車両用引戸開閉装置
【課題】構成が簡素であるにも拘わらず、左右の引戸に十分な開閉駆動力を付与するとともにラッチ錠の施錠・解錠に要する力を低減する構成とし、製造の容易化・操作性の向上・安全性の向上・静音化をともに実現させた車両用引戸開閉装置を提供する。
【解決手段】係止部402,502が両側から当接したロック装置100は、施錠用磁気回路を形成するように円柱型永久磁石108を回転させるとともに施錠用磁気回路の磁力により係止部402,502を固定する。この円柱型永久磁石108の回転動作はラッチ錠113の下降動作に変換され、降下したラッチ錠113がロック装置100に対して係止部402,502を拘束する。
【解決手段】係止部402,502が両側から当接したロック装置100は、施錠用磁気回路を形成するように円柱型永久磁石108を回転させるとともに施錠用磁気回路の磁力により係止部402,502を固定する。この円柱型永久磁石108の回転動作はラッチ錠113の下降動作に変換され、降下したラッチ錠113がロック装置100に対して係止部402,502を拘束する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の引戸を開閉するための車両用引戸開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用引戸開閉装置の従来技術が、例えば、特許文献1(特開2000−142392号公報,発明の名称「車両用引戸開閉装置」)に開示されている。特許文献1の車両用引戸開閉装置は引戸の開閉と連動して施錠・解錠を行うドアロック装置を備える。このドアロック装置は、ラッチ錠を孔部(ロックホール)内に落下させて引戸が開閉しないように施錠するものである。このドアロック装置は、さらにワイヤ装置にてラッチ錠を上昇させるように構成し、ハンドル装置を手動で操作して解錠できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−142392号公報(図15,図16)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の車両用引戸開閉装置では、孔部の上側に正確にラッチ錠を位置決めした後でラッチ錠を下降させる必要があるが、この位置決めは、以下に説明するように容易ではなかった。
(1)戸挟み事故の対策として、左右の引戸には戸先ゴムが設けられており、戸閉時には戸先ゴムを圧縮変形させて隙間が生じないようにしている。しかしながら、戸閉時における戸先ゴムの潰し量が大きい場合に引戸に加わる抵抗力が大きくなって、ラッチ錠が孔部の上側からずれてしまい、ラッチ錠による施錠ができなくなるおそれがあるという問題があった。
【0005】
(2)また、車両走行時(つまり戸閉時)に引戸に当接して音止機能、風止機能、振止機能等を果たす振動防止部が設けられているが、これら振動防止部が戸閉時に想定値より大きい力を付与する場合にも引戸に加わる抵抗力が大きくなって、ラッチ錠が孔部の上側からずれてしまい、ラッチ錠による施錠ができなくなるおそれがあるという問題があった。
【0006】
(3)また、逆に、戸先ゴムの潰し量が小さいため引戸に加わる抵抗力が小さい場合や、振動防止部が戸閉時に想定値より小さい力を付与するため引戸に加わる抵抗力が小さい場合は、規定の障害物を挟んだときでも抵抗力が規定内に収まってラッチ錠を施錠することとなり、戸挟み検知試験に不合格になるという問題があった。
【0007】
(4)前述の(1)〜(3)で述べたとおり、引戸に加わる抵抗力が小さくても大きくても問題となるため、所定範囲内に収まるように調整する必要があるが、孔部の上側に正確にラッチ錠を位置決めさせつつ、双方を満足させるような抵抗力を付与する調整作業は容易ではないという問題があった。
【0008】
(5)調整作業を容易にするため、左右の戸先ゴム間にスキマを設ける構造を採用し、施錠と規定の戸挟み検知精度の両方を満足させることが考えられるが、左右突き合わせ形状の戸先ゴムではそのスキマ(戸隙)から水・風が浸入したり、音が発生するという問題があり、採用しにくい事情を有していた。
【0009】
(6)従来技術のドアロック装置を施錠するとき、ある戸閉速度で締まる引戸の慣性力での押し込み力を用いてラッチ錠をバネ圧で落下させて施錠させる方式であるため、落下音及び衝突音が大きいという問題があった。
【0010】
(7)従来技術のドアロック装置を解錠するとき、ラッチ錠を引っ張るバネ圧力の他にラッチ錠に加わっている大きなドア反力を上回る力が必要なことから、金属接触音が大きいという問題があった。
【0011】
(8)戸閉時には圧縮された戸先ゴムからの反力などが引戸に加わっており、施錠時のロック装置でラッチ錠へは大きなドア反力が加わってラッチ錠は移動しづらくなっている。このようなドア反力が大きい状況で非常時にハンドル操作すると、場合によってはアウタワイヤが縮んで相対的にインナワイヤが引き込めないことがあり、非常時に解錠できないおそれがあるという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、構成が簡素であるにも拘わらず、左右の引戸に十分な開閉駆動力を付与するとともにラッチ錠の施錠・解錠に要する力を低減する構成とし、製造の容易化・操作性の向上・安全性の向上・静音化をともに実現させた車両用引戸開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の特徴をなす車両用引戸開閉装置は、以下のようになる。
まず、円柱型永久磁石が回転可能に支持される磁気ロック装置を備える。さらに、磁気ロック装置の円柱型永久磁石の回転動作とラッチ錠の昇降動作とを相互に変換するラッチ錠昇降ロック装置を備える。このような車両用引戸開閉装置では、2枚の引戸が開けられて磁気ロック装置の両側から2個の係止部が離れている解錠状態のとき、磁気ロック装置は、内部に解錠用磁気回路を形成するように円柱型永久磁石を回転固定し、また、ラッチ錠昇降ロック装置は、円柱型永久磁石の固定に応じてラッチ錠を上昇位置にて固定する。また、2枚の引戸が閉じられて磁気ロック装置の両側から2個の係止部が当接する施錠状態のとき、磁気ロック装置は、両側から当接する2個の係止部とともに内部に施錠用磁気回路を形成するように円柱型永久磁石を回転固定しつつ2個の係止部を磁力により吸引固定し、また、ラッチ錠昇降ロック装置は、円柱型永久磁石の固定に応じてラッチ錠を下降位置にて固定しつつラッチ錠により磁気ロック装置から2個の係止部の離脱を防止するよう拘束する。
磁気的な力により係止部を強固に吸引固定する。また、ラッチ錠により係止部が移動しないように確実に拘束する。
【0014】
また、2枚の引戸が開けられて磁気ロック装置の両側から2個の係止部が離れている解錠状態のとき、磁気ロック装置の円柱型永久磁石は、上昇したラッチ錠の自重から受ける下降力が変換部により変換されて、一の回転方向へ回転しようとする初期回転力が付与された状態にある。これにより、円柱型永久磁石はラッチ錠が下降する方向に回転する力が付与されていることとなる。
【0015】
さらに、磁気ロック装置の円柱型永久磁石は、内部で形成した解錠用磁気回路により初期回転力を上回る固定力が付与されて固定され、その結果、ラッチ錠昇降ロック装置はラッチ錠の上昇位置を維持する。これにより、解錠状態のときは、初期回転力に拘わらず、ラッチ錠を上昇位置に維持するように固定されることとなる。
【0016】
また、2枚の引戸が閉じられて磁気ロック装置の両側から2個の係止部が当接する施錠状態へ解錠状態から移行するとき、磁気ロック装置は、両側から当接する2個の係止部とともに内部に施錠用磁気回路を形成するように円柱型永久磁石に回転力を加えつつ回転させて施錠用磁気回路の形成と同時に2個の係止部を磁力により吸引固定し、また、ラッチ錠昇降ロック装置は、円柱型永久磁石の回転力をラッチ錠の下降力に変換して下降させたラッチ錠により2個の係止部と磁気ロック装置とを拘束させる。このように、施錠するときは、円柱型永久磁石の回転により磁気力の付与とラッチ錠の下降が行われる。
【0017】
ラッチ錠昇降ロック装置は、アクチュエータがラッチ錠を上昇させてラッチ錠による拘束を解除し、かつ、ラッチ錠の上昇動作を円柱型永久磁石の回転動作に変換して施錠磁気回路を開いて2個の係止部の磁気吸引による拘束を解除する。ラッチ錠は強固な力を付与するものではないため、小形のアクチュエータの小さな力でもラッチ錠の上昇を行うことができる。
【0018】
また、ラッチ錠昇降ロック装置は、ラッチ錠の上昇動作を行うワイヤ装置を備え、ワイヤ装置がラッチ錠を上昇させてラッチ錠による拘束を解除し、かつ、ラッチ錠の上昇動作を円柱型永久磁石の回転動作に変換して施錠磁気回路を開いて2個の係止部の磁気吸引による拘束を解除する。ラッチ錠は強固な力を付与するものではないため、ワイヤ装置の小さな力でもラッチ錠の上昇を行うことができる。
【0019】
また、ラッチ錠昇降ロック装置のワイヤ装置は、ワイヤ装置のインナワイヤを移動させるハンドル装置を備え、ハンドル装置のハンドル操作によりインナワイヤを移動させるようにしている。非常時に手動操作で確実に容易にラッチを外すことができる。また、力が少なくてすむためアウタワイヤやインナワイヤが変形することがない。
【0020】
また、ストッパによりインナワイヤが移動しないように固定すると、ラッチ錠昇降ロック装置によるラッチ錠の下降およびそれに伴う磁気ロック装置の円柱型永久磁石の回転を防止し、その結果、施錠用磁気回路形成を防止する。これにより、ラッチ錠の上昇位置においてストッパで固定される間は、2枚の引戸を手動で開閉可能とする。
【0021】
また、ハンドル装置を操作してラッチ錠の拘束を解除したときに解錠用磁気回路によりラッチ錠は上昇位置に保持されるが、一旦、2枚の引戸を手動で閉めると施錠用磁気回路を形成して施錠される。
【0022】
このラッチ錠昇降ロック装置の変換部は、円柱型永久磁石の回転軸と同軸となるように取り付けられるピニオンと、ピニオンに噛み合うとともにラッチ錠の昇降方向に伸びるように取り付けられるラックと、を含む。このような簡素な機構により変換部を形成することができる。
【0023】
磁気ロック装置は、2個の係止部が磁気回路機構部から離脱したときに円柱型永久磁石と上側の鉄製ヨークとで解錠用磁気回路を形成するとともに円柱型永久磁石と下側の鉄製ヨークとで解錠用磁気回路を形成して円柱型永久磁石の回転を停止させてラッチ錠を固定する。
また、2個の係止部が磁気回路機構部に当接したときに円柱型永久磁石を回転させて円柱型永久磁石、上下の鉄製ヨークおよび2個の係止部で施錠用磁気回路を形成して2個の係止部を磁力により吸引固定する。
このような磁気ロック装置とすることで、簡素な構成で解錠用磁気回路と施錠用磁気回路とを形成できるようにした。
【0024】
開閉駆動装置は、リニアモータが一方の引戸駆動用ラックへ開閉駆動力を供給して一方の引戸に開閉駆動力を供給するとともに引戸駆動用ピニオンを回転させ、この引戸駆動用ピニオンを介して他方の引戸駆動用ラックが他方の引戸に開閉駆動力を供給するようにしても良い。
【0025】
また、開閉駆動装置は、引戸駆動用モータがピニオンを回転駆動することで、一方の引戸駆動用ラックへ開閉駆動力を供給して一方の引戸に開閉駆動力を供給するとともに、他方の引戸駆動用ラックが他方の引戸に開閉駆動力を供給するようにしても良い。
【発明の効果】
【0026】
総じて、本発明によれば、構成が簡素であるにも拘わらず、左右の引戸に十分な開閉駆動力を付与するとともにラッチ錠の施錠・解錠に要する力を低減する構成とし、製造の容易化・操作性の向上・安全性の向上・静音化をともに実現させた車両用引戸開閉装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置の構成を説明する構成図である。
【図2】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置の開閉駆動装置の構成図である。
【図3】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置の引戸が開いた状態の説明図である。
【図4】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置の他の開閉駆動装置の構成図である。
【図5】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置のロック装置の正面図である。
【図6】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置のロック装置の平面図である。
【図7】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置のロック装置のA−A線断面図である。
【図8】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置のロック装置のB−B線断面図である。
【図9】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置のロック装置の一部破断図である。
【図10】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置のロック装置のC−C線断面図である。
【図11】ロック装置の解除状態の内部構造図である。
【図12】ロック装置の解除状態に形成される解除用磁気回路の説明図である。
【図13】ロック装置の施錠中であって係止部が接触したときの内部構造図である。
【図14】ロック装置の施錠中であって係止部が接触したときに形成される磁気回路の説明図である。
【図15】ロック装置の施錠状態の内部構造図である。
【図16】ロック装置の施錠状態に形成される施錠用磁気回路の説明図である。
【図17】ロック装置のアクチュエータによる解錠動作の説明図である。
【図18】ロック装置における引戸の開放動作を説明する説明図である。
【図19】ロック装置のワイヤ装置による解錠動作の説明図である。
【図20】ロック装置における引戸の開放動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
続いて、本発明を実施するための形態について図を参照しつつ以下に説明する。まず、車両用引戸開閉装置1の全体構造について図1,図2,図3,図4を参照しつつ説明する。車両用引戸開閉装置1は、図1に示すように、ロック装置100、左右一対の引戸200,300、レール移動体400,500、引戸レール600、開閉駆動装置700を少なくとも備えている。
【0029】
ロック装置100は、左右一対の引戸200,300が閉じられたときにこれら左右一対の引戸200,300が開かないようにロックする機能を有している。ロック装置100は大別して磁気ロック装置とラッチ錠昇降ロック装置とからなるがその詳細については後述する。
【0030】
引戸200,300は、それぞれ反対方向へ移動して列車車両の出入口を開閉する。
引戸200は、レール移動体400から吊り下げられている。また、引戸300は、レール移動体500から吊り下げられている。引戸200,300にはそれぞれ戸先ゴム201,301が設けられており(図3参照)、戸閉時に圧着されて戸隙が生じないように封止する。
【0031】
レール移動体400,500は、戸車、ころ、またはスライドレール等を有し、車両本体に設けられた引戸レール600に沿って滑らかに移動できるように構成されている。引戸200,300も、引戸レール600に沿って円滑に移動する。レール移動体400,500の間にロック装置100が位置する。これらレール移動体400、ロック装置100、レール移動体500は、引戸レール600の長手方向に沿って並べて配置される。
【0032】
開閉駆動装置700は、レール移動体400,500を同期させつつ左右に開閉する。開閉駆動装置700は各種あるが、例えば、図2で示すようなリニアモータタイプの開閉駆動装置700を採用しても良い。開閉駆動装置700は、リニアモータ701、リニアモータ701に対して水平移動する可動子702、可動子702と連結される連結体703、連結体703と連結されるとともに水平方向に移動自在に支持される引戸駆動用第1ラック704、引戸駆動用第1ラック704と噛み合う引戸駆動用ピニオン705、引戸駆動用ピニオン705と噛み合うとともに水平方向に移動自在に支持される引戸駆動用第2ラック706、引戸駆動用第2ラック706と連結される連結体707、これら構成が収納される本体708を備える。引戸駆動用第1ラック704および引戸駆動用第2ラック706は本体708内部の略平行な2つの面において歯を対向させつつ互いに平行移動するように取り付けられる。連結体703はレール移動体400にも固定され、連結体707はレール移動体500に固定される。なお、連結体707は引戸駆動用第1ラック704とは接触しないように構成される。開閉駆動装置700の本体708は図示しない車両本体に固定されている。
【0033】
レール移動体400には、連結体703が固定されている。この連結体703において、リニアモータ701の可動子702と引戸駆動用第1ラック704とが固定されている。この可動子702は、リニアモータ701の図示しない固定子が供給する磁力に応じて水平方向に移動する。
【0034】
連結体703に取付られた引戸駆動用第1ラック704は、引戸レール600と平行に移動するように構成されており、引戸駆動用ピニオン705と噛合している。引戸駆動用ピニオン705は、引戸駆動用第2ラック706と噛合する。引戸駆動用ピニオン705は、引戸駆動用第1ラック704が進む方向と逆方向へ引戸駆動用第2ラック706を駆動する。引戸駆動用第2ラック706は、引戸レール600と略平行に移動するように構成されており、連結体707が取り付けられている。連結体707は、レール移動体500に固定されている。
【0035】
このように、リニアモータ701の可動子702から供給される開閉駆動力は、連結体703、レール移動体400を介して、引戸200へ伝達され、また、連結体703、引戸駆動用第1ラック704、引戸駆動用ピニオン705、引戸駆動用第2ラック706、連結体707、レール移動体500を介して、引戸300へ伝達される。
【0036】
次に、本形態の車両用引戸開閉装置1による引戸の開閉について説明する。図1に示すように引戸が閉じられている状態のとき、図2に示すようにリニアモータ701の可動子702が、この可動子702に固定されている連結体703を矢印aの方向(左方向)へ移動させると、引戸200も矢印aの方向へ移動する。
【0037】
一方、連結体703が矢印aの方向(左方向)へ移動すると同時に、引戸駆動用第1ラック704bも矢印aの方向(左方向)へ移動する。引戸駆動用第1ラック704は、引戸駆動用ピニオン705を回転駆動させ、引戸駆動用ピニオン705は、矢印bの方向(右方向)へ引戸駆動用第2ラック706を駆動する。引戸駆動用第2ラック706は、この引戸駆動用第2ラック706に固定されている連結体707を矢印bの方向(右方向)へ駆動し、引戸300は矢印bの方向(右方向)へ駆動する。なお、これら引戸200,300を開く動作は同時に行われる。このようにして引戸200,300は図3で示すように開いた状態となる。
【0038】
また、他の開閉駆動装置として、例えば、図4で示すような回転モータ型の開閉駆動装置700を採用しても良い。この開閉駆動装置700は、例えば、図4で示すように、連結体709、連結体709と連結されるとともに水平方向に移動自在に支持される引戸駆動用第1ラック710、引戸駆動用第1ラック710と噛み合う引戸駆動用ピニオン711、引戸駆動用ピニオン711と噛み合うとともに水平方向に移動自在に支持される引戸駆動用第2ラック712、引戸駆動用第2ラック712と連結される連結体713、引戸駆動用ピニオン711を回転駆動する引戸駆動用モータ714、これら構成が収納される本体715を備える。なお、引戸駆動用モータ714の駆動軸は図4の紙面の垂直方向に伸び、本体は点線により位置関係のみ図示している。引戸駆動用第1ラック710および引戸駆動用第2ラック712は本体715内部の略平行な2つの面において歯が対向しつつ互いに平行移動するように取り付けられる。連結体709はレール移動体400に固定され、連結体713はレール移動体500に固定される。なお、連結体713は引戸駆動用第1ラック710とは接触しないように構成される。開閉駆動装置700の本体715は図示しない車両本体に固定されている。
【0039】
引戸駆動用モータ714が引戸駆動用ピニオン711を回転駆動するようになされている。引戸駆動用ピニオン711は、引戸駆動用第1ラック710および引戸駆動用第2ラック712と噛合している。引戸駆動用ピニオン711が回転すると、引戸駆動用第1ラック710と引戸駆動用第2ラック712とを反対方向へ移動するように駆動する。
【0040】
次に、本形態の車両用引戸開閉装置による引戸の開閉について説明する。図1に示すように引戸が閉じられている状態のとき、図4に示すように引戸駆動用モータ714が引戸駆動用ピニオン711を回転駆動すると、引戸駆動用第1ラック710およびこの引戸駆動用第1ラック710に固定されている連結体709が矢印cの方向(左方向)へ移動し、引戸200も矢印cの方向へ移動する。また、引戸駆動用第2ラック712およびこの引戸駆動用第2ラック712に固定されている連結体713が矢印dの方向(右方向)へ移動し、引戸300も矢印dの方向へ移動する。このようにして引戸200,300は図3で示すように開いた状態となる。
また他の開閉駆動装置700として、例えば、ベルト駆動による装置や送りネジ駆動による装置を採用しても良い。車両用引戸開閉装置1の全体構造はこのようなものである。
【0041】
続いてロック装置100の詳細について図を参照しつつ説明する。まずロック装置100の構成について図5,図6,図7,図8,図9,図10,図11,図12を参照しつつ説明する。なお、以下の説明では、図5に示すように、矢印X方向が左右方向であり、また、矢印Y方向が上下方向であるものとして説明する。また、図7では、係止部402の図示を省略し、ロック装置側面を図示している。
ロック装置100は、背面側ベース101、下側ベース102、上側ベース103、正面側ベース104、鉄製ヨーク105、鉄製ヨーク106、非磁性体107、円柱型永久磁石108、ピニオン109、ラック110、昇降ベース111、スライドレール112、ラッチ錠113、支柱114、係止板115、アクチュエータ116、軸固定部117、弾性体118、インナワイヤ119、アウタワイヤ120、ハンドル装置121、孔部122、孔部123、隙間124、隙間125を備える。
【0042】
図6に示すように、レール移動体400には鉄製のアーム部401を介して係止部402が取り付けられており、また、戸車403が戸車レール600上を移動できるようになされている。また、レール移動体500には鉄製のアーム部501を介して係止部502が取り付けられており、また、戸車503が戸車レール600上を移動できるようになされている。係止部402、ロック装置100、係止部502は、引戸レール600に沿って並べて配置されている。なお、これら係止部402,502は共に磁性体により形成されるものであり、特に図11で示すように上側に突出する突出部402a,502aを有するように形成されている。ロック装置100は、引戸200,300が閉じられると同時に接近するこれら係止部402,502と側面で接触したときに固定することで引戸200,300が閉じた状態を維持するロック機能を果たすものである。
【0043】
続いて各部の構成について説明する。
背面側ベース101は鉄製であって、図7,図8で示すように板体である。車両本体に設けられた台座部800にこの背面側ベース101が固定されることにより、ロック装置100が固定される。この背面側ベース101に対し、鉄製で側面視Π字状の形状を有する下側ベース102と、鉄製で側面視L字状の形状を有する上側ベース103が固定される。図12でも示すように、磁性体により形成される鉄製ヨーク105は下側ベース102に固定される。また、磁性体により形成される鉄製ヨーク106は上側ベース103に固定される。これら鉄製ヨーク105、鉄製ヨーク106の間に板状の2個の非磁性体107が挟まれている。これら鉄製ヨーク105、非磁性体107、鉄製ヨーク106で磁気回路機構部を形成する。
【0044】
この磁気回路機構部の中央では鉄製ヨーク105、鉄製ヨーク106、非磁性体107を貫通する孔部122が形成されており、この孔部122内で円柱型永久磁石108が回転可能に支持されている。正面側ベース104は、これら鉄製ヨーク105、鉄製ヨーク106、非磁性体107を覆うように、下側ベース102、鉄製ヨーク105、非磁性体107、鉄製ヨーク106、上側ベース103に固定される。これら背面側ベース101、下側ベース102、上側ベース103、正面側ベース104、鉄製ヨーク105、鉄製ヨーク106、非磁性体107、円柱型永久磁石108は、本発明の磁気ロック装置を構成する。
【0045】
なお、正面側ベース104にも図8,図10で示すように孔部123が形成されており、孔部123を通じて円柱型永久磁石108にピニオン109が連結固定できるようになされている。円柱型永久磁石108とピニオン109とは同軸に配置されて偏芯なく共に回転するように構成される。
【0046】
図9,図10で示すように、正面側ベース104の正面側ではスライドレール112のレール部が固定されており、スライドレール112の移動部にはさらに昇降ベース111が固定されている。また、正面側ベース104の正面側ではピニオン109が配置され、昇降ベース111の背面側ではラック110が配置固定される。このピニオン109とラック110とが噛み合うように配置される。
【0047】
つまり、スライドレール112の存在により、正面側ベース104に対し昇降ベース111が上下方向に容易に移動するように構成される。また、正面側ベース104に対し昇降ベース111を昇降するように駆動するとラック110に噛み合うピニオン109が回転し、円柱型永久磁石108も回転する。また、逆に円柱型永久磁石108が回転するとピニオン109に噛み合うラック110が上下方向に移動して、昇降ベース111が昇降する。これらピニオン109、ラック110、昇降ベース111、スライドレール112は、本発明の回転動作と上下動動作を変換する変換部を構成する。
【0048】
図8で示すように、昇降ベース111は、鉄製で側面視Γ字状の形状を有し、正面側ベースに対して上下方向に昇降するようになされている。昇降ベース111の先端には図11に示すように正面視Π時錠のラッチ錠113が取り付けられており、戸閉時には下降してラッチ錠113がロック装置100の両側で吸着される係止部402の突出部402aや係止部502の突出部502aの経路上に位置して移動できないよう拘束する。上側ベース103の上側には弾性体118が配置されており、弾性体118にラッチ錠113が当接するとラッチ錠113の下側への移動を拘束してラッチ錠113の左右の突出部113a,113b(図11参照)のみで拘束するようになされている。また、弾性体118が衝突時の衝撃を緩和している。
【0049】
図6,図7で示すように、昇降ベース111の上側には2本の支柱114を介して係止板115が固定されている。係止板115に上下方向の力が加わると昇降ベース111も昇降する。
アクチュエータ116は、正面側ベース104の正面に固定されており、昇降軸は軸固定部117により係止板115に固定されている。アクチュエータ116は、係止板115を昇降させて昇降ベース111の昇降を行う。
これら変換部(ピニオン109、ラック110、昇降ベース111、スライドレール112)、ラッチ錠113、支柱114、係止板115は、本発明のラッチ錠昇降ロック装置を構成する。
【0050】
インナワイヤ119は、図9で示すように、筒状で堅牢な構造のアウタワイヤ120内に挿通されており、アウタワイヤ120内を移動するようになされている。これらインナワイヤ119とアウタワイヤ120とでワイヤ装置を構成する。反対側のハンドル装置121を操作すると、インナワイヤ119を介して係止板115を矢印e方向に引っ張って上昇させ、ラッチ錠昇降ロック装置全体を上昇させる。この場合、インナワイヤ119の引き込み量は、ピニオン109を介して円柱型永久磁石108の回転が約90°となるように調整されている。なお、ハンドル装置121、ワイヤ装置を用いる操作は解錠動作のみであり、引戸200,300の開閉動作は手動で行う。
【0051】
続いて、ロック装置100による施錠・解錠について図1,図3,図11,図12,図13,図14,図15,図16を参照しつつ説明する。なお、図11〜図16は特にロック装置の磁気回路形成や内部構造を明瞭にするため、図示を一部省略している。
まず、図3で示すように、引戸200,300が開かれた解錠状態にあるものとする。この場合、図11で示すようにラッチ錠113は上昇した状態にある。また、円柱型永久磁石108は、図11,図12で示すように水平方向(左右方向)にN極・S極があるものとする。また、係止部402,502は、図11,図12で示すようにロック装置100から十分離れた位置にある。この場合、磁気回路としては、図12で示すように、円柱型永久磁石108と上側の鉄製ヨーク106とで磁気回路を形成するともに、円柱型永久磁石108と下側の鉄製ヨーク105とで磁気回路を形成していている。これらは内部に形成された解錠用磁気回路となる。この解錠用磁気回路の磁力のため円柱型永久磁石108の回転を停止させており、ラッチ錠113は上昇したままで固定されている。なお、ロック装置100の円柱型永久磁石108は、ラッチ錠昇降ロック装置の自重により下降しようとする力が変換されて一方向への初期回転力が付与されているが、解錠用磁気回路による磁気力が初期回転力よりも強いため円柱型永久磁石108は回転せず、ラッチ錠113は上昇位置に保持された状態にある。また、下側の鉄製ヨーク105と上側の鉄製ヨーク106との間では磁気回路が形成されていないので鉄製ヨーク105,106の両側面の吸着力はゼロの状態にある。
【0052】
続いてロック装置100による施錠(解錠状態から施錠状態へ移行する)を行うものとする。開閉駆動装置700が戸閉駆動し、図1で示すように引戸200,300が閉めらる。この場合、図13で示すように、レール移動体400の係止部402が矢印f方向へ移動し、同時にレール移動体500の係止部502が矢印g方向へ移動する。係止部402,502は最終的にロック装置100に当接する。
【0053】
ロック装置100では、詳しくは、図14で示すように、鉄製ヨーク105の側面に突起部105a,105bが形成されている。また、鉄製ヨーク106の側面に突起部106a,106bが形成されている。係止部402が突起部105a,106aに当接すると、隙間124が形成され、また、係止部502が突起部105b,106bに当接すると、隙間125が形成される。隙間124,125により、非磁性体107を挟む上下位置でのみ係止部402,502を当接させて、磁気回路を確実に形成する。
【0054】
この場合、図14で示すように、円柱型永久磁石108のN極から係止部402を通過してN極へ磁力線が戻る磁気回路が形成され、また、円柱型永久磁石108のS極から係止部502を通過してS極へ磁力線が戻る磁気回路が形成されるが、この場合斥力が働くため、斥力が働かないようにしようと円柱型永久磁石108が回転しようとする。
【0055】
回転方向であるが、図15で示すように磁気ロック装置の円柱型永久磁石108は、ラッチ錠昇降ロック装置の自重により下降しようとする力が変換されて一方向(矢印h方向、つまり時計回り)への初期回転力が付与されているため、円柱型永久磁石108が回転するとともに機械的にラッチ錠113が矢印i方向に下降していく。そして、ラッチ錠113が弾性体118に当接するとともに、円柱型永久磁石108は、N極、S極が図15,図16のように垂直方向にあるような位置で停止する。
この場合、図16で示すように、円柱型永久磁石108のN極、上側の鉄製ヨーク106、係止部402、下側の鉄製ヨーク105を経て円柱型永久磁石108のS極へ磁力線が戻る磁気回路を形成しようとし、また、円柱型永久磁石108のN極、上側の鉄製ヨーク106、係止部502、下側の鉄製ヨーク105を経て円柱型永久磁石108のS極へ磁力線が戻る磁気回路を形成し、安定する。このため、円柱型永久磁石108は移動しないで維持しようとする。これら磁気回路は施錠用磁気回路となる。また、これら施錠用磁気回路の磁力により係止部402,502はロック装置100に吸着固定されることとなる。
【0056】
さらに、円柱型永久磁石108とともに回転するピニオン109の回転動作が、ラック110の下降動作に変換され、ラッチ錠113が図15の矢印i方向に移動して下降し、弾性体118にラッチ錠113が当接して停止することとなる。この停止位置は円柱型永久磁石108が90°回転するように調整されている。この場合、図15の円部に示すように、係止部402,502の突出部402a,502aと、ラッチ錠の突出部113a,113bとは僅かな隙間dが形成される。このような位置決めは、施錠磁気回路により常に同じ位置にて強固に固定される係止部402,502の突出部402a,502aを基準とするため容易である。
上記した施錠用磁気回路形成による吸着とラッチ錠113の下降は円柱形永久磁石108の回転終了と同時に達成される。
【0057】
このように係止部402,502の移動経路上にラッチ錠113の突出部113a,113bが位置するため、ロック装置100から外れないようにしている。万が一に施錠中に施錠用磁気回路が開かれて解錠した場合や吸着が不完全であった場合でも引戸200,300の移動は僅かな隙間dの距離程度となり隙間d以上は開かない構造としている。このような隙間dの移動も戸先ゴム201,301の変形で吸収されるため、引戸200,300に戸隙が生じるような事態は生じない。本発明ではラッチ錠113の隙間dにより、ラッチ錠113が弾性体118に当接する以外にはラッチ錠113は機械的な接触がないため機械的抵抗が殆どなくなり、昇降動作は少ない力で滑らかに行われる。
【0058】
このように施錠時は、磁気ロック装置で磁気により係止部402,502を強固に吸引固定する磁気ロックを行うために引戸200,300は強固に固定される。この場合、係止部402,502に対するアーム401,501の取り付け位置を調節するという容易な調整により最適位置で引戸200,300が閉められるため、引戸200,300は一定の戸閉位置で強固に閉められる。
また、磁気ロックと同時に、ラッチ錠103により施錠するラッチ錠ロックを行うが、磁気ロックにより強固に固定されているため、ラッチ錠ロックは隙間dを空けて経路上にラッチ錠103の一部である突出部103a,103bが位置するようにして機械的に干渉する程度でよく、機械的に接触しないラッチ錠103の昇降をスムーズにしている。磁気ロックに加えてラッチ錠ロックを併用することで、引戸200,300が万が一にも開くような事態を防止する。
【0059】
続いてロック装置による通常の解錠(施錠状態から解錠状態へ移行する)を行うものとする。前提として解錠状態では、図15で示すように、係止部402,502はロック装置100の側面に当接した状態である。また、ラッチ錠113は下降した状態である。例えば、引戸200,300に対する開指令がなされると、まず、アクチュエータ116は、図17で示すように、矢印j方向に距離Xmm移動させるように駆動して係止部115を上昇させる。
【0060】
さらに、係止部115の上昇とともに移動する図17の矢印j方向のラック110の上昇動作が、円柱型永久磁石108とともに矢印k方向(反時計回り)に回転するピニオン109の回転動作に変換される。円柱型永久磁石108は90°回転する。この場合、磁気回路としては、下側の鉄製ヨーク105と上側の鉄製ヨーク106との間では磁気回路が消えるため鉄製ヨーク105,106の両側面の吸着力はゼロの状態となり、吸着状態から解放される。
【0061】
続いて、開閉駆動装置700が戸開駆動し、図3で示すように引戸200,300が開けられる。この場合、図18で示すように、レール移動体400の係止部402が矢印l方向へ移動し、同時にレール移動体500の係止部502が矢印m方向へ移動する。
【0062】
また、図12で示すように、円柱型永久磁石108と上側の鉄製ヨーク106とで磁気回路を形成するともに、円柱型永久磁石108と下側の鉄製ヨーク105とで磁気回路を形成している。この解錠用磁気回路の磁力のため円柱型永久磁石108の回転を停止させており、ラッチ錠113は上昇したままで固定されている。従って、アクチュエータ116の通電時間は戸開操作から係止部402,502が離れた直後までの僅かな時間のみで良い。
【0063】
このようにラッチ錠113の上昇と同時に施錠用磁気回路を開いて係止部402,502へのロック装置100による強固な吸引を外し、その後に係止部402,502が容易に離れるようにしている。この場合でも、ラッチ錠113の突出部113a,113bと係止部402,502の突出部402a,502aに形成される隙間dにより、ラッチ錠113へは機械的な抵抗が殆ど加わらないため、上昇動作は少ない力で滑らかに行われることとなる。
このように解錠時は、ラッチ錠113の上昇とともにロック装置100による係止部402,502の磁力により吸引固定を解くため、少ない力で高速に開動作を行うことができる。
【0064】
続いてロック装置100による非常時の解錠(施錠状態から解錠状態へ移行する)を行うものとする。非常時の解錠では図9に示すハンドル装置(非常コック)121により解錠するものである。前提として解錠状態では図15で示すように、係止部402,502はロック装置100の側面に当接した状態である。また、ラッチ錠113は下降した状態である。例えば、ハンドル装置121にてハンドル操作がなされると、まず、図19で示すように、インナワイヤ119は矢印n方向に駆動して係止板115を距離Xmm上昇させるとラッチ錠113も上昇して解錠状態となる。インナワイヤ119はこのように引っ張られた状態でハンドル装置121のストッパにより固定される。
このラッチ錠113の上昇とともに移動する図19の矢印o方向のラック110の上昇動作が、円柱型永久磁石108の矢印p方向(反時計回り)に回転するピニオン109の回転動作に変換される。円柱型永久磁石108は矢印p方向(反時計回り)に90°回転する。
【0065】
この場合、磁気回路としては、図12で示すように、円柱型永久磁石108と上側の鉄製ヨーク106とで磁気回路を形成するともに、円柱型永久磁石108と下側の鉄製ヨーク105とで磁気回路を形成していている。これら磁気回路は解除用磁気回路を構成する。この解除用磁気回路の磁力のため円柱型永久磁石108の回転を停止させており、ラッチ錠113は上昇したままで固定されている。そして先ほども説明したようにストッパによりインナワイヤ119が移動しないようになされて係止板115は下降しないように固定されており、円柱型永久磁石108は回転しないようになっている。
【0066】
続いて、手動で引戸200,300を開く。上記のように施錠用磁気回路に代えて解除用磁気回路となっているため、僅かな力でも係止部402,502はロック装置100から離脱する。そして、図20で示すように、レール移動体400の係止部402が矢印q方向へ移動し、同時にレール移動体500の係止部502が矢印r方向へ移動する。ハンドル操作がされている間はロックが外れるようになされる。なお、ハンドル装置121においてハンドルがストッパにより固定されているならば、この状態で引戸200,300を手動で再度閉じてもロック装置100による吸着・施錠はされない。
【0067】
このようにラッチ錠113の上昇と同時に施錠用磁気回路を開いて係止部402,502へのロック装置100による強固な吸引を外し、その後に係止部402,502が容易に離れるようにしている。この場合でも、ラッチ錠113の突出部113a,113bと係止部402,502の突出部402a,502aに形成される隙間dにより、ラッチ錠113へは機械的な抵抗が加わらないため、昇降動作は少ない力で滑らかに行われる。
このように解錠時は、ラッチ錠113の上昇とともにロック装置100による係止部402,502の固定を解くため少ない力で高速に開動作を行うことができる。
【0068】
そして、ハンドル装置121のハンドルを元の位置に戻すと、インナワイヤ119の引っ張りはなくなるが、ラッチ錠113は円柱形永久磁石108が解錠用磁気回路を形成して上昇位置を保持して解錠状態となっている。したがって、引戸200,300を手動で閉じることが可能となるが、閉めると施錠・吸着して施錠状態となる。
【0069】
以上本発明の車両用引戸開閉装置について説明した。この車両用引戸開閉装置は、従来技術と比較して以下のような優位点を有する。
【0070】
(1)本発明の車両用引戸開閉装置では引戸の係止部がロック装置に当接すると吸着と同時に施錠が行われて引戸がロックされる。特に施錠用磁気回路では係止部が磁気ロック装置に近づくにつれて極端に吸着力が強くなる特性があるので、従来方式に比較して吸着力が大幅に増加しており、左右の戸先ゴムを充分に潰して戸隙が生じることがなく、また、ラッチ錠が下降できないという事態も生じない。さらに、戸先ゴムの潰し量による抵抗、また、音止機能、風止機能、振止機能等を果たす振動防止部の抵抗が増加しても施錠できる。また、移動レールとアームとの取り付け位置をねじ部により調節すれば抵抗力の調整も容易である。
【0071】
(2)さらに、引戸の間に障害物が挟まれると、磁気ロック装置への係止部の接触が阻害されるので施錠用磁気回路が形成されず、円柱形永久磁石も移動しないためラッチ錠も下降せず、施錠に至ることはないので戸挟み検知精度が大幅に向上する。この結果、従来からの課題であった施錠と戸挟み検知という相反する問題は解決される。
【0072】
(3)また、従来技術のドアロック装置のように移動しないように機械的に拘束するのではなく、磁気吸着された係止部の経路上に僅かな隙間を開くような箇所で位置するようにしたため、引戸が開く事態を防止する目的を達成しつつ、機械的な接触を少なくしており、少ない力で静かに施錠・解錠を行うことができる。また、従来ではラッチ錠の昇降にバネを用いていたが、本発明では施錠用磁気回路形成の磁力によるラッチ錠の下降や解錠用磁気回路形成の磁力によるラッチ錠の上昇をおこなうため、やはり静音化を可能としている。さらにラッチ錠が下降したときに弾性体と接して位置決めされるため、やはり静音化を可能としている。
【0073】
(4)また、施錠時のラッチ錠には施錠時磁気回路の磁力しか負荷されず、この負荷は引戸の反力の影響もない。この結果、非常時の手動ハンドル操作によってもアウタワイヤが変形することもなく、従来技術のようにインナワイヤが規定値以上に伸びて相対的にインナワイヤが引き込めないで解錠できないという従来の課題は解決できる。
【0074】
(5)さらに、戸閉速度によるドア慣性力が仮にゼロでも吸着は可能となることにより施錠時の衝突音を減音することができる。
【0075】
(6)解錠時は施錠用磁気回路の形成により生じる偶力を上回る力でラッチ錠を上昇させるだけでよく、またドア反力の影響もないので解錠力は少ない力でよく、そのため別設置の小形アクチェータの採用が可能となった。この結果、解錠時の金属接触音を減音することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、特に列車・電車の車両の引戸の開閉に利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1:車両用引戸開閉装置
100:ロック装置
101:背面側ベース
102:下側ベース
103:上側ベース
104:正面側ベース
105:鉄製ヨーク
106:鉄製ヨーク
107:非磁性体
108:円柱型永久磁石
109:ピニオン
110:ラック
111:昇降ベース
112:スライドレール
113:ラッチ錠
113a,113b:突出部
114:支柱
115:係止板
116:アクチュエータ
117:軸固定部
118:弾性体
119:インナワイヤ
120:アウタワイヤ
121:ハンドル装置
122:孔部
123:孔部
124:隙間
125:隙間
200:引戸
201:戸先ゴム
300:引戸
301:戸先ゴム
400:レール移動体
401:アーム部
402:係止部
402a:突出部
403:戸車
500:レール移動体
501:アーム部
502:係止部
502a:突出部
503:戸車
600:引戸レール
700:開閉駆動装置
701:リニアモータ
702:可動子
703:連結体
704:引戸駆動用第1ラック
705:引戸駆動用ピニオン
706:引戸駆動用第2ラック
707:連結体
708:本体
709:連結体
710:引戸駆動用第1ラック
711:引戸駆動用ピニオン
712:引戸駆動用第2ラック
713:連結体
714:引戸駆動用モータ
715:本体
800:台座部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の引戸を開閉するための車両用引戸開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用引戸開閉装置の従来技術が、例えば、特許文献1(特開2000−142392号公報,発明の名称「車両用引戸開閉装置」)に開示されている。特許文献1の車両用引戸開閉装置は引戸の開閉と連動して施錠・解錠を行うドアロック装置を備える。このドアロック装置は、ラッチ錠を孔部(ロックホール)内に落下させて引戸が開閉しないように施錠するものである。このドアロック装置は、さらにワイヤ装置にてラッチ錠を上昇させるように構成し、ハンドル装置を手動で操作して解錠できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−142392号公報(図15,図16)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の車両用引戸開閉装置では、孔部の上側に正確にラッチ錠を位置決めした後でラッチ錠を下降させる必要があるが、この位置決めは、以下に説明するように容易ではなかった。
(1)戸挟み事故の対策として、左右の引戸には戸先ゴムが設けられており、戸閉時には戸先ゴムを圧縮変形させて隙間が生じないようにしている。しかしながら、戸閉時における戸先ゴムの潰し量が大きい場合に引戸に加わる抵抗力が大きくなって、ラッチ錠が孔部の上側からずれてしまい、ラッチ錠による施錠ができなくなるおそれがあるという問題があった。
【0005】
(2)また、車両走行時(つまり戸閉時)に引戸に当接して音止機能、風止機能、振止機能等を果たす振動防止部が設けられているが、これら振動防止部が戸閉時に想定値より大きい力を付与する場合にも引戸に加わる抵抗力が大きくなって、ラッチ錠が孔部の上側からずれてしまい、ラッチ錠による施錠ができなくなるおそれがあるという問題があった。
【0006】
(3)また、逆に、戸先ゴムの潰し量が小さいため引戸に加わる抵抗力が小さい場合や、振動防止部が戸閉時に想定値より小さい力を付与するため引戸に加わる抵抗力が小さい場合は、規定の障害物を挟んだときでも抵抗力が規定内に収まってラッチ錠を施錠することとなり、戸挟み検知試験に不合格になるという問題があった。
【0007】
(4)前述の(1)〜(3)で述べたとおり、引戸に加わる抵抗力が小さくても大きくても問題となるため、所定範囲内に収まるように調整する必要があるが、孔部の上側に正確にラッチ錠を位置決めさせつつ、双方を満足させるような抵抗力を付与する調整作業は容易ではないという問題があった。
【0008】
(5)調整作業を容易にするため、左右の戸先ゴム間にスキマを設ける構造を採用し、施錠と規定の戸挟み検知精度の両方を満足させることが考えられるが、左右突き合わせ形状の戸先ゴムではそのスキマ(戸隙)から水・風が浸入したり、音が発生するという問題があり、採用しにくい事情を有していた。
【0009】
(6)従来技術のドアロック装置を施錠するとき、ある戸閉速度で締まる引戸の慣性力での押し込み力を用いてラッチ錠をバネ圧で落下させて施錠させる方式であるため、落下音及び衝突音が大きいという問題があった。
【0010】
(7)従来技術のドアロック装置を解錠するとき、ラッチ錠を引っ張るバネ圧力の他にラッチ錠に加わっている大きなドア反力を上回る力が必要なことから、金属接触音が大きいという問題があった。
【0011】
(8)戸閉時には圧縮された戸先ゴムからの反力などが引戸に加わっており、施錠時のロック装置でラッチ錠へは大きなドア反力が加わってラッチ錠は移動しづらくなっている。このようなドア反力が大きい状況で非常時にハンドル操作すると、場合によってはアウタワイヤが縮んで相対的にインナワイヤが引き込めないことがあり、非常時に解錠できないおそれがあるという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、構成が簡素であるにも拘わらず、左右の引戸に十分な開閉駆動力を付与するとともにラッチ錠の施錠・解錠に要する力を低減する構成とし、製造の容易化・操作性の向上・安全性の向上・静音化をともに実現させた車両用引戸開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の特徴をなす車両用引戸開閉装置は、以下のようになる。
まず、円柱型永久磁石が回転可能に支持される磁気ロック装置を備える。さらに、磁気ロック装置の円柱型永久磁石の回転動作とラッチ錠の昇降動作とを相互に変換するラッチ錠昇降ロック装置を備える。このような車両用引戸開閉装置では、2枚の引戸が開けられて磁気ロック装置の両側から2個の係止部が離れている解錠状態のとき、磁気ロック装置は、内部に解錠用磁気回路を形成するように円柱型永久磁石を回転固定し、また、ラッチ錠昇降ロック装置は、円柱型永久磁石の固定に応じてラッチ錠を上昇位置にて固定する。また、2枚の引戸が閉じられて磁気ロック装置の両側から2個の係止部が当接する施錠状態のとき、磁気ロック装置は、両側から当接する2個の係止部とともに内部に施錠用磁気回路を形成するように円柱型永久磁石を回転固定しつつ2個の係止部を磁力により吸引固定し、また、ラッチ錠昇降ロック装置は、円柱型永久磁石の固定に応じてラッチ錠を下降位置にて固定しつつラッチ錠により磁気ロック装置から2個の係止部の離脱を防止するよう拘束する。
磁気的な力により係止部を強固に吸引固定する。また、ラッチ錠により係止部が移動しないように確実に拘束する。
【0014】
また、2枚の引戸が開けられて磁気ロック装置の両側から2個の係止部が離れている解錠状態のとき、磁気ロック装置の円柱型永久磁石は、上昇したラッチ錠の自重から受ける下降力が変換部により変換されて、一の回転方向へ回転しようとする初期回転力が付与された状態にある。これにより、円柱型永久磁石はラッチ錠が下降する方向に回転する力が付与されていることとなる。
【0015】
さらに、磁気ロック装置の円柱型永久磁石は、内部で形成した解錠用磁気回路により初期回転力を上回る固定力が付与されて固定され、その結果、ラッチ錠昇降ロック装置はラッチ錠の上昇位置を維持する。これにより、解錠状態のときは、初期回転力に拘わらず、ラッチ錠を上昇位置に維持するように固定されることとなる。
【0016】
また、2枚の引戸が閉じられて磁気ロック装置の両側から2個の係止部が当接する施錠状態へ解錠状態から移行するとき、磁気ロック装置は、両側から当接する2個の係止部とともに内部に施錠用磁気回路を形成するように円柱型永久磁石に回転力を加えつつ回転させて施錠用磁気回路の形成と同時に2個の係止部を磁力により吸引固定し、また、ラッチ錠昇降ロック装置は、円柱型永久磁石の回転力をラッチ錠の下降力に変換して下降させたラッチ錠により2個の係止部と磁気ロック装置とを拘束させる。このように、施錠するときは、円柱型永久磁石の回転により磁気力の付与とラッチ錠の下降が行われる。
【0017】
ラッチ錠昇降ロック装置は、アクチュエータがラッチ錠を上昇させてラッチ錠による拘束を解除し、かつ、ラッチ錠の上昇動作を円柱型永久磁石の回転動作に変換して施錠磁気回路を開いて2個の係止部の磁気吸引による拘束を解除する。ラッチ錠は強固な力を付与するものではないため、小形のアクチュエータの小さな力でもラッチ錠の上昇を行うことができる。
【0018】
また、ラッチ錠昇降ロック装置は、ラッチ錠の上昇動作を行うワイヤ装置を備え、ワイヤ装置がラッチ錠を上昇させてラッチ錠による拘束を解除し、かつ、ラッチ錠の上昇動作を円柱型永久磁石の回転動作に変換して施錠磁気回路を開いて2個の係止部の磁気吸引による拘束を解除する。ラッチ錠は強固な力を付与するものではないため、ワイヤ装置の小さな力でもラッチ錠の上昇を行うことができる。
【0019】
また、ラッチ錠昇降ロック装置のワイヤ装置は、ワイヤ装置のインナワイヤを移動させるハンドル装置を備え、ハンドル装置のハンドル操作によりインナワイヤを移動させるようにしている。非常時に手動操作で確実に容易にラッチを外すことができる。また、力が少なくてすむためアウタワイヤやインナワイヤが変形することがない。
【0020】
また、ストッパによりインナワイヤが移動しないように固定すると、ラッチ錠昇降ロック装置によるラッチ錠の下降およびそれに伴う磁気ロック装置の円柱型永久磁石の回転を防止し、その結果、施錠用磁気回路形成を防止する。これにより、ラッチ錠の上昇位置においてストッパで固定される間は、2枚の引戸を手動で開閉可能とする。
【0021】
また、ハンドル装置を操作してラッチ錠の拘束を解除したときに解錠用磁気回路によりラッチ錠は上昇位置に保持されるが、一旦、2枚の引戸を手動で閉めると施錠用磁気回路を形成して施錠される。
【0022】
このラッチ錠昇降ロック装置の変換部は、円柱型永久磁石の回転軸と同軸となるように取り付けられるピニオンと、ピニオンに噛み合うとともにラッチ錠の昇降方向に伸びるように取り付けられるラックと、を含む。このような簡素な機構により変換部を形成することができる。
【0023】
磁気ロック装置は、2個の係止部が磁気回路機構部から離脱したときに円柱型永久磁石と上側の鉄製ヨークとで解錠用磁気回路を形成するとともに円柱型永久磁石と下側の鉄製ヨークとで解錠用磁気回路を形成して円柱型永久磁石の回転を停止させてラッチ錠を固定する。
また、2個の係止部が磁気回路機構部に当接したときに円柱型永久磁石を回転させて円柱型永久磁石、上下の鉄製ヨークおよび2個の係止部で施錠用磁気回路を形成して2個の係止部を磁力により吸引固定する。
このような磁気ロック装置とすることで、簡素な構成で解錠用磁気回路と施錠用磁気回路とを形成できるようにした。
【0024】
開閉駆動装置は、リニアモータが一方の引戸駆動用ラックへ開閉駆動力を供給して一方の引戸に開閉駆動力を供給するとともに引戸駆動用ピニオンを回転させ、この引戸駆動用ピニオンを介して他方の引戸駆動用ラックが他方の引戸に開閉駆動力を供給するようにしても良い。
【0025】
また、開閉駆動装置は、引戸駆動用モータがピニオンを回転駆動することで、一方の引戸駆動用ラックへ開閉駆動力を供給して一方の引戸に開閉駆動力を供給するとともに、他方の引戸駆動用ラックが他方の引戸に開閉駆動力を供給するようにしても良い。
【発明の効果】
【0026】
総じて、本発明によれば、構成が簡素であるにも拘わらず、左右の引戸に十分な開閉駆動力を付与するとともにラッチ錠の施錠・解錠に要する力を低減する構成とし、製造の容易化・操作性の向上・安全性の向上・静音化をともに実現させた車両用引戸開閉装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置の構成を説明する構成図である。
【図2】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置の開閉駆動装置の構成図である。
【図3】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置の引戸が開いた状態の説明図である。
【図4】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置の他の開閉駆動装置の構成図である。
【図5】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置のロック装置の正面図である。
【図6】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置のロック装置の平面図である。
【図7】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置のロック装置のA−A線断面図である。
【図8】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置のロック装置のB−B線断面図である。
【図9】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置のロック装置の一部破断図である。
【図10】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置のロック装置のC−C線断面図である。
【図11】ロック装置の解除状態の内部構造図である。
【図12】ロック装置の解除状態に形成される解除用磁気回路の説明図である。
【図13】ロック装置の施錠中であって係止部が接触したときの内部構造図である。
【図14】ロック装置の施錠中であって係止部が接触したときに形成される磁気回路の説明図である。
【図15】ロック装置の施錠状態の内部構造図である。
【図16】ロック装置の施錠状態に形成される施錠用磁気回路の説明図である。
【図17】ロック装置のアクチュエータによる解錠動作の説明図である。
【図18】ロック装置における引戸の開放動作を説明する説明図である。
【図19】ロック装置のワイヤ装置による解錠動作の説明図である。
【図20】ロック装置における引戸の開放動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
続いて、本発明を実施するための形態について図を参照しつつ以下に説明する。まず、車両用引戸開閉装置1の全体構造について図1,図2,図3,図4を参照しつつ説明する。車両用引戸開閉装置1は、図1に示すように、ロック装置100、左右一対の引戸200,300、レール移動体400,500、引戸レール600、開閉駆動装置700を少なくとも備えている。
【0029】
ロック装置100は、左右一対の引戸200,300が閉じられたときにこれら左右一対の引戸200,300が開かないようにロックする機能を有している。ロック装置100は大別して磁気ロック装置とラッチ錠昇降ロック装置とからなるがその詳細については後述する。
【0030】
引戸200,300は、それぞれ反対方向へ移動して列車車両の出入口を開閉する。
引戸200は、レール移動体400から吊り下げられている。また、引戸300は、レール移動体500から吊り下げられている。引戸200,300にはそれぞれ戸先ゴム201,301が設けられており(図3参照)、戸閉時に圧着されて戸隙が生じないように封止する。
【0031】
レール移動体400,500は、戸車、ころ、またはスライドレール等を有し、車両本体に設けられた引戸レール600に沿って滑らかに移動できるように構成されている。引戸200,300も、引戸レール600に沿って円滑に移動する。レール移動体400,500の間にロック装置100が位置する。これらレール移動体400、ロック装置100、レール移動体500は、引戸レール600の長手方向に沿って並べて配置される。
【0032】
開閉駆動装置700は、レール移動体400,500を同期させつつ左右に開閉する。開閉駆動装置700は各種あるが、例えば、図2で示すようなリニアモータタイプの開閉駆動装置700を採用しても良い。開閉駆動装置700は、リニアモータ701、リニアモータ701に対して水平移動する可動子702、可動子702と連結される連結体703、連結体703と連結されるとともに水平方向に移動自在に支持される引戸駆動用第1ラック704、引戸駆動用第1ラック704と噛み合う引戸駆動用ピニオン705、引戸駆動用ピニオン705と噛み合うとともに水平方向に移動自在に支持される引戸駆動用第2ラック706、引戸駆動用第2ラック706と連結される連結体707、これら構成が収納される本体708を備える。引戸駆動用第1ラック704および引戸駆動用第2ラック706は本体708内部の略平行な2つの面において歯を対向させつつ互いに平行移動するように取り付けられる。連結体703はレール移動体400にも固定され、連結体707はレール移動体500に固定される。なお、連結体707は引戸駆動用第1ラック704とは接触しないように構成される。開閉駆動装置700の本体708は図示しない車両本体に固定されている。
【0033】
レール移動体400には、連結体703が固定されている。この連結体703において、リニアモータ701の可動子702と引戸駆動用第1ラック704とが固定されている。この可動子702は、リニアモータ701の図示しない固定子が供給する磁力に応じて水平方向に移動する。
【0034】
連結体703に取付られた引戸駆動用第1ラック704は、引戸レール600と平行に移動するように構成されており、引戸駆動用ピニオン705と噛合している。引戸駆動用ピニオン705は、引戸駆動用第2ラック706と噛合する。引戸駆動用ピニオン705は、引戸駆動用第1ラック704が進む方向と逆方向へ引戸駆動用第2ラック706を駆動する。引戸駆動用第2ラック706は、引戸レール600と略平行に移動するように構成されており、連結体707が取り付けられている。連結体707は、レール移動体500に固定されている。
【0035】
このように、リニアモータ701の可動子702から供給される開閉駆動力は、連結体703、レール移動体400を介して、引戸200へ伝達され、また、連結体703、引戸駆動用第1ラック704、引戸駆動用ピニオン705、引戸駆動用第2ラック706、連結体707、レール移動体500を介して、引戸300へ伝達される。
【0036】
次に、本形態の車両用引戸開閉装置1による引戸の開閉について説明する。図1に示すように引戸が閉じられている状態のとき、図2に示すようにリニアモータ701の可動子702が、この可動子702に固定されている連結体703を矢印aの方向(左方向)へ移動させると、引戸200も矢印aの方向へ移動する。
【0037】
一方、連結体703が矢印aの方向(左方向)へ移動すると同時に、引戸駆動用第1ラック704bも矢印aの方向(左方向)へ移動する。引戸駆動用第1ラック704は、引戸駆動用ピニオン705を回転駆動させ、引戸駆動用ピニオン705は、矢印bの方向(右方向)へ引戸駆動用第2ラック706を駆動する。引戸駆動用第2ラック706は、この引戸駆動用第2ラック706に固定されている連結体707を矢印bの方向(右方向)へ駆動し、引戸300は矢印bの方向(右方向)へ駆動する。なお、これら引戸200,300を開く動作は同時に行われる。このようにして引戸200,300は図3で示すように開いた状態となる。
【0038】
また、他の開閉駆動装置として、例えば、図4で示すような回転モータ型の開閉駆動装置700を採用しても良い。この開閉駆動装置700は、例えば、図4で示すように、連結体709、連結体709と連結されるとともに水平方向に移動自在に支持される引戸駆動用第1ラック710、引戸駆動用第1ラック710と噛み合う引戸駆動用ピニオン711、引戸駆動用ピニオン711と噛み合うとともに水平方向に移動自在に支持される引戸駆動用第2ラック712、引戸駆動用第2ラック712と連結される連結体713、引戸駆動用ピニオン711を回転駆動する引戸駆動用モータ714、これら構成が収納される本体715を備える。なお、引戸駆動用モータ714の駆動軸は図4の紙面の垂直方向に伸び、本体は点線により位置関係のみ図示している。引戸駆動用第1ラック710および引戸駆動用第2ラック712は本体715内部の略平行な2つの面において歯が対向しつつ互いに平行移動するように取り付けられる。連結体709はレール移動体400に固定され、連結体713はレール移動体500に固定される。なお、連結体713は引戸駆動用第1ラック710とは接触しないように構成される。開閉駆動装置700の本体715は図示しない車両本体に固定されている。
【0039】
引戸駆動用モータ714が引戸駆動用ピニオン711を回転駆動するようになされている。引戸駆動用ピニオン711は、引戸駆動用第1ラック710および引戸駆動用第2ラック712と噛合している。引戸駆動用ピニオン711が回転すると、引戸駆動用第1ラック710と引戸駆動用第2ラック712とを反対方向へ移動するように駆動する。
【0040】
次に、本形態の車両用引戸開閉装置による引戸の開閉について説明する。図1に示すように引戸が閉じられている状態のとき、図4に示すように引戸駆動用モータ714が引戸駆動用ピニオン711を回転駆動すると、引戸駆動用第1ラック710およびこの引戸駆動用第1ラック710に固定されている連結体709が矢印cの方向(左方向)へ移動し、引戸200も矢印cの方向へ移動する。また、引戸駆動用第2ラック712およびこの引戸駆動用第2ラック712に固定されている連結体713が矢印dの方向(右方向)へ移動し、引戸300も矢印dの方向へ移動する。このようにして引戸200,300は図3で示すように開いた状態となる。
また他の開閉駆動装置700として、例えば、ベルト駆動による装置や送りネジ駆動による装置を採用しても良い。車両用引戸開閉装置1の全体構造はこのようなものである。
【0041】
続いてロック装置100の詳細について図を参照しつつ説明する。まずロック装置100の構成について図5,図6,図7,図8,図9,図10,図11,図12を参照しつつ説明する。なお、以下の説明では、図5に示すように、矢印X方向が左右方向であり、また、矢印Y方向が上下方向であるものとして説明する。また、図7では、係止部402の図示を省略し、ロック装置側面を図示している。
ロック装置100は、背面側ベース101、下側ベース102、上側ベース103、正面側ベース104、鉄製ヨーク105、鉄製ヨーク106、非磁性体107、円柱型永久磁石108、ピニオン109、ラック110、昇降ベース111、スライドレール112、ラッチ錠113、支柱114、係止板115、アクチュエータ116、軸固定部117、弾性体118、インナワイヤ119、アウタワイヤ120、ハンドル装置121、孔部122、孔部123、隙間124、隙間125を備える。
【0042】
図6に示すように、レール移動体400には鉄製のアーム部401を介して係止部402が取り付けられており、また、戸車403が戸車レール600上を移動できるようになされている。また、レール移動体500には鉄製のアーム部501を介して係止部502が取り付けられており、また、戸車503が戸車レール600上を移動できるようになされている。係止部402、ロック装置100、係止部502は、引戸レール600に沿って並べて配置されている。なお、これら係止部402,502は共に磁性体により形成されるものであり、特に図11で示すように上側に突出する突出部402a,502aを有するように形成されている。ロック装置100は、引戸200,300が閉じられると同時に接近するこれら係止部402,502と側面で接触したときに固定することで引戸200,300が閉じた状態を維持するロック機能を果たすものである。
【0043】
続いて各部の構成について説明する。
背面側ベース101は鉄製であって、図7,図8で示すように板体である。車両本体に設けられた台座部800にこの背面側ベース101が固定されることにより、ロック装置100が固定される。この背面側ベース101に対し、鉄製で側面視Π字状の形状を有する下側ベース102と、鉄製で側面視L字状の形状を有する上側ベース103が固定される。図12でも示すように、磁性体により形成される鉄製ヨーク105は下側ベース102に固定される。また、磁性体により形成される鉄製ヨーク106は上側ベース103に固定される。これら鉄製ヨーク105、鉄製ヨーク106の間に板状の2個の非磁性体107が挟まれている。これら鉄製ヨーク105、非磁性体107、鉄製ヨーク106で磁気回路機構部を形成する。
【0044】
この磁気回路機構部の中央では鉄製ヨーク105、鉄製ヨーク106、非磁性体107を貫通する孔部122が形成されており、この孔部122内で円柱型永久磁石108が回転可能に支持されている。正面側ベース104は、これら鉄製ヨーク105、鉄製ヨーク106、非磁性体107を覆うように、下側ベース102、鉄製ヨーク105、非磁性体107、鉄製ヨーク106、上側ベース103に固定される。これら背面側ベース101、下側ベース102、上側ベース103、正面側ベース104、鉄製ヨーク105、鉄製ヨーク106、非磁性体107、円柱型永久磁石108は、本発明の磁気ロック装置を構成する。
【0045】
なお、正面側ベース104にも図8,図10で示すように孔部123が形成されており、孔部123を通じて円柱型永久磁石108にピニオン109が連結固定できるようになされている。円柱型永久磁石108とピニオン109とは同軸に配置されて偏芯なく共に回転するように構成される。
【0046】
図9,図10で示すように、正面側ベース104の正面側ではスライドレール112のレール部が固定されており、スライドレール112の移動部にはさらに昇降ベース111が固定されている。また、正面側ベース104の正面側ではピニオン109が配置され、昇降ベース111の背面側ではラック110が配置固定される。このピニオン109とラック110とが噛み合うように配置される。
【0047】
つまり、スライドレール112の存在により、正面側ベース104に対し昇降ベース111が上下方向に容易に移動するように構成される。また、正面側ベース104に対し昇降ベース111を昇降するように駆動するとラック110に噛み合うピニオン109が回転し、円柱型永久磁石108も回転する。また、逆に円柱型永久磁石108が回転するとピニオン109に噛み合うラック110が上下方向に移動して、昇降ベース111が昇降する。これらピニオン109、ラック110、昇降ベース111、スライドレール112は、本発明の回転動作と上下動動作を変換する変換部を構成する。
【0048】
図8で示すように、昇降ベース111は、鉄製で側面視Γ字状の形状を有し、正面側ベースに対して上下方向に昇降するようになされている。昇降ベース111の先端には図11に示すように正面視Π時錠のラッチ錠113が取り付けられており、戸閉時には下降してラッチ錠113がロック装置100の両側で吸着される係止部402の突出部402aや係止部502の突出部502aの経路上に位置して移動できないよう拘束する。上側ベース103の上側には弾性体118が配置されており、弾性体118にラッチ錠113が当接するとラッチ錠113の下側への移動を拘束してラッチ錠113の左右の突出部113a,113b(図11参照)のみで拘束するようになされている。また、弾性体118が衝突時の衝撃を緩和している。
【0049】
図6,図7で示すように、昇降ベース111の上側には2本の支柱114を介して係止板115が固定されている。係止板115に上下方向の力が加わると昇降ベース111も昇降する。
アクチュエータ116は、正面側ベース104の正面に固定されており、昇降軸は軸固定部117により係止板115に固定されている。アクチュエータ116は、係止板115を昇降させて昇降ベース111の昇降を行う。
これら変換部(ピニオン109、ラック110、昇降ベース111、スライドレール112)、ラッチ錠113、支柱114、係止板115は、本発明のラッチ錠昇降ロック装置を構成する。
【0050】
インナワイヤ119は、図9で示すように、筒状で堅牢な構造のアウタワイヤ120内に挿通されており、アウタワイヤ120内を移動するようになされている。これらインナワイヤ119とアウタワイヤ120とでワイヤ装置を構成する。反対側のハンドル装置121を操作すると、インナワイヤ119を介して係止板115を矢印e方向に引っ張って上昇させ、ラッチ錠昇降ロック装置全体を上昇させる。この場合、インナワイヤ119の引き込み量は、ピニオン109を介して円柱型永久磁石108の回転が約90°となるように調整されている。なお、ハンドル装置121、ワイヤ装置を用いる操作は解錠動作のみであり、引戸200,300の開閉動作は手動で行う。
【0051】
続いて、ロック装置100による施錠・解錠について図1,図3,図11,図12,図13,図14,図15,図16を参照しつつ説明する。なお、図11〜図16は特にロック装置の磁気回路形成や内部構造を明瞭にするため、図示を一部省略している。
まず、図3で示すように、引戸200,300が開かれた解錠状態にあるものとする。この場合、図11で示すようにラッチ錠113は上昇した状態にある。また、円柱型永久磁石108は、図11,図12で示すように水平方向(左右方向)にN極・S極があるものとする。また、係止部402,502は、図11,図12で示すようにロック装置100から十分離れた位置にある。この場合、磁気回路としては、図12で示すように、円柱型永久磁石108と上側の鉄製ヨーク106とで磁気回路を形成するともに、円柱型永久磁石108と下側の鉄製ヨーク105とで磁気回路を形成していている。これらは内部に形成された解錠用磁気回路となる。この解錠用磁気回路の磁力のため円柱型永久磁石108の回転を停止させており、ラッチ錠113は上昇したままで固定されている。なお、ロック装置100の円柱型永久磁石108は、ラッチ錠昇降ロック装置の自重により下降しようとする力が変換されて一方向への初期回転力が付与されているが、解錠用磁気回路による磁気力が初期回転力よりも強いため円柱型永久磁石108は回転せず、ラッチ錠113は上昇位置に保持された状態にある。また、下側の鉄製ヨーク105と上側の鉄製ヨーク106との間では磁気回路が形成されていないので鉄製ヨーク105,106の両側面の吸着力はゼロの状態にある。
【0052】
続いてロック装置100による施錠(解錠状態から施錠状態へ移行する)を行うものとする。開閉駆動装置700が戸閉駆動し、図1で示すように引戸200,300が閉めらる。この場合、図13で示すように、レール移動体400の係止部402が矢印f方向へ移動し、同時にレール移動体500の係止部502が矢印g方向へ移動する。係止部402,502は最終的にロック装置100に当接する。
【0053】
ロック装置100では、詳しくは、図14で示すように、鉄製ヨーク105の側面に突起部105a,105bが形成されている。また、鉄製ヨーク106の側面に突起部106a,106bが形成されている。係止部402が突起部105a,106aに当接すると、隙間124が形成され、また、係止部502が突起部105b,106bに当接すると、隙間125が形成される。隙間124,125により、非磁性体107を挟む上下位置でのみ係止部402,502を当接させて、磁気回路を確実に形成する。
【0054】
この場合、図14で示すように、円柱型永久磁石108のN極から係止部402を通過してN極へ磁力線が戻る磁気回路が形成され、また、円柱型永久磁石108のS極から係止部502を通過してS極へ磁力線が戻る磁気回路が形成されるが、この場合斥力が働くため、斥力が働かないようにしようと円柱型永久磁石108が回転しようとする。
【0055】
回転方向であるが、図15で示すように磁気ロック装置の円柱型永久磁石108は、ラッチ錠昇降ロック装置の自重により下降しようとする力が変換されて一方向(矢印h方向、つまり時計回り)への初期回転力が付与されているため、円柱型永久磁石108が回転するとともに機械的にラッチ錠113が矢印i方向に下降していく。そして、ラッチ錠113が弾性体118に当接するとともに、円柱型永久磁石108は、N極、S極が図15,図16のように垂直方向にあるような位置で停止する。
この場合、図16で示すように、円柱型永久磁石108のN極、上側の鉄製ヨーク106、係止部402、下側の鉄製ヨーク105を経て円柱型永久磁石108のS極へ磁力線が戻る磁気回路を形成しようとし、また、円柱型永久磁石108のN極、上側の鉄製ヨーク106、係止部502、下側の鉄製ヨーク105を経て円柱型永久磁石108のS極へ磁力線が戻る磁気回路を形成し、安定する。このため、円柱型永久磁石108は移動しないで維持しようとする。これら磁気回路は施錠用磁気回路となる。また、これら施錠用磁気回路の磁力により係止部402,502はロック装置100に吸着固定されることとなる。
【0056】
さらに、円柱型永久磁石108とともに回転するピニオン109の回転動作が、ラック110の下降動作に変換され、ラッチ錠113が図15の矢印i方向に移動して下降し、弾性体118にラッチ錠113が当接して停止することとなる。この停止位置は円柱型永久磁石108が90°回転するように調整されている。この場合、図15の円部に示すように、係止部402,502の突出部402a,502aと、ラッチ錠の突出部113a,113bとは僅かな隙間dが形成される。このような位置決めは、施錠磁気回路により常に同じ位置にて強固に固定される係止部402,502の突出部402a,502aを基準とするため容易である。
上記した施錠用磁気回路形成による吸着とラッチ錠113の下降は円柱形永久磁石108の回転終了と同時に達成される。
【0057】
このように係止部402,502の移動経路上にラッチ錠113の突出部113a,113bが位置するため、ロック装置100から外れないようにしている。万が一に施錠中に施錠用磁気回路が開かれて解錠した場合や吸着が不完全であった場合でも引戸200,300の移動は僅かな隙間dの距離程度となり隙間d以上は開かない構造としている。このような隙間dの移動も戸先ゴム201,301の変形で吸収されるため、引戸200,300に戸隙が生じるような事態は生じない。本発明ではラッチ錠113の隙間dにより、ラッチ錠113が弾性体118に当接する以外にはラッチ錠113は機械的な接触がないため機械的抵抗が殆どなくなり、昇降動作は少ない力で滑らかに行われる。
【0058】
このように施錠時は、磁気ロック装置で磁気により係止部402,502を強固に吸引固定する磁気ロックを行うために引戸200,300は強固に固定される。この場合、係止部402,502に対するアーム401,501の取り付け位置を調節するという容易な調整により最適位置で引戸200,300が閉められるため、引戸200,300は一定の戸閉位置で強固に閉められる。
また、磁気ロックと同時に、ラッチ錠103により施錠するラッチ錠ロックを行うが、磁気ロックにより強固に固定されているため、ラッチ錠ロックは隙間dを空けて経路上にラッチ錠103の一部である突出部103a,103bが位置するようにして機械的に干渉する程度でよく、機械的に接触しないラッチ錠103の昇降をスムーズにしている。磁気ロックに加えてラッチ錠ロックを併用することで、引戸200,300が万が一にも開くような事態を防止する。
【0059】
続いてロック装置による通常の解錠(施錠状態から解錠状態へ移行する)を行うものとする。前提として解錠状態では、図15で示すように、係止部402,502はロック装置100の側面に当接した状態である。また、ラッチ錠113は下降した状態である。例えば、引戸200,300に対する開指令がなされると、まず、アクチュエータ116は、図17で示すように、矢印j方向に距離Xmm移動させるように駆動して係止部115を上昇させる。
【0060】
さらに、係止部115の上昇とともに移動する図17の矢印j方向のラック110の上昇動作が、円柱型永久磁石108とともに矢印k方向(反時計回り)に回転するピニオン109の回転動作に変換される。円柱型永久磁石108は90°回転する。この場合、磁気回路としては、下側の鉄製ヨーク105と上側の鉄製ヨーク106との間では磁気回路が消えるため鉄製ヨーク105,106の両側面の吸着力はゼロの状態となり、吸着状態から解放される。
【0061】
続いて、開閉駆動装置700が戸開駆動し、図3で示すように引戸200,300が開けられる。この場合、図18で示すように、レール移動体400の係止部402が矢印l方向へ移動し、同時にレール移動体500の係止部502が矢印m方向へ移動する。
【0062】
また、図12で示すように、円柱型永久磁石108と上側の鉄製ヨーク106とで磁気回路を形成するともに、円柱型永久磁石108と下側の鉄製ヨーク105とで磁気回路を形成している。この解錠用磁気回路の磁力のため円柱型永久磁石108の回転を停止させており、ラッチ錠113は上昇したままで固定されている。従って、アクチュエータ116の通電時間は戸開操作から係止部402,502が離れた直後までの僅かな時間のみで良い。
【0063】
このようにラッチ錠113の上昇と同時に施錠用磁気回路を開いて係止部402,502へのロック装置100による強固な吸引を外し、その後に係止部402,502が容易に離れるようにしている。この場合でも、ラッチ錠113の突出部113a,113bと係止部402,502の突出部402a,502aに形成される隙間dにより、ラッチ錠113へは機械的な抵抗が殆ど加わらないため、上昇動作は少ない力で滑らかに行われることとなる。
このように解錠時は、ラッチ錠113の上昇とともにロック装置100による係止部402,502の磁力により吸引固定を解くため、少ない力で高速に開動作を行うことができる。
【0064】
続いてロック装置100による非常時の解錠(施錠状態から解錠状態へ移行する)を行うものとする。非常時の解錠では図9に示すハンドル装置(非常コック)121により解錠するものである。前提として解錠状態では図15で示すように、係止部402,502はロック装置100の側面に当接した状態である。また、ラッチ錠113は下降した状態である。例えば、ハンドル装置121にてハンドル操作がなされると、まず、図19で示すように、インナワイヤ119は矢印n方向に駆動して係止板115を距離Xmm上昇させるとラッチ錠113も上昇して解錠状態となる。インナワイヤ119はこのように引っ張られた状態でハンドル装置121のストッパにより固定される。
このラッチ錠113の上昇とともに移動する図19の矢印o方向のラック110の上昇動作が、円柱型永久磁石108の矢印p方向(反時計回り)に回転するピニオン109の回転動作に変換される。円柱型永久磁石108は矢印p方向(反時計回り)に90°回転する。
【0065】
この場合、磁気回路としては、図12で示すように、円柱型永久磁石108と上側の鉄製ヨーク106とで磁気回路を形成するともに、円柱型永久磁石108と下側の鉄製ヨーク105とで磁気回路を形成していている。これら磁気回路は解除用磁気回路を構成する。この解除用磁気回路の磁力のため円柱型永久磁石108の回転を停止させており、ラッチ錠113は上昇したままで固定されている。そして先ほども説明したようにストッパによりインナワイヤ119が移動しないようになされて係止板115は下降しないように固定されており、円柱型永久磁石108は回転しないようになっている。
【0066】
続いて、手動で引戸200,300を開く。上記のように施錠用磁気回路に代えて解除用磁気回路となっているため、僅かな力でも係止部402,502はロック装置100から離脱する。そして、図20で示すように、レール移動体400の係止部402が矢印q方向へ移動し、同時にレール移動体500の係止部502が矢印r方向へ移動する。ハンドル操作がされている間はロックが外れるようになされる。なお、ハンドル装置121においてハンドルがストッパにより固定されているならば、この状態で引戸200,300を手動で再度閉じてもロック装置100による吸着・施錠はされない。
【0067】
このようにラッチ錠113の上昇と同時に施錠用磁気回路を開いて係止部402,502へのロック装置100による強固な吸引を外し、その後に係止部402,502が容易に離れるようにしている。この場合でも、ラッチ錠113の突出部113a,113bと係止部402,502の突出部402a,502aに形成される隙間dにより、ラッチ錠113へは機械的な抵抗が加わらないため、昇降動作は少ない力で滑らかに行われる。
このように解錠時は、ラッチ錠113の上昇とともにロック装置100による係止部402,502の固定を解くため少ない力で高速に開動作を行うことができる。
【0068】
そして、ハンドル装置121のハンドルを元の位置に戻すと、インナワイヤ119の引っ張りはなくなるが、ラッチ錠113は円柱形永久磁石108が解錠用磁気回路を形成して上昇位置を保持して解錠状態となっている。したがって、引戸200,300を手動で閉じることが可能となるが、閉めると施錠・吸着して施錠状態となる。
【0069】
以上本発明の車両用引戸開閉装置について説明した。この車両用引戸開閉装置は、従来技術と比較して以下のような優位点を有する。
【0070】
(1)本発明の車両用引戸開閉装置では引戸の係止部がロック装置に当接すると吸着と同時に施錠が行われて引戸がロックされる。特に施錠用磁気回路では係止部が磁気ロック装置に近づくにつれて極端に吸着力が強くなる特性があるので、従来方式に比較して吸着力が大幅に増加しており、左右の戸先ゴムを充分に潰して戸隙が生じることがなく、また、ラッチ錠が下降できないという事態も生じない。さらに、戸先ゴムの潰し量による抵抗、また、音止機能、風止機能、振止機能等を果たす振動防止部の抵抗が増加しても施錠できる。また、移動レールとアームとの取り付け位置をねじ部により調節すれば抵抗力の調整も容易である。
【0071】
(2)さらに、引戸の間に障害物が挟まれると、磁気ロック装置への係止部の接触が阻害されるので施錠用磁気回路が形成されず、円柱形永久磁石も移動しないためラッチ錠も下降せず、施錠に至ることはないので戸挟み検知精度が大幅に向上する。この結果、従来からの課題であった施錠と戸挟み検知という相反する問題は解決される。
【0072】
(3)また、従来技術のドアロック装置のように移動しないように機械的に拘束するのではなく、磁気吸着された係止部の経路上に僅かな隙間を開くような箇所で位置するようにしたため、引戸が開く事態を防止する目的を達成しつつ、機械的な接触を少なくしており、少ない力で静かに施錠・解錠を行うことができる。また、従来ではラッチ錠の昇降にバネを用いていたが、本発明では施錠用磁気回路形成の磁力によるラッチ錠の下降や解錠用磁気回路形成の磁力によるラッチ錠の上昇をおこなうため、やはり静音化を可能としている。さらにラッチ錠が下降したときに弾性体と接して位置決めされるため、やはり静音化を可能としている。
【0073】
(4)また、施錠時のラッチ錠には施錠時磁気回路の磁力しか負荷されず、この負荷は引戸の反力の影響もない。この結果、非常時の手動ハンドル操作によってもアウタワイヤが変形することもなく、従来技術のようにインナワイヤが規定値以上に伸びて相対的にインナワイヤが引き込めないで解錠できないという従来の課題は解決できる。
【0074】
(5)さらに、戸閉速度によるドア慣性力が仮にゼロでも吸着は可能となることにより施錠時の衝突音を減音することができる。
【0075】
(6)解錠時は施錠用磁気回路の形成により生じる偶力を上回る力でラッチ錠を上昇させるだけでよく、またドア反力の影響もないので解錠力は少ない力でよく、そのため別設置の小形アクチェータの採用が可能となった。この結果、解錠時の金属接触音を減音することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、特に列車・電車の車両の引戸の開閉に利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1:車両用引戸開閉装置
100:ロック装置
101:背面側ベース
102:下側ベース
103:上側ベース
104:正面側ベース
105:鉄製ヨーク
106:鉄製ヨーク
107:非磁性体
108:円柱型永久磁石
109:ピニオン
110:ラック
111:昇降ベース
112:スライドレール
113:ラッチ錠
113a,113b:突出部
114:支柱
115:係止板
116:アクチュエータ
117:軸固定部
118:弾性体
119:インナワイヤ
120:アウタワイヤ
121:ハンドル装置
122:孔部
123:孔部
124:隙間
125:隙間
200:引戸
201:戸先ゴム
300:引戸
301:戸先ゴム
400:レール移動体
401:アーム部
402:係止部
402a:突出部
403:戸車
500:レール移動体
501:アーム部
502:係止部
502a:突出部
503:戸車
600:引戸レール
700:開閉駆動装置
701:リニアモータ
702:可動子
703:連結体
704:引戸駆動用第1ラック
705:引戸駆動用ピニオン
706:引戸駆動用第2ラック
707:連結体
708:本体
709:連結体
710:引戸駆動用第1ラック
711:引戸駆動用ピニオン
712:引戸駆動用第2ラック
713:連結体
714:引戸駆動用モータ
715:本体
800:台座部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体に取り付けられる少なくとも1本の引戸レールと、
前記引戸レールに沿って移動可能になされる少なくとも2個のレール移動体と、
前記2個のレール移動体にそれぞれ取り付けられて移動可能になされる2枚の引戸と、
前記引戸レールに沿う方向に前記2枚の引戸を開閉駆動する開閉駆動力を供給する開閉駆動装置と、
磁性体により形成され、かつ対向するように前記2個のレール移動体に設けられる2個の係止部と、
円柱型永久磁石が回転可能に支持される磁気ロック装置と、
ラッチ錠と、前記磁気ロック装置の前記円柱型永久磁石の回転動作と前記ラッチ錠の昇降動作とを相互に変換する変換部と、を含むラッチ錠昇降ロック装置と、
を備え、前記一方の係止部、前記磁気ロック装置、および、前記他方の係止部は、前記引戸レールに沿って並べて配置されており、
前記2枚の引戸が開けられて前記磁気ロック装置の両側から前記2個の係止部が離れている解錠状態のとき、前記磁気ロック装置は、内部に解錠用磁気回路を形成するように前記円柱型永久磁石を回転固定し、また、前記ラッチ錠昇降ロック装置は、前記円柱型永久磁石の固定に応じて前記ラッチ錠を上昇位置にて固定し、
前記2枚の引戸が閉じられて前記磁気ロック装置の両側から前記2個の係止部が当接する施錠状態のとき、前記磁気ロック装置は、両側から当接する前記2個の係止部とともに内部に施錠用磁気回路を形成するように前記円柱型永久磁石を回転固定しつつ前記2個の係止部を磁力により吸引固定し、また、前記ラッチ錠昇降ロック装置は、前記円柱型永久磁石の固定に応じて前記ラッチ錠を下降位置にて固定しつつ下降させた前記ラッチ錠により前記磁気ロック装置から前記2個の係止部の離脱を防止するよう拘束することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記2枚の引戸が開けられて前記磁気ロック装置の両側から前記2個の係止部が離れている解錠状態のとき、前記磁気ロック装置の前記円柱型永久磁石は、上昇した前記ラッチ錠の自重から受ける下降力が前記変換部により変換されて、一の回転方向へ回転しようとする初期回転力が付与された状態にあることを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記2枚の引戸が開けられて前記磁気ロック装置の両側から前記2個の係止部が離れている解錠状態のとき、前記磁気ロック装置の前記円柱型永久磁石は、内部で形成した解錠用磁気回路により前記初期回転力を上回る固定力が付与されて固定され、
前記ラッチ錠昇降ロック装置は前記ラッチ錠の上昇位置を維持することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記2枚の引戸が閉じられて前記磁気ロック装置の両側から前記2個の係止部が当接する施錠状態へ解錠状態から移行するとき、前記磁気ロック装置は、両側から当接する前記2個の係止部とともに内部に施錠用磁気回路を形成するように前記円柱型永久磁石に回転力を加えつつ回転させて施錠用磁気回路の形成と同時に前記2個の係止部を磁力により吸引固定し、また、前記ラッチ錠昇降ロック装置は、前記円柱型永久磁石の回転力を前記ラッチ錠の下降力に変換して下降させた前記ラッチ錠により前記2個の係止部と前記磁気ロック装置とを拘束させることを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ラッチ錠昇降ロック装置は、前記ラッチ錠の上昇動作を行うアクチュエータをさらに備えるものであり、
前記2枚の引戸が開けられて前記磁気ロック装置の両側から前記2個の係止部を離脱させる解錠状態へ施錠状態から移行するとき、前記アクチュエータは、前記ラッチ錠を上昇させて前記ラッチ錠による前記2個の係止部の拘束を解除し、かつ、前記変換部が前記ラッチ錠の上昇力を前記円柱型永久磁石の回転力に変換して施錠用磁気回路を開いて磁気吸引による前記2個の係止部の拘束を解除することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ラッチ錠昇降ロック装置は、インナワイヤを介して前記ラッチ錠の上昇動作を行うワイヤ装置をさらに備えるものであり、
前記2枚の引戸が開けられて前記磁気ロック装置の両側から前記2個の係止部を離脱させる解錠状態へ施錠状態から移行するとき、前記ワイヤ装置は、前記ラッチ錠を上昇させて前記ラッチ錠による前記2個の係止部の拘束を解除し、かつ、前記変換部が前記ラッチ錠の上昇力を前記円柱型永久磁石の回転力に変換して施錠用磁気回路を開いて磁気吸引による前記2個の係止部の拘束を解除することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ワイヤ装置の前記インナワイヤを移動させるハンドル装置を備え、前記ハンドル装置のハンドル操作により前記インナワイヤを移動させることを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ハンドル装置は、前記インナワイヤの移動を防ぐストッパを備え、
前記ラッチ錠の上昇位置において前記ストッパで固定される間は、前記ラッチ錠昇降ロック装置による前記ラッチ錠の下降および前記磁気ロック装置の前記円柱型永久磁石の回転による施錠用磁気回路形成を防止し、前記2枚の引戸を手動で開閉可能とすることを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項9】
請求項8に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ハンドル装置を操作して前記ラッチ錠の拘束を解除したときに前記円柱形永久磁石の解錠用磁気回路によりラッチ錠が上昇位置を保持し、また、前記2枚の引戸を手動で閉めると施錠用磁気回路を形成して施錠することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ラッチ錠昇降ロック装置の変換部は、
前記磁気ロック装置の前記円柱型永久磁石の回転軸と同軸となるように取り付けられたピニオンと、
前記ピニオンに噛み合うとともに前記ラッチ錠の昇降方向と平行なピッチ線を形成するように取り付けられるラックと、
前記ラッチ錠の昇降方向と平行なスライド方向を形成するように取り付けられるスライドレールと、
前記スライドレールによりスライドするように支持されるとともに前記ラックが固定されて昇降駆動される昇降ベースと、
を備えることを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項11】
請求項1〜請求項10の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記磁気ロック装置は、
非磁性体と、この非磁性体を挟む上下の鉄製ヨークと、からなり、非磁性体と上下の鉄製ヨークとを貫通する孔部が形成される磁気回路機構部と、
を備え、
外周側面がN極およびS極の二極に着磁された前記円柱型永久磁石が、前記磁気回路機構部の孔部内にて回転するように支持されており、
前記2個の係止部が前記磁気回路機構部から離脱したときに前記円柱型永久磁石と前記上側の鉄製ヨークとで解錠用磁気回路を形成するとともに前記円柱型永久磁石と前記下側の鉄製ヨークとで解錠用磁気回路を形成して前記円柱型永久磁石の回転を停止させて前記ラッチ錠を固定し、
前記2個の係止部が前記磁気回路機構部に当接したときに前記円柱型永久磁石を回転させて前記円柱型永久磁石、前記上下の鉄製ヨークおよび前記2個の係止部で施錠用磁気回路を形成して前記2個の係止部を磁力により吸引固定することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項12】
請求項1〜請求項11の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記開閉駆動装置は、
略平行な2つの面を有する本体と、
前記本体の略平行な2つの面において歯が対向するように移動自在に取り付けられる2本の引戸駆動用ラックと、
前記2本の駆動用ラックに噛合する1個の引戸駆動用ピニオンと、
前記2本の引戸駆動用ラックの中の一方の引戸駆動用ラックが可動子に接続され、その引戸駆動用ラックを水平移動させるリニアモータと、
を備え、
前記リニアモータは一方の前記引戸駆動用ラックへ開閉駆動力を供給して前記一方の引戸に一方向への開閉駆動力を供給するとともに前記引戸駆動用ピニオンを回転させ、前記2本の引戸駆動用ラックの中の他方の引戸駆動用ラックが前記他方の引戸に他方向への開閉駆動力を供給することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項13】
請求項1〜請求項11の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記開閉駆動装置は、
略平行な2つの面を有する本体と、
前記本体の略平行な2つの面において歯が対向するように移動自在に取り付けられる2本の引戸駆動用ラックと、
前記2本の駆動用ラックに噛合する1個の引戸駆動用ピニオンと、
前記駆動用ピニオンを回転駆動させる引戸駆動用モータと、
を備え、
前記引戸駆動用モータは前記引戸駆動用ピニオンを回転駆動することで、前記2本の引戸駆動用ラックの中の一方の引戸駆動用ラックへ開閉駆動力を供給して前記一方の引戸に一方向への開閉駆動力を供給するとともに、前記2本の引戸駆動用ラックの中の他方の引戸駆動用ラックが前記他方の引戸に他方向への開閉駆動力を供給することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項1】
車両本体に取り付けられる少なくとも1本の引戸レールと、
前記引戸レールに沿って移動可能になされる少なくとも2個のレール移動体と、
前記2個のレール移動体にそれぞれ取り付けられて移動可能になされる2枚の引戸と、
前記引戸レールに沿う方向に前記2枚の引戸を開閉駆動する開閉駆動力を供給する開閉駆動装置と、
磁性体により形成され、かつ対向するように前記2個のレール移動体に設けられる2個の係止部と、
円柱型永久磁石が回転可能に支持される磁気ロック装置と、
ラッチ錠と、前記磁気ロック装置の前記円柱型永久磁石の回転動作と前記ラッチ錠の昇降動作とを相互に変換する変換部と、を含むラッチ錠昇降ロック装置と、
を備え、前記一方の係止部、前記磁気ロック装置、および、前記他方の係止部は、前記引戸レールに沿って並べて配置されており、
前記2枚の引戸が開けられて前記磁気ロック装置の両側から前記2個の係止部が離れている解錠状態のとき、前記磁気ロック装置は、内部に解錠用磁気回路を形成するように前記円柱型永久磁石を回転固定し、また、前記ラッチ錠昇降ロック装置は、前記円柱型永久磁石の固定に応じて前記ラッチ錠を上昇位置にて固定し、
前記2枚の引戸が閉じられて前記磁気ロック装置の両側から前記2個の係止部が当接する施錠状態のとき、前記磁気ロック装置は、両側から当接する前記2個の係止部とともに内部に施錠用磁気回路を形成するように前記円柱型永久磁石を回転固定しつつ前記2個の係止部を磁力により吸引固定し、また、前記ラッチ錠昇降ロック装置は、前記円柱型永久磁石の固定に応じて前記ラッチ錠を下降位置にて固定しつつ下降させた前記ラッチ錠により前記磁気ロック装置から前記2個の係止部の離脱を防止するよう拘束することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記2枚の引戸が開けられて前記磁気ロック装置の両側から前記2個の係止部が離れている解錠状態のとき、前記磁気ロック装置の前記円柱型永久磁石は、上昇した前記ラッチ錠の自重から受ける下降力が前記変換部により変換されて、一の回転方向へ回転しようとする初期回転力が付与された状態にあることを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記2枚の引戸が開けられて前記磁気ロック装置の両側から前記2個の係止部が離れている解錠状態のとき、前記磁気ロック装置の前記円柱型永久磁石は、内部で形成した解錠用磁気回路により前記初期回転力を上回る固定力が付与されて固定され、
前記ラッチ錠昇降ロック装置は前記ラッチ錠の上昇位置を維持することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記2枚の引戸が閉じられて前記磁気ロック装置の両側から前記2個の係止部が当接する施錠状態へ解錠状態から移行するとき、前記磁気ロック装置は、両側から当接する前記2個の係止部とともに内部に施錠用磁気回路を形成するように前記円柱型永久磁石に回転力を加えつつ回転させて施錠用磁気回路の形成と同時に前記2個の係止部を磁力により吸引固定し、また、前記ラッチ錠昇降ロック装置は、前記円柱型永久磁石の回転力を前記ラッチ錠の下降力に変換して下降させた前記ラッチ錠により前記2個の係止部と前記磁気ロック装置とを拘束させることを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ラッチ錠昇降ロック装置は、前記ラッチ錠の上昇動作を行うアクチュエータをさらに備えるものであり、
前記2枚の引戸が開けられて前記磁気ロック装置の両側から前記2個の係止部を離脱させる解錠状態へ施錠状態から移行するとき、前記アクチュエータは、前記ラッチ錠を上昇させて前記ラッチ錠による前記2個の係止部の拘束を解除し、かつ、前記変換部が前記ラッチ錠の上昇力を前記円柱型永久磁石の回転力に変換して施錠用磁気回路を開いて磁気吸引による前記2個の係止部の拘束を解除することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ラッチ錠昇降ロック装置は、インナワイヤを介して前記ラッチ錠の上昇動作を行うワイヤ装置をさらに備えるものであり、
前記2枚の引戸が開けられて前記磁気ロック装置の両側から前記2個の係止部を離脱させる解錠状態へ施錠状態から移行するとき、前記ワイヤ装置は、前記ラッチ錠を上昇させて前記ラッチ錠による前記2個の係止部の拘束を解除し、かつ、前記変換部が前記ラッチ錠の上昇力を前記円柱型永久磁石の回転力に変換して施錠用磁気回路を開いて磁気吸引による前記2個の係止部の拘束を解除することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ワイヤ装置の前記インナワイヤを移動させるハンドル装置を備え、前記ハンドル装置のハンドル操作により前記インナワイヤを移動させることを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ハンドル装置は、前記インナワイヤの移動を防ぐストッパを備え、
前記ラッチ錠の上昇位置において前記ストッパで固定される間は、前記ラッチ錠昇降ロック装置による前記ラッチ錠の下降および前記磁気ロック装置の前記円柱型永久磁石の回転による施錠用磁気回路形成を防止し、前記2枚の引戸を手動で開閉可能とすることを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項9】
請求項8に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ハンドル装置を操作して前記ラッチ錠の拘束を解除したときに前記円柱形永久磁石の解錠用磁気回路によりラッチ錠が上昇位置を保持し、また、前記2枚の引戸を手動で閉めると施錠用磁気回路を形成して施錠することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ラッチ錠昇降ロック装置の変換部は、
前記磁気ロック装置の前記円柱型永久磁石の回転軸と同軸となるように取り付けられたピニオンと、
前記ピニオンに噛み合うとともに前記ラッチ錠の昇降方向と平行なピッチ線を形成するように取り付けられるラックと、
前記ラッチ錠の昇降方向と平行なスライド方向を形成するように取り付けられるスライドレールと、
前記スライドレールによりスライドするように支持されるとともに前記ラックが固定されて昇降駆動される昇降ベースと、
を備えることを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項11】
請求項1〜請求項10の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記磁気ロック装置は、
非磁性体と、この非磁性体を挟む上下の鉄製ヨークと、からなり、非磁性体と上下の鉄製ヨークとを貫通する孔部が形成される磁気回路機構部と、
を備え、
外周側面がN極およびS極の二極に着磁された前記円柱型永久磁石が、前記磁気回路機構部の孔部内にて回転するように支持されており、
前記2個の係止部が前記磁気回路機構部から離脱したときに前記円柱型永久磁石と前記上側の鉄製ヨークとで解錠用磁気回路を形成するとともに前記円柱型永久磁石と前記下側の鉄製ヨークとで解錠用磁気回路を形成して前記円柱型永久磁石の回転を停止させて前記ラッチ錠を固定し、
前記2個の係止部が前記磁気回路機構部に当接したときに前記円柱型永久磁石を回転させて前記円柱型永久磁石、前記上下の鉄製ヨークおよび前記2個の係止部で施錠用磁気回路を形成して前記2個の係止部を磁力により吸引固定することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項12】
請求項1〜請求項11の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記開閉駆動装置は、
略平行な2つの面を有する本体と、
前記本体の略平行な2つの面において歯が対向するように移動自在に取り付けられる2本の引戸駆動用ラックと、
前記2本の駆動用ラックに噛合する1個の引戸駆動用ピニオンと、
前記2本の引戸駆動用ラックの中の一方の引戸駆動用ラックが可動子に接続され、その引戸駆動用ラックを水平移動させるリニアモータと、
を備え、
前記リニアモータは一方の前記引戸駆動用ラックへ開閉駆動力を供給して前記一方の引戸に一方向への開閉駆動力を供給するとともに前記引戸駆動用ピニオンを回転させ、前記2本の引戸駆動用ラックの中の他方の引戸駆動用ラックが前記他方の引戸に他方向への開閉駆動力を供給することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項13】
請求項1〜請求項11の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記開閉駆動装置は、
略平行な2つの面を有する本体と、
前記本体の略平行な2つの面において歯が対向するように移動自在に取り付けられる2本の引戸駆動用ラックと、
前記2本の駆動用ラックに噛合する1個の引戸駆動用ピニオンと、
前記駆動用ピニオンを回転駆動させる引戸駆動用モータと、
を備え、
前記引戸駆動用モータは前記引戸駆動用ピニオンを回転駆動することで、前記2本の引戸駆動用ラックの中の一方の引戸駆動用ラックへ開閉駆動力を供給して前記一方の引戸に一方向への開閉駆動力を供給するとともに、前記2本の引戸駆動用ラックの中の他方の引戸駆動用ラックが前記他方の引戸に他方向への開閉駆動力を供給することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図14】
【図15】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2010−174435(P2010−174435A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14995(P2009−14995)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】
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