説明

車両用洗浄装置

【課題】容易に歪みの少ない鮮明な撮像画像を得ることができる車両用洗浄装置を提供すること。
【解決手段】車両用洗浄装置は、タンクTに貯留された洗浄液を給送するためのウォッシャポンプPと、給送された洗浄液を車両後部に配置された車載カメラ10のガラス窓10aに向けて噴射するためのカメラ・ウォッシャノズルN2とを備える。又、カメラ・ウォッシャノズルN2から噴射する洗浄液の粘度を変更可能な粘度変更手段として、洗浄液を予め設定された温度まで温めるPTCヒーター11を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両を後退させる際に、車両後方の状況を車両後部に配置した車載カメラにて撮影して、その撮影映像をカーナビゲーション用のモニタに表示させて確認できるようにしたものが知られている。この車載カメラは、車両の外部に配置されるためにそのレンズ(撮像面)に泥等が付着すると車両の後方状況が十分に撮影できず、確認し難くなるといった問題がある。
【0003】
そこで、車載カメラのレンズに洗浄液を吹き付けて付着物を除去するためのノズルを設けた車両用洗浄装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この車両用洗浄装置では、スイッチを操作することでノズルから車載カメラの撮像面に洗浄液が噴射され、車載カメラが洗浄される。又、特許文献1では、レンズに残った洗浄液の液滴等を払拭するためのワイパを設けた車両用洗浄装置も提案されている。この車両用洗浄装置では、レンズに残った洗浄液の液滴等を払拭することができるため、液滴によって撮像画像(後方の状況)が歪んでしまうことを回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−53448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記車両用洗浄装置では、レンズ(撮像面)に洗浄液の液滴等が残ってしまった場合、ワイパで払拭することから、その摺接によってレンズ(撮像面)に傷が付く虞があった。又、ワイパが摩耗した場合は、その交換の必要があった。
【0006】
本発明は上記問題点を解消するためになされたものであって、その目的は、容易に歪みの少ない鮮明な撮像画像を得ることができる車両用洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、タンクに貯留された洗浄液を給送するための電動ポンプと、給送された洗浄液を車載カメラの撮像面に向けて噴射するためのカメラ洗浄ノズルとを備えた車両用洗浄装置において、前記カメラ洗浄ノズルから噴射する洗浄液の粘度を変更可能な粘度変更手段を備えたことを要旨とする。
【0008】
同構成によれば、カメラ洗浄ノズルから噴射する洗浄液の粘度を変更可能な粘度変更手段を備えるため、洗浄液の粘度を撮像面から良好に流れ落ちる粘度とすることができる。よって、洗浄液を車載カメラの撮像面に向けて噴射した際に、撮像面に洗浄液の液滴が残ってしまうことを低減することができ、例えば、洗浄液を噴射させるだけで撮像面の洗浄を良好に行うことが可能となり、歪みの少ない鮮明な撮像画像を得ることが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用洗浄装置において、前記粘度変更手段は、ヒーターを含むことを要旨とする。
同構成によれば、粘度変更手段は、ヒーターを含むため、洗浄液を温めることで粘度を低くすることができ、容易に請求項1に記載の発明の効果を得ることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両用洗浄装置において、前記ヒーターは、洗浄液を予め設定された温度まで温めるためのPTCヒーターであることを要旨とする。
【0011】
同構成によれば、前記ヒーターは、洗浄液を予め設定された温度まで温めるためのPTCヒーターであるため、別途、温度センサー等を設けることなく、必要以上に温めてしまうことを回避することができ、不要な電力消費を回避することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の車両用洗浄装置において、前記電動ポンプに主配管を介して接続され、給送された洗浄液を車両ウィンドに噴射するためのウィンド洗浄ノズルと、前記主配管から分岐して前記カメラ洗浄ノズルに接続される分岐配管と、前記主配管と前記分岐配管の分岐部分に設けられ、前記電動ポンプからの洗浄液が前記ウィンド洗浄ノズルに給送される状態から前記カメラ洗浄ノズルに給送される状態に切り替え可能な切替手段とを備え、前記ヒーターは、前記分岐配管上に設けられたことを要旨とする。
【0013】
同構成によれば、切替手段によって電動ポンプからの洗浄液がウィンド洗浄ノズルに給送される状態からカメラ洗浄ノズルに給送される状態に切り替えることができるため、ウィンド洗浄用とカメラ洗浄用の電動ポンプを共通のものとすることができる。そして、ヒーターは、切替手段とカメラ洗浄ノズルを接続する分岐配管上に設けられるため、カメラ洗浄ノズルに近い箇所で効率良く洗浄液を温めることができる。言い換えると、例えば、ヒーターを電動ポンプと切替手段の間(主配管)に設けると、カメラ洗浄ノズルに到達するまでに洗浄液が冷めることを考慮してその分だけ洗浄液を高い温度に温める必要があるが、その必要がなくなる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両用洗浄装置において、前記粘度変更手段は、洗浄液の濃度を変更可能な濃度変更手段を含むことを要旨とする。
【0015】
同構成によれば、粘度変更手段は、洗浄液の濃度を変更可能な濃度変更手段を含むため、洗浄液の濃度を変更することで粘度を低くすることができ、容易に請求項1に記載の発明の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、容易に歪みの少ない鮮明な撮像画像を得ることができる車両用洗浄装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態の車両用洗浄装置を備えた車両の概略構成図。
【図2】実験結果から得た洗浄液の温度−粘度特性図。
【図3】実験結果から得た洗浄液の濃度(メタノールの含有率)−粘度特性図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の車両用洗浄装置の実施形態を図1〜図3に従って説明する。
図1に示すように、車両1には、運転席の横に変速装置2のシフトレバー3が設けられ、同シフトレバー3を各ポジションに操作することによって車両1は変速する。シフトレバー3を1速位置に操作すると、変速装置2は車両1の変速比を1速にシフトチェンジさせる。シフトレバー3を2速位置に操作すると、変速装置2は車両1の変速比を2速にシフトチェンジさせる。また、シフトレバー3を中立位置に操作すると、変速装置2は車両1の変速比を中立にシフトチェンジさせる。
【0019】
さらに、シフトレバー3を後進位置(後進ポジション)に操作すると、変速装置2は車両1を後進させる(後進可能な後進状態とする)。この時、シフトレバー3が後進位置にシフトされている間、車両1の後部に設けられたバックランプBLが点灯されるようになっている。
【0020】
また、車両1のコンソールパネルには、ナビゲーション装置において現在位置やその他地図表示等に利用される表示装置DSPが設置されている。
車両1の後部中央位置であってリアウィンド4の下側には、リアワイパ装置6が設けられている。リアワイパ装置6は、リアワイパモータM1が駆動されることによって回動し、リアワイパ装置6のワイパブレード7がリアウィンド4の外側面を払拭動作する。
【0021】
車両1の後部中央位置であってリアウィンド4の上側には、ウィンド洗浄ノズルとしてのリア・ウォッシャノズルN1が設けられている。リア・ウォッシャノズルN1は、そのノズル口が下方のリアウィンド4に向けられ、洗浄液が給送されるとそのノズル口から洗浄液をリアウィンド4の払拭面に噴射するようになっている。
【0022】
リア・ウォッシャノズルN1は、車両1の前部エンジンルームに設けられた電動ポンプとしてのウォッシャポンプPと主配管8を介して接続されている。ウォッシャポンプPは、同じくエンジンルームに設けられた洗浄液を貯留したタンクTから洗浄液を主配管8を介してリア・ウォッシャノズルN1に給送するポンプである。そして、運転席に設けたウォッシャスイッチSW1を操作すると、ウォッシャポンプPは駆動してタンクTから洗浄液を主配管8を介してリア・ウォッシャノズルN1に給送するようになっている。
【0023】
車両1の後部外側であって、本実施形態ではリアワイパ装置6よりもさらに後部位置には、バックモニタ用の車載カメラ10が設置されている。車載カメラ10は、本実施形態では、後方視認用のリアビューカメラであって、車載カメラ10が撮像した画像は、画像データとして車両1のコンソールパネルに設けた表示装置DSPに出力される。表示装置DSPは、その画像データに基づいて車載カメラ10が撮像した画像を画面に表示するようになっている。
【0024】
なお、車載カメラ10は、変速装置2のシフトレバー3を後進位置(リバース位置)に操作したとき、撮像動作を開始しその画像データを表示装置DSPに出力する。また、シフトレバー3が後進位置(リバース位置)からそれ以外の位置にシフトされたとき、車載カメラ10は撮像動作を終了する。
【0025】
車載カメラ10に隣接した位置であって、車載カメラ10の後方撮像視野角から外れた位置には、カメラ洗浄ノズルとしてのカメラ・ウォッシャノズルN2が設けられている。カメラ・ウォッシャノズルN2は、そのノズル口が車載カメラ10のレンズを泥、埃、塵等から保護するために設けられた撮像面としてのガラス窓10aに向けられ、洗浄液が給送されるとそのノズル口から洗浄液を車載カメラ10のガラス窓10aに噴射するようになっている。
【0026】
カメラ・ウォッシャノズルN2は、ウォッシャポンプPとリア・ウォッシャノズルN1とを接続する主配管8から分岐した分岐配管8aと接続されている。分岐配管8aは、車両1の後部において主配管8と接続され、その後部の接続位置(分岐部分)までの配管は主配管8と共用して使用されている。分岐配管8aが主配管8から分岐した分岐部分には、切替手段としての電磁切替バルブBが設けられている。電磁切替バルブBは、ウォッシャポンプPから給送されてくる洗浄液を、カメラ・ウォッシャノズルN2またはリア・ウォッシャノズルN1のいずれかに択一的に給送するバルブである。
【0027】
本実施形態の電磁切替バルブBは、変速装置2のシフトレバー3が後進位置(リバース位置)に操作されたことに基づいて駆動し、分岐配管8aと主配管8を接続する。すなわち、電磁切替バルブBは、リア・ウォッシャノズルN1とウォッシャポンプPとの接続を遮断し、カメラ・ウォッシャノズルN2とウォッシャポンプPとを接続する。従って、カメラ・ウォッシャノズルN2は、ウォッシャポンプPが駆動されるとタンクTからの洗浄液が給送される状態となる。
【0028】
又、本実施形態のウォッシャポンプPは、変速装置2のシフトレバー3が後進位置(リバース位置)に操作されたことに基づいて(例えば、電磁切替バルブBによる切り替えの完了後)予め設定された時間(例えば3秒)だけ駆動する。
【0029】
尚、電磁切替バルブBは、変速装置2のシフトレバー3が後進位置(リバース位置)以外の位置に操作されているとき、非駆動状態となり、分岐配管8aと主配管8との接続を遮断する。すなわち、電磁切替バルブBは、リア・ウォッシャノズルN1とウォッシャポンプPとを主配管8を介して接続する。従って、通常時には、リア・ウォッシャノズルN1は、ウォッシャポンプPが駆動されるとタンクTからの洗浄液が給送される状態となっており、その状態で前記ウォッシャスイッチSW1が操作されるとリア・ウォッシャノズルN1に洗浄液が給送される。
【0030】
ここで、前記分岐配管8a上には、粘度変更手段及びヒーターとしてのPTCヒーター11が設けられている。PTCヒーター11は、洗浄液を予め設定された温度まで温めるためのものであって、本実施形態では、カメラ・ウォッシャノズルN2から噴射される洗浄液が20℃まで温められるように設定されている。尚、PTCヒーター11は、温度が上がると電気抵抗値が上昇するPTCを用いたものであって、勿論カメラ・ウォッシャノズルN2から噴射される洗浄液が20℃を越えるような場合には作動しない(電流が流れない)ものである。
【0031】
上記したPTCヒーター11の設定は、図2に示す特性図に基づいて決定されている。図2は、実験結果から得た洗浄液の温度−粘度特性図であって、濃度(詳しくは洗浄液に含まれるメタノールの割合(含有率))が50%の場合の特性X1、25%の場合の特性X2、12.5%の場合の特性X3をそれぞれ示している。図2では、洗浄液の濃度(50%、25%、12.5%)に関わらず、温度が20℃以上となると、その粘度がガラス窓10a(撮像面)に洗浄液の液滴がほぼ残らない(良好に流れ落ちる)値であるほぼ2.0[mPa・s]以下となることがわかる。逆に、温度が20℃未満であると、洗浄液の濃度によっては(例えば濃度が25%であると)、その粘度がガラス窓10a(撮像面)に洗浄液の液滴が残ってしまう(良好に流れ落ちない)値であるほぼ2.0[mPa・s]より大きな値となることがわかる。よって、本実施形態では、カメラ・ウォッシャノズルN2から噴射される洗浄液が20℃まで温められるように設定している。
【0032】
尚、図3は、実験結果から得た洗浄液の濃度(メタノールの含有率)−粘度特性図であって、温度が−9℃の場合の特性X4、0℃の場合の特性X5、25℃の場合の特性X6をそれぞれ示している。図3では、温度が25℃のときは、洗浄液の濃度(0%〜50%)に関わらず、その粘度がガラス窓10a(撮像面)に洗浄液の液滴がほぼ残らない(良好に流れ落ちる)値であるほぼ2.0[mPa・s]以下となることがわかる。逆に、温度が−9℃及び0℃のときは、洗浄液の濃度(12.5%〜50%)に関わらず、その粘度がガラス窓10a(撮像面)に洗浄液の液滴が残ってしまう(良好に流れ落ちない)値であるほぼ2.0[mPa・s]より大きな値となることがわかる。
【0033】
次に、上記実施の形態の作用(動作)について説明する。
例えば、シフトレバー3が後進位置に操作されると、ウォッシャポンプPからの洗浄液がカメラ・ウォッシャノズルN2に給送される状態に電磁切替バルブBが切り替えられ、次にウォッシャポンプPが予め設定された時間(例えば3秒)だけ駆動され、洗浄液がカメラ・ウォッシャノズルN2から車載カメラ10のガラス窓10aに噴射される。このとき、洗浄液の温度が低いと、PTCヒーター11によって、カメラ・ウォッシャノズルN2から噴射される洗浄液の温度が20℃となるように洗浄液が温められる。これにより、車載カメラ10のガラス窓10aが洗浄されて表示装置DSPに歪みの少ない鮮明な撮像画像が表示される。
【0034】
次に、上記実施の形態の特徴的な効果を以下に記載する。
(1)カメラ・ウォッシャノズルN2から噴射する洗浄液の粘度を変更可能な粘度変更手段(PTCヒーター11)を備えるため、洗浄液の粘度を車載カメラ10のガラス窓10aから良好に流れ落ちる粘度とすることができる。具体的には、本実施形態の粘度変更手段は、PTCヒーター11であるため、カメラ・ウォッシャノズルN2から噴射される洗浄液の温度が低いと(20℃未満であると)該洗浄液が温められることで、洗浄液の粘度が車載カメラ10のガラス窓10aから良好に流れ落ちる粘度とされる。よって、洗浄液を車載カメラ10のガラス窓10aに向けて噴射した際に、ガラス窓10aに洗浄液の液滴が残ってしまうことを低減することができ、洗浄液を噴射させるだけでガラス窓10aの洗浄を良好に行うことができ、歪みの少ない鮮明な撮像画像を得ることができる。その結果、運転手は、歪みの少ない撮像画像により車両後方の状況を良好に確認することが可能となる。尚、本実施形態では、車載カメラ10のガラス窓10aの払拭用のワイパを有していないことから、勿論、ワイパの摺接によるガラス窓10aの傷つきや、ワイパ摩耗によるワイパ交換といったことは生じることがない。
【0035】
また、ユーザーは、洗浄液としてウォッシャ液に水を足して使用し、少なくなるとさらに水を継ぎ足す場合や、ウォッシャ液を補充する場合など、様々な態様で補充されるため、メーカー側が設定した推奨の洗浄液で使用されないことがあり、洗浄液の物性値を最適に使用することが困難であった。しかし、粘度変更手段によってレンズ表面(ガラス窓10a)に供給される洗浄液の粘度をより迅速に流れ落ちるようにしているので、洗浄液の物性値としての粘度が適切に調整される。
【0036】
(2)粘度変更手段(ヒーター)を、洗浄液を予め設定された温度まで温めるPTCヒーター11としたため、別途、温度センサー等を設けることなく、必要以上に温めてしまうことを回避することができ、不要な電力消費を回避することができる。
【0037】
(3)電磁切替バルブBによってウォッシャポンプPからの洗浄液がリア・ウォッシャノズルN1に給送される状態からカメラ・ウォッシャノズルN2に給送される状態に切り替えることができるため、ウィンド洗浄用とカメラ洗浄用の電動ポンプ(ウォッシャポンプP)を共通のものとすることができる。そして、PTCヒーター11は、電磁切替バルブBとカメラ・ウォッシャノズルN2を接続する分岐配管8a上に設けられるため、カメラ・ウォッシャノズルN2に近い箇所で効率良く洗浄液を温めることができる。言い換えると、例えば、PTCヒーター11をウォッシャポンプPと電磁切替バルブBの間(主配管8)に設けると、カメラ・ウォッシャノズルN2に到達するまでに洗浄液が冷めることを考慮してその分だけ洗浄液を高い温度に温める必要があるが、その必要がなくなる。
【0038】
上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、粘度変更手段を、洗浄液を予め設定された温度まで温めるPTCヒーター11としたが、カメラ・ウォッシャノズルN2から噴射する洗浄液の粘度を変更可能であれば、他の粘度変更手段に変更してもよい。
【0039】
例えば、粘度変更手段をPTCヒーター11以外の単なるヒーターに変更してもよい。この場合、例えば、温度センサーを設け、その温度センサーが検知した温度に基づいて洗浄液を温めるようにしてもよい。又、例えば、温度センサーを設けず、そのときの洗浄液の温度に関わらず、カメラ・ウォッシャノズルN2から洗浄液を噴射する際は、その洗浄液を温めるようにしてもよい。
【0040】
又、例えば、粘度変更手段は、洗浄液の濃度(メタノールの含有率)を変更可能な濃度変更手段を含むようにしてもよい。より具体的には、例えば、図1に2点鎖線で示すように、分岐配管8a上に濃度変更手段としての濃度変更装置21を設ける。濃度変更装置21は、分岐配管8aを通過する洗浄液の濃度を測定するとともに、その測定値に応じて通過する洗浄液に、洗浄液の原液(メタノール)や水を追加する。具体的には、例えば、測定した洗浄液の濃度が25%(図2の特性X2参照)である場合、水を追加して濃度を12.5%(図2の特性X3参照)とすることで、洗浄液の温度が例えば15℃であっても、粘度を2.0[mPa・s]未満とすることができる。よって、ガラス窓10aに洗浄液の液滴が残ってしまうことを低減することができる。尚、勿論、粘度変更手段は、上記したPTCヒーター11や上記した単なるヒーターと濃度変更手段(濃度変更装置21)とを組み合わせて、洗浄液の粘度を変更するものとしてもよい。
【0041】
・上記実施形態では、PTCヒーター11は、カメラ・ウォッシャノズルN2から噴射される洗浄液が20℃まで温められるように設定されるとしたが、これに限定されず、例えば、カメラ・ウォッシャノズルN2から噴射される洗浄液が25℃まで温められるように設定してもよい。このようにすると、洗浄液の粘度が2.0[mPa・s]より確実に小さくなり(図3の特性X6参照)、より安定してガラス窓10a(撮像面)に洗浄液の液滴がほぼ残らない(良好に流れ落ちる)ようにすることができる。又、勿論、カメラ・ウォッシャノズルN2から噴射される洗浄液が30℃や、それ以上まで温められるように設定してもよい。
【0042】
・上記実施形態では、ガラス窓10a(撮像面)に洗浄液の液滴がほぼ残らない(良好に流れ落ちる)粘度であるほぼ2.0[mPa・s]以下となるように、粘度変更手段(PTCヒーター11)の設定を行ったが、その設定は、車載カメラの撮像面の材質等に応じて変更してもよい。即ち、外部に露出した撮像面が透明な樹脂材である場合等、洗浄液の液滴がほぼ残らない(良好に流れ落ちる)粘度がガラス窓10aと異なる場合では、その良好に流れ落ちる粘度に応じて粘度変更手段(PTCヒーター11)の設定を行うようにすることが好ましい。
【0043】
・上記実施形態では、電磁切替バルブBによってウォッシャポンプPからの洗浄液をカメラ・ウォッシャノズルN2またはリア・ウォッシャノズルN1のいずれかに択一的に給送する車両用洗浄装置に具体化したが、電磁切替バルブBを有さず、ウォッシャポンプとカメラ・ウォッシャノズルN2が直接接続された車両用洗浄装置に具体化してもよい。
【0044】
・上記実施形態では、シフトレバー3が後進位置に操作されると、自動的に洗浄液をカメラ・ウォッシャノズルN2から車載カメラ10のガラス窓10aに噴射する車両用洗浄装置に具体化したが、これに限定されず、他の手順(例えばスイッチ操作)で洗浄液をガラス窓10aに噴射する車両用洗浄装置に具体化してもよい。
【0045】
・上記実施形態では、車載カメラ10のガラス窓10aの払拭用のワイパを有していない車両用洗浄装置に具体化したが、これに限定されず、撮像面(ガラス窓10a)の払拭用のワイパを有した車両用洗浄装置に具体化してもよい。このようにしても、ワイパの使用頻度を低減することができ、ワイパの摺接によるガラス窓10aの傷つきや、ワイパ摩耗によるワイパ交換頻度を低減することができる。
【0046】
上記各実施形態から把握できる技術的思想について、以下にその効果とともに記載する。
(イ)請求項3に記載の車両用洗浄装置において、前記PTCヒーターは、前記カメラ洗浄ノズルから噴射される洗浄液が20℃以上となるように設定されたものであることを特徴とする車両用洗浄装置。
【0047】
同構成によれば、PTCヒーターは、前記カメラ洗浄ノズルから噴射される洗浄液が20℃以上となるように設定されたものであるため、洗浄液の粘度を、濃度に関わらず撮像面(ガラス窓10a)に洗浄液の液滴がほぼ残らない(良好に流れ落ちる)値であるほぼ2.0[mPa・s]以下とすることができる(図2参照)。よって、撮像面に洗浄液の液滴が残ってしまうことをほぼ防止することができる。
【符号の説明】
【0048】
4…リアウィンド(車両ウィンド)、8…主配管、8a…分岐配管、10…車載カメラ、10a…ガラス窓(撮像面)、11…PTCヒーター(粘度変更手段及びヒーター)、21…濃度変更装置(粘度変更手段及び濃度変更手段)、B…電磁切替バルブ(切替手段)、N1…リア・ウォッシャノズル(ウィンド洗浄ノズル)、N2…カメラ・ウォッシャノズル(カメラ洗浄ノズル)、P…ウォッシャポンプ(電動ポンプ)、T…タンク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクに貯留された洗浄液を給送するための電動ポンプと、
給送された洗浄液を車載カメラの撮像面に向けて噴射するためのカメラ洗浄ノズルと
を備えた車両用洗浄装置において、
前記カメラ洗浄ノズルから噴射する洗浄液の粘度を変更可能な粘度変更手段を備えたことを特徴とする車両用洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用洗浄装置において、
前記粘度変更手段は、ヒーターを含むことを特徴とする車両用洗浄装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用洗浄装置において、
前記ヒーターは、洗浄液を予め設定された温度まで温めるためのPTCヒーターであることを特徴とする車両用洗浄装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の車両用洗浄装置において、
前記電動ポンプに主配管を介して接続され、給送された洗浄液を車両ウィンドに噴射するためのウィンド洗浄ノズルと、
前記主配管から分岐して前記カメラ洗浄ノズルに接続される分岐配管と、
前記主配管と前記分岐配管の分岐部分に設けられ、前記電動ポンプからの洗浄液が前記ウィンド洗浄ノズルに給送される状態から前記カメラ洗浄ノズルに給送される状態に切り替え可能な切替手段とを備え、
前記ヒーターは、前記分岐配管上に設けられたことを特徴とする車両用洗浄装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両用洗浄装置において、
前記粘度変更手段は、洗浄液の濃度を変更可能な濃度変更手段を含むことを特徴とする車両用洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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