説明

車両用暖房装置

【課題】乗員の身体前面も暖めることができ、暖房で消費される電力を低減することが可能な車両用暖房装置の提供。
【解決手段】車両の座席(運転席1)に備えられ、車載電源(図示せず)から電力を与えられるシートヒータ(2,3)を有し、乗員を暖房する車両用暖房装置。座席(運転席1)の背もたれ2に、乗員の身体の前面側を覆うように設けられ、車載電源から電力を与えられるヒータを内蔵する暖房器具6,7を備える構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の座席に備えられ、車載電源から電力を与えられるヒータを内蔵し、乗員を暖房する車両用暖房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用の暖房装置には、ダクト内を通流する空気をヒータにより加熱して車室内へ噴出させる空気調和機(以下、空調機と記載)、座席の着座部及び背もたれにヒータを内蔵させたシートヒータ、並びにステアリングにヒータを内蔵させたステアリングヒータ等が存在する。
【0003】
特許文献1には、バッテリから供給される電力を利用して温風を送風することにより、車室内を暖房するエアコンと、バッテリから供給される電力を利用して座席に埋設されたヒータを発熱させて、座席を介して乗員を暖めるシートヒータとを備えた車両の暖房装置が開示されている。通電されているシートヒータの数が多いときほど、エアコンにおける送風量が低減するように、エアコンの作動中に通電されているシートヒータの数に基づいて送風量を低減させる消費電力抑制制御を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−143468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来の車両用の暖房装置のシートヒータでは、座面及び背もたれ面に接触する部分だけが暖まり、身体の前面は暖まらないという問題がある。また、車両用の暖房する為の装置としては他に空調機等があるが、それぞれ個別に制御を行っているので、使い過ぎ及び電源の点けっ放し等で電力を無駄に消費しているという問題がある。
尚、特許文献1に開示された車両の暖房装置では、オンにしているシートヒータの個数のみで、エアコンの送風量を調整しており、また、シートヒータで消費する電力量だけエアコンの消費電力を抑制するように制御しており、省電力には到らない。
【0006】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであり、乗員の身体前面も暖めることができ、暖房で消費される電力を低減することが可能な車両用暖房装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る車両用暖房装置は、車両の座席に備えられ、車載電源から電力を与えられるシートヒータを有し、乗員を暖房する車両用暖房装置において、前記座席の背もたれに、乗員の身体の前面側を覆うように設けられ、前記車載電源から電力を与えられるヒータを内蔵する暖房器具を備えることを特徴とする。
【0008】
この車両用暖房装置では、車両の座席に備えられ、車載電源から電力を与えられるシートヒータを有し、乗員を暖房する。暖房器具が、座席の背もたれに、乗員の身体の前面側を覆うように設けられ、内蔵しているヒータは、車載電源から電力を与えられる。
【0009】
第2発明に係る車両用暖房装置は、前記暖房器具は、前記背もたれの左右の縁に取り付けられ、乗員の腕を通す穴を有し、乗員を左右から覆う被服の一対の前身ごろ形状になしてあることを特徴とする。
【0010】
この車両用暖房装置では、暖房器具は、背もたれの左右の縁に取り付けられ、乗員の腕を通す穴を有し、乗員を左右から覆う被服の一対の前身ごろ形状になしてある。
【0011】
第3発明に係る車両用暖房装置は、前記暖房器具は、前記座席の着座部の左右の縁に取り付けられ、乗員の大腿部を左右から覆う一対の膝掛け部を更に備えることを特徴とする。
【0012】
この車両用暖房装置では、暖房器具の一対の膝掛け部が、座席の着座部の左右の縁に取り付けられ、乗員の大腿部を左右から覆う。
【0013】
第4発明に係る車両用暖房装置は、前記暖房器具は、前記座席用の安全ベルトにヒータを内蔵させて構成してあることを特徴とする。
【0014】
この車両用暖房装置では、暖房器具は、座席用の安全ベルトにヒータを内蔵させて構成してある
【0015】
第5発明に係る車両用暖房装置は、車載電源から電力を与えられるヒータを内蔵し、乗員の上半身を覆うベスト形状の暖房器具を備えることを特徴とする。
【0016】
この車両用暖房装置では、ベスト形状の暖房器具が、車載電源から電力を与えられるヒータを内蔵しており、乗員の上半身を覆う。
【0017】
第6発明に係る車両用暖房装置は、前記暖房器具が作動しているときは、車両の空気調和機へ電力消費量の抑制又は停止を指示する信号を出力する指示手段を更に備えることを特徴とする。
【0018】
この車両用暖房装置では、暖房器具が作動しているときは、指示手段が、車両の空気調和機へ電力消費量の抑制又は停止を指示する信号を出力する。
【0019】
第7発明に係る車両用暖房装置は、前記指示手段が空気調和機へ電力消費量の抑制又は停止を指示する信号を出力する際は、前記車載電源から電力を与えられるシートヒータの電力消費量を抑制又は零にする手段を更に備えることを特徴とする。
【0020】
この車両用暖房装置では、指示手段が空気調和機へ電力消費量の抑制又は停止を指示する信号を出力する際は、車載電源から電力を与えられるシートヒータの電力消費量を抑制又は零にする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る車両用暖房装置によれば、乗員の身体前面も暖めることができ、暖房で消費される電力を低減することが可能な車両用暖房装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る車両用暖房装置の実施の形態が備える暖房器具の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る車両用暖房装置の実施の形態の内部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る車両用暖房装置の動作例を示すタイミングチャートである。
【図4】本発明に係る車両用暖房装置の動作例を示すタイミングチャートである。
【図5】本発明に係る車両用暖房装置の実施の形態が備える暖房器具の外観を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る車両用暖房装置の実施の形態が備える暖房器具の外観を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき説明する。
尚、以下の実施形態は、車両の運転者が着座する運転席に本発明を適用した例であるが、本発明を適用する座席は運転席に限定されるものではなく、車両におけるどの座席にも適用できる。
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る車両用暖房装置の実施の形態1が備える暖房器具の外観を示す斜視図である。
この暖房器具は、車両のヘッドレスト(頭支え)4付きの運転席1(座席)に取り付けられており、背もたれ2の左の縁に取り付けられた左ボディー部6と、背もたれ2の右の縁に取り付けられた右ボディー部7とを備えている。
【0024】
左ボディー部6及び右ボディー部7は、被服の一対の前身ごろ形状をなしており、それぞれ乗員の腕を通す穴8を有している。左ボディー部6及び右ボディー部7は、また、乗員の上半身を覆った状態で、前が開かないように互いに掛止するボタン11をそれぞれ複数有している。
尚、左ボディー部6及び右ボディー部7は、乗員の腕を通す穴8が無い構造、つまり、乗員の胸部及び腹部のみを覆う構造であっても良い。
【0025】
この暖房器具は、また、運転席1の着座部3の左の縁に取り付けられた左膝掛け部9と、着座部3の右の縁に取り付けられた右膝掛け部10とを備えている。左膝掛け部9及び右膝掛け部10は、それぞれ乗員の脚部の運転操作を邪魔しない程度に大腿部を覆った状態で、開かないように互いに掛止するボタン11をそれぞれ複数有している。
左ボディー部6、右ボディー部7、左膝掛け部9及び右膝掛け部10は、後述する接触型ヒータ25(図2)を内蔵しており、その電力は電力線5を通じて、車載バッテリ32及びオルタネータ(車載発電機)30(図2)から供給される。
【0026】
図2は、本発明に係る車両用暖房装置の実施の形態1の内部構成を示すブロック図である。
この車両用暖房装置は、運転席1、助手席及び後部座席に内蔵されるシートヒータ26、並びに運転席1に備えられた暖房機器に内蔵された接触型ヒータ25が、ヒータ電源回路23を通じて、車載バッテリ32及びオルタネータ30から電力を供給される。ヒータ電源回路23は、運転席1、助手席及び後部座席の各シートヒータ26、並びに接触型ヒータ25に通流させる電流を個別に制御する。オルタネータ30は、車両のエンジン31に連動して交流発電し、発電した電力を整流して出力する。
【0027】
車両のダッシュボードに設けられたヒータ操作部29での操作に基づく操作信号が、統合制御部21に与えられる。統合制御部21は与えられた操作信号に基づきヒータ電源回路23を制御することにより、シートヒータ26及び接触型ヒータ25を制御する。
この車両用暖房装置は、また、空調機24が、空調電源回路22を通じて、車載バッテリ32及びオルタネータ30から電力を供給される。
【0028】
車両のダッシュボードに設けられた空調操作部28での操作に基づく操作信号が、空調ECU(Electronic Control Unit)27に与えられる。空調ECU27は、与えられた操作信号、及び図示しないセンサ類からの検出信号に基づき、空調機24の制御信号を作成し、統合制御部21に与える。統合制御部21は与えられた制御信号に基づき空調電源回路22を制御することにより、空調機24による暖冷房を制御する。
統合制御部21、空調電源回路22及びヒータ電源回路23は、冷暖房制御部20を構成する。
【0029】
このような構成の車両用暖房装置では、図3のタイミングチャートに示すように、空調機24をオンにしている間(図3A)は、運転席1の暖房機器に内蔵された接触型ヒータ25をオフにし(図3B)、接触型ヒータ25をオンにしている間(図3B)は、空調機24をオフにする(図3A)制御が可能である。
また、この車両用暖房装置では、例えば図4のタイミングチャートに示すように、シートヒータがオフになっている(図4C)助手席の人が、空調機24を操作し(図4A)、空調機24の消費電力を増/減させるのに応じて、運転席1の暖房機器に内蔵された接触型ヒータ25の消費電力を減/増させる制御が可能である。
【0030】
この車両用暖房装置によれば、乗員の身体の前面も暖めることができ、例えば乗員として運転者だけが乗車しているような状態では、車室内全体を暖めることなく、暖房効果を得ることができ、電力消費を抑制し、燃料消費を抑制することができる。
また、この車両用暖房装置によれば、乗員の身体全体を覆って、ヒータの保温効率が向上する為、空調機よりも省電力であり、乗員にとっては暖房効果も高い。また、身体全体に接するように、ヒータが配設されているので、乗員は早く暖まることができる。
【0031】
(実施の形態2)
図5は、本発明に係る車両用暖房装置の実施の形態2が備える暖房器具の外観を示す斜視図である。
この暖房器具は、車両のヘッドレスト(頭支え)4付きの運転席1(座席)に設けられた安全ベルトの形状をなし、安全ベルトの機能も兼ねており、乗員の右肩から左腰部を覆う胸腹ベルト部12と、大腿の付け根付近の腰を覆う腰ベルト部13とを備えている。
【0032】
胸腹ベルト部12及び腰ベルト部13は、上述したような接触型ヒータ25(図2)を内蔵しており、その電力は電力線5を通じて、車載バッテリ32及びオルタネータ30(図2)から供給される。その他の構成及び動作は、実施の形態1で説明した車両用暖房装置の構成及び動作と同様であるので、説明を省略する。
【0033】
(実施の形態3)
図6は、本発明に係る車両用暖房装置の実施の形態3が備える暖房器具の外観を示す説明図である。
この暖房器具は、乗員が着るベスト形状をなしており、上述したような接触型ヒータ25(図2)を内蔵しており、その電力は、ベスト(暖房器具)14の左下裾から引き出された電力線15を通じて、車載バッテリ32及びオルタネータ30(図2)から供給される。
【0034】
電力線15は、その先端に設けられたプラグ17により、運転席1の着座部3の左側面下端に設けられたコンセント16に着脱自在に接続される。
尚、ベスト14は、袖の有る上着形状であっても良い。その他の構成及び動作は、実施の形態1で説明した車両用暖房装置の構成及び動作と同様であるので、説明を省略する。
【符号の説明】
【0035】
1 運転席(座席)
2 背もたれ
3 着座部
5,15 電力線
6 左ボディー部(暖房器具)
7 右ボディー部(暖房器具)
8 穴
9 左膝掛け部(暖房器具)
10 右膝掛け部(暖房器具)
12 胸腹ベルト部(暖房器具)
13 腰ベルト部(暖房器具)
14 ベスト(暖房器具)
21 統合制御部(指示手段)
22 空調電源回路
23 ヒータ電源回路(抑制又は零にする手段)
24 空調機
25 接触型ヒータ
26 シートヒータ
28 空調操作部
29 ヒータ操作部
30 オルタネータ
32 車載バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の座席に備えられ、車載電源から電力を与えられるシートヒータを有し、乗員を暖房する車両用暖房装置において、
前記座席の背もたれに、乗員の身体の前面側を覆うように設けられ、前記車載電源から電力を与えられるヒータを内蔵する暖房器具を備えることを特徴とする車両用暖房装置。
【請求項2】
前記暖房器具は、前記背もたれの左右の縁に取り付けられ、乗員の腕を通す穴を有し、乗員を左右から覆う被服の一対の前身ごろ形状になしてある請求項1記載の車両用暖房装置。
【請求項3】
前記暖房器具は、前記座席の着座部の左右の縁に取り付けられ、乗員の大腿部を左右から覆う一対の膝掛け部を更に備える請求項2記載の車両用暖房装置。
【請求項4】
前記暖房器具は、前記座席用の安全ベルトにヒータを内蔵させて構成してある請求項1記載の車両用暖房装置。
【請求項5】
車載電源から電力を与えられるヒータを内蔵し、乗員の上半身を覆うベスト形状の暖房器具を備えることを特徴とする車両用暖房装置。
【請求項6】
前記暖房器具が作動しているときは、車両の空気調和機へ電力消費量の抑制又は停止を指示する信号を出力する指示手段を更に備える請求項1乃至5の何れか1項記載の車両用暖房装置。
【請求項7】
前記指示手段が空気調和機へ電力消費量の抑制又は停止を指示する信号を出力する際は、前記車載電源から電力を与えられるシートヒータの電力消費量を抑制又は零にする手段を更に備える請求項6記載の車両用暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−79041(P2013−79041A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221286(P2011−221286)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】