説明

車両用情報提供装置

【課題】 運転者が認識すべき対象の報知にあたり、運転者が実際にその対象を認識(視認又は推測)できるかどうかを考慮する。
【解決手段】 ナビゲーションECUが、検出した自車位置に対し、案内経路における自車進行方向に、運転者が認識すべき対象、例えば信号機や障害物等の物や、事故発生などの事象が存在するかどうかを検出する。また、道路の勾配やカーブ曲率情報等に基づき、運転者の対象に対する視認性を判断し、視認性が100%より低い場合には、その対象に払うべき注意レベルを高く設定し、高い注意レベルの対象をディスプレイに透過的に三次元表示し、又はスピーカからそのような対象の存在について音声案内を行う。道路合流部に関しては、その合流部の存在が手前の分岐点の存在等によって推測可能な場合には、報知は行わず、推測不能の場合に報知することとしても良い。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、運転者が認識すべき対象、特に運転者が現実に視認又は或いは推測することのできない対象についての情報を提供する車両用情報提供装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、経路案内を行うナビゲーション装置が知られており、これを搭載する車両も増えてきている。このナビゲーション装置では、目的地を設定することによって、現在地から目的地までの最適経路を探索し、これを走行経路として記憶する。そして、現在位置を検出しながら、現在位置を含む地図上に、現在地および走行経路を表示して、走行経路を案内する。また、右左折する案内交差点では、交差点での進行方向を拡大表示すると共に、音声による案内も行う。このようなナビゲーション装置によって、目的地までの走行における進行方向の選択が容易になる。
【0003】また、路側に光ビーコンや、電波ビーコンを設置しておき、ここから進行方向の道路における渋滞情報等を流したり、FM多重放送で渋滞情報等を提供するシステムも実用化が始まっており、これらの情報を利用すれば、ナビゲーション装置により、より好適な経路案内が行える。
【0004】また、このような装置において、走行経路の案内だけでなく、運転者に車両の走行状態、例えば状態の注意度合いについての情報を提供して、案内経路における走行の安全性を高めることが考えられている。
【0005】例えば、特開平6−103491号公報では、ナビゲーションの地図情報に基づいて、車両の走行状態に対する注意度合いを推測し、事前にこれを運転者に報知している。このような注意度合いが報知されれば、運転者はこれに基づいて、事前に走路において注意すべき事象を知ることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の注意度報知機能では、注意度合いの報知にあたり、認識すべき対象(物や事象)を運転者が現実に認識できるかどうか、例えば視認できるかどうかについては考慮していない。走路状態における注意度合いは、運転者が現実に対象となるものを視認できるかどうかで全く異なる。つまり、認識すべき対象物を見ることができなければ、見えている対象物よりもその存在に対して知るべき度合いが高くなる。反対に、見えていれば特別な注意を払う必要性が小さいことも多い。従って、より適正に走路状態についての情報を運転者に報知するためには、運転者がその対象を見ることができるかどうかを考慮する必要がある。また、従来の構成では、見通しのよい道路などで、運転者が認識すべき対象物をすでに認識している場合にもこれが報知がなされる場合が生じ、これが続くと、運転者はこの報知を煩わしく感ずる可能性もある。
【0007】さらに、経路案内に関しても、画面や音声などによって案内される経路上の特徴物を運転者が実際に見通して認識できるかどうかを考慮しなければ、案内経路と、運転者が見る実際の経路風景との差異が大きくなってしまう場合もある。その結果、経路案内に示された特徴物の実感が乏しくなることも生ずる。
【0008】また、運転者が認識すべき対象を見ることができなくても、その対象が存在することが運転者の常識である場合もあり、このような状況でも常にこれが報知されることが好ましくない場合もある。
【0009】本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、不要な報知を行うことがないように、運転者が認識すべき対象を実際に視認或いはその存在を推定できるかどうかを考慮して運転者に情報を伝えることのできる車両用情報提供装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、運転者が認識すべき対象についての情報を運転者に提供する車両用情報提供装置であって、地図情報に基づいて、運転者が認識すべき対象を認識できるかどうかを判断する認識性判断手段と、前記認識性判断手段により運転者の認識すべき対象に対する認識性が低いと判断された場合に、前記認識すべき対象に関する情報を出力させる情報出力制御手段と、を具備したことを特徴とする。
【0011】このように、本発明では、運転者が運転に当たって認識すべき対象(物や事象)について、その対象を運転者が実際に認識できるか(例えば視認できるか或いはその存在が推測できる)どうかによって、対象に関する情報を報知する。このため、過剰な報知をなくし、また、視認性が低い場合に報知される情報に基づいて、運転者は、認識できない対象に対して事前に注意を払うことが可能となる。
【0012】また、前記情報発生手段は、認識すべき対象に対する視認性が低いと判断された場合に、この認識すべき対象を表示地図画面上に透過表示することを特徴とする。さらに、前記情報発生手段は、その認識すべき対象を表示地図画面上に三次元的に透過表示することを特徴とする。
【0013】認識すべき対象としては、案内経路、路側構造物、道路合流部、建物、路上障害物、工事のいずれかを含む。
【0014】このように、認識すべき対象、例えば、対象に対する運転者の視認性が低い場合に、実際には視認できない対象を画面上に透過表示したり、さらには、三次元的にこの対象を表示することにより、運転者の注意を引き、より見やすい案内画面とすることが可能となる。
【0015】更に、本発明では、前記認識性判断手段にて、道路合流部の手前に車両流出部が存在しない場合又は前記道路合流部に対する視認性が低いと判断された場合に、前記情報出力制御手段が前記道路合流部に関する情報を出力させることを特徴とする。道路合流部の手前に車両流出部が存在している場合には、運転者は、その流出部が所定の流出部(例えば、インターチェンジ出口、サービス又はパーキングエリア入口)であれば、道路の一般形状からその先に道路合流部が存在することを推測できる。従って、そのような場合に道路合流部に関する情報を出力しないこととすれば、認識している対象に対して過度な報知が行われることを防止することができる。一方、合流部に対する視認性が低い場合には合流部に関する情報を出力することとすれば、例えば、カーブしている道路の先や、トンネル内或いはトンネルの先に道路合流部が存在していて、その合流部を視認することが困難な場合にも、その存在を予め運転者に報知することが可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施の形態(以下、実施形態という)について、図面に基づいて説明する。
【0017】実施形態1.
[全体構成]図1は、本実施形態の全体構成を示すブロック図である。経路案内における各種処理をコントロールするナビゲーションECU(エレクトリック・コントロール・ユニット)10には、DGPS装置12、地図データベース14が接続されている。DGPS(デファレンシャル・グローバル・ポジショニング・システム)装置12は、人工衛星からの信号を利用して検出した現在位置情報に対し、FM多重放送などにより供給されるGPS装置での誤差情報を考慮して位置情報を補正し、正確な現在位置検出を行う。
【0018】地図データベース14は、各地の道路地図データおよび道路周辺の情報、例えば、建物などの目印(ランドマーク)、交差点の情報などが記憶されている。さらに、本実施形態では、これらの情報に加え、道路の勾配、カーブの曲率や、道路周辺の壁、トンネル、丘陵など、運転者の道路の見通しを左右する障害物等に関する情報が、この地図データベース14に記憶されている。
【0019】また、ナビゲーションECU10には、通信装置として、路側(通常、一般道の路側)に設けられた光ビーコンとの通信を行う光ビーコン通信装置16、路側(通常、高速道路の路側)に設けられた電波ビーコンとの通信を行う電波ビーコン通信装置18、FM多重放送を受信するFM多重放送受信装置20、他の車両との通信を行う車車間通信装置22が接続されている。このため、ナビゲーションECU10は、これらの通信装置によって、事故情報、交通規制、道路工事、他車動向等、変化する経路環境についての情報を随時取得することができる。
【0020】さらに、ナビゲーションECU10には、運転者に情報を提供するための情報出力装置として、ディスプレイ24と、スピーカ26とが接続されており、ディスプレイ24は、探索した最適案内経路や経路における目標物等が表示され、またスピーカ26は、案内経路等に関する情報を音声で報知する。
【0021】このような構成の車両用情報提供装置において、図示しない入力部によって、ドライブにおける目的地が設定されると、ナビゲーションECU10は、地図データベース14の地図情報を利用して、目的地までの最適経路を探索し、得られた目的地までの経路を案内経路として設定する。
【0022】そして、経路が設定されたドライブにおいては、ナビゲーションECU10が、案内経路に沿ったドライブを行うための案内処理を行う。例えば、車両の走行時には、ディスプレイ24に現在の自車位置周辺の地図を表示すると共に、表示地図上に自車位置マークを表示する。さらに、設定された目的地までの案内経路は、他の道路と区別できるように表示色等を変更するなどして画面上に表示する。
【0023】そして、自車位置が右左折などを行う交差点に進入する際には、例えば、ディスプレイ24に交差点における右左折を示すと共に、その交差点を三次元的に拡大表示する拡大ガイダンス表示等が行われる。また、これと併せて、スピーカ26から、例えば「次の○○ビルの見える交差点を右折して下さい。」といったような音声指示を発し、経路案内を実行する。
【0024】本実施形態1においては、ナビゲーションECU10が、検出した自車位置に対し、設定されている案内経路における自車進行方向に、運転者が認識すべき対象、例えば合流部等を含む案内経路や、信号機等の路側構造物、路上障害物や、事故発生などの事象が存在するかどうかを検出する。この対象は、地図情報や、各種通信などによって知ることができる。そして、道路の勾配情報などに基づき、運転者が実際にその対象を視認できるかどうかを判断し、視認性が低い場合には、その対象となる物をディスプレイ24に透過的表示し、あるいは、これと併せてスピーカ26からそのような視認できない対象物の存在について音声による案内を行う。さらに、表示は、対象物のデータが三次元データとして得られる場合には、三次元表示を行い、ディスプレイ24上での視認性を高くする。
【0025】[運転者の認識すべき対象の報知処理]以下、図2を用いて、本実施形態のナビゲーション装置による経路に存在する対象に関する情報の報知処理について説明する。
【0026】まず、DGPS装置12が自車の現在位置を検出すると(S1)、ナビゲーションECU10は、地図データベース14より検出した現在位置の進行方向における記憶データを読み出し、また、各通信装置16、18、22、受信装置20から案内経路における自車進行先Lm(例えばL=200m)以内に、運転者が認識すべき対象が存在するかどうかを判定する(S2)。なお、距離Lmは、固定値には限られず、例えば、現在車速×10秒に相当する距離とすることにより、車速に応じて、運転者に報知する対物の存在検出範囲を変更することが可能となる。
【0027】ここで、認識すべき対象は、例えば、経路上の交差点、Lm以内に存在する信号機、その信号機の現示色、道路の合流部、合流部付近を走行している車両や、道路上にある落石や故障車等の障害物などが挙げられる。信号機や合流部などの固定的な情報は、地図データベース14から得ることができる。また、信号機の現示色や、車両の存在や、障害物等について動的な情報は、車車間通信装置22、光ビーコン通信装置16等の通信装置によって得ることができる。
【0028】対象が存在しない場合(No)には、S1に戻り、自車の現在位置の検出を順次実行する。
【0029】また、対象が存在する場合は(Yes)、その対象の二次元データまたは三次元データに基づいて、運転者、もしくは所定の視点から見た対象の三次元データを作成する。また、対象の情報に基づいて、運転者の対象に対して払うべき注意度合い、つまり注意レベルを算出する(S3)。具体的には、例えば、Lm以内において、信号機がある場合に、「信号機が青である」は注意レベル0、「信号機が黄色である」は注意レベル1、「信号機が赤である」は注意レベル2などと判定する。また、例えば、Lm以内に信号機のない合流部があることが検出された場合には、案内経路が合流部における優先道路であるかどうかを判定し、優先道路の場合には注意レベル1とし、優先道路でない場合には注意レベル2などと判定する。
【0030】次に、ナビゲーションECU10は、自車位置と対象との距離がLm以内において、検出された対象を運転者が視認できるかどうかを判定する(S4)。この判定においては、図3に示すように、地図データベース14より読み出した地形データが示す道路の勾配や道路の曲率などに基づいて、距離Lm以内で自車位置から運転者が対象が視認できるかどうかを判断する。
【0031】自車の現在位置からlm先(l≦L)に高さhmの信号機が設置されていることが検出された場合において、図3(a)のように自車の現在位置PAが登り坂の途中である場合に、信号機が登った先の下り坂の途中PBに存在するとする。この場合に、地図データベース14に記憶されている道路の勾配データに基づいて、現在位置における運転者の視界範囲を算出する。その結果、視界範囲の下限が図3(a)の点線に示すようになっていれば、運転者は、現在位置PAから先の信号機を視認することができないと判断する。
【0032】また、同様に、自車の現在位置からlm先に高さhmの信号機が設置されている場合において、図3(b)のように自車の現在位置PAが登り坂の途中であって信号機が登り坂をさらに登った位置PBに存在する場合、物理的にはこの信号機を視認することはできる。しかし、仰角αが視認可能な角度を超えていれば、視認することは難しい。そこで、ナビゲーションECU10は、運転者の視界範囲の上限(仰角)についても判断して、この場合にも、現在位置PAから先の信号機を視認する事ができないと判断する。
【0033】さらに、認識すべき対象として、図3(a)と同様の位置に、例えば図3(c)のように落石などの障害物が車車間通信などによって検出された場合にも、道路の勾配データに基づいて、運転者がこの障害物を視認する事ができないと判断することができる。
【0034】また、ナビゲーションECU10は、道路勾配や道路の曲率を考慮して運転者が対象を視認できるかどうかを判定する。図3(d)は、曲率を考慮した場合において、現在位置PAの進行先lmに合流部が存在している場合の例を示している。図示するように、現在位置PAから合流部までの案内経路が曲がっており、かつ、合流部が緩やかな登り坂を下った地点PBに存在していると、地点PAにいる運転者の視認範囲は、図3(d)に示すようになり、運転者は、合流部を視認する事はできない。従って、ナビゲーションECU10は、この場合にも、対象が視認できないと判定する。
【0035】以上のような判定の結果(S4)、対象について視認不能の部分があれば(Yes)、さらに、対象が視認できないことによって状況の注意レベルが変化するかどうかを判断し、新たな注意レベルを算出する(S5)。
【0036】図4は、運転者が対象を認識することができない場合に、運転者に与えるべき注意レベルの算定方法を示している。
【0037】まず、図4(a)のように、現在位置からlm先にある信号機が運転者から見えない場合、つまり視認度0%の場合には、すでに算出した信号機に対する注意レベルをそれぞれ1レベルずつあげる。つまり、「信号機が青である」ならば、注意レベル0からレベル1にあげ、「信号機が黄色である」場合は、注意レベル1をレベル2とし、「信号機が赤である」場合には、注意レベル2をレベル3にする。
【0038】また、図4(b)のように、判定S4において、視認度が0%から100%の間にあると判定された場合には、上記視認度0%の場合と同様に注意レベルを1レベルずつあげる。
【0039】さらに、図4(c)のように視認度が100%であれば、運転者が信号機の存在と、その現示色についても判別できるから、注意レベルは、現示色青=レベル0、黄=1、赤=2のまま変更しない。
【0040】さらに、上述のように、判定S4においては、図4に示すような道路勾配だけでなく、対象までの経路の曲率および壁やトンネルなどの視界を遮るものの存在も考慮して、視認度を算出する。図5は、この場合の例を示している。図5においては、経路の両側に高い壁がある(トンネル内の場合も同様である)。そして、図5(a)のように、経路の曲率が大きいために壁によってlm先の信号機を運転者が見ることができない場合(視認度0%)には、S3においてすでに算出した信号機に対する注意レベルTをそれぞれ1レベルずつあげ、信号機の現示色が青ならば、注意レベル0からレベル1にあげ、黄なら注意レベル1をレベル2とし、赤なら注意レベル2をレベル3にする。
【0041】また、図5(b)に示すように視認度が0%〜100%ならば視認度0%と同様に注意レベルTを1レベルあげ、図5(c)のように視認度100%ならば注意レベルは変更しない。
【0042】以上のようにして、対象とその視認度に基づいて注意レベルTが求められると、次に、この注意レベルTがレベル1以上であるかどうかを判定し(S6)、レベル0であれば(No)、運転者に対する報知は行わず、再び、上述のように現在位置の検出(S1)、対象の検出(S2)、その注意レベルの算出・判定(S3〜S6)処理を繰り返す。
【0043】また、判定S6において、注意レベルがレベル1以上であると判定された場合(Yes)には、運転者に対してディスプレイ24への表示またはスピーカ26からの音声等により対象の存在を報知する(S7)。
【0044】図6は、対象が信号機の場合における注意レベルTの値と報知内容の一例を示しており、また、図7、図8は、ディスプレイ24への表示例を示している。
【0045】図6に示されるように、注意レベルが0の場合には、認識すべき対象が存在しないか(信号機がない)あるいはその対象を運転者が視認することができ、さらに経路環境における注意度合いが極めて低い(信号機の現示色が青)。従って、この場合には音声案内および画面表示のいずれも行わない。このため、運転者は、不要な報知に煩わされることがない。
【0046】また、注意レベルが1であれば、それほど高い注意を払う必要がないので、音声案内は行わず、ディスプレイ24にその対象の表示のみを行う。なおこの注意レベル1は、例えば、信号機の現示色が黄色で視認度100%か、あるいは信号機の現示色が青であるものの運転者が信号機を視認する事ができない場合などにおけるレベルである。
【0047】S6における判定の結果、注意レベル2であれば、音声による「信号、注意」という信号機の存在についての報知を一回行うと共に、信号機をディスプレイ24に信号機の現示色と共に三次元的に表示する。また、ディスプレイ24への表示は、信号機の視認度が100%でない場合に、実際には見えない物ではあるがその存在を明らかにするために、画面上図7(a)に示すように案内経路に重ねて、対象を透過的に表示する。また、対象の一部のみが見えない場合には、図7(b)のように見えない部分については、透過表示とする。
【0048】なお、上述のように注意レベルが1であって、信号機が視認できない場合にも、図7(a)、図7(b)と同様に、信号機を透過的に表示する。
【0049】ここで、注意レベル2は、本実施形態の場合、運転者が視認することができる信号機の現示色が赤の場合と、運転者が視認することができない信号機の現示色が黄の場合とがある。いずれの場合においても、信号機に対して運転者が注意を払うことが必要である。従って、音声による案内と、ディスプレイ24への表示の両方を行うことにより、運転者の注意を促すことができる。
【0050】次に、注意レベルが3の場合には、「信号、注意」という音声案内を数回繰り返すと共に、ディスプレイ24には、運転者が視認できない信号機が存在し、これが赤であることを印象づけるために、図7(c)に示すように、この信号機を透過的に表示し、かつその表示を点滅させる。注意レベル3は、本実施形態の場合には、信号機が運転者から視認することができず、かつ信号機の現示色が赤の場合である。従って、音声案内と表示案内の両方において、事前に赤信号の存在を知らせ、運転者の注意を強く促すことにより、運転者がスムーズに車両の停止を行うように働きかけることができる。なお、ディスプレイ24上における対象をより目立たせるために、ハイライト表示などを行ってもよい。
【0051】図8は、対象が信号機ではなく、経路のカーブやトンネル・壁などにより視認できない合流部が進行先に存在し、かつ、合流予定の他の車両が存在する場合の報知例を示している。上述のように、現在位置からLm以内に合流部があることが検出された場合には、例えば、案内経路が合流部における優先道路であるかどうかを判定し、優先道路の場合には注意レベル1とし、優先道路でない場合には注意レベル2などと判定される。また、その合流部に合流車両が存在していれば、例えば、それぞれ、注意レベルは優先道路の場合にレベル2、優先道路でない場合には注意レベル3と判定される。さらに、その合流部が視認できない場合には、各注意レベルはさらに1レベルずつあがり、合流部が視認できず、かつ合流車が存在する場合には、注意レベルが3以上となる。そこで、音声案内によって「この先、合流車両があります。」と数回繰り返し、また、実際には見えない合流部を透過表示し、かつ合流予定の車両の進行方向を矢印(例えば赤色で)で示すと共に車両を点滅表示して、運転者に注意を促す。但し、合流部に関する注意レベルは、走行路が優先道路であるかどうかについて、必ずしも判断せずに設定してもよい。
【0052】なお、運転者が認識すべき対象の注意レベルの設定は、例えば、上述のように信号機の現示色と視認度とに応じて決めるだけでなく、例えば、信号機=注意レベル1、落石(落下物)および工事中=注意レベル1、不確定事象=注意レベル2というように、対象によってその注意レベルを定義してもよい。なお、ここで不確定事象とは、例えば、「合流車有り」、「センターラインを超えた対向車有り」、「スピンしている車有り」など、様々が考えられる。そして、このような不確定でかつ動的な事象は、車車間通信などがより多く利用されることにより検出することが可能となる。
【0053】以上のように、注意レベルに応じて運転者に対して報知が行われた場合において、運転者が報知に基づいて適切な行動をとった場合、例えば、赤信号機の手前で停止、あるいは、合流部の手前で減速する等の行動をとった場合には、報知を停止するか、または、注意レベルを下げるなどの処理を行ってもよい。なお、注意レベルが最大で、運転者が車両速度の減速等を実行しない場合には、このナビゲーションECU10の判定に基づいて、強制的な車両の減速等を実行することも可能である。
【0054】また、左折あるいは右折すべき案内交差点や案内経路などが、建物や障害物、あるいは地形上の原因により視認できない場合には、上述のように視認性によって注意レベルを設定することから、視認できない対象(ここでは案内経路そのもの)を建物などに重ねて透過表示することができる。つまり、建物の陰で案内経路が見えない場合には、建物の裏の経路が透過表示されることとなる。また、これと併せてその存在が音声案内される。よって、運転者に事前に適切な経路状況を報知することができ、より的確で安全に経路案内を実行することが可能となる。また、視認性の判断にあたり、車両の走行時間、例えば夜間の走行であるかどうかなどについても考慮してもよい。
【0055】実施形態2.上記実施形態1においては、認識すべき対象について注意レベルを算出し、そのレベルに応じた報知を運転者に行っている。しかし、例えば道路合流部に関しては、合流部を直接視認できなくても運転者がその存在を推測することができる場合もある。そこで、本実施形態2では、このように認識すべき対象が道路合流部である場合には、注意レベルを判定するのではなく、その道路合流部を運転者が推測できる或いは視認できるかどうかを基準としてその合流部を報知する処理を行っている。
【0056】図9は、実施形態2に係る処理手順を示している。なお、処理を実行する車両用情報提供装置(ここではナビケーション装置)は、図1に示す構成と同一である。
【0057】まず、図2に示す手順と同様にして、図1のDGPS装置12が自車の現在位置を検出する。ナビゲーションECU10は、地図データベース14より検出した現在位置の進行方向における記憶データを読み出し、また、各通信装置16、18、22、受信装置20から案内経路における自車の走路前方Lm(例えばL=500m)以内に、運転者が認識すべき対象が存在するかどうかを判定する。認識すべき対象は、上述のように、例えば、地図データベース14や、車車間通信装置22、光ビーコン通信装置16等の通信装置から得られる信号機等の路側構造物、道路の合流部や、路上障害物、事故等の事象等がある。
【0058】更に、ナビゲーションECU10は、認識すべき対象が案内経路前方にある道路の合流部であるかどうかを判定し、その合流部を特定する(S11)。道路合流部であるかどうかの判断は、例えば(1)本線とインター取り付け部の接点、(2)本線同士の接点、(3)車線の減少部(登坂車線の終わりなど)等の判定条件に基づいて行う(但しこれらには限られない)。そして、これらの条件に相当する場合には合流部であると判定し、注意レベルを設定することなく、以下のような処理を行う。なお、予め地図データベース14内に、各道路合流部であるかどうかの情報を格納しておけば、道路合流部の特定が容易になる。
【0059】ナビゲーションECU10は、次に、例えば、後述するような判断基準に基づいて、合流部について運転者にこれを報知する必要があるかどう判断する(S12)。必要なしと判断した場合(No)には、再び、次の認識すべき対象の判定処理に戻る(S11)。報知する必要があると判断した場合(Yes)には、地図データベース14から、特定した合流部についての表示情報(二次元データや、3次元データ)や音声情報を取り込む(S13)。
【0060】DGPS装置12によって自車現在位置を検出しその位置が、特定した合流部の手前数百m(例えば500m)の位置に到達すると、ナビゲーションECU10は、取り込んだ表示情報、音声情報をディスプレイ24、スピーカ26に出力する。これにより、ディスプレイ24では、合流部の2次元又は3次元表示を行い、更に場合により、例えば、「この先、合流部あります。」等の表示をして、運転者にこれを報知する。また、スピーカ26からは、「この先、合流部あります。」等の音声を出力して報知する(S15)。なお、合流部の視認性が低い場合には、ディスプレイ24上において合流部を透過表示してもよい。
【0061】[合流部報知の判断1]図10は、上記図9のステップS12における合流部の報知の必要性判断の一例を示している。
【0062】図10に示す例では、合流部の存在を特定した後、ナビゲーションECU10は、地図データベース14から更に地図データを読み出して、合流部の手前の一定区間内に、車両の流出部となる分岐点が存在するかどうかを判断する(S121)。
【0063】分岐点が存在していない場合(No)には、運転者がその先に合流部が存在することを推定することができないので、その合流部についての報知を必要として、図9のステップS13に進み、合流部の報知を行う。
【0064】一方、分岐点が存在している場合(Yes)には、更にその分岐点の種類が、高速道路におけるインターチェンジ(IC)出口、サービスエリア(SA)又はパーキングエリア(PA)の入口かどうかを判断する(S122)。なお、分岐点の種類の判断は、予め地図データベース14に分岐点に関する情報を格納してあればその情報を用いて行うことができる。格納されていない場合には、分岐した道路の行き先などから判断する。
【0065】分岐点が、IC出口、SA,PA入口等の場合には、運転者は、道路の一般的形状として、その前方に合流部があることを推測するのが通常である。従って、IC出口、SA,PA入口等の場合(Yes)には、合流部についての報知は行わず、図9のステップS11に戻り、他の認識すべき対象の検出処理を続行する。分岐点が存在しても、その分岐点がIC出口、SA,PA入口でなければ、その前方に合流部が存在するとは限らない。従って、ステップS122において、Noと判断された場合には、図9のステップS13に進み、特定された合流部を運転者に報知する。
【0066】このように合流部の手前に分岐点があるかどうか、或いは分岐点の種類によって運転者への報知の有無を決定することとすれば、視認性判断に比較して簡単にその判断を行うことができる。
【0067】[合流部報知の判断2]図11は、上記図9のステップS12における合流部の報知の必要性判断の更なる基準を示している。
【0068】図11では、まず、ナビゲーションECU10は、特定した合流部がトンネル内に存在しているかどうか判断する(S125)。トンネル内に存在する合流部は、通常の場合、運転者はその合流部を見通すことが難しい。従って、ステップS125の判定において、トンネル内に合流部が存在すると判断された場合(Yes)には、図9のステップS13に進み、特定された合流部を報知する。また、トンネルに限らず、路肩に高い防音壁などが存在していたり、道路の傾斜、夜間や雨天・雪等で見通しが悪い時などにも、注意レベルに関わらず、ステップS125において、ナビゲーションECU10がこれを判断し、同様に合流部を報知することとすればより確実に運転者に合流部を知らせることができる。
【0069】合流部がトンネル内に存在しない場合(No)には、更に、その合流部がトンネル出口から一定区間内(例えば500m)に存在するかどうかを判断する(S126)。一定区間内に存在している場合には、トンネル内と同様に、前方に合流部が存在していることを運転者が見通し難いので、その存在の推定が困難である。また、トンネル出口では、トンネル内との走路の環境が急変して運転に注意を要する。そこで、そのような合流部の存在を事前に報知すれば、運転者は円滑に走行することが容易となる。例えば、高速道路において、トンネル出口から、余裕を持って車線変更を実行するのに必要な500m程度の区間内に合流部が存在している場合(Yes)に、図9のステップS13に進み、運転者に合流部についての情報を報知する。なお、例えば、路肩に防音壁が存在する場合などには、その防音壁の終端部を基準として一定区間内に合流部が存在するかどうか判断すればよい。また、合流部に対する視認性の低い状況において、自車位置を基準として、自車位置から一定区間内(例えば、500m以下)に合流部があるかどうか判断してもよい。
【0070】次に、図11のステップS126において、一定区間内に合流部が存在していなければ(No)、図9のステップS11に戻り、特定した合流部の報知は行わないこととする。
【0071】以上、本実施形態2の2種類の報知必要性判断(図10、図11)に関しては、一方のみの条件について判断する構成も適用可能であるが、2つの判断基準を両方勘案して合流部の報知を行うこととすれば、より適切な報知が可能となる。両方の判断基準を勘案すると、(1)合流部の手前に分岐点が存在しない、(2)分岐点が所定のものでない、(3)合流部に対する視認性が低い(トンネル内等)のいずれかの場合において、運転者に合流部についての報知が行われることとなる。
【0072】また、このような基準に基づいて、道路合流部の運転者への報知を行った場合でも、全ての合流部に対してその約2〜3割に関して報知を実行することになると予想される。よって、過剰な報知がされることなく、運転者の報知に対する注目度を低下させずに確実に合流部に関する情報を運転者に伝えることが可能となる。
【0073】ところで、上述の各実施形態1、2で説明した認識すべき対象についての報知は、目的地が設定された走行における経路案内と併せて行うことには限られず、目的地が設定されていなくとも、自車の進行方向における認識すべき対象を検出し、その対象についての認識状態(視認性や推測容易性)に応じて報知してもよい。
【0074】更にまた、認識すべき対象の表示は、自車位置の移動に応じて経時的に変化させてもよいし、一定期間もしくは一定距離毎に、その時の自車位置に対応した対象の注意レベルを算出して、表示を変更してもよい。
【0075】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、運転者が運転に当たって認識すべき対象(物や事象)について、その対象を運転者が実際に視認することができるか、或いは他の条件から推測することができるかどうかという基準を用いて、対象に関する情報の報知を決定する。従って、過剰な報知をなくし、また、視認性によって左右される経路環境に払うべき注意度合いや、合流部の存在などの情報を適切に運転者に知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のナビゲーション装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】 実施形態1に係る認識すべき対象の報知処理を示すフローチャートである。
【図3】 実施形態1における経路環境と運転者の対象に対する視認度との関係を示す説明図である。
【図4】 実施形態1における道路勾配に基づく視認度とそれに応じて算出される注意レベルとの関係を示す説明図である。
【図5】 実施形態1における道路曲率および障害物に基づく視認度とそれに応じて算出される注意レベルとの関係を示す説明図である。
【図6】 実施形態1における視認度に基づいて算出された対象に対する注意レベルと報知内容との関係を示す説明図である。
【図7】 実施形態1における注意レベルに応じたディスプレイへの表示例を示す図である。
【図8】 実施形態1における注意レベルに応じたディスプレイへの図7と異なる表示例を示す図である。
【図9】 実施形態2に係る道路合流部の運転者への報知処理を示すフローチャートである。
【図10】 実施形態2に係る合流部の報知必要性判断の手順の例を示すフローチャートである。
【図11】 実施形態2に係る合流部の報知必要性判断の手順の例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 ナビゲーションECU、12 DGPS装置、14 地図データベース、16 光ビーコン通信装置、18 電波ビーコン通信装置、20 FM多重受信装置、22 車車間通信装置、24 ディスプレイ、26 スピーカ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 運転者が認識すべき対象についての情報を運転者に提供する車両用情報提供装置であって、地図情報に基づいて、運転者が認識すべき対象を認識できるかどうかを判断する認識性判断手段と、前記認識性判断手段により運転者の認識すべき対象に対する認識性が低いと判断された場合に、前記認識すべき対象に関する情報を出力させる情報出力制御手段と、を具備したことを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項2】 請求項1に記載の車両用情報提供装置において、前記情報出力制御手段は、前記認識すべき対象に対する視認性が低いと判断された場合に、前記対象を表示地図画面上に透過表示させることを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項3】 請求項1に記載の車両用情報提供装置において、前記情報出力制御手段は、前記認識すべき対象に対する視認性が低いと判断された場合に、前記対象を表示地図画面上に三次元的に透過表示させることを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項4】 請求項1に記載の車両用情報提供装置において、前記対象には、案内経路、路側構造物、道路合流部、建物、路上障害物、工事のいずれかを含むことを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項5】 請求項1に記載の車両用情報提供装置において、前記情報出力制御手段は、前記認識性判断手段にて、道路合流部の手前に車両流出部が存在しない場合又は前記道路合流部に対する視認性が低いと判断された場合に、前記道路合流部に関する情報を出力させることを特徴とする車両用情報提供装置。

【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図10】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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