れ替わっている場合も考えられるので、追従可能先行車捕捉情報を表示してから一定時間が経過した場合であって、且つ、選択判定処理で先行車を追従先として選択していないと判定した場合には、ステップS1に戻ってフローを繰り返す構成としてもよい。ここで言うところの一定時間とは任意に設定可能な時間である。
【0057】
ステップS12では、先行車決定処理を行って、ステップS13に移る。先行車決定処理では、選択した先行車を追従先と決定して追従走行制御を開始する。選択した先行車を追従先と決定した場合には、例えば図6に示すような追従走行中情報の表示を表示装置10で行わせる。図6は、追従走行中情報の表示の一例を示す模式図である。具体的には、図6に示すように、自車と先行車とを示す画像表示(自車については図中のD、先行車については図中のE)を行うとともに、先行車の表示を強調表示する。また、「自動追従中」といったテキスト表示(図中のG)や「セット」といったテキストが含まれた表示を強調表示(図中のH)するなどの先行車に対して追従走行制御中であることを示す表示も行わせる。そして、これらの表示により、先行車に対して追従走行制御中にあることをユーザに認識させる。
【0058】
図3に戻って、ステップS13では、追従先選択情報送信処理を行って、フローを終了する。追従先選択情報送信処理では、自車の先行車を追従走行の追従先と選択していることを示す追従先選択情報を、無線通信装置7を介して送信させる。例えば、追従先選択情報は、一定の送信周期で送信する車両情報とともに送信する構成とすればよい。また、追従先選択情報には、追従先の先行車を特定可能なように、当該先行車の車両情報に付与されていた機器IDを付与する構成とすればよい。これにより、無線通信装置7を介して追従先選択情報を取得した他車の車両制御ECU1において、自車が追従先に選択されているか、自車以外の他車が追従先に選択されているかを判別することが可能になる。
【0059】
なお、追従走行制御中は、例えば図6に示すような追従走行中情報の表示を表示装置10で行わせたまま、ステップS1に戻ってフローを繰り返し、車車間通信可能な先行車をレーダ8で捕捉していない状態になった場合に、図6に示すような表示を中止する構成としてもよい。
【0060】
また、本実施形態では、先行車決定処理の後に追従先選択情報送信処理を行う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、追従先選択情報送信処理の後に先行車決定処理を行う構成としてもよいし、先行車決定処理と追従先選択情報送信処理とを並行して行う構成としてもよい。
【0061】
ここで、本発明における作用効果について説明を行う。自車に対する位置関係が近似している場合には、同一判別処理で判別される上記先行車と上記他車とが同一である可能性が高い。本実施形態では、自車から先行車までの距離と、他車の直近の後続車までの距離との関係にうち、自車から先行車までの距離と、先行車の直近の後続車である自車までの距離とが同一である場合が該当する。また、当該先行車と当該他車との速度が近似している場合には、同一判別処理で判別される上記先行車と上記他車とが同一である可能性がさらに高い。よって、同一判別処理で先行車と他車とが同一であると判別された場合には、当該前方車が車車間通信可能な車両である可能性が高い。
【0062】
また、本実施形態の構成によれば、同一判別処理で同一と判別した場合に、レーダ8で捕捉している先行車が車車間通信可能な先行車であることをユーザに認識させるための情報の表示を行わせるので、車車間通信可能な先行車である可能性が高い車両をレーダ8で捕捉中であることをユーザが知ることができる。よって、上記表示を頼りに、車車間通信可能な先行車である可能性が高い車両を追従先の先行車として容易に選択することができる。
【0063】
また、本実施形態では、同一判別処理において、先行車位置決定処理で決定した自車と先行車との車間距離D及び先行車の速度Vpと、他車位置決定処理で決定した他車から後続車までの距離及び他車の速度とが近似しているか否かに応じて、先行車と他車とが同一か否かを判別する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、先行車位置決定処理で決定した自車と先行車との車間距離Dと、他車位置決定処理で決定した他車から後続車までの距離とが近似しているか否かに応じて、先行車と他車とが同一か否かを判別する構成としてもよい。
【0064】
他にも、先行車位置決定処理で決定した自車と先行車との車間距離Dと、他車から取得した車両情報から決定した自車から他車までの距離とが近似しているか否かに応じて、先行車と他車とが同一か否かを判別する構成としてもよい。この場合、自車から他車までの距離は、車両制御ECU1において以下のようにして求める構成とすればよい。まず、送信時には送信時のGPS時刻を付与して車両情報を送信するとともに、受信時には車両情報の受信時のGPS時刻を取得する構成とする。そして、車両情報に付与された送信時のGPS時刻と取得した受信時のGPS時刻とから算出される車両情報の伝播時間をもとにして、自車から他車までの距離を算出する。
【0065】
また、自車から他車までの距離は、車両制御ECU1において以下のようにして求める構成としてもよい。まず、自車には図示しない位置検出器が搭載されており、自車の現在位置を逐次取得できるとともに、自車の現在位置を車両情報に含ませて送信する構成とする。つまり、他車から受信する車両情報には他車の現在位置が含まれていることになる。そして、自車の位置検出器から取得した自車の現在位置と、無線通信装置7を介して車車間通信によって取得した他車の現在位置とをもとに、同時点における自車と当該他車との距離を算出する。なお、同時点における自車両と直近の先行車両との現在位置の対応付けは、現在位置を検出した時点のGPS時刻を用いて行うものとする。
【0066】
自車から先行車までの距離と、自車から他車までの距離とが近似している場合には、当該先行車と当該他車とが同一である可能性がより高い。よって、以上の構成によれば、車車間通信可能な先行車である可能性がより高い車両をレーダ8で捕捉中であることをユーザが知ることができる。
【0067】
なお、車両情報に他車の速度を含んでいた場合には、先行車位置決定処理で決定した自車と先行車との車間距離D及び先行車の速度と、他車から取得した車両情報から決定した自車から他車までの距離及び他車の速度とが近似しているか否かに応じて、先行車と他車とが同一か否かを判別する構成としてもよい。
【0068】
位置検出器としては、地磁気を検出する地磁気センサ、自車両の鉛直方向周りの角速度を検出するジャイロスコープ、自車両の移動距離を検出する距離センサ、および衛星からの電波に基づいて車両の現在位置を検出するGPS(global positioning system)のためのGPS受信機といった各センサから得られる情報をもとに、車両の現在位置の検出を逐次行うものを用いる構成とすればよい。なお、上述の各センサについては、各センサの精度によっては上述した内の一部で構成してもよいし、上述した以外のセンサを用いる構成としてもよい。
【0069】
また、自車に対する先行車の相対位置と、自車に対する他車の相対位置とが近似しているか否かに応じて、先行車と他車とが同一か否かを判別する構成としてもよい。この場合、自車に対する先行車の相対位置は、レーダ8として複数の受信アンテナにおける受信波間の位相差に基づいてターゲットの方位を検出するものを用いることで、決定する構成とすればよい。
【0070】
また、自車に対する他車の相対位置は、以下のようにして求める構成とすればよい。まず、自車に前述の位置検出器が搭載されており、自車の現在位置を逐次取得できるとともに、自車の現在位置を車両情報に含ませて送信する構成とする。つまり、他車から受信する車両情報には他車の現在位置が含まれていることになる。そして、自車の位置検出器から取得した自車の現在位置と、無線通信装置7を介して車車間通信によって取得した他車の現在位置とをもとに、同時点における自車に対する当該他車の相対位置を算出する。なお、同時点における自車両と直近の先行車両との現在位置の対応付けは、現在位置を検出した時点のGPS時刻を用いて行うものとする。
【0071】
自車に対する先行車の相対位置と自車に対する他車の相対位置とが近似している場合には、当該先行車と当該他車とが同一である可能性が非常に高い。よって、以上の構成によれば、車車間通信可能な先行車である可能性が非常に高い車両をレーダ8で捕捉中であることをユーザが知ることができる。
【0072】
また、自車から先行車までの距離及び自車の前方に存在するか否かの情報と、自車から他車までの距離及び自車の前方に存在するか否かの情報とをもとに、先行車と他車とが同一か否かを判別する構成としてもよい。この場合、自車から先行車までの距離としては、先行車位置決定処理で決定した自車と先行車との車間距離Dを用いる構成とすればよい。また、自車の前方に存在するか否かの情報については、先行車であるので、自車の前方に存在するという情報になる。一方、自車から他車までの距離については、前述したように、自車と他車との現在位置から算出する構成とすればよい。また、他車が自車の前方に存在するか否かの情報については、自車と他車との現在位置から他車が自車の前方に存在するか否かを判別することで得る構成とすればよい。詳しくは、先行車と他車との両方が自車の前方に存在し、且つ、自車から当該先行車までの距離と自車から当該車までの距離とが近似している場合に、先行車と他車とが同一と判定する構成とすればよい。
【0073】
つまり、以上の構成では、先行車位置決定処理では、レーダ8の信号(障害物センサの検知結果)をもとに、自車に対する先行車の位置関係として、自車から当該先行車までの距離及び当該先行車が自車の前方に位置することを決定する。また、自車に対する当該他車の位置関係を決定するための決定用情報として無線通信装置7を介して他車の現在位置を逐次取得する。続いて、取得した他車の現在位置と位置検出器から取得した自車の現在位置とをもとに、自車から他車までの距離及び当該他車が自車の前方に位置するか否かを決定する。そして、同一判別処理では、決定した自車に対する先行車までの距離及び当該先行車が自車の前方に位置することと、決定した他車までの距離及び当該他車が自車の前方に位置するか否かの結果とを比較することによって、当該先行車と当該他車とが同一であるか否かを判別する。
【0074】
なお、車両情報に後続車までの距離を含ませない構成とする場合には、自車後方の所定範囲にレーザ光を照射するレーダ8を備えない構成としてもよい。
【0075】
また、車両制御ECU1は、補正接近離間状態評価指標KdB_cを用いて追従走行制御を行う。ここで、補正接近離間状態評価指標KdB_cについての説明を行う。補正接近離間状態評価指標KdB_cは、先行車の速度を考慮して接近離間状態評価指標KdBを補正したものである。接近離間状態評価指標KdBは、前方物体のドライバの目に映る像を想定し、当該想定した像の面積の単位時間当たりの変化度合いを表す指標である。この接近離間状態評価指標KdBおよび補正接近離間状態評価指標KdB_cは、例えば、それぞれ、下記式1、2で表される。なお、式1、2において、Dは自車と先行車との車間距離、Vrは自車に対する先行車の相対速度、aは乗数、Vpは先行車の速度である。
【数1】
【数2】
【0076】
上記式2に示すように、補正接近離間状態評価指標KdB_cは、先行車に接近する相対速度Vrの絶対値が高くなるほど大きくなる。また、先行車の速度Vpが高いほど小さくなる。また、車間距離が短くなるほど大きくなる。また、車間距離Dは三乗項であることから、車間距離Dが短くなる変化に対する補正接近離間状態評価指標KdB_cの増加勾配は、車間距離Dが短くなるほど急峻になる。補正接近離間状態評価指標KdB_cを用いて速度制御を行うと、ドライバにとって違和感のない速度制御を行うことができることが学会等で既に認められている。従って、補正接近離間状態評価指標KdB_cを用いて追従走行制御を行うことで、ドライバにとって違和感のない滑らかな加減速制御を行うことが可能になる。
【0077】
車両制御ECU1の例えばROM等のメモリには、摩擦ブレーキ開始閾値式、エンジンブレーキ開始閾値式、加速制御終了閾値式の3つの閾値式が記憶されている。これらの閾値式は、いずれも、ブレーキ判別式にオフセット値を加えた式である。式3にブレーキ判別式を示す。
【数3】
【0078】
このブレーキ判別式は、運転者のブレーキ操作開始時点における補正接近離間状態評価指標KdB_cと車間距離Dとの関係を示す式であり、式3において、a、b、cはいずれも定数であり、実験に基づいて定められる。また、aは式2におけるaを意味する。a、b、cは、たとえば、それぞれ0.2、−22.66、74.71である。
【0079】
ブレーキ判別式が式3に示す式であることから、摩擦ブレーキ開始閾値式、エンジンブレーキ開始閾値式、加速制御終了閾値式は、いずれも式4に示す式となる。式4におけるΔcがオフセット値であり、このオフセット値として、摩擦ブレーキ開始閾値式では第1ブレーキ用オフセット値Δc1を用い、エンジンブレーキ開始閾値式では第2ブレーキ用オフセット値Δc2を用い、加速制御終了閾値式では加速用オフセット値Δc3を用いる。これらのオフセット値Δc1、Δc2、Δc3は、たとえば、−3dB、−4dB、−6dBである。
【数4】
【0080】
オフセット値の大小関係により、同一の車間距離Dにおける補正接近離間状態評価指標KdB_cは、ブレーキ判別式、摩擦ブレーキ開始閾値式、エンジンブレーキ開始閾値式、加速制御終了閾値式の順に低下する。
【0081】
以下、追従走行制御の内容を詳しく説明する。車両制御ECU1は、追従走行制御中は、KdB_cの現在値を逐次算出する。KdB_cは、式2に示した評価指標算出式から算出する。従って、KdB_cの現在値の算出には、相対速度Vr、先行車の速度Vp、車間距離Dを決定する必要がある。相対速度Vr、車間距離Dは、例えばレーダ8からの信号に基づいて決定する。先行車の速度Vpは、上記相対速度VrとVSC_ECU2からの自車の速度Voとから算出する。そして、これらを式2に代入することで、KdB_cの現在値を逐次算出する。
【0082】
なお、先行車の速度Vpは、無線通信装置7を介して先行車から逐次取得する構成としてもよい。この場合、相対速度Vrは、VSC_ECU2から逐次取得する自車の速度Voと無線通信装置7を介して逐次取得する先行車の速度Vpとから逐次算出する構成としてもよい。また、車間距離Dは、逐次算出される相対速度Vrをもとにして目標車間距離Dtからの距離増減分を算出することで決定する構成としてもよい。なお、目標車間距離Dtの代わりに、本願出願人が先に出願した特願2011−99199における安定車間距離を用いる構成としてもよい。
【0083】
車両制御ECU1は、追従走行制御中は、3つの閾値、すなわち、摩擦ブレーキ開始閾値、エンジンブレーキ開始閾値、加速制御終了閾値を逐次算出する。これらはメモリに記憶されている3つの閾値式、すなわち、摩擦ブレーキ開始閾値式、エンジンブレーキ開始閾値式、加速制御終了閾値式と、車間距離Dの現在値とから算出する。
【0084】
車両制御ECU1は、追従走行制御中は、目標車間距離Dtと、現在の車間距離Dとを比較し、現在の車間距離Dが目標車間距離Dtよりも短い場合には、KdB_cの現在値がどのような値であるかに関係なく、VSC_ECU2に摩擦ブレーキを作動させる指示を行う。
【0085】
一方、現在の車間距離Dが目標車間距離Dtよりも長い場合には、KdB_cの現在値と、摩擦ブレーキ開始閾値、エンジンブレーキ開始閾値、加速制御終了閾値とを比較する。比較の結果としては、次の(1)〜(4)の結果がある。すなわち、(1)KdB_cの現在値が摩擦ブレーキ開始閾値よりも高い場合、(2)KdB_cの現在値が摩擦ブレーキ開始閾値とエンジンブレーキ開始閾値との間の場合、(3)KdB_cの現在値がブレーキ開始閾値と加速制御終了閾値との間の場合、(4)補正接近離間状態評価指標の現在値が加速制御終了閾値よりも低い場合がある。(1)の場合には摩擦ブレーキを作動させ、(2)の場合にはエンジンブレーキを作動させ、(3)の場合には自車両を等速で走行させ、(4)の場合には加速制御を行う。なお、自車両を減速あるいは加速させる場合の要求加減速度GDpは、たとえば、下記式5により算出する。なお、プラスの値が要求加速度、マイナスの値が要求減速度となる。
【数5】
【0086】
この式5におけるVr_tは、ブレーキ判別式から求まる、現在の車間距離DにおけるKdB_cを、式2に代入することで求まる目標相対速度である。また、Tは、自車の現在の相対速度Vrと、目標相対速度Vr_tとの差分を、要求加減速度GDpに変換するための除数であり、適宜、設定されるものである。
【0087】
ここでは、相対速度Vr1、追従先行車の速度Vp、車間距離Dを車車間通信で得られる車両情報をもとに決定する構成としても、自車のレーダ8の信号をもとに決定する構成としてもよいものとして記載したが、本実施形態では、これらを使い分けるものとする。詳しくは、レーダ8で先行車を検出できている間は自車のレーダ8の信号をもとに決定し、レーダ8で先行車を検出できなくなった場合(つまり、レーダロストした場合)には車車間通信で得られる車両情報をもとに決定する構成としてもよい。レーダロストは、例えば先行車がカーブに進入することで自車の前方から外れ、レーダ8の検出範囲に存在しなくなった場合に生じる。
【0088】
レーダロストしたか否かの判定については、例えば、レーダ8の信号をもとに先行車を一定時間(例えば数十秒)以上検出し続けていた状態から、先行車を検出していない状態に切り替わって所定時間(例えば数秒)の間は、レーダロストしたと判定し、その所定時間を超えた後はレーダロストしていないと判定する構成とすればよい。また、レーダ8の信号をもとに先行車を検出している状態と検出していない状態とが数秒ごと等の短時間に複数回繰り返される場合に、レーダロストしたと判定する構成としてもよい。
【0089】
他にも、例えば、レーダロストしたか否かの判定を以下のようにして行う構成としてもよい。まず、先行車の無線通信装置7から受信した当該先行車の現在位置と自車の現在位置とから、自車と当該先行車との距離を求めることで、自車と当該先行車との車間距離を検出する。そして、検出した車間距離がレーダ8の信号をもとに先行車を検出可能な距離以下にも関わらず、レーダ8の信号をもとに先行車を検出していない場合には、レーダロストしたと判定すればよい。
【0090】
また、車両制御ECU1は、追従走行制御中におけるレーダロストや車車間通信の途絶に応じた情報の表示を表示装置10に行わせる報知変更処理を行う。ここで、図7を用いて報知変更処理についての説明を行う。図7は、車両制御ECU1での報知変更処理のフローの一例を示すフローチャートである。図7のフローは、追従走行中情報の表示が行われたときに開始されるものとする。また、図7のフローは、例えばクルーズコントロールスイッチの制御終了スイッチをオンにしたときに終了されるものとすればよい。
【0091】
まず、ステップS31では、レーダロスト判定処理を行って、ステップS32に移る。レーダロスト判定処理では、前述したのと同様にして、レーダ8で先行車を検出できなくなったか否か(つまり、レーダロストしたか否か)を判定する。ステップS32では、レーダロスト判定処理でレーダロストしたと判定した場合(ステップS32でYES)には、ステップS33に移る。また、レーダロスト判定処理でレーダロストしていないと判定した場合(ステップS32でNO)には、ステップS31に戻ってフローを繰り返す。
【0092】
ステップS33では、レーダロスト通知処理を行って、ステップS34に移る。レーダロスト通知処理では、レーダ8で先行車を捕捉できなくなったが、先行車から車車間通信によって送信される情報を取得できている状態にあることをユーザに認識させるための情報(以下、レーダロスト通知情報)の表示を表示装置10で行わせる。
【0093】
ここで、図8及び図9を用いて、レーダロスト通知情報の表示についての説明を行う。図8は、後続車がレーダ8で先行車を捕捉できなくなったが、先行車との車車間通信はできている状態を示す模式図である。なお、ここでは図8中のAが自車、Bが先行車、Cが自車のレーダ8の検出範囲を示しているものとして説明を行う。また、図9は、レーダロスト通知情報の表示の一例を示す模式図である。
【0094】
図8に示すように、レーダ8で先行車を捕捉できなくなったが、先行車から車車間通信によって送信される情報を取得できている状態にある場合に、本実施形態では、例えば図9に示すような表示を表示装置10で行わせる。具体的には、図9に示すように、自車と先行車とを示す画像表示(自車については図中のD、先行車については図中のI)を行うとともに、追従走行中情報の表示の場合とは先行車の色等を変更して強調表示する。また、「自動追従中」といったテキスト表示(図中のG)や「セット」といったテキストが含まれた表示を強調表示(図中のH)するなどの先行車に対して追従走行制御中であることを示す表示も行わせる。そして、これらの表示により、レーダ8で先行車を捕捉できなくなったが、先行車から車車間通信によって送信される情報を取得できている状態にあることをユーザに認識させる。
【0095】
図7に戻って、ステップS34では、第1車車間通信判定処理を行って、ステップS35に移る。第1車車間通信判定処理では、自車と先行車との車車間通信ができなくなったか否かを判定する。一例としては、先行車から送信される車両情報の無線通信装置7を介した取得を、所定時間以上行わなかった場合に、自車と先行車との車車間通信ができなくなったと判定する構成とすればよい。ここで言うところの所定時間とは任意に設定可能な値であって、例えば数秒とすればよい。また、他の例として、先行車から送信される車両情報の無線通信装置7を介した取得を、所定の距離の走行中に行わなかった場合に、自車と先行車との車車間通信ができなくなったと判定する構成としてもよい。先行車から送信される車両情報の判別は、車両情報に付与されている機器IDをもとに行う構成とすればよい。
【0096】
ステップS35では、自車と先行車との車車間通信ができなくなった(つまり、車車間通信不能)と判定した場合(ステップS35でYES)には、ステップS36に移る。また、車車間通信不能でないと判定した場合(ステップS35でNO)には、ステップS31に戻ってフローを繰り返す。なお、車車間通信不能でないと判定し、ステップS31に戻ってフローを繰り返す場合には、レーダレーダロスト通知情報の表示を継続させ、レーダロスト判定処理でレーダロストしていないと判定した後に追従走行中情報の表示に復帰させる構成とすればよい。
【0097】
ステップS36では、追従走行不可通知処理を行い、ステップS34に戻ってフローを繰り返す。追従走行不可通知処理では、レーダ8で先行車を捕捉できなくなったとともに、先行車から車車間通信によって送信される情報を取得できなくなった状態、つまり、先行車に対する追従走行ができなくなったことをユーザに認識させるための情報(以下、追従走行不可通知情報)の表示を表示装置10で行わせる。例えば追従走行不可通知情報の表示は、レーダロスト通知情報の表示から切替えて行わせる構成とすればよい。なお、ステップS36において、追従走行不可通知処理を行い、フローを終了する構成としてもよい。
【0098】
ステップS35で車車間通信不能と判定した場合には、例えば先行車に対する追従走行制御を直ちに中止する構成としてもよい。他にも、追従走行制御の中止を一定時間保留し、第1車車間通信判定処理で車車間通信不能でないと判定した場合に追従走行制御を再開する構成としてもよい。追従走行制御の中止は、他にもクルーズコントロールスイッチのうちの制御終了スイッチがオンになったときに行うものとする。
【0099】
ここで、図10及び図11を用いて、追従走行不可通知情報の表示についての説明を行う。図10は、後続車がレーダ8で先行車を捕捉できなくなったとともに、先行車との車車間通信もできなくなっている状態を示す模式図である。先行車との車車間通信ができなくなる状態は、例えば図10に示すように、山などの障害物によって車車間通信が妨害されている場合に生じる。なお、ここでは図10中のAが自車、Bが先行車、Cが自車のレーダ8の検出範囲を示しているものとして説明を行う。また、図11は、追従走行不可通知情報の表示の一例を示す模式図である。
【0100】
図10に示すように、レーダ8で先行車を捕捉できなくなったとともに、先行車から車車間通信によって送信される情報も取得できなくなった状態にある場合に、本実施形態では、例えば図11に示すような表示を表示装置10で行わせる。具体的には、図11に示すように、自車を示す画像表示(図中のD)は行うが、先行車を示す画像表示は行わないようにする。また、「セット」といったテキストが含まれた表示の強調表示を中止する(図中のJ)などの先行車に対して追従走行ができなくなったことを示す表示も行わせる。そして、これらの表示により、先行車に対する追従走行ができなくなった状態にあることをユーザに認識させる。
【0101】
以上の構成によれば、追従走行制御中には、追従走行制御中であることを示す情報の表示を行わせるので、自車が先行車に対して追従走行制御中であるか否かをユーザが認識することができる。また、レーダ8で先行車を捕捉できなくなったが、先行車から車車間通信によって送信される情報を取得できている状態にある場合に、この状態にあることをユーザが認識することができる。従って、車車間通信によって送信される情報を用いて追従走行制御中であることをユーザが認識することができる。さらに、レーダ8で先行車を捕捉できなくなったとともに、先行車から車車間通信によって送信される情報を取得できなくなった状態にある場合に、先行車に対する追従走行ができなくなったことをユーザが認識することができる。
【0102】
また、車両制御ECU1は、自車が後続車の追従走行の追従先に選択された場合に、自車が追従走行の追従先に選択されていることをユーザに認識させる被捕捉通知処理や後続車の追従状態に応じた情報の報知を行う処理といった被捕捉関連処理を行う。ここで、図12を用いて被捕捉関連処理についての説明を行う。図12は、車両制御ECU1での被捕捉関連処理のフローの一例を示すフローチャートである。図12のフローは、例えば自車のイグニッション電源がオンされたときに開始され、イグニッション電源がオフになったときに終了するものとする。
【0103】
まず、ステップS51では、他車の無線通信装置7から車車間通信によって送信される情報を取得したか否かを判定する。例えば、自車の無線通信装置7で受信した情報が車両制御ECU1に入力されたことをもとに、他車の情報を取得したと判定する構成とすればよい。そして、他車の情報を取得したと判定した場合(ステップS51でYES)には、ステップS52に移る。また、他車の情報を取得していないと判定した場合(ステップS51でNO)には、ステップS51のフローを繰り返す。
【0104】
ステップS52では、追従先選択情報取得判定処理を行って、ステップS53に移る。追従先選択情報取得判定処理では、自車を追従先と選択していることを示す追従先選択情報を取得したか否かを判定する。詳しくは、自車の無線通信装置7の機器IDが付与された追従先選択情報を取得した場合に、自車を追従先と選択していることを示す追従先選択情報を取得したと判定する。よって、車両制御ECU1が請求項の追従先選択情報取得手段に相当する。
【0105】
ステップS53では、自車を追従先と選択していることを示す追従先選択情報を取得したと判定した場合(ステップS53でYES)には、ステップS54に移る。また、自車を追従先と選択していることを示す追従先選択情報を取得していないと判定した場合(ステップS53でNO)には、ステップS51に戻ってフローを繰り返す。
【0106】
ステップS54では、被捕捉通知処理を行って、ステップS55に移る。被捕捉通知処理では、自車が後続車の追従走行の追従先に選択されていることをユーザに認識させるための情報(以下、被捕捉通知情報)の表示を表示装置10で行わせる。よって、車両制御ECU1が請求項の報知手段に相当する。ここで、図13を用いて、被捕捉通知情報の表示についての説明を行う。なお、図13は、被捕捉通知情報の表示の一例を示す模式図である。
【0107】
被捕捉通知処理において、例えば図13に示すような表示を表示装置10で行わせる。具体的には、図13に示すように、自車と後続車とを示す画像表示(自車については図中のK、後続車については図中のL)を行うとともに、後続車の表示を強調表示する。また、「被追従車ロックオン」といったテキスト表示(図中のM)などの自車が後続車の追従走行の追従先に選択されていることを示す表示も行わせる。そして、これらの表示により、自車が後続車の追従走行の追従先に選択されていることをユーザに認識させる。
【0108】
また、被捕捉通知処理を行うまでは、例えば図14に示すような表示を表示装置10で行わせる構成としてもよい。詳しくは、自車と後続車とを示す画像表示(自車については図中のK、後続車については図中のL)を行うが、後続車の表示を強調表示しない。また、「被追従車ロックオン」といったテキスト表示も行わない。なお、図14は、被捕捉通知情報の表示前の表示の一例を示す模式図である。また、図14に示すような表示は、デフォルトで表示する構成としてもよいし、自車後方の所定範囲にレーザ光を照射するレーダ8の信号をもとに後続車を検出している場合にのみ表示させる構成としてもよい。
【0109】
図12に戻って、ステップS55では、第2車車間通信判定処理を行って、ステップS56に移る。第2車車間通信判定処理では、自車と後続車との車車間通信ができなくなったか否かを判定する。よって、車両制御ECU1が請求項の取得判断手段に相当する。一例としては、後続車から送信される車両情報の無線通信装置7を介した取得を、所定時間以上行わなかった場合に、自車と後続車との車車間通信ができなくなったと判定する構成とすればよい。ここで言うところの所定時間とは任意に設定可能な値であって、例えば数秒とすればよい。また、他の例として、後続車から送信される車両情報の無線通信装置7を介した取得を、所定の距離の走行中に行わなかった場合に、自車と後続車との車車間通信ができなくなったと判定する構成としてもよい。後続車から送信される車両情報の判別は、車両情報に付与されている機器IDをもとに行う構成とすればよい。
【0110】
ステップS56では、自車と後続車との車車間通信ができなくなった(つまり、車車間通信不能)と判定した場合(ステップS56でYES)には、ステップS57に移る。また、車車間通信不能でないと判定した場合(ステップS56でNO)には、ステップS55に戻ってフローを繰り返す。なお、車車間通信不能でないと判定し、ステップS31に戻ってフローを繰り返す場合には、被捕捉通知情報の表示を継続させる構成とすればよい。
【0111】
ステップS57では、後続車追従不可通知処理を行い、ステップS51に戻ってフローを繰り返す。後続車追従不可通知処理では、後続車が自車から車車間通信によって送信される情報を取得できなくなった状態、つまり、自車に対する追従走行ができなくなったことをユーザに認識させるための情報(以下、後続車追従不可通知情報)の表示を表示装置10で行わせる。後続車追従不可通知情報の表示は、被捕捉通知情報の表示から切替えて行わせる構成とすればよい。
【0112】
ここで、図10及び図15を用いて、後続車追従不可通知情報の表示についての説明を行う。ここでは、図10中のAが後続車、Bが自車、Cが後続車のレーダ8の検出範囲を示しているものとして説明を行う。なお、図15は、後続車追従不可通知情報の表示の一例を示す模式図である。
【0113】
図10に示すように、後続車がレーダ8で自車を捕捉できなくなったとともに、自車から車車間通信によって送信される情報も取得できなくなった状態にある場合に、本実施形態では、例えば図15に示すような表示を表示装置10で行わせる。具体的には、図15に示すように、自車を示す画像表示(図中のK)は行うが、後続車を示す画像表示は行わないようにすることで、先行車に対する追従走行ができなくなった状態にあることをユーザに認識させる。
【0114】
なお、図8にしめすように、後続車がレーダ8で自車を捕捉できなくなったが、自車から車車間通信によって送信される情報を取得できている状態にある場合には、自車においては、被捕捉通知情報の表示を継続させる構成とすればよい。
【0115】
本実施形態では、自車が先行車を追従先に選択する場合の表示(以下、選択時表示)と、自車が後続車に追従先に選択された場合の表示(以下、被選択時表示)とについて、それぞれ説明を行ったが、これらは別々の表示装置10に表示させる構成としてもよいし、同一の表示装置10に表示させる構成としてもよい。なお、選択時表示とは、追従可能先行車捕捉情報、追従走行中情報、レーダロスト通知情報、追従走行不可通知情報等の表示であり、被選択時表示とは、被捕捉通知情報、後続車追従不可通知情報等の表示である。
【0116】
また、選択時表示と被選択時表示とを同一の表示装置10に表示させる場合には、分割した画面のそれぞれに表示させる構成としてもよいし、選択時表示と被選択時表示とを組み合わせて同一の画面に表示させる構成としてもよい。一例としては、先行車、自車、後続車を示す表示を一列に並べ、先行車に対して追従走行制御中には、先行車の表示を強調表示し、後続車の追従先に選択されている場合には、後続車の表示を強調表示するなどすればよい。他にも、先行車、自車を示す表示を並べた列と、自車、後続車を示す表示を並べた列との二列を表示させる構成としてもよい。
【0117】
さらに、本実施形態では、追従可能先行車捕捉情報、追従走行中情報、レーダロスト通知情報、追従走行不可通知情報、被捕捉通知情報、後続車追従不可通知情報等の各種の情報を表示装置10で表示させる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、図示しない音声出力装置から音声出力することで情報をユーザに報知する構成としてもよい。
【0118】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0119】
1 車両制御ECU(車両用報知装置、追従先選択情報取得手段、報知手段、取得判断手段)、2 VSC_ECU、3 舵角センサ、4 Gセンサ、5 ヨーレートセンサ、6 ENG_ECU、7 無線通信装置、8 レーダ、9 操作SW、10 表示装置、100 追従走行制御システム
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用報知装置及びこの車両用報知装置を含む追従走行制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、先行車に自動的に追従する追従走行を行う技術が知られている。追従走行を行う技術としては、ドライバの設定した車速を上限として、レーダ等の測距センサを用いて検出した先行車との車間距離や相対速度に応じた車速となるように制御するACC(Adaptive Cruise Control)が知られている。上記ACCを行う車両では、追従先の先行車を選択した場合に、追従先の先行車を選択した旨を示す表示を例えばメータ内に行うことが知られている。
【0003】
また、他の方法として、特許文献1には、ドライバが前方から視線をそらすことなく自車の追従状態を把握できるように、先行車の後方部分に設けられたランプを点滅させることが開示されている。詳しくは、特許文献1に開示の技術では、追従走行を開始したことを示す信号を車車間通信によって先行車に送信し、この信号をもとに先行車に設けられたランプを点滅させることで、追従状態にあることを自車のドライバに把握させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−247116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、追従走行を行う側の車両のドライバが追従状態にあることを知ることができるものの、追従走行の追従先の先行車のドライバは、自車が追従先として選択されていることを知ることができないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、追従走行の追従先の先行車のドライバが、自車が追従先として選択されていると知ることができるようにする車両用報知装置及び追従走行制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の車両用報知装置は、車両に搭載され、後続車に搭載された無線通信装置から車車間通信によって送信される、自車を追従走行の追従先と選択していることを示す追従先選択情報を取得する追従先選択情報取得手段と、追従先選択情報取得手段で追従先選択情報を取得した場合に、自車が後続車の追従走行の追従先に選択されていることをユーザに認識させるための情報の報知を自車の車室内に向けて行わせる報知手段とを備える。
【0008】
これによれば、追従先選択情報取得手段で追従先選択情報を取得した場合に、自車が後続車の追従走行の追従先に選択されていることをユーザに認識させるための情報の報知を自車の車室内に向けて行わせるので、追従先情報を取得した場合に、自車が追従先として選択されていると車室内のユーザが知ることができる。また、追従先選択情報は、後続車が自車を追従走行の追従先と選択していることを示すものであるので、追従先選択情報取得手段で追従先選択情報を取得した場合には、自車が後続車に追従先として選択されていることになる。従って、請求項1の構成によれば、自車が後続車に追従先として選択されている場合に、自車が追従先として選択されていると車室内のユーザが知ることができる。その結果、追従走行の追従先の先行車のドライバが、自車が追従先として選択されていると知ることができるようになる。
【0009】
請求項2のように、追従先選択情報取得手段で追従先選択情報を取得できなくなったか否かを判断する取得判断手段を備え、報知手段は、取得判断手段で追従先選択情報を取得できていると判断した場合には、自車が前記後続車の追従走行の追従先に選択されていることをユーザに認識させるための情報の報知を継続する一方、取得判断手段で追従先選択情報を取得できなくなったと判断した場合には、後続車から車車間通信によって追従先選択情報を取得できなくなっていることをユーザに認識させるための情報の報知を自車の車室内に向けて行わせることが好ましい。
【0010】
これによれば、追従先選択情報を取得できなくなったと判断した場合に、後続車から車車間通信によって追従先選択情報を取得できなくなっていることをユーザに認識させることができる。また、後続車から車車間通信によって追従先選択情報を取得できなくなっている場合とは、後続車が車車間通信によって自車の情報を取得できなくなっている場合でもあると考えられるので、後続車が車車間通信によって自車の情報を取得できなくなっていることをユーザに認識させることもできる。
【0011】
さらに、例えば、車車間通信が可能な仲間内の車両同士や同一会社の商用車同士が、同じ目的地へ隊列を成して追従走行するような場面において、以下のような利点がある。詳しくは、上記場面において、後続車が自車から離れすぎて車車間通信によって自車の情報を取得できなくなっている場合に、その後続車の先行車のドライバが、後続車が自車の情報を取得できなくなっていることを知ることができる。そして、後続車が自車の情報を取得できなくなっていることを知った先行車のドライバが、例えば減速するなどして後続車が自車に追いつくようにすることで、後続車が自車の情報を取得できるようにすることが可能になる。
【0012】
また、請求項2のように追従先選択情報取得手段で追従先選択情報を取得できなくなったか否かを判断する場合には、請求項3のように、追従先選択情報取得手段で追従先選択情報を所定時間以上取得しなかった場合に、追従先選択情報を取得できなくなったと判断する態様とすればよい。
【0013】
さらに、請求項2及び3のようにする場合には、請求項4のように、追従先選択情報取得手段は、無線通信を介して取得する他車の情報を用いて追従走行制御を行うことが可能な後続車に搭載された無線通信装置から車車間通信によって送信される追従先選択情報を取得するものであって、報知手段は、取得判断手段で追従先選択情報を取得できなくなったと判断した場合には、後続車が自車を追従先とする追従走行を行うことができなくなっていることを示す情報の報知を行わせる態様としてもよい。
【0014】
前述したように、後続車から車車間通信によって追従先選択情報を取得できなくなっている場合とは、後続車が車車間通信によって自車の情報を取得できなくなっている場合でもあると考えられる。また、後続車が車車間通信によって自車の情報を取得できなくなっている場合には、後続車が自車の情報を用いて追従走行を行うことができなくなっている。よって、請求項4の構成によれば、後続車が自車を追従先とする追従走行を行うことができなくなっていると考えられる場合に、後続車が自車を追従先とする追従走行を行うことができなくなっていることをユーザに認識させることができる。
【0015】
また、請求項4の構成によれば、例えば、車車間通信が可能な仲間内の車両同士や同一会社の商用車同士が、同じ目的地へ隊列を成して追従走行するような場面において、以下のような利点がある。詳しくは、上記場面において、後続車が自車から離れすぎて車車間通信によって自車の情報を取得できなくなり、自車を追従先とする追従走行を行うことができなくなっている場合に、その後続車の先行車のドライバが、後続車が自車を追従先とする追従走行を行うことができなくなっていることを知ることができる。そして、後続車が自車を追従先とする追従走行を行うことができなくなっていることを知った先行車のドライバが、例えば減速するなどして後続車が自車に追いつくようにすることで、後続車が自車の情報を取得できるようにし、自車を追従先とする追従走行を行うことができるようにすることが可能になる。
【0016】
請求項5のように、報知手段は、画像及びテキストのうちの少なくともいずれかを、自車の車室内で使用される表示装置に表示させることで報知を行わせることが好ましい。これによれば、ユーザは報知される情報を自車の車室内で視覚的に認識することができる。
【0017】
請求項6の追従走行制御システムは、車両に搭載され、車車間通信によって情報を送受信する無線通信装置を介して他車の情報を取得するとともに、追従先に選択した先行車に対して、当該先行車の情報を用いて追従走行制御を行うことが可能であって、追従先に選択した先行車に対して、当該先行車を追従走行の追従先と選択したことを示す追従先選択情報を、無線通信装置から車車間通信によって送信する追従走行制御装置と、先行車に搭載される前記のいずれかの車両用報知装置とを含む。
【0018】
これによれば、後続車に搭載された追従走行制御装置から車車間通信によって送信される追従先選択情報を、当該後続車の先行車で受信した場合に、当該先行車のドライバは、当該先行車に搭載された車両用報知装置によって、自車が後続車に追従先として選択されていることを知ることができる。従って、追従走行の追従先の先行車のドライバが、自車が追従先として選択されていると知ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】追従走行制御システム100の概略的な構成を示すブロック図である。
【図2】車両制御ECU1の概略的な構成を示すブロック図である。
【図3】車両制御ECU1での追従先行車決定処理のフローの一例を示すフローチャートである。
【図4】車車間通信可能な先行車を後続車がレーダ8で捕捉している状態を示す模式図である。
【図5】追従可能先行車捕捉情報の表示の一例を示す模式図である。
【図6】追従走行中情報の表示の一例を示す模式図である。
【図7】車両制御ECU1での報知変更処理のフローの一例を示すフローチャートである。
【図8】後続車がレーダ8で先行車を捕捉できなくなったが、先行車との車車間通信はできている状態を示す模式図である。
【図9】レーダロスト通知情報の表示の一例を示す模式図である。
【図10】後続車がレーダ8で先行車を捕捉できなくなったとともに、先行車との車車間通信もできなくなっている状態を示す模式図である。
【図11】追従走行不可通知情報の表示の一例を示す模式図である。
【図12】車両制御ECU1での被捕捉関連処理のフローの一例を示すフローチャートである。
【図13】被捕捉通知情報の表示の一例を示す模式図である。
【図14】被捕捉通知情報の表示前の表示の一例を示す模式図である。
【図15】後続車追従不可通知情報の表示の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明が適用された追従走行制御システム100の概略的な構成を示すブロック図である。図1に示す追従走行制御システム100は、複数の車両(車両A、B)の各々に1つずつ搭載された2つの追従走行制御装置(具体的には車両制御ECU1)を含んでいる。
【0021】
なお、図1では、追従走行制御システム100に2つの追従走行制御装置を含む構成を示したが、必ずしもこれに限らない。追従走行制御システム100に各車両に搭載された3つ以外の数の追従走行制御装置が含まれる構成としてもよい。しかしながら、以降では便宜上、追従走行制御システム100には、車両A、Bの各々に1つずつ搭載された2つの追従走行制御装置が含まれるものとして説明を続ける。
【0022】
ここで、図2を用いて、車両制御ECU1の概略的な構成について説明を行う。図2は、車両制御ECU1の概略的な構成を示すブロック図である。図2に示すように車両制御ECU1は、VSC_ECU2、舵角センサ3、Gセンサ4、ヨーレートセンサ5、ENG_ECU6、無線通信装置7、レーダ8、操作SW9、表示装置10と電子情報のやり取り可能に接続されている。例えば本実施形態では、車両制御ECU1、VSC_ECU2、舵角センサ3、Gセンサ4、ヨーレートセンサ5、ENG_ECU6、無線通信装置7は、CAN(controller area network)などの通信プロトコルに準拠した車内LANで各々接続されているものとする。
【0023】
VSC_ECU2は、自車に制動力を印加するブレーキアクチュエータ(図示せず)を制御するもので、自車の横滑りを抑制するVSC(Vehicle Stability Control、登録商標)の制御機能を備える。このVSC_ECU2は、車内LANから要求減速度の情報を受信し、この要求減速度が自車に発生するように、ブレーキアクチュエータを制御する。また、VSC_ECU2は、自車の速度(車速)Vo、及びブレーキ圧力の情報を車内LANに送信する。舵角センサ3は、自車のステアリングの操舵角の情報を検出するセンサであり、検出した操舵角の情報を車内LANに送信する。
【0024】
Gセンサ4は、自車の前後方向に発生する加速度(前後G)と、横(左右)方向に発生する加速度(横G)を検出する加速度センサであり、検出した前後G及び横Gの情報を車内LANに送信する。ヨーレートセンサ5は、自車の鉛直軸まわりの角速度(ヨーレート)を検出するセンサであり、検出したヨーレートの情報を車内LANに送信する。ENG_ECU6は、車内LANから要求加速度の情報を受信し、自車が要求加速度を発生するように、図示しないスロットルアクチュエータを制御する。また、要求減速度の情報を受信した場合にも、スロットルアクチュエータを制御してエンジンブレーキを発生させる。
【0025】
無線通信装置7は、送受信アンテナを備え、自車位置の周囲に存在する他車との間で、電話網を介さずに無線通信によって自車の情報の配信や他車両の情報の受信(つまり、車車間通信)を行う。車車間通信の通信範囲は所定範囲内(半径数百m〜1km程度が好ましい)に制限されているものとする。例えば、700MHz帯の電波を用いた無線通信の場合には、自車両位置を中心とした例えば半径約1kmの範囲に存在する他車との間で車車間通信を行い、5.9GHz帯の電波を用いた無線通信の場合には、自車位置を中心とした例えば半径約500mの範囲に存在する他車との間で車車間通信を行う。
【0026】
無線通信装置7は、自車の情報として、車内LANから得られる例えば自車の速度Vo、自車の後続車までの距離といった車両情報を100msecごとなどの一定の送信周期で送信するものとする。また、無線通信装置7は、自車以外の車両である他車に搭載されている無線通信装置7から送信される他車の車両情報を受信するものとする。無線通信装置7は、受信した情報を車両制御ECU1に出力する。
【0027】
レーダ8は、例えば周知のレーザレーダであって、レーザ光を自車前方の所定範囲に照射し、その反射光を受信して、自車の先行車、先行車との車間距離D、先行車との相対速度Vr、自車幅中心軸と先行車の中心軸とのズレ量(横ずれ量)等を検出し、車両制御ECU1へ出力する。なお、先行車との車間距離D、先行車との相対速度Vr、自車幅中心軸と先行車の中心軸とのズレ量(横ずれ量)等の検出は、車両制御ECU1で行う構成としてもよい。本実施形態では上記検出はレーダ8の信号をもとに車両制御ECU1で行うものとして以降の説明を続ける。
【0028】
なお、上述のレーダ8以外にも、自車後方の所定範囲にレーザ光を照射するレーダ8を備え、当該レーダ8の信号をもとに、自車の後続車までの距離を車両制御ECU1で検出する構成としてもよい。本実施形態では、自車後方の所定範囲にレーザ光を照射するレーダ8の信号をもとに、自車の後続車までの距離を車両制御ECU1で検出する場合を例に挙げて説明を行う。
【0029】
また、障害物センサとしてレーダ8を用いる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。障害物センサとしては、他車までの距離や相対速度を検出するのに用いることのできるものであれば、他のものを用いる構成としてもよい。例えば、ミリ波レーダやカメラ等を用いることもできる。例えばカメラを用いる場合には、2台のカメラのステレオ画像を利用して車両制御ECU1で他車の存在及びその他車との間の距離を検出したり、逐次撮像される画像中の他車の大きさの変化をもとに車両制御ECU1で相対速度を検出したりする構成とすればよい。
【0030】
操作SW9は、自車のドライバが操作するスイッチ群であり、スイッチ群の操作情報は車両制御ECU1へ出力される。表示装置10は、テキストや画像を表示するものであり、車室内に設けられている。また、表示装置10は、自車の乗員がテキストや画像を目にすることができるように設けられている。例えば表示装置10としては、ヘッドアップディスプレイ(HUD)を用いる構成としてもよいし、車載ナビゲーション装置に用いられるディスプレイを利用する構成としてもよい。また、車載ナビゲーション装置に用いられるディスプレイとは別に、インストゥルメントパネル等に設けたディスプレイを用いる構成としてもよい。
【0031】
車両制御ECU1は、主にマイクロコンピュータとして構成され、何れも周知のCPU、ROM、RAM、I/O、及びこれらを接続するバスによって構成される。車両制御ECU1は、VSC_ECU2、舵角センサ3、Gセンサ4、ヨーレートセンサ5、ENG_ECU6、無線通信装置7、レーダ8、操作SW9から入力された各種情報に基づき、各種の処理を実行する。車両制御ECU1が請求項の車両用報知装置に相当する。
【0032】
車両制御ECU1は、車内LANから得られる例えば自車の速度Vo、自車の後続車までの距離といった車両情報を逐次取得する。車両制御ECU1は、例えば一定の時間ごとにこれらの車両情報を取得し、無線通信装置7から送信させる。例えば車両情報として、自車の速度VoについてはVSC_ECU2から得るものとし、自車の後続車までの距離はレーダ8の信号をもとに検出することで得るものとすればよい。
【0033】
車両情報を送信する場合には、自車を特定することができる識別情報を付与して送信するものとする。識別情報としては、例えば車両IDや無線通信装置7の機器IDなどを用いることができる。また、車両情報を送信する場合には、例えばその車両情報を検出した時刻を示すタイムスタンプを付与して送信してもよい。ここで言うところの時刻としては、衛星測位システムにおける衛星の原子時計の時刻に同期した時刻(例えばGPS時刻を用いればよい。本実施形態では、車両情報を送信する場合には、無線通信装置7の機器ID及びタイムスタンプとしてのGPS時刻を付与して送信するものとして以降の説明を続ける。
【0034】
また、車両制御ECU1は、車車間通信によって他車の無線通信装置7から送信される他車の上記車両情報を、自車の無線通信装置7を介して取得する。車両制御ECU1は、他車から取得した車両情報をRAM等のメモリに格納するものとすればよい。また、取得してから一定時間以上経過した車両情報については消去する一方、新たに取得した車両情報のうち、既に格納済みの車両情報に付与されている機器IDと同じ機器IDが付与されているものについては、古い車両情報に上書きする。また、新たに取得した車両情報のうち、既に格納済みの車両情報に付与されている機器IDと異なる機器IDが付与されているものについてはメモリに格納するものとする。ここで言うところの一定時間とは、任意に設定可能な値であって、例えば数秒に設定する構成とすればよい。これにより、定期的に車車間通信を行うことができている他車の最新の車両情報のみがメモリに格納されることになる。
【0035】
車両制御ECU1は、車内LAN等により接続される各種機器を利用して追従走行制御を行う。なお、追従走行制御は、ドライバが操作SW9を操作して、追従走行制御開始指示を行ったことにより開始し、また、ドライバの終了操作により、追従走行制御は終了する。本実施形態では、例えば操作SW9としてのクルーズコントロールスイッチのメインスイッチをオンした状態において、クルーズコントロールスイッチの制御開始スイッチをオンにすることで追従走行制御を開始し、制御終了スイッチをオンにすることで追従走行制御を終了する場合を例に挙げて説明を行う。なお、クルーズコントロールスイッチのメインスイッチをオフした状態では、追従走行制御開始指示を行うことはできず、後述の追従先行車決定処理も実行されないものとする。
【0036】
また、車両制御ECU1は、レーダ8の信号をもとに、追従走行制御開始指示を行った時点においてレーダ8で検出している先行車との距離を検出し、検出したこの距離(つまり、先行車との初期車間距離)を例えば目標車間距離Dtとして設定するものとする。
【0037】
追従走行制御は、他にも自車のブレーキ操作を検出した場合や先行車から車車間通信で送信される情報を受信できなくなった場合に終了するものとする。車車間通信で送信される情報を受信できなくなった場合としては、例えば先行車から車車間通信で送信される情報を一定時間以上の間受信しなかった場合が挙げられる。
【0038】
追従走行制御は、自車にとっての先行車とすべき車車間通信が可能な車両の決定(以下、追従先行車決定処理)が行われた上で開始されるものとする。ここで、追従先行車決定処理について図3を用いて説明を行う。図3は、車両制御ECU1での追従先行車決定処理のフローの一例を示すフローチャートである。図3のフローは、例えばクルーズコントロールスイッチのメインスイッチがオンとなったときに開始されるものとする。なお、図3のフローは、メインスイッチがオフとなったときにも終了するものとする。
【0039】
まず、ステップS1では、自車が直進状態か否かを判定する。自車が直進状態か否かは、舵角センサ3から得られる自車の操舵角をもとに判定する構成とすればよい。例えば、ステアリングの中立位置からの操舵角が所定角以内である場合に自車が直進状態と判定する構成とすればよい。そして、自車が直進状態と判定した場合(ステップS1でYES)には、ステップS2に移る。また、自車が直進状態でないと判定した場合(ステップS1でNO)には、ステップS1のフローを繰り返す。
【0040】
ステップS2では、センサ検出処理を行って、ステップS3に移る。センサ検出処理では、レーダ8の信号をもとに、自車の先行車の検出を開始する。詳しくは、レーダ8の信号をもとに障害物が何も検出されなかった場合には、自車の先行車の検出が行われなかったものとする。また、レーダ8の信号をもとに障害物が検出された場合には、その障害物の相対速度や距離から、周知の技術と同様にして先行車以外の他車や構造物と先行車とを判別し、先行車が判別された場合に、自車の先行車の検出が行われたものとする。
【0041】
なお、自車が直進状態にある場合には、レーダ8の信号をもとに検出する先行車(つまり、先行車とみなす車両)は実際の先行車であるが、自車が直進状態にない場合には、レーダ8の信号をもとに検出する先行車が実際の先行車でない場合もある。これに対して、本実施形態の構成によれば、自車が直進状態と判定した場合にセンサ検出処理を行うので、レーダ8の信号をもとに検出する先行車は、実際の先行車であることが確実である。
【0042】
ステップS3では、自車の先行車の検出が行われた場合(ステップS3でYES)には、ステップS4に移る。また、自車の先行車の検出が行われなかった場合(ステップS3でNO)には、ステップS1に戻ってフローを繰り返す。
【0043】
ステップS4では、他車の無線通信装置7から送信される車両情報(具体的には他車の速度及び他車の後続車までの距離の情報)を取得しているか否かを判定する。例えば、無線通信装置7で受信した車両情報が1つでもメモリに格納されていることをもとに、他車の車両情報を取得していると判定する構成とすればよい。
【0044】
そして、他車の車両情報を取得したと判定した場合(ステップS4でYES)には、ステップS5に移る。また、他車の車両情報を取得していないと判定した場合(ステップS4でNO)には、ステップS1に戻ってフローを繰り返す。
【0045】
ステップS5では、先行車位置決定処理を行って、ステップS6に移る。先行車位置決定処理では、レーダ8の信号をもとに、前述したようにして、先行車との車間距離D(つまり、自車から先行車までの距離)を検出し、先行車との車間距離Dを決定する。また、先行車位置決定処理では、レーダ8の信号をもとに、前述したようにして、先行車との相対速度Vrを検出する。そして、レーダ8の信号をもとに検出した先行車との相対速度Vrと車内LANから得られる自車の速度Voとから、先行車の速度Vpを算出し、先行車の速度Vpを決定する。よって、車両制御ECU1が請求項の先行車速度決定手段に相当する。
【0046】
ステップS6では、他車位置決定処理を行って、ステップS7に移る。他車位置決定処理では、取得していた車両情報をメモリから読み出すことで、車両情報に付与された機器IDによって特定される他車の速度及び当該他車から後続車までの距離を決定する。
【0047】
なお、本実施形態では、先行車位置決定処理を行った後に他車位置決定処理を行う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、他車位置決定処理を行った後に先行車位置決定処理を行う構成としてもよいし、先行車位置決定処理と他車位置決定処理とを並行して行う構成としてもよい。
【0048】
ステップS7では、同一判別処理を行って、ステップS8に移る。同一判別処理では、レーダ8の信号をもとに検出した先行車と、受信した車両情報の送信元の他車とが、車間距離及び速度に関して近似しているか否かに応じて、同一の車両であるか否かを判別する。具体的には、先行車位置決定処理で決定した自車と先行車との車間距離D及び先行車の速度Vpと、他車位置決定処理で決定した他車から後続車までの距離及び他車の速度とが、一定の範囲内で一致しているか否かに応じて、先行車と他車とが同一の車両であるか否かを判別する。詳しくは、距離及び速度のいずれについても差が所定値以下の場合に、先行車と他車とが同一の車両であると判別すればよい。ここで言うところの所定値とは任意に設定可能な値である。例えば同一判別処理は、メモリに格納されている車両情報の送信元の他車全てについて行う構成とすればよい。
【0049】
ステップS8では、同一判別処理で先行車と同一と判別される他車があった場合(ステップS8でYES)には、ステップS9に移る。また、同一判別処理で先行車と同一と判別される他車が1つもなかった場合(ステップS8でNO)には、ステップS1に戻ってフローを繰り返す。
【0050】
ステップS9では、追従可能先行車捕捉通知処理を行って、ステップS10に移る。追従可能先行車捕捉通知処理では、レーダ8の信号をもとに検出している(つまり、レーダ8で捕捉している)先行車が車車間通信可能な先行車であることをユーザに認識させるための情報(以下、追従可能先行車捕捉情報)の表示を表示装置10で行わせる。
【0051】
ここで、図4及び図5を用いて、追従可能先行車捕捉情報の表示についての説明を行う。図4は、車車間通信可能な先行車を後続車がレーダ8で捕捉している状態を示す模式図である。なお、ここでは図4中のAが自車、Bが先行車、Cが自車のレーダ8の検出範囲を示しているものとして説明を行う。また、図5は、追従可能先行車捕捉情報の表示の一例を示す模式図である。
【0052】
図4に示すように、車車間通信可能な先行車をレーダ8で捕捉している状態にある場合に、本実施形態では、例えば図5に示すような表示を表示装置10で行わせる。具体的には、図5に示すように、自車と先行車とを示す画像表示(自車については図中のD、先行車については図中のE)を行うとともに、先行車の表示を強調表示する。また、「自動追従セット可能」といったテキスト表示(図中のF)などの先行車を追従先に選択可能であることを示す表示も行わせる。そして、これらの表示により、車車間通信可能な先行車をレーダ8で捕捉している状態にあることをユーザに認識させる。
【0053】
追従可能先行車捕捉情報の表示は、例えば継続的に行わせる構成とする。なお、追従可能先行車捕捉情報の表示は、断続的に行わせる構成としてもよい。追従可能先行車捕捉情報の表示は、車車間通信可能な先行車をレーダ8で捕捉していない状態となった場合に中止したり、後述の追従走行中情報の表示に切り替わる場合に中止したりする構成とすればよい。
【0054】
図3に戻って、ステップS10では、選択判定処理を行って、ステップS11に移る。選択判定処理では、先行車を追従先として選択したか否かを判定する。本実施形態では、例えば車車間通信可能な先行車をレーダ8で捕捉している状態において、クルーズコントロールスイッチの制御開始スイッチがユーザによってオンされた場合に、先行車を追従先として選択するものとする。従って、制御開始スイッチがユーザにオンされた場合に、先行車を追従先として選択したと判定する。また、制御開始スイッチがユーザによってオンされていない場合には、先行車を追従先として選択していないと判定する。
【0055】
なお、車車間通信可能な先行車をレーダ8で捕捉していない場合には、追従可能先行車捕捉情報の表示を行わせなかったり、制御開始スイッチがユーザにオンされた場合にも先行車を追従先として選択しなかったりする構成とすることが好ましい。これによれば、車車間通信可能でない先行車を追従先とすることを避けることができる。
【0056】
ステップS11では、選択判定処理で先行車を追従先として選択したと判定した場合(ステップS11でYES)には、ステップS12に移る。また、選択判定処理で先行車を追従先として選択していないと判定した場合(ステップS11でNO)には、ステップS10に戻ってフローを繰り返す。なお、追従可能先行車捕捉情報を表示してから時間が経過した後に、割り込み等によって先行車が入れ替わっている場合も考えられるので、追従可能先行車捕捉情報を表示してから一定時間が経過した場合であって、且つ、選択判定処理で先行車を追従先として選択していないと判定した場合には、ステップS1に戻ってフローを繰り返す構成としてもよい。ここで言うところの一定時間とは任意に設定可能な時間である。
【0057】
ステップS12では、先行車決定処理を行って、ステップS13に移る。先行車決定処理では、選択した先行車を追従先と決定して追従走行制御を開始する。選択した先行車を追従先と決定した場合には、例えば図6に示すような追従走行中情報の表示を表示装置10で行わせる。図6は、追従走行中情報の表示の一例を示す模式図である。具体的には、図6に示すように、自車と先行車とを示す画像表示(自車については図中のD、先行車については図中のE)を行うとともに、先行車の表示を強調表示する。また、「自動追従中」といったテキスト表示(図中のG)や「セット」といったテキストが含まれた表示を強調表示(図中のH)するなどの先行車に対して追従走行制御中であることを示す表示も行わせる。そして、これらの表示により、先行車に対して追従走行制御中にあることをユーザに認識させる。
【0058】
図3に戻って、ステップS13では、追従先選択情報送信処理を行って、フローを終了する。追従先選択情報送信処理では、自車の先行車を追従走行の追従先と選択していることを示す追従先選択情報を、無線通信装置7を介して送信させる。例えば、追従先選択情報は、一定の送信周期で送信する車両情報とともに送信する構成とすればよい。また、追従先選択情報には、追従先の先行車を特定可能なように、当該先行車の車両情報に付与されていた機器IDを付与する構成とすればよい。これにより、無線通信装置7を介して追従先選択情報を取得した他車の車両制御ECU1において、自車が追従先に選択されているか、自車以外の他車が追従先に選択されているかを判別することが可能になる。
【0059】
なお、追従走行制御中は、例えば図6に示すような追従走行中情報の表示を表示装置10で行わせたまま、ステップS1に戻ってフローを繰り返し、車車間通信可能な先行車をレーダ8で捕捉していない状態になった場合に、図6に示すような表示を中止する構成としてもよい。
【0060】
また、本実施形態では、先行車決定処理の後に追従先選択情報送信処理を行う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、追従先選択情報送信処理の後に先行車決定処理を行う構成としてもよいし、先行車決定処理と追従先選択情報送信処理とを並行して行う構成としてもよい。
【0061】
ここで、本発明における作用効果について説明を行う。自車に対する位置関係が近似している場合には、同一判別処理で判別される上記先行車と上記他車とが同一である可能性が高い。本実施形態では、自車から先行車までの距離と、他車の直近の後続車までの距離との関係にうち、自車から先行車までの距離と、先行車の直近の後続車である自車までの距離とが同一である場合が該当する。また、当該先行車と当該他車との速度が近似している場合には、同一判別処理で判別される上記先行車と上記他車とが同一である可能性がさらに高い。よって、同一判別処理で先行車と他車とが同一であると判別された場合には、当該前方車が車車間通信可能な車両である可能性が高い。
【0062】
また、本実施形態の構成によれば、同一判別処理で同一と判別した場合に、レーダ8で捕捉している先行車が車車間通信可能な先行車であることをユーザに認識させるための情報の表示を行わせるので、車車間通信可能な先行車である可能性が高い車両をレーダ8で捕捉中であることをユーザが知ることができる。よって、上記表示を頼りに、車車間通信可能な先行車である可能性が高い車両を追従先の先行車として容易に選択することができる。
【0063】
また、本実施形態では、同一判別処理において、先行車位置決定処理で決定した自車と先行車との車間距離D及び先行車の速度Vpと、他車位置決定処理で決定した他車から後続車までの距離及び他車の速度とが近似しているか否かに応じて、先行車と他車とが同一か否かを判別する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、先行車位置決定処理で決定した自車と先行車との車間距離Dと、他車位置決定処理で決定した他車から後続車までの距離とが近似しているか否かに応じて、先行車と他車とが同一か否かを判別する構成としてもよい。
【0064】
他にも、先行車位置決定処理で決定した自車と先行車との車間距離Dと、他車から取得した車両情報から決定した自車から他車までの距離とが近似しているか否かに応じて、先行車と他車とが同一か否かを判別する構成としてもよい。この場合、自車から他車までの距離は、車両制御ECU1において以下のようにして求める構成とすればよい。まず、送信時には送信時のGPS時刻を付与して車両情報を送信するとともに、受信時には車両情報の受信時のGPS時刻を取得する構成とする。そして、車両情報に付与された送信時のGPS時刻と取得した受信時のGPS時刻とから算出される車両情報の伝播時間をもとにして、自車から他車までの距離を算出する。
【0065】
また、自車から他車までの距離は、車両制御ECU1において以下のようにして求める構成としてもよい。まず、自車には図示しない位置検出器が搭載されており、自車の現在位置を逐次取得できるとともに、自車の現在位置を車両情報に含ませて送信する構成とする。つまり、他車から受信する車両情報には他車の現在位置が含まれていることになる。そして、自車の位置検出器から取得した自車の現在位置と、無線通信装置7を介して車車間通信によって取得した他車の現在位置とをもとに、同時点における自車と当該他車との距離を算出する。なお、同時点における自車両と直近の先行車両との現在位置の対応付けは、現在位置を検出した時点のGPS時刻を用いて行うものとする。
【0066】
自車から先行車までの距離と、自車から他車までの距離とが近似している場合には、当該先行車と当該他車とが同一である可能性がより高い。よって、以上の構成によれば、車車間通信可能な先行車である可能性がより高い車両をレーダ8で捕捉中であることをユーザが知ることができる。
【0067】
なお、車両情報に他車の速度を含んでいた場合には、先行車位置決定処理で決定した自車と先行車との車間距離D及び先行車の速度と、他車から取得した車両情報から決定した自車から他車までの距離及び他車の速度とが近似しているか否かに応じて、先行車と他車とが同一か否かを判別する構成としてもよい。
【0068】
位置検出器としては、地磁気を検出する地磁気センサ、自車両の鉛直方向周りの角速度を検出するジャイロスコープ、自車両の移動距離を検出する距離センサ、および衛星からの電波に基づいて車両の現在位置を検出するGPS(global positioning system)のためのGPS受信機といった各センサから得られる情報をもとに、車両の現在位置の検出を逐次行うものを用いる構成とすればよい。なお、上述の各センサについては、各センサの精度によっては上述した内の一部で構成してもよいし、上述した以外のセンサを用いる構成としてもよい。
【0069】
また、自車に対する先行車の相対位置と、自車に対する他車の相対位置とが近似しているか否かに応じて、先行車と他車とが同一か否かを判別する構成としてもよい。この場合、自車に対する先行車の相対位置は、レーダ8として複数の受信アンテナにおける受信波間の位相差に基づいてターゲットの方位を検出するものを用いることで、決定する構成とすればよい。
【0070】
また、自車に対する他車の相対位置は、以下のようにして求める構成とすればよい。まず、自車に前述の位置検出器が搭載されており、自車の現在位置を逐次取得できるとともに、自車の現在位置を車両情報に含ませて送信する構成とする。つまり、他車から受信する車両情報には他車の現在位置が含まれていることになる。そして、自車の位置検出器から取得した自車の現在位置と、無線通信装置7を介して車車間通信によって取得した他車の現在位置とをもとに、同時点における自車に対する当該他車の相対位置を算出する。なお、同時点における自車両と直近の先行車両との現在位置の対応付けは、現在位置を検出した時点のGPS時刻を用いて行うものとする。
【0071】
自車に対する先行車の相対位置と自車に対する他車の相対位置とが近似している場合には、当該先行車と当該他車とが同一である可能性が非常に高い。よって、以上の構成によれば、車車間通信可能な先行車である可能性が非常に高い車両をレーダ8で捕捉中であることをユーザが知ることができる。
【0072】
また、自車から先行車までの距離及び自車の前方に存在するか否かの情報と、自車から他車までの距離及び自車の前方に存在するか否かの情報とをもとに、先行車と他車とが同一か否かを判別する構成としてもよい。この場合、自車から先行車までの距離としては、先行車位置決定処理で決定した自車と先行車との車間距離Dを用いる構成とすればよい。また、自車の前方に存在するか否かの情報については、先行車であるので、自車の前方に存在するという情報になる。一方、自車から他車までの距離については、前述したように、自車と他車との現在位置から算出する構成とすればよい。また、他車が自車の前方に存在するか否かの情報については、自車と他車との現在位置から他車が自車の前方に存在するか否かを判別することで得る構成とすればよい。詳しくは、先行車と他車との両方が自車の前方に存在し、且つ、自車から当該先行車までの距離と自車から当該車までの距離とが近似している場合に、先行車と他車とが同一と判定する構成とすればよい。
【0073】
つまり、以上の構成では、先行車位置決定処理では、レーダ8の信号(障害物センサの検知結果)をもとに、自車に対する先行車の位置関係として、自車から当該先行車までの距離及び当該先行車が自車の前方に位置することを決定する。また、自車に対する当該他車の位置関係を決定するための決定用情報として無線通信装置7を介して他車の現在位置を逐次取得する。続いて、取得した他車の現在位置と位置検出器から取得した自車の現在位置とをもとに、自車から他車までの距離及び当該他車が自車の前方に位置するか否かを決定する。そして、同一判別処理では、決定した自車に対する先行車までの距離及び当該先行車が自車の前方に位置することと、決定した他車までの距離及び当該他車が自車の前方に位置するか否かの結果とを比較することによって、当該先行車と当該他車とが同一であるか否かを判別する。
【0074】
なお、車両情報に後続車までの距離を含ませない構成とする場合には、自車後方の所定範囲にレーザ光を照射するレーダ8を備えない構成としてもよい。
【0075】
また、車両制御ECU1は、補正接近離間状態評価指標KdB_cを用いて追従走行制御を行う。ここで、補正接近離間状態評価指標KdB_cについての説明を行う。補正接近離間状態評価指標KdB_cは、先行車の速度を考慮して接近離間状態評価指標KdBを補正したものである。接近離間状態評価指標KdBは、前方物体のドライバの目に映る像を想定し、当該想定した像の面積の単位時間当たりの変化度合いを表す指標である。この接近離間状態評価指標KdBおよび補正接近離間状態評価指標KdB_cは、例えば、それぞれ、下記式1、2で表される。なお、式1、2において、Dは自車と先行車との車間距離、Vrは自車に対する先行車の相対速度、aは乗数、Vpは先行車の速度である。
【数1】
【数2】
【0076】
上記式2に示すように、補正接近離間状態評価指標KdB_cは、先行車に接近する相対速度Vrの絶対値が高くなるほど大きくなる。また、先行車の速度Vpが高いほど小さくなる。また、車間距離が短くなるほど大きくなる。また、車間距離Dは三乗項であることから、車間距離Dが短くなる変化に対する補正接近離間状態評価指標KdB_cの増加勾配は、車間距離Dが短くなるほど急峻になる。補正接近離間状態評価指標KdB_cを用いて速度制御を行うと、ドライバにとって違和感のない速度制御を行うことができることが学会等で既に認められている。従って、補正接近離間状態評価指標KdB_cを用いて追従走行制御を行うことで、ドライバにとって違和感のない滑らかな加減速制御を行うことが可能になる。
【0077】
車両制御ECU1の例えばROM等のメモリには、摩擦ブレーキ開始閾値式、エンジンブレーキ開始閾値式、加速制御終了閾値式の3つの閾値式が記憶されている。これらの閾値式は、いずれも、ブレーキ判別式にオフセット値を加えた式である。式3にブレーキ判別式を示す。
【数3】
【0078】
このブレーキ判別式は、運転者のブレーキ操作開始時点における補正接近離間状態評価指標KdB_cと車間距離Dとの関係を示す式であり、式3において、a、b、cはいずれも定数であり、実験に基づいて定められる。また、aは式2におけるaを意味する。a、b、cは、たとえば、それぞれ0.2、−22.66、74.71である。
【0079】
ブレーキ判別式が式3に示す式であることから、摩擦ブレーキ開始閾値式、エンジンブレーキ開始閾値式、加速制御終了閾値式は、いずれも式4に示す式となる。式4におけるΔcがオフセット値であり、このオフセット値として、摩擦ブレーキ開始閾値式では第1ブレーキ用オフセット値Δc1を用い、エンジンブレーキ開始閾値式では第2ブレーキ用オフセット値Δc2を用い、加速制御終了閾値式では加速用オフセット値Δc3を用いる。これらのオフセット値Δc1、Δc2、Δc3は、たとえば、−3dB、−4dB、−6dBである。
【数4】
【0080】
オフセット値の大小関係により、同一の車間距離Dにおける補正接近離間状態評価指標KdB_cは、ブレーキ判別式、摩擦ブレーキ開始閾値式、エンジンブレーキ開始閾値式、加速制御終了閾値式の順に低下する。
【0081】
以下、追従走行制御の内容を詳しく説明する。車両制御ECU1は、追従走行制御中は、KdB_cの現在値を逐次算出する。KdB_cは、式2に示した評価指標算出式から算出する。従って、KdB_cの現在値の算出には、相対速度Vr、先行車の速度Vp、車間距離Dを決定する必要がある。相対速度Vr、車間距離Dは、例えばレーダ8からの信号に基づいて決定する。先行車の速度Vpは、上記相対速度VrとVSC_ECU2からの自車の速度Voとから算出する。そして、これらを式2に代入することで、KdB_cの現在値を逐次算出する。
【0082】
なお、先行車の速度Vpは、無線通信装置7を介して先行車から逐次取得する構成としてもよい。この場合、相対速度Vrは、VSC_ECU2から逐次取得する自車の速度Voと無線通信装置7を介して逐次取得する先行車の速度Vpとから逐次算出する構成としてもよい。また、車間距離Dは、逐次算出される相対速度Vrをもとにして目標車間距離Dtからの距離増減分を算出することで決定する構成としてもよい。なお、目標車間距離Dtの代わりに、本願出願人が先に出願した特願2011−99199における安定車間距離を用いる構成としてもよい。
【0083】
車両制御ECU1は、追従走行制御中は、3つの閾値、すなわち、摩擦ブレーキ開始閾値、エンジンブレーキ開始閾値、加速制御終了閾値を逐次算出する。これらはメモリに記憶されている3つの閾値式、すなわち、摩擦ブレーキ開始閾値式、エンジンブレーキ開始閾値式、加速制御終了閾値式と、車間距離Dの現在値とから算出する。
【0084】
車両制御ECU1は、追従走行制御中は、目標車間距離Dtと、現在の車間距離Dとを比較し、現在の車間距離Dが目標車間距離Dtよりも短い場合には、KdB_cの現在値がどのような値であるかに関係なく、VSC_ECU2に摩擦ブレーキを作動させる指示を行う。
【0085】
一方、現在の車間距離Dが目標車間距離Dtよりも長い場合には、KdB_cの現在値と、摩擦ブレーキ開始閾値、エンジンブレーキ開始閾値、加速制御終了閾値とを比較する。比較の結果としては、次の(1)〜(4)の結果がある。すなわち、(1)KdB_cの現在値が摩擦ブレーキ開始閾値よりも高い場合、(2)KdB_cの現在値が摩擦ブレーキ開始閾値とエンジンブレーキ開始閾値との間の場合、(3)KdB_cの現在値がブレーキ開始閾値と加速制御終了閾値との間の場合、(4)補正接近離間状態評価指標の現在値が加速制御終了閾値よりも低い場合がある。(1)の場合には摩擦ブレーキを作動させ、(2)の場合にはエンジンブレーキを作動させ、(3)の場合には自車両を等速で走行させ、(4)の場合には加速制御を行う。なお、自車両を減速あるいは加速させる場合の要求加減速度GDpは、たとえば、下記式5により算出する。なお、プラスの値が要求加速度、マイナスの値が要求減速度となる。
【数5】
【0086】
この式5におけるVr_tは、ブレーキ判別式から求まる、現在の車間距離DにおけるKdB_cを、式2に代入することで求まる目標相対速度である。また、Tは、自車の現在の相対速度Vrと、目標相対速度Vr_tとの差分を、要求加減速度GDpに変換するための除数であり、適宜、設定されるものである。
【0087】
ここでは、相対速度Vr1、追従先行車の速度Vp、車間距離Dを車車間通信で得られる車両情報をもとに決定する構成としても、自車のレーダ8の信号をもとに決定する構成としてもよいものとして記載したが、本実施形態では、これらを使い分けるものとする。詳しくは、レーダ8で先行車を検出できている間は自車のレーダ8の信号をもとに決定し、レーダ8で先行車を検出できなくなった場合(つまり、レーダロストした場合)には車車間通信で得られる車両情報をもとに決定する構成としてもよい。レーダロストは、例えば先行車がカーブに進入することで自車の前方から外れ、レーダ8の検出範囲に存在しなくなった場合に生じる。
【0088】
レーダロストしたか否かの判定については、例えば、レーダ8の信号をもとに先行車を一定時間(例えば数十秒)以上検出し続けていた状態から、先行車を検出していない状態に切り替わって所定時間(例えば数秒)の間は、レーダロストしたと判定し、その所定時間を超えた後はレーダロストしていないと判定する構成とすればよい。また、レーダ8の信号をもとに先行車を検出している状態と検出していない状態とが数秒ごと等の短時間に複数回繰り返される場合に、レーダロストしたと判定する構成としてもよい。
【0089】
他にも、例えば、レーダロストしたか否かの判定を以下のようにして行う構成としてもよい。まず、先行車の無線通信装置7から受信した当該先行車の現在位置と自車の現在位置とから、自車と当該先行車との距離を求めることで、自車と当該先行車との車間距離を検出する。そして、検出した車間距離がレーダ8の信号をもとに先行車を検出可能な距離以下にも関わらず、レーダ8の信号をもとに先行車を検出していない場合には、レーダロストしたと判定すればよい。
【0090】
また、車両制御ECU1は、追従走行制御中におけるレーダロストや車車間通信の途絶に応じた情報の表示を表示装置10に行わせる報知変更処理を行う。ここで、図7を用いて報知変更処理についての説明を行う。図7は、車両制御ECU1での報知変更処理のフローの一例を示すフローチャートである。図7のフローは、追従走行中情報の表示が行われたときに開始されるものとする。また、図7のフローは、例えばクルーズコントロールスイッチの制御終了スイッチをオンにしたときに終了されるものとすればよい。
【0091】
まず、ステップS31では、レーダロスト判定処理を行って、ステップS32に移る。レーダロスト判定処理では、前述したのと同様にして、レーダ8で先行車を検出できなくなったか否か(つまり、レーダロストしたか否か)を判定する。ステップS32では、レーダロスト判定処理でレーダロストしたと判定した場合(ステップS32でYES)には、ステップS33に移る。また、レーダロスト判定処理でレーダロストしていないと判定した場合(ステップS32でNO)には、ステップS31に戻ってフローを繰り返す。
【0092】
ステップS33では、レーダロスト通知処理を行って、ステップS34に移る。レーダロスト通知処理では、レーダ8で先行車を捕捉できなくなったが、先行車から車車間通信によって送信される情報を取得できている状態にあることをユーザに認識させるための情報(以下、レーダロスト通知情報)の表示を表示装置10で行わせる。
【0093】
ここで、図8及び図9を用いて、レーダロスト通知情報の表示についての説明を行う。図8は、後続車がレーダ8で先行車を捕捉できなくなったが、先行車との車車間通信はできている状態を示す模式図である。なお、ここでは図8中のAが自車、Bが先行車、Cが自車のレーダ8の検出範囲を示しているものとして説明を行う。また、図9は、レーダロスト通知情報の表示の一例を示す模式図である。
【0094】
図8に示すように、レーダ8で先行車を捕捉できなくなったが、先行車から車車間通信によって送信される情報を取得できている状態にある場合に、本実施形態では、例えば図9に示すような表示を表示装置10で行わせる。具体的には、図9に示すように、自車と先行車とを示す画像表示(自車については図中のD、先行車については図中のI)を行うとともに、追従走行中情報の表示の場合とは先行車の色等を変更して強調表示する。また、「自動追従中」といったテキスト表示(図中のG)や「セット」といったテキストが含まれた表示を強調表示(図中のH)するなどの先行車に対して追従走行制御中であることを示す表示も行わせる。そして、これらの表示により、レーダ8で先行車を捕捉できなくなったが、先行車から車車間通信によって送信される情報を取得できている状態にあることをユーザに認識させる。
【0095】
図7に戻って、ステップS34では、第1車車間通信判定処理を行って、ステップS35に移る。第1車車間通信判定処理では、自車と先行車との車車間通信ができなくなったか否かを判定する。一例としては、先行車から送信される車両情報の無線通信装置7を介した取得を、所定時間以上行わなかった場合に、自車と先行車との車車間通信ができなくなったと判定する構成とすればよい。ここで言うところの所定時間とは任意に設定可能な値であって、例えば数秒とすればよい。また、他の例として、先行車から送信される車両情報の無線通信装置7を介した取得を、所定の距離の走行中に行わなかった場合に、自車と先行車との車車間通信ができなくなったと判定する構成としてもよい。先行車から送信される車両情報の判別は、車両情報に付与されている機器IDをもとに行う構成とすればよい。
【0096】
ステップS35では、自車と先行車との車車間通信ができなくなった(つまり、車車間通信不能)と判定した場合(ステップS35でYES)には、ステップS36に移る。また、車車間通信不能でないと判定した場合(ステップS35でNO)には、ステップS31に戻ってフローを繰り返す。なお、車車間通信不能でないと判定し、ステップS31に戻ってフローを繰り返す場合には、レーダレーダロスト通知情報の表示を継続させ、レーダロスト判定処理でレーダロストしていないと判定した後に追従走行中情報の表示に復帰させる構成とすればよい。
【0097】
ステップS36では、追従走行不可通知処理を行い、ステップS34に戻ってフローを繰り返す。追従走行不可通知処理では、レーダ8で先行車を捕捉できなくなったとともに、先行車から車車間通信によって送信される情報を取得できなくなった状態、つまり、先行車に対する追従走行ができなくなったことをユーザに認識させるための情報(以下、追従走行不可通知情報)の表示を表示装置10で行わせる。例えば追従走行不可通知情報の表示は、レーダロスト通知情報の表示から切替えて行わせる構成とすればよい。なお、ステップS36において、追従走行不可通知処理を行い、フローを終了する構成としてもよい。
【0098】
ステップS35で車車間通信不能と判定した場合には、例えば先行車に対する追従走行制御を直ちに中止する構成としてもよい。他にも、追従走行制御の中止を一定時間保留し、第1車車間通信判定処理で車車間通信不能でないと判定した場合に追従走行制御を再開する構成としてもよい。追従走行制御の中止は、他にもクルーズコントロールスイッチのうちの制御終了スイッチがオンになったときに行うものとする。
【0099】
ここで、図10及び図11を用いて、追従走行不可通知情報の表示についての説明を行う。図10は、後続車がレーダ8で先行車を捕捉できなくなったとともに、先行車との車車間通信もできなくなっている状態を示す模式図である。先行車との車車間通信ができなくなる状態は、例えば図10に示すように、山などの障害物によって車車間通信が妨害されている場合に生じる。なお、ここでは図10中のAが自車、Bが先行車、Cが自車のレーダ8の検出範囲を示しているものとして説明を行う。また、図11は、追従走行不可通知情報の表示の一例を示す模式図である。
【0100】
図10に示すように、レーダ8で先行車を捕捉できなくなったとともに、先行車から車車間通信によって送信される情報も取得できなくなった状態にある場合に、本実施形態では、例えば図11に示すような表示を表示装置10で行わせる。具体的には、図11に示すように、自車を示す画像表示(図中のD)は行うが、先行車を示す画像表示は行わないようにする。また、「セット」といったテキストが含まれた表示の強調表示を中止する(図中のJ)などの先行車に対して追従走行ができなくなったことを示す表示も行わせる。そして、これらの表示により、先行車に対する追従走行ができなくなった状態にあることをユーザに認識させる。
【0101】
以上の構成によれば、追従走行制御中には、追従走行制御中であることを示す情報の表示を行わせるので、自車が先行車に対して追従走行制御中であるか否かをユーザが認識することができる。また、レーダ8で先行車を捕捉できなくなったが、先行車から車車間通信によって送信される情報を取得できている状態にある場合に、この状態にあることをユーザが認識することができる。従って、車車間通信によって送信される情報を用いて追従走行制御中であることをユーザが認識することができる。さらに、レーダ8で先行車を捕捉できなくなったとともに、先行車から車車間通信によって送信される情報を取得できなくなった状態にある場合に、先行車に対する追従走行ができなくなったことをユーザが認識することができる。
【0102】
また、車両制御ECU1は、自車が後続車の追従走行の追従先に選択された場合に、自車が追従走行の追従先に選択されていることをユーザに認識させる被捕捉通知処理や後続車の追従状態に応じた情報の報知を行う処理といった被捕捉関連処理を行う。ここで、図12を用いて被捕捉関連処理についての説明を行う。図12は、車両制御ECU1での被捕捉関連処理のフローの一例を示すフローチャートである。図12のフローは、例えば自車のイグニッション電源がオンされたときに開始され、イグニッション電源がオフになったときに終了するものとする。
【0103】
まず、ステップS51では、他車の無線通信装置7から車車間通信によって送信される情報を取得したか否かを判定する。例えば、自車の無線通信装置7で受信した情報が車両制御ECU1に入力されたことをもとに、他車の情報を取得したと判定する構成とすればよい。そして、他車の情報を取得したと判定した場合(ステップS51でYES)には、ステップS52に移る。また、他車の情報を取得していないと判定した場合(ステップS51でNO)には、ステップS51のフローを繰り返す。
【0104】
ステップS52では、追従先選択情報取得判定処理を行って、ステップS53に移る。追従先選択情報取得判定処理では、自車を追従先と選択していることを示す追従先選択情報を取得したか否かを判定する。詳しくは、自車の無線通信装置7の機器IDが付与された追従先選択情報を取得した場合に、自車を追従先と選択していることを示す追従先選択情報を取得したと判定する。よって、車両制御ECU1が請求項の追従先選択情報取得手段に相当する。
【0105】
ステップS53では、自車を追従先と選択していることを示す追従先選択情報を取得したと判定した場合(ステップS53でYES)には、ステップS54に移る。また、自車を追従先と選択していることを示す追従先選択情報を取得していないと判定した場合(ステップS53でNO)には、ステップS51に戻ってフローを繰り返す。
【0106】
ステップS54では、被捕捉通知処理を行って、ステップS55に移る。被捕捉通知処理では、自車が後続車の追従走行の追従先に選択されていることをユーザに認識させるための情報(以下、被捕捉通知情報)の表示を表示装置10で行わせる。よって、車両制御ECU1が請求項の報知手段に相当する。ここで、図13を用いて、被捕捉通知情報の表示についての説明を行う。なお、図13は、被捕捉通知情報の表示の一例を示す模式図である。
【0107】
被捕捉通知処理において、例えば図13に示すような表示を表示装置10で行わせる。具体的には、図13に示すように、自車と後続車とを示す画像表示(自車については図中のK、後続車については図中のL)を行うとともに、後続車の表示を強調表示する。また、「被追従車ロックオン」といったテキスト表示(図中のM)などの自車が後続車の追従走行の追従先に選択されていることを示す表示も行わせる。そして、これらの表示により、自車が後続車の追従走行の追従先に選択されていることをユーザに認識させる。
【0108】
また、被捕捉通知処理を行うまでは、例えば図14に示すような表示を表示装置10で行わせる構成としてもよい。詳しくは、自車と後続車とを示す画像表示(自車については図中のK、後続車については図中のL)を行うが、後続車の表示を強調表示しない。また、「被追従車ロックオン」といったテキスト表示も行わない。なお、図14は、被捕捉通知情報の表示前の表示の一例を示す模式図である。また、図14に示すような表示は、デフォルトで表示する構成としてもよいし、自車後方の所定範囲にレーザ光を照射するレーダ8の信号をもとに後続車を検出している場合にのみ表示させる構成としてもよい。
【0109】
図12に戻って、ステップS55では、第2車車間通信判定処理を行って、ステップS56に移る。第2車車間通信判定処理では、自車と後続車との車車間通信ができなくなったか否かを判定する。よって、車両制御ECU1が請求項の取得判断手段に相当する。一例としては、後続車から送信される車両情報の無線通信装置7を介した取得を、所定時間以上行わなかった場合に、自車と後続車との車車間通信ができなくなったと判定する構成とすればよい。ここで言うところの所定時間とは任意に設定可能な値であって、例えば数秒とすればよい。また、他の例として、後続車から送信される車両情報の無線通信装置7を介した取得を、所定の距離の走行中に行わなかった場合に、自車と後続車との車車間通信ができなくなったと判定する構成としてもよい。後続車から送信される車両情報の判別は、車両情報に付与されている機器IDをもとに行う構成とすればよい。
【0110】
ステップS56では、自車と後続車との車車間通信ができなくなった(つまり、車車間通信不能)と判定した場合(ステップS56でYES)には、ステップS57に移る。また、車車間通信不能でないと判定した場合(ステップS56でNO)には、ステップS55に戻ってフローを繰り返す。なお、車車間通信不能でないと判定し、ステップS31に戻ってフローを繰り返す場合には、被捕捉通知情報の表示を継続させる構成とすればよい。
【0111】
ステップS57では、後続車追従不可通知処理を行い、ステップS51に戻ってフローを繰り返す。後続車追従不可通知処理では、後続車が自車から車車間通信によって送信される情報を取得できなくなった状態、つまり、自車に対する追従走行ができなくなったことをユーザに認識させるための情報(以下、後続車追従不可通知情報)の表示を表示装置10で行わせる。後続車追従不可通知情報の表示は、被捕捉通知情報の表示から切替えて行わせる構成とすればよい。
【0112】
ここで、図10及び図15を用いて、後続車追従不可通知情報の表示についての説明を行う。ここでは、図10中のAが後続車、Bが自車、Cが後続車のレーダ8の検出範囲を示しているものとして説明を行う。なお、図15は、後続車追従不可通知情報の表示の一例を示す模式図である。
【0113】
図10に示すように、後続車がレーダ8で自車を捕捉できなくなったとともに、自車から車車間通信によって送信される情報も取得できなくなった状態にある場合に、本実施形態では、例えば図15に示すような表示を表示装置10で行わせる。具体的には、図15に示すように、自車を示す画像表示(図中のK)は行うが、後続車を示す画像表示は行わないようにすることで、先行車に対する追従走行ができなくなった状態にあることをユーザに認識させる。
【0114】
なお、図8にしめすように、後続車がレーダ8で自車を捕捉できなくなったが、自車から車車間通信によって送信される情報を取得できている状態にある場合には、自車においては、被捕捉通知情報の表示を継続させる構成とすればよい。
【0115】
本実施形態では、自車が先行車を追従先に選択する場合の表示(以下、選択時表示)と、自車が後続車に追従先に選択された場合の表示(以下、被選択時表示)とについて、それぞれ説明を行ったが、これらは別々の表示装置10に表示させる構成としてもよいし、同一の表示装置10に表示させる構成としてもよい。なお、選択時表示とは、追従可能先行車捕捉情報、追従走行中情報、レーダロスト通知情報、追従走行不可通知情報等の表示であり、被選択時表示とは、被捕捉通知情報、後続車追従不可通知情報等の表示である。
【0116】
また、選択時表示と被選択時表示とを同一の表示装置10に表示させる場合には、分割した画面のそれぞれに表示させる構成としてもよいし、選択時表示と被選択時表示とを組み合わせて同一の画面に表示させる構成としてもよい。一例としては、先行車、自車、後続車を示す表示を一列に並べ、先行車に対して追従走行制御中には、先行車の表示を強調表示し、後続車の追従先に選択されている場合には、後続車の表示を強調表示するなどすればよい。他にも、先行車、自車を示す表示を並べた列と、自車、後続車を示す表示を並べた列との二列を表示させる構成としてもよい。
【0117】
さらに、本実施形態では、追従可能先行車捕捉情報、追従走行中情報、レーダロスト通知情報、追従走行不可通知情報、被捕捉通知情報、後続車追従不可通知情報等の各種の情報を表示装置10で表示させる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、図示しない音声出力装置から音声出力することで情報をユーザに報知する構成としてもよい。
【0118】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0119】
1 車両制御ECU(車両用報知装置、追従先選択情報取得手段、報知手段、取得判断手段)、2 VSC_ECU、3 舵角センサ、4 Gセンサ、5 ヨーレートセンサ、6 ENG_ECU、7 無線通信装置、8 レーダ、9 操作SW、10 表示装置、100 追従走行制御システム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、
後続車に搭載された無線通信装置から車車間通信によって送信される、自車を追従走行の追従先と選択していることを示す追従先選択情報を取得する追従先選択情報取得手段と、
前記追従先選択情報取得手段で追従先選択情報を取得した場合に、自車が前記後続車の追従走行の追従先に選択されていることをユーザに認識させるための情報の報知を自車の車室内に向けて行わせる報知手段とを備える車両用報知装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記追従先選択情報取得手段で追従先選択情報を取得できなくなったか否かを判断する取得判断手段を備え、
前記報知手段は、
前記取得判断手段で前記追従先選択情報を取得できていると判断した場合には、自車が前記後続車の追従走行の追従先に選択されていることをユーザに認識させるための情報の報知を継続する一方、
前記取得判断手段で前記追従先選択情報を取得できなくなったと判断した場合には、前記後続車から車車間通信によって前記追従先選択情報を取得できなくなっていることをユーザに認識させるための情報の報知を自車の車室内に向けて行わせることを特徴とする車両用報知装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記取得判断手段は、前記追従先選択情報取得手段で追従先選択情報を所定時間以上取得しなかった場合に、前記追従先選択情報を取得できなくなったと判断することを特徴とする車両用報知装置。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記追従先選択情報取得手段は、前記無線通信装置を介して取得する他車の情報を用いて追従走行制御を行うことが可能な後続車に搭載された無線通信装置から車車間通信によって送信される前記追従先選択情報を取得するものであって、
前記報知手段は、前記取得判断手段で前記追従先選択情報を取得できなくなったと判断した場合には、前記後続車が自車を追従先とする追従走行を行うことができなくなっていることを示す情報の報知を行わせることを特徴とする車両用報知装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、
前記報知手段は、画像及びテキストのうちの少なくともいずれかを、自車の車室内で使用される表示装置に表示させることで前記報知を行わせることを特徴とする車両用報知装置。
【請求項6】
車両に搭載され、
車車間通信によって情報を送受信する無線通信装置を介して他車の情報を取得するとともに、追従先に選択した先行車に対して、当該先行車の情報を用いて追従走行制御を行うことが可能であって、
追従先に選択した先行車に対して、当該先行車を追従走行の追従先と選択したことを示す追従先選択情報を、前記無線通信装置から車車間通信によって送信する追従走行制御装置と、
前記先行車に搭載される請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用報知装置とを含むことを特徴とする追従走行制御システム。
【請求項1】
車両に搭載され、
後続車に搭載された無線通信装置から車車間通信によって送信される、自車を追従走行の追従先と選択していることを示す追従先選択情報を取得する追従先選択情報取得手段と、
前記追従先選択情報取得手段で追従先選択情報を取得した場合に、自車が前記後続車の追従走行の追従先に選択されていることをユーザに認識させるための情報の報知を自車の車室内に向けて行わせる報知手段とを備える車両用報知装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記追従先選択情報取得手段で追従先選択情報を取得できなくなったか否かを判断する取得判断手段を備え、
前記報知手段は、
前記取得判断手段で前記追従先選択情報を取得できていると判断した場合には、自車が前記後続車の追従走行の追従先に選択されていることをユーザに認識させるための情報の報知を継続する一方、
前記取得判断手段で前記追従先選択情報を取得できなくなったと判断した場合には、前記後続車から車車間通信によって前記追従先選択情報を取得できなくなっていることをユーザに認識させるための情報の報知を自車の車室内に向けて行わせることを特徴とする車両用報知装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記取得判断手段は、前記追従先選択情報取得手段で追従先選択情報を所定時間以上取得しなかった場合に、前記追従先選択情報を取得できなくなったと判断することを特徴とする車両用報知装置。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記追従先選択情報取得手段は、前記無線通信装置を介して取得する他車の情報を用いて追従走行制御を行うことが可能な後続車に搭載された無線通信装置から車車間通信によって送信される前記追従先選択情報を取得するものであって、
前記報知手段は、前記取得判断手段で前記追従先選択情報を取得できなくなったと判断した場合には、前記後続車が自車を追従先とする追従走行を行うことができなくなっていることを示す情報の報知を行わせることを特徴とする車両用報知装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、
前記報知手段は、画像及びテキストのうちの少なくともいずれかを、自車の車室内で使用される表示装置に表示させることで前記報知を行わせることを特徴とする車両用報知装置。
【請求項6】
車両に搭載され、
車車間通信によって情報を送受信する無線通信装置を介して他車の情報を取得するとともに、追従先に選択した先行車に対して、当該先行車の情報を用いて追従走行制御を行うことが可能であって、
追従先に選択した先行車に対して、当該先行車を追従走行の追従先と選択したことを示す追従先選択情報を、前記無線通信装置から車車間通信によって送信する追従走行制御装置と、
前記先行車に搭載される請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用報知装置とを含むことを特徴とする追従走行制御システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−69178(P2013−69178A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208298(P2011−208298)
【出願日】平成23年9月24日(2011.9.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月24日(2011.9.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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