説明

車両用情報端末

【課題】車両用情報端末からSMSを利用して電子メールを送信する際、煩雑な作業が不要な車両用情報端末を提供すること。
【解決手段】ショートメッセージサービスによるショートメッセージの送信が可能な携帯電話機20と通信できる車両用情報端末30であって、携帯電話機20から、携帯電話機20のユーザが契約している事業者の事業者情報を取得する手段と、取得した事業者情報の事業者が規定するショートメッセージの記載形式を特定する手段と、IPネットワークを介して送信する電子メールに必要な電子メール情報を入力する手段と、特定した前記記載形式に前記電子メール情報を編集してショートメッセージを生成する手段と、編集されたショートメッセージの送信を前記携帯電話機に要求する手段と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショートメッセージの送信が可能な携帯電話機と通信できる車両用情報端末に関し、車両用情報端末から携帯電話機を利用してショートメッセージを送信する車両用情報端末に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的に広く使用されている電子メールサービスにSMS(ショートメッセージサービス)がある。しかしながら、SMSでは電子メールに固有のフォーマットが規定されているため、受信したSMSの電子メール(以下、ショートメッセージという)のフォーマットに応じてショートメッセージからデータを抽出する必要がある(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、パソコンで入力した目的地などを、ショートメッセージで車載されたナビゲーションに送信する際、サービスセンタがナビゲーションシステムのフォーマットに変換する技術が開示されている。
【特許文献1】特表2004−510991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ナビゲーションシステムのように車載された車両用情報端末から携帯電話機を経由して、乗員が電子メールを送信する場合がある。ここで、携帯電話機が送信可能な電子的なメールにはSMSのショートメッセージの他に、いわゆる電子メールが知られている。ショートメッセージと電子メールのフォーマットには互換性がなく、ショートメッセージを電子メールのユーザに送信することはできなかったが、携帯電話機の事業者の電話網とインターネットの接続部にSMSゲートウェイを設けることで、SMSゲートウェイがフォーマットを変換し、ショートメッセージを電子メールのユーザに送信できるようになった。
【0004】
しかしながら、SMSゲートウェイがショートメッセージのフォーマットを電子メールに変換するためには、事業者が要求する記載形式にショートメッセージを整えなくてはならない。ところが、この記載形式は事業者毎にまちまちで、SMSを利用して電子メールを送信するためには事業者を確認し、さらに事業者が定める記載形式を確認する必要がある。このように、SMSを利用して電子メールを送信するには煩雑な作業が必要であったという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、車両用情報端末からSMSを利用して電子メールを送信する際、煩雑な作業が不要な車両用情報端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑み、本発明は、ショートメッセージサービスによるショートメッセージの送信が可能な携帯電話機と通信できる車両用情報端末であって、携帯電話機から、携帯電話機のユーザが契約している事業者の事業者情報を取得する手段と、取得した事業者情報の事業者が規定するショートメッセージの記載形式を特定する手段と、IPネットワークを介して送信する電子メールに必要な電子メール情報を入力する手段と、特定した前記記載形式に前記電子メール情報を編集してショートメッセージを生成する手段と、編集されたショートメッセージの送信を前記携帯電話機に要求する手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
車両用情報端末からSMSを利用して電子メールを送信する際、煩雑な作業が不要な車両用情報端末を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら説明する。
【0009】
〔本実施形態の概略〕
図1は、車両用情報端末20と携帯電話機30を有するメール送信システム100の一例を示す。車両用情報端末20は、例えばナビゲーションシステム、PND(Personal Navigation Device)、PDA(Personal Digital Assistant)等である。これらが車両に搭載されて販売されたが、後から車両に搭載されたかは問わない。また、いずれの搭載形態にせよ、車両用情報端末20は車両への脱着が可能である。
【0010】
携帯電話機30は、PHS(Personal Handyphone System)又はデータ通信カードが装着されたPC(パーソナルコンピュータ)若しくはPDA等でもよい。すなわち、移動通信が可能な無線の通信装置であればよいが、本実施形態の携帯電話機30はSMS(ショートメッセージサービス)を利用可能である必要がある。
【0011】
携帯電話機30は、基地局40にアクセセスして携帯電話の事業者が提供するSMSゲートウェイサーバに電子メールを送信する。この電子メールはSMSを利用したものであり、以降はショートメッセージと呼ぶ。一方、インターネットやIPネットワークと親和性の高いLAN上(以下、両者を区別せずIPネットワークという)、で送信可能な電子メールを、本実施形態では電子メールという。
【0012】
また、より正確には、本実施形態のSMSは、SMPP(Short Message Peer to Peer)に従うメッセージのやり取りを行なうためのサービス(仕組み)をいい、ショートメッセージはSMPPで送受信される電子的なメールをいうものとする。一方、電子メールを送受信するプロトコルの代表的なものはSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)である。
【0013】
携帯電話機30の機能として、ショートメッセージのみしか送信できないか、ショートメッセージに加え電子メールも送信できるかは問わない。また、無線通信方式も問わない。例えば、欧州やアジアではGSM(Global System for Mobile Communications)、米国ではCDMA(Code Division Multiple Access)が、日本ではPDC(Personal Digital Cellular)・CDMA2000、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)等が無線通信方式として採用されているが、どの無線通信方式でもショートメッセージを送信することができる。必要であれば、SMSゲートウェイサーバが無線通信方式の違いを吸収するようになっている。
【0014】
ショートメッセージと電子メールはプロトコルが異なるので、フォーマットも異なる。上記のSMSゲートウェイサーバは、ショートメッセージから電子メールへ、又は、電子メールからショートメッセージにフォーマットを変換する。
【0015】
例えば、携帯電話機30の使用料金の関係から、ユーザ(以下、携帯電話機30の所有者であるユーザを乗員という)がSMSゲートウェイサーバまでSMSでショートメッセージを送信することを希望する場合がある。しかし、ショートメッセージの相手先が電子メールのアドレスしか有していないような場合、乗員は電子メールを送信する必要が生じてしまう。そこで、携帯電話機30の事業者によっては、SMSゲートウェイサーバまでショートメッセージで送信し、SMSゲートウェイサーバから相手先までは電子メールとして送信することが可能になっている。
【0016】
SMSのフォーマットは、ショートメッセージの相手先の電話番号を「宛先欄」に記載するフォーマットであるため、電子メールに変換するためには電子メールのアドレスを別に記載しなければならない。このため、電子メールに変換されることが前提のショートメッセージは、例えば「本文欄」にショートメッセージの相手先の電子メールアドレスを記載するようになっている。
【0017】
しかし、「本文欄」にどのようにショートメッセージの相手先の電子メールを記載するかは、携帯電話の事業者により異なる。例えば、本文で記載した、電子メールアドレス、題名、内容、をSMSゲートウェイサーバで電子メールに変換する場合、各項目の区切り文字や記載順は、事業者毎に異なるのである。米国等のように、乗員が携帯電話メーカから携帯電話を購入し、乗員は事業者と個別に契約する販売態様では、携帯電話機30に事業者の名前が記載されているわけでもなく、事業者を忘れてしまう乗員や、頻繁に事業者を変える乗員もいる。このため、ショートメッセージを電子メールのユーザに送信するには、乗員は契約している事業者の情報も調べる必要がある。そして、事業者が分かったら、乗員はその事業者の記載形態を調べなければならない。このように、乗員は事業者と記載形式を確認しなければSMSを利用して電子メールを送信できないという不便さがある。
【0018】
そこで、本実施形態の車両用情報端末20は、携帯電話機30から契約している事業者の事業者情報を取得し、乗員の入力した、電子メールアドレス、題名、内容を、その事業者に適切な記載形式に変換する。したがって、乗員は、事業者やその事業者の記載形式を意識することなく、SMSを利用して電子メールを送信することができる。
【0019】
〔車両用情報端末20と携帯電話機30の通信〕
車両用情報端末20と携帯電話機30は、無線又は有線で通信する。無線による通信の場合、例えば、Bluetooth、Zigbee、UWB(Ultra Wide Band)で通信し、有線の場合、車両用情報端末20と携帯電話機30の双方の端子をケーブルで接続することで通信可能となる。
【0020】
携帯電話機30はSIM(Subscriber Identity Module Card)カードと呼ばれるICカードを装着している。SIMカードは、乗員が事業者と契約すると事業者から乗員に貸与される。SIMカードには、電話番号やSIMカードの固有のID番号が記録されている。SIMカードの固有のID番号はIMSI(international mobile subscriber identity)と呼ばれ、IMSIにMNC(Mobile Network Code)が含まれる。
【0021】
MNCは事業者を識別するためのコードであるので、このMNCを読み出せば車両用情報端末20はMNCから、乗員が契約した事業者を特定することができる。事業者としては、例えばBT&T、A-mobile等が知られている。
【0022】
携帯電話機30が車両用情報端末20に接近すると、Bluetoothの送信範囲に入り、互いのBTモジュールが備えるプロファイルに従い、通信が開始される。例えば、携帯電話機30と車両用情報端末20は、RFCOMMプロファイル及びSPP(シリアルポートプロファイル)を備えている。乗員が車両用情報端末20を操作した場合又は自動的に、車両用情報端末20は、例えばATコマンドを利用してMNCを送信するよう携帯電話機30に要求する。携帯電話機30は自動的に又は乗員が送信を許可する操作を入力すると、MNCを車両用情報端末20に送信する。
【0023】
〔車両用情報端末20の構成〕
車両用情報端末20は、MNCと事業者を対応づけた事業者テーブルと、事業者毎の記載形式を表す記載形式情報が登録された記載形式DB(Data Base)を記憶している。事業者によってはSMSゲートウェイサーバを提供していないので、事業者によっては記載形式DBに記載形式情報が登録されていない。このような事業者と契約している場合、車両用情報端末20はSMSを利用して電子メールを送信しない。
【0024】
なお、車両用情報端末20が、事業者テーブルと記載形式DBを記憶している必要はなく、車両用情報端末20が携帯電話機30を介してインターネット上のサーバから事業者テーブル又は記載形式DBをダウンロードしてもよい。また、車両用情報端末20がサーバにMNCを送信し、サーバから記載形式情報を取得してもよい。
【0025】
図2は、事業者毎の記載形式の一例を示す。例えば、図2(a)はBT&Tの記載形式を、図2(b)はA-mobileの記載形式をそれぞれ示す。BT&Tでは、電子メールアドレス(emailadress)、題名(subject)、内容(text)、をそれぞれ改行して記載する。また、題名はカッコで囲む。したがって、図2(a)に示す記載形式となる。
【0026】
A-mobileでは、電子メールアドレス、題名、内容、をそれぞれ改行して記載する。また、電子メールアドレス、題名、内容それぞれの最後を「/ (スラッシュ)」で区切る。また、電子メールアドレスを<>で囲む。したがって、図2(b)に示す記載形式となる。
【0027】
図2(c)は、車両用情報端末20の表示部に表示された電子メールの編集画面の一例を示す。図示するように、「Email」、「subject」、「text」の各項目が表示され、乗員は「Email」の項目に電子メールを送信する相手先のユーザの電子メールアドレスを入力する。キーボードやタッチパネルや音声入力装置から一文字ずつ入力してもよいし、乗員がアドレス帳から選択することで入力してもよい。また、乗員は「subject」の項目に題名を、「text」の項目に内容を、それぞれキーボードやタッチパネル、音声入力装置を利用して入力する。
【0028】
車両用情報端末20は、乗員が入力した、電子メールアドレス、題名及び内容を、記載形式DBに登録された事業者の記載形式に編集する。すなわち、ショートメッセージの「本文欄」に、事業者の記載形式に従って電子メールアドレス、題名、内容を配置する。
【0029】
なお、電子メールをショートメッセージとして送信するため、ショートメッセージの「宛先欄」には事業者が指定する電話番号を記載する必要がある。この電話番号は、編集画面で乗員により入力されてもよいし、携帯電話機30が自動的に設定してもよい。なお、この電話番号は、ショートメッセージを電子メールに変換するSMSゲートウェイサーバにショートメッセージを送信することを示すものである。
【0030】
乗員が所定のボタンを押下すると、車両用情報端末20は乗員が入力した、電子メールアドレス、題名及び内容を図2(a)又は(b)のような事業者に応じた記載形式に変換する。そして、車両用情報端末20は携帯電話機30にショートメッセージを送信するよう要求する。携帯電話機30は、基地局40に接続してショートメッセージを送信する。
【0031】
SMSゲートウェイサーバは、到着したショートメッセージの「本文欄」から、当該事業者の記載形式に従い、電子メールアドレス、題名及び内容をそれぞれ抽出し、電子メールのフォーマットに変換する。こうすることで、SMSを利用できないユーザに送信されたショートメッセージが、IPネットワーク経由でユーザに到着する。
【0032】
〔動作手順〕
動作手順について図3のフローチャート図に基づき簡単に説明する。
【0033】
まず、車両用情報端末20は、乗員がショートメッセージと電子メールのどちらを送信するかを判定する(S10)。例えば、乗員がショートメッセージの編集画面を表示すればショートメッセージを送信すると、電子メールの編集画面を表示すれば電子メールを送信すると、車両用情報端末20は判定する。乗員がショートメッセージを送信する場合は、本実施形態の車両用情報端末20は何もしない。
【0034】
車両用情報端末20は、携帯電話機30から事業者情報を取得できたか否かを判定する(S20)。事業者情報を取得できない場合(S20のNo)、車両用情報端末20が記載形式を特定できないので、乗員に電子メールは送信できない旨を通知する(S40)。
【0035】
事業者情報を取得できた場合(S20のYes)、車両用情報端末20は取得した事業者情報の事業者がSMSゲートウェイサーバを提供しているか否かを判定する(S30)。この判定は、記載形式DBに記載形式情報が登録されているか否かにより判定される。事業者がSMSゲートウェイサーバを提供していない場合(S30のNo)、車両用情報端末20が記載形式を決定できないので、乗員に電子メールは送信できない旨を通知する(S40)。
【0036】
事業者がSMSゲートウェイサーバを提供している場合(S30のYes)、車両用情報端末20は、車両用情報端末20の表示部に電子メールの編集画面を表示させる。そして、車両用情報端末20は、乗員が入力した電子メールアドレス、題名、内容を、事業者に適切な記載形式に変換してショートメッセージを送信する(S50)。
【0037】
本実施形態の車両用情報端末20によれば、SMSにより電子メールを送信する際、携帯電話機30の事業者毎に異なる記載形式に変換することで、SMSを利用して電子メールを送信する際の利便性を向上させることができる。
【0038】
なお、本実施形態では、SMSを例に説明したが、SMSと上位互換性のあるEMS(Enhanced Messaging Service)や、EMSをさらに拡張したMMS(Multimedia Messaging Service)についても同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】車両用情報端末と携帯電話機を有するメール送信システムの概略構成図の一例である。
【図2】事業者毎の記載形式の一例を示す図である。
【図3】車両用情報端末の動作手順を示すフローチャート図の一例である。
【符号の説明】
【0040】
20 車両用情報端末
30 携帯電話機
40 基地局
100 メール送信システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショートメッセージサービスによるショートメッセージの送信が可能な携帯電話機と通信できる車両用情報端末であって、
前記携帯電話機と通信して、前記携帯電話機のユーザが契約している事業者の事業者情報を取得する手段と、
取得した事業者情報の事業者が規定するショートメッセージの記載形式を特定する手段と、
IPネットワークを介して送信する電子メールに必要な電子メール情報を入力する手段と、
特定した前記記載形式に前記電子メール情報を編集してショートメッセージを生成する手段と、
生成されたショートメッセージの送信を前記携帯電話機に要求する手段と、
を有することを特徴とする車両用情報端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−147711(P2010−147711A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321528(P2008−321528)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
2.Bluetooth
3.ZIGBEE
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】