説明

車両用情報提供装置

【課題】最新のETC割引制度情報に基づいて有料道路通行料金を安く抑えるための情報提供を行う車両用情報提供装置を提供する。
【解決手段】自車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、地図情報を記憶する記憶手段と、自車両がETCに対応しているか否かを判定する判定手段と、前記現在位置検出手段によって検出された自車両現在位置と設定された目的地との間の有料道路においてETCノンストップ通過が可能な料金所の設置場所に関する情報及びETC割引情報を取得する料金所情報取得手段と、前記現在位置検出手段によって検出された自車両現在位置と該設定された目的地と前記判定手段により、ETCノンストップ通過が可能な料金所の設置場所とを前記地図情報に照らし、かつ前記ETC割引情報に基づいて、自車両現在位置から該設定された目的地までの有料道路通行料が最も安くなる経路を算出し、案内する経路案内手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、車両乗員に情報を提供する車両用情報提供装置に係り、特に、最新のETC割引制度情報に基づいて有料道路通行料金を安く抑えるための情報提供を行う車両用情報提供装置に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国の多くの有料道路(高速道路及び一般有料道路)において、通行料金徴収にETC(登録商標)が導入され、普及が進められている(例えば、非特許文献1及び2参照)。
【0003】
ETC(Electronic Toll Collection System;自動料金徴収システム)とは、料金所ゲートに設置したアンテナと、車両に装着した車載器との間で5.8GHz帯の無線通信を用いて自動的に通行料金の支払いを行い、通行券の受け取りや通行料金の支払いのために一旦停車する必要性をなくし、料金所のノンストップ通行を可能にするシステムである。
【0004】
車載器は、ETCカードを挿入することによって料金所に設置されたアンテナと通行料金支払いに必要な情報が無線通信されるようになる。ETCカードは、ICチップを搭載した決済用のカードであって、支払者を識別し、通行料金の支払いに必要なデータを記録している。
【0005】
従来、車両乗員への情報提供の一部として、ETCの利用を前提としたカーナビゲーション・システムによる経路案内が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0006】
特許文献1及び2には、高速道路料金所においてETC対応レーンに案内するナビゲーション装置/移動体案内装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−146598号公報
【特許文献2】特開2001−134895号公報
【非特許文献1】特殊法人日本道路公団、「ETC」、[online]、[平成17年3月28日検索]、インターネットURL<http://www.jhnet.go.jp/format/index3_05.html>
【非特許文献2】財団法人道路システム高度化推進機構、「ETC総合情報ポータルサイト“GO!ETC”」、[online]、[平成17年3月28日検索]、インターネットURL<http://www.go−etc.jp/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、最近では、ETC普及政策の一環として、各種の割引制度が導入されている。具体的には、本明細書作成時点では、A)入口料金所をETCノンストップ走行して高速道路に入り、且つ、高速道路を走行していた時間が一部でも午前0時〜4時の間に入っていれば割引が受けられる「深夜割引」(インターネットURL<http://www.jhnet.go.jp/night_discount/index.html>参照)、B)入口料金所をETCノンストップ走行して高速道路に入り、且つ、入口又は出口料金所の通過時刻が午前6時〜9時又は午後5時〜8時の間であって、且つ、そのときの高速道路上での移動距離が大都市近郊区間を含まずに100km以内のときに割引が受けられる「通勤割引」(インターネットURL<http://www.jhnet.go.jp/commutation_discount/index.html>参照)、及び、C)入口料金所をETCノンストップ走行して高速道路に入り、且つ、入口又は出口料金所の通過時刻が午後10時〜翌朝午前6時の間であって、且つ、そのときの高速道路上での移動距離が大都市近郊区間を含んで100km以内のときに割引が受けられる「早朝夜間割引」(インターネットURL<http://www.jhnet.go.jp/morning−night_discount/index.html>参照)、などの割引制度が実施されている。
【0009】
しかしながら、上記特許文献1及び2に開示されたナビゲーション装置/移動体案内装置に代表される従来装置は、一般的に、単に車両をETC対応レーンへ誘導しようとするものに過ぎず、それ以上にETCの存在を利用した経路案内等を行うものではない。
【0010】
特に、上記のような走行時間帯、料金所通過時刻、走行距離、及び走行区間などの違いによる割引料金適用の有無について、従来装置は何ら考慮していない。
【0011】
また、上述のような現行のETC割引制度における割引率、適用区間、適用時間帯、適用時刻などの設定は、例えば今後のETC普及状況などに応じて、将来的には変更される可能性もある。よって、このような設定に関する情報は、上記特許文献1及び2に開示されたナビゲーション装置/移動体案内装置におけるETC対応レーンの設置場所のように固定的な情報として予め保持しておけば十分であるというものではない。
【0012】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、最新のETC割引制度情報に基づいて有料道路通行料金を安く抑えるための情報提供を行う車両用情報提供装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明の第一の態様は、
車両乗員に情報を提供する車両用情報提供装置であって、
自車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、
地図情報を記憶する記憶手段と、
自車両がETCに対応しているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により自車両がETCに対応していると判定されたときに、前記現在位置検出手段によって検出された自車両現在位置と設定された目的地との間の有料道路においてETCノンストップ通過が可能な料金所の設置場所に関する情報及びETC割引情報を取得する料金所情報取得手段と、
前記現在位置検出手段によって検出された自車両現在位置と該設定された目的地と前記判定手段により自車両がETCに対応していると判定されたときには前記料金所情報取得手段により取得されたETCノンストップ通過が可能な料金所の設置場所とを前記地図情報に照らし、かつ前記ETC割引情報に基づいて、自車両現在位置から該設定された目的地までの有料道路通行料が最も安くなる経路を算出し、案内する経路案内手段と、を有することを特徴とする車両用情報提供装置である。
【0014】
この第一の態様において、「有料道路」とは、高速道路のほか、一般有料道路も含む概念である。
【0015】
また、この第一の態様において、料金所情報取得手段は、例えば、無線通信を利用して、所定の通信局(センタ)から有料道路においてETCノンストップ通過が可能な料金所の設置場所に関する情報及びETC割引情報を取得する。センタまでの通信経路は、路車間通信や車車間通信を経由してもよい。料金所情報取得手段は、常に最新のETCノンストップ通過が可能な料金所の設置場所に関する情報及びETC割引情報を取得するものとする。
【0016】
この第一の態様によれば、自車両がETCに対応している場合、最新のETC対応料金所の設置場所に基づいて経路が探索されるため、建設されたばかりの最新の料金所も考慮した有料道路通行料が最も安くなる経路探索・案内が可能となる。
【0017】
上記目的を達成するための本発明の第二の態様は、上記第一の態様の車両用情報提供装置であって、車両乗員に情報を提供する車両用情報提供装置であって、自車両が前記ETC割引情報の割引の適用対象になるための条件を判断する条件判断手段と、該条件判断手段により判断された上記条件を車両乗員に伝達する伝達手段とを有する車両用情報提供装置である。
【0018】
この第一及び第二の態様において、「有料道路」とは、高速道路のほか、一般有料道路も含む概念である。
【0019】
また、この第一及び第二の態様において、前記料金所情報取得手段は、例えば、無線通信を利用して、所定の通信局(センタ)から有料道路通行料金の割引に関する情報を取得する。センタまでの通信経路は、路車間通信や車車間通信を経由してもよい。前記料金所情報取得手段は、常に最新の情報を取得するものとする。
【0020】
また、この第二の態様において、「割引の適用対象になるための条件」とは、例えば上述のような現行のETC割引の場合、ETCを利用可能であること(ETC車載器を搭載し、有効なETCカードが挿入されていること)といった装備上の条件や、所定の時刻までにETCゲートを通過して有料道路に入ることといった走行上の条件を指す。
【0021】
この第二の態様によれば、車両乗員は、有料道路通行料金が割引される制度の存在及びどのようにすればその割引を受けることができるのかを知ることができるため、例えば割引が受けられるように有料道路の利用時間帯や利用区間を工夫するなどして割引料金の恩恵を受けることが可能となり、通行料出費の節約を図ることができる
【0022】
上記目的を達成するための本発明の第三の態様は、上記第二の態様に係る車両用情報提供装置において、
前記伝達手段は、
前記現在位置検出手段と、
前記記憶手段と、
前記経路案内手段と、を有し、
前記経路案内手段は、前記現在位置検出手段によって検出された自車両現在位置と設定された目的地とを前記地図情報に照らして、自車両現在位置から設定された目的地までの経路を算出し、案内するとともに、
前記経路案内手段は、前記条件判断手段により判断された前記条件を考慮して、前記経路を案内する、ことを特徴とする車両用情報提供装置である。
【0023】
この第三の態様において、「伝達手段」は、カーナビゲーション・システム又はその一部である。
【0024】
また、この第三の態様において、「経路案内手段」は、例えば上述のような現行のETC割引の場合、ETC割引が適用される条件を考慮して、ETCレーンのある料金所を通過して有料道路に入る経路、或いは、所定の時刻までに又は所定の時刻以降にETCレーンのある料金所を通過して有料道路に入る経路、或いは、所定の時刻までに又は所定の時刻以降に有料道路を降りる経路、などの経路を案内する。
【0025】
より具体的には、上記経路案内手段は、案内しようとする経路に有料道路が含まれるとき、例えば、1)上記条件が所定の料金所(例えば、ETC対応レーンを備えた料金所)から該有料道路に入ることであった場合、該所定の料金所から該有料道路を入る経路を案内し、或いは、2)上記条件が所定の時刻以降に所定の料金所から該有料道路に入ることであった場合、該所定の時刻以降に該所定の料金所から該有料道路に入る経路を案内する、或いは、3)上記条件が所定の時刻までに該有料道路を出ることであった場合、該所定の時刻までに該有料道路を出る経路を案内する。
【0026】
この第三の態様によれば、有料道路で通行料金の割引が受けられるような経路が案内されるため、運転者は案内された経路に従って車両を走行させるだけで割引料金の適用を受けることができる。
【0027】
なお、この第一及び第二の態様において、前記料金所情報取得手段は、データトラフィック軽減のため、上記経路案内手段に目的地が設定されたときに、上記現在位置検出手段により検出された自車両現在位置と該設定された目的地との間に存在する有料道路の通行料金の割引に関する情報のみを取得することが好ましい。
【0028】
また、この第三の態様において、上記経路案内手段は、案内しようとする経路に有料道路が含まれるとき、経路案内に付随する情報として、例えば、上記条件が所定の時刻以降に該有料道路を出ることであった場合、該所定の時刻以降に該有料道路を出ると通行料金が割引になることを車両乗員に伝達してもよい。なお、この場合、上記所定の時刻まで有料道路上で時間調整が可能となるように、上記伝達手段は、案内した経路において上記有料道路から出る料金所と自車両現在位置との間にサービスエリア又はパーキングエリアが存在する間に上記所定の時刻以降に該有料道路を出ると通行料金が割引になることを車両乗員に伝達することが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、最新のETC割引制度情報に基づいて有料道路通行料金を安く抑えるための情報提供を行う車両用情報提供装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例に係る車両用情報提供装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施例に係る車両用情報提供装置の経路探索処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施例に係る車両用情報提供装置によるETC関連情報を考慮した経路探索の一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施例に係る車両用情報提供装置によるETC関連情報を考慮した経路探索の別の一例を示す図である。
【図5】本発明の一実施例に係る車両用情報提供装置によるETC関連情報を考慮した経路探索の別の一例を示す図である。
【図6】本発明の一実施例に係る車両用情報提供装置によるETC関連情報を考慮した経路探索に付随する情報提供の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。なお、例えばカーナビゲーション・システムなどの車両用情報提供装置の基本概念、主要なハードウェア構成、作動原理、及び基本的な制御手法等については当業者には既知であるため、詳しい説明を省略する。
【実施例】
【0032】
図1〜6を用いて、本発明の一実施例に係る車両用情報提供装置について説明する。本実施例においては、上述のような現行のETC割引制度を例に挙げて、ETC装着車に装備された本実施例に係る車両用情報提供装置が、ETC割引に関する情報を利用して目的地までの経路等の情報を提供するものとする。
【0033】
図1は、本実施例に係る車両用情報提供装置100の概略構成図である。車両用情報提供装置100は、ナビゲーション部101と、所定の通信局(センタ)と無線通信を行う通信部102とから成る。
【0034】
本実施例において、ナビゲーション部101は、ETC車載器103と協働するように設計・設定される。具体的には、ETC車載器103にETCカードが正しく挿入され、有料道路料金所のETCゲートをノンストップ通過が可能な状態であるか否かの状態情報がETC車載器103よりナビゲーション部101に伝達される。
【0035】
また、本実施例において、通信部102は、例えば携帯電話網などを通じてセンタと通信を行う。路車間通信や車車間通信を経由するものとしてもよい。
【0036】
ナビゲーション部101は、自車両の現在位置を検出する現在位置検出部104と、車両乗員からの入力を受け付けるユーザ入力部105と、地図情報を記憶保持した地図データベース(DB)106と、ディスプレイ装置などの表示部107と、これら構成要素を統括的に制御する制御部108とを有する。
【0037】
現在位置検出部104は、例えばGPS(Global Positioning System;全地球測位システム)を利用して自車両の現在位置の緯度・経度を検出する。
【0038】
ユーザ入力部105は、目的地などの経路探索の際の条件を車両乗員が入力するためのものであり、例えば、表示部107に隣接して設けられた押しボタン等や、リモコン受信部及び対応するリモコン送信端末のペア、などである。表示部107と一体化されたタッチパネル式であってもよい。
【0039】
地図データベース106は、任意の記憶媒体でよく、着脱可能な媒体であることが好ましい。また、通信部102を通じてセンタから最新の地図情報を取得し、上書き更新されるように設計・設定されてもよい。
【0040】
表示部107は、任意のディスプレイ装置でよく、車室内空間のスペース効率の観点から、例えばインパネ内に埋め込まれた一体型であることが好ましい。
【0041】
制御部108は、例えばECU(Electronic Control Unit;電子制御装置)である。制御部108は、ETC車載器103から上記状態情報を取得し、その作動状況を把握する。
【0042】
ナビゲーション部101は、通常時、従来のカーナビゲーション・システムと同等に機能する。すなわち、制御部108は、現在位置検出部104により検出された自車両現在位置を地図データベース106に記憶された地図情報に重ねて表示部107により車両乗員へ提示すると共に、ユーザ入力部105を通じて車両乗員から目的地が設定されたときには自車両現在位置及び目的地を地図情報に照らしてこれら2点間を結ぶ経路を探索し、探索結果を表示部107に表示する。
【0043】
次いで、このような構成・機能を持つ本実施例の車両用情報提供装置100の動作について、図2を用いて説明する。図2は、本実施例に係る車両用情報提供装置100の経路探索処理の流れを示すフローチャートである。
【0044】
経路探索のためには、まず、車両乗員がユーザ入力部105を通じて目的地を設定することが必要となる(S201)。
【0045】
制御部108は、目的地が設定されると、ETC車載器103から取得した状態情報を参照して、現在ETCが有効であるか否か、すなわちETC車載器103に有効なETCカードが正しく挿入され、自車両が有料道路のETC対応ゲートをノンストップ通過できる状態となっているか否か、を判断する(S202)。
【0046】
ETCが有効である場合(S202の「YES」)、次いで、制御部108は、現在位置検出部104により検出された自車両現在位置と、車両乗員により設定された目的地とを地図データベース106によって記憶保持された地図情報に照らして、自車両が現在位置から設定された目的地へ移動する際に有料道路を通る可能性が考えられるか否か、すなわちこれら2点間の領域及びその近傍に有料道路が存在するか否か、を判断する(S203)。
【0047】
自車両が現在位置から設定された目的地まで移動する際に有料道路を通る可能性が考えられるとき(S203の「YES」)、次いで、制御部108は、通信部102を通じてセンタへ自車両現在位置及び設定された目的地をアップロードし、これら2点間の領域及びその近傍に存在する有料道路についてのETC関連情報を要求し、ダウンロードする(S204)。
【0048】
ここで、ETC関連情報とは、例えば、ETC専用インターチェンジ(IC)の設置に関する情報や、ETC割引制度に関する情報などを指すものとする。ここで、ETC専用ICとは、試験的に又は一時的に、料金所にETC対応ゲートだけが設けられたETC装着車でないと出入りできない料金所が設けられたインターチェンジを指す。また、ETC割引制度に関する情報とは、上述のような現行のETC割引制度の場合、割引率、割引対象時間帯、割引対象料金所通過時刻、割引対象走行距離、割引対象区間などの情報を指す。割引制度の内容によっては、他にも、例えば、割引額、割引対象車種、割引対象日、割引対象曜日などの情報が含まれてもよい。
【0049】
このようなETC関連情報がダウンロードされると、次いで、制御部108は、このセンタから取得した最新のETC関連情報を考慮して、自車両現在位置から設定された目的地までの有料道路通行料が最も安くなる経路を探索する(S205)。このETCを考慮した経路探索については後に具体例を挙げて詳述する。
【0050】
他方、ETCが有効でない場合(S202の「NO」)、又は、自車両が現在位置から設定された目的地まで移動する際に有料道路を通る可能性がないと判断されるとき(S203の「NO」)、現在位置及び目的地のセンタへのアップロード及びセンタからのETC関連情報のダウンロードは行われず、従来通りの(すなわち、ETCを考慮しない)経路探索が実行される(S206)。
【0051】
S205及びS206のいずれの経路探索が行われた場合であっても、制御部108は探索結果を表示部107に表示し、車両乗員に提示する(S207)。
【0052】
このように、車両用情報提供装置100は、目的地が設定されたときにETCの有効性を自動判別し、ETCが有効であり且つ有料道路を通る可能性があるときには、センタからETC関連情報を取得して経路探索に反映させる。
【0053】
以下、具体的な状況例をいくつか挙げて、上述のETC関連情報を考慮した経路探索について説明する。
【0054】
(第一の状況例)
図3は、第一の状況例を示しており、自車両が現在位置Sから有料道路Tを通って目的地Gまで移動するための経路を探索するものとする。
【0055】
ここで、最近になって試験的にETC専用のIC(B)が建設されたものとする。このIC(B)が含まれていない地図情報を用いた経路探索では、IC(A)から有料道路Tに乗り、IC(C)で降りて目的地Gへ向かうルートR1(S→IC(A)→IC(C)→G)が得られることになる。
【0056】
ところが、本実施例によれば、目的地Gを設定したときにETC専用のIC(B)が建設されたというETC関連の最新情報がセンタから取得されるため、IC(A)から有料道路Tに乗り、IC(B)で降りて目的地Gへ向かうというルートR2(S→IC(A)→IC(B)→G)を探索することができ、目的地Gへのより距離の短い経路(R1>R2)を車両乗員に案内することができる。
【0057】
(第二の状況例)
図4は、第二の状況例を示しており、自車両が現在位置Sから有料道路Tを通って目的地Gまで移動するための経路を探索するものとする。
【0058】
ここでは、上述のような現行のETC割引制度のように、ETC割引を受けるためには入口料金所をETCノンストップ走行で通過することが必須条件であるものとする。
【0059】
このような有料道路TのETC割引を受けるための条件について情報がなければ、IC(B)から有料道路Tに乗り、IC(C)で降りるルートR1(S→IC(B)→IC(C)→G)が目的地Gまでの最短ルートとして探索されることになる。
【0060】
ところが、本実施例によれば、目的地Gを設定したときにETC対応の料金所からETCノンストップ通過で有料道路Tに入ればETC割引を受けられるというETC関連情報がセンタから取得されるため、距離的には遠回りであるがIC(A)から有料道路Tに乗れば通行料の割引が受けられることが判るため、IC(A)から有料道路Tに乗るルートR2(S→IC(A)→IC(C)→G)を探索し、案内することができる。
【0061】
これは、例えば現在位置Sが(図4の場合とは逆に)IC(B)よりもIC(A)に近いが、ユーザが日頃有料道路走行距離を短くするためにIC(B)を利用していることがナビゲーションシステムの学習機能から判明している場合にも適用できる。この場合、ETC関連情報がなければこの学習結果に従って日頃利用しているIC(B)から有料道路Tに乗る経路が案内されてしまうが、ETC関連情報からIC(A)から有料道路Tに乗った方が有料道路走行距離は長くなるが、割引の適用により通行料金はIC(B)から乗った場合よりも安くなると判断された場合、ユーザが普段利用するICとは異なるが、ETC割引を受けることができるIC(A)を通る経路を案内することができる。
【0062】
(第三の状況例)
図5は、第三の状況例を示しており、自車両が現在位置Sから有料道路Tを通って目的地Gまで移動するための経路を探索するものとする。
【0063】
ここでは、上述のような現行のETC割引制度の1つである「通勤割引」及び「早朝夜間割引」のように、ETC割引を受けるためには所定の時間帯の間に入口若しくは出口料金所を通過することが必須条件であるものとする。
【0064】
図5の例では、ETC割引を受けるためには6:00〜9:00AMの間に入口若しくは出口料金所を通過することが必要であるものとする。また、自車両は、現在位置Sから移動を開始すると、IC(A)を5:50AMに通過するため、入口料金所では割引の適用は確定せず、6:00〜9:00AMの間に出口料金所を通過することが必要な状況であるものとする。
【0065】
このような有料道路TのETC割引を受けるための条件について情報がなければ、IC(A)から有料道路Tに乗り、IC(C)で降りるルートR1(S→IC(A)→IC(C)→G)が目的地Gまでの最短ルーととして探索されることになる。
【0066】
ところが、本実施例によれば、目的地Gを設定したときに5:50AMにIC(A)から有料道路Tに乗った後、9:00AMまでに出口料金所を通過して有料道路Tから降りれば通行料の割引を受けられるというETC関連情報がセンタから取得されるため、有料道路Tを降りてから目的地Gまでの経路は距離的に遠回りになるが9:10AM到着予定のIC(C)で降りるよりも8:50AM到着予定のIC(B)から出た方が通行料の割引が受けられることが判るため、IC(B)で有料道路Tから降りるルートR2(S→IC(A)→IC(B)→G)を探索し、案内することができる。
【0067】
上記のような所定の時刻までに有料道路を降りれば割引が適用されるという制度とは逆に、所定時刻以降に降りた方が割引が適用されるという制度が導入された場合には、図5の場合とは逆に、遠くのICまで有料道路上を走行し、有料道路を降りる時刻を遅らせる経路が案内されるようにしてもよい。
【0068】
(第四の状況例)
図6は、第四の状況例を示しており、自車両が有料道路T上の現在位置Sから目的地Gまで移動するための経路を探索するものとする。また、ここでの情報提供は、経路自体ではなく、経路案内に付随する情報の提供である。
【0069】
ここでは、上述のような現行のETC割引制度の1つである「深夜割引」のように、ETC割引を受けるためには所定の時間帯の間に有料道路上にいることが必須条件であるものとする。
【0070】
図6の例では、ETC割引を受けるためには0:00〜4:00AMの間に有料道路T上にいることが必要であるものとする。また、自車両は、現在位置Sから移動を開始すると、降りる予定のICを11:40PMに通過するため、割引が適用されないと予想されているものとする。
【0071】
このような有料道路TのETC割引を受けるための条件について情報がなければ、車両運転者は出口料金所通過時刻について何の考慮もないまま有料道路Tから降りてしまうことになる。
【0072】
ところが、本実施例によれば、このまま0:00AM前に有料道路Tから降りてしまえば通行料の割引が適用されないということがセンタから取得したETC関連情報より判明するため、車両運転者に降りる予定のICの手前のサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)において休憩をとるように勧めることができる。
【0073】
これは、文字メッセージとして表示部107上に案内経路と共に表示されてもよく、及び/又は、音声メッセージとしてスピーカなどの音声出力部(図示せず)から出力されてもよい。
【0074】
例えば、図6の例において車両運転者が本実施例に係る車両用情報提供装置100からの休憩をとって時間調整をするようにとのアドバイスを受けてサービスエリアで30分停車したものとすると、ICの通過時刻は0:10AMとなり、深夜割引が適用されることになる。
【0075】
なお、この場合、IC手前に休憩可能なサービスエリアやパーキングエリアが存在する必要があるため、制御部108は、自車両現在位置を地図情報に照らして、案内中の経路において有料道路を降りる予定のICの手前にある最後の(最も近い)サービスエリア又はパーキングエリアよりも手前においてこの第四の状況例で説明したような経路案内に付随する情報提供を実行するか否かを判断し、実行する必要がある。
【0076】
以上、具体例も挙げて説明したように、本実施例によれば、経路案内の際に、最新のETC関連情報に基づいてETC割引が適用される経路を探索し、案内することができるため、ユーザは容易にETC割引を受けられるようになる。
【0077】
なお、上記一実施例においては、一例として、有料道路の通行料金が最も安くなる、特にETC割引が適用される、経路が優先的に探索・案内されるものとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、「ETC割引適用優先経路(又は最安通行料経路)」、「距離優先経路」、及び、過去の履歴に従った「学習経路」の3つの経路を探索し、ユーザ操作に応じていずれかを表示するようにしてもよく、或いは、これら3つの経路のうち予めユーザによって決定されたデフォルト設定の経路のみを探索し、案内するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、車両乗員に情報を提供する車両用情報提供装置に利用できる。搭載される車両の外観、重量、サイズ、走行性能等は問わない。
【符号の説明】
【0079】
100 車両用情報提供装置
101 ナビゲーション部
102 通信部
103 ETC車載器
104 現在位置検出部
105 ユーザ入力部
106 地図データベース(DB)
107 表示部
108 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両乗員に情報を提供する車両用情報提供装置であって、
自車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、
地図情報を記憶する記憶手段と、
自車両がETCに対応しているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により自車両がETCに対応していると判定されたときに、前記現在位置検出手段によって検出された自車両現在位置と設定された目的地との間の有料道路においてETCノンストップ通過が可能な料金所の設置場所に関する情報及びETC割引情報を取得する料金所情報取得手段と、
前記現在位置検出手段によって検出された自車両現在位置と該設定された目的地と前記判定手段により自車両がETCに対応していると判定されたときには前記料金所情報取得手段により取得されたETCノンストップ通過が可能な料金所の設置場所とを前記地図情報に照らし、かつ前記ETC割引情報に基づいて、自車両現在位置から該設定された目的地までの有料道路通行料が最も安くなる経路を算出し、案内する経路案内手段と、を有することを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両乗員に情報を提供する車両用情報提供装置であって、
自車両が前記ETC割引情報の割引の適用対象になるための条件を判断する条件判断手段と、
前記条件判断手段により判断された前記条件を車両乗員に伝達する伝達手段と、を有することを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両用情報提供装置であって、
前記伝達手段は、
前記現在位置検出手段と、
前記記憶手段と、
前記経路案内手段と、を有し、
前記経路案内手段は、前記現在位置検出手段によって検出された自車両現在位置と設定された目的地とを前記地図情報に照らして、自車両現在位置から設定された目的地までの経路を算出し、案内するとともに、
前記経路案内手段は、前記条件判断手段により判断された前記条件を考慮して、前記経路を案内する、ことを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項4】
請求項3記載の車両用情報提供装置であって、
前記料金所情報取得手段は、前記経路案内手段に目的地が設定されたときに、前記現在位置検出手段により検出された自車両現在位置と該設定された目的地との間に存在する有料道路の通行料金の割引に関する情報のみを取得する、ことを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項5】
請求項3又は4記載の車両用情報提供装置であって、
前記経路案内手段は、案内しようとする経路に有料道路が含まれ、且つ、前記条件が所定の料金所から該有料道路に入ることであった場合、該所定の料金所から該有料道路を入る経路を案内する、ことを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項6】
請求項3又は4記載の車両用情報提供装置であって、
前記経路案内手段は、案内しようとする経路に有料道路が含まれ、且つ、前記条件が所定の時刻以降に所定の料金所から該有料道路に入ることであった場合、該所定の時刻以降に該所定の料金所から該有料道路に入る経路を案内する、ことを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項7】
請求項3又は4記載の車両用情報提供装置であって、
前記経路案内手段は、案内しようとする経路に有料道路が含まれ、且つ、前記条件が所定の時刻までに該有料道路を出ることであった場合、該所定の時刻までに該有料道路を出る経路を案内する、ことを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項8】
請求項3又は4記載の車両用情報提供装置であって、
前記伝達手段は、案内した経路に有料道路が含まれ、且つ、前記条件が所定の時刻以降に該有料道路を出ることであった場合、該所定の時刻以降に該有料道路を出ると通行料金が割引になることを車両乗員に伝達する、ことを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項9】
請求項8記載の車両用情報提供装置であって、
前記伝達手段は、案内した経路において前記有料道路から出る料金所と自車両現在位置との間にサービスエリア又はパーキングエリアが存在する間に前記所定の時刻以降に該有料道路を出ると通行料金が割引になることを車両乗員に伝達する、ことを特徴とする車両用情報提供装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−190470(P2012−190470A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−107002(P2012−107002)
【出願日】平成24年5月8日(2012.5.8)
【分割の表示】特願2005−126805(P2005−126805)の分割
【原出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】