車両用灯具の洗浄装置
【課題】洗浄液の噴射方向を三次元方向に自由に調整して車両用灯具の全エリアを確実に洗浄することができるとともに、調整後は噴射方向が容易に変化することがない車両用灯具の洗浄装置を提供すること。
【解決手段】洗浄液が供給されるシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌挿されたピストンと、該ピストンの先端に取り付けられたバルブケース７と、該バルブケース７に支持されたノズルホルダ１７と、該ノズルホルダ１７に支持された噴射ノズル４を備え、前記噴射ノズル４から洗浄液を車両用灯具に向けて噴射する車両用灯具の洗浄装置において、噴射ノズル４を球面状嵌合部によってノズルホルダ１７に三次元方向に回動可能に圧入嵌合するとともに、ノズルホルダ１７をバルブケース７にその圧入方向の軸を中心として回動可能に圧入嵌合し、ノズルホルダ１７とバルブケース７の嵌合部分に嵌合突起７ｆと嵌合溝１７ｂを形成する。
【解決手段】洗浄液が供給されるシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌挿されたピストンと、該ピストンの先端に取り付けられたバルブケース７と、該バルブケース７に支持されたノズルホルダ１７と、該ノズルホルダ１７に支持された噴射ノズル４を備え、前記噴射ノズル４から洗浄液を車両用灯具に向けて噴射する車両用灯具の洗浄装置において、噴射ノズル４を球面状嵌合部によってノズルホルダ１７に三次元方向に回動可能に圧入嵌合するとともに、ノズルホルダ１７をバルブケース７にその圧入方向の軸を中心として回動可能に圧入嵌合し、ノズルホルダ１７とバルブケース７の嵌合部分に嵌合突起７ｆと嵌合溝１７ｂを形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ヘッドランプ等の車両用灯具に洗浄液を噴射してその表面を洗浄するための洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
車両の例えばヘッドランプの前面が埃や泥等の付着によって汚れると光量不足を招く可能性があるため、必要に応じてヘッドランプに向かって洗浄液を噴射して該ヘッドランプの表面を洗浄するための洗浄装置がフロントバンパの裏側に設置されている。この洗浄装置は、洗浄液が供給されるシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌挿されたピストンと、該ピストンの先端に取り付けられたバルブケースと、該バルブケースに支持されたノズルホルダと、該ノズルホルダに支持された噴射ノズルを備えており、噴射ノズルから洗浄液が車両用灯具に向けて噴射される。
【０００３】
斯かる洗浄装置においては、非洗浄時にはノズルがフロントバンパの裏側に格納されており、ヘッドランプを洗浄する際には洗浄液の圧力によって噴射ノズルがフロントバンパに形成された開口部から車両前方へと突出し、洗浄液の圧力が所定値以上に高くなると、チェックバルブが開いて洗浄液が噴射ノズルへと供給され、噴射ノズルに開口する噴射口から洗浄液がヘッドランプに向かって噴射され、ヘッドランプの前面に付着した埃や泥等が除去される。そして、ヘッドランプの洗浄が終了すると、噴射ノズルはスプリング等の付勢手段によってフロントバンパの裏側の格納位置に戻される。
【０００４】
ところで、噴射ノズルをノズルホルダに固定したタイプの洗浄装置では、噴射ノズルからの洗浄液の噴射方向を調整することができないため、例えば各車種毎に噴射角度の異なる複数の洗浄装置を準備する必要があるという問題がある。
【０００５】
そこで、特許文献１には、噴射ノズルから噴射される洗浄液の噴射方向を調整することができる洗浄装置が提案されている。図９にそのような洗浄装置の一部を示す。
【０００６】
即ち、図９は洗浄装置の噴射ノズル部分の分解斜視図であり、同図中、１１７は噴射ノズル１０４を保持するノズルホルダであって、該ノズルホルダ１１７は、その連結部１１７ａが給水体（バルブケース）１０７に突設された洗浄液供給管１０７ａに圧入されることによって給水体１０７に連結されている。そして、このノズルホルダ１１７には上方が開口する有底筒状の保持部１１７ｂが形成されており、この保持部１１７ｂには噴射ノズル１０４の略円筒状の被保持部１０４ａが上方から挿入嵌合されている。
【０００７】
従って、噴射ノズル１０４はノズルホルダ１１７への挿入方向の第１の軸（垂直軸）ｘを中心としてＲ−Ｒ方向に回動することができるとともに、ノズルホルダ１１７の給水体１０７への圧入方向の第２の軸（水平軸）ｙを中心としてＳ−Ｓ方向に回動することができるため、該噴射ノズル１０４から噴射される洗浄液の噴射方向が調整可能となる。
【０００８】
しかしながら、特許文献１において提案された図９に示す洗浄装置においては、噴射ノズル１０４は第１軸ｘを中心とするＲ−Ｒ方向と第２軸ｙを中心とするＳ−Ｓ方向にしか回動することができないため、ヘッドランプ等のレンズ面の洗浄したいエリアに向けて洗浄液を噴射することができない可能性があるという問題がある。
【０００９】
そこで、本出願人は、図１０に示すような構成を先に提案した（特許文献２参照）。
【００１０】
即ち、図１０は洗浄装置の噴射ノズル部分の分解斜視図であり、バルブケース２０７の先端部の左右には円筒部２０７ｅが形成されており、これらの円筒部２０７ｅにはノズルホルダ２１７がそれぞれ圧入嵌合されている。そして、各ノズルホルダ２１７の基端部には球面状嵌合部２１７ａが形成され、この球面状嵌合部２１７ａが嵌合するバルブケース２０７の円筒部２０７ｅの内径部には凹球面状軸受２０７ｆが形成されており、この凹球面状軸受２０７ｆにノズルホルダ２１７の球面状嵌合部２１７ａが圧入嵌合されることによってノズルホルダ２１７はバルブケース２０７に対して三次元方向（全方向）に回動可能に保持されている。
【００１１】
又、各ノズルホルダ２１７の外端部には円筒部２１７ｂが垂直に形成されており、この円筒部２１７ｂには噴射ノズル２０４が上方から圧入嵌合されるが、この噴射ノズル２０４は、ノズルホルダ２１７への圧入方向の軸（垂直軸）を中心として水平に回動可能に保持されている。そして、各噴射ノズル２０４には不図示のヘッドランプの前面に向かって開口する噴射口２１８がそれぞれ形成されている。
【００１２】
斯かる構成によれば、ノズルホルダ２１７を球面状嵌合によってバルブケース２０７に三次元方向に回動可能に圧入嵌合したため、該ノズルホルダ２１７に保持された噴射ノズル２０４からの洗浄液の噴射方向を実三次元方向に自由に調整することができ、車両用灯具表面の全エリアを洗浄液によって確実に洗浄することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【００１３】
【特許文献１】特開２００５−１６２１４６号公報
【特許文献２】特願２００９−１１８２５３号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【００１４】
しかしながら、図１０に示す構成によれば、噴射ノズル２０４が圧入嵌合されたノズルホルダ２１７が球面状嵌合によって全方向に自由に回動可能であるため、取付作業者やユーザーがノズルホルダ２１７に触ったりした場合に、該ノズルホルダ２１７が簡単に回動し、これに嵌合保持された噴射ノズル２０４の噴射口２１８が正規位置からずれるために目的の方向に洗浄液を噴射させることができなくなってしまうという問題があった。
【００１５】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、洗浄液の噴射方向を三次元方向に自由に調整して車両用灯具の全エリアを確実に洗浄することができるとともに、調整後は噴射方向が容易に変化することがない車両用灯具の洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【００１６】
上記目的を達成するため、本発明は、洗浄液が供給されるシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌挿されたピストンと、該ピストンの先端に取り付けられたバルブケースと、該バルブケースに支持されたノズルホルダと、該ノズルホルダに支持された噴射ノズルを備え、前記噴射ノズルから洗浄液を車両用灯具に向けて噴射する車両用灯具の洗浄装置において、前記噴射ノズルを球面状嵌合部によって前記ノズルホルダに三次元方向に回動可能に圧入嵌合するとともに、前記ノズルホルダを前記バルブケースにその圧入方向の軸を中心として回動可能に圧入嵌合し、前記ノズルホルダと前記バルブケースの嵌合部分に嵌合突起と嵌合溝を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【００１７】
本発明によれば、噴射ノズルを球面状嵌合部によってノズルホルダに三次元方向に回動可能に圧入嵌合したため、該噴射ノズルからの洗浄液の噴射方向を三次元方向に自由に調整することができ、車両用灯具表面の全エリアを洗浄液によって確実に洗浄することができる。そして、噴射ノズルを嵌合保持するノズルホルダをバルブケースに、圧入方向の軸（水平軸）を中心として回動可能に圧入嵌合したため、該ノズルホルダを触ってもこれが容易に回動して噴射ノズルの位置が調整位置からずれることがなく、該噴射ノズルの噴射口から洗浄液が目的の方向に確実に噴射される。
【００１８】
又、ノズルホルダをバルブケースにその圧入方向の軸を中心として回動可能に圧入嵌合したため、該ノズルホルダが噴射ノズルと共にバルブケースから容易に外れることがなく、バルブケースを噴射ノズルと共に圧入方向の軸を中心として回動させることによって噴射ノズルからの洗浄液の噴射方向を微調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１９】
【図１】本発明に係る洗浄装置の側面図である。
【図２】本発明に係る洗浄装置の平面図である。
【図３】本発明に係る洗浄装置要部の分解斜視図である。
【図４】本発明に係る洗浄装置の噴射ノズル部分の分解斜視図である。
【図５】図２のＡ−Ａ線断面図である。
【図６】（ａ），（ｂ）は本発明に係る洗浄装置のチェックバルブ機構部及び噴射ノズル部分の平断面図である。
【図７】図６（ａ）のＢ−Ｂ線断面図である。
【図８】図６（ａ）のＣ−Ｃ線断面図である。
【図９】特許文献１において提案された洗浄装置の噴射ノズル部分の分解斜視図である。
【図１０】特許文献２において提案された洗浄装置の噴射ノズル部分の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【００２０】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【００２１】
図１は本発明に係る洗浄装置の側面図、図２は同洗浄装置の平面図、図３は同洗浄装置要部の分解斜視図、図４は同洗浄装置の噴射ノズル部分の分解斜視図、図５は図２のＡ−Ａ線断面図、図６（ａ），（ｂ）は同洗浄装置のチェックバルブ機構部及び噴射ノズル部分の平断面図、図７は図６（ａ）のＢ−Ｂ線断面図、図８は図６（ａ）のＣ−Ｃ線断面図である。
【００２２】
本実施の形態に係る洗浄装置１は、不図示のヘッドランプの前面に向かって洗浄液を噴射して該前面を洗浄するための装置であって、不図示のフロントバンパの裏側に配置されている。尚、洗浄装置１は左右のヘッドランプに対してそれぞれ設置されているが、その構成及び作用は同じであるため、以下、一方の洗浄装置１についてのみ説明する。
【００２３】
図１及び図２に示す洗浄装置１は、円筒状のシリンダ２の内部に不図示のピストンを摺動可能に嵌挿し、該ピストンの先端部にチェックバルブ機構３を介して左右一対の噴射ノズル４を取り付けて構成されている。
【００２４】
上記シリンダ２は、不図示のウォッシャタンクから洗浄液の供給を受けるものであって、その後端にはプラグ５が設けられており、シリンダ２の内部はプラグ５に接続された不図示の配管を介してウォッシャタンクに連通している。そして、シリンダ２の前端部外周にはブラケット６が取り付けられており、洗浄装置１はブラケット６を介して不図示の車両のフロントバンパの裏側に取り付けられている。尚、図示しないが、シリンダ２とその内部に摺動可能に嵌挿されたピストンとの間には、ピストンをシリンダ２内に引き込む方向に付勢する付勢手段としてのリターンスプリングが介装されている。
【００２５】
次に、前記チェックバルブ機構３の構成の及び噴射ノズル４の保持構造の詳細を図３〜図８に基づいて説明する。
【００２６】
チェックバルブ機構３は、図３及び図６に示すように、バルブケース７の内部にバルブ８と、該バルブ８を摺動可能に保持するガイド９と、バルブ８を閉じ方向に付勢するバルブスプリング１０を収容して構成されており、全体の横断面形状が横方向に扁平な楕円状とされている。
【００２７】
上記バルブケース７は前後に２分割されたケース半体７Ａ, ７Ｂ同士を結合一体化して構成されており、一方のケース半体７Ａは、円筒部７ａと扁平な楕円筒部７ｂとを組み合わせて構成されており、楕円筒部７ｂの全周４箇所には矩形状の係合孔１１（図３には上の２つのみ図示）が形成され、楕円筒部７ｂの開口端面の一部（上部）にはＶ字状の嵌合溝１２が形成されている。そして、図６に示すように、ケース半体７Ａの円筒部７ａと楕円筒部７ｂとを仕切る壁１３の中心部には円筒状の弁座１４が形成されている。
【００２８】
又、他方のケース半体７Ｂは、扁平な楕円筒部７ｃとその先端に連なる角柱部７ｄとで構成されており、楕円筒部７ｃは、外径が小さくて薄肉の小径部７ｃ１と外径が大きくて厚肉の大径部７ｃ２とで構成されている。そして、楕円筒部７ｃの小径部７ｃ１の外周の４箇所（他方のケース半体７Ａの楕円筒部７ｂに形成された係合孔１１に対応する箇所）には係合爪１５（図３には上の２つのみ図示）が突設されている。又、楕円筒部７ｃの大径部７ｃ２の小径部７ｃ１との境（段差部）の一部（他方のケース半体７Ａの楕円筒部７ｂに形成された嵌合溝１２に対応する部分）にはＶ字状の嵌合突起１６が形成されている。
【００２９】
更に、ケース半体７Ｂの先端部に形成された角柱部７ｄの左右には円筒部７ｅが角柱部７ｄに対して軸直角方向に形成されており、これらの円筒部７ｅにはノズルホルダ１７がそれぞれ圧入嵌合されている。即ち、図４及び図５に示すように、各ノズルホルダ１７の基端部には円筒部１７ａが形成され、この円筒部の内周には嵌合溝１７ｂ（図５参照）が全周に亘って形成されている。又、ノズルホルダ１７の円筒部１７ａが嵌合するバルブケース７の円筒部７ｅの外周には嵌合突起７ｆ（図５参照）が全周に亘って形成されている。
【００３０】
而して、左右の各ノズルホルダ１７は、その基端部に形成された円筒部１７ａをバルブケース７のケース半体７Ｂの先端部の左右に形成された各円筒部７ｅに圧入嵌合することによって、バルブケース７にその圧入方向の軸（水平軸）を中心として垂直に回動可能に保持されている。これにより、作業者等がノズルホルダ１７に触っても、三次元方向に回動可能な球面状嵌合に比べ、該ノズルホルダ１７が容易に回動することが防がれ、その結果、ノズルホルダ１７に嵌合保持された噴射ノズル４の噴射口１８からの洗浄液の噴射方向が調整された所定の方向からずれることが防がれる。このとき、図５に示すように、ノズルホルダ１７のケース半体７Ｂの円筒部７ｅの外周に形成された嵌合突起７ｆが嵌合するため、ノズルホルダ１７のケース半体７Ｂからの抜けが確実に防がれる。
【００３１】
又、図４及び図５に示すように、各ノズルホルダ１７の外端部には円筒部１７ｃが円筒部１７ａの圧入方向に対して垂直に形成されており、この円筒部１７ｃには左右の各噴射ノズル４が上方から圧入嵌合されるが、各ノズルホルダ１７の円筒部１７ｃの内周には凹球面状軸受１７ｄが形成されている。
【００３２】
他方、各噴射ノズル４の外周には球面状嵌合部４ａが形成されており、この球面状嵌合部４ａを各ノズルホルダ１７の外端部に形成された円筒部１７ｃの内周に形成された凹球面状軸受１７ｄに圧入嵌合することによって各噴射ノズル４がノズルホルダ１７に対して三次元方向（全方向）に回動可能に保持されている。そして、各噴射ノズル４には不図示のヘッドランプの前面に向かって開口する噴射口１８がそれぞれ形成されている。
【００３３】
而して、バルブ８とガイド９及びバルブスプリング１０を内部に収容した状態で、一方のケース半体７Ａの楕円筒部７ｂを他方のケース半体７Ｂの楕円筒部７ｃの小径部７ｃ１の外周に嵌め込み、小径部７ｃ１の外周に形成された前記係合爪１５をケース半体７Ａの楕円筒部７ｂに形成された前記係合孔１１に係合させれば、ケース半体７Ｂ側の嵌合突起１６がケース半体７Ａ側の嵌合溝１２に嵌合し、２つのケース半体７Ａ，７Ｂ同士が位置決めされつつ結合されて１つのバルブケース７が組み立てられる。
【００３４】
前記バルブ８は、円板状の弁体８ａと該弁体８ａの中心から軸直角方向に一体に延びる弁軸８ｂとで構成されており、図６に示すように、弁体８ａの弁座１４に着座する部分にはリング状のシール部材１９が組み付けられている。
【００３５】
前記ガイド９は、小径の円筒部９Ａとその先端に一体に形成された楕円板状のフランジ部９Ｂとで構成されており、図３に示すように、フランジ部９Ｂの端面の上下左右の４箇所には矩形状の嵌合溝２１が形成されている。又、図３及び図７に示すように、フランジ部９Ｂの円筒部９Ａを境としてこれの左右には前記ノズル４に連通する三日月状の開口部９ａが形成されている。
【００３６】
そして、図６に示すように、ガイド９の円筒部９Ａ内には前記バルブ８の三角柱状の弁軸８ｂが摺動可能に嵌合しており、従って、バルブ８はバルブケース７内の中心部に前後方向（図６の左右方向）に移動可能に支持されており、該バルブ８は、前記バルブスプリング１０によって閉じ方向（弁座１４に着座する方向）に付勢されている。ここで、バルブスプリング１０は、ガイド９の円筒部９Ａの外周に挿通され、バルブ８の弁体８ａとガイド９のフランジ部９Ｂ間に縮装されている。尚、バルブスプリング１０のバネ定数は前記リターンスプリング（不図示）のバネ定数よりも大きく設定されている。
【００３７】
而して、ガイド９は、バルブガイドとしての機能とスプリングガイドとしての機能を兼備しており、バルブケース７内においては、ガイド９は、図６に示すようにバルブスプリング１０の反力によってバルブケース７内の壁２１に押圧されて位置が固定されるとともに、図８に示すように、フランジ部９Ｂの端面の上下左右に形成された前記嵌合溝２０にバルブケース７内の壁２１の４箇所（嵌合溝２に対応する箇所）に突設された嵌合突起２２が嵌合することによってバルブケース７内での位置決めがなされている。
【００３８】
以上のように構成された洗浄装置１において、ヘッドランプの洗浄が行われない場合には、不図示のピストンはリターンスプリングの付勢力によって図１及び図２に示すようにシリンダ２内に引き込まれており、このとき、チェックバルブ機構３のバルブ８は図６（ａ）に示すようにバルブスプリング１０によって弁座１４に押圧されて閉じ状態にある。又、ノズル４は不図示のフロントバンパの裏側に格納されている。
【００３９】
而して、洗浄装置１によって車両のヘッドランプの洗浄を行う場合には、不図示のウォッシャタンクから不図示の配管を経て高圧の洗浄液が洗浄装置１のシリンダ２へと供給される。すると、ピストンは洗浄液の圧力によってシリンダ２内を前方へと摺動し、その先端に設けられたノズル４を車両のフロントバンパに形成された開口部（不図示）から車両前方へと押し出す。この場合、前述のようにバルブスプリング１０のバネ定数はリターンスプリングのバネ定数よりも大きく設定されているため、チェックバルブ機構３のバルブ８は図６（ａ）に示すように閉じたままであって、洗浄液はノズル４には供給されない。
【００４０】
上述のようにピストンが洗浄液の圧力によって前進した後、洗浄液の圧力が所定値を超えて上昇し、チェックバルブ機構３のバルブ８に作用する洗浄液の圧力に基づく力がバルブスプリング１０の付勢力よりも大きくなると、バルブ８は図６（ｂ）に示すようにガイド９に沿って前方へと移動して弁座１４から離れるため、該バルブ８が開状態となって洗浄液は図６（ｂ）に矢印にて示すようにバルブケース７内を前方に向かって流れ、ガイド９のフランジ部９Ｂに形成された左右の開口部９ａを通過して左右に分岐し、左右のノズルホルダ１７から各噴射ノズル４へと供給される。そして、噴射ノズル４へと供給された洗浄液は、噴射口１８（図４参照）からヘッドランプに向かって噴射され、ヘッドランプの前面に付着した埃や泥等を洗い流す。
【００４１】
ここで、本実施の形態に係る洗浄装置１においては、チェックバルブ機構３のバルブ８の移動方向をピストンの摺動方向、つまり洗浄液の流れ方向と同方向としたため、バルブ８が図６（ｂ）に示すように開いたときには洗浄液は方向を変えることなくバルブ８を通過してノズル４へと真っ直ぐスムーズに流れる。このため、洗浄液の圧力損失が低く抑えられ、ノズル４からの洗浄液の噴射圧力及び噴射速度の低下が防がれ、洗浄装置１は高い洗浄能力を安定して維持することができる。
【００４２】
而して、本実施の形態では、前述のように噴射ノズル４を、その球面状嵌合部４ａをバルブホルダ１７の円筒部１７その内周に形成された凹球面状軸受１７ｄに三次元方向に回動可能に圧入嵌合したため、該噴射ノズル４の噴射口１８からの洗浄液の噴射方向を実三次元方向に自由に調整することができ、ヘッドランプ表面の全エリアを洗浄液によって確実に洗浄することができる。そして、噴射ノズル４を嵌合保持するノズルホルダ１７をバルブケース７に圧入嵌合したため、該ノズルホルダ１７を触ってもこれが容易に回動して噴射ノズル４の位置が調整位置からずれることがなく、該噴射ノズル４の噴射口１８から洗浄液が目的の方向に確実に噴射される。
【００４３】
又、ノズルホルダ１７をバルブケース７にその圧入方向の軸を中心として回動可能に圧入嵌合したため、該ノズルホルダ１７が噴射ノズル４と共にバルブケース７から容易に外れることがなく、バルブケース１７を噴射ノズル４と共に圧入方向の軸を中心として回動させることによって噴射ノズル４からの洗浄液の噴射方向を微調整することができる。
【００４４】
上述のようにしてヘッドランプの洗浄が終了すると、洗浄装置１への洗浄液の供給が遮断されるため、不図示のピストンがリターンスプリングによってシリンダ２内に引き込まれるため、噴射ノズル４はフロントバンパの裏側の格納位置に戻され、チェックバルブ機構３のバルブ８は図６（ａ）に示すように再び閉じられる。
【００４５】
尚、以上は本発明をヘッドランプの洗浄に供される洗浄装置に適用した形態について説明したが、本発明は、ヘッドランプ以外の他の任意の車両用灯具の洗浄に供される洗浄装置に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【００４６】
１ 洗浄装置
２ シリンダ
３ チェックバルブ機構
４ 噴射ノズル
４ａ 噴射ノズルの球面状嵌合部
５ プラグ
６ ブラケット
７ バルブケース
７Ａ，７Ｂ ケース半体
７ａ ケース半体の円筒部
７ｂ，７ｃ ケース半体の楕円筒部
７ｃ１ 楕円筒部の小径部
７ｃ２ 楕円筒部の大径部
７ｄ ケース半体の角柱部
７ｅ 角柱部の円筒部
７ｆ 円筒部の嵌合突起
８ バルブ
８ａ 弁体
８ｂ 弁軸
９ ガイド
９Ａ ガイドの円筒部
９Ｂ ガイドのフランジ部
９ａ フランジ部の開口部
１０ バルブスプリング
１１ 係合孔
１２ 嵌合溝
１３ バルブケース内の壁
１４ 弁座
１５ 係合爪
１６ 嵌合突起
１７ ノズルホルダ
１７ａ ノズルホルダの円筒部
１７ｂ 円筒部の嵌合溝
１７ｃ ノズルホルダの円筒部
１７ｄ 円筒部の凹球面状軸受
１８ 噴射口
１９ シール部材
２０ 嵌合溝
２１ バルブケース内の壁
２２ 嵌合突起
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ヘッドランプ等の車両用灯具に洗浄液を噴射してその表面を洗浄するための洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
車両の例えばヘッドランプの前面が埃や泥等の付着によって汚れると光量不足を招く可能性があるため、必要に応じてヘッドランプに向かって洗浄液を噴射して該ヘッドランプの表面を洗浄するための洗浄装置がフロントバンパの裏側に設置されている。この洗浄装置は、洗浄液が供給されるシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌挿されたピストンと、該ピストンの先端に取り付けられたバルブケースと、該バルブケースに支持されたノズルホルダと、該ノズルホルダに支持された噴射ノズルを備えており、噴射ノズルから洗浄液が車両用灯具に向けて噴射される。
【０００３】
斯かる洗浄装置においては、非洗浄時にはノズルがフロントバンパの裏側に格納されており、ヘッドランプを洗浄する際には洗浄液の圧力によって噴射ノズルがフロントバンパに形成された開口部から車両前方へと突出し、洗浄液の圧力が所定値以上に高くなると、チェックバルブが開いて洗浄液が噴射ノズルへと供給され、噴射ノズルに開口する噴射口から洗浄液がヘッドランプに向かって噴射され、ヘッドランプの前面に付着した埃や泥等が除去される。そして、ヘッドランプの洗浄が終了すると、噴射ノズルはスプリング等の付勢手段によってフロントバンパの裏側の格納位置に戻される。
【０００４】
ところで、噴射ノズルをノズルホルダに固定したタイプの洗浄装置では、噴射ノズルからの洗浄液の噴射方向を調整することができないため、例えば各車種毎に噴射角度の異なる複数の洗浄装置を準備する必要があるという問題がある。
【０００５】
そこで、特許文献１には、噴射ノズルから噴射される洗浄液の噴射方向を調整することができる洗浄装置が提案されている。図９にそのような洗浄装置の一部を示す。
【０００６】
即ち、図９は洗浄装置の噴射ノズル部分の分解斜視図であり、同図中、１１７は噴射ノズル１０４を保持するノズルホルダであって、該ノズルホルダ１１７は、その連結部１１７ａが給水体（バルブケース）１０７に突設された洗浄液供給管１０７ａに圧入されることによって給水体１０７に連結されている。そして、このノズルホルダ１１７には上方が開口する有底筒状の保持部１１７ｂが形成されており、この保持部１１７ｂには噴射ノズル１０４の略円筒状の被保持部１０４ａが上方から挿入嵌合されている。
【０００７】
従って、噴射ノズル１０４はノズルホルダ１１７への挿入方向の第１の軸（垂直軸）ｘを中心としてＲ−Ｒ方向に回動することができるとともに、ノズルホルダ１１７の給水体１０７への圧入方向の第２の軸（水平軸）ｙを中心としてＳ−Ｓ方向に回動することができるため、該噴射ノズル１０４から噴射される洗浄液の噴射方向が調整可能となる。
【０００８】
しかしながら、特許文献１において提案された図９に示す洗浄装置においては、噴射ノズル１０４は第１軸ｘを中心とするＲ−Ｒ方向と第２軸ｙを中心とするＳ−Ｓ方向にしか回動することができないため、ヘッドランプ等のレンズ面の洗浄したいエリアに向けて洗浄液を噴射することができない可能性があるという問題がある。
【０００９】
そこで、本出願人は、図１０に示すような構成を先に提案した（特許文献２参照）。
【００１０】
即ち、図１０は洗浄装置の噴射ノズル部分の分解斜視図であり、バルブケース２０７の先端部の左右には円筒部２０７ｅが形成されており、これらの円筒部２０７ｅにはノズルホルダ２１７がそれぞれ圧入嵌合されている。そして、各ノズルホルダ２１７の基端部には球面状嵌合部２１７ａが形成され、この球面状嵌合部２１７ａが嵌合するバルブケース２０７の円筒部２０７ｅの内径部には凹球面状軸受２０７ｆが形成されており、この凹球面状軸受２０７ｆにノズルホルダ２１７の球面状嵌合部２１７ａが圧入嵌合されることによってノズルホルダ２１７はバルブケース２０７に対して三次元方向（全方向）に回動可能に保持されている。
【００１１】
又、各ノズルホルダ２１７の外端部には円筒部２１７ｂが垂直に形成されており、この円筒部２１７ｂには噴射ノズル２０４が上方から圧入嵌合されるが、この噴射ノズル２０４は、ノズルホルダ２１７への圧入方向の軸（垂直軸）を中心として水平に回動可能に保持されている。そして、各噴射ノズル２０４には不図示のヘッドランプの前面に向かって開口する噴射口２１８がそれぞれ形成されている。
【００１２】
斯かる構成によれば、ノズルホルダ２１７を球面状嵌合によってバルブケース２０７に三次元方向に回動可能に圧入嵌合したため、該ノズルホルダ２１７に保持された噴射ノズル２０４からの洗浄液の噴射方向を実三次元方向に自由に調整することができ、車両用灯具表面の全エリアを洗浄液によって確実に洗浄することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【００１３】
【特許文献１】特開２００５−１６２１４６号公報
【特許文献２】特願２００９−１１８２５３号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【００１４】
しかしながら、図１０に示す構成によれば、噴射ノズル２０４が圧入嵌合されたノズルホルダ２１７が球面状嵌合によって全方向に自由に回動可能であるため、取付作業者やユーザーがノズルホルダ２１７に触ったりした場合に、該ノズルホルダ２１７が簡単に回動し、これに嵌合保持された噴射ノズル２０４の噴射口２１８が正規位置からずれるために目的の方向に洗浄液を噴射させることができなくなってしまうという問題があった。
【００１５】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、洗浄液の噴射方向を三次元方向に自由に調整して車両用灯具の全エリアを確実に洗浄することができるとともに、調整後は噴射方向が容易に変化することがない車両用灯具の洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【００１６】
上記目的を達成するため、本発明は、洗浄液が供給されるシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌挿されたピストンと、該ピストンの先端に取り付けられたバルブケースと、該バルブケースに支持されたノズルホルダと、該ノズルホルダに支持された噴射ノズルを備え、前記噴射ノズルから洗浄液を車両用灯具に向けて噴射する車両用灯具の洗浄装置において、前記噴射ノズルを球面状嵌合部によって前記ノズルホルダに三次元方向に回動可能に圧入嵌合するとともに、前記ノズルホルダを前記バルブケースにその圧入方向の軸を中心として回動可能に圧入嵌合し、前記ノズルホルダと前記バルブケースの嵌合部分に嵌合突起と嵌合溝を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【００１７】
本発明によれば、噴射ノズルを球面状嵌合部によってノズルホルダに三次元方向に回動可能に圧入嵌合したため、該噴射ノズルからの洗浄液の噴射方向を三次元方向に自由に調整することができ、車両用灯具表面の全エリアを洗浄液によって確実に洗浄することができる。そして、噴射ノズルを嵌合保持するノズルホルダをバルブケースに、圧入方向の軸（水平軸）を中心として回動可能に圧入嵌合したため、該ノズルホルダを触ってもこれが容易に回動して噴射ノズルの位置が調整位置からずれることがなく、該噴射ノズルの噴射口から洗浄液が目的の方向に確実に噴射される。
【００１８】
又、ノズルホルダをバルブケースにその圧入方向の軸を中心として回動可能に圧入嵌合したため、該ノズルホルダが噴射ノズルと共にバルブケースから容易に外れることがなく、バルブケースを噴射ノズルと共に圧入方向の軸を中心として回動させることによって噴射ノズルからの洗浄液の噴射方向を微調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１９】
【図１】本発明に係る洗浄装置の側面図である。
【図２】本発明に係る洗浄装置の平面図である。
【図３】本発明に係る洗浄装置要部の分解斜視図である。
【図４】本発明に係る洗浄装置の噴射ノズル部分の分解斜視図である。
【図５】図２のＡ−Ａ線断面図である。
【図６】（ａ），（ｂ）は本発明に係る洗浄装置のチェックバルブ機構部及び噴射ノズル部分の平断面図である。
【図７】図６（ａ）のＢ−Ｂ線断面図である。
【図８】図６（ａ）のＣ−Ｃ線断面図である。
【図９】特許文献１において提案された洗浄装置の噴射ノズル部分の分解斜視図である。
【図１０】特許文献２において提案された洗浄装置の噴射ノズル部分の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【００２０】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【００２１】
図１は本発明に係る洗浄装置の側面図、図２は同洗浄装置の平面図、図３は同洗浄装置要部の分解斜視図、図４は同洗浄装置の噴射ノズル部分の分解斜視図、図５は図２のＡ−Ａ線断面図、図６（ａ），（ｂ）は同洗浄装置のチェックバルブ機構部及び噴射ノズル部分の平断面図、図７は図６（ａ）のＢ−Ｂ線断面図、図８は図６（ａ）のＣ−Ｃ線断面図である。
【００２２】
本実施の形態に係る洗浄装置１は、不図示のヘッドランプの前面に向かって洗浄液を噴射して該前面を洗浄するための装置であって、不図示のフロントバンパの裏側に配置されている。尚、洗浄装置１は左右のヘッドランプに対してそれぞれ設置されているが、その構成及び作用は同じであるため、以下、一方の洗浄装置１についてのみ説明する。
【００２３】
図１及び図２に示す洗浄装置１は、円筒状のシリンダ２の内部に不図示のピストンを摺動可能に嵌挿し、該ピストンの先端部にチェックバルブ機構３を介して左右一対の噴射ノズル４を取り付けて構成されている。
【００２４】
上記シリンダ２は、不図示のウォッシャタンクから洗浄液の供給を受けるものであって、その後端にはプラグ５が設けられており、シリンダ２の内部はプラグ５に接続された不図示の配管を介してウォッシャタンクに連通している。そして、シリンダ２の前端部外周にはブラケット６が取り付けられており、洗浄装置１はブラケット６を介して不図示の車両のフロントバンパの裏側に取り付けられている。尚、図示しないが、シリンダ２とその内部に摺動可能に嵌挿されたピストンとの間には、ピストンをシリンダ２内に引き込む方向に付勢する付勢手段としてのリターンスプリングが介装されている。
【００２５】
次に、前記チェックバルブ機構３の構成の及び噴射ノズル４の保持構造の詳細を図３〜図８に基づいて説明する。
【００２６】
チェックバルブ機構３は、図３及び図６に示すように、バルブケース７の内部にバルブ８と、該バルブ８を摺動可能に保持するガイド９と、バルブ８を閉じ方向に付勢するバルブスプリング１０を収容して構成されており、全体の横断面形状が横方向に扁平な楕円状とされている。
【００２７】
上記バルブケース７は前後に２分割されたケース半体７Ａ, ７Ｂ同士を結合一体化して構成されており、一方のケース半体７Ａは、円筒部７ａと扁平な楕円筒部７ｂとを組み合わせて構成されており、楕円筒部７ｂの全周４箇所には矩形状の係合孔１１（図３には上の２つのみ図示）が形成され、楕円筒部７ｂの開口端面の一部（上部）にはＶ字状の嵌合溝１２が形成されている。そして、図６に示すように、ケース半体７Ａの円筒部７ａと楕円筒部７ｂとを仕切る壁１３の中心部には円筒状の弁座１４が形成されている。
【００２８】
又、他方のケース半体７Ｂは、扁平な楕円筒部７ｃとその先端に連なる角柱部７ｄとで構成されており、楕円筒部７ｃは、外径が小さくて薄肉の小径部７ｃ１と外径が大きくて厚肉の大径部７ｃ２とで構成されている。そして、楕円筒部７ｃの小径部７ｃ１の外周の４箇所（他方のケース半体７Ａの楕円筒部７ｂに形成された係合孔１１に対応する箇所）には係合爪１５（図３には上の２つのみ図示）が突設されている。又、楕円筒部７ｃの大径部７ｃ２の小径部７ｃ１との境（段差部）の一部（他方のケース半体７Ａの楕円筒部７ｂに形成された嵌合溝１２に対応する部分）にはＶ字状の嵌合突起１６が形成されている。
【００２９】
更に、ケース半体７Ｂの先端部に形成された角柱部７ｄの左右には円筒部７ｅが角柱部７ｄに対して軸直角方向に形成されており、これらの円筒部７ｅにはノズルホルダ１７がそれぞれ圧入嵌合されている。即ち、図４及び図５に示すように、各ノズルホルダ１７の基端部には円筒部１７ａが形成され、この円筒部の内周には嵌合溝１７ｂ（図５参照）が全周に亘って形成されている。又、ノズルホルダ１７の円筒部１７ａが嵌合するバルブケース７の円筒部７ｅの外周には嵌合突起７ｆ（図５参照）が全周に亘って形成されている。
【００３０】
而して、左右の各ノズルホルダ１７は、その基端部に形成された円筒部１７ａをバルブケース７のケース半体７Ｂの先端部の左右に形成された各円筒部７ｅに圧入嵌合することによって、バルブケース７にその圧入方向の軸（水平軸）を中心として垂直に回動可能に保持されている。これにより、作業者等がノズルホルダ１７に触っても、三次元方向に回動可能な球面状嵌合に比べ、該ノズルホルダ１７が容易に回動することが防がれ、その結果、ノズルホルダ１７に嵌合保持された噴射ノズル４の噴射口１８からの洗浄液の噴射方向が調整された所定の方向からずれることが防がれる。このとき、図５に示すように、ノズルホルダ１７のケース半体７Ｂの円筒部７ｅの外周に形成された嵌合突起７ｆが嵌合するため、ノズルホルダ１７のケース半体７Ｂからの抜けが確実に防がれる。
【００３１】
又、図４及び図５に示すように、各ノズルホルダ１７の外端部には円筒部１７ｃが円筒部１７ａの圧入方向に対して垂直に形成されており、この円筒部１７ｃには左右の各噴射ノズル４が上方から圧入嵌合されるが、各ノズルホルダ１７の円筒部１７ｃの内周には凹球面状軸受１７ｄが形成されている。
【００３２】
他方、各噴射ノズル４の外周には球面状嵌合部４ａが形成されており、この球面状嵌合部４ａを各ノズルホルダ１７の外端部に形成された円筒部１７ｃの内周に形成された凹球面状軸受１７ｄに圧入嵌合することによって各噴射ノズル４がノズルホルダ１７に対して三次元方向（全方向）に回動可能に保持されている。そして、各噴射ノズル４には不図示のヘッドランプの前面に向かって開口する噴射口１８がそれぞれ形成されている。
【００３３】
而して、バルブ８とガイド９及びバルブスプリング１０を内部に収容した状態で、一方のケース半体７Ａの楕円筒部７ｂを他方のケース半体７Ｂの楕円筒部７ｃの小径部７ｃ１の外周に嵌め込み、小径部７ｃ１の外周に形成された前記係合爪１５をケース半体７Ａの楕円筒部７ｂに形成された前記係合孔１１に係合させれば、ケース半体７Ｂ側の嵌合突起１６がケース半体７Ａ側の嵌合溝１２に嵌合し、２つのケース半体７Ａ，７Ｂ同士が位置決めされつつ結合されて１つのバルブケース７が組み立てられる。
【００３４】
前記バルブ８は、円板状の弁体８ａと該弁体８ａの中心から軸直角方向に一体に延びる弁軸８ｂとで構成されており、図６に示すように、弁体８ａの弁座１４に着座する部分にはリング状のシール部材１９が組み付けられている。
【００３５】
前記ガイド９は、小径の円筒部９Ａとその先端に一体に形成された楕円板状のフランジ部９Ｂとで構成されており、図３に示すように、フランジ部９Ｂの端面の上下左右の４箇所には矩形状の嵌合溝２１が形成されている。又、図３及び図７に示すように、フランジ部９Ｂの円筒部９Ａを境としてこれの左右には前記ノズル４に連通する三日月状の開口部９ａが形成されている。
【００３６】
そして、図６に示すように、ガイド９の円筒部９Ａ内には前記バルブ８の三角柱状の弁軸８ｂが摺動可能に嵌合しており、従って、バルブ８はバルブケース７内の中心部に前後方向（図６の左右方向）に移動可能に支持されており、該バルブ８は、前記バルブスプリング１０によって閉じ方向（弁座１４に着座する方向）に付勢されている。ここで、バルブスプリング１０は、ガイド９の円筒部９Ａの外周に挿通され、バルブ８の弁体８ａとガイド９のフランジ部９Ｂ間に縮装されている。尚、バルブスプリング１０のバネ定数は前記リターンスプリング（不図示）のバネ定数よりも大きく設定されている。
【００３７】
而して、ガイド９は、バルブガイドとしての機能とスプリングガイドとしての機能を兼備しており、バルブケース７内においては、ガイド９は、図６に示すようにバルブスプリング１０の反力によってバルブケース７内の壁２１に押圧されて位置が固定されるとともに、図８に示すように、フランジ部９Ｂの端面の上下左右に形成された前記嵌合溝２０にバルブケース７内の壁２１の４箇所（嵌合溝２に対応する箇所）に突設された嵌合突起２２が嵌合することによってバルブケース７内での位置決めがなされている。
【００３８】
以上のように構成された洗浄装置１において、ヘッドランプの洗浄が行われない場合には、不図示のピストンはリターンスプリングの付勢力によって図１及び図２に示すようにシリンダ２内に引き込まれており、このとき、チェックバルブ機構３のバルブ８は図６（ａ）に示すようにバルブスプリング１０によって弁座１４に押圧されて閉じ状態にある。又、ノズル４は不図示のフロントバンパの裏側に格納されている。
【００３９】
而して、洗浄装置１によって車両のヘッドランプの洗浄を行う場合には、不図示のウォッシャタンクから不図示の配管を経て高圧の洗浄液が洗浄装置１のシリンダ２へと供給される。すると、ピストンは洗浄液の圧力によってシリンダ２内を前方へと摺動し、その先端に設けられたノズル４を車両のフロントバンパに形成された開口部（不図示）から車両前方へと押し出す。この場合、前述のようにバルブスプリング１０のバネ定数はリターンスプリングのバネ定数よりも大きく設定されているため、チェックバルブ機構３のバルブ８は図６（ａ）に示すように閉じたままであって、洗浄液はノズル４には供給されない。
【００４０】
上述のようにピストンが洗浄液の圧力によって前進した後、洗浄液の圧力が所定値を超えて上昇し、チェックバルブ機構３のバルブ８に作用する洗浄液の圧力に基づく力がバルブスプリング１０の付勢力よりも大きくなると、バルブ８は図６（ｂ）に示すようにガイド９に沿って前方へと移動して弁座１４から離れるため、該バルブ８が開状態となって洗浄液は図６（ｂ）に矢印にて示すようにバルブケース７内を前方に向かって流れ、ガイド９のフランジ部９Ｂに形成された左右の開口部９ａを通過して左右に分岐し、左右のノズルホルダ１７から各噴射ノズル４へと供給される。そして、噴射ノズル４へと供給された洗浄液は、噴射口１８（図４参照）からヘッドランプに向かって噴射され、ヘッドランプの前面に付着した埃や泥等を洗い流す。
【００４１】
ここで、本実施の形態に係る洗浄装置１においては、チェックバルブ機構３のバルブ８の移動方向をピストンの摺動方向、つまり洗浄液の流れ方向と同方向としたため、バルブ８が図６（ｂ）に示すように開いたときには洗浄液は方向を変えることなくバルブ８を通過してノズル４へと真っ直ぐスムーズに流れる。このため、洗浄液の圧力損失が低く抑えられ、ノズル４からの洗浄液の噴射圧力及び噴射速度の低下が防がれ、洗浄装置１は高い洗浄能力を安定して維持することができる。
【００４２】
而して、本実施の形態では、前述のように噴射ノズル４を、その球面状嵌合部４ａをバルブホルダ１７の円筒部１７その内周に形成された凹球面状軸受１７ｄに三次元方向に回動可能に圧入嵌合したため、該噴射ノズル４の噴射口１８からの洗浄液の噴射方向を実三次元方向に自由に調整することができ、ヘッドランプ表面の全エリアを洗浄液によって確実に洗浄することができる。そして、噴射ノズル４を嵌合保持するノズルホルダ１７をバルブケース７に圧入嵌合したため、該ノズルホルダ１７を触ってもこれが容易に回動して噴射ノズル４の位置が調整位置からずれることがなく、該噴射ノズル４の噴射口１８から洗浄液が目的の方向に確実に噴射される。
【００４３】
又、ノズルホルダ１７をバルブケース７にその圧入方向の軸を中心として回動可能に圧入嵌合したため、該ノズルホルダ１７が噴射ノズル４と共にバルブケース７から容易に外れることがなく、バルブケース１７を噴射ノズル４と共に圧入方向の軸を中心として回動させることによって噴射ノズル４からの洗浄液の噴射方向を微調整することができる。
【００４４】
上述のようにしてヘッドランプの洗浄が終了すると、洗浄装置１への洗浄液の供給が遮断されるため、不図示のピストンがリターンスプリングによってシリンダ２内に引き込まれるため、噴射ノズル４はフロントバンパの裏側の格納位置に戻され、チェックバルブ機構３のバルブ８は図６（ａ）に示すように再び閉じられる。
【００４５】
尚、以上は本発明をヘッドランプの洗浄に供される洗浄装置に適用した形態について説明したが、本発明は、ヘッドランプ以外の他の任意の車両用灯具の洗浄に供される洗浄装置に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【００４６】
１ 洗浄装置
２ シリンダ
３ チェックバルブ機構
４ 噴射ノズル
４ａ 噴射ノズルの球面状嵌合部
５ プラグ
６ ブラケット
７ バルブケース
７Ａ，７Ｂ ケース半体
７ａ ケース半体の円筒部
７ｂ，７ｃ ケース半体の楕円筒部
７ｃ１ 楕円筒部の小径部
７ｃ２ 楕円筒部の大径部
７ｄ ケース半体の角柱部
７ｅ 角柱部の円筒部
７ｆ 円筒部の嵌合突起
８ バルブ
８ａ 弁体
８ｂ 弁軸
９ ガイド
９Ａ ガイドの円筒部
９Ｂ ガイドのフランジ部
９ａ フランジ部の開口部
１０ バルブスプリング
１１ 係合孔
１２ 嵌合溝
１３ バルブケース内の壁
１４ 弁座
１５ 係合爪
１６ 嵌合突起
１７ ノズルホルダ
１７ａ ノズルホルダの円筒部
１７ｂ 円筒部の嵌合溝
１７ｃ ノズルホルダの円筒部
１７ｄ 円筒部の凹球面状軸受
１８ 噴射口
１９ シール部材
２０ 嵌合溝
２１ バルブケース内の壁
２２ 嵌合突起
【特許請求の範囲】
【請求項１】
洗浄液が供給されるシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌挿されたピストンと、該ピストンの先端に取り付けられたバルブケースと、該バルブケースに支持されたノズルホルダと、該ノズルホルダに支持された噴射ノズルを備え、前記噴射ノズルから洗浄液を車両用灯具に向けて噴射する車両用灯具の洗浄装置において、
前記噴射ノズルを球面状嵌合部によって前記ノズルホルダに三次元方向に回動可能に圧入嵌合するとともに、前記ノズルホルダを前記バルブケースにその圧入方向の軸を中心として回動可能に圧入嵌合し、前記ノズルホルダと前記バルブケースの嵌合部分に嵌合突起と嵌合溝を形成したことを特徴とする車両用灯具の洗浄装置。
【請求項１】
洗浄液が供給されるシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌挿されたピストンと、該ピストンの先端に取り付けられたバルブケースと、該バルブケースに支持されたノズルホルダと、該ノズルホルダに支持された噴射ノズルを備え、前記噴射ノズルから洗浄液を車両用灯具に向けて噴射する車両用灯具の洗浄装置において、
前記噴射ノズルを球面状嵌合部によって前記ノズルホルダに三次元方向に回動可能に圧入嵌合するとともに、前記ノズルホルダを前記バルブケースにその圧入方向の軸を中心として回動可能に圧入嵌合し、前記ノズルホルダと前記バルブケースの嵌合部分に嵌合突起と嵌合溝を形成したことを特徴とする車両用灯具の洗浄装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【公開番号】特開２０１１−１４３８３１（Ｐ２０１１−１４３８３１Ａ）
【公開日】平成２３年７月２８日（２０１１．７．２８）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−６４４６（Ｐ２０１０−６４４６）
【出願日】平成２２年１月１５日（２０１０．１．１５）
【出願人】（０００００２３０３）スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年７月２８日（２０１１．７．２８）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年１月１５日（２０１０．１．１５）
【出願人】（０００００２３０３）スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Ｆターム（参考）】
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