説明

車両用灯具および車両用灯具における線ヒータディスペンサー

【課題】従来の車両用灯具では、製造工程が多くその分製造コストが高い。
【解決手段】ランプレンズ4に線ヒータ5がディスペンサー19により設けられている。その線ヒータ5は、ディスペンサー19により線パターンに形成されていて、電流が供給されることにより発熱する導電性塗料17と、その導電性塗料17の周囲を覆って(コーティングして)導電性塗料17を電気的に絶縁しかつ劣化や外部衝撃から保護する封止剤18と、からなる。この結果、製造工程が少なくその分製造コストを安価にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ランプレンズが融雪(解氷、防曇)構造をなす車両用灯具に関するものである。また、この発明は、ランプレンズが融雪(解氷、防曇)構造をなす車両用灯具、すなわち、線ヒータが設けられているランプレンズを備える車両用灯具において、このランプレンズに線ヒータを設けるディスペンサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用灯具は、従来からある(たとえば、特許文献1および特許文献2)。以下、従来の車両用灯具について説明する。従来の前者の車両用灯具は、灯室を形成するハウジングおよびレンズと、灯室内に配置されている光源と、レンズに形成されている抵抗熱線(レンズの基材に塗布した粘着材または接着剤に布線装置により布線された抵抗熱線)と、を備えるものである。また、従来の後者の車両用灯具は、灯室を形成するランプボディおよび前面レンズと、灯室内に配置されている光源と、前面レンズに接着剤により接合一体化された配線板ヒータ(ベースフィルムの上に導電箔パターンが印刷されているもの)と、を備えるものである。
【0003】
以下、従来の車両用灯具の作用について説明する。まず、従来の前者の車両用灯具においては、抵抗熱線に給電すると、その抵抗熱線が発熱し、その熱により、レンズに付着した雪や氷や曇りが融かされたり除去されたりする。この結果、レンズから外部に照射される光の損失を防ぐことができる。つぎに、従来の後者の車両用灯具においては、配線板ヒータの導電箔パターンに給電すると、その導電箔パターンが発熱し、その熱により、前面レンズに付着した雪や氷や曇りが融かされたり除去されたりする。この結果、前面レンズから外部に照射される光の損失を防ぐことができる。特に、光源として、ハロゲンバルブや白熱バルブと比較して、レンズまた前面レンズから照射される光の温度が低い光源、たとえば、LEDなどの半導体型光源やHIDなどの放電灯を使用した車両用灯具においては、効果的である。
【0004】
ところが、従来の前者の車両用灯具は、レンズの素材に塗布した粘着材または接着剤に抵抗熱線を布線装置により布線し、そのレンズの素材を熱成形してレンズと抵抗熱線とを形成するものであるから、レンズおよび抵抗熱線の製造工程が多く、その分、製造コストが高い。また、従来の後者の車両用灯具は、ベースフィルムの上に導電箔パターンを印刷して配線板ヒータを形成し、この配線板ヒータを前面レンズに接着剤により接合一体化させるものであるから、前面レンズおよび配線板ヒータの製造工程が多く、その分、製造コストが高い。
【0005】
【特許文献1】特開2005−268015号公報
【特許文献2】特開平10−109587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする問題点は、従来の車両用灯具では、製造工程が多く、その分、製造コストが高いという点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明(請求項1にかかる発明)は、ランプレンズに線ヒータがディスペンサーにより設けられており、その線ヒータが、ディスペンサーにより線パターンに形成されていて、電流が供給されることにより発熱する導電性塗料からなる、ことを特徴とする。
【0008】
また、この発明(請求項2にかかる発明)は、線ヒータが、ディスペンサーにより線パターンに形成されていて、電流が供給されることにより発熱する導電性塗料と、その導電性塗料の周囲を覆って(コーティングして)導電性塗料を電気的に絶縁しかつ劣化や外部衝撃から保護する封止剤と、からなる、ことを特徴とする。
【0009】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)は、ランプレンズに、導電性塗料と封止剤とからなる線ヒータを、設けるディスペンサーであって、ランプレンズに、電流が供給されることにより発熱する導電性塗料を、吐出して線パターンに形成する第1ノズルと、ランプレンズに、導電性塗料の周囲を覆って導電性塗料を電気的に絶縁しかつ劣化や外部衝撃から保護する封止剤を、吐出して導電性塗料と共に線パターンに形成する第2ノズルと、から構成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、ランプレンズに線ヒータがディスペンサーにより直接設けられているので、レンズの素材に抵抗熱線を布線してからレンズおよび抵抗熱線を形成する従来の前者の車両用灯具、および、配線板ヒータを形成してからこの配線板ヒータを前面レンズに接着する従来の後者の車両用灯具と比較して、製造工程が少なく、その分、製造コストを安価にすることができる。
【0011】
また、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用灯具は、線ヒータが導電性塗料とその導電性塗料の周囲を覆う封止剤とからなるので、この封止剤により、導電性塗料を電気的に絶縁しかつ酸化や硫化などの劣化から保護することができ、また、外部からの衝撃からも保護することができる。
【0012】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用灯具における線ヒータディスペンサーは、第1ノズルおよび第2ノズルにより、導電性塗料とその導電性塗料の周囲を覆う封止剤とを同時に吐出してランプレンズに線パターンを形成するものである。このために、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用灯具における線ヒータディスペンサーは、導電性塗料と封止剤とを吐出して線パターンを形成する工程が一度で済むので、その分、生産工程が効率化されて製造工程が軽減され、その分、さらに製造コストを安価にすることができる。しかも、封止剤を導電性塗料の周囲に確実に覆うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明にかかる車両用灯具の実施例およびこの発明にかかる車両用灯具における線ヒータディスペンサーの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0014】
この実施例にかかる車両用灯具およびこの実施例にかかる車両用灯具における線ヒータディスペンサーの構成について説明する。この実施例にかかる車両用灯具は、所定の配光パターン、たとえば、すれ違い用の配光パターンを照射する自動車用のヘッドランプ1L、1Rである。前記ヘッドランプ1L、1Rは、図1に示すように、自動車Cの前部の左右両側にそれぞれ装備されている。以下、左側のヘッドランプ1Lについて説明する。なお、右側のヘッドランプ1Rは、左側のヘッドランプ1Lの構造とほぼ左右逆である。
【0015】
前記ヘッドランプ1Lは、図2および図4に示すように、5個のランプユニット2と、ランプハウジング3と、ランプレンズ4と、線ヒータ5と、給電部6と、を備えるものである。前記ランプハウジング3と前記ランプレンズ4とにより、灯室7が区画されている。前記灯室7内には、前記5個のランプユニット2が上下2段に(この例では、上段に3個、下段に2個)それぞれ配置されている。
【0016】
前記ランプユニット2は、光を前記ランプレンズ4を通して外部に照射する光照射部を構成するものである。前記ランプユニット2は、所定の配光パターン、この例では、すれ違い用の配光パターンを照射(放射、出射)するものである。前記ランプユニット2は、図3に示すように、プロジェクタタイプであって、ユニット構造をなす。前記ランプユニット2は、上側リフレクタ8および下側リフレクタ9と、反射面10およびシェード11と、半導体型光源12と、投影レンズ(凸レンズ、集光レンズ)13と、ヒートシンク部材14と、から構成されている。
【0017】
前記ランプユニット2は、図2に示すように、ホルダ部材15を介して前記ランプハウジング3に取り付けられている。前記ランプハウジング3には、ヒートシンク部材16が設けられている。前記ランプハウジング3側のヒートシンク部材16と、前記ランプユニット2側のヒートシンク部材14とは、前記ホルダ部材15および前記ランプハウジング3を介して接続されている。
【0018】
前記半導体型光源12は、たとえば、LED、EL(有機EL)などの自発光半導体型光源(この実施例ではLED)を使用する。このために、前記半導体型光源12自体においては熱が発生するが、前記半導体型光源12からの光には熱がほとんど発生しない。これにより、前記ランプレンズ4には、雪や氷や曇りが付着し易い。
【0019】
前記ランプレンズ4は、ほぼ素通しのレンズであって、いわゆるアウターカバー(アウターレンズ)である。前記ランプレンズ4は、この例では、たとえばPC(ポリカーボネート)などの合成樹脂から成形されている。また、前記ランプレンズ4は、図2に示すように、縦断面(垂直断面)において、上から下にかけて後方から前方にスラント(傾斜)している。さらに、前記ランプレンズ4は、断面凹形状をなしていて、前記ランプユニット2から照射される光が透過する正面部(もしくは前面部)33と、前記正面部33からの全周縁から後方に一体に延設されている側壁部34と、から構成されている。前記正面部33と前記側壁部34との間には、角部が形成されている。なお、前記ランプレンズ4の材質がPCの場合、前記ランプレンズ4の耐熱温度は約130°Cである。
【0020】
前記線ヒータ5は、線ヒータであって、前記ランプレンズ4の前記正面部33の内面にディスペンサー19により線パターンに形成されている。前記線ヒータ5は、図9に示すように、電流が供給されることにより発熱する抵抗体の導電性塗料17と、前記導電性塗料17の周囲を覆って前記導電性塗料17を電気的に絶縁しかつ劣化や外部衝撃から保護する封止剤18と、からなる。また、前記線ヒータ5は、光透過性のものが好ましい。
【0021】
前記線ヒータ5(前記導電性塗料17および前記封止剤18)の線パターンは、この例では、図4に示すように、相互にほぼ平行である上下4本の横線を、左側の2本の縦線および右側の1本の縦線を介して、左右にジグザグに連続する線パターンである。最上下2本の横線の右側から2本の縦線が端末部として連続して形成されている。また、前記線ヒータ5の直径は、この例では、約0.5mmである。
【0022】
前記導電性塗料17は、導電性インクであって、この例では、銀ペースト、金ペースト、銅ペースト、アルミペーストなどの金属ペーストからなる。前記導電性塗料17は、電流が供給されることにより、前記導電性塗料17の電気抵抗により発熱するものであって、電気抵抗値が高いと発生熱量が低く、電気抵抗値が低いと発生熱量が高い。
【0023】
前記導電性塗料17の周囲(全周)には、前記封止剤18が前記導電性塗料17を覆うように設けられている。前記封止剤18は、前記導電性塗料17を電気的に絶縁し、かつ、酸化や硫化などの劣化から保護し、また、外部からの衝撃からも保護するものであって、すなわち、前記導電性塗料17の表面保護コートである。前記封止剤18は、この例では、シリコーン系やエポキシ系やウレタン系などの接着剤などからなる。前記封止剤18の接着作用より、前記線ヒータ5は、前記ランプレンズ4の前記正面部33の内面に線パターンに形成されている。前記封止剤18は、着色されていても良い。
【0024】
前記線ヒータ5には、図4および図5に示すように、前記給電部6が設けられている。前記給電部6は、前記線ヒータ5に電流を供給するものである。前記給電部6は、前記線ヒータ5と同様に、前記ランプレンズ4の前記正面部33および前記側壁部34の内面(灯室7側)に設けられている。また、前記給電部6は、前記ランプレンズ4の意匠への影響が小さい箇所、すなわち、前記ランプレンズ4の前記正面部33と前記側壁部34との間の角部付近に設けられている。前記給電部6は、フィルム24と、給電用導電性部材としての抵抗体である導電性ペースト25と、コネクタ26と、から構成されている。
【0025】
前記フィルム24は、透明なたとえばPET(ポリエチレンテレフタレート)などの合成樹脂製のフィルムからなる。前記フィルム24の幅は、前記線ヒータ5の直径(約0.5mm)に対して、この例では、約10mmである。また、前記フィルム24の長さは、前記線ヒータ5から前記ランプレンズ4の前記側壁部34に届く程度の長さである。前記フィルム24の先端の一面は、十分な耐久性を有する両面テープ(両面接着テープ)などの接着剤32により、前記ランプレンズ4の前記側壁部34の内面に接着固定されている。
【0026】
給電用の前記導電性ペースト25は、前記フィルム24の他面に線パターンに形成されていてかつ一端が前記線ヒータ5の前記導電性塗料17の端末部に電気的に接続されている。給電用の前記導電性ペースト25は、前記導電性塗料17と同様に、導電性インクであって、この例では、銀ペースト、金ペースト、銅ペースト、アルミペーストなどの金属ペーストからなる。給電用の前記導電性ペースト25は、前記線ヒータ5の前記導電性塗料17よりも太く(厚く、幅広)して、前記線ヒータ5の前記導電性塗料17よりも電気抵抗値を小さくしている。前記フィルム24の先端において、給電用の前記導電性ペースト25の他端には、電極用もしくは給電用の幅広部(図示せず)が一体に設けられている。
【0027】
なお、前記フィルム24の他面にレジスト(図示せず)を給電用の前記導電性ペースト25を覆うように設けても良い。前記レジストは、前記線ヒータ5の前記封止剤18と同様に、給電用の前記導電性ペースト25を電気的に絶縁すると共に劣化や外部衝撃から保護するものであって、すなわち、給電用の前記導電性ペースト25の表面保護コートである。前記レジストは、この例では、ウレタン系やアクリル系の接着剤などからなる。
【0028】
また、前記フィルム24もしくは前記レジストのうち少なくともいずれか一方が着色されている。すなわち、前記フィルム24の一面またはおよび他面に着色層を設ける。あるいは、前記フィルム24自体もしくは前記レジスト自体を着色する。
【0029】
前記コネクタ26は、給電用の前記導電性ペースト25の他端の前記幅広部に電気的に接続されていてかつ前記フィルム24の先端に固定されている。また、前記コネクタ26は、前記フィルム24と共に前記ランプレンズ4の前記側壁部34の内面に固定されている。たとえば、表面実装タイプの前記コネクタ26は、導電性接着剤(図示せず)および封止剤(図示せず)により、前記給電部6の前記フィルム24の先端の一面に固定されかつ前記導電性ペースト25の前記幅広部に電気的に接続されている。また、表面実装タイプの前記コネクタ26は、前記線ヒータ5を前記ランプレンズ4の前記正面部33に転写した後に、前記フィルム24の先端の他面を前記接着剤32により前記ランプレンズ4の前記側壁部34の内面に接着固定することにより、前記フィルム24と共に前記ランプレンズ4の前記側壁部34の内面に固定されている。一方、ばね圧タイプの前記コネクタ26は、一面にばね(図示せず)を設けたものであって、前記線ヒータ5を前記ランプレンズ4の前記正面部33に転写し、前記給電部6の前記フィルム24の先端の一面を前記接着剤32により前記ランプレンズ4の前記側壁部34の内面に接着固定した後に、前記ばねが前記フィルム24の他面に弾性当接するように、両面接着テープ(図示せず)により、前記フィルム24の先端の他面に固定されかつ導電性ペースト25の幅広部に電気的に接続されるものである。これにより、ばね圧タイプの前記コネクタ26は、前記フィルム24と共に前記ランプレンズ4の前記側壁部34の内面に接着固定されている。
【0030】
このとき、図5に示すように、前記給電部6の前記フィルム24の両端は、前記線ヒータ5と前記コネクタ26を介して、前記ランプレンズ4の前記正面部33の内面と前記側壁部34の内面にそれぞれ固定されている。また、前記給電部6の前記フィルム24の中間部は、前記ランプレンズ4の前記正面部33と前記側壁部34との間の角部に沿って折り曲げられている。この結果、前記給電部6の前記フィルム24は、弾性復帰力(図5中の実線矢印Aを参照)により、前記ランプレンズ4の角部に沿った状態で確実に固定される。これにより、前記給電部6は、前記ランプレンズ4の前記正面部33および前記側壁部34の内面に確実に固定されることとなる。
【0031】
前記コネクタ26には、2本のヒータ側ハーネス35の一端が電気的に接続されている。2本の前記ヒータ側ハーネス35の他端には、ヒータ側コネクタ37が取り付けられていてかつ電気的に接続されている。2本の前記ヒータ側ハーネス35は、図5に示すように、前記ランプレンズ4の前記側壁部34に設けられている防水構造、この例では、たとえばゴム製の防水グロメット38を介して、前記灯室7内から前記灯室7外に引き出されている。また、2本の前記ヒータ側ハーネス35は、図10に示すように、前記ランプハウジング3に設けられている防水構造、この例では、たとえばゴム製の防水グロメット38を介して、前記灯室7内から前記灯室7外に引き出されていても良い。
【0032】
図5において、符号「39」は、一端が電源に電気的に接続されている2本の電源側ハーネスである。2本の前記電源側ハーネス39の他端には、電源側コネクタ40が取り付けられていてかつ電気的に接続されている。前記ヒータ側コネクタ37が前記電源側コネクタ40に着脱可能に結合されている。この結果、前記線ヒータ5は、前記給電部6を介して電源に電気的に接続される。
【0033】
前記電源側コネクタ40は、前記ランプハウジング3の灯室7外に固定されている。この結果、前記ヒータ側ハーネス35の一部および前記ヒータ側コネクタ37および前記電源側コネクタ40および前記電源側ハーネス39は、前記ランプハウジング3の灯室7外に位置する。
【0034】
この実施例にかかる車両用灯具の前記ヘッドランプ1Lの外側には、その他の車両用部品(たとえば、他の車両用灯具、バンパー、装飾部品など)41が隣接して設けられている。前記ランプハウジング3の灯室7外に位置する前記ヒータ側ハーネス35の一部および前記ヒータ側コネクタ37および前記電源側コネクタ40および前記電源側ハーネス39は、この実施例にかかる車両用灯具の前記ヘッドランプ1Lとその他の車両用部品41との間に位置するので、外側から見えず、見栄え上問題はない。
【0035】
前記線ヒータ5は、前記給電部6を介して、手動スイッチ(図示せず)またはおよび自動スイッチ(図示せず)に接続されている。前記手動スイッチは、手動により、前記線ヒータ5への電流供給をオンしたりオフしたりするものである。前記自動スイッチは、自動的に、前記線ヒータ5への電流供給をオンしたりオフしたりするものである。
【0036】
前記自動スイッチは、ECUなどの制御部と、温度センサや光センサなどの検出部と、から構成されている。前記検出部は、自動車Cの周囲環境、たとえば、自動車Cの外の温度や前記ランプレンズ4から照射される光などを検出してその検出信号を前記制御部に出力する。前記制御部は、前記検出部からの検出信号に基づいて前記ランプレンズ4に雪や氷や曇りなどが付着しているか否か、あるいは、前記ランプレンズ4に雪や氷や曇りなどが付着する程度の温度か否かを判断する。そして、前記制御部は、前記ランプレンズ4に雪や氷や曇りなどが付着している、あるいは、前記ランプレンズ4に雪や氷や曇りなどが付着する程度の温度であると判断すると、前記給電部6を介して前記線ヒータ5に電流を供給する。一方、前記制御部は、前記ランプレンズ4に雪や氷や曇りなどが付着していない、あるいは、前記ランプレンズ4に雪や氷や曇りなどが付着する程度の温度でないと判断すると、前記給電部6を介して前記線ヒータ5への電流供給を遮断する。
【0037】
前記線ヒータ5の1個の端末部には、温度制御部(図示せず)が設けられている。前記温度制御部は、前記導電性塗料17の発熱温度を制御するものである。前記温度制御部としては、たとえば、PTCサーミスターを使用する。このPTCサーミスターは、温度が上昇すると抵抗値が高くなって所定の抵抗値に達すると電流が流れなくなる特性を有するものである。たとえば、前記ランプレンズ4の材質がPCの場合、前記ランプレンズ4の耐熱温度は約130°Cであるから、前記導電性塗料17の発熱温度が約60°C付近に達した時点で電流が流れなくなる抵抗特性を有するPTCサーミスターを前記温度制御部として使用する。
【0038】
以下、この実施例にかかる車両用灯具における線ヒータディスペンサーの構成について説明する。
【0039】
この実施例にかかる車両用灯具における線ヒータディスペンサー19は、図6〜図8に示すように、前記ランプレンズ4の正面部33の内面に前記導電性塗料17と前記封止剤18とからなる前記線ヒータ5を設ける装置であって、第1ノズル21と、第2ノズル22と、X−Yテーブル(図示せず)と、Z移動機構(図示せず)と、から構成されている。
【0040】
前記第1ノズル21は、前記ランプレンズ4の正面部33の内面に、電流が供給されることにより発熱する前記導電性塗料17を、吐出して線パターンに形成するものである。また、前記第2ノズル22は、前記ランプレンズ4の正面部33の内面に、前記導電性塗料17の周囲を覆って前記導電性塗料17を電気的に絶縁しかつ劣化や外部衝撃から保護する前記封止剤18を、吐出して前記導電性塗料と共に線パターンに形成するものである。
【0041】
前記第1ノズル21と前記第2ノズル22とは、2重の円筒管からなる。内側の円筒管からなる前記第1ノズルの21の中心には、断面円形の前記導電性塗料17の供給路20が設けられている。前記供給路20の一端(基端)には、前記導電性塗料17の供給口23が設けられている。一方、前記供給路20の他端(先端)には、前記導電性塗料17の吐出口27が設けられている。
【0042】
内側の円筒管からなる前記第1ノズル21の外側面と、外側の円筒管からなる前記第2ノズル22の内側面との間には、断面円環形の前記封止剤18の供給路28が設けられている。前記供給路28の一端(基端)には、前記封止剤18の供給口29が複数本設けられている。一方、前記供給路28の他端(先端)には、前記封止剤18の吐出口30が設けられている。
【0043】
前記第1ノズル21の一端のフランジと、前記第2ノズル22の一端のフランジとは、前記導電性塗料17の前記供給路20と前記封止剤18の前記供給路28とが同心円となるように、ボルトナットや溶接などにより固定されている。前記第1ノズル21の前記供給口23と前記第2ノズル22の前記供給口29には、前記導電性塗料17の供給装置(図示せず)と前記封止剤18の供給装置(図示せず)がそれぞれ接続されている。前記第1ノズル21および前記第2ノズル22は、前記X−Yテーブルおよび前記Z移動機構により、X方向およびY方向およびZ方向に移動可能である。
【0044】
この実施例にかかる車両用灯具における線ヒータディスペンサー19は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0045】
まず、ディスペンサー19の第1ノズル21の吐出口27と第2ノズル22の吐出口30をランプレンズ4の正面部33の内面に位置させる。つぎに、導電性塗料17と封止剤18を第1ノズル21の供給口23と第2ノズル22の供給口29から第1ノズル21の供給路20と第2ノズル22の供給路28中にそれぞれ供給させる。
【0046】
すると、導電性塗料17と封止剤18が第1ノズル21の吐出口27と第2ノズル22の吐出口30からそれぞれ吐出されると共に、導電性塗料17の周囲に封止剤18が覆われる。それから、X−YテーブルおよびZ移動機構を作動させて、ディスペンサー19をX方向およびY方向およびZ方向に移動させる。この結果、図4および図6に示すように、線ヒータ5がランプレンズ4の正面部33の内面にディスペンサー19により線パターンに形成される。
【0047】
以下、この実施例にかかる線ヒータディスペンサー19により線ヒータ5が転写されているランプレンズ4であって、このランプレンズ4を備える車両用灯具、すなわち、自動車用のヘッドランプ1L、1Rの作用について説明する。
【0048】
5個のランプユニット2の半導体型光源12をそれぞれ点灯する。すると、5個のランプユニット2の半導体型光源12からの光が上側リフレクタ8の反射面10で反射され、その反射光の一部が下側リフレクタ9のシェード11によりカットオフされ、残りの反射光が投影レンズ13およびランプレンズ4の正面部33を透過して外部にカットオフラインを有する所定の配光パターン、すなわち、すれ違い用の配光パターンで照射される。このすれ違い用の配光パターンのカットオフラインは、シェード11のエッジにより形成される。また、シェード11に反射面を設けることにより、反射面10からの反射光であってシェード11の反射面で反射された反射光を利用することができる。
【0049】
ここで、ランプレンズ4の正面部33に設けられている線ヒータ5は、線状のパターンからなるので、光がランプレンズ4の正面部33を透過する際に、光の損失や配光の影響などを最小限に抑えることができる。しかも、半導体型光源12を光源とするランプユニット2を使用するので、ランプユニット2から照射される光の幅が小さい。このために、幅が小さい光を線ヒータ5の線状のパターンとパターンとの間に通すことにより、光の損失や配光の影響などをさらに防ぐことができる。
【0050】
そして、半導体型光源12からの光には熱がほとんど発生しないので、ランプレンズ4には、雪や氷や曇りが付着し易い。この場合、手動スイッチまたはおよび自動スイッチにより、ランプレンズ4の正面部33に転写により設けられている線ヒータ5の導電性塗料17に電流が供給される。
【0051】
線ヒータ5の導電性塗料17に電流が供給されると、線ヒータ5の導電性塗料17の電気抵抗により、線ヒータ5の導電性塗料17が発熱する。この線ヒータ5の導電性塗料17の発熱作用により、ランプレンズ4が暖められ、ランプレンズ4に雪や氷や曇りが付着するのが防止され、あるいは、ランプレンズ4に付着している雪や氷や曇りが融かされたり除去されたりする。この結果、ランプレンズ4の正面部33から照射される光の損失を防ぐことができる。
【0052】
このとき、ランプレンズ4の正面部33のうち、線ヒータ5に対応する箇所の雪や氷を溶すことにより、この溶けた雪や氷がランプレンズ4の正面部33の表面上を滑って、いわゆる雪崩現象で、ランプレンズ4の正面部33のうち、線ヒータ5に対応しない箇所に付着している雪や氷をランプレンズ4の正面部33の表面上から剥がして落とす。この結果、ランプレンズ4に付着している雪や氷や曇りを確実に除去することができる。
【0053】
線ヒータ5の発熱作用中において、この線ヒータ5の発熱温度が所定温度に達すると、温度制御部の温度制御作用により、線ヒータ5への電流供給が制御され、線ヒータ5の発熱温度が所定温度付近に保持される。この結果、耐熱温度が比較的低い樹脂製のランプレンズ4を過熱から保護することができる。
【0054】
ランプレンズ4に雪や氷や曇りが付着するのが防止され、また、ランプレンズ4に付着した雪や氷や曇りが融かされたり除去されたりしたところで、手動スイッチまたはおよび自動スイッチにより、ランプレンズ4に設けられている線ヒータ5への電流供給が遮断される。
【0055】
この実施例にかかる車両用灯具およびこの実施例にかかる車両用灯具における線ヒータディスペンサー19は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0056】
この実施例にかかる車両用灯具は、ランプレンズ4に線ヒータ5がディスペンサー19により直接設けられているので、レンズの素材に抵抗熱線を布線してからレンズおよび抵抗熱線を形成する従来の前者の車両用灯具、および、配線板ヒータを形成してからこの配線板ヒータを前面レンズに接着する従来の後者の車両用灯具と比較して、製造工程が少なく、その分、製造コストを安価にすることができる。
【0057】
また、この実施例にかかる車両用灯具は、線ヒータ5が導電性塗料17とその導電性塗料17の周囲を覆う封止剤18とからなるので、この封止剤18により、導電性塗料17を電気的に絶縁しかつ酸化や硫化などの劣化から保護することができ、また、外部からの衝撃からも保護することができる。
【0058】
さらに、この実施例にかかる車両用灯具における線ヒータディスペンサー19は、第1ノズル21および第2ノズル22により、導電性塗料17とその導電性塗料17の周囲を覆う封止剤18とを同時に吐出してランプレンズ4に線パターン5を形成するものである。このために、この実施例にかかる車両用灯具における線ヒータディスペンサー19は、導電性塗料17と封止剤18とを吐出して線パターン5を形成する工程が一度で済むので、その分、生産工程が効率化されて製造工程が軽減され、その分、さらに製造コストを安価にすることができる。しかも、封止剤18を導電性塗料17の周囲に確実に覆うことができる。
【0059】
以下、前記の実施例以外の例について説明する。前記の実施例においては、線ヒータ5をランプレンズ4の正面部33の内面に設けるものである。ところが、この発明においては、線ヒータ5をランプレンズ4の外面もしくは内外両面に設けても良い。
【0060】
また、前記の実施例においては、線ヒータ5をランプレンズ4の正面部33の内面に設けるものである。ところが、この発明においては、導電性塗料17の供給量を調節して、線ヒータに高温発熱部と低温発熱部との少なくとも2つの発熱部を形成しても良い。
【0061】
さらに、前記の実施例は、自動車Cのヘッドランプ1L、1Rのランプレンズ4に使用した例を説明するものである。ところが、この発明においては、自動車Cのヘッドランプ1L、1R以外の車両用灯具、たとえば、ストップランプなどの信号灯、カーブランプなどの照明灯、フロントコンビネーションランプ、リアコンビネーションランプなどのランプレンズに使用しても良い。
【0062】
さらにまた、前記の実施例においては、光を前記ランプレンズ4の正面部33を通して外部に照射する光照射部として、半導体型光源12を光源とするプロジェクタタイプのランプユニット2について説明するものである。ところが、この発明においては、光照射部として、前記のランプユニット2以外の光照射部、たとえば、光源が半導体型光源やHIDなどの放電灯やハロゲンバルブや白熱バルブであって、プロジェクタタイプや反射タイプや直射タイプのランプユニットであっても良いし、あるいは、プロジェクタタイプや反射タイプや直射タイプの車両用灯具において、半導体型光源やHIDなどの放電灯やハロゲンバルブや白熱バルブの光源、および、その光源と反射面との組み合わせのものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】この発明にかかる車両用灯具の実施例およびこの実施例にかかる車両用灯具における線ヒータディスペンサーを示し、車両用灯具を自動車のヘッドランプに使用されている状態の説明図である。
【図2】同じく、ヘッドランプの垂直断面図(縦断面図)である。
【図3】同じく、ヘッドランプに使用されているランプユニットの垂直断面図(縦断面図)である。
【図4】同じく、ヘッドランプに使用されているランプレンズを示す斜視図である。
【図5】ヘッドランプの一部、特に、給電部と電源側との配線状態を示す水平断面図(横断面図)である。
【図6】同じく、ランプレンズに線ヒータをディスペンサーで設けている状態を示す説明図である。
【図7】同じく、図6におけるVII部の拡大断面図である。
【図8】同じく、ディスペンサーを示す縦断面図である。
【図9】同じく、線ヒータの断面図である。
【図10】ヘッドランプの一部、特に、給電部と電源側との配線状態の変形例を示す水平断面図(横断面図)である。
【符号の説明】
【0064】
C 自動車
1L、1R ヘッドランプ(車両用灯具)
2 ランプユニット
3 ランプハウジング
4 ランプレンズ
5 線ヒータ
6 給電部
7 灯室
8 上側リフレクタ
9 下側リフレクタ
10 反射面
11 シェード
12 半導体型光源(LED)
13 投影レンズ
14 ヒートシンク部材
15 ホルダ部材
16 ヒートシンク部材
17 導電性塗料
18 封止剤
19 ディスペンサー
20 供給路
21 第1ノズル
22 第2ノズル
23 供給口
24 フィルム
25 導電性ペースト(給電用導電性部材)
26 コネクタ
27 吐出口
28 供給路
29 供給口
30 吐出口
32 接着剤
33 正面部
34 側壁部
35 ヒータ側ハーネス
37 ヒータ側コネクタ
38 防水グロメット
39 電源側ハーネス
40 電源側コネクタ
41 車両用部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプレンズが融雪構造をなす車両用灯具において、
灯室を区画するランプハウジングおよび前記ランプレンズと、
前記灯室内に配置されており、光を前記ランプレンズを通して外部に照射する光照射部と、
前記ランプレンズにディスペンサーにより設けられている線ヒータと、
を備え、
前記線ヒータは、前記ディスペンサーにより線パターンに形成されていて、電流が供給されることにより発熱する導電性塗料からなる、ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記線ヒータは、前記ディスペンサーにより線パターンに形成されていて、電流が供給されることにより発熱する前記導電性塗料と、前記導電性塗料の周囲を覆って前記導電性塗料を電気的に絶縁しかつ劣化や外部衝撃から保護する封止剤と、からなる、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
ランプレンズが融雪構造をなす車両用灯具において、
前記ランプレンズに、導電性塗料と封止剤とからなる線ヒータを、設けるディスペンサーであって、
前記ランプレンズに、電流が供給されることにより発熱する前記導電性塗料を、吐出して線パターンに形成する第1ノズルと、
前記ランプレンズに、前記導電性塗料の周囲を覆って前記導電性塗料を電気的に絶縁しかつ劣化や外部衝撃から保護する前記封止剤を、吐出して前記導電性塗料と共に線パターンに形成する第2ノズルと、
から構成されている、
ことを特徴とする車両用灯具における線ヒータディスペンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−52920(P2008−52920A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225273(P2006−225273)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】