説明

車両用汚水処理装置

【課題】車両がトンネル内での走行等により汚物タンクへ高圧が掛かると、汚水管内の汚水が圧力の低い車内に設置された汚水受器である小便器へ逆流することがあった。
【解決手段】車両内に設けられる汚水受器1と、汚水管2と、汚物タンク3とを有する車両用汚水処理装置において、汚水受器1から汚水を汚物タンク3まで送る汚水管2の車内部分に上流側開閉弁5を設け、汚水管2の車外部分に下流側開閉弁6を設けるとともに、上流側開閉弁5と下流側開閉弁6との間に空気抜き弁40又は消臭装置41と空気抜け弁40を設け、上流側開閉弁5と下流側開閉弁6とが同時に開口状態にならない車両用汚水処理装置による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電車、列車、特に新幹線車両や長距離用の電車、列車内に設置され、小便等の汚水を処理する車両用汚水処理装置、詳細には小便等の汚水を汚水受器から汚水を重力によって汚物タンクまで落下させる方式の車両用汚水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
新幹線車両、長距離用電車、列車内に設置される小便用の車両用汚水処理装置は、従来、小便器に為された汚水が汚水管を経由して汚物タンクへ流す方式として、重力による重力落下式、又は真空で吸引する真空吸引式の2通りの方式によって行われており、車内と車外の気圧差のための逆流を防止するため、汚水管の中間に1つの弁体を設けていたことは知られている。(従来技術1)
【0003】
更に、改良された小便用の車両用汚水処理装置は、真空圧送方式によるもので、小便器にされた汚水が汚水管を経由して一度中間タンクに入り、更に中間タンクに内圧を加えることにより汚水管から汚物タンクに流されている方式も知られていた。そしてこのような真空圧送方式は、中間タンクの上流側と下流側の汚水管にそれぞれ弁体を設け中間タンクを加圧減圧することにより汚水を、小便器から汚物タンクへ圧送する構造であった。(従来技術2)
【0004】
すなわち、従来技術2の小便用の車内用汚水処理装置は、第1段階として小便器が使用されると中間タンク内を減圧することにより、上流側弁体を開き、下流側弁体を閉め、中間タンクへ汚水を吸引する。中間タンクに汚水が入ると、次に第2段階として上流側弁体を閉めてから中間タンク内を加圧し、次に下流側弁体を開いて汚水を中間タンクから汚物タンクへ圧送していた。また、特開平6−199234号公報(従来技術3)には高速走行を行なう新幹線車両は乗客の不快感(耳への不快感など)をなくすための車両用換気装置が開示されている。
【特許文献1】特開平6−199234号公報(従来技術3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
長距離用電車、列車内、に設置される小便用の車両用汚水処理装置、特に新幹線車両に設置される小便用の車両用汚水処理装置において、乗客が使用する小便器は車内に設置され、小便等の汚水が溜められる汚物タンクは車外の底部に設けられている。
【0006】
そして乗客が使用する車内、特に高速走行を行う新幹線車両内は、乗客の耳等に感じる不快感を無くすため従来技術3に開示されているような車両用換気装置を使用して車内圧力が一定範囲で保たれている。しかし汚物タンクが設置されている車外底部は、この圧力調整が行なわれていない。 そのため高速列車同士のすれ違い時や車両のトンネルへの突入時やトンネル内に入り走行する状態になると、急激に汚物タンクにも高圧が掛かることになり、汚物タンク内の圧力も高くなる。例えば高速走行時の新幹線が明かり区間(通常の地上部)で、高速列車同士のすれ違い時の場合に、汚物タンクに掛かる圧力が通常の大気圧にプラスして400mmAqまで上がる状態も発生し、さらにトンネル突入時やトンネル内での走行時では、汚物タンクに掛かる圧力が大気圧にプラスして1200mmAqまで上がる状態も発生する可能性があった。
【0007】
この圧力により、上記従来技術1のように弁体が1つであると、トンネル内での走行等により汚物タンクへ高圧が掛かると、汚水管内の汚水が圧力の低い車内に設置された汚水受器である小便器へ逆流することがあるという問題点を有していた。特に汚水を流すために弁体を開けている状態のときに汚物タンクへ高圧が掛かると、汚水が逆流しやすい欠点があった。
【0008】
また、従来技術2では、中間タンクや、その加圧減圧を行うための各種付属部品が必要なため、それらを設置する場所や価格が高くなってしまう課題や、強制的に汚水を吸引するため、汚水とともに空気を吸引してしまい、そのときの空気摩擦による騒音が高い頻度で発生してしまう課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、車両内に設けられる汚水受器と、汚水管と、汚物タンクとを有する車両用汚水処理装置において、
汚水受器から汚水を汚物タンクまで送る汚水管の上流側に上流側開閉弁を設け、汚水管の下流側に下流側開閉弁を設けるとともに、
上流側開閉弁と下流側開閉弁との間に空気抜き弁を設け、
上流側開閉弁と下流側開閉弁とが同時には開口状態にならないことを特徴とする車両用汚水処理装置を提案する。
【0010】
上記0009欄記載の車両用汚水処理装置において、上流側開閉弁が車内部分に設置され、下流側開閉弁が車外部分に設置される車両内に設けられる車両用汚水処理装置を提案する。更に、上記0009欄記載又はこの欄の前記車両用汚水処理装置の空気抜き弁の近傍に、又は空気抜き弁へ至る配管中に消臭装置を設けた車両用汚水処理装置を提案する。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、圧力が常圧にほぼ調整されている車内に設置された汚水受器と、車外にある汚物タンクとの間に少なくとも2つの弁を設けて、その中間に空気抜き弁を設けるとともに、2つの弁のどちらかが必ず閉鎖しているため、汚水管に車外から圧力が掛かっても、空気抜け弁から空気を排気することにより、汚物タンクからの汚水管を経由して汚水受器に伝わる圧力を防止するすることができる。特に上流側開閉弁が車内部分に設置され、下流側開閉弁が車外部分に設置される車両内に設けられる車両用汚水処理装置であると、車両外部からの圧力は車内の汚水受器まで達することはない。
【0012】
また、空気抜き弁近傍に、又は空気抜き弁を有する配管に消臭装置を設けることにより、車内へ排気される空気の脱臭を行うことにより不快な臭気を防止している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1及び図2は、この発明の実施形態を示すもので、図1は、この発明の車両用汚水処理装置の模式説明図、図2はこの発明の作動状態を示すタイムチャートである。
【0014】
次に、この発明の車両用汚水処理装置について1つの実施形態を示す図1及び図2に基づいて説明する。車両用汚水処理装置は、車両内に設けられる小便器である汚水受器1と、汚水管2と、汚物タンク3と、排気用配管4と、上流側開閉弁5と、下流側開閉弁6と、コントロールユニット(制御部)7、洗浄スイッチ8を有する。9は車内と車外を区分する部分であり、実施形態では車内床部分である。
【0015】
汚水受器1は、この実施形態では小児用小便器であるが大人用小便器でもよい。汚水受器1は、上部に開閉自在の給水管70を設けている。給水管70は、その上流で給水タンク71に接続しており、電磁開閉弁である洗浄弁72が適宜の状態で開閉して汚水受器1に送水し汚水受器1を洗浄する。コントロールユニット7は、予め入力されたプログラムによって洗浄弁72、洗浄スイッチ8、上流側開閉弁5、下流側開閉弁6に検知信号の受信や指示信号の送信を行う。洗浄スイッチ8は光電センサー或いは押しボタンスイッチ等からなる。
【0016】
汚水管2は、この実施例では上部汚水管20と、中間部汚水管21と、下部汚水管22とを直列に接続してなり、上部汚水管20は上流側端部で汚水受器1に接続し、下部汚水管22は下流側端部で汚物タンク3に接続している。上部汚水管20と中間部汚水管21との間で、かつ車内部分に上流側開閉弁5を設けており、中間部汚水管21と下部汚水管22との間で、かつ車外部分に下流側開閉弁6を設けている。
【0017】
汚水管2の他の実施例では、1本の汚水管の上端部、すなわち汚水管2と汚水受器1との接続部でかつ車内部分に上流側開閉弁5を設けてもよく、1本の汚水管2の下端部、すなわち汚水管2と汚物タンク3との接続部で、かつ車外部分に下流側開閉弁6を設けてもよい。この実施例では、後述する排気用配管4は、1本の汚水管2の中間部で車内部分となる位置に管途中から分岐するように設けている
【0018】
上流側開閉弁5及び下流側開閉弁6は、この実施例では電磁式エアスライドバルブとからなるスライド式開閉弁であるが、管路を開閉する弁であればボール弁等の他の開閉弁で構成してもよい。73はエアタンクであり、エアスライドバルブへエアを供給している。そして、上流側開閉弁5と下流側開閉弁6は、少なくとも互いの開口状態が同時には起こらないようにコントロールユニット7によって制御している。すなわち、上流側開閉弁5が開口状態のときは、下流側開閉弁6は閉鎖状態であり、下流側開閉弁6が開口状態のときには上流側開閉弁5が閉鎖状態である。
【0019】
中間部汚水管21は、管途中から分岐する排気用配管4を車内部分となる位置に設けている。排気用配管4は、端部を車内に開口させ、その開口に空気抜き弁(エア抜きバルブ)40を設けており、空気抜き弁40の外側、又は内側、又は排気用配管4内に消臭装置41を設けている。
【0020】
汚物タンク3は、各汚水管2や図示しない汚物管等の下流側に接続され各汚水、汚物を列車、電車使用中、貯留する装置である。汚物タンク3は、車体の底部9の下方の車外に配設され、車内の圧力調整を受けない。
【0021】
次に、この発明の実施形態の車両用汚水処理装置の作用について図2の作動タイムチャートに基づき説明する。車内において、使用者の使用が無い状態では、コントロールユニット7からの指示で、上流側開閉弁5も下流側開閉弁6も閉鎖した状態である。この状態で車両がトンネル内に入っても、下流側開閉弁6によって管内の加圧は、そこで止り、それより上流部へ波及しない。
【0022】
次に使用者が小用をした後、洗浄スイッチ8によりコントロールユニット7へ信号が送られる。コントロールユニット7から洗浄弁72及び上流側開閉弁5へ信号が送られ洗浄弁72が開口しして汚水受器1へ送水し洗浄すると同時に上流側開閉弁5も開口する。この実施例では洗浄弁72の開口時間及び上流開閉弁5の開口時間は数秒程度であり、時間経過後各開閉弁72、5は閉鎖する。
【0023】
洗浄スイッチ8は、光電センサーである場合は自動的に使用者が小用後汚水受器1から離れたことを検知してコントロールユニット7に検知信号を送る。また、洗浄スイッチ8が、押しボタンスイッチである場合は、使用後の使用者の押しボタンの押圧により洗浄弁72と上流側開閉弁5を開口させる信号がコントロールユニット7へ送られる。汚水は、重力により上部汚水管20から中間部汚水管21を落下して流れ、下流側開閉弁6まで行って、そこで止められ一瞬溜まる。
【0024】
次に、上流側開閉弁5が時間の経過後自動的に閉鎖し、その閉鎖の数秒後に閉鎖していた下流側開閉弁6が開口する。このプログラムは、予め設定されてコントロールユニット7に入力されている。下流側開閉弁6はコントロールユニット7からの指示で数秒後に閉鎖される。上流側開閉弁5を閉鎖させた状態で下流側開閉弁6を開口させて汚水を下部汚水管22から汚物タンク3へ落下させる。
【0025】
この状態は、使用者の使用前の状態(0022欄参照)となり、順次使用者の使用により汚水は順次、上述の作用を繰り返す。これらの作動は、予めコントロールユニット7に入力したプログラムに従って自動的に行われる。
【0026】
したがって、下流側開閉弁6が開口した状態で車両がトンネル内に入り汚物タンク3に圧力が掛かった場合でも、上流側開閉弁5の閉鎖によって管内の加圧はそこで止り、それより上流部へ波及しない。そのため、汚水が汚水受器1内まで逆流することがない。また上流側開閉弁5が開口した状態で車両がトンネル内に入っても、下流側開閉弁6が閉鎖しているので管内の加圧は、そこで止り、それより上流部へ波及しない。
【0027】
また、上流側開閉弁5と下流側開閉弁6との間で、かつ開口が車内部分に配置された空気抜き弁40を設けているため、下流側開閉弁6に汚水が溜まった状態で発生する臭気を含む空気は、排気用配管4から空気抜け弁40を通して車内へ排気されるが、このとき脱臭装置41を通るため臭気は抜かされる。また排気用配管4の開口部分が車内であるため外部から圧力は受けない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
この発明は、電車、列車、特に新幹線車両や長距離用の電車、列車内に設置され利用される可能性が高い。特に汚水を重力で落下する方式の小児用小便器について実用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の実施形態を示すもので、車両用汚水処理装置の模式説明図
【図2】同じくこの発明の作動状態を示すタイムチャート
【符号の説明】
【0030】
1 汚水受器
2 汚水管
20 上部汚水管
21 中間部汚水管
22 下部汚水管2
3 汚物タンク
4 排気用配管
40 空気抜け弁
41 消臭装置
5 上流側開閉弁(電磁スライドバルブ)
6 下流側開閉弁(電磁スライドバルブ)
7 コントロールユニット(制御部)
70 給水管
71 給水タンク
72 洗浄弁(電磁開閉弁)
73 エアタンク
8 洗浄スイッチ
9 車内部分と車外部分を区分する部分(車両床部分)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内に設けられる汚水受器と、汚水管と、汚物タンクとを有する車両用汚水処理装置において、
汚水受器から汚水を汚物タンクまで送る汚水管の上流側に上流側開閉弁を設け、汚水管の下流側に下流側開閉弁を設けるとともに、
上流側開閉弁と下流側開閉弁との間に空気抜き弁を設け、
上流側開閉弁と下流側開閉弁とが同時には開口状態にならないことを特徴とする車両用汚水処理装置。
【請求項2】
上流側開閉弁が車内部分に設置され、下流側開閉弁が車外部分に設置される車両内に設けられる請求項1又は請求項2に記載の車両用汚水処理装置。
【請求項3】
空気抜き弁の近傍に、又は空気抜き弁への配管に消臭装置を設けた請求項1又は請求項2に記載の車両用汚水処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−296968(P2007−296968A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−126451(P2006−126451)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000133858)株式会社テシカ (7)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】