説明

車両用液晶表示装置

【課題】短時間で液晶パネルを適正な温度まで加熱できる車両用液晶表示装置を提供する。
【解決手段】この車両用液晶表示装置1は、その液晶パネル3に、透明面状基材7aの片面に発熱用の透明導電膜7dが形成されて構成された透明面状ヒータ7が配設されたものであり、透明面状ヒータ7の透明導電膜7dと液晶パネル3の主面とが透明性樹脂7hにより接着されることにより、透明面状ヒータ7が液晶パネル3に配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TFT等の液晶パネルを用いた車両用液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、周辺監視カメラの映像やナビゲーションシステム用地図などを表示するため、液晶表示装置が搭載されている。液晶表示装置の液晶パネルは、低温時ではその液晶分子の粘性が増してその液晶分子の動作速度が遅くなるので、その動画表示が見づらくなるという欠点がある。そのため、低温時でも良好な動画が表示される様に、車両用液晶表示装置には、液晶パネルを適正な温度に維持するための加熱装置(透明面状ヒータ)が備えられている。
【0003】
従来の車両用表示装置では、その加熱装置は、透明面状基材を有し、その透明面状基材の一方の片面の略全面に発熱用の透明導電膜が形成され、その透明導電膜の両端に帯状の金属電極が導電性接着材により接着されて主構成されている。この加熱装置は、その透明面状基材の他方の片面(透明導電膜が形成されていない方の片面)が液晶パネルの裏面に透明性樹脂により接着されることにより、液晶パネルに配設されている。そして、この加熱装置は、その両金属電極間に電圧が印加されることによりその透明導電膜が通電発熱し、その熱により液晶パネルを加熱する様になっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車両用液晶表示装置では、上記の様に、発熱用の透明導電膜が透明面状基材を介して液晶パネルの裏面に配設されるので、即ち、発熱用の透明導電膜と液晶パネルとの間に透明面状基材が介在するので、その分、発熱用の透明導電膜と液晶パネルとの間の熱伝距離が長くなると共にそれらの間の熱容量が大きくなり、その結果、加熱装置により液晶パネルを短時間で適正な温度まで加熱することができないという欠点があった。
【0005】
また、導電性接着材により金属電極が透明導電膜に接着されるので、金属電極と透明導電膜との間の接触抵抗に金属電極の長手方向に沿ってのバラツキが生じ易く、その結果、透明導電膜内での通電状態が不均一となり透明導電膜全体が均一に発熱しなくなるという欠点があった。
【0006】
尚、透明導電膜上に帯状の金属電極を形成する場合、導電性接着材を用いる代わりに、エッチングにより帯状の金属電極を透明導電膜上に形成することもできるが、その様にすると、そのエッチングにより透明導電膜を破損させる場合があり、その破損により透明導電膜全体が均一に発熱しなくなるという欠点がある。
【0007】
そこで、この発明の課題は、第1に、短時間で液晶パネルを適正な温度まで加熱できる車両用液晶表示装置を提供すること、第2に、透明導電膜全体を均一に発熱させることができる車両用液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為に、請求項1に記載の発明は、液晶パネルと、透明面状基材の片面に発熱用の透明導電膜が形成された透明面状ヒータとを備えた車両用液晶表示装置であって、前記透明面状ヒータの前記透明導電膜と前記液晶パネルの主面とが透明性樹脂により接着されることにより、前記透明面状ヒータが前記液晶パネルに配設されるものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記透明面状ヒータは、前記透明面状基材の片面の両端に帯状の金属電極が形成され、それら各金属電極を被覆する様に前記透明面状基材の前記片面の略全面に前記透明導電膜が形成されて構成されるものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記各金属電極は、前記透明面状基材の片面における前記液晶パネルの有効画面の配置部分と重ならない部分に形成されるものである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記透明面状ヒータは、前記液晶パネルと前記液晶パネル用のバックライトモジュールとの間に配置されるものである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記透明導電膜はITO(酸化インジウム錫)により形成されるものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、透明面状ヒータの透明導電膜が液晶パネルの主面に接着されるので、即ち、透明導電膜と液晶パネルとの間に透明面状基材が介在しないので、その分、透明導電膜と液晶パネルとの間の熱伝距離を短くできると共にそれらの間の熱容量を小さくでき、これにより短時間で透明面状ヒータにより液晶パネルを適正な温度まで加熱できる。
【0014】
また、透明導電膜と液晶パネルとが透明性樹脂により接着されるので、透明導電膜と液晶パネルとを空隙無く接着でき、これにより、透明面状ヒータの熱を液晶パネルに均一に伝達できると共に、透明面状ヒータと液晶パネルとの間の接着部分でバックライトが散乱することを防止できる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、透明面状基材の片面の両端に帯状の金属電極が形成され、それら各金属電極を被覆する様に前記透明面状基材の前記片面の略全面に透明導電膜が形成されるので、導電性接着材を用いずに且つ透明導電膜を破損させること無く、帯状の金属電極を透明導電膜に設けることができ、これにより透明導電膜全体を均一に発熱させることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、各金属電極が透明面状基材の片面における液晶パネルの有効画面の配置部分と重ならない部分に形成されるので、液晶パネルの有効画面を減少させること無く金属電極を形成できる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、透明面状ヒータは液晶パネルと液晶パネル用のバックライトモジュールとの間に配置されるので、液晶パネルの表示を妨げること無く透明面状ヒータを液晶パネルに配設できる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、透明導電膜は、可視光に対して高い透過率を有するITOにより形成されるので、バックライトを減衰させずに透過させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
この実施の形態に係る車両用液晶表示装置1は、図1および図2の様に、透過形の液晶パネル3と、液晶パネル3の後方から液晶パネル3の画像を照らし出すバックライトモジュール5と、液晶パネル3を適正な温度まで加熱するための透明面状ヒータ7とを備えて主構成される。ここでは、透明面状ヒータ7は、液晶パネル3とバックライトモジュール5との間に配置されている。
【0020】
この車両用液晶表示装置1は、例えば、ダッシュ・ボードの運転席付近に設置され、自車両の走行に付随する情報(エアコン、オーデオなど)や車両周辺監視カメラの映像表示などに用いられる表示装置である。
【0021】
液晶パネル3は、一般的な液晶パネルであって、図示省略するが、互いに間隔をあけて平行配置された例えば矩形形状の1対の透明基板と、それら各透明基板の内側主面にパターン形成された透明電極と、前記透明電極を被覆する様にそれら各透明基板の内側主面に形成された液晶配向膜と、それら各透明基板の間に充填された液晶層と、それら各透明基板の外側主面に配設された偏光フィルムとを備えて主構成される。また、上記の各透明電極の電極構造は、液晶パネル3がドットマトリクス表示タイプとして構成される場合はマトリクス電極構造に形成され、液晶パネル3がセグメント表示タイプとして構成される場合は、表示内容に応じてパターン形成されている。
【0022】
透明面状ヒータ7は、例えば矩形形状のガラス基板(透明面状基材)7aと、ガラス基板7aの片面の両端(液晶パネル3の有効画面が配置する部分と重ならない部分)に互いに平行且つ箔状に形成された帯状(ここではガラス基板7aの一端から他端に渡る帯状)の金属電極7b,7cと、ガラス基板7aの片面の全面に各金属電極7b,7cを被覆する様に(即ち各金属電極7b,7cの上面および内側側面と電気接続する様に)形成されたITO膜(透明導電膜)7dと、ITO膜7dのうちの各金属電極7b,7cを被覆する部分に配設された給電用の電極7e,7fとを備えて構成される。各金属電極7b,7cは、それ自身電気抵抗が比較的低く且つITO膜7dよりも電気抵抗の低い金属(例えば銅、ニッケル、クロム、金、スズ、銀等)により形成される。各電極7e,7fはそれぞれ、例えば帯状に形成され、その一端部が金属電極7b,7cの長手方向の中央に位置する様にITO膜7dに導電性接着材7gにより接着され、その他端部が外部に引き出されている。
【0023】
この構成により、この透明面状ヒータ7は、ITO膜7dの形成に先立ってガラス基板7a上に帯状の金属電極7b,7cを形成でき、それら各金属電極7b,7cを覆う様に一様にガラス基板7a上にITO膜7dを形成することにより、各金属電極7b,7cの上面および側面を介して金属電極7b,7cとの電気接続を確保してITO膜7dを形成できる。これにより、導電性接着材を用いずにITO膜7dと金属電極7b,7cとの電気接続を確保できると共に、例えばエッチングにより金属電極7b,7cを形成する場合においてもITO膜7dを破損させること無く帯状の金属電極7b,7cを形成できる。
【0024】
この透明面状ヒータ7は、そのITO膜7dの中央部分が液晶パネル3の裏面に透明性樹脂7hにより空隙無く接着されることにより液晶パネル3に配設される。
【0025】
以上の構成により、この車両用液晶表示装置1では、透明面状ヒータ7の電極7e,7f間に電圧が印可されると、一方の電極(例えば電極7e)からITO膜7dを介してその電極7eの下側に在る金属電極7bに電流が流れる。その際、各電極7e,7fが各金属電極7b,7cの中央に配設されていること、および各金属電極7b,7cの抵抗が比較的低いことから、当該電流は金属電極7b中をその長手方向の中央から両端までほぼ均一に流れる。
【0026】
そして、金属電極7b中を流れる当該電流は、金属電極7bの上面および側面からITO膜7dに流出するが、その際、金属電極7bとITO膜7dとは導電性接着材を介さずに直接に電気接続されており、従来の様な導電性接着材による不均一な接触抵抗が無いので、金属電極7b中を流れる当該電流は、金属電極7bの長手方向に沿ってほぼ均一に金属電極7bからITO膜7dに流出する。これによりITO膜7d全体に均一に電流が流れ、ITO膜7d全体が均一に通電発熱する。
【0027】
そして、ITO膜7dで発生した当該熱は、液晶パネル3側に伝達して液晶パネル3を加熱するが、その際、従来の様にITO膜7dと液晶パネル3との間にガラス基板7aが介在しないので、即ち、ガラス基板7aが介在しない分、ガラス基板7aと液晶パネル3との間の熱伝距離が短く且つそれら7a,3の間の熱容量が小さいので、ITO膜7dで発生した当該熱は、短時間で液晶パネル3に伝達して短時間で液晶パネル3を適正な温度まで加熱する。これにより、液晶パネル3の周辺温度が低い場合においても、液晶パネル3を短時間で適正な温度まで加熱できて、良好な画像を表示できる。
【0028】
尚、この車両用液晶表示装置1は、例えば、所定の操作スイッチを有しており、その操作スイッチを介しての手動操作により透明面状ヒータ7が作動・停止されるか、または、液晶パネル3の周辺の温度を検出する温度センサと、その温度センサの検出結果に基づいて透明面状ヒータ7を作動・停止する制御部とを有しており、前記温度センサの検出結果が所定温度以下の低温(所定温度より高い温度)になった場合に、前記制御部により自動的に透明面状ヒータ7が作動(停止)される様に構成されている。
【0029】
以上の様に構成された車両用液晶表示装置1によれば、透明面状ヒータ7の透明導電膜7dが液晶パネル3の主面(ここでは裏面)に接着されるので、即ち、透明導電膜7dと液晶パネル3との間に透明面状基材7aが介在しないので、その分、透明導電膜7dと液晶パネル3との間の熱伝距離を短くできると共にそれら7d,3の間の熱容量を小さくでき、これにより短時間で透明面状ヒータ7により液晶パネル3を適正な温度まで加熱できる。
【0030】
また、透明導電膜7dと液晶パネル3とが透明性樹脂7hにより接着されるので、透明導電膜7dと液晶パネル3とを空隙無く接着でき、これにより、透明面状ヒータ7の熱を液晶パネル3に均一に伝達できると共に、透明面状ヒータ7と液晶パネル3との間の接着部分でバックライト光等の液晶画像を照らし出すための光が散乱することを防止できる。
【0031】
また、透明面状基材7aの片面の両端に帯状の金属電極7b,7cが形成され、それら各金属電極7b,7cを被覆する様に透明面状基材7aの前記片面の略全面に透明導電膜7dが形成されるので、導電性接着材を用いずに且つ透明導電膜7dを破損させること無く、帯状の金属電極7b,7cを透明導電膜7dに設けることができ、これにより透明導電膜7d全体を均一に発熱させることができる。
【0032】
また、各金属電極7b,7cが透明面状基材7aの片面における液晶パネル3の有効画面の配置部分と重ならない部分に形成されるので、液晶パネル3の有効画面を減少させること無く金属電極7b,7cを形成できる。
【0033】
また、透明面状ヒータ7は液晶パネル3と液晶パネル3用のバックライトモジュール5との間に配置されるので、液晶パネル3の表示を妨げること無く透明面状ヒータ7を液晶パネル3に配設できる。
【0034】
また、透明導電膜7dは、可視光に対して高い透過率を有するITOにより形成されるので、バックライトを減衰させずに透過させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用液晶表示装置1の平面図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 車両用液晶表示装置
3 液晶パネル
5 バックライトモジュール
7 透明面状ヒータ
7a ガラス基板
7b,7c 金属電極
7d ITO膜
7e,7f 電極
7g 導電性接着材
7h 透明性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶パネルと、透明面状基材の片面に発熱用の透明導電膜が形成された透明面状ヒータとを備えた車両用液晶表示装置であって、
前記透明面状ヒータの前記透明導電膜と前記液晶パネルの主面とが透明性樹脂により接着されることにより、前記透明面状ヒータが前記液晶パネルに配設されることを特徴とする車両用液晶表示装置。
【請求項2】
前記透明面状ヒータは、前記透明面状基材の片面の両端に帯状の金属電極が形成され、それら各金属電極を被覆する様に前記透明面状基材の前記片面の略全面に前記透明導電膜が形成されて構成されることを特徴とする請求項1に記載の車両用液晶表示装置。
【請求項3】
前記各金属電極は、前記透明面状基材の片面における前記液晶パネルの有効画面の配置部分と重ならない部分に形成されることを特徴とする請求項2に記載の車両用液晶表示装置。
【請求項4】
前記透明面状ヒータは、前記液晶パネルと前記液晶パネル用のバックライトモジュールとの間に配置されることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の車両用液晶表示装置。
【請求項5】
前記透明導電膜はITO(酸化インジウム錫)により形成されることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の車両用液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−47455(P2006−47455A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225281(P2004−225281)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】