説明

車両用導風装置

【課題】車両1の前方に走行風をラジエータ4を通さずにエンジンコンパートメント2内に導く導風路9が設けられる車両用導風装置において、車両1の高速走行時に車両1の空気抵抗を軽減可能とする。
【解決手段】導風路9の入口9a側には、不動時に入口9aを開放していて、走行時に受ける風圧に応じて入口9aを閉塞する入口側蓋状部材10が設けられている。導風路9の出口9b側には、不動時に出口9bを閉塞していて、走行時に受ける風圧に応じて出口9bを開放する出口側蓋状部材11が設けられている。車両1の高速走行時には、入口側蓋状部材10により入口9aを閉塞する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両前方に走行風をラジエータを通さずにエンジンコンパートメント内に導く導風路が設けられる車両用導風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、車両前方に走行風をラジエータを通さずにエンジンルーム内に導く導風路を設け、この導風路の途中に単一のフードシールプレートを設けた構成が記載されており、さらに、アイドリング時は前記フードシールプレートの自重で前記導風路を閉じる状態になり、また、走行時は走行時に受ける風圧で前記フードシールプレートが押されて前記導風路を開く状態になるということが記載されている。
【0003】
例えば特許文献2には、車両前方に走行風をラジエータを通さずにエンジンルーム内に導く外気導入口を設け、この外気導入口の途中に単一のシールラバーを設けた構成が記載されており、さらに、エンジン始動時には前記シールラバーが撓まずに前記外気導入口を閉じる状態になり、また、走行時は走行時に受ける風圧で前記シールラバーが撓んで前記外気導入口を開く状態になるということが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭59−79521号公報
【特許文献2】実開昭58−156118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1,2は、いずれも単一の開閉要素(フードシールプレート、シールラバー)でもって走行風通路(導風路、外気導入口)を開閉するようになっていて、走行時に受ける風圧が強くなる高速走行時には前記開閉要素が必ず開くようになると考えられるので、走行風をエンジンルームに導入させないようにすることは不可能である。
【0006】
ところで、一般に、エンジンに過給機を搭載している場合、低速走行時にエンジンルーム内の雰囲気温度がエンジンに過給機を搭載していない場合に比べると高くなるために、エンジンルーム内の部品が熱劣化しやすくなる、ということが知られている。このことから本願発明者は、低速走行時に走行風をエンジンルーム内に積極的に導入させてエンジンルーム内の熱気を強制的に排出させるようにするのがよいのではと考えた。
【0007】
これに対し、上記特許文献1,2には、低速走行時に走行風をエンジンルーム内に導入させてエンジンルーム内の熱気を排除させるようにするという記載ならびに示唆は無い。しかも、上記特許文献1,2の構成では、低速走行時のように走行時に受ける風圧が弱いと、前記開閉要素(フードシールプレート、シールラバー)を開くことが難しいので、前記したように走行風をエンジンルーム内に積極的に導入させることはできないと言える。
【0008】
このような事情に鑑み、本発明は、車両の前方に走行風をラジエータを通さずにエンジンコンパートメント内に導く導風路が設けられる車両用導風装置において、車両の高速走行時に車両の空気抵抗を軽減可能とすることを目的としている。
【0009】
また、本発明は、車両の前方に走行風をラジエータを通さずにエンジンコンパートメント内に導く導風路が設けられる車両用導風装置において、車両の低速走行時にラジエータ周辺部品の熱劣化を抑制または防止することを可能にしながら、車両の高速走行時に車両の空気抵抗を軽減可能とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る車両用導風装置は、車両前方に走行風をラジエータを通さずにエンジンコンパートメント内に導く導風路が設けられ、この導風路の入口側には、不動時に前記入口を開放していて、走行時に受ける風圧に応じて前記入口を閉塞する入口側蓋状部材が設けられ、前記導風路の出口側には、不動時に前記出口を閉塞していて、走行時に受ける風圧に応じて前記出口を開放する出口側蓋状部材が設けられ、前記車両の高速走行時には、前記入口側蓋状部材により前記入口を閉塞する、ことを特徴としている。
【0011】
この構成では、高速走行時に前記入口側蓋状部材が前記入口を閉塞するので、前記出口側蓋状部材の開閉状態に関係なく、走行風がエンジンコンパートメント内に入らずに車両の外表面に沿って流れるようになる。これにより、高速走行時にはエンジンコンパートメント内に走行風が入るようになっている場合に比べると車両の空気抵抗が軽減されるようになり、結果的に車両の空力性能が向上する。
【0012】
なお、前記入口側蓋状部材はノーマリーオープンタイプとされ、前記出口側蓋状部材はノーマリークローズタイプとされているので、車両停止時には、前記入口側蓋状部材が前記入口を開放する状態のまま不動に保たれるとともに、前記出口側蓋状部材が前記出口を閉塞する状態のまま不動に保たれるようになる。これにより、車両停止時には、エンジンコンパートメント内の熱気が前記導風路の出口側から入口側へ逆流して前記ラジエータの前方に回り込まなくなる。そのため、ラジエータに熱気が通過しなくなるので、ラジエータの冷却性能の低下を回避することが可能になる。
【0013】
好ましくは、前記車両の低速走行時には、前記入口側蓋状部材により前記入口を開放する状態にし、前記出口側蓋状部材により前記出口を開放する、構成とすることができる。なお、「前記入口側蓋状部材により前記入口を開放する状態にし」という表現は、前記入口側蓋状部材が前記入口を開放したまま不動とされる状態を含んでいるとともに、前記入口側蓋状部材が僅かに動かされて前記入口を僅かに閉じる状態も含んでいる。
【0014】
この場合、走行風が前記導風路を通ってエンジンコンパートメント内に導入されるようになるので、低速走行時にはエンジンコンパートメント内の熱気が走行風によってエンジンコンパートメントの後方へ排出されるようになる。これにより、低速走行時には、積極的にエンジンコンパートメント内の熱気が排除されるようになるから、エンジンコンパートメント内の部品(特にエンジン周辺部品)の熱劣化を抑制または防止することが可能になる。
【0015】
好ましくは、前記両蓋状部材は走行時に受ける風圧によって撓むシールプレートとされ、かつ前記出口側蓋状部材は前記入口側蓋状部材より撓みやすく設定される。
【0016】
この構成では、例えば走行時に受ける風圧が弱い低速走行時に、前記入口側蓋状部材が不動に保たれて、前記出口側蓋状部材が前記出口を開放するようになる。これにより、低速走行時には走行風が前記導風路を通ってエンジンコンパートメント内に導入されるようになるので、エンジンコンパートメント内の熱気が走行風によってエンジンコンパートメントの後方へ排出されるようになる。これにより、エンジンコンパートメント内の部品(特にエンジン周辺部品)の熱劣化を抑制または防止することが可能になる。
【0017】
また、高速走行時には、走行時に受ける風圧により前記入口側蓋状部材が前記入口を閉塞するので、前記出口側蓋状部材の開閉状態に関係なく、走行風がエンジンコンパートメント内に入らずに車両の外表面に沿って流れるようになる。これにより、高速走行時にはエンジンコンパートメント内に走行風が入るようになっている場合に比べると車両の空気抵抗が軽減されるようになり、結果的に車両の空力性能が向上する。
【0018】
好ましくは、前記導風路は、前記ラジエータの上部とエンジンフードの内面との間に車両前後方向に沿うように設けられる。ここでは導風路の設置場所を特定している。
【0019】
好ましくは、前記車両用導風装置には、前記両蓋状部材を開閉させるためのアクチュエータと、このアクチュエータを制御するための制御部とをさらに備え、この制御部は、前記車両の停止時に前記出口側蓋状部材により前記入口を閉塞するように前記アクチュエータを制御する処理と、前記車両の低速走行時に前記入口側蓋状部材を不動として、前記出口側蓋状部材により前記出口を開放するように前記アクチュエータを制御する処理と、前記車両の高速走行時に前記入口側蓋状部材により前記入口を閉塞するように前記アクチュエータを制御する処理とを実行する、構成とすることができる。
【0020】
この構成による作用を説明する。まず、車両停止時には、前記入口側蓋状部材を全開にして、前記出口側蓋状部材を全閉にすると、前記エンジンコンパートメント内の熱気が前記導風路の出口側から入口側へ逆流して前記ラジエータの前方に回り込まなくなる。そのため、ラジエータに熱気が通過しなくなるので、ラジエータによる冷却性能の低下を回避することが可能になる。
【0021】
また、低速走行時には、前記入口側蓋状部材を全開にして、前記出口側蓋状部材を開くと、走行風が前記導風路を通って前記エンジンコンパートメント内に導入されるようになるので、前記エンジンコンパートメント内の熱気が走行風によって前記エンジンコンパートメントの後方へ排出されるようになる。これにより、低速走行時には積極的にエンジンコンパートメント内の熱気が排除されるようになるから、前記エンジンコンパートメント内の部品(特にエンジンの周辺部品)の熱劣化を抑制または防止することが可能になる。
【0022】
さらに、高速走行時には、前記入口側蓋状部材を全閉にすると、前記出口側蓋状部材の開閉状態に関係なく、走行風が前記エンジンコンパートメント内に入らずに車両の外表面に沿って流れるようになるので、前記エンジンコンパートメント内に走行風が入るようになっている場合に比べると車両の空気抵抗が軽減されるようになる。これにより、車両の空力性能が向上する。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る車両用導風装置は、車両の高速走行時に走行風をエンジンコンパートメント内に導入させないから、車両の空気抵抗を軽減することが可能になり、その結果、車両の空力性能が向上して走行性能が向上するようになる。
【0024】
また、本発明に係る車両用導風装置は、車両の停止時に前記エンジンコンパートメント内の熱気が前記ラジエータの周辺に逆流することを防止できるようになるので、ラジエータによる冷却性能の低下を回避することが可能になる。
【0025】
さらに、本発明に係る車両用導風装置は、車両の低速走行時に前記エンジンコンパートメント内の熱気を強制的に排出させることが可能になるので、エンジンコンパートメント内の部品(特にエンジンの周辺部品)の熱劣化を抑制または防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る車両用導風装置の一実施形態を模式的に示す側面図である。
【図2】図1の導風路の単体を示す斜視図である。
【図3】図1の車両用導風装置の周辺を拡大して示す図であり、車両停止時に入口側蓋状部材が開放していて、出口側蓋状部材が閉塞している状態を示している。
【図4】図1の車両用導風装置の周辺を拡大して示す図であり、低速走行時に入口側蓋状部材および出口側蓋状部材が共に開放している状態を示している。
【図5】図1の車両用導風装置の周辺を拡大して示す図であり、高速走行時に入口側蓋状部材が閉塞していて、出口側蓋状部材が開放している状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
図1から図5に、本発明の一実施形態が示されている。図1に示す車両1は、その前方に設けられるエンジンコンパートメント(エンジンルームとも言う)2内に、エンジン3が搭載されるフロントエンジンマウントタイプとされている。
【0029】
このような車両1のエンジンコンパートメント2においてエンジン3よりも前方には、ラジエータ4およびエアコン用のコンデンサ5が配置されている。このラジエータ4よりもエンジン3寄りには、電動式ファン6が設けられている。
【0030】
電動式ファン6は、ラジエータ4およびエアコン用のコンデンサ5の前方から後方へ外気を通過させるとともにエンジン3へ風を吹き付けるものである。なお、7はファンシュラウドであり、このファンシュラウド7は、ラジエータ4と電動式ファン6とを覆い囲むように設置されており、電動式ファン6により引き込んだ風を集めてエンジン3に向かわせるようになっている。
【0031】
エンジンコンパートメント2の上側開口は、エンジンフード8によって閉塞される。このエンジンフード8の内面には、フードインナー8aが設けられている。一般的に、エンジンフード8は、その先端が図示していないフロントバンパーの前面に連続するように前傾形状に形成されている。このエンジンフード8と図示省略のフロントバンパーとの間には、詳しく図示していないが、走行風をエンジンコンパートメント2内に導入するための開口が設けられている。
【0032】
ところで、エンジンコンパートメント2内にエンジン3が搭載される関係より、このエンジン3が熱源となるので、エンジンコンパートメント2内に熱気が篭りやすくなる。特に、エンジン3に過給機を搭載している場合には、低速走行時にエンジンコンパートメント2内の雰囲気温度がエンジン3に過給機を搭載していない場合に比べると高くなる。
【0033】
そこで、車両1の前方に、走行風をラジエータ4を通さずにエンジンコンパートメント2内に導くための導風路9が設けられている。この導風路9は、ラジエータ4の上部とエンジンフード8の内面との間に、車両1の前後方向に沿うように設けられている。
【0034】
この実施形態では、導風路9を常に開放したままにせずに、必要に応じて開閉可能とするように工夫しているので、以下で詳しく説明する。
【0035】
導風路9の入口9a側には、入口側蓋状部材10が設けられており、また、導風路9の出口9b側には、出口側蓋状部材11が設けられている。
【0036】
入口側蓋状部材10は、図1および図3に示すように、不動時に入口9aを開放しているノーマリーオープンタイプとされており、走行時に受ける風圧に応じて入口9aを閉塞または開放する状態になるように動かされるようになっている。
【0037】
出口側蓋状部材11は、図1および図3に示すように、不動時に出口9bを閉塞しているノーマリークローズタイプとされており、走行時に受ける風圧に応じて出口9bを開放または閉塞する状態になるように動かされるようになっている。
【0038】
具体的に、両蓋状部材10,11は、図2に示すように、帯板状とされており、導風路9を構成する天井壁91の適宜位置に垂れ下がるように設置されている。両蓋状部材10,11の短手方向は鉛直方向上下に沿うように配置されていて、両蓋状部材10,11の長手方向は車両幅方向に沿うように配置されている。
【0039】
詳しくは、両蓋状部材10,11の各上辺には、それぞれ90度屈曲された屈曲片(符号省略)が設けられている。
【0040】
この入口側蓋状部材10の前記屈曲片は、図2に示すように、導風路9を構成する天井壁91において前方水平部911と傾斜部912との境付近に、例えばビス、ボルトあるいは接着剤などによって取り付けられている。この入口側蓋状部材10は、導風路9を構成する底壁92において前方傾斜部921の前方垂下部922にほぼ平行に離隔するように対向配置されている。このような形態で、入口側蓋状部材10が不動時に入口9aを開放するようになっている。
【0041】
出口側蓋状部材11の前記屈曲片は、図2に示すように、導風路9を構成する天井壁91において後方水平部913の後端に、例えばビス、ボルトあるいは接着剤などによって取り付けられている。この出口側蓋状部材11の下端は、導風路9を構成する底壁92において中間水平部923の上面に軽く接触されている。このような形態で、出口側蓋状部材11が不動時に出口9bを閉塞するようになっている。
【0042】
なお、出口9bが開放された場合には、この導風路9を通過する走行風が底壁92の後方傾斜部924によってフードインナー8aとエンジン3との間に導かれるようになっている。
【0043】
さらに、両蓋状部材10,11は、走行時に受ける風圧によって撓むようなゴム材で形成されている。さらに、出口側蓋状部材11の硬度が入口側蓋状部材10の硬度よりも低く設定されることにより、出口側蓋状部材11のほうが入口側蓋状部材10よりも撓みやすい性状とされている。
【0044】
具体的に、ノーマリーオープンタイプの入口側蓋状部材10については、走行時に受ける風圧が弱い低速走行時に入口9aを開放した状態を保つように設定する一方で、走行時に受ける風圧が強い高速走行時に入口9aを閉塞する側に動くように設定される。ノーマリークローズタイプの出口側蓋状部材11については、走行時に受ける風圧が弱い低速走行時に出口9bを開放する側に動きやすくなるように設定される。
【0045】
次に、図3から図5を参照して、車両1の走行状態毎に上記構成の車両用導風装置による作用について詳しく説明する。
【0046】
まず、車両停止時(例えば0km/h〜5km/h未満)には、図3に示すように、ノーマリーオープンタイプの入口側蓋状部材10が入口9aを開放する状態のまま不動に保たれるとともに、ノーマリークローズタイプの出口側蓋状部材11が出口9bを閉塞する状態のまま不動に保たれるようになる。
【0047】
これにより、エンジンコンパートメント2内の熱気が導風路9の出口9b側から入口9a側へ逆流してラジエータ4の前方に回り込まなくなる。そのため、車両停止時には、ラジエータ4に熱気が通過しなくなるので、ラジエータ4の冷却性能の低下を回避することが可能になる。
【0048】
また、低速走行時(例えば5km/h以上、30km/h未満)には、図4に示すように、ノーマリーオープンタイプの入口側蓋状部材10が入口9aを開放する状態のまま不動に保たれるようになって、ノーマリークローズタイプの出口側蓋状部材11が出口9bを開放する状態に動かされるようになる。なお、このとき、入口側蓋状部材10が入口9aを僅かに閉じるように動くこともあるが、入口9aが閉塞されることはない。
【0049】
これにより、走行風が導風路9を通ってエンジンコンパートメント2内に導入されるようになるので、低速走行時にはエンジンコンパートメント2内の熱気が走行風によってエンジンコンパートメント2の後方へ強制的に押しやられることになって、エンジンコンパートメント2の上側開口とエンジンフード8との隙間から外側に放出されるようになる。そのため、低速走行時には、エンジンコンパートメント2内の部品の熱劣化を抑制または防止することが可能になる。しかも、図示していないが、一般に、エンジン3に過給機を搭載している場合、低速走行時にエンジンルーム内の雰囲気温度がエンジン3に過給機を搭載していない場合に比べると高くなるが、この実施形態ではエンジン3に過給機を搭載している場合に特に有利となる。
【0050】
さらに、高速走行時(例えば30km/h以上)には、図5に示すように、走行時に受ける風圧により入口側蓋状部材10が入口9aを閉塞する状態に動かされるので、出口側蓋状部材11の開閉状態に関係なく、走行風がエンジンコンパートメント2内に入らずに車両1の外表面に沿って流れるようになる。これにより、高速走行時には、エンジンコンパートメント2内に走行風が入るようになっている場合に比べると車両1の空気抵抗を軽減できるようになるので、車両1の空力性能が向上する。
【0051】
以上説明したように、本発明の特徴を適用した実施形態では、車両1の前方に走行風をラジエータ4を通さずにエンジンコンパートメント2内に導く導風路9が設けられる車両用導風装置において、導風路9の入口9aと出口9bとにそれぞれ蓋状部材10,11を設置し、この2つの蓋状部材10,11を走行時に受ける風圧の強弱によって開閉させるように工夫することにより、車両1の停止時にはラジエータ4の冷却性能の低下を回避することが可能になり、また、低速走行時にはエンジンコンパートメント2内の部品(特にエンジン3の周辺部品)の熱劣化を抑制または防止することが可能になり、さらに、高速走行時には車両1の空力性能を向上させることが可能になる。
【0052】
このように、この実施形態によれば、エンジンコンパートメント2内の部品の耐久性ならびに車両1の走行性能を向上することが可能になる。
【0053】
本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内および当該範囲と均等の範囲で包含されるすべての変形や応用が可能である。以下でいくつかの例を挙げる。
【0054】
(1)上記実施形態では、導風路9の設置場所は特に限定されないし、両蓋状部材10,11の設置形態についても特に限定されるものではない。
【0055】
(2)上記実施形態において、両蓋状部材10,11は、図示していないが、ばね部材とすることが可能である他、図示していないが、アクチュエータにより動作が制御される制御弁とすることが可能である。また、前記制御弁としては、例えば電磁弁または電動弁などが挙げられる。
【0056】
この場合には、電子制御装置などによって前記制御弁の開度を走行速度に応じて制御するように前記アクチュエータを制御することが考えられる。例えば前記電子制御装置は、車両1の停止時に出口側蓋状部材11を入口9aを閉塞する側に作動させるように前記アクチュエータを制御する処理と、車両1の低速走行時に入口側蓋状部材10を不動として、出口側蓋状部材11を出口9bを開放する側に作動させるように前記アクチュエータを制御する処理と、車両1の高速走行時に入口側蓋状部材10を入口9aを閉塞する側に作動させるように前記アクチュエータを制御する処理とを実行する制御ロジックを備えさせるようにすることができる。
【0057】
(3)上記実施形態では、両蓋状部材10,11を可撓性を有するものとして走行時に受ける風圧に応じて撓んで開閉する形態にした場合を例に挙げているが、本発明はこれに限定されるものでない。例えば両蓋状部材10,11は、導風路9を構成する天井壁91に蝶番などを介して揺動可能に設置することが可能である。その場合も、上記実施形態と同様の作用、効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、車両前方に走行風をラジエータを通さずにエンジンコンパートメント内に導く導風路が設けられる車両用導風装置に好適に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 車両
2 エンジンコンパートメント
3 エンジン
4 ラジエータ
8 エンジンフード
8a フードインナー
9 導風路
9a 導風路の入口
9b 導風路の出口
10 入口側蓋状部材
11 出口側蓋状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方に走行風をラジエータを通さずにエンジンコンパートメント内に導く導風路が設けられ、
この導風路の入口側には、不動時に前記入口を開放していて、走行時に受ける風圧に応じて前記入口を閉塞する入口側蓋状部材が設けられ、
前記導風路の出口側には、不動時に前記出口を閉塞していて、走行時に受ける風圧に応じて前記出口を開放する出口側蓋状部材が設けられ、
前記車両の高速走行時には、前記入口側蓋状部材により前記入口を閉塞する、ことを特徴とする車両用導風装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用導風装置において、
前記車両の低速走行時には、前記入口側蓋状部材により前記入口を開放する状態にし、前記出口側蓋状部材により前記出口を開放する、ことを特徴とする車両用導風装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用導風装置において、
前記両蓋状部材は走行時に受ける風圧によって撓むシールプレートとされ、かつ前記出口側蓋状部材は前記入口側蓋状部材より撓みやすく設定される、ことを特徴とする車両用導風装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用導風装置において、
前記導風路は、前記ラジエータの上部とエンジンフードの内面との間に車両前後方向に沿うように設けられる、ことを特徴とする車両用導風装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車両用導風装置において、
前記両蓋状部材を開閉させるためのアクチュエータと、このアクチュエータを制御するための制御部とをさらに備え、
この制御部は、前記車両の停止時に前記出口側蓋状部材により前記入口を閉塞するように前記アクチュエータを制御する処理と、前記車両の低速走行時に前記入口側蓋状部材を不動として、前記出口側蓋状部材により前記出口を開放するように前記アクチュエータを制御する処理と、前記車両の高速走行時に前記入口側蓋状部材により前記入口を閉塞するように前記アクチュエータを制御する処理とを実行する、ことを特徴とする車両用導風装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−103510(P2013−103510A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246450(P2011−246450)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】