説明

車両用灯具

【課題】基板150から発生する熱を基板支持部材160を介して効率よく放熱させることができる。
【解決手段】半導体発光素子140を光源とする車両用灯具100であって、灯具前方側が開口したランプボディ110および前記開口を覆うカバー120,130により形成される灯室内に配され、前記ランプボディ110に固定されるとともに前記半導体発光素子140が搭載された基板150を支持する基板支持部材160と、前記灯室内における前記基板150の灯具前方側に配され、灯具後方側に設けられた突出部185の先端部で前記基板150を前記基板支持部材160側に押しつける光学部材180と、を備える車両用灯具100を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用灯具に関する。より具体的には、特に灯具前方側が開口したランプボディと当該開口を覆うように取り付けられたカバーとで形成された灯室内に光源である半導体発光素子が配された車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光効率と電力消費特性に優れたLED(Light Emitting Diode)に代表される半導体発光素子を光源に用いた車両用灯具が知られている(例えば特許文献1を参照)。このような車両用灯具は、LEDからの光を直接あるいはリフレクタで反射させることにより灯具前方へ向けて出射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−323839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような車両用灯具においては、光源である半導体発光素子および半導体発光素子の点灯回路から発生する熱の放熱対策が重要となる。したがって、例えば、半導体発光素子や点灯回路が配された基板をクリップ等を用いてランプボディの一部に当接させることで基板の熱をランプボディを介して放熱させる方法が採られる。
【0005】
しかしながら、かかる方法では、クリップ等による押圧力だけでは基板をランプボディに十分に当接させることができず、結果として基板からの熱を効率よく放熱させることができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、半導体発光素子を光源とする車両用灯具であって、少なくとも灯具前方側が開口したランプボディおよび前記開口を覆うカバーにより形成される灯室内に配され、前記ランプボディに固定されるとともに前記半導体発光素子が搭載された基板を支持する基板支持部材と、前記灯室内における前記基板の灯具前方側に配され、灯具後方側に設けられた突出部の先端部で前記基板を前記基板支持部材側に押しつける光学部材と、を備えることを特徴とする車両用灯具を提供する。
【0007】
このような車両用灯具によれば、基板を基板支持部材に対してより密着させることができるので、基板から発生する熱を基板支持部材を介して効率よく放熱させることができる。
【0008】
また、上記車両用灯具において、前記光学部材は前記基板支持部材に固定されており、前記基板と前記基板支持部材との間には可撓性の伝熱シートが配されることが好ましい。
【0009】
これにより、基板の基板支持部材に対する密着性がさらに向上し、基板から発生する熱をより効率よく放熱させることができる。
【0010】
また、上記車両用灯具において、前記基板には、前記半導体発光素子の点灯回路が設けられることが好ましい。
【0011】
これにより、点灯回路から発生する熱についても基板支持部材を介して効率よく放熱させることができる。
【0012】
また、上記車両用灯具において、前記基板支持部材および前記ランプボディは金属からなり、前記基板支持部材の外縁部は、前記ランプボディの内面と当接することが好ましい。
【0013】
これにより、基板支持部材とランプボディとの接触面積が大きくなり、放熱効率がより向上する。
【0014】
また、上記車両用灯具において、前記基板支持部材は、前記ランプボディの略中央部に配されて前記灯室を前後に仕切る伝熱性の板状部材であることが好ましい。
【0015】
これにより、基板から発生して基板支持部材へ伝わった熱を基板支持部材の灯具後方側の面から灯室空間へ放熱させることができるので、放熱効率がより向上する。
【0016】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用灯具100の正面図である。
【図2】車両用灯具100の背面図である。
【図3】後部カバー130を取り外した状態での車両用灯具100の背面図である。
【図4】図1に示すA−A断面における断面図である。
【図5】基板150における一のLED140近傍を拡大した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に基づいて本発明の一実施形態について説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態における特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用灯具100の正面図である。また、図2は、車両用灯具100の背面図である。また、図3は、後部カバー130を取り外した状態での車両用灯具100の背面図である。また、図4は、図1に示すA−A断面における断面図である。また、図5は、基板150における一のLED140近傍を拡大した平面図である。
【0020】
本実施形態の車両用灯具100は、灯具前方側および後方側が開口したランプボディ110と、ランプボディ110の前方側の開口を覆うように取り付けられた前部カバー120と、後方側の開口を覆うように取り付けられた後部カバー130とにより外装が構成されている。そして、ランプボディ110、前部カバー120、および後部カバー130により形成される灯室内には、基板150、ベース160、伝熱シート170、およびリフレクタ180が配される。
【0021】
なお、車両用灯具100におけるベース160は、本発明の基板支持部材の一例であり、リフレクタ180は、本発明の光学部材の一例である。また、LED140は、本発明の半導体発光素子の一例である。
【0022】
また、本明細書において、「灯具前方」あるいは「前方」とは、例えば図4における左方向であり、車両用灯具10における後面カバー800側から前面カバー100側へと向かう方向を意味する。また、「灯具後方」あるいは「後方」とは、上記灯具前方と反対の方向(例えば図4における右方向)を意味する。また、「灯具側方」とは、灯具前方(灯具後方)に対して直交する方向である。
【0023】
ランプボディ110は、断面が略方形である筒状の金属部材であり、例えばアルミダイキャストで形成されている。ランプボディ110の一端には、外周全体にわたって灯具前方側から灯具後方側に切り込まれた溝が形成された前方側フランジ部111が設けられており、他端には、4つのネジ穴113が形成された後方側フランジ部112が設けられている。
【0024】
また、ランプボディ110の内面には、内側に突出する平板上のベース取付部114が設けられている。本例では、ベース取付部114は、ランプボディ110の略中央部に設けられており、ベース160が2本のネジ203で取り付けられている。
【0025】
前部カバー120は、透明あるいは半透明の樹脂により形成され、ドーム形状を成す本体部の外周縁の先端部分がランプボディ110の前方側フランジ部111に形成された溝に挿通されることによりランプボディ110に固定されている。
【0026】
後部カバー130は、樹脂あるいは金属により形成されており、略円形の本体部と、当該本体部の外周全体にわたって灯具側方に延びる鍔状のフランジ部131とを有する。そして、フランジ部131には、後部カバー130がランプボディ110に取り付けられた際にネジ穴113と対応する位置に貫通穴(不図示)が形成されている。後部カバー130は、フランジ部131をランプボディ110の後方側フランジ部112に当接させるように取り付けて上記貫通穴とネジ穴113のそれぞれにネジ201を挿通することにより、ランプボディ110に固定される。
【0027】
ベース160は、ランプボディ110内部の略中央部に灯室を前後に仕切るように配される板状部材であり、前述のように2本のネジ203でベース取付部114に取り付けられている。そして、ベース160の灯具後方側の面の一部とベース取付部114の灯具前方側の面は互いに当接している。また、ベース160の形状は、ランプボディ110における灯具前後方向と直交する断面形状と略一致する。したがって、ベース160の外縁部は、ランプボディ110の内面と当接している。
【0028】
また、本例では、ベース160は、アルミニウム合金で形成されている。なお、ベース160の材料には、伝熱性に優れるものであれば他の金属等を用いてもよい。
【0029】
基板150は、略矩形の板状部材である。この基板150は、例えば結晶シリコンなどの半導体材料により形成され、ベース160における灯具前方側の面上に伝熱シート170を挟んで配されている。この伝熱シート170は、上記のように基板150とベース160との間に配されるシート材である。伝熱シート170は、例えば高い熱伝導率を有するシリコンラバーなどの可撓性材料により形成される。
【0030】
基板150の後面には、6個のLED140が配されている。本例では、それぞれのLED140は、基板150上における互いに離れた位置に固定されており、灯具前方側に灯具前後方向と直交する発光面を有する。そして、LED140の点灯時には、この発光面から灯具前後方向と略平行な光軸を中心とする光が灯具前方へ出射する。
【0031】
また、それぞれのLED140の近傍(図5に「P2」を付して示す位置)には、LED140を点灯させるための回路が形成されている。図5には上記点灯回路の詳細な構成を省略して示すが、当該回路には抵抗および整流ダイオードなどが含まれる。
【0032】
リフレクタ180は、例えば樹脂により一体に形成され、前面には反射面182が、後面にはボス183およびリブ185がそれぞれ設けられている。反射面182は、灯具後方側へ略放物面状に凹んだ凹面であり、図1に示すように、6個のLED140の各々に対応して設けられている。
【0033】
また、各反射面182の中央には貫通穴181が設けられており、この貫通穴181を通じて対応するLED140の発光面が露出している。それぞれの反射面182は、LED140からの光を集光させつつ灯具前方(前部カバー120側)へと反射する。
【0034】
また、リフレクタ180におけるボス183に形成されたネジ穴184と、ベース160におけるネジ穴184と対応する位置に形成された貫通穴(不図示)とにネジ202が挿通されており、これにより、リフレクタ180はベース160に固定されている。
【0035】
リブ185は、リフレクタ180の後面上における図1に破線で囲んで示した位置に設けられている。本例では、リフレクタ180の後面上には、LED140を囲むように複数のリブ185が設けられている。それぞれのリブ185は灯具後方側に突出する突起であり、その先端部は基板150の前面と当接して当該基板150をベース160側に押しつけている。ここで、リブ185の先端部が基板150の前面と当接する位置は、例えば図5において「P1」を付して破線で囲んで示した位置である。
【0036】
このようにリブ185で基板150をベース160側に押しつけることにより、クリップ等で基板150をベース160に固定する場合と比べて、より大きな押圧力で基板150を押しつけることができるので、ベース160により密着させることができる。ゆえに、LED140や基板150上に形成された点灯回路から発生する熱を、ベース160を介して効率よく放熱させることができる。なお、リブ185に加えて、基板150をベース160に押さえつけるクリップ等を更に設けてもよい。
【0037】
また、本例のように基板150とベース160との間に可撓性の伝熱シート170を配することにより、伝熱シート170を介して基板150をベース160により密着させることができる。ゆえに、LED140や基板150上に形成された点灯回路から発生する熱を伝熱シート170およびベース160を介して効率よく外部に放熱させることができる。
【0038】
また、本例では、ベース160およびランプボディ110が熱伝導性に優れる金属で形成されており、さらには、ベース160の外縁部がランプボディ110の内面と当接しているので、基板150からベース160へと伝わった熱をランプボディ110を介して効率よく外部に放熱させることができる。
【0039】
また、本例では、ベース160が灯室を前後に仕切るように配されていることから、図4に示すようにベース160と後部カバー130との間にも空間がある。したがって、基板150からベース160へと伝わった熱を後方側の上記空間にも放熱させることができる。
【0040】
ところで、リフレクタ180の後面におけるリブ185の配置は本例に限られない。例えば、リブ185の先端部が基板150の前面におけるLED140により近い位置(例えば図5において「P3」を付して破線で囲んで示した位置)に当接するようにリブ185を配置してもよい。これにより、基板150に反りが生じている場合でも、リブ185による押圧力によって、少なくともLED140近傍における基板150の反りが確実に修正されるので、LED140毎の光軸方向のばらつきを抑えることができる。
【0041】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることができることは当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0042】
100…車両用灯具
110…ランプボディ
111…前方側フランジ部
112…後方側フランジ部
113…ネジ穴
114…ベース取付部
120…前部カバー
130…後部カバー
131…フランジ部
140…LED(半導体発光素子)
150…基板
160…ベース(基板支持部材)
170…伝熱シート
180…リフレクタ(光学部材)
181…貫通穴
182…反射面
183…ボス
184…ネジ穴
185…リブ(突出部)
201、202、203…ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体発光素子を光源とする車両用灯具であって、
少なくとも灯具前方側が開口したランプボディおよび前記開口を覆うカバーにより形成される灯室内に配され、前記ランプボディに固定されるとともに前記半導体発光素子が搭載された基板を支持する基板支持部材と、
前記灯室内における前記基板の灯具前方側に配され、灯具後方側に設けられた突出部の先端部で前記基板を前記基板支持部材側に押しつける光学部材と、
を備える車両用灯具。
【請求項2】
前記光学部材は前記基板支持部材に固定されており、前記基板と前記基板支持部材との間には可撓性の伝熱シートが配されることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記基板には、前記半導体発光素子の点灯回路が設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記基板支持部材および前記ランプボディは金属からなり、前記基板支持部材の外縁部は、前記ランプボディの内面と当接することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記基板支持部材は、前記ランプボディの略中央部に配されて前記灯室を前後に仕切る伝熱性の板状部材であることを特徴とする請求項4に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−119094(P2011−119094A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274412(P2009−274412)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】