説明

車両用照明システム

【課題】車両用照明システムにおいて、照明効率を向上する。
【解決手段】前後方向に長い略箱体の車両10の車内側方上部に荷棚2が設けられ、車両
用照明システムは、車内天井面5に複数個の照明器具1が前後方向に分散して設けられて
成る。照明器具1の各々は、長尺形状を有し、その長手方向が車両の前後方向に対して略
直交するように、車内天井面5の左右略中心位置に設けられている。これにより、照明器
具1から荷棚2の前縁部21方向の水平面に対する角度θが小さくなり、照明器具1から
の照明光L1が、車内側方上部に設けられた荷棚2に遮られる割合が減る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の客室照明のための車両用照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から鉄道車両等の車両において、客室照明のため、直管蛍光ランプを有する照明器
具から成る車両用照明システムが一般的に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
図3はこの種の車両用照明システムが用いられている車両110の客室を進行方向に向か
って見た内観を示す。この車両110は、鉄道車両の旅客車であり、車内側方上部に荷棚
102が、その下方に座席103が設けられており、左右両側の座席103の間に通路1
04がある。照明器具101は、長尺形状を有し、長手方向が車両110の前後方向(進
行方向)と略平行にされ、車内の前後一方の端から他方の端まで車内天井面105に配置
されている。この照明器具101は、通路104の上方の車内天井面105に設けられた
空調装置及び車内放送設備106等との干渉を避け、車内天井面105の左右中心付近を
外して、その両側の車内天井面105に配置される。
【0003】
図4は上述した車両用照明システムによる車内の明るさ分布を示す。車両用照明システ
ムは、床面から所定高さ(例えば、850mm)の水平面における所要照度(例えば、2
00ルクス)を満たすように設計される。照明器具101が車内天井面105の左右中心
付近を外した車内天井面105に配置されることから、照明器具101の光源111から
荷棚102の前縁部121への方向が水平面に対して成す角度ψは、照明器具101が車
内側方に偏倚しているほど大きくなる。水平面に対してψ以下の角度で照明器具101か
ら照射された照明光L101は、荷棚102に入射するため、角度ψが大きくなることに
より、荷棚102及びその上に置かれた荷物によって遮られる範囲が増大することになる
。また、照明器具101は、その偏倚によって荷棚2上方に近付くため、照明器具101
から照射されて車内天井面105で下方に反射される間接光も荷棚102によって遮られ
易くなる。このため、荷棚102下部や座席103の座面(斜線を付した部分107)が
暗くなる。また、荷棚102下部において所要照度を満たすために通路104付近が必要
以上に明るくなり、車内空間全体の照明効率が低下する。
【0004】
図5は車両用照明システムと空調吹き出し口108の位置関係を示す。空調吹き出し口
108は、主に冷気の吹き出しに用いられるため、車内天井面105に設けられ、また、
前後方向に長い車内をできるだけ均一な室内温度にするため、長尺状の開口形状を有し、
長手方向が車両110の前後方向になるように配置される。このため、照明器具101は
、空調吹き出し口108と平行することとなり、空調吹き出し口108からの吹き出し風
181を受け易く、その影響で照明器具101の光源111や反射部材112が埃等によ
って汚れ、照明効率が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−32221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するものであり、車両用照明システムにおいて、照明効率を
向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、前後方向に長い略箱体の車両の車内側方
上部に荷棚が設けられ、車内天井面に複数個の照明器具が前後方向に分散して設けられて
成る車両用照明システムであって、前記照明器具の各々は、長尺形状を有し、その長手方
向が車両の前後方向に対して略直交するように、車内天井面の左右略中心位置に設けられ
ているものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両用照明システムにおいて、車内天井面に長尺
状の空調吹き出し口を備え、この空調吹き出し口は、その長手方向が前記照明器具の長手
方向と直交し、かつ照明器具を挟んで左右両側方に設けられているものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、照明器具が車内天井面の左右略中心位置に設けられているこ
とから、照明器具から荷棚の前縁部方向の水平面に対する角度が小さくなり、照明器具か
らの照明光が荷棚に遮られる割合が減るため、照明効率が向上する。
【0010】
請求項2の発明によれば、照明器具は、その長手方向が空調吹き出し口からの吹き出し
風の方向と直交せず、吹き出し風を受ける程度が減少するので、吹き出し風の影響による
埃等の汚れが防止され、照明効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用照明システムが設けられた車両の内観図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る車両用照明システムが設けられた車両の内観図。
【図3】従来の車両用照明システムが設けられた車両の内観図。
【図4】同照明システムによる明るさ分布を示す車両の内観図。
【図5】同照明システムが設けられた空調吹き出し口を備える車両の内観図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る車両用照明システムを図1を参照して説明する。図1は
本実施形態の車両用照明システムの車内配置を車両10の前後方向に見た図である。この
車両用照明システムは、鉄道車両等の前後方向に長い略箱体の車両10の客室に設けられ
、複数個の照明器具1を備える。照明器具1の各々は、車内天井面5に車両10の前後方
向に分散して設けられている。その車内には、乗客の荷物が載置される荷棚2が、車内の
左右の側方上部に設けられている。荷棚2の下方には、座席3が設けられており、左右両
側の座席3の間に通路4がある。照明器具1の各々は、長尺形状を有し、その長手方向が
車両10の前後方向に対して略直交するように、車内天井面5の左右略中心位置に設けら
れている。
【0013】
照明器具1は、光源11と、光源11を保持して点灯させる照明器具本体12とを有す
る。光源11は、例えば、直管蛍光ランプであり、複数のLEDが直線状に配列されたL
EDモジュールであってもよい。複数個の照明器具1は、車内の前後一方の端から他方の
端まで車内天井面5に略等間隔に配置されている。車内天井面5の左右中央付近には、空
調装置及び車内放送設備6等が設けられている。なお、荷棚2及び座席3は、一般的には
車内の左右両側に設けられるが、例えば車椅子用スペースを確保する等のため、左右いず
れか片側に設けられていてもよい。
【0014】
上記のように構成された車両用照明システムにおいては、照明器具1は、長手方向が車
両10の前後方向に対して略直交するように分散して設けられるので、車内天井面5の左
右中心位置に配置しても、左右中心付近にある空調装置及び車内放送設備6等との干渉が
避けられる。照明器具1の光源11の中心11C付近から荷棚2の前縁部21への方向が
水平面に対して成す角度θは、照明器具1を車内天井面5の左右中心位置に配置すること
により、左右中心付近を外した配置の場合と比較して小さくなる。照明光L1がこのよう
な角度で照射されることにより、車内両側方上部に設けられた荷棚2に遮られる割合が減
るため、車両用照明システムの照明効率が向上する。
【0015】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る車両用照明システムを図2を参照して説明する。図2は
本実施形態の車両用照明システムの車内配置を車両10の前後方向に見た図である。本実
施形態の車両用照明システム構成及び車内配置は、第1の実施形態と同様である。この車
両用照明システムが設けられる車両10は、車内天井面5に長尺状の複数個の空調吹き出
し口8を車両10の前後方向に分散又は略連続して備える。空調吹き出し口8の各々は、
その長手方向が照明器具1の長手方向と直交し、かつ照明器具1を挟んで左右両側方に設
けられている。
【0016】
本実施形態の車両用照明システムにおいては、照明器具1は、その長手方向が空調吹き
出し口8の長手方向と直交するので、空調吹き出し口8からの吹き出し風81の方向とは
直交せず、受風面積が小さくなって吹き出し風81を受ける程度が減少する。このため、
吹き出し風81の影響による埃等の汚れが防止され、照明効率が向上する。
【0017】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種
々の変形が可能である。例えば、本発明の車両用照明システムは、バスに設けてもよい。
また、座席3は、上記の実施形態ではロングシートの場合について図示したが、クロスシ
ートであってもよく、その場合、クロスシートの前後間隔に対応する間隔で複数の照明器
具1を前後方向に分散して設けてもよい。
【符号の説明】
【0018】
1 照明器具
2 荷棚
5 車内天井面
8 空調吹き出し口
10 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に長い略箱体の車両の車内側方上部に荷棚が設けられ、車内天井面に複数個の
照明器具が前後方向に分散して設けられて成る車両用照明システムであって、
前記照明器具の各々は、長尺形状を有し、その長手方向が車両の前後方向に対して略直
交するように、車内天井面の左右略中心位置に設けられていることを特徴とする車両用照
明システム。
【請求項2】
車内天井面に長尺状の空調吹き出し口を備え、この空調吹き出し口は、その長手方向が
前記照明器具の長手方向と直交し、かつ照明器具を挟んで左右両側方に設けられているこ
とを特徴とする請求項1に記載の車両用照明システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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