説明

車両用灯具の洗浄装置

【課題】噴射ノズルからの洗浄液の吐出圧を高めて車両用灯具の効果的に洗浄し、洗浄後の車両用灯具の光量回復率の向上を図ることができる車両用灯具の洗浄装置を提供すること。
【解決手段】洗浄液が供給されるシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌挿されたピストンと、該ピストンの先端に取り付けられたバルブケースと、該バルブケースに支持されたノズルホルダ17と、該ノズルホルダ17の円筒部17b外周に嵌合保持された噴射ノズル4を備え、該噴射ノズル4に形成された噴射口18から洗浄液を車両用灯具に向けて噴射する車両用灯具の洗浄装置において、ノズルホルダ17の円筒部17bの開口端と噴射ノズル4の天面との距離Lをノズルホルダ17の円筒部17bの外径Dの1/2以下(L/D≦1/2)に設定する。又、噴射ノズル4の噴射口18の開口面積S1をノズルホルダ17の円筒部17bの流路断面積S2以下(S1/S2≦1)に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドランプ等の車両用灯具に洗浄液を噴射してその表面を洗浄するための洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の例えばヘッドランプの前面(レンズ面)が埃や泥等の付着によって汚れると光量不足を招く可能性があるため、必要に応じてヘッドランプに向かって洗浄液を噴射して該ヘッドランプの前面を洗浄するための洗浄装置がフロントバンパの裏側に設置されている。この洗浄装置は、洗浄液が供給されるシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌挿されたピストンと、該ピストンの先端に取り付けられたバルブケースと、該バルブケースに支持されたノズルホルダと、該ノズルホルダに嵌合保持された噴射ノズルを備えており、噴射ノズルから洗浄液が車両用灯具に向けて噴射される(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
斯かる洗浄装置においては、非洗浄時にはノズルがフロントバンパの裏側に格納されており、ヘッドランプを洗浄する際には洗浄液の圧力によって噴射ノズルがフロントバンパに形成された開口部から車両前方へと突出し、洗浄液の圧力が所定値以上に高くなると、チェックバルブが開いて洗浄液が噴射ノズルへと供給され、噴射ノズルに開口する噴射口から洗浄液がヘッドランプに向かって噴射され、ヘッドランプの前面に付着した埃や泥等が除去される。そして、ヘッドランプの洗浄が終了すると、噴射ノズルはリターンスプリング等の付勢手段によってフロントバンパの裏側の格納位置に戻されて格納される。
【0004】
ここで、従来の洗浄装置の噴射ノズルの一例を図9及び図10に示す。
【0005】
即ち、図9は従来の洗浄装置の噴射ノズル部分の平面図、図10は図9のC−C線断面図であり、図9に示すように、バルブケース107の先端部には角柱部107dが形成され、この角柱部107の左右には円筒部107eが角柱部107dに対して軸直角方向に形成されている。そして、左右の円筒部107eにはノズルホルダ117がそれぞれ圧入嵌合されており、各ノズルホルダ117の外端部には円筒部117bが垂直に形成されている。
【0006】
上記各ノズルホルダ117の円筒部117bには噴射ノズル104がそれぞれ圧入によって嵌合保持されるが、各噴射ノズル104は、図10に示すように、樹脂の金型成形によって頂部が塞がれた多角筒状(図示例では正八角筒状)に成形され、その上部外周の一部には周方向に長い噴射口118が形成されている。ここで、噴射ノズル104は、ノズルホルダ117への圧入方向の軸(垂直軸)を中心として水平に回動可能に保持され、該噴射ノズル104に形成された噴射口118の向きを変えることによって洗浄液の噴射方向が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−123347号公報
【特許文献2】特開2005−178568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来の洗浄装置においては、図10に示すように、ノズルホルダ117の円筒部117bの噴射ノズル104への嵌合代が比較的短く、該円筒部117bの上端面から噴射ノズル104の天面までの距離Lが比較的長い(距離Lの円筒部117bの外径Dに対する比率L/D=0.7程度)であったため、噴射ノズル104の天面で衝突した洗浄液が渦を形成し、その圧力損失が大きくなるために該洗浄液の吐出圧力が低下し、車両用灯具の洗浄が十分になされないために洗浄後の車両用灯具の光量回復率が低いという問題があった。
【0009】
又、噴射ノズル104の噴射口118の開口面積S1がノズルホルダ117の円筒部117bの流路断面積S2に対して比較的大きかった(例えば、S1/S2=2.4程度)ため、噴射口118での洗浄液の絞りによる吐出圧の上昇率が低く、車両用灯具の洗浄が十分になされず、同様に洗浄後の車両用灯具の光量回復率が低いという問題があった。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、噴射ノズルからの洗浄液の吐出圧を高めて車両用灯具の効果的に洗浄し、洗浄後の車両用灯具の光量回復率の向上を図ることができる車両用灯具の洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、洗浄液が供給されるシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌挿されたピストンと、該ピストンの先端に取り付けられたバルブケースと、該バルブケースに支持されたノズルホルダと、該ノズルホルダの円筒部外周に嵌合保持された噴射ノズルを備え、該噴射ノズルに形成された噴射口から洗浄液を車両用灯具に向けて噴射する車両用灯具の洗浄装置において、前記ノズルホルダの円筒部の開口端と前記噴射ノズルの天面との距離Lをノズルホルダの円筒部の外径Dの1/2以下(L/D≦1/2)に設定したことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記噴射ノズルの噴射口の開口面積S1を前記ノズルホルダの円筒部の流路断面積S2以下(S1/S2≦1)に設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、ノズルホルダの円筒部の噴射ノズルへの嵌合代を従来よりも長くし、ノズルホルダの円筒部の開口端と噴射ノズルの天面との距離Lをノズルホルダの円筒部の外径Dの1/2以下(L/D≦1/2)に設定したため、ノズルホルダの円筒部の開口端と噴射ノズルの天面とが近づき、噴射ノズルの天面に衝突して流れの向きを変えた洗浄液がノズルホルダの円筒部の開口端面に再び衝突して渦の発生が抑制される。このため、洗浄液の噴射ノズル内での圧力損失が低く抑えられて吐出圧力の低下が防がれ、高圧の洗浄液の噴射によって車両用灯具の洗浄が十分になされ、洗浄後の車両用灯具の光量回復率が高く保たれる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、噴射ノズルの噴射口の開口面積S1を従来よりも絞ってノズルホルダの円筒部の流路断面積S2以下(S1/S2≦1)に設定したため、噴射口での洗浄液の絞りによる吐出圧の上昇率が高くなり、高圧の洗浄液の噴射によって車両用灯具の洗浄が十分になされ、洗浄後の車両用灯具の光量回復率が高く保たれる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る洗浄装置の側面図である。
【図2】本発明に係る洗浄装置の平面図である。
【図3】本発明に係る洗浄装置の噴射ノズル部分の平面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】本発明に係る洗浄装置要部の分解斜視図である。
【図6】本発明に係る洗浄装置の噴射ノズル部分の正断面図である。
【図7】(a),(b)は本発明に係る洗浄装置のチェックバルブ機構部及び噴射ノズル部分の平断面図である。
【図8】図7(a)のB−B線断面図である。
【図9】従来の洗浄装置の噴射ノズル部分の平面図である。
【図10】図9のC−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は本発明に係る洗浄装置の側面図、図2は同洗浄装置の平面図、図3は同洗浄装置の噴射ノズル部分の平面図、図4は図3のA−A線断面図、図5は同洗浄装置要部の分解斜視図、図6は同洗浄装置の噴射ノズル部分の正断面図、図7(a),(b)は同洗浄装置のチェックバルブ機構部及び噴射ノズル部分の平断面図で、図8は図7(a)のB−B線断面図である。
【0018】
本実施の形態に係る洗浄装置1は、車両の不図示のヘッドランプの前面(レンズ面)に向かって洗浄液を噴射して該前面を洗浄するための装置であって、不図示のフロントバンパの裏側に配置されている。尚、洗浄装置1は左右のヘッドランプに対してそれぞれ設置されているが、その構成及び作用は左右で同じであるため、以下、一方の洗浄装置1についてのみ説明する。
【0019】
図1及び図2に示す洗浄装置1は、円筒状のシリンダ2の内部に不図示のピストンを摺動可能に嵌挿し、該ピストンの先端部にチェックバルブ機構3を介して左右一対の噴射ノズル4を取り付けて構成されている。
【0020】
上記シリンダ2は、不図示のウォッシャタンクから洗浄液の供給を受けるものであって、その後端にはプラグ5が設けられており、シリンダ2の内部はプラグ5に接続された不図示の配管を介してウォッシャタンクに連通している。そして、シリンダ2の前端部外周にはブラケット6が取り付けられており、洗浄装置1はブラケット6を介して不図示のフロントバンパの裏側に取り付けられている。尚、図示しないが、シリンダ2とその内部に摺動可能に嵌挿されたピストンとの間には、ピストンをシリンダ2内に引き込む方向に付勢する付勢手段としてのリターンスプリングが介装されている。
【0021】
次に、前記チェックバルブ機構3と噴射ノズル4の構成の詳細を図3〜図8に基づいて説明する。
【0022】
チェックバルブ機構3は、図5及び図7に示すように、バルブケース7の内部にバルブ8と、該バルブ8を摺動可能に保持するバルブガイド9と、バルブ8を閉じ方向に付勢するバネ10を収容して構成されており、全体の横断面形状が横方向に扁平な楕円状とされている。
【0023】
上記バルブケース7は前後に2分割されたケース半体7A, 7B同士を結合一体化して構成されており、一方のケース半体7Aは、円筒部7aと扁平な楕円筒部7bとを組み合わせて構成されており、楕円筒部7bの全周4箇所には矩形状の係合孔11(図5には上の2つのみ図示)が形成され、楕円筒部7bの開口端面の一部(上部)にはV字状の嵌合溝12が形成されている。そして、図7に示すように、ケース半体7Aの円筒部7aと楕円筒部7bとを仕切る壁13の中心部には円筒状の弁座14が形成されている。
【0024】
又、他方のケース半体7Bは、扁平な楕円筒部7cとその先端に連なる角柱部7dとで構成されており、楕円筒部7cは、外径が小さくて薄肉の小径部7c1と外径が大きくて厚肉の大径部7c2とで構成されている。そして、楕円筒部7cの小径部7c1の外周の4箇所(他方のケース半体7Aの楕円筒部7bに形成された係合孔11に対応する箇所)には係合爪15(図5には上の2つのみ図示)が突設されている。又、楕円筒部7cの大径部7c2の小径部7c1との境(段差部)の一部(他方のケース半体7Aの楕円筒部7bに形成された嵌合溝12に対応する部分)にはV字状の嵌合突起16が形成されている。
【0025】
更に、ケース半体7Bの先端部に形成された角柱部7dの左右には円筒部7eが角柱部7dに対して軸直角方向に形成されており、これらの円筒部7eにはノズルホルダ17がそれぞれ圧入嵌合されている。ここで、図6に示すように、各ノズルホルダ17の基端部には球面状嵌合部17aが形成され、この球面状嵌合部17aが嵌合するバルブケース7の円筒部7eの内径部は凹球面状軸受7fが形成されており、この凹球面状軸受7fにノズルホルダ17の球面状嵌合部17aが圧入嵌合されることによってノズルホルダ17はバルブケース7に対して三次元方向(全方向)に回動可能に保持されている。
【0026】
又、図6に示すように、各ノズルホルダ17の外端部には円筒部17bが垂直に形成されており、この円筒部17bには噴射ノズル4が上方から圧入嵌合されるが、図4に示すように、噴射ノズル4の円孔状の嵌合孔4aの内周には嵌合凹部4bが形成されている。そして、各ノズルホルダ17の円筒部17bの外周には嵌合凸部17cが形成されており、噴射ノズル4の嵌合孔4aをノズルホルダ17の円筒部17bに上から嵌め込み、これを下方へ押圧すると、図4に示すようにノズルホルダ17の円筒部17bの外周に形成された嵌合凸部17cが噴射ノズル4の嵌合孔4aに形成された嵌合凹部4bに圧入嵌合するため、噴射ノズル4がノズルホルダ17に嵌合保持される。
【0027】
ところで、各噴射ノズル4は、樹脂の金型成型によって図4に示すように頂部が塞がれた八角筒状に一体成型されており、その上部外周には横方向に細長いスリット状の噴射口18が形成されている。ここで、噴射口18は不図示のヘッドランプの前面に向けて斜め上方に開口しているが、本実施の形態では、図3〜図5に示すように、噴射ノズル4には、噴射口18の上縁と左右の側縁に沿う飛散防止リブ4cが一体に形成されている。
【0028】
又、本実施の形態では、図3〜図6に示すように、各噴射ノズル4の頂部には八角筒状の補強リブ4Aがそれぞれ一体に立設されており、各補強リブ4Aには正八角形穴である嵌合穴4dが形成されている。ここで、噴射ノズル4は、ノズルホルダ17への圧入方向の軸(垂直軸)を中心として水平に回動可能に保持され、該噴射ノズル4に形成された噴射口18の向きを変えることによって洗浄液の噴射方向が調整される。
【0029】
ここで、本実施の形態では、図4に示すように、ノズルホルダ17の円筒部17bの噴射ノズル4の嵌合孔4aへの嵌合代を従来よりも長くし、ノズルホルダ17の円筒部17bの開口端と噴射ノズル4の天面との距離Lをノズルホルダ17の円筒部17bの外径Dの1/2以下(L/D≦1/2)に設定している。
【0030】
又、噴射ノズル4の噴射口18の開口面積S1を従来よりも絞ってノズルホルダ17の円筒部17bの流路断面積S2以下(S1/S2≦1)に設定している。
【0031】
而して、図5に示す一方のケース半体7Aの楕円筒部7bを他方のケース半体7Bの楕円筒部7cの小径部7c1の外周に嵌め込み、小径部7c1の外周に形成された前記係合爪15を楕円筒部7cに形成された前記係合孔11に係合させれば、ケース半体7B側の嵌合突起16がケース半体7A側の嵌合溝12に嵌合し、2つのケース半体7A,7B同士が位置決めされつつ結合されて1つの偏平な楕円筒状のバルブケース7が組み立てられる。
【0032】
前記バルブ8は、図5に示すように、円板状の弁体8aと該弁体8aの中心から軸直角方向に一体に延びる弁軸8bとで構成されており、図7に示すように、弁体8aの弁座14に着座する部分にはリング状のシール部材19が組み付けられている。
【0033】
前記バルブガイド9は、小径の円筒部9Aとその先端に一体に形成された楕円板状のフランジ部9Bとで構成されており、図8に示すように、バルブガイド9のフランジ部9Bの円筒部9Aを境としてこれの左右には前記噴射ノズル4に連通する三日月状の開口部9aが形成されている。
【0034】
そして、図7に示すように、バルブガイド9の円筒部9A内には前記バルブ8の三角柱状の弁軸8bが摺動可能に嵌合しており、従って、バルブ8はバルブケース7内の中心部に前後方向(図7の左右方向)に移動可能に支持されており、該バルブ8は、前記バネ10によって閉じ方向(弁座14に着座する方向)に付勢されている。ここで、バネ10は、バルブガイド9の円筒部9Aの外周に挿通され、バルブ8の弁体8aとバルブガイド9のフランジ部9B間に縮装されている。尚、バネ10のバネ定数は前記リターンスプリング(不図示)のバネ定数よりも大きく設定されている。
【0035】
而して、バルブガイド9はスプリングガイドとしての機能も備えており、バルブケース7内においては、バルブガイド9は、図7に示すようにバネ10の反力によってバルブケース7内の壁に押圧されて位置が固定されている。
【0036】
以上のように構成された洗浄装置1において、ヘッドランプの洗浄が行われない場合には、不図示のピストンはリターンスプリングの付勢力によって図1及び図2に示すようにシリンダ2内に引き込まれており、このとき、チェックバルブ機構3のバルブ8は図7(a)に示すようにバネ10によって弁座14に押圧されて閉じ状態にある。又、噴射ノズル4は不図示のフロントバンパの裏側に格納されている。
【0037】
而して、洗浄装置1によってヘッドランプの洗浄を行う場合には、不図示のウォッシャタンクから不図示の配管を経て高圧の洗浄液が洗浄装置1のシリンダ2へと供給される。すると、不図示のピストンは洗浄液の圧力によってシリンダ2内を前方へと摺動し、その先端に設けられた噴射ノズル4をフロントバンパに形成された開口部(不図示)から車両前方へと押し出す。この場合、前述のようにバネ10のバネ定数はリターンスプリングのバネ定数よりも大きく設定されているため、チェックバルブ機構3のバルブ8は図7(a)に示すように閉じたままであって、洗浄液は噴射ノズル4には供給されない。
【0038】
上述のようにピストンが洗浄液の圧力によって前進した後、洗浄液の圧力が所定値を超えて上昇し、チェックバルブ機構3のバルブ8に作用する洗浄液の圧力に基づく力がバネ10の付勢力よりも大きくなると、バルブ8はその弁体8aが図7(b)に示すようにバルブガイド9に沿って前方へと移動して弁座14から離れるため、該バルブ8が開状態となって洗浄液は図7(b)に矢印にて示すようにバルブケース7内を前方に向かって流れ、バルブガイド9のフランジ部9Bに形成された左右の開口部9aを通過して左右に分岐し、左右のノズルホルダ17から各噴射ノズル4へと供給される。そして、噴射ノズル4へと供給された洗浄液は、噴射口18(図4参照)からヘッドランプに向かって噴射され、ヘッドランプの前面に付着した埃や泥等を洗い流す。
【0039】
而して、以上のようにしてヘッドランプの洗浄が終了すると、不図示のピストンがリターンスプリングによってシリンダ2内に引き込まれるため、噴射ノズル4はフロントバンパの裏側の格納位置に戻され、チェックバルブ機構3のバルブ8は図7(a)に示すように再び閉じられる。
【0040】
以上において、本実施の形態では、図4に示すように、ノズルホルダ17の円筒部17bの噴射ノズル4の嵌合孔4aへの嵌合代を従来よりも長くし、ノズルホルダ17の円筒部17bの開口端と噴射ノズル4の天面との距離Lをノズルホルダ17の円筒部17bの外径Dの1/2以下(L/D≦1/2)に設定したため、ノズルホルダ17の円筒部17bの開口端と噴射ノズル4の天面とが近づき、噴射ノズル4の天面に衝突して流れの向きを変えた洗浄液がノズルホルダ17の円筒部17bの開口端面に再び衝突して渦の発生が抑制される。このため、洗浄液の噴射ノズル4内での圧力損失が低く抑えられて吐出圧力の低下が防がれ、高圧の洗浄液の噴射によってヘッドランプの洗浄が十分になされ、洗浄後のヘッドランプの光量回復率が高く保たれる。
【0041】
又、本実施の形態では、噴射ノズル4の噴射口18の開口面積S1を従来よりも絞ってノズルホルダ17の円筒部17bの流路断面積S2以下(S1/S2≦1)に設定したため、噴射口18での洗浄液の絞りによる吐出圧の上昇率が高くなり、高圧の洗浄液の噴射によってヘッドランプの洗浄が十分になされ、洗浄後のヘッドランプの光量回復率が高く保たれる。
【0042】
ここで、本発明に係る洗浄装置1と従来の洗浄装置におけるL/DとS1/S2及び洗浄後の光量回復率との比較を下表に示す。
【表1】

上記結果から明らかなように、本発明によれば、洗浄後のヘッドランプの光量回復率の向上を図ることができる。
【0043】
その他、本実施の形態では、各噴射ノズル4の頂部にリング状の補強リブ4Aをそれぞれ一体に突設したため、各噴射ノズル4の頂部の剛性が補強リブ4Aによって高められ、噴射ノズル4をその頂部を押圧してノズルホルダ17に圧入する際に該噴射ノズル4の頂部の変形が防がれ、噴射ノズル4に形成された噴射口18の開口面積が変化しないために該噴射口18からの洗浄液の噴射が安定的になされる。
【0044】
又、本実施の形態では、噴射ノズル4を回して噴射口18からの洗浄液の噴射方向を車種毎に調整する場合、該噴射ノズル4の頂部に突設された補強用リブ4Aの嵌合穴4dにレンチ等の不図示の工具の先端を嵌め込んでこれを回せば、ノズルホルダ17に圧入されている噴射ノズル4を小さな力で簡単に回すことができ、洗浄液の噴射方向の車種毎の調整を作業性良く効率的に行うことができる。
【0045】
尚、以上は本発明をヘッドランプの洗浄に供される洗浄装置に適用した形態について説明したが、本発明は、ヘッドランプ以外の他の任意の車両用灯具の洗浄に供される洗浄装置に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
1 洗浄装置
2 シリンダ
3 チェックバルブ機構
4 噴射ノズル
4A 噴射ノズルの補強リブ
4a 噴射ノズルの嵌合孔
4b 噴射ノズルの嵌合凹部
4c 噴射ノズルの飛散防止リブ
4d 補強リブの嵌合穴
5 プラグ
6 ブラケット
7 バルブケース
7A,7B ケース半体
7a ケース半体の円筒部
7b,7c ケース半体の楕円筒部
7c1 楕円筒部の小径部
7c2 楕円筒部の大径部
7d ケース半体の角柱部
7e 角柱部の円筒部
7f 円筒部の凹球面状軸受
8 バルブ
8a 弁体
8b 弁軸
9 バルブガイド
9A バルブガイドの円筒部
9B バルブガイドのフランジ部
9a フランジ部の開口部
10 バネ
11 係合孔
12 嵌合溝
13 バルブケース内の壁
14 弁座
15 係合爪
16 嵌合突起
17 ノズルホルダ
17a ノズルホルダの球面状嵌合部
17b ノズルホルダの円筒部
17c ノズルホルダの嵌合凸部
18 噴射口
19 シール部材
D ノズルホルダの円筒部の外径
L ノズルホルダの円筒部の開口端と噴射ノズルの天面との距離
S1 噴射ノズルの噴射口の開口面積
S2 ノズルホルダの円筒部の流路断面積


【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液が供給されるシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌挿されたピストンと、該ピストンの先端に取り付けられたバルブケースと、該バルブケースに支持されたノズルホルダと、該ノズルホルダの円筒部外周に嵌合保持された噴射ノズルを備え、該噴射ノズルに形成された噴射口から洗浄液を車両用灯具に向けて噴射する車両用灯具の洗浄装置において、
前記ノズルホルダの円筒部の開口端と前記噴射ノズルの天面との距離Lをノズルホルダの円筒部の外径Dの1/2以下(L/D≦1/2)に設定したことを特徴とする車両用灯具の洗浄装置。
【請求項2】
前記噴射ノズルの噴射口の開口面積S1を前記ノズルホルダの円筒部の流路断面積S2以下(S1/S2≦1)に設定したことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具の洗浄装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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