説明

車両用導風板

【課題】整流効果が高く、美観を損なうことなく、しかも運転に支障を生じさせることのない車両用導風板を提供する。
【解決手段】キャブの上部前方と荷箱の上部との間に斜めに設けられた上板12と、上板12の左右側方に設けられた側板14と、からなり、側板14の後端を、荷箱の左右の端部とほぼ等しい位置に配置し、更に側板14の下端であって、キャブの上部左右端縁と側板下端とが交差する位置より後方の部分を、キャブの上部左右端縁に沿わせ、かつキャブの上部左右端縁に沿わせた下端部分から上方を、外方に湾曲させて車両用導風板10を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整流効果が高く、かつ車両に取り付けた際に美観を損なうことのない車両用導風板に関する。
【背景技術】
【0002】
貨物用車両のキャブ上部に、FRP(繊維強化樹脂)などからなる導風板を設け、走行中の空気抵抗を低減させることが行われている。導風板は、前方が狭く、後方に行くに従い広く、また高さが高くなるように、例えば上板と側板から三角台形状に形成されており、上板を、キャブルーフとキャブ後方に設けられた荷箱との間に斜めに設け、前方からの走行風を後方に流し整流させている。
【0003】
また貨物用車両は一般に、運転席が設けられているキャブの横幅より荷箱の横幅の方が広くなっている。したがって通常貨物用車両には、荷箱の横幅に等しい導風板を設けた方が車両としての整流効果が高いことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平6−44775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、キャブの上部に取り付ける導風板の横幅を、荷箱の横幅に等しく形成すると、キャブ上部の左右側方から導風板がはみ出ることとなる。そのため、キャブの上方が導風板により大きく広がることとなり、車両としての美観上好ましくないことがある。
【0006】
また導風板がキャブの左右側方よりはみ出していると、導風板のはみ出している部分がサイドウィンドを通して運転席などから運転者の視界に入り、運転中に気にかかることがあった。
【0007】
本発明は上記課題を解決し、整流効果が高く、かつ美観を損なわず、しかも運転に支障を生じさせることのない車両用導風板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を解決するため、車両用導風板を次のように構成した。
【0009】
キャブの上部前方と荷箱の上部との間に斜めに設けられた上板と、上板の左右側方に設けられた側板と、からなり、側板後端を、荷箱の左右の端部とほぼ等しい位置に配置し、更に、側板の下端であって、キャブの上部左右端縁と側板下端とが交差する位置より後方の部分を、キャブの上部左右端縁に沿わせ、かつキャブの上部左右端縁に沿わせた下端部分から上方を、外方に湾曲させて車両用導風板を構成した。
【発明の効果】
【0010】
車両用導風板は、車両用導風板の後部が、荷箱の横幅に等しく形成してあり、高い整流効果が得られる。また車両用導風板の下端が、キャブ上部の左右両端より外側にはみ出さないため、車両の美観を損ねることがなく、しかも車両用導風板の下端が、運転者の視界に入らず、運転の支障を生じさせない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態にかかる車両用導風板を示す斜視図である。
【図2】同車両用導風板を備えた貨物用車両を示す平面図である。
【図3】同車両用導風板を備えた貨物用車両を示す正面図である。
【図4】同車両用導風板を備えた貨物用車両を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明にかかる導風板の一実施形態について説明する。
図1に、導風板10を示す。導風板10は、例えばFRP(繊維強化樹脂)製で、上板12と左右の側板14とから、ほぼ三角台形状に形成されている。図3および図4に、導風板10を取り付けた貨物用車両20を示す。以下、貨物用車両20の前進方向を前方とし、その逆を後方とし、それを基準に左右を定め、更に重力の方向を下方、その逆を上方として説明する。貨物用車両20は、前方にキャブ22を備え、キャブ22の後方に荷箱24を有している。導風板10は、キャブ22の天井(キャブルーフ)34にフレーム(図示せず。)を介して取り付けられている。
【0013】
キャブ22は、前方にフロントウィンドガラス26を備え、内部に運転席および助手席(いずれも図示せず。)が設けられている。キャブ22の下方には、前輪28が取り付けてあり、前輪28の上方に、前輪28を覆うようにフェンダ30が設けられている。フェンダ30は、運転室部分の前扉32より外側に張り出しており、左右のフェンダ30間の横幅、すなわち車両全幅が、運転室部分の横幅、つまり左右の前扉32での横幅より若干広く形成されている。荷箱24は、横幅が車両全幅に等しく形成されており、荷箱24の左右両端の位置が左右のフェンダ30の外側の位置とほぼ一致している。
【0014】
導風板10は、図1に示すように上板12は、若干上に凸に湾曲したほぼ平板状で、前方は高さが低く、横幅が狭く、後方になるにつれ高さが高く、幅が広くなるように形成されている。側板14はほぼ三角形で、上板12の左右にそれぞれ、上板12の下方を覆うように設けられている。
【0015】
導風板10の後部は、横幅が荷箱24の横幅にほぼ等しく形成されている。また導風板10は、導風板10をキャブ22に取り付けたとき、導風板10の後端部が荷箱24の上端とほぼ同じ高さになる高さ幅を有している。
【0016】
更に導風板10は、側板14が、主側板16と主側板16に連接する副側板18とから形成されている。主側板16は、上板12の左右端部に連接して設けられ、上板12の横幅にほぼ等しい位置から下方に下がっている。
【0017】
副側板18は、主側板16の下方に、主側板16に連接して設けられている。副側板18は、主側板16の下端から所定の高さ幅で設けられ、導風板10の下方に向けて内側に狭められるように湾曲している。
【0018】
副側板18の前端19は、図2に示すように側板14の下端前部がキャブルーフ34の左右端縁と交差する位置であり、更に副側板18の下端は、前端19から後方にキャブルーフ34の左右端縁に沿うように形成されている。
【0019】
副側板18の後端は、荷箱24の近傍に位置し、更に副側板18の後端下部21が下方に延び、キャブ22の上部後端と荷箱24との間の一部を閉鎖するように形成されている。
【0020】
したがって導風板10を備えた貨物用車両20は、荷箱24の横幅全体に導風板10が設けてあるため、高い整流効果を有している。また、フロントウィンドガラス26からキャブ22の側方に回り込んだ走行風は、副側板18が湾曲しながら荷箱24に延び、また後端下部21が下方に延びていることから、副側板18に沿って後方に円滑に流れる。これによっても、荷箱24に風が当たりにくくなり、高い整流効果が得られ、また風切音の発生などを抑制することができる。
【0021】
更に、左右の副側板18が内側に狭められ、副側板18の下端がキャブルーフ34の左右端縁と等しい位置に配置されているので、キャブ22と連続した外観となり美観を損なうことがない。また副側板18の下端が、キャブルーフ34の左右両端縁より外側にはみ出していないので、運転者から導風板10の下端などが見えることがなく、運転に支障を生じさせることがない。
【0022】
尚導風板10は、FRP製に限らず金属製、その他の材質から形成してもよい。また、副側板18の前端19の位置は、正確に側板14の下端前部がキャブルーフ34の左右端縁と交差する位置でなくともよく、高い整流効果が得られ、かつ運転者の視界にほとんど入ることがなければ、キャブルーフ34の左右端縁の内側あるいは外側であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、貨物用車両などに取り付けられる導風板に用いられる。
【符号の説明】
【0024】
10…導風板 12…上板 14…側板 16…主側板 18…副側板 19…前端 20…貨物用車両 21…後端下部 22…キャブ 24…荷箱 26…フロントウィンドガラス 28…前輪 30…フェンダ 32…前扉 34…キャブルーフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブの上部前方と荷箱の上部との間に斜めに設けられた上板と、上板の左右側方に設けられた側板と、からなる車両用導風板であり、
前記側板の後端を、前記荷箱の左右の端部とほぼ等しい位置に配置し、更に、前記側板の下端であって、前記キャブの上部左右端縁と前記側板の下端とが交差する位置より後方の部分を、前記キャブの上部左右端縁に沿わせ、かつ該キャブの上部左右端縁に沿わせた下端部分から上方を、外方に湾曲させたことを特徴とする車両用導風板。
【請求項2】
前記側板を、主側板と該主側板の下方につながる副側板から構成し、前記主側板の後端を前記荷箱の左右端部とほぼ等しい位置に配置するとともに、前記副側板を前記主側板から内側に傾斜させ、該副側板の下端を前記キャブの上部左右両端に沿わせたことを特徴とする請求項1に記載の車両用導風板。
【請求項3】
前記副側板の後部を前記キャブの上端より下方に延ばし、該延ばした部分により前記キャブの後端と前記荷箱との間を連接させたことを特徴とする請求項2に記載の車両用導風板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−136123(P2012−136123A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288872(P2010−288872)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)