説明

車両用外装ビーム

【課題】長期にわたりビーム本体と装着部品との固定状態を良好に保つことができる車両用外装ビームを提供する。
【解決手段】ビーム本体10と装着部品の樹脂製の固定部22とに形成した取付孔11,23に、締結部材30が貫通状態に設けられるとともに、締結部材30は、フランジ部32を有する周壁部31を座屈させて半径方向外方に膨出させた拡径部31aを形成することにより、ビーム本体10及び装着部品の固定部22をフランジ部32と拡径部31aとの間に挟持しており、固定部22の取付孔23の近傍に、締結部材30の拡径部31aの外周縁より半径方向内方位置に立設された弾性変形可能な立壁部26が、拡径部31aにより半径方向外方に倒され、拡径部31aと固定部22との間に挟まれて設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に配置されるバンパー等の車両用外装ビームに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なトラック等の車高の高い車両には、車高の低い乗用車等が衝突した際の潜り込みを防止するために、車両の下方にバンパーが設けられている。このバンパーは、スチール又はアルミニウム合金等によって一般的に角筒状に形成されており、その両端の開口端部を覆うエンドキャップや、ランプ及びライセンスプレート、ハーネス等の種々の部品が取り付けられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ビーム本体(バンパー本体)の両端の開口端部にエンドキャップ(カバー部材)を取り付けた外装ビームが開示されている。この外装ビームは、ビーム本体の開口端部近傍の外壁を覆う周壁と、開口端部の端面に対向する底壁とを備えた箱状に形成されたエンドキャップを、ビーム本体の開口端部を閉塞するようにして、周壁とビーム本体とに設けたリベット孔にリベットを挿入して取付けている。
【0004】
このリベットとしては、特許文献2に提案されるようなブラインドリベット等のかしめ型締結部材が使用されることが多い。
ブラインドリベットによって周辺部品を固定する場合には、ビーム本体及び装着部品に形成されたそれぞれのリベット孔にブラインドリベットのスリーブをフランジ部が当接するまで挿入し、その状態で、中空状のスリーブの先端をフランジ部側に強く引き込み、スリーブの一部を拡径変形させることにより、この拡径部とフランジ部とでビーム本体及び周辺部品を両側から挟持して固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−137363号公報
【特許文献2】特開2006−170311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、かしめ型締結部材を用いて固定した場合、ビーム本体と装着部品とは締結時から一定期間内は、フランジ部と拡径部との間で挟持されて良好な固定状態を保つことができる。
しかしながら、締結時から長時間経過すると、経時変化によって樹脂の硬化や収縮等により、次第に反発弾性効果が薄れ、リベットとエンドキャップとの間に隙間が生じる。また、車両走行時の振動等の影響から、さらに隙間が広がり、部品外れ等の問題を引き起こすおそれがある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、長期にわたりビーム本体と装着部品との固定状態を良好に保つことができる車両用外装ビームを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用外装ビームは、ビーム本体に装着部品をかしめ型締結部材によって固定してなる車両用外装ビームであって、前記ビーム本体と前記装着部品の樹脂製の固定部とに形成した取付孔に、前記締結部材が貫通状態に設けられるとともに、前記締結部材は、フランジ部を有する周壁部を座屈させて半径方向外方に膨出させた拡径部を形成することにより、前記ビーム本体及び前記装着部品の固定部を前記フランジ部と前記拡径部との間に挟持しており、前記固定部の取付孔の近傍に、前記締結部材の拡径部の外周縁より半径方向内方位置に立設された弾性変形可能な立壁部が、前記拡径部により半径方向外方に倒され、前記拡径部と前記固定部との間に挟まれて設けられていることを特徴とする。
【0009】
ビーム本体と装着部品の固定部とを固定する際には、締結部材の周壁部が膨出した拡径部が固定部の立壁部の内側面に当接して、立壁部が弾性変形し、倒された状態でかしめられる。この際、立壁部は締結部材の拡径部に当接して変形した状態で固定されるため、その拡径部に対し反発する力が生じている。この反発力により、ビーム本体と装着部品の固定部とを遊び(ガタ)のない状態で長期間固定することができる。
【0010】
また、本発明の車両用外装ビームにおいて、前記立壁部の根元部の内側面が、前記立壁部の立設方向に沿う縦断面形状において前記固定部の取付孔の開口端から連続して延びる凹円弧形状とされているとよい。
この場合、立壁部の根元部が角部を有しない凹円弧形状とされているので、応力集中を避けることができる。また、円弧を大きくして締結部材の拡径部に沿わせるようにすると、立壁部とほぼ隙間なく接触させて設けることができるので、さらに効果的である。
これにより、締結部材の拡径部と装着部品の立壁部とが、半径方向に沿ってほぼ均一化された面圧分布となり、局部的に応力が集中することを防止することができるので、経時変化による樹脂材料の劣化の進行を遅らせて長期にわたりビーム本体と装着部品との固定状態を良好に保つことができる。
【0011】
また、本発明の車両用外装ビームにおいて、前記立壁部の先端部は、前記締結部材の拡径部よりも半径方向外方に突出して設けられているとよい。
立壁部の先端部が、拡径部と当接しない非接触部となるので、締結部材の拡径部が装着部品の立壁部に食い込み、立壁部先端の非接触部で押さえ込まれる状態となるため、良好な固定状態を継続させることができる。
【0012】
さらに、本発明の車両用外装ビームにおいて、前記立壁部は、前記取付孔を囲む筒状に形成されているとよい。
この場合、締結部材の拡径部に対して、半径方向だけでなく周方向にも均等に反発力を生じさせることができる。
【0013】
また、本発明の車両用外装ビームにおいて、前記立壁部は、前記取付孔の両側に接線方向に沿って形成されるとともに、前記固定部の長手方向に延びて設けられているとよい。
立壁部を、取付孔の近傍だけでなく、固定部の長手方向に延ばして設けた場合、固定部を補強するリブとしても機能させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、長期にわたりビーム本体と装着部品との固定状態を良好に保つことができ、確実にビーム本体と装着部品とを固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態の車両用外装ビームの斜視図である。
【図2】ビーム本体を説明する図である。
【図3】エンドキャップの斜視図である。
【図4】ビーム本体とエンドキャップとの取り付けを説明する固定部の要部拡大図であり、(a)がリベット固定前、(b)がリベット固定後を示す。
【図5】第2から第4の実施形態の固定部を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の車両用外装ビームの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
第1実施形態の車両用外装ビーム100は、図1に示すように、角筒状に形成されたビーム本体10の両端の開口端部に、装着部品としてビーム本体10の端面を塞ぐエンドキャップ20を取り付けて構成される。
【0017】
ビーム本体10は、図1に示すように、アルミニウム合金の押出成形等によって角筒状に形成されており、取り付けられる車両の幅寸法と同程度の長さに形成されている。両端の開口端部10aには、エンドキャップ20を固定するための締結部材であるリベット30を挿入する取付孔11が設けられている。なお、本実施形態のエンドキャップ20が、本発明における装着部品に対応する。
取付孔11は、ビーム本体10の幅方向に対向する周壁のみに設けられており、各周壁に2個ずつ形成されている。
【0018】
エンドキャップ20は、例えば、ポリプロピレン等の合成樹脂により形成されており、ビーム本体10の端面10bの外形とほぼ同じ長方形の板状のカバー部材21と、このカバー部材21によりビーム本体10の端面10bを塞いだときにビーム本体10の内部に延びる二対の固定部22とが一体に形成されている。
各対の固定部22は、図3に示すように、カバー部材21の内面に幅方向に間隔をおいて、カバー部材21から垂直に立設して板状に設けられている。そして、固定部22には、リベット30を挿入する取付孔23が形成されており、固定部22の内面には、取付孔23を取り囲むようにして、取付孔23の近傍に、周方向に連続して取付孔23を囲む筒状の立壁部26が立設されている。
【0019】
立壁部26は、図4に示すように、後述するリベット30によって固定部22が締結された際に、リベット30の拡径部31aの外周縁より半径方向内方位置に配置されるように設けられており、図4(a)に示すように、その根元部27の内側面が、縦断面形状において取付孔23の開口端から連続して延びる凹円弧形状とされ、徐々に薄肉の先端部へと繋がるような形状とされている。また、立壁部26の高さは、リベット30の拡径部31aによって倒されたときに、その先端部が拡径部31aよりも半径方向外方に突出して配置される高さに設定される。
また、これら対の固定部22同士は、カバー部材21の内面に一体に立設した幅方向に沿う帯板状の連結部24によって下端部が相互に連結されており、これにより、固定部22自体が根元から折れて破損するのを防ぐとともに、カバー部材21の幅方向の剛性を高めている。
【0020】
なお、図3に示す爪部25は、カバー部材21の内面に突出して形成されるとともに、カバー部材21の長手方向に離間して一対形成されており、ビーム本体10の取り付けの際には、ビーム本体10の内側空間に入り込んで、長手方向の位置合わせがなされるようになっている。
また、ビーム本体10に固定部22を挿入し易くするために、固定部22の外側面の先端部分には、傾斜面22aが形成されている。
【0021】
リベット30は、かしめ型締結部材であるブラインドリベットであり、フランジ部32が一体に形成された中空状のスリーブ31(周壁部)と、スリーブ31の先端部に固着されスリーブ31内を貫通して延びる軸部33とから構成される。スリーブ31は、フランジ部32を固定した状態で軸部33を引き抜くことによって座屈し、半径方向外方に膨出させた拡径部31aを形成する。軸部33は、拡径部31aが形成されると、先端から引きちぎられる。そして、この拡径部31aとフランジ部32とにより、ビーム本体10及びエンドキャップ20の固定部22を挟持して固定することができる。
【0022】
このように構成されるエンドキャップ20は、以下のようにしてビーム本体10に固定される。
ビーム本体10の開口端部10aにエンドキャップ20の固定部22を挿入して、ビーム本体10の端面10bとカバー部材21とを密着させると、ビーム本体10側の取付孔11と、固定部22の取付孔23とが対向して配置される。この状態で、図4(a)に示すように、リベット30をビーム本体10の外側からフランジ部32が当接するまで挿入する。
次に、フランジ部32をビーム本体10に当接させた状態で軸部33を引張り、スリーブ31の先端をフランジ部32側に強く引き込み、スリーブ31の一部を拡径変形させる。固定部22の立壁部26は、図4(b)に示すように、リベット30の拡径部31aが内側面に当接することにより、弾性変形して倒れるとともに、拡径部31aと固定部22の内面との間に挟まれた状態で固定される。このとき、立壁部26の当接部には、リベット30の拡径部31aに対し反発する力が生じるので、ビーム本体10とエンドキャップ20の固定部22とを遊びのない状態で固定することができる。
【0023】
この固定状態においては、立壁部26の根元部27が角部を有しない凹円弧形状とされているので、局部的な集中応力を避けることができるとともに、締結部材30の拡径部31aと立壁部26の根元部27とをほぼ隙間なく接触させて設けることができ、拡径部31aと立壁部26との当接部において、半径方向にほぼ均一化した面圧分布とすることができる。また、立壁部26が周方向に連続して形成されており、半径方向だけでなく、周方向においても均等な面圧分布とされ、局部的に応力が集中することを防止することができるので、経時変化による樹脂材料の劣化の進行を遅らせて長期にわたりビーム本体10とエンドキャップ20の固定部22との固定状態を良好に保つことができる。
【0024】
さらに、立壁部26の先端部は、図4(b)に示すように、リベット30の拡径部31aよりも半径方向外方に突出して設けられ、拡径部31aと当接しない非接触部28となるので、リベット30の拡径部31aが立壁部26に食い込み、立壁部26先端の非接触部28で押さえ込まれる状態となり、良好な固定状態を維持させることができる。
【0025】
図5は本発明の第2〜第4の実施形態を示している。第1実施形態においては、装着部品であるエンドキャップ20の固定部22に筒状の立壁部26を設けた構成としていたが、立壁部の形状はこれに限定されることはなく、例えば、図5に示すように、取付孔23の周囲に均等配置した複数の立壁部を形成することにより構成してもよい。
図5(a)に示す第2実施形態の固定部22Aにおいては、筒状を三分割した複数の立壁部26Aを構成している。また、図5(b)に示す第3実施形態の固定部22Bにおいては、取付孔23を挟むようにして取付孔23の両側の接線方向に立壁部26Bを形成し、立壁部26B同士を相互に平行に立設させて構成している。
【0026】
これら第2及び第3実施形態の立壁部26A,26Bの場合においても、リベットの拡径部によって各立壁部26A,26Bが相互に押し広げられるように倒される。個々の立壁部26A,26Bは分離して設けられているので、第1実施形態の立壁部26と比べて小さい反発力となるが、大きな変形を生じさせることができる。
また、特に第3実施形態の立壁部26Bの場合には、射出成形によって容易に製作することができる。
【0027】
さらに、図5(c)に示す第4実施形態の固定部22Cにおいては、取付孔23の両側に相互に立設させた立壁部26Cを、取付孔23の近傍だけでなく、固定部22Cの長手方向先端付近まで延ばすとともに、固定部22Cの下端部側でカバー部材21に接続した状態に設けており、立壁部26Cを、固定部22Cを補強するリブとしても機能させている。この第4の実施形態の固定部22Cの場合には、長く形成された立壁部26の一部分が弾性変形して、リベットの拡径部に反発力を付与することになる。
このように、立壁部は、リベット締結時に効果的な反発力を発生し得るものであれば、その形状は特に限定されるものではない。
また、その他の構成は、上述実施形態のものと同じであり、共通部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0028】
なお、本発明は上記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
上記の実施形態においては、ビーム本体にエンドキャップを取り付ける場合について説明したが、本発明は、ビーム本体にランプやライセンスプレート、ハーネス等の周辺部品を取り付ける場合にも使用される。
また、ビーム本体は角筒状に形成されるものだけではなく、例えば、中空部を持たない横断面がC型形状等のビーム本体にも、本発明を適用することができる。
さらに、本発明における締結部材は、リベットの他に、ナット部とフランジ部との間を座屈させて拡径部を形成するかしめ型ナットを使用することもできる。
また、本実施形態においては、リベットの周壁部をスリーブとしたが、周壁部は、周方向に連続していなくてもよく、長手方向に分割スリットが形成されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0029】
100 車両用外装ビーム
10 ビーム本体
10a 開口端部
10b 端面
11,23 取付孔
20 エンドキャップ(装着部品)
21 カバー部材
22,22A,22B,22C 固定部
22a 傾斜面
24 連結部
25 爪部
26,26A,26B,26C 立壁部
27 根元部
28 非接触部
30 リベット(かしめ型締結部材)
31 スリーブ(周壁部)
31a 拡径部
32 フランジ部
33 軸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーム本体に装着部品をかしめ型締結部材によって固定してなる車両用外装ビームであって、前記ビーム本体と前記装着部品の樹脂製の固定部とに形成した取付孔に、前記締結部材が貫通状態に設けられるとともに、前記締結部材は、フランジ部を有する周壁部を座屈させて半径方向外方に膨出させた拡径部を形成することにより、前記ビーム本体及び前記装着部品の固定部を前記フランジ部と前記拡径部との間に挟持しており、前記固定部の取付孔の近傍に、前記締結部材の拡径部の外周縁より半径方向内方位置に立設された弾性変形可能な立壁部が、前記拡径部により半径方向外方に倒され、前記拡径部と前記固定部との間に挟まれて設けられていることを特徴とする車両用外装ビーム。
【請求項2】
前記立壁部の根元部の内側面が、前記立壁部の立設方向に沿う縦断面形状において前記固定部の取付孔の開口端から連続して延びる凹円弧形状とされていることを特徴とする請求項1記載の車両用外装ビーム。
【請求項3】
前記立壁部の先端部は、前記締結部材の拡径部よりも半径方向外方に突出して設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用外装ビーム。
【請求項4】
前記立壁部は、前記固定部の取付孔を囲む筒状に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用外装ビーム。
【請求項5】
前記立壁部は、前記固定部の取付孔の両側に接線方向に沿って形成されるとともに、前記固定部の長手方向に延びて設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用外装ビーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−51481(P2012−51481A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196014(P2010−196014)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000176707)三菱アルミニウム株式会社 (446)