説明

車両用灯具の洗浄装置

【課題】必要な方向に所要量の洗浄液を確実に噴射して車両用灯具を効率良く洗浄することができる車両用灯具の洗浄装置を提供すること。
【解決手段】洗浄液が供給されるシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌挿されたピストンと、該ピストンの先端に取り付けられたバルブケースと、該バルブケースに支持されたノズルホルダと、該ノズルホルダに支持された噴射ノズル4を備え、前記噴射ノズル4に形成された噴射口18から洗浄液を車両用灯具に向けて噴射する車両用灯具の洗浄装置において、前記噴射ノズル4の噴射口18の少なくとも上縁に沿って飛散防止リブ4aを形成する。又、前記噴射ノズル4の噴射口18の側縁に沿って飛散防止リブ4aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドランプ等の車両用灯具に洗浄液を噴射してその表面を洗浄するための洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の例えばヘッドランプの前面が埃や泥等の付着によって汚れると光量不足を招く可能性があるため、必要に応じてヘッドランプに向かって洗浄液を噴射して該ヘッドランプの表面を洗浄するための洗浄装置がフロントバンパの裏側に設置されている。この洗浄装置は、洗浄液が供給されるシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌挿されたピストンと、該ピストンの先端に取り付けられたバルブケースと、該バルブケースに支持されたノズルホルダと、該ノズルホルダに支持された噴射ノズルを備えており、噴射ノズルから洗浄液が車両用灯具に向けて噴射される。
【0003】
斯かる洗浄装置においては、非洗浄時にはノズルがフロントバンパの裏側に格納されており、ヘッドランプを洗浄する際には洗浄液の圧力によって噴射ノズルがフロントバンパに形成された開口部から車両前方へと突出し、洗浄液の圧力が所定値以上に高くなると、チェックバルブが開いて洗浄液が噴射ノズルへと供給され、噴射ノズルに開口する噴射口から洗浄液がヘッドランプに向かって噴射され、ヘッドランプの前面に付着した埃や泥等が除去される。そして、ヘッドランプの洗浄が終了すると、噴射ノズルはスプリング等の付勢手段によってフロントバンパの裏側の格納位置に戻されて格納される。
【0004】
ここで、従来の噴射ノズルの一例を図15及び図16に示す。
【0005】
即ち、図15は従来の噴射ノズルの斜視図、図16は同噴射ノズルをノズルホルダに組み付けた状態を示す部分側断面図であり、図示の噴射ノズル104は、樹脂の金型成形によって頂部が塞がれた多角筒状に成形され、その上部外周の一部には周方向に長い噴射口118が形成されている。この噴射ノズル104は、図16に示すように、ノズルホルダ117の上部に一体に形成された円筒部117bの外周に嵌め込まれて組み付けられ、ノズルホルダ117に供給される高圧の洗浄液は円筒部117bに形成された通路を通って噴射ノズル104へと流れ、該噴射ノズル104に開口する噴射口118から不図示のヘッドランプの前面に向かって斜め上方に噴射される。
【0006】
ところで、噴射ノズルの噴射口は、洗浄液を上下左右に拡散させるように広がっており、金型の簡易化を図るために、噴射口118は、図15の矢印方向(上方向)の一般抜き方向に抜かれる金型によって食い切り構造として形成されている。
【0007】
尚、例えば特許文献1には、広角度で薄膜状のパターンでの霧状の噴射を行うことができる噴射ノズルが提案されている。具体的には、噴射ノズルに形成された導通路の内径を水の流れ方向に徐々に絞ることによって水を霧状にし、噴射部を厚み方向に見て基端部から噴射口に向かって拡開させることによって水の噴射に左右方向に広がりを持たせ、且つ、噴射部を導通路の軸方向において偏平とすることによって水の上下方向の広がりを抑えるようにしている。
【0008】
又、特許文献2には、洗浄液が供給される供給用流路を有する供給部と、噴射口が形成されたヘッド部とで構成される噴射ノズルの前記ヘッド部の内部に空間部を形成し、前記供給部の供給用流路に、ヘッド部の前記空間部に向かって縮径する絞り部を形成することによって、洗浄液の整流効果を高めるようにした洗浄装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−123347号公報
【特許文献2】特開2005−178568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図15及び図16に示す噴射ノズル104には、図15の矢印方向(上方向)に抜かれる金型によって食い切り構造の噴射口118が形成されるため、該噴射口118から洗浄液が図16に示す角度範囲θに拡散した状態で噴射され、ヘッドランプに向かう必要な角度範囲α以外に、それよりも上方の不要な角度範囲βまで洗浄液が噴射されていまい、ヘッドランプ前面の洗浄に供される噴射液の量が不足するとともに、洗浄に供されない不要な洗浄液が車両のボンネットやウインドガラス、或いは歩行者やその場にいる人に掛かってしまう可能性がある。
【0011】
尚、特許文献1において提案された噴射ノズルは、自動車のラジエータに水を霧状に噴射してその冷却を行う等の用途に供されるものであり、又、特許文献2には、前記問題を解決するための構成は開示されていない。
【0012】
従って、本発明の第1の目的とする処は、必要な方向に所要量の洗浄液を確実に噴射して車両用灯具を効率良く洗浄することができる車両用灯具の洗浄装置を提供することにある。
【0013】
ところで、噴射ノズルをノズルホルダに固定したタイプの洗浄装置では、噴射ノズルからの洗浄液の噴射方向を調整することができず、左右方向にほぼ水平なパターンに沿って噴射されている。
【0014】
しかしながら、実際の車両におけるヘッドランプのデザインには、そのボンネットとの見切り部が水平なものばかりでなく、釣り目形状のものや下がり目形状のものが存在するため、左右に拡散された洗浄液がヘッドランプの前面よりはみ出してしまうという問題があった。
【0015】
そこで、噴射ノズルをヘッドランプの意匠に合わせて傾けて固定した洗浄装置が提案されているが、このような構成を採用すると、ヘッドランプの意匠毎に複数のパターンの洗浄装置を用意する必要があり、左右のヘッドランプ用のものを合わせると多大な種類の洗浄装置が必要となり、その量産管理が大変である。
【0016】
従って、本発明の第2の目的とする処は、洗浄液の噴射方向を三次元方向に自由に調整可能として洗浄液の噴射可能なエリアを広げることによって多機種の車両用灯具の洗浄に対応することができる車両用灯具の洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、洗浄液が供給されるシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌挿されたピストンと、該ピストンの先端に取り付けられたバルブケースと、該バルブケースに支持されたノズルホルダと、該ノズルホルダに支持された噴射ノズルを備え、前記噴射ノズルに形成された噴射口から洗浄液を車両用灯具に向けて噴射する車両用灯具の洗浄装置において、前記噴射ノズルの噴射口の少なくとも上縁に沿って飛散防止リブを形成したことを特徴とする。
【0018】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記噴射ノズルの噴射口の側縁に沿って飛散防止リブを形成したことを特徴とする。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記噴射ノズルの噴射口の側縁に沿って形成された飛散防止リブの左右の内面を洗浄液の噴射方向に向かって広がるテーパ面としたことを特徴とする。
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記ノズルホルダを球面状嵌合部によって前記バルブケースに三次元方向に回動可能に圧入嵌合したことを特徴とする。
【0021】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記噴射ノズルを前記ノズルホルダへの圧入方向の軸を中心として回動可能に圧入嵌合したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1記載の発明によれば、噴射ノズルの噴射口の少なくとも上縁に沿って飛散防止リブを形成したため、車両用灯具に向かう方向から上方に外れる不要な方向への洗浄液の噴射を防ぐことができ、噴射ノズルの噴射口から噴射される洗浄液の大部分を車両用灯具に向けて噴射させることができるために該車両用灯具を効率良く洗浄することができる。又、車両用灯具に向かう方向から外れて噴射される洗浄液が車両のボンネットやウインドガラス、或いは歩行者等に掛かるという問題の発生が防がれる。
【0023】
請求項2記載の発明によれば、噴射ノズルの噴射口の側縁に沿っても飛散防止リブを形成したため、上下及び左右方向の両方向において洗浄液を車両用灯具に向けて的確に噴射させることができ、車両用灯具を一層効率良く洗浄することができるとともに、車両の横を通過する歩行者等に噴射液が掛かる等の問題が確実に解消される。
【0024】
請求項3記載の発明によれば、噴射ノズルの噴射口の側縁に沿って形成された飛散防止リブの左右の内面を洗浄液の噴射方向に向かって広がるテーパ面としたため、噴射口から噴射される洗浄液の左右の噴射角度が所望の範囲に規定され、洗浄液が車両用灯具の洗浄すべき部分に集中的に噴射され、洗浄液の周囲への飛散を防ぎつつ車両用灯具を一層効率良く且つ確実に洗浄することができる。
【0025】
請求項4記載の発明によれば、ノズルホルダを球面状嵌合部によってバルブケースに三次元方向に回動可能に圧入嵌合したため、該ノズルホルダに保持された噴射ノズルからの洗浄液の噴射方向を三次元方向に自由に調整することができ、車両用灯具表面の全エリアを洗浄液によって確実に洗浄することができ、デザインの異なる車両用灯具の洗浄に対応することができる。このため、デザインの異なる車両用灯具毎に噴射ノズルの角度が異なる数多くの洗浄装置を用意する必要がなく、製造コストの削減と量産管理の容易化を図ることができる。
【0026】
請求項5記載の発明によれば、噴射ノズルをノズルホルダへの圧入方向の軸を中心として回動可能に圧入嵌合したため、噴射ノズルからの洗浄液の噴射方向を微調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態1に係る洗浄装置の側面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る洗浄装置の平面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る洗浄装置要部の分解斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る洗浄装置の噴射ノズル部分の正断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る洗浄装置の噴射ノズル部分の分解斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る洗浄装置の噴射ノズルの斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る洗浄装置の噴射ノズルの側断面図である。
【図8】(a),(b)は本発明の実施の形態1に係る洗浄装置のチェックバルブ機構部及び噴射ノズル部分の平断面図である。
【図9】図8(a)のA−A線断面図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る洗浄装置の噴射ノズルの正面図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係る洗浄装置の噴射ノズルの側面図である。
【図12】図10のB−B線断面図である。
【図13】図11のC−C線断面図である。
【図14】(a)は従来の噴射ノズルによるヘッドランプへの洗浄液の噴射パターンを示す正面図、(b)は本発明の実施の形態2に係る噴射ノズルによるヘッドランプへの洗浄液の噴射パターンを示す正面図である。
【図15】従来の噴射ノズルの斜視図である。
【図16】従来の噴射ノズルをノズルホルダに組み付けた状態を示す部分側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0029】
<実施の形態1>
図1は本発明の実施の形態1に係る洗浄装置の側面図、図2は同洗浄装置の平面図、図3は同洗浄装置要部の分解斜視図、図4は同洗浄装置の噴射ノズル部分の正断面図、図5は同噴射ノズル部分の分解斜視図、図6は噴射ノズルの斜視図、図7は同噴射ノズルの側断面図、図8(a),(b)は洗浄装置のチェックバルブ機構部及び噴射ノズル部分の平断面図、図9は図8(a)のA−A線断面図である。
【0030】
本実施の形態に係る洗浄装置1は、不図示のヘッドランプの前面(レンズ面)に向かって洗浄液を噴射して該前面を洗浄するための装置であって、不図示のフロントバンパの裏側に配置されている。尚、洗浄装置1は左右のヘッドランプに対してそれぞれ設置されているが、その構成及び作用は左右で同じであるため、以下、一方の洗浄装置1についてのみ説明する。
【0031】
図1及び図2に示す洗浄装置1は、円筒状のシリンダ2の内部に不図示のピストンを摺動可能に嵌挿し、該ピストンの先端部にチェックバルブ機構3を介して左右一対の噴射ノズル4を取り付けて構成されている。
【0032】
上記シリンダ2は、不図示のウォッシャタンクから洗浄液の供給を受けるものであって、その後端にはプラグ5が設けられており、シリンダ2の内部はプラグ5に接続された不図示の配管を介してウォッシャタンクに連通している。そして、シリンダ2の前端部外周にはブラケット6が取り付けられており、洗浄装置1はブラケット6を介して不図示のフロントバンパの裏側に取り付けられている。尚、図示しないが、シリンダ2とその内部に摺動可能に嵌挿されたピストンとの間には、ピストンをシリンダ2内に引き込む方向に付勢する付勢手段としてのリターンスプリングが介装されている。
【0033】
次に、前記チェックバルブ機構3の構成及び噴射ノズル4の保持構造の詳細を図3〜図9に基づいて説明する。
【0034】
チェックバルブ機構3は、図3及び図8に示すように、バルブケース7の内部にバルブ8と、該バルブ8を摺動可能に保持するバルブガイド9と、バルブ8を閉じ方向に付勢するバネ10を収容して構成されており、全体の横断面形状が横方向に扁平な楕円状とされている。
【0035】
上記バルブケース7は前後に2分割されたケース半体7A, 7B同士を結合一体化して構成されており、一方のケース半体7Aは、円筒部7aと扁平な楕円筒部7bとを組み合わせて構成されており、楕円筒部7bの全周4箇所には矩形状の係合孔11(図3には上の2つのみ図示)が形成され、楕円筒部7bの開口端面の一部(上部)にはV字状の嵌合溝12が形成されている。そして、図8に示すように、ケース半体7Aの円筒部7aと楕円筒部7bとを仕切る壁13の中心部には円筒状の弁座14が形成されている。
【0036】
又、他方のケース半体7Bは、扁平な楕円筒部7cとその先端に連なる角柱部7dとで構成されており、楕円筒部7cは、外径が小さくて薄肉の小径部7c1と外径が大きくて厚肉の大径部7c2とで構成されている。そして、楕円筒部7cの小径部7c1の外周の4箇所(他方のケース半体7Aの楕円筒部7bに形成された係合孔11に対応する箇所)には係合爪15(図3には上の2つのみ図示)が突設されている。又、楕円筒部7cの大径部7c2の小径部7c1との境(段差部)の一部(他方のケース半体7Aの楕円筒部7bに形成された嵌合溝12に対応する部分)にはV字状の嵌合突起16が形成されている。
【0037】
更に、ケース半体7Bの先端部に形成された角柱部7dの左右には円筒部7eが角柱部7dに対して軸直角方向に形成されており、これらの円筒部7eにはノズルホルダ17がそれぞれ圧入嵌合されている。ここで、図4及び図5に示すように、各ノズルホルダ17の基端部には球面状嵌合部17aが形成され、この球面状嵌合部17aが嵌合するバルブケース7の円筒部7eの内径部は凹球面状軸受7fが形成されており、この凹球面状軸受7fにノズルホルダ17の球面状嵌合部17aが圧入嵌合されることによってノズルホルダ17はバルブケース7に対して三次元方向(全方向)に回動可能に保持されている。
【0038】
又、図4及び図5に示すように、各ノズルホルダ17の外端部には円筒部17bが垂直に形成されており、この円筒部17bには噴射ノズル4が上方から圧入嵌合されるが、この噴射ノズル4は、ノズルホルダ17への圧入方向の軸(垂直軸)を中心として水平に回動可能に保持されている。そして、各噴射ノズル4には不図示のヘッドランプの前面に向かって開口する噴射口18がそれぞれ形成されている。
【0039】
ところで、各噴射ノズル4は、樹脂の金型成型によって図6に示すように頂部が塞がれた多角筒状に一体成型されており、その上部外周に横方向に細長いスリット状の前記噴射口18が形成されているが、図7に示すように、噴射口18は不図示のヘッドランプの前面に向けて斜め上方に開口している。そして、本実施の形態では、図6に示すように、噴射ノズル4には、噴射口18の上縁と左右の側縁に沿う飛散防止リブ4aが一体に形成されている。尚、噴射ノズル4に前記飛散防止リブ4aを金型成型によって形成するには、横方向にスライドするスライド型の追加が必要となる。
【0040】
而して、一方のケース半体7Aの楕円筒部7bを他方のケース半体7Bの楕円筒部7cの小径部7c1の外周に嵌め込み、小径部7c1の外周に形成された前記係合爪15を楕円筒部7cに形成された前記係合孔11に係合させれば、ケース半体7B側の嵌合突起16がケース半体7A側の嵌合溝12に嵌合し、2つのケース半体7A,7B同士が位置決めされつつ結合されて1つの偏平な楕円筒状のバルブケース7が組み立てられる。
【0041】
前記バルブ8は、図3に示すように、円板状の弁体8aと該弁体8aの中心から軸直角方向に一体に延びる弁軸8bとで構成されており、図8に示すように、弁体8aの弁座14に着座する部分にはリング状のシール部材19が組み付けられている。
【0042】
前記バルブガイド9は、小径の円筒部9Aとその先端に一体に形成された楕円板状のフランジ部9Bとで構成されており、図9に示すように、バルブガイド9のフランジ部9Bの円筒部9Aを境としてこれの左右には前記噴射ノズル4に連通する三日月状の開口部9aが形成されている。
【0043】
そして、図8に示すように、バルブガイド9の円筒部9A内には前記バルブ8の三角柱状の弁軸8bが摺動可能に嵌合しており、従って、バルブ8はバルブケース7内の中心部に前後方向(図8の左右方向)に移動可能に支持されており、該バルブ8は、前記バネ10によって閉じ方向(弁座14に着座する方向)に付勢されている。ここで、バネ10は、バルブガイド9の円筒部9Aの外周に挿通され、バルブ8の弁体8aとバルブガイド9のフランジ部9B間に縮装されている。尚、バネ10のバネ定数は前記リターンスプリング(不図示)のバネ定数よりも大きく設定されている。
【0044】
而して、バルブガイド9はスプリングガイドとしての機能も備えており、バルブケース7内においては、バルブガイド9は、図8に示すようにバネ10の反力によってバルブケース7内の壁に押圧されて位置が固定されている。
【0045】
以上のように構成された洗浄装置1において、ヘッドランプの洗浄が行われない場合には、不図示のピストンはリターンスプリングの付勢力によって図1及び図2に示すようにシリンダ2内に引き込まれており、このとき、チェックバルブ機構3のバルブ8は図8(a)に示すようにバネ10によって弁座14に押圧されて閉じ状態にある。又、噴射ノズル4は不図示のフロントバンパの裏側に格納されている。
【0046】
而して、洗浄装置1によってヘッドランプの洗浄を行う場合には、不図示のウォッシャタンクから不図示の配管を経て高圧の洗浄液が洗浄装置1のシリンダ2へと供給される。すると、ピストンは洗浄液の圧力によってシリンダ2内を前方へと摺動し、その先端に設けられた噴射ノズル4をフロントバンパに形成された開口部(不図示)から車両前方へと押し出す。この場合、前述のようにバネ10のバネ定数はリターンスプリングのバネ定数よりも大きく設定されているため、チェックバルブ機構3のバルブ8は図8(a)に示すように閉じたままであって、洗浄液は噴射ノズル4には供給されない。
【0047】
上述のようにピストンが洗浄液の圧力によって前進した後、洗浄液の圧力が所定値を超えて上昇し、チェックバルブ機構3のバルブ8に作用する洗浄液の圧力に基づく力がバネ10の付勢力よりも大きくなると、バルブ8はその弁体8aが図5(b)に示すようにバルブガイド9に沿って前方へと移動して弁座14から離れるため、該バルブ8が開状態となって洗浄液は図8(b)に矢印にて示すようにバルブケース7内を前方に向かって流れ、バルブガイド9のフランジ部9Bに形成された左右の開口部9aを通過して左右に分岐し、左右のノズルホルダ17から各噴射ノズル4へと供給される。そして、噴射ノズル4へと供給された洗浄液は、噴射口18(図8参照)からヘッドランプに向かって噴射され、ヘッドランプの前面に付着した埃や泥等を洗い流す。
【0048】
而して、本実施の形態では、図6及び図7に示すように、各噴射ノズル4の噴射口18の上縁と左右の両縁に沿って拡散防止リブ4aを一体に形成したため、噴射口18から噴射される洗浄液を図7に示す角度αにおいてヘッドランプの前面に向けて噴射させることができる。このため、ヘッドランプに向かうαの角度範囲から上方に外れる不要な方向への洗浄液の噴射を防ぐことができ、噴射ノズル4の噴射口18から噴射される洗浄液の大部分をヘッドランプに向けて噴射させることができ、ヘッドランプに付着している埃や泥等を洗浄液によって洗い流して該ヘッドランプの前面を効率良く洗浄することができる。又、ヘッドランプに向かう方向から外れて噴射される洗浄液が車両のボンネットやウインドガラス、或いは歩行者等に掛かるという問題の発生が防がれる。
【0049】
特に本実施の形態では、噴射ノズル4に飛散防止リブ4aを噴射口18の上縁だけでなく側縁に沿っても形成したため、上下及び左右方向の両方向において洗浄液をヘッドランプに向けて的確に噴射させることができ、ヘッドランプの前面を一層効率良く洗浄することができるとともに、車両の横を通過する歩行者等に噴射液が掛かる等の問題が確実に解消される。尚、場合によっては、飛散防止リブ4aを噴射ノズル4の噴射口18の上縁に沿って形成するだけでも十分な効果が得られる。
【0050】
又、本実施の形態に係る洗浄装置1においては、前述のように左右の各ノズルホルダ17の球面状嵌合部17aをバルブケース7の凹球面状軸受7fに三次元方向に回動可能に圧入嵌合したため、該ノズルホルダ17に保持された噴射ノズル4からの洗浄液の噴射方向を三次元方向(全方向)に自由に調整することができ、ヘッドランプ表面の全エリアを洗浄液によって確実に洗浄することができる。このため、デザインの異なるヘッドランプの洗浄に対応することができ、デザインの異なるヘッドランプ毎に噴射ノズルの角度が異なる数多くの洗浄装置を用意する必要がなく、製造コストの削減と量産管理の容易化を図ることができる。
【0051】
更に、本実施の形態では、左右の各噴射ノズル4をノズルホルダ17への圧入方向の軸(垂直軸)を中心として水平に回動可能に圧入嵌合したため、各噴射ノズル4からの洗浄液の噴射方向を微調整することが可能となる。
【0052】
而して、以上のようにしてヘッドランプの洗浄が終了すると、不図示のピストンがリターンスプリングによってシリンダ2内に引き込まれるため、噴射ノズル4はフロントバンパの裏側の格納位置に戻され、チェックバルブ機構3のバルブ8は図8(a)に示すように再び閉じられる。
【0053】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2を図10〜図14に基づいて説明する。
【0054】
図10は本発明の実施の形態2に係る洗浄装置の噴射ノズルの正面図、図11は同噴射ノズルの側面図、図12は図10のB−B線断面図、図13は図11のC−C線断面図、図14はヘッドランプへの洗浄液の噴射パターンを示す正面図であって、(a)は従来の噴射ノズルによるもの、(b)は本実施の形態に係る噴射ノズルによるものである。
【0055】
本実施の形態に係る洗浄装置の基本構成は実施の形態1のそれと同じであり、噴射ノズル4の構造の一部が異なるため、以下、噴射ノズル4についてのみ説明する。尚、以下においては、一方の噴射ノズル4についてのみ図示及び説明するが、他方の噴射ノズル4も同様に構成されているため、これについての図示及び説明は省略する。
【0056】
本実施の形態に係る噴射ノズル4においては、前記実施の形態1と同様に噴射口18の上縁と左右の側縁に沿う飛散防止リブ4aが一体に形成されているが、該飛散防止リブ4aの左右の側縁に形成された縦リブ状の側壁4bの内面4b−1は、図13に示すように、洗浄液の噴射方向に向かって広がるテーパ面とされている。
【0057】
従って、本実施の形態においては、左右の各噴射ノズル4の噴射口18からは噴射液が図14に示す車両のヘッドランプ20の前面(レンズ面)に向けて噴射され、該ヘッドランプの表面に付着した埃や泥等が洗い流されてヘッドランプ20の前面が洗浄される。
【0058】
而して、本実施の形態においても、各噴射ノズル4の噴射口18の上縁と左右の両縁に沿って拡散防止リブ4aを一体に形成したため、噴射口18から噴射される洗浄液を上下方向において図12に示す角度αの角度範囲でヘッドランプ20の前面に向けて噴射させることができる。又、本実施の形態では、図13に示すように、飛散防止リブ4aの左右の側壁4bの内面4b−1を洗浄液の噴射方向に向かって広がるテーパ面としたため、各噴射ノズル4の噴射口18からヘッドランプ20に向けて噴射される洗浄液を左右方向において図示のγの角度範囲に規制することができ、洗浄液がヘッドランプ20の洗浄すべき部分に集中的に噴射され、洗浄液の周囲への飛散を防ぎつつヘッドランプ20を一層効率良く且つ確実に洗浄することができる。
【0059】
ここで、図14(a)に図15及び図16に示す従来の噴射ノズル104から噴射される洗浄液のヘッドランプ20への噴射パターンを示すが、この場合にはヘッドランプ20の円形の領域R1に部分的に洗浄液が噴射される。これに対して、本実施の形態では、図14(b)に示すようにヘッドランプ20の中心付近の左右方向に長い楕円状の広い領域R2に洗浄液を集中的に噴射して高い洗浄効果を得ることができることが確認された。
【0060】
尚、以上は本発明をヘッドランプの洗浄に供される洗浄装置に適用した形態について説明したが、本発明は、ヘッドランプ以外の他の任意の車両用灯具の洗浄に供される洗浄装置に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
1 洗浄装置
2 シリンダ
3 チェックバルブ機構
4 噴射ノズル
4a 噴射ノズルの飛散防止リブ
4b 飛散防止リブの側壁
4b−1 飛散防止リブの側壁内面(テーパ面)
5 プラグ
6 ブラケット
7 バルブケース
7A,7B ケース半体
7a ケース半体の円筒部
7b,7c ケース半体の楕円筒部
7c1 楕円筒部の小径部
7c2 楕円筒部の大径部
7d ケース半体の角柱部
7e 角柱部の円筒部
7f 円筒部の凹球面状軸受
8 バルブ
8a 弁体
8b 弁軸
9 バルブガイド
9A バルブガイドの円筒部
9B バルブガイドのフランジ部
9a フランジ部の開口部
10 バネ
11 係合孔
12 嵌合溝
13 バルブケース内の壁
14 弁座
15 係合爪
16 嵌合突起
17 ノズルホルダ
17a ノズルホルダの球面状嵌合部
17b ノズルホルダの円筒部
18 噴射口
19 シール部材
20 ヘッドランプ(車両用灯具)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液が供給されるシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌挿されたピストンと、該ピストンの先端に取り付けられたバルブケースと、該バルブケースに支持されたノズルホルダと、該ノズルホルダに支持された噴射ノズルを備え、前記噴射ノズルに形成された噴射口から洗浄液を車両用灯具に向けて噴射する車両用灯具の洗浄装置において、
前記噴射ノズルの噴射口の少なくとも上縁に沿って飛散散防止リブを形成したことを特徴とする車両用灯具の洗浄装置。
【請求項2】
前記噴射ノズルの噴射口の側縁に沿って飛散防止リブを形成したことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具の洗浄装置。
【請求項3】
前記噴射ノズルの噴射口の側縁に沿って形成された飛散防止リブの左右の内面を洗浄液の噴射方向に向かって広がるテーパ面としたことを特徴とする請求項2記載の車両用灯具の洗浄装置。
【請求項4】
前記ノズルホルダを球面状嵌合部によって前記バルブケースに三次元方向に回動可能に圧入嵌合したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の車両用灯具の洗浄装置。
【請求項5】
前記噴射ノズルを前記ノズルホルダへの圧入方向の軸を中心として回動可能に圧入嵌合したことを特徴とする請求項4記載の車両用灯具の洗浄装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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