説明

車両用方向指示器

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば乗用車,トラック等の四輪車、またはスクータ,オートバイ等の二輪車等の車両に用いられ、これら車両の回動方向を方向指示灯の点滅によって周囲に報知する車両用方向指示器に関する。
【0002】
【従来の技術】図3および図4に従来技術による車両用方向指示器として、乗用車に用いた場合を例に挙げて示す。
【0003】図において、1は車両としての乗用車を示し、該乗用車1は、エンジン,バッテリ(いずれも図示せず)等を搭載した車体2と、該車体2の前,後に位置して左,右に離間して設けられた前輪3,3および後輪4,4(いずれも片側のみ図示)と、車体2のほぼ中央部に設けられた運転室5とから大略構成され、該運転室5内には、各車輪3,4を回動操作するためのハンドルと、後述の方向選択スイッチ7等とが設けられている。
【0004】6,6,…は車体2の前,後に位置して左,右に離間して設けられた2個で一組の方向指示灯(前側のみ図示)を示し、該各方向指示灯6は、方向選択スイッチ7によって選択されると点滅し、これにより、歩行者や他の車両の運転者に乗用車1が左,右いずれの方向に回動するかを報知するものである。
【0005】7は運転室5内に位置してハンドルの近傍に設けられた方向選択スイッチを示し、該方向選択スイッチ7は、左側点滅位置,停止位置,右側点滅位置の3つの切換位置を有し、該各位置に応じた左側点滅信号,停止信号,右側点滅信号を後述の制御部8に出力するようになっている。
【0006】8は車体2に設けられたリレー,タイマ(いずれも図示せず)等からなる制御部を示し、該制御部8は、その入力側に方向選択スイッチ7とハンドルの回動を検出する舵角センサ9とが接続され、その出力側には各方向指示灯6が接続されている。そして、該制御部8は、方向選択スイッチ7から左側点滅信号が入力された場合には車体2の左側に位置する前,後1組の各方向指示灯6を点滅させ、また、方向選択スイッチ7から右側点滅信号が入力された場合には車体2の右側に位置する前,後各一組の各方向指示灯6を点滅させることにより、乗用車1の回動方向を周囲に報知させるものである。一方、前記制御部8は、方向選択スイッチ7からの停止信号、または舵角センサ9からの舵角検出信号のいずれかが入力された場合には、全ての各方向指示灯6の点滅を停止し、消灯させるようになっている。
【0007】従来技術による車両用方向指示器は上述の如き構成を有するもので、左折,右折等の乗用車1の回動時に、運転者が方向選択スイッチ7を停止位置から左側点滅位置,右側点滅位置のいずれかに切換操作すると、制御部8は、該方向選択スイッチ7からの点滅信号に応じて、左側の各方向指示灯6,右側の方向指示灯6のうちいずれか一組の方向指示灯6を所定の周期で点滅させる。そして、乗用車1の回動が終了して運転者がハンドルを回動方向から直進方向に戻し、このハンドルの回動が舵角センサ9によって検出されると、制御部8は、該舵角センサ9からの検出信号に基づき、点滅中の各方向指示灯6を消灯させる。また、運転者によって方向選択スイッチ7が停止位置に復帰操作された場合も、制御部8は、各方向指示灯6を消灯させる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した従来技術による車両用方向指示器では、ハンドルの回動を検出する舵角センサ9を設け、該舵角センサ9によってハンドルの戻しを検出することにより、乗用車1の回動終了とみなして、各方向指示灯6を自動的に消灯させるようになっている。しかし、左折,右折時等に前方から急接近する他の車両を発見したり、あるいは急いで横断しようとする歩行者等を発見した場合、交差点内の障害物等を避ける場合等には、乗用車1の回動中でも、ハンドルを戻す必要がある。
【0009】このため、上述した従来技術によるものでは、乗用車1の回動が終了する前でも、ハンドルの戻し操作が行われると、制御部8は舵角センサ9からの検出信号に基づいて乗用車1の回動終了とみなし、各方向指示灯6を自動的に消灯してしまうから、誤動作が多く、信頼性が大幅に低いという問題がある。
【0010】また、この誤動作のために、運転者は再度方向選択スイッチ7を切換操作しなければならないから、方向指示器の操作が煩雑となって使い勝手が低下し、運転者に不快感を与えるばかりか、回動時の走行安全性が大幅に低下するという問題がある。
【0011】本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、方向指示灯の誤動作を効果的に防止し、信頼性、安全性等を向上できるようにした車両用方向指示器を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上述した課題を解決するために、本発明が採用する構成の特徴は、車両の回動方向の角速度を検出する角速度検出手段と、該角速度検出手段からの検出信号を基に前記車両の回動角度を演算する手段、前記車両が回動を開始したか否かの基準となる回動角基準値および前記車両が回動を終了したか否かの基準となる基準電圧値を有し、演算された回動角度が回動角基準値よりも大きくなると共に前記角速度検出手段からの検出信号の電圧が基準電圧値よりも小さくなったことに基づいて前記車両の回動が終了したか否かを判定し、該車両の回動が終了したと判定したときには前記方向指示灯を消灯させる消灯制御手段とを設けたことにある。
【0013】
【作用】車両が左,右に回動すると、角速度検出手段は該車両の回動方向の角速度を検出し、回動角度を演算する手段は、該角速度検出手段からの検出信号を基に車両の回動角度を演算する。そして、消灯制御手段は、演算された回動角度が回動角基準値よりも大きくなることによって車両が回動を開始したことを判定し、この状態で角速度検出手段から出力される検出信号の電圧が基準電圧値よりも小さくなることによって車両の回動が終了したか否かを判定する。これにより、消灯制御手段は、車両の回動が終了したと判定したときには方向指示灯を自動的に消灯させる。
【0014】
【実施例】以下、本発明の実施例を図1および図2に基づいて説明する。なお、実施例では前述した図3および図4に示す従来技術と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0015】図中、11は角速度検出手段としての角速度センサを示し、該角速度センサ11は、恒弾性金属材料等から角柱状に形成された振動子12と、該振動子12の一の表面に設けられ、該振動子12を共振周波数で振動させる励起用圧電体13と、該励起用圧電体13と直交するように振動子12の他の表面に設けられ、振動子12の回転時に角速度に応じて発生するコリオリの力を検出する検出用圧電体14とから大略構成され、該各圧電体13,14はリード線15,16等を介して後述の制御部17に接続されている。また、該角速度センサ11は、その回転軸O1 −O1 が図3中に示す乗用車1の前,後方向の軸線O−Oに対して実質的に垂直となるように、車体2等に取付けられている。
【0016】そして、前記角速度センサ11は、図3中にも示す如く、左折,右折等の乗用車1の回動時に、回転軸O1 −O1 を中心として回転力Tが加わり、振動子12に、励起用圧電体13による励起方向と直交する方向にコリオリの力が発生すると、検出用圧電体14によりこのコリオリの力によって生じた振動を検出し、この検出信号を電圧信号たる角速度検出信号Vとして制御部17に出力するものである。
【0017】17は車体2に設けられ、例えばCPU,差動増幅器,積分器(いずれも図示せず)等からマイクロコンピュータとして構成された制御部を示し、該制御部17には、その入力側に方向選択スイッチ7および角速度センサ11が接続され、その出力側には各方向指示灯6と、励起用圧電体13に所定の周波数信号を印加する発振回路18とが接続されている。また、該制御部17の記憶回路内には記憶エリア17Aが形成され、該記憶エリア17Aには後述の図2に示す消灯制御プログラム,基準角度θa,基準電圧Va等が記憶されている。
【0018】ここで、前記基準角度θaは、運転者が方向選択スイッチ7を操作したときからの乗用車1の回動角度θに対する基準値となるもので、乗用車1が実質的な回動を開始したか否かを判定するためのものである。また、前記基準電圧Vaは、角速度センサ11から出力された角速度検出信号Vとの比較に用いられるもので、乗用車1の回動が実質的に終了したか否かを判定するためのものである。
【0019】そして、前記制御部17は、角速度センサ11からの角速度検出信号Vを積分することにより、方向選択スイッチ7の切換操作時から乗用車1が回動した回動角度θを算出し、この回動角度θに基づいて乗用車1の回動の開始を検出した後、角速度検出信号Vに基づいて乗用車1の回動が終了したか否かを判定し、乗用車1の回動が終了したと判定したときには各方向指示灯6を自動的に消灯せしめるものである。
【0020】本実施例による車両用方向指示器は上述の如き構成を有するもので、次に、消灯制御処理について図2を参照しつつ説明する。
【0021】まず、ステップ1で、乗用車1を回動させるべく、運転者が方向選択スイッチ7を停止位置から左側点滅位置,右側点滅位置のいずれかに切換操作すると、ステップ2では、方向選択スイッチ7からの点滅信号に応じた制御信号を出力し、該方向選択スイッチ7の点滅位置に応じた各方向指示灯6を所定の周期で点滅させ、乗用車1の回動方向を周囲に報知する。
【0022】次に、ステップ3では、角速度センサ11からの角速度検出信号Vを読込み、ステップ4では、該角速度検出信号Vを積分して乗用車1の回動角度θを算出し、ステップ5では、この回動角度θと予め記憶エリア17A内に記憶された前記基準角度θaとを比較する。このステップ5で「NO」と判定したときは、乗用車1の回動角度θが基準角度θaよりも小さく、乗用車1が実質的な回動を開始していない場合だから、前記ステップ3に戻る。
【0023】一方、前記ステップ5で「YES」と判定したときは、乗用車1の回動角度θが基準角度θaを上回り、乗用車1が実質的な回動を開始した場合だから、ステップ6に移り、このステップ6では、角速度センサ11からの角速度検出信号Vと予め記憶エリア17A内に記憶された基準電圧Vaとを比較する。そして、このステップ6で「NO」と判定したときは、角速度検出信号Vが基準電圧Vaよりも高く、乗用車1が未だ回動を続行している場合だから、前記ステップ3に戻る。
【0024】また、前記ステップ6で「YES」と判定したときは、角速度センサ11からの角速度検出信号Vが基準電圧Vaを下回り、乗用車1の回動が実質的に終了した場合だから、ステップ7に移って各方向指示灯6を消灯させる。
【0025】かくして、本実施例によれば、乗用車1の回動時に生じる角速度を角速度検出信号Vとして検出する角速度センサ11を設け、制御部17は該角速度センサ11からの角速度検出信号Vに基づいて乗用車1の回動が終了したか否かを判定する構成としたから、乗用車1の実際の走行状態(回動状態)に基づいて各方向指示灯6を自動的に消灯することができる。
【0026】この結果、乗用車1の回動が実質的に終了した時点で各方向指示灯6を消灯することができるから、従来技術で述べた如く、乗用車1の回動が終了する前に各方向指示灯6が消灯するという誤動作を確実に防止でき、使い勝手,信頼性を大幅に向上することができ、乗用車1の回動時の走行安全性を向上することができる。
【0027】また、角速度センサ11からの角速度検出信号Vを積分することにより、方向選択スイッチ7が切換操作されて各方向指示灯6が点滅を開始したときから乗用車1が回動した角度θを検出し、この角度θが基準角度θaを上回ったときに、角速度検出信号Vと基準電圧Vaとを比較する構成としたから、実際に乗用車1が回動を開始したか否かを効果的に検出し、乗用車1の回動の開始,終了を確実に検出してから各方向指示灯6を自動的に消灯することができる。
【0028】即ち、例えば交差点での信号待ち等の回転力Tが加わっていない状態で、前記ステップ6で「YES」と判定され、各方向指示灯6が自動的に消灯されるのを確実に防止することができる。
【0029】さらに、本実施例による車両用方向指示器は、実質的な可動部,摺接部がないから、摩耗等による劣化が少なく、長期に亘って信頼性を維持することができ、取付の自由度を向上することができる。
【0030】なお、前記実施例では、図2に示すプログラムが本発明の構成要件である消灯制御手段の具体例である。
【0031】また、前記実施例では、角速度検出手段として、角柱状の振動子12に励起用圧電体13,検出用圧電体14を設けてなる角速度センサ11を用いる場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば片持梁を静電力等によって振動させつつ、回転力に伴うコリオリの力により該片持梁に発生した応力変化を、ピエゾ抵抗素子等によって検出する角速度センサ等の他の角速度センサを用いてもよい。
【0032】さらに、前記実施例では、制御部17は、CPU等からマイクロコンピュータとして構成する場合を例に挙げて説明したが、これに替えて、ソフトウェアを用いずに電子回路として構成してもよい。
【0033】さらにまた、前記実施例では、車両として乗用車1を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、トラック、オートバイ、スクータ、あるいは自転車等の他の車両にも広く適用することができる。
【0034】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明によれば、車両の回動方向の角速度を検出する角速度検出手段と、動角度を検出する手段によって演算された回動角度と角速度検出手段からの検出信号に基づいて前記車両の回動が終了したか否かを判定し、該車両の回動が終了したと判定したときには前記方向指示灯を消灯させる消灯制御手段とを設ける構成としたから、車両の回動が終了したときに方向指示灯を自動的に消灯させることができる。この結果、従来技術で述べた如く、車両の回動が終了する前に各方向指示灯が消灯するという誤動作を確実に防止でき、使い勝手,信頼性を向上することができ、車両の回動時の走行安全性を高めることができる。た、角速度検出手段からの検出信号に基づいて、方向選択スイッチが切換操作されて方向指示灯が点滅を開始したときから車両が回動した回動角度を演算し、この回動角度が回動角基準値よりも大きくなったときに、検出信号の電圧が基準電圧値よりも小さくなったか否かを比較する構成としたから、実際に車両が回動を開始したか否かを効果的に検出し、車両の回動の開始,終了を確実に検出してから方向指示灯を自動的に消灯することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例による車両用方向指示器の全体を示す全体構成図である。
【図2】図1中の制御部に記憶された消灯制御処理を示す流れ図である。
【図3】従来技術による車両用方向指示器を搭載した乗用車を示す斜視図である。
【図4】車両用方向指示器の回路構成を示す全体構成図である。
【符号の説明】
1 乗用車(車両)
6 方向指示灯
7 方向選択スイッチ
11 角速度センサ(角速度検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両の左,右に離間してそれぞれ設けられ、点滅することにより該車両が左,右いずれの回動方向に回動するかを報知する方向指示灯と、前記車両に設けられ、該各方向指示灯のうち車両の回動方向に応じた方向指示灯を選択的に点滅させる方向選択スイッチとからなる車両用方向指示器において記車両の回動方向の角速度を検出する角速度検出手段と該角速度検出手段からの検出信号を基に前記車両の回動角度を演算する手段、前記車両が回動を開始したか否かの基準となる回動角基準値および前記車両が回動を終了したか否かの基準となる基準電圧値を有し、演算された回動角度が回動角基準値よりも大きくなると共に前記角速度検出手段からの検出信号の電圧が基準電圧値よりも小さくなったことに基づいて前記車両の回動が終了したか否かを判定し、該車両の回動が終了したと判定したときには前記方向指示灯を消灯させる消灯制御手段とを設けたことを特徴とする車両用方向指示器。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【特許番号】特許第3128956号(P3128956)
【登録日】平成12年11月17日(2000.11.17)
【発行日】平成13年1月29日(2001.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−146229
【出願日】平成4年5月13日(1992.5.13)
【公開番号】特開平5−319169
【公開日】平成5年12月3日(1993.12.3)
【審査請求日】平成10年9月25日(1998.9.25)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【参考文献】
【文献】特開 平4−118331(JP,A)
【文献】実開 平3−128538(JP,U)