説明

車両用曇り発生推定装置

【課題】低コストで曇り発生の可能性を検出することで未然に曇り発生を防止し、良好な視界を確保できる車両用曇り発生推定装置を提供する。
【解決手段】車両の車室内の温度に関する情報を反映した車室内温度情報を取得する車室内温度情報取得部と、車室内の湿度に関する情報を反映した車室内湿度情報を取得する車室内湿度情報取得部と、車両の外部の気温である外気温度に関する情報を反映した外気温度情報を取得する外気温度情報取得部と、車室内温度情報、車室内湿度情報、および外気温度情報に基づいて、車室内の窓に曇りが発生しているか否かを推定する曇り発生推定部と、曇り発生推定部が、車室内の窓に曇りが発生していると推定したときに、曇りの発生を推定したことを反映した曇り発生推定情報を出力する曇り発生推定情報出力部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の窓ガラスの曇りを推定する車両用曇り発生推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両にて暖房もしくは冷房を機能させた場合、窓ガラスが曇る場合がある。そこで、窓ガラス内側表面に曇りが発生する毎に、内気導入率が低減されるように設定変更され、この低減された内気導入率に応じて空調制御を行うことで、曇りの発生度合いを確実に低減させるとともに、暖房性能を確保することができるようにした、車両用空調制御装置が考案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、デフロスタを作動させるためのDEFスイッチあるいはそれに代わるものを操作したとき、あるいは自動制御手段によって同様な操作が行なわれたときに、自動的に最適の防曇手段を作動させることによって、どのような運転条件下においても、また、どのような運転者であっても、常にフロントガラス等の曇りを確実に除去して明快な視界が得られるようにするとともに、快適な車室内環境が形成される車両用防曇手段が考案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−142077号公報
【特許文献2】特開2004−268790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成は、曇りが発生した後の解消方法であり、該当機能が作動し始めてから曇りが解消するまでの間、良好な視界を確保できないことがある。また、曇り検知センサにより曇りの発生を検知しており、装置のコストを押し上げている。
【0006】
特許文献2の構成では、デフロスタを作動させないと防曇運転を行わないという問題がある。また、結露センサ、ガラスの内面温度あるいは内面湿度を検出するセンサ、車速センサ、日射量センサを必要とするので、装置のコストが増大し、曇り判定の処理負荷も大きくなる。また、特許文献2の構成は、特許文献1の構成と同様に、曇りが発生した後の解消方法である。
【0007】
上記問題点を背景として、本発明の課題は、低コストで曇り発生の可能性を検出することで未然に曇り発生を防止し、良好な視界を確保できる車両用曇り発生推定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
上記課題を解決するための車両用曇り発生推定装置は、車両の車室内の温度に関する情報を反映した車室内温度情報を取得する車室内温度情報取得部と、車室内の湿度に関する情報を反映した車室内湿度情報を取得する車室内湿度情報取得部と、車両の外部の気温である外気温度に関する情報を反映した外気温度情報を取得する外気温度情報取得部と、車室内温度情報、車室内湿度情報、および外気温度情報に基づいて、車室内の窓に曇りが発生しているか否かを推定する曇り発生推定部と、曇り発生推定部が、車室内の窓に曇りが発生していると推定したときに、曇りの発生を推定したことを反映した曇り発生推定情報を出力する曇り発生推定情報出力部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記構成によって、車内外の気温および車室内の湿度により、特に車室を構成する窓ガラス内側表面の曇りの発生を推定できる。特許文献2によると、ガラス内面の表面温度は、車室内外の気温と車速および日射量から推定することもできる。ここで、車速および日射量を一定値とすれば、車室内外の気温のみでガラス内面の表面温度を推定できる。一般に、車室内の水蒸気量(湿度)が変化すると、露点も変化するので、ガラス内面の表面温度(車室内外の気温から推定)と露点(車室内の湿度)とにより結露(窓ガラスの曇り)を推定できる。また、曇り検知センサ、結露センサ、ガラスの内面温度あるいは内面湿度を検出するセンサ等は不要であるため、装置のコストは増大しない。さらに、曇り判定の処理負荷も大きくはならない。
【0010】
また、本発明の車両用曇り発生推定装置は、車室内の温度を設定する車室内温度設定部を備え、車室内温度情報取得部は、車室内温度設定部により設定された車室内設定温度を、車室内温度情報として取得する。
【0011】
上記構成によって、車室内に温度センサのような温度測定部を備えることなく、車室内温度情報を取得することができる。
【0012】
また、本発明の車両用曇り発生推定装置は、車室内の温度を検出する車室内温度検出部を備え、車室内温度情報取得部は、車室内温度検出部が検出した車室内の温度を、車室内温度情報として取得する。
【0013】
上記構成によって、車室内温度設定部を備えない構成においても、車室内温度情報を取得することができる。
【0014】
また、本発明の車両用曇り発生推定装置は、車室内の温度を設定する車室内温度設定部と、車室内の温度を検出する車室内温度検出部と、を備え、車室内温度情報取得部は、予め定められた優先取得条件が成立したときには、車室内温度設定部により設定された車室内設定温度を車室内温度情報として取得し、優先取得条件が成立していないときには、車室内の温度を、車室内温度情報として取得する。
【0015】
上記構成によって、車室内温度設定部と車室内温度検出部とを備えるときに、ユーザがいずれを用いるか選択する手間を省くことができる。
【0016】
また、本発明の車両用曇り発生推定装置における曇り発生推定部は、車室内温度情報に含まれる温度と、外気温度情報に含まれる外気温度との差が予め定められた判定値を上回り、かつ、車室内湿度情報に含まれる車室内の湿度が予め定められた湿度閾値を上回るとき、車室内の窓に曇りが発生していると推定する。
【0017】
上述のように、車室内外の気温差から窓ガラスの内面温度を推定できるので、上記構成によって、曇り検知センサ、結露センサ、窓ガラスの内面温度あるいは内面湿度を検出するセンサ等は不要となる。また、上述の判定値および湿度閾値は、例えば車両毎に窓ガラスの曇りの発生状況を調べることにより決定できる。一般に、窓ガラスの内面温度は外気温に近く、車室内の温度と外気温との差が大きいほど、曇りは発生しやすいので、車室内外の気温差と車室内との湿度とから、特に車室を構成する窓ガラス内側表面の曇りを推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の車両用曇り発生推定装置を適用した車両用空調制御装置の構成を示す図。
【図2】曇り発生推定処理を説明するフロー図。
【図3】曇り発生推定処理の別例を説明するフロー図。
【図4】曇り発生推定処理の別例を説明するフロー図。
【図5】防曇運転実行制御処理を説明するフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の車両用曇り発生推定装置について、図面を用いて説明する。図1に、本発明の車両用曇り発生推定装置を適用した車両用空調制御装置100の全体構成を概略的に示す。車両用空調制御装置100は、エアコンECU101と、該エアコンECU101により制御されるエアコンユニットUとを含んで構成される。
【0020】
車両用空調制御装置100の主制御部をなすエアコンECU101には、空調用センサ120、空調用操作部140、表示部141、および駐車判定用センサ150が接続する構成を有している。エアコンユニットUは、いわゆるHVAC(Heating, Ventilating and Air-Conditioning)ユニットであり、例えば、車室内の空調状態を運転席側と助手席側とで独立して調整可能に構成されている。
【0021】
エアコンユニットUのダクト28には、車内空気を循環させるための内気吸込口42と、車外の空気を取込む外気吸込口41とが形成されており、内外気切替ダンパー24によりいずれかに切り替えて使用される。これら内気吸込口42ないし外気吸込口41からの空気は、ブロワ21によってダクト28内に吸い込まれる。ダクト28内には、吸い込まれた空気を冷却して冷気を発生させるためのエバポレータ22が設けられている。そして、エバポレータ22よりも下流側(吹出口側)は、運転席側の吹出口44,45へ至る経路と助手席側の吹出口46,47へ至る経路に分岐している。
【0022】
エバポレータ22には、気化した冷媒ガスを圧縮して液体に戻す前に液化し易いように加圧する、エンジンあるいはモータを駆動源とするコンプレッサ18、圧縮によって高温のガス状になった冷媒ガスを冷やして液体に戻すコンデンサ(凝縮器)19、液体状の冷媒を貯蔵するレシーバ(図示せず)、液体状の冷媒が通過するときに冷媒が気化し易いように霧状に吹き出させる膨張弁(図示せず)が接続されている。これにより、ブロワ21によって送風された空気がエバポレータ22を通過することで冷却される。なお、エバポレータ22には、エバポレータ22を通過した直後の空気の温度(エアコンユニットUへの吸入温度)を検出するエバポレータ後センサ123が設けられている。
【0023】
また、ダクト28内のエバポレータ22の下流側部位には、エアミックスダンパー25,26およびヒータコア23が設けられている。ヒータコア23は、例えば、エンジン(図示せず)の冷却水を熱源として空気を加熱する。ダクト28内には、ヒータコア23を通過しないでヒータコア23の下流側に空気を導入するためのバイパス通路27,29が形成されている。これにより、エアミックスダンパー25,26を開閉して、ヒータコア23を通る暖気とバイパス通路27,29を通る冷気との混合割合を変化させることで、車内に吹き出す空気の温度を調節する。
【0024】
なお、エアコンユニットUには吹出口として、フロントガラス曇り止め用のデフロスタ吹出口[DEF]43がフロントガラスFGの内面下縁に対応するインパネ上方奥に、運転席側フット吹出口[FOOT]44がインパネ下面右奥の運転席側足元に、運転席側フェイス吹出口[FACE]45がインパネの正面中央右寄りと右隅に、助手席側フェイス吹出口[FACE]46がインパネの正面中央左寄りと左隅に、助手席側フット吹出口[FOOT]47がインパネ下面左奥の助手席側足元に、それぞれ開口しており、吹出口切替用ダンパー32〜36によってそれぞれ開閉状態が切り替えられる。
【0025】
図1の例では、フット吹出口およびフェイス吹出口が、運転席側と助手席側とで独立して切り替えることができるようになっているが、運転席側と助手席側とで独立していない構成でもよい。
【0026】
また、エアコンECU101には、エアミックスダンパー25,26、上記吹出口切替用ダンパー32〜36の開閉状態を切り替えるダンパー駆動ギア機構31、内外気切替ダンパー24、それらを駆動するサーボモータ71〜74、およびサーボモータ71〜74を駆動する駆動回路131〜134を含む空調用駆動部130が接続されている。これらサーボモータ71〜74は、エアコンECU101によって回転制御されるとともに、ロータの回転位置や回転速度等の情報を検出してエアコンECU101にフィードバックする。具体的には、駆動回路131〜134がエアコンECU101から駆動指令信号の入力を受けて、対応するサーボモータ71〜74を駆動する。
【0027】
エアコンECU101に接続される空調用センサ120は、車内温度を検出する内気温センサ121、車外温度を検出する外気温センサ122、エバポレータを通過した直後の空気の温度を検出するエバポレータ後センサ123、車室内の湿度を検出する車室内湿度センサ124、車室内への日射量を検出する日射センサ125、等の周知の空調用センサを含んで構成される。
【0028】
なお、内気温センサ121が本発明の車室内温度情報取得部,車室内温度検出部に相当する。また、外気温センサ122が本発明の外気温度情報取得部に相当する。また、車室内湿度センサ124が本発明の車室内湿度情報取得部に相当する。
【0029】
エアコンECU101に接続される空調用操作部140は、運転者および助手席乗員により操作可能なインパネ正面中央に設けられたエアコンパネルに設けられており、ON/OFFスイッチ,風量切替スイッチ,温度設定スイッチ,吹出口切替スイッチ(MODEスイッチ),内外気切替スイッチ,デフロスタスイッチ,A/Cスイッチ,独立/一括制御切替スイッチ(DUALスイッチ)といったスイッチを含んで構成される。これらのスイッチは、各々周知の押圧操作部やダイアル操作部として構成されている。なお、空調用操作部140(特に、温度設定スイッチ)が本発明の車室内温度設定部に相当する。
【0030】
表示部141は、例えば周知の液晶表示器あるいはLEDインジケータとして構成され、乗員により設定された内容や、車両用空調制御装置100の現在の運転状況等の表示を行う。また、表示部141を、車両の現在位置を検出して、目的地までの経路を探索し、その経路案内を行う周知の車両用ナビゲーション装置の表示器と兼用してもよい。なお、表示部141が本発明の曇り発生推定情報出力部に相当する。
【0031】
エアコンECU101に接続される駐車判定用センサ150は、例えば、車両の速度を検出する車速センサ151、パーキングブレーキ(図示せず)の動作状態を検出するパーキングブレーキスイッチ152、および車両のエンジン(図示せず)の始動/停止を行うイグニッションスイッチ153を含んで構成され、車両が駐車状態にあるか否かを判定する(駐車判定方法については後述)。
【0032】
エアコンECU101は、CPU101a、ROM101b、RAM101c、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶媒体で構成されるメモリ101d、車内LAN145の通信インターフェース回路であるLAN I/F101e等を備える周知のコンピュータハードウェアとして構成される。なお、CPU101aが本発明の車室内温度情報取得部,曇り発生推定部,曇り発生推定情報出力部に相当する。
【0033】
エアコンECU101は、空調用操作部140の各部の操作状態,各種空調用センサ120の検出結果に基づいて、空調用駆動部130を駆動制御することにより、吹出温度制御,風量制御,内気吸気・外気吸気切替制御,および吹出口切替制御等の周知の空調制御を実行する。これらの空調制御は、エアコンECU101のCPU101aがROM101bに格納される空調制御プログラムを実行する形で行われる。
【0034】
なお、車両用空調制御装置およびHVACの一般的な構成および動作については、例えば、特開2010−030435号公報あるいは特開2011−093533号公報に詳細が記載されている。
【0035】
図2を用いて、曇り発生推定処理について説明する。なお、本処理は、CPU101aがROM101bに記憶された空調制御プログラムに含まれ、該プログラムに含まれる他の処理とともに繰り返し実行される。また、本処理は、車室内温度情報として、車室内設定温度を用いている。つまり、車室内設定温度を、車室内の温度と見なしている。
【0036】
まず、メモリ101dの所定領域を参照して車室内設定温度を取得する(S11)。車室内設定温度は、乗員が空調用操作部140の操作により設定されるが、初期状態(例えば、工場出荷時)には、例えば25℃のようなデフォルト値が設定されるようにしてもよい。次に、外気温センサ122から、車両の外の気温である外気温度を取得する(S12)。
【0037】
次に、車室内設定温度と外気温度との差ΔT1(℃)が、予め定められた判定値X以上となるか否かを判定する。ΔT1が判定値X(℃)を下回るとき(S13:No)、ステップS11へ戻り、次の車室内設定温度取得タイミングを待つ。あるいは本処理を終了する。結露(すなわち、窓ガラスの曇り)には、冬型結露と夏型結露とがあるので、ΔT1(℃)を絶対値として求めてもよい。
【0038】
一方、ΔT1(℃)が判定値X(℃)以上となるとき(S13:Yes)、車室内湿度センサ124から、車室内の湿度を取得する(S14)。そして、車室内の湿度が、が予め定められた湿度閾値Z(%)以上となるか否かを判定する。車室内の湿度が湿度閾値Z(%)を下回るとき(S15:No)、ステップS11へ戻り、次の車室内設定温度取得タイミングを待つ。あるいは本処理を終了する。
【0039】
一方、車室内の湿度が湿度閾値Z(%)以上となるとき(S15:Yes)、車両の窓、例えば車室を構成する窓ガラス内側表面に曇りが発生したと推定して、その旨を反映した曇り発生推定情報を出力する(S16)。曇り発生推定情報は、メモリ101dの所定領域に記憶する。また、曇り発生推定情報に基づいて、表示部141にその旨を表示してもよい。この場合、表示部141が曇り発生推定情報出力部に相当する。また、車内LAN145を介して、外部の車載機器に出力してもよい。
【0040】
図3を用いて、曇り発生推定処理の別例について説明する。なお、本処理は、車室内温度情報として、車室内の温度(「車室内温度」ともいう)を用いている。
【0041】
まず、内気温センサ121から、車室内温度である内気温を取得する(S31)。次に、外気温センサ122から、車両の外の気温である外気温度を取得する(S32)。
【0042】
次に、車室内の温度と外気温度との差ΔT2(℃)が、予め定められた判定値X(℃)以上となるか否かを判定する。ΔT2(℃)が判定値X(℃)を下回るとき(S33:No)、ステップS31へ戻り、次の車室内温度取得タイミングを待つ。あるいは本処理を終了する。上述のΔT1(℃)と同様に、ΔT2(℃)も絶対値として求めてもよい。
【0043】
一方、ΔT2(℃)が判定値X(℃)以上となるとき(S33:Yes)、車室内湿度センサ124から、車室内の湿度を取得する(S34)。そして、車室内の湿度が、が予め定められた湿度閾値Z(%)以上となるか否かを判定する。車室内の湿度が湿度閾値Z(%)を下回るとき(S35:No)、ステップS11へ戻り、次の車室内設定温度取得タイミングを待つ。あるいは本処理を終了する。
【0044】
一方、車室内の湿度が湿度閾値Z(%)以上となるとき(S35:Yes)、車両の窓、例えば車室を構成する窓ガラス内側表面に曇りが発生したと推定して、その旨を反映した曇り発生推定情報を出力する(S36)。曇り発生推定情報については、図2の例(ステップS16)と同様である。
【0045】
図4を用いて、曇り発生推定処理の別例について説明する。なお、本処理は、図2および図3を組み合わせたものであるため、図2あるいは図3と同様の構成については同一の符号を付与し、ここでの詳細な説明は割愛する。
【0046】
まず、メモリ101dの所定領域を参照して、車室内設定温度が設定済みか否かを判定する(S51)。上述のように、デフォルト値が設定されていることもあるが、デフォルト値が設定されない構成のときは、車室内設定温度の値が予め定められた範囲(例えば、16℃〜30℃)に含まれるときには、車室内設定温度が設定済みと判定し、優先取得条件が成立したと見なす。一方、車室内設定温度の値がこの温度範囲に含まれないときには、車室内設定温度が設定済みでないと判定し、優先取得条件が成立していないと見なす。
【0047】
次に、エアコンユニットUが作動中か否かを判定する(S52)。エアコンユニットUが作動中か否かの情報は、例えば、RAM101cの所定領域に記憶されている。そして、エアコンユニットUが作動中のときは、優先取得条件が成立したと見なす。一方、エアコンユニットUが作動中でないときは、優先取得条件が成立していないと見なす。
【0048】
次に、車室内設定温度が設定済み、あるいはエアコンユニットUが作動中のとき、すなわち、優先取得条件が成立しているとき(S53:Yes)、図2と同様の、車室内設定温度を車室内温度情報として用いる曇り発生推定処理(S11〜S16)を実行する。
【0049】
一方、車室内設定温度が設定済でなく、かつエアコンユニットUが作動中でないとき、すなわち、優先取得条件が成立していないとき(S53:No)、図3と同様の、車室内の温度を車室内温度情報として用いる曇り発生推定処理(S31〜S36)を実行する。
【0050】
ユーザの空調用操作部140の設定操作により、車室内設定温度および車室内の温度のいずれを優先して用いるかを選択できるようにしてもよい。この場合、設定内容はメモリ101dに記憶される。
【0051】
図2〜図4の曇り発生推定処理における、判定値X(℃)および湿度閾値Z(%)は、例えば、車両毎あるいは車種毎に、窓の曇りの発生状況を調べることにより決定できる。また、図2の判定値X(℃)と図3の判定値X(℃)とは、同じ値でも異なる値でもよい。同様に、図2の湿度閾値Z(%)と図3の湿度閾値Z(%)とは、同じ値でも異なる値でもよい。
【0052】
図5を用いて、防曇運転実行制御処理について説明する。なお、本処理は、CPU101aがROM101bに記憶された空調制御プログラムに含まれ、該プログラムに含まれる他の処理とともに繰り返し実行される。
【0053】
この場合、曇り発生推定情報を取得する曇り発生推定情報取得部と、車室内の空調を行う空調装置と、曇り発生推定情報を取得したときに、空調装置に、曇りを解消するための防曇運転を実行させる防曇運転実行制御部と、を備える構成となっている。このとき、曇り発生推定情報取得部,防曇運転実行制御部がCPU101aに相当し、空調装置がエアコンユニットUに相当する。本構成によって、従来技術とは異なり、窓ガラスの曇りを検出する前に防曇運転を実行できる。また、デフロスタを作動させなくても、窓ガラスの曇りを推定すれば防曇運転を実行できるので、ユーザの操作の手間を省くことができる。
【0054】
まず、メモリ101dの所定領域を参照して、曇り発生推定情報が記憶されているかを調べる。曇り発生推定情報が記憶されていないとき、すなわち、曇り発生推定情報が出力されていないとき(S71:No)、本処理を終了する。
【0055】
一方、曇り発生推定情報が記憶されているとき、すなわち、曇り発生推定情報が出力されているとき(S71:Yes)、以下のうちの少なくとも一つを用いて、車両が駐車状態であるか否かを判定する。
【0056】
・車速センサ151から検出した車速がゼロのとき(あるいは、予め定められた値を下回るとき)、車両が駐車状態であると判定する。
・パーキングブレーキスイッチ152がオン状態(すなわち、パーキングブレーキが作動状態)のとき、車両が駐車状態であると判定する。
・イグニッションスイッチ153がオフ状態(すなわち、エンジン停止状態)のとき、車両が駐車状態であると判定する。
上記の他に、シフトレバー(図示せず)がパーキングの位置にあるとき、車両が駐車状態であると判定してもよい。
【0057】
車両が駐車状態であると判定したとき(S72:No)、本処理を終了する。一方、車両が駐車状態でないと判定したとき(S72:Yes)、メモリ101dの所定領域に記憶されている、曇り発生推定情報を消去する(S73)。このタイミングで曇り発生推定情報を消去しなくてもよい。次に、コンプレッサ18を作動させる(S74)。そして、エアコンユニットUの冷凍サイクルを除湿状態とし(S75)、吹出口としてデフロスタ吹出口[DEF]43を選択し、除湿した空気を吹き出させるデフロスト運転(すなわち、防曇運転)を実行する(S76)。
【0058】
ステップS74〜S75では、空調装置は、車両の窓ガラスの内面に向けて空気を吹き出すデフロスタ吹出口を含み、防曇運転実行制御部は、防曇運転として、空調装置において、車室内の空気を除湿させるとともに、除湿した空気を、デフロスタ吹出口から吹き出すデフロスト運転を行わせる構成となっている。本構成によって、窓ガラスの曇りを推定すればデフロスタが自動的に作動して防曇運転を行うので、ユーザの操作の手間を省くことができる。
【0059】
防曇運転実行中に、表示部141において、例えば「窓ガラスの曇り取りを行っています」のようなメッセージを表示したり、防曇運転の実行を示すインジケータを点灯してもよい。この場合、防曇運転を実行していることを報知する報知部を備える構成となっている。本構成によって、ユーザが操作をしていないにもかかわらず空調装置が作動したときに、防曇運転を実行していることが分かるので、装置の誤作動や故障と誤認することを防止できる。
【0060】
次に、車室内湿度センサ124から、車室内の湿度を取得する(S77)。そして、車室内の湿度が、が予め定められた閾値Z(%)以下となるか否かを判定する。車室内の湿度が閾値Z(%)を上回るとき(S78:No)、ステップS76へ戻り、デフロスト運転を継続する。
【0061】
一方、車室内の湿度が閾値Z(%)以下となるとき(S78:Yes)、車両の窓の曇りは除去されたと推定して、以下のうちのいずれかを用いて、車室内温度調整運転を実行する(S79)。この場合、防曇運転実行制御部は、防曇運転の実行時に、車室内の湿度が予め定められた閾値を下回ったとき、空調装置において、車室内の温度を予め定められた値とするための車室内温度調整運転を行わせる構成となっている。一般的に、除湿を行うと気温が低下することが知られている。本構成によって、例えば、気温が低下した分だけ空気を加熱することで、車内の快適性を維持しつつ防曇運転を行うことができる。
・上述のデフロスト運転を継続するが、除湿した空気をヒータコア23で加熱して、デフロスタ吹出口[DEF]43から送風する。
・エアコンECU101は、空調用操作部140の各部の操作状態,各種空調用センサ120の検出結果に基づいて、空調用駆動部130を駆動制御する。すなわち、通常の空調制御を行う。
・エアコンECU101は、車室内の気温が防曇運転の実行前の状態となるように空調制御を行う。この場合、曇り取り制御実行部は、車室内温度調整運転として、車室内の温度が、防曇運転の開始前に取得した車室内温度情報に反映されているものとなるように、空調装置を駆動させる構成となっている。本構成によって、ユーザが何等の操作を行うことなく、車室内の空調状態が防曇運転の開始前に近いものとなるため、防曇運転を行っても車内の快適性を損なうことは少なくなる。また、防曇運転の実行前にエアコンユニットUが動作していなかったときは、車室内温度調整運転時にはエアコンユニットUを停止させてもよい。
【0062】
なお、上述の閾値Z(%)は、図2〜図4の湿度閾値Z(%)と同じ値でも異なる値でもよい。
【0063】
その後、ステップS77へ戻り、車室内の湿度を取得して、上述の、車室内の湿度に応じた処理(デフロスト運転あるいは車室内温度調整運転)を実行する。無論、デフロスト運転あるいは車室内温度調整運転のいずれも行う必要がなくなったときには、本処理を終了する。
【0064】
図5の構成は、車両が駐車状態であるか否かを判定する駐車状態判定部を備え、車両が駐車状態でないときに、防曇運転実行制御部が防曇運転を実行する構成であるが、車両が駐車状態であるか否かによらず、曇りが発生していると推定されたとき(すなわち、曇り発生推定情報が記憶されているとき)、防曇運転を実行してもよい。このとき、図5のステップS72は実行されない。なお、車両が駐車状態でないときのみ防曇運転を実行する方が、車両のバッテリあるいはエンジンへの負担が低くて済む。車両が駐車中のときは、車内に乗員がいないことが多いので、防曇運転を実行しても無駄になってしまうことが多い。
【0065】
上述の構成では、本発明の車両用曇り発生推定装置の構成および機能がエアコンECU101に含まれるようになっているが、エアコンECU101とは別構成の曇り発生推定ECU200(図1参照)を設ける構成としてもよい。この場合、曇り発生推定ECU200は、エアコンECU101と同様に、CPU、ROM、RAM、不揮発性記憶媒体で構成されるメモリ、車内LAN145の通信インターフェース回路であるLAN I/F(いずれも図示せず)を備える。そして、車室内温度情報、車室内湿度情報、および外気温度情報は、車内LAN145を介してエアコンECU101から取得して曇り発生推定処理を実行し、曇り発生推定情報を、車内LAN145を介してエアコンECU101等の外部機器に出力する。エアコンECU101は、車内LAN145を介して曇り発生推定処理を取得し、防曇運転実行制御処理を実行する。
【0066】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0067】
43 デフロスタ吹出口
100 車両用空調制御装置
101 エアコンECU
101a CPU(車室内温度情報取得部,曇り発生推定部,曇り発生推定情報出力部)
120 空調用センサ
121 内気温センサ(車室内温度情報取得部,車室内温度検出部)
122 外気温センサ(外気温度情報取得部)
124 車室内湿度センサ(車室内湿度情報取得部)
140 空調用操作部(車室内温度設定部)
141 表示部(曇り発生推定情報出力部)
150 駐車判定用センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室内の温度に関する情報を反映した車室内温度情報を取得する車室内温度情報取得部と、
前記車室内の湿度に関する情報を反映した車室内湿度情報を取得する車室内湿度情報取得部と、
前記車両の外部の気温である外気温度に関する情報を反映した外気温度情報を取得する外気温度情報取得部と、
前記車室内温度情報、前記車室内湿度情報、および前記外気温度情報に基づいて、前記車室内の窓に曇りが発生しているか否かを推定する曇り発生推定部と、
前記曇り発生推定部が、前記車室内の窓に曇りが発生していると推定したときに、前記曇りの発生を推定したことを反映した曇り発生推定情報を出力する曇り発生推定情報出力部と、
を備えることを特徴とする車両用曇り発生推定装置。
【請求項2】
前記車室内の温度を設定する車室内温度設定部を備え、
前記車室内温度情報取得部は、前記車室内温度設定部により設定された車室内設定温度を、前記車室内温度情報として取得する請求項1に記載の車両用曇り発生推定装置。
【請求項3】
前記車室内の温度を検出する車室内温度検出部を備え、
前記車室内温度情報取得部は、前記車室内温度検出部が検出した前記車室内の温度を、前記車室内温度情報として取得する請求項1に記載の車両用曇り発生推定装置。
【請求項4】
前記車室内の温度を設定する車室内温度設定部と、
前記車室内の温度を検出する車室内温度検出部と、を備え、
前記車室内温度情報取得部は、予め定められた優先取得条件が成立したときには、前記車室内温度設定部により設定された車室内設定温度を前記車室内温度情報として取得し、前記優先取得条件が成立していないときには、前記車室内の温度を、前記車室内温度情報として取得する請求項1に記載の車両用曇り発生推定装置。
【請求項5】
前記曇り発生推定部は、前記車室内温度情報に含まれる温度と、前記外気温度情報に含まれる前記外気温度との差が予め定められた判定値を上回り、かつ、前記車室内湿度情報に含まれる前記車室内の湿度が予め定められた湿度閾値を上回るとき、前記車室内の窓に曇りが発生していると推定する請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車両用曇り発生推定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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