説明

車両用情報提供装置

【課題】有料道路において通行料金割引の適用を受けられるように運転者に適切な情報提供を行なう車両用情報提供装置を提供すること。
【解決手段】自車両の現在位置を特定する現在位置特定手段と、前記現在位置特定手段により特定された自車両の現在位置からユーザーにより設定された目的地に至る推奨経路を設定する推奨経路設定手段と、自車両が通過する予定の有料道路の料金所を通過予定料金所として特定する通過予定料金所特定手段と、前記有料道路における走行距離が割引適用条件に抵触する場合に、前記通過予定料金所を自車両に近い料金所に変更して案内する案内手段と、を備え、前記推奨経路設定手段は、前記案内手段により前記通過予定料金所が自車両に近い料金所に変更された場合には、該変更された前記通過予定料金所を通過するように前記推奨経路を再設定する手段である、車両用情報提供装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用情報提供装置に関し、特に、有料道路において通行料金割引の適用を受けられるように運転者に情報提供を行なう車両用情報提供装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有料道路の渋滞を緩和すること等を目的としてETC(Electronic Toll Collection System;自動料金収受システム)が導入されている。ETCとは、車載器と料金所のアンテナとの無線通信により通行料金の支払いを自動的に行なうシステムであり、車両が料金所で停車することなく通過することを可能にするものである。
【0003】
ETCの普及を推進すべく、これを利用する車両に対して、通行料金の割引制度(いわゆるETC割引制度)が適用されている。これは、有料道路を走行した時間帯や走行距離が一定の条件を満たす場合に通行料金の一部を割引く制度であり、ETCの技術を用いることにより柔軟な運用が可能となったものである。また、ETC割引以外にも、通行量の少ない特定の時間帯や曜日には一律に通行料金を割引く制度が採用されている。
【0004】
このような有料道路における通行料金の割引制度を積極的に活用することによりユーザーの経済的負担を軽減すべく、通行料金割引時間帯に有料道路を通過するように車両の走行の経路誘導を行なう車両用ナビゲーション装置についての発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、例えば、通行料金割引時間帯の開始時刻よりも早く自車両が入口料金所に到達すると予想された際には、その旨を運転者に報知したり時間調整が可能な施設を案内したりしている。また、パーキングエリアに停車した際には、通行料金割引時間帯の終了時刻よりも早く出口料金所に到達するようにパーキングエリアの出発時刻を運転者に報知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−41760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の装置では、通行料金割引の適用を受けるためにどの程度の時間調整をすればよいのか、すなわち、どの程度急げば(又は、ゆっくり走行すれば)通行料金割引の適用を受けられるのかを、明確に運転者に伝えることができない。現実的な問題として、例えば「15分以内に料金所を通過して下さい」等と案内をしたとしても、その通りに運転するのは困難である。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、有料道路において通行料金割引の適用を受けられるように運転者に適切な情報提供を行なう車両用情報提供装置を提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための参考例の発明は、自車両が通過する予定の有料道路の料金所を通過予定料金所として特定する通過予定料金所特定手段と、通過予定料金所特定手段により特定された通過予定料金所について、割引が適用される通過条件を決定する通過条件決定手段と、通過予定料金所特定手段により特定された通過予定料金所を通過する際に通過条件決定手段により決定された通過条件を満たすための、目標車速を算出する目標車速算出手段と、を備え、目標車速算出手段により設定された目標車速に関する情報提供を行なうことを特徴とする車両用情報提供装置である。
【0009】
この参考例の発明によれば、割引が適用される通過条件を満たしつつ有料道路の料金所を通過するための目標車速を算出し、目標車速に関する情報提供を行なうから、運転者に具体的且つ明確なアドバイスをすることができる。すなわち、運転者に適切な情報提供を行なうことができる。
【0010】
他の参考例の発明は、自車両が通過する予定の有料道路の料金所を通過予定料金所として特定する通過予定料金所特定手段と、通過予定料金所特定手段により特定された通過予定料金所について、割引が適用される通過条件を取得する通過条件取得手段と、通過予定料金所特定手段により特定された通過予定料金所を通過する際に通過条件取得手段により取得された通過条件を満たすための、目標車速を算出する目標車速算出手段と、を備え、目標車速算出手段により設定された目標車速に関する情報提供を行なうことを特徴とする車両用情報提供装置である。
【0011】
また、いずれかの参考例の発明において、例えば、自車両の現在位置を特定する現在位置特定手段と、現在位置特定手段により特定された自車両の現在位置から予め設定された目的地に至る推奨経路を、有料道路の利用区間を含めて設定する推奨経路設定手段と、を備え、通過予定料金所特定手段は、走行経路設定手段により設定される推奨経路に基づいて通過予定料金所を特定する手段であるものとしてもよい。
【0012】
また、いずれかの参考例の発明において、目標車速算出手段により設定された目標車速が所定の上限車速を超過する場合には、目標車速に関する情報提供を行なわないものとしてもよいし、自車両に近くなるように通過予定料金所を変更すると共にこの変更に関する情報提供を行なうものとしてもよい。
【0013】
また、いずれかの参考例の発明において、目標車速算出手段により設定された目標車速が所定の下限車速未満である場合には、停車可能な施設に関する情報提供を行なうものとしてもよい。
【0014】
また、いずれかの参考例の発明において、自車両の車速を検出する車速検出手段を備え、目標車速算出手段により設定された目標車速が車速検出手段により検出された自車両の車速を中心とする所定範囲内である場合は、目標車速に関する情報提供を行なわないものとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、有料道路において通行料金割引の適用を受けられるように運転者に適切な情報提供を行なう車両用情報提供装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例に係る車両用情報提供装置1の全体構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の特徴部分である通過予定料金所特定部23、通過条件決定部24、及び目標車速算出部25の処理の流れを表すフローチャートである。
【図3】本実施例が適用されていない車両の走行局面を模式的に示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。図1は、本発明の一実施例に係る車両用情報提供装置1の全体構成の一例を示す図である。車両用情報提供装置1は、その主要な構成として、ナビゲーション装置10と、車速センサー30と、スピードメーター32と、目標車速表示装置34と、ジャイロセンサー36と、通信装置40と、ETC車載器50と、を備える。なお、以下の説明における車両内の通信は、CAN(Controller Area Network)等の適切な通信プロトコルを用いて行なわれる。
【0019】
ナビゲーション装置10は、統合アンテナ12と、メモリ14と、ディスプレイパネル16と、音声入出力装置18と、ナビゲーション装置用ECU(Electronic Control Unit)20と、を備える。
【0020】
統合アンテナ12は、各種電波信号を送受信可能なアンテナであり、GPS衛星からのGPS信号や道路交通情報送信サービスに係る電波ビーコンを受信し、ナビゲーション装置用ECU20に出力する。
【0021】
また、統合アンテナ12は、ETC車載器50からの指示に従って、有料道路の料金所に備えられたETC路側機との間で料金収受に関する情報を送受信する。ETC車載器50は、ETCカードが挿入されることによって、ETC路側機と通行料金支払いに必要な情報を無線通信する。このETCカードは、ICチップを搭載した決済用のカードであって、支払者を識別し、通行料金の支払いに必要なデータを記録している。ETC車載器50は、具体的には、有料道路への自車の進入時には入口料金所のIDや車種等を記録し、有料道路からの退出時には出口料金所のIDや車種等を記録するとともに有料道路代金を精算する等の処理を行なう。また、ETC車載器50は、ETCの利用状況(有料道路を走行中であるか否か、どの料金所を通過したか等)を逐次ナビゲーション装置用ECU20に出力している。なお、当該無線通信の具体的態様については周知であり、本発明の中核をなさないので説明を省略する。
【0022】
メモリ14は、ハードディスクやDVD、CD−ROM等の記憶媒体であり、地図情報が記憶されている。この地図情報は、基本的には道路形状をノード及びリンクの形式で表現したものであり、有料道路の区間情報や区間毎の料金情報、料金所の場所及びID等が含まれる。また、後述する如く通信装置40により取得される割引情報が記憶される。
【0023】
ディスプレイパネル16は、グラフィックシステムとしてVGA(Video Graphics Array)を採用して動画を含む画像表示を行なうと共に、タッチパネルとしてユーザーによる各種の入力操作を可能に構成されたディスプレイ装置である。ディスプレイパネル16は、その表面にユーザーがタッチ操作したことによる電圧の変化を検出して、タッチ操作された位置を認識する。ディスプレイパネル16の表示内容はナビゲーション装置用ECU20により決定され、ディスプレイパネル16になされた入力操作はナビゲーション装置用ECU20に送信される。
【0024】
音声入出力装置18は、例えば、音声入力が可能なマイク、及びスピーカーから構成される。音声入出力装置18の出力内容はナビゲーション装置用ECU20により決定され、音声入出力装置18に入力された音声はナビゲーション装置用ECU20に入力される。
【0025】
ナビゲーション装置用ECU20は、例えば、CPUを中心としてROMやRAM等がバスを介して相互に接続されたコンピューターユニットであり、その他、入出力インターフェイスやタイマー、カウンター等を備える。なお、ROMには、CPUが実行するプログラムやデータが格納されている。また、ナビゲーション装置用ECU20は、こうしたハードウエアを用いて実現される主要な機能ブロックとして、現在位置特定部21と、経路案内部22と、通過予定料金所特定部23と、通過条件決定部24と、目標車速算出部25と、を備える。
【0026】
現在位置特定部21は、GPS信号の時間差に基づく演算により自車両の現在位置(緯度、経度、高度)を特定する。また、現在位置特定部21は、車速センサー30及びジャイロセンサー36から入力されるセンサー出力値や、上記統合アンテナ12が受信する電波ビーコンに含まれる情報に基づいて自車両の現在位置を補正する。この他にも、FM多重放送により受信される情報に基づいて補正を行なってもよいし、周知のマップマッチング技術に基づく補正を行なってもよい。なお、車速センサー30は、例えば、各輪に取り付けられた車輪速センサーとスキッドコントロールコンピューターから構成され、車輪速センサーが出力する車輪速パルス信号をスキッドコントロールコンピューターが車速矩形波パルス信号(車速信号)に変換して、ナビゲーション装置用ECU20やスピードメーター32に出力する。
【0027】
経路案内部22は、メモリ14に記憶された地図情報を参照し、現在位置特定部21が特定した自車両の現在位置から、ユーザーがディスプレイパネル16や音声入出力装置18を用いて入力した目的地に至る推奨経路を設定し、EEPROM等の記憶媒体に記憶する。そして、推奨経路に従って自車両が走行するように、ディスプレイパネル16や音声入出力装置18を用いた画像表示や音声案内を行なう。この推奨経路として格納される情報(以下、推奨経路情報と称する)には、経路の途中で走行する予定の有料道路の区間に関する情報が含まれる。すなわち、経路案内部22は、有料道路の利用区間も含めた推奨経路を設定する。
【0028】
図2は、本発明の特徴部分である通過予定料金所特定部23、通過条件決定部24、及び目標車速算出部25の処理の流れを表すフローチャートである。以下、本図に即してこれらの機能ブロックの機能等を説明する。本フローは、例えば所定時間毎に繰り返し行なわれる。
【0029】
通過予定料金所特定部23は、自車両が通過する予定の料金所を通過予定料金所として特定する(S100)。この特定に関する具体的手法としては、種々の手法が考えられるが、以下にその具体例を示す。
【0030】
(1)推奨経路情報を参照し、現在一般道路を走行している場合は、次に利用する予定の有料道路の入口料金所を通過予定料金所として特定する。また、現在有料道路を走行している場合は、当該有料道路を退出する予定の出口料金所を通過予定料金所として特定する。なお、同一有料道路において利用途中で一旦清算を要するような料金所も存在するが、この場合は出口料金所ではなく当該途中清算料金所を通過予定料金所として特定する。
【0031】
(2)また、ユーザーにより目的地が設定されておらず、従って推奨経路情報が作成されていない場合も想定されるが、この場合、現在位置特定部21が特定した自車両の現在位置と地図情報をマッチングし、且つ上記ETC車載器50からの情報を加味して自車両が有料道路を走行しているか否かを判定し、自車両が実際に有料道路を走行している場合は、自車両の進行方向において自車両に一番近い料金所を通過予定料金所として特定する。
【0032】
なお、この他にも合理的なロジックを作成することにより、自車両が通過する蓋然性の高い料金所を通過予定料金所として特定してよい。これらの特定手法のいずれにも該当しない場合(例えば、推奨経路に有料道路が含まれておらず、且つ、自車両が一般道路を走行している場合等)は、通過予定料金所が特定されるまでS100の処理を繰り返し行なう(S110)。
【0033】
通過条件決定部24は、通過予定料金所特定部23により特定された通過予定料金所について、割引が適用される通過条件を決定する(S120)。具体的には、通信装置40により予め取得され、メモリ14に記憶されている有料道路の区間毎の割引時間帯や走行距離に関する制限等に関する情報(割引情報)を参照し、通過予定料金所を通過する際の通過条件(何時から何時までの間に通過すればよいか、或いは、当該料金所を通過して割引適用があるのか)を導出する。
【0034】
通信装置40は、例えば、情報センター80から送信される割引情報を、無線基地局60及びネットワーク70を介して受信する。当該取得は、例えば毎日や毎週、隔週等定期的に行なわれる。通信装置40と無線基地局60との間では、携帯電話網、PHS(Personal Handy‐phone System)網、無線LAN、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、衛星電話、ビーコン、TVやラジオの放送網等を利用した無線通信が行なわれる。また、無線基地局60と情報センター80を接続するネットワーク70は、例えば、公衆電話交換網(PSTN)やデジタル通信ネットワーク(ISDN)、光ファイバ等の有線ネットワークである。データの送受信には例えばTCP(Transmission Contorl Protocol)/IP(Internet Protocol)等のプロトコルと上位互換であるHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)やFTP(File Transfer Protocol)、MIME(Multipurpose Internet Mail Extension)等のプロトコルが使用される。
【0035】
従って、通信装置40は、例えば、データ通信アンテナや通信モジュール等からなる。また、Bluetooth対応の携帯電話機が用いられてもよいし、機械的に携帯電話を連結して用いてもよいし、ビーコン送受信機、TVやラジオの受信機等が用いられてもよい。情報センター80は、例えば自動車メーカーの情報サービス施設や公的機関の施設、放送局等を含む。
【0036】
ここで、割引情報の一例として、現在ETC割引の一つとして採用されている通勤割引に関する情報を例示する。これは、「ETCが整備されている入口料金所をETC無線通信により走行し、朝夕の通勤時間帯(朝6〜9時または夕方17時〜20時の間)に入口もしくは出口料金所を通過し、かつ総利用距離が100km以内の場合」に割引が適用されるものである。
【0037】
通過条件決定部24は、この場合、(A)通過予定料金所が入口料金所の場合、上記時間帯に自車両が通過予定料金所を通過することを通過条件とする。
【0038】
また、(B)通過予定料金所が出口料金所の場合、入口料金所において上記時間帯を満たしていた場合は、入口料金所と通過予定料金所との距離が100[km]以内であれば特段の通過条件はないものとする。一方、入口料金所において上記時間帯を満たしていなかった場合は、入口料金所と通過予定料金所との距離が100[km]以内であり、且つ、上記時間帯に自車両が通過予定料金所を通過することを通過条件とする。この際に、走行距離に関する条件に抵触する場合(すなわち、退出予定の通過予定料金所が遠すぎる場合)には、通過予定料金所を自車両に近い料金所に変更すると共にその旨を音声入出力装置18によりアナウンス(例えば、「この先**料金所で降りれば、割引適用可能です」等)する(S130、150)。そして、変更された通過予定料金所について再度通過条件を決定する(S120)。但し、運転者が、スイッチ操作や音声により上記自車両に近い料金所で降りる意思がないことを入力した場合には、通過予定料金所を変更しない。なお、通過予定料金所が自車両に最も近い料金所であって、且つ上記(B)において走行距離に関する条件に抵触する場合は、もはや割引適用を受けることが不可能であるため、S100以下の処理を繰り返し行なうことにより、自車両が当該通過予定料金所を通過して次の通過予定料金所に係る通過条件が決定されるのを待つ処理を行なう(S140)。
【0039】
また、上記の如き走行距離に関する条件に適合するように通過予定料金所を変更する処理は、経路案内部22による推奨経路の設定の中に包含されてもよい。すなわち、最初から走行距離や割引適用時間帯の制限を満たすように推奨経路を作成するのである。また、走行条件や割引適用時間、料金情報等により、一旦料金所を降りて再び有料道路を使用する経路を計算し、一旦料金所を降りて再び有料道路を使用した場合と、料金所を降りずにそのまま有料道路を走行した場合と、の料金を比較して割安な方を推奨経路として案内してもよい。例えば、有料道路の走行距離が150[km]であって、総走行距離が100[km]以下の場合にしか割引適用がないときには、全区間有料道路を使用するよりも料金が安いことがあり得るからである。この際に、時間帯割引も比較の対象にして推奨経路を作成することは言うまでもない。こうしたロジックにより推奨経路が作成されると、少しでも低料金で走行したい運転者にとって、より有用な経路案内となり得る。
【0040】
目標車速算出部25は、通過条件のうち時間帯に関する条件を満たすように、目標車速V*を算出する(S160)。目標車速V*は、例えば、現在の時刻よりも終了時刻が先である割引適用時間帯のうち現在の時刻に最も近い割引適用時間帯を抽出し、その開始時刻Ts、終了時刻Te、現在時刻T、自車両から通過予定料金所までの距離Xを用いて次式(1)、(2)により目標車速範囲を算出し、当該範囲内で適切な車速に定めることができる。例えば、当該範囲内において法定速度よりも若干低い程度の基準車速にできるだけ近づけるように定める。なお、式(1)において負の値となった場合はこれを無視することとする。
【0041】
Vmax=X/(Ts−T) ‥(1)
Vmin=X/(Te−T) ‥(2)
【0042】
そして、目標車速算出部25により算出された目標車速V*が所定の上限車速Vhを超えるか否かを判定する(S170)。所定の上限車速Vhには、例えば、その区間の法定速度がそのまま採用されてよい。所定の上限車速Vhを超える場合は、車速を上げて割引適用時間内に通過することが困難である(所定の上限車速Vhに法定速度を採用する場合は、違法運転となる)と判断し、通過予定料金所を自車両に近い料金所に変更すると共にその旨を音声入出力装置18によりアナウンスする(S150)。こうすることにより、手前の料金所で有料道路から退出して、割引の適用を受け得ることとなる。なお、当該変更に先立って、S140と同様に通過予定料金所が自車両に最も近い料金所であるか否かを判定し、その結果、通過予定料金所を自車両に近い料金所に変更することが不可能であると判定された場合には、S100に戻る処理を行なうことが好ましい。
【0043】
目標車速V*が所定の上限車速Vh以下である場合は、目標車速V*が所定の下限車速Vl未満であるか否かを判定する(S180)。所定の下限車速Vlは、走行道路の区分によって変更されてよく、例えば、有料道路においては40〜60[km/h]程度、一般道路においては30〜40[km/h]程度等、円滑な交通を妨げない車速範囲の下限付近に定めることが好ましい。目標車速V*が所定の下限車速Vl未満である場合は、時間調整のために使用可能な施設(有料道路においては、パーキングエリア等)についての案内を行なう(S190)。これにより、割引適用となる時間帯までの時間調整をスムーズに行なうことができる。なお、その調整時間が経過した際に、車室内でアラームを鳴らしたり、運転者の携帯電話や携帯端末等に通知してもよい。また、タイマーをセットするコマンドを上記携帯電話等に送信してもよい。こうすることにより、うっかり休憩しすぎて割引適用時間帯を逃してしまうことを防止することができる。
【0044】
目標車速V*が所定の上限車速Vhと下限車速Vlの間に収まっている場合は、目標車速V*で走行しても特段の問題を生じないと考えられる。従って、目標車速表示装置34を用いて目標車速V*を表示する(S200)。目標車速表示装置34は、例えば、液晶表示装置であり、スピードメーター32との対比が容易となるようにコンビネーションメーター内に並設されるのが望ましい。
【0045】
目標車速V*を実際の車速と対比させて表示することにより、運転者が、実際の車速を目標車速V*に近づけるようにアクセルペダル等を調節して走行することが可能となる。これにより、自車両が通過予定料金所に到達したときには、割引適用時間帯に収まっている可能性が高いものとなる。また、目標車速V*が表示されていることにより、割引適用が受けられる可能性があることに運転者が気付くという効果も生じる。
【0046】
なお、目標車速表示装置34は、上記の如く目標車速V*自体を表示するものに限られず、目標車速V*と実際の車速との差を表示するものであってもよいし、その差の数値によってランプ等のインジケーターの色を変えたり点滅させるものであってもよい。このように視認に関する情報量を減らすことにより、運転者の視認負担を軽減することができる。
【0047】
また、ディスプレイパネル16を用いて、経路案内に係る画像表示(周辺地図及び自車両の位置)と共に表示してもよいし、目標車速V*で走行する模擬車両の位置を自車両の位置を基準にして表示してもよい。こうすれば、地図を見るのと同時に目標車速V*に関する情報を得ることができるので、運転者の視認負担を軽減することができる。更に、ディスプレイパネル16以外の他の表示装置が共用されても構わない。例えば、目標車速V*で走行する模擬車両の位置を、HUD(Head Up Display)表示装置によりフロントウインドシールド上に虚像表示してもよい。こうすれば、運転者の通常視野内に模擬車両が表示されるため、運転者の視認負担を軽減することができる。
【0048】
また、目標車速V*は、目標車速範囲の範囲内で適切な車速に定めることを前述したが、余裕時間(目標車速V*に従って走行すると仮定した場合に料金所を通過すると予想される時刻(予想通過時刻)と、割引適用時間帯の開始時刻及び終了時刻のうち予想通過時間に近い方の時刻と、の差をいう)に関する考慮がなされてもよい。他車両の安全に配慮し、料金所近辺になってから急加速、急減速、或いは停止してしまう等の不都合な挙動を防止するためである。この場合、目標車速表示装置34により余裕時間を目標車速V*と併せて表示するものとしてもよい。余裕時間が示されることによって、目標車速V*がギリギリの車速なのか、実は余裕をもって算出された車速なのかを運転者が認識することができるため、更に安心して運転を行なうことができる。
【0049】
また、クルーズコントロールシステム等の名称で知られる、一定車速を維持して走行するように車両制御を行なう定速走行制御システムと連携し、運転者の所定の操作に基づいて、本実施例の車両用情報提供装置1が表示する目標車速V*を当該定速走行制御システムの目標車速に設定する等の応用も可能であると考えられる。この場合、定速走行制御システムが目標車速V*に従って自動的にスロットル開度等を調節するため、運転者がアクセルコントロールに気を取られることがなくなり、運転負荷を軽減することができる。
【0050】
また、定速走行制御システムに限らず、先行車両との車間距離を一定に保って走行するように車両制御を行なう車間距離制御システムとの連携も可能である。例えば、目標車速V*が所定の上限車速Vhと下限車速Vlの間に収まっており、且つ、実際の車速が目標車速V*から所定車速以上乖離した場合に、車間距離制御の自動停止及びその旨の通知を行なうことが考えられる。すなわち、割引適用を受け得る状態で、車間距離制御に基づき実際の車速が目標車速V*から遠くなってしまった場合には、車間距離制御を停止するのである。この場合、実際の車速が目標車速V*から所定車速以内に戻ってきたことを条件に車間距離制御を自動的に再始動させてもよい。これらにより、実際の車速が目標車速V*付近で推移している間は車間距離制御システムを活用し、なおかつ割引適用をも受けることが可能となる。従って、割引適用を優先させつつ、できる限り車間距離制御システムを活用することで、運転負荷を軽減することができる。
【0051】
以上より、本実施例の車両用情報提供装置1によれば、有料道路において通行料金割引の適用を受けられるように運転者に適切な情報提供を行なうことができる。
【0052】
なお、図3は、本実施例が適用されていない車両の走行局面を模式的に示すタイムチャートである。図中(A)のケースでは、有料道路においてもう少し遅く走行すれば出口料金所を通過する時刻が割引時間帯にかかり、割引の適用を受け得た。これに対し本実施例が適用された車両では、時刻(a)の辺りで出口料金所が通過予定料金所として特定され、割引適用を受けられるように実際の車速よりも低い目標車速V*が表示される。運転者はこれに従って図3の例よりも遅く走行する(或いは、案内された施設において時間調整する)ため、割引の適用を受けられる可能性が高いものとなる。
【0053】
一方、図中(B)のケースでは、一般道路においてもう少し早く走行すれば入口料金所を通過する時刻が割引時間帯にかかり、割引の適用を受け得た。これに対し本実施例が適用された車両では、有料道路の利用が推奨経路に含まれるものであれば、時刻(b)の辺りで出口料金所が通過予定料金所として特定され、割引適用を受けられるように実際の車速よりも高い目標車速V*が表示される。運転者はこれに従って図3の例よりも早く走行するため、割引の適用を受けられる可能性が高いものとなる。
【0054】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0055】
例えば、割引情報は、通信装置40により定期的に取得されるものとしたが、通過予定料金所が特定される都度、取得されるものとしてもよい。また、通信による取得は必須の構成ではなく、定期的にディーラー店等でアップデートされてもよい。
【0056】
また、割引情報は、地図情報が記憶された記憶メディアと共に記憶されていてもよいし、ROM等にデフォルト値として記憶させておいてもよい。
【0057】
また、通過条件の決定を車両内で行なうことを例示したが、自車両の現在位置及び通過予定料金所を情報センター80に送信し、これに応じて情報センター80内で決定されて返信される通過条件を用いるものとしてもよい。この場合、実施例における機能ブロック「通過条件決定部24」に代えて、当該通過条件の通信による取得を制御する「通過条件取得部24」なる機能ブロックを有することとすればよい。
【0058】
また、目標車速V*が現在の車速を中心とする所定範囲内である場合は、目標車速V*表示しないものとしてもよい。そのままの車速で走行しても割引の適用を受けられる可能性が高い場合は特段の注意喚起が不要と考えられるからである。
【0059】
また、実施例におけるS190の処理を省略し、所定の下限車速Vlを下回った場合は、単に目標車速V*を表示しないものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、自動車製造業や自動車部品製造業等に利用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 車両用情報提供装置
10 ナビゲーション装置
12 統合アンテナ
14 メモリ
16 ディスプレイパネル
18 音声入出力装置
20 ナビゲーション装置用ECU
21 現在位置特定部
22 経路案内部
23 通過予定料金所特定部
24 通過条件決定部
25 目標車速算出部
30 車速センサー
32 スピードメーター
34 目標車速表示装置
36 ジャイロセンサー
40 通信装置
50 ETC車載器
60 無線基地局
70 ネットワーク
80 情報センター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の現在位置を特定する現在位置特定手段と、
前記現在位置特定手段により特定された自車両の現在位置からユーザーにより設定された目的地に至る推奨経路を設定する推奨経路設定手段と、
自車両が通過する予定の有料道路の料金所を通過予定料金所として特定する通過予定料金所特定手段と、
前記有料道路における走行距離が割引適用条件に抵触する場合に、前記通過予定料金所を自車両に近い料金所に変更して案内する案内手段と、を備え、
前記推奨経路設定手段は、前記案内手段により前記通過予定料金所が自車両に近い料金所に変更された場合には、該変更された前記通過予定料金所を通過するように前記推奨経路を再設定する手段である、
車両用情報提供装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−257422(P2011−257422A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174783(P2011−174783)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【分割の表示】特願2006−200985(P2006−200985)の分割
【原出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】