説明

車両用照明灯具

【課題】ロービーム用配光パターンに対してレーンマーク照射用配光パターンを重畳的に形成し得るように構成された車両用照明灯具において、レーンマークの視認性を十分に高める。
【解決手段】ロービーム用配光パターンを形成するための第1の光学系から照射される白色光の色度[x1,y1]<ハロゲンバルブ>と、レーンマーク照射用配光パターンを形成するための第2の光学系から照射される青色光の色度[x2,y2]<本実施形態>とを結ぶ直線L1が、紫色の色度範囲Zpから外れるように、第2の光学系から照射される青色光のドミナント波長λdを設定する。これにより、上記白色光と上記青色光との混色により自車ドライバに不快感を与えてしまう紫色の照射光が生じないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ロービーム用配光パターンに対してレーンマーク照射用配光パターンを重畳して形成し得るように構成された車両用照明灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ロービーム用配光パターンに対して、レーンマーク(すなわち車両走行レーンを仕切るための白線)を照射するためのレーンマーク照射用配光パターンを重畳して形成し得るように構成された車両用照明灯具が知られている。
【0003】
例えば「特許文献1」には、ロービーム用配光パターンを形成するための基本灯具ユニットのほかに、レーンマーク照射用配光パターンを形成するための付加灯具ユニットを備えた車両用照明灯具が記載されている。
【0004】
一方「特許文献2」には、ロービーム用配光パターンを形成するための基本灯具ユニットのほかに、運転者の周辺視により視認される車両周辺領域の明るさを補強する付加配光パターンを形成するための付加灯具ユニットを備えた車両用照明灯具が記載されている。その際、この「特許文献2」には、車両周辺領域を照射する光よりも短波長成分を多く含む光で車両前方遠方を照射することが好ましいことについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−59317号公報
【特許文献2】特開2009−125444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記「特許文献1」に記載された車両用照明灯具においては、その付加灯具ユニットによって形成される付加配光パターンにより、車両前方路面のレーンマークを照射することが可能となる。
【0007】
しかしながら、この「特許文献1」に記載された車両用照明灯具においては、その基本灯具ユニットおよび付加灯具ユニットの光源がいずれもハロゲンバルブであるため、レーンマークを照射するための付加配光パターンをロービーム用配光パターンに重畳させて形成した場合においても、その光量増大分だけしかレーンマークの視認性を高めることができない、という問題がある。
【0008】
一方、上記「特許文献2」に記載された車両用照明灯具においても、その付加灯具ユニットによって形成される付加配光パターンにより、車両前方路面のレーンマークを照射することが可能となる。
【0009】
しかしながら、この「特許文献2」に記載された車両用照明灯具においては、ロービーム用配光パターンおよび付加配光パターンがいずれも同種の光で形成され、あるいは、ロービーム用配光パターンの方が付加配光パターンよりも短波長成分を多く含む光で形成される構成となっているので、レーンマークの視認性を高めることができない、という問題がある。
【0010】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ロービーム用配光パターンに対してレーンマーク照射用配光パターンを重畳して形成し得るように構成された車両用照明灯具において、レーンマークの視認性を十分に高めることができる車両用照明灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、白色光で形成されるロービーム用配光パターンに対して、レーンマーク照射用配光パターンを所定の青色光で形成する構成とすることにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0012】
すなわち、本願発明に係る車両用照明灯具は、
ロービーム用配光パターンに対してレーンマーク照射用配光パターンを重畳して形成し得るように構成された車両用照明灯具において、
上記ロービーム用配光パターンを形成するための白色光を灯具前方へ照射する第1の光学系と、上記レーンマーク照射用配光パターンを形成するための青色光を灯具前方へ照射する第2の光学系とを備えており、
CIExy色度図上において、上記第1の光学系から照射される白色光の色度[x1,y1]と、上記第2の光学系から照射される青色光の色度[x2,y2]とを結ぶ直線が、
y<0.5x+0.05
y<2x−0.3
y<−0.93831x+0.625325
で規定される紫色の色度範囲の外側を通るように、上記第2の光学系から照射される青色光のドミナント波長λdが設定されている、ことを特徴とするものである。
【0013】
上記「第1の光学系」は、ロービーム用配光パターンを形成するための白色光を灯具前方へ照射するように構成された光学系であれば、その具体的な構成は特に限定されるものではない。
【0014】
上記「第2の光学系」は、レーンマーク照射用配光パターンを形成するための青色光を灯具前方へ照射するように構成された光学系であれば、その具体的な構成は特に限定されるものではない。
【0015】
上記「レーンマーク照射用配光パターン」とは、車両前方路面のレーンマークを照射するための配光パターンを意味するものであり、その際、照射対象となるレーンマークは、自車線の路肩側のレーンマークであってもよいし、対向車線側のレーンマークであってもよいし、これら両方のレーンマークであってもよい。
【0016】
上記「青色光」は、その色度[x2,y2]と白色光の色度[x1,y1]とを結ぶ直線が上記紫色の色度範囲の外側を通るように、そのドミナント波長λdが設定されたものであれば、その色度[x2,y2]の具体的な値は特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0017】
上記構成に示すように、本願発明に係る車両用照明灯具は、ロービーム用配光パターンに対してレーンマーク照射用配光パターンを重畳的に形成し得る構成となっているが、その際、ロービーム用配光パターンを形成するための白色光を灯具前方へ照射する第1の光学系と、レーンマーク照射用配光パターンを形成するための青色光を灯具前方へ照射する第2の光学系とを備えた構成となっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0018】
すなわち、従来より、明所視から薄明視を経て暗所視に移行するに従って、最大視感度が得られる波長が短波長側へずれることが、プルキンエシフトとして知られている。これは中心視野(すなわち注視点の近傍領域)における視感度に関するものであるが、周辺視野(すなわち周辺視領域)においても同様の現象が生じる。具体的には、視野全体が白色光で照射されている状態で、周辺視野が青色光で照射されると、この周辺視野の輝度が中心視野の輝度と同じであっても、周辺視野の視認性が大幅に向上する。
【0019】
したがって、本願発明に係る車両用照明灯具のように、第1の光学系から灯具前方へ照射される白色光によりロービーム用配光パターンを形成するようにした上で、第2の光学系から灯具前方へ照射される青色光によりレーンマーク照射用配光パターンを形成するようにすれば、レーンマークの視認性を高めることができる。しかも、レーンマークは一般に白線であるので、青色光で照射されることにより、その視認性を一層高めることができる。
【0020】
ただし、第2の光学系から灯具前方へ照射される青色光の色度によっては、この青色光と第1の光学系から灯具前方へ照射される白色光との混色によって紫色の照射光が生成されてしまうこととなる。この紫色の照射光は自車ドライバに不快感を与えてしまうので、レーンマーク照射用配光パターンを形成したことによって、レーンマークの視認性がむしろ低下してしまうおそれがある。
【0021】
その点、本願発明に係る車両用照明灯具においては、CIExy色度図上において、第1の光学系から照射される白色光の色度[x1,y1]と、第2の光学系から照射される青色光の色度[x2,y2]とを結ぶ直線が、
y<0.5x+0.05
y<2x−0.3
y<−0.93831x+0.625325
で規定される紫色の色度範囲から外れるように、第2の光学系から照射される青色光のドミナント波長λdが設定されているので、ロービーム用配光パターンに対してレーンマーク照射用配光パターンを重畳して形成したときに、紫色の照射光が生成されてしまうのを未然に防止することができる。したがって、自車ドライバに不快感を与えてしまうおそれをなくすことができ、これによりレーンマークの視認性を良好な状態に維持することができる。
【0022】
このように本願発明によれば、ロービーム用配光パターンに対してレーンマーク照射用配光パターンを重畳的に形成し得るように構成された車両用照明灯具において、レーンマークの視認性を十分に高めることができる。
【0023】
上記構成において、ロービーム用配光パターンにおける対向車線側の水平カットオフライン近傍領域に上記青色光を照射するための第3の光学系を備えた構成とすれば、直線路を走行していている場合だけでなく、曲線路を走行していている場合や下り坂の終点付近を走行している場合等においても、レーンマークの視認性を十分高めることができる。
【0024】
この場合において、第3の光学系から照射される青色光は、ロービーム用配光パターンにおける対向車線側の水平カットオフライン近傍領域に照射されるものであれば、その具体的な照射範囲は特に限定されるものではなく、その際、対向車線側の水平カットオフラインよりも上方側まで照射されてもよいし照射されなくてもよい。なお、この第3の光学系からの青色光が対向車線側の水平カットオフラインよりも上方側に照射される場合、この青色光の明るさが対向車ドライバにグレアを与えてしまわない程度の明るさであっても、レーンマークの視認性を十分に高めることが可能である。
【0025】
上記構成において、第1の光学系を、白色光源とこの白色光源からの光を灯具前方へ向けて反射させる反射光学系とを備えた構成とした上で、その反射光学系の一部を構成する反射面を青色に着色することにより第2の光学系を構成することも可能である。このような構成を採用した場合には、青色光源を備えていない車両用照明灯具であっても上記作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本願発明の一実施形態に係る車両用照明灯具を示す正面図
【図2】(a)、(b)共に、上記車両用照明灯具から前方へ照射される光により灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンおよびレーンマーク照射用配光パターンを透視的に示す図
【図3】図2と同様の図
【図4】上記実施形態の作用を説明するためのCIExy色度図
【図5】上記実施形態の第1変形例に係る車両用照明灯具を示す正面図
【図6】上記第1変形例の作用を示す、図2と同様の図
【図7】上記実施形態の第2変形例に係る車両用照明灯具を示す正面図
【図8】上記第2変形例の作用を示す、図2と同様の図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0028】
図1は、本実施形態に係る車両用照明灯具10を示す正面図である。
【0029】
同図に示すように、この車両用照明灯具10は、車両の左前端部に設けられるヘッドランプであって、ランプボディ12とその前端開口部に取り付けられた素通し状の透光カバー14とで形成される灯室内に、第1灯具ユニット20と、第2灯具ユニット30と、8つの第3灯具ユニット40A、40B、40C、40D、40E、40F、40G、40Hとが収容された構成となっている。
【0030】
そして、この車両用照明灯具10においては、第2灯具ユニット30からの照射光により、ロービーム用配光パターンを形成するとともに、この第2灯具ユニット30からの照射光に第1灯具ユニット20からの照射光を追加することにより、ハイビーム用配光パターンを形成するようになっている。さらに、この車両用照明灯具10においては、8つの第3灯具ユニット40A〜40Hのすべてまたはその一部からの照射光により、レーンマーク照射用配光パターンを形成するようになっている。
【0031】
その際、第1灯具ユニット20は、車両前後方向に延びる光軸Ax1上に配置されたハロゲンバルブ22と、このハロゲンバルブ22からの光を前方へ反射させるリフレクタ24とを備えたパラボラ型の灯具ユニットとして構成されている。
【0032】
一方、第2灯具ユニット30は、車両前後方向に延びる光軸Ax2上に配置された投影レンズ32と、この投影レンズ32の後側焦点よりも後方側に配置されたハロゲンバルブ34と、このハロゲンバルブ34からの光を投影レンズ32へ向けて光軸Ax2寄りに反射させるリフレクタ36と、このリフレクタ36と投影レンズ32との間においてリフレクタ36からの反射光の一部を遮蔽するシェード38とを備えたプロジェクタ型の灯具ユニットとして構成されている。
【0033】
8つの第3灯具ユニット40A〜40Hは、第2灯具ユニット30を囲むようにして周方向に略等角度間隔で配置されており、いずれも同一の灯具構成を有している。これら各第3灯具ユニット40A〜40Hは、車両前後方向に延びる光軸Ax3上に配置された投影レンズ42と、この投影レンズ42の後側焦点の近傍に配置された青色発光ダイオード44とを備えた直射型の灯具ユニットとして構成されている。そして、これら各第3灯具ユニット40A〜40Hは、その光軸Ax3の向きが互いに異なる方向を向くようにした状態で配置されている。
【0034】
図2(a)は、車両用照明灯具10から前方へ照射される光により灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンPL1およびレーンマーク照射用配光パターンPA1を透視的に示す図である。
【0035】
なお、図2(a)においては、片側1車線の左側通行の直線路における自車走行レーンの左右中央に車両用照明灯具10が配置されているものとして、車両前方路面ならびにロービーム用配光パターンPL1およびレーンマーク照射用配光パターンPA1を示している。この状態では、自車走行レーンの左側に位置する自車線の路肩側のレーンマークLM1と、自車走行レーンの右側に位置するセンタラインのレーンマークLM2とが、灯具正面方向の消点であるH−Vから左右斜め下方に等角で延びており、そして、対向車線の路肩側のレーンマークLM3は、センタラインのレーンマークLM2よりもかなり水平に近い角度でH−Vから右斜め下方に延びている。
【0036】
図2(a)に示すように、ロービーム用配光パターンPL1は、左配光のロービーム配光パターンであって、その上端縁に左右段違いの水平カットオフラインCL1、CL2を有している。この水平カットオフラインCL1、CL2は、灯具正面方向の消点であるH−Vを鉛直方向に通るV−V線を境にして左右段違いで水平方向に延びており、V−V線よりも右側の対向車線側部分が下段側の水平カットオフラインCL1として形成されるとともに、V−V線よりも左側の自車線側部分が上段側の水平カットオフラインCL2として形成されている。その際、上段側の水平カットオフラインCL2の右端部は、斜めカットオフラインとして形成されており、この斜めカットオフラインはV−V線において下段側の水平カットオフラインCL1に繋がっている。このロービーム用配光パターンPL1において、下段側の水平カットオフラインCL1とV−V線との交点であるエルボ点Eは、H−Vの0.5〜0.6°程度下方に位置している。
【0037】
このロービーム用配光パターンPL1は、ハロゲンバルブ34を光源とする第2灯具ユニット30から照射される白色光により形成されるが、このハロゲンバルブ34は放電バルブ等に比してその照射光の色温度が低いので、やや黄色味を帯びた配光パターンとなる。
【0038】
一方、レーンマーク照射用配光パターンPA1は、8つの第3灯具ユニット40A〜40Hのうち、4つの第3灯具ユニット40A、40B、40C、40Dからの照射光によって形成される4つの配光パターンPA1A、PA1B、PA1C、PA1Dで構成されている。その際、これら各配光パターンPA1A、PA1B、PA1C、PA1Dは、いずれも同一形状で横長のスポット状の配光パターンとして形成されている。
【0039】
このレーンマーク照射用配光パターンPA1においては、2つの配光パターンPA1A、PA1BがV−V線よりも左側に形成されており、残り2つの配光パターンPA1C、PA1DがV−V線よりも右側に形成されている。
【0040】
その際、配光パターンPA1Aは、エルボ点Eの左斜め下方近傍において、上段側の水平カットオフラインCL2から上方へはみ出さないようにして形成されている。また、配光パターンPA1Bは、この配光パターンPA1Aの左斜め下方近傍において、これと部分的に重複するようにして形成されている。そして、これら2つの配光パターンPA1A、PA1Bにより、自車線の路肩側のレーンマークLM1を照射するようになっている。
【0041】
一方、配光パターンPA1Cは、エルボ点Eの右斜め下方近傍において、下段側の水平カットオフラインCL1から上方へはみ出さないようにして形成されている。また、配光パターンPA1Dは、この配光パターンPA1Cの右斜め下方近傍において、これと部分的に重複するようにして形成されている。そして、これら2つの配光パターンPA1C、PA1Dにより、センタラインのレーンマークLM2を照射するようになっている。
【0042】
これら各配光パターンPA1A、PA1B、PA1C、PA1Dは、青色発光ダイオード44を光源とする各第3灯具ユニット40A、40B、40C、40Dからの照射光により青色の配光パターンとして形成されるので、レーンマーク照射用配光パターンPA1も青色の配光パターンとして形成されることとなる。
【0043】
図2(b)は、直線路を車両が走行している状態において、車両用照明灯具10から上記仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンPL1およびレーンマーク照射用配光パターンPA2を透視的に示す図である。
【0044】
このレーンマーク照射用配光パターンPA2は、図2(a)に示すレーンマーク照射用配光パターンPA1に対して、2つの配光パターンPA2E、PA2Fが追加して形成された配光パターンとなっている。
【0045】
これら2つの配光パターンPA2E、PA2Fは、他の2つの第3灯具ユニット40E、40Fからの照射光によって形成される配光パターンである。これら各配光パターンPA2E、PA2は、いずれも各配光パターンPA1A〜PA1Dと同一形状で形成されている。
【0046】
その際、配光パターンPA2Eは、配光パターンPA1Aに対して路肩側にずれた位置において、この配光パターンPA1Aと部分的に重複するとともに配光パターンPA1Bとも部分的に重複するようにして形成されている。そして、この配光パターンPA2Eの追加形成により、自車線の路肩側のレーンマークLM1をより明るく照射するようになっている。
【0047】
一方、配光パターンPA2Fは、配光パターンPA1Cに対して対向車線側にずれた位置において、この配光パターンPA1Cと部分的に重複するとともに配光パターンPA1Dとも部分的に重複するようにして形成されている。そして、この配光パターンPA2Fの追加形成により、センタラインのレーンマークLM2をより明るく照射するとともに、対向車線の路肩側のレーンマークLM3をも照射するようになっている。
【0048】
これら各配光パターンPA2E、PA2Fは、青色発光ダイオード44を光源とする各第3灯具ユニット40E、40Fからの照射光により青色の配光パターンとして追加形成されるので、レーンマーク照射用配光パターンPA2も青色の配光パターンとして形成されることとなる。
【0049】
図3(a)は、左側にカーブした左曲線路を車両が走行している状態において、車両用照明灯具10から上記仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンPL1およびレーンマーク照射用配光パターンPA2を透視的に示す図である。
【0050】
このレーンマーク照射用配光パターンPA2においては、図2(a)に示すレーンマーク照射用配光パターンPA1に対して、配光パターンPA2Eが追加形成されているので、左曲線路に沿って左側へ大きく折れ曲がった自車線の路肩側のレーンマークLM1をより遠方まで明るく照射することが可能となっている。
【0051】
図3(b)は、右側にカーブした右曲線路を車両が走行している状態において、車両用照明灯具10から上記仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンPL1およびレーンマーク照射用配光パターンPA3を透視的に示す図である。
【0052】
このレーンマーク照射用配光パターンPA3は、図3(a)に示すレーンマーク照射用配光パターンPA2に対して、2つの配光パターンPA3G、PA3Hがさらに追加して形成された配光パターンとなっている。
【0053】
これら2つの配光パターンPA3G、PA3Hは、残り2つの第3灯具ユニット40G、40Hからの照射光によって形成される配光パターンであって、下段側(すなわち対向車線側)の水平カットオフラインCL1を上下に跨ぐようにして形成されている。これら各配光パターンPA3G、PA3Hは、いずれも各配光パターンPA1A〜PA1Fと同一形状で形成されている。
【0054】
その際、配光パターンPA3Gは、配光パターンPA1Aよりもさらにエルボ点Eに近い位置において、この配光パターンPA1Cと部分的に重複するとともに配光パターンPA2Fとも部分的に重複するようにして形成されている。そして、この配光パターンPA3Gの追加形成により、右曲線路に沿って右側へ大きく折れ曲がった自車線の路肩側のレーンマークLM1およびセンタラインのレーンマークLM2をより遠方まで明るく照射することが可能となっている。
【0055】
また、配光パターンPA3Hは、配光パターンPA3Gに対して対向車線側にずれた位置において、この配光パターンPA3Gと部分的に重複するとともに配光パターンPA1C、PA2Fとも部分的に重複するようにして形成されている。そして、この配光パターンPA3Hの追加形成により、右曲線路に沿って右側へ大きく折れ曲がった自車線の路肩側のレーンマークLM1およびセンタラインのレーンマークLM2さらには対向車線の路肩側のレーンマークLM3をより遠方まで明るく照射することが可能となっている。
【0056】
これら各配光パターンPA3G、PA3Hは、青色発光ダイオード44を光源とする各第3灯具ユニット40G、40Hからの照射光により青色の配光パターンとして追加形成されるので、レーンマーク照射用配光パターンPA3も青色の配光パターンとして形成されることとなる。
【0057】
ただし、これら各配光パターンPA3G、PA3Hの追加形成によって対向車ドライバ等にグレアを与えてしまわないようにするため、各第3灯具ユニット40G、40Hからの照射光は、その明るさが一定値以下の値に調整されている。
【0058】
上記各レーンマーク照射用配光パターンPA1、PA2、PA3は、ロービーム用配光パターンPL1に重畳して形成されるので、ロービーム用配光パターンPL1との重複部分は、やや黄色味を帯びた白色と青色とが混色された配光パターンとなるが、この混色の結果、重複部分が紫色の配光パターンになってしまうようなことがあると、自車ドライバに違和感を与えてしまうこととなる。
【0059】
図4は、本実施形態の作用を説明するためのCIExy色度図である。
【0060】
同図において網線で示す領域Zpが、自車ドライバに違和感を与えてしまうこととなる紫色の色度範囲である。
【0061】
この紫色の色度範囲Zpは、
y<0.5x+0.05
y<2x−0.3
y<−0.93831x+0.625325
で規定されている。
【0062】
同図に示すように、CIExy色度図上において、ハロゲンバルブ34を光源とする第2灯具ユニット30から照射される白色光の色度[x1,y1]は、[x1,y1]=[0.42,0.40]付近の値であり、一方、青色発光ダイオード44を光源とする各第3灯具ユニット40A〜40Hから照射される青色光の色度[x2,y2]は、[x2,y2]=[0.12,0.19]付近の値であり、そのドミナント波長λdは482nm付近の値である。その際、白色光の色度[x1,y1]=[0.42,0.40]と青色光の色度[x2,y2]=[0.12,0.19]とを結ぶ直線L1は、紫色の色度範囲Zpの外側を通っている。
【0063】
本実施形態においては、各第3灯具ユニット40A〜40Hから、このような色度の青色光が照射されるように、その青色発光ダイオード44の選定が行われている。
【0064】
なお、同図において、<比較例>で示すように、一般的な青色発光ダイオードを用いたとした場合において、各第3灯具ユニット40A〜40Hから照射される青色光の色度[x2,y2]は、[x2,y2]=[0.15,0.03]付近の値であり、そのドミナント波長λdは450nm付近の値である。このような青色発光ダイオードを用いた場合には、白色光の色度[x1,y1]=[0.42,0.40]と青色光の色度[x2,y2]=[0.15,0.03]とを結ぶ直線L1´は、紫色の色度範囲Zpを通るので、各レーンマーク照射用配光パターンPA1、PA2、PA3がロービーム用配光パターンPL1に重畳して形成されたとき、紫色の配光パターンとなってしまう可能性があり、このため自車ドライバに違和感を与えてしまうおそれがある。
【0065】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0066】
本実施形態に係る車両用照明灯具10は、ロービーム用配光パターンPL1に対してレーンマーク照射用配光パターンPA1を重畳的に形成し得る構成となっているが、その際、ロービーム用配光パターンPL1を形成するための白色光を灯具前方へ照射する第1の光学系としての第2灯具ユニット30と、レーンマーク照射用配光パターンPA1を形成するための青色光を灯具前方へ照射する第2の光学系としての4つの第3灯具ユニット40A、40B、40C、40Dとを備えた構成となっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0067】
すなわち、本実施形態に係る車両用照明灯具10のように、第2灯具ユニット30から灯具前方へ照射される白色光によりロービーム用配光パターンPL1を形成するようにした上で、4つの第3灯具ユニット40A、40B、40C、40Dから灯具前方へ照射される青色光によりレーンマーク照射用配光パターンPA1を形成することにより、レーンマークLM1、LM2の視認性を高めることができる。
【0068】
その際、本実施形態に係る車両用照明灯具10においては、CIExy色度図上において、第2灯具ユニット30から照射される白色光の色度[x1,y1]と、各第3灯具ユニット40A、40B、40C、40Dから照射される青色光の色度[x2,y2]とを結ぶ直線L1が、
y<0.5x+0.05
y<2x−0.3
y<−0.93831x+0.625325
で規定される紫色の色度範囲Zpから外れるように、各第3灯具ユニット40A、40B、40C、40Dから照射される青色光のドミナント波長λdがλd=482nm付近の値に設定されているので、ロービーム用配光パターンPL1に対してレーンマーク照射用配光パターンPA1を重畳して形成したときに、紫色の照射光が生成されてしまうのを未然に防止することができる。したがって、自車ドライバに不快感を与えてしまうおそれをなくすことができ、これによりレーンマークLM1、LM2の視認性を良好な状態に維持することができる。
【0069】
このように本実施形態によれば、ロービーム用配光パターンPL1に対してレーンマーク照射用配光パターンPA1を重畳的に形成し得るように構成された車両用照明灯具10において、レーンマークLM1、LM2の視認性を十分に高めることができる。
【0070】
しかも本実施形態においては、ロービーム用配光パターンPL1における水平カットオフラインCL1、CL2の下方近傍領域に、各第3灯具ユニット40A、40B、40C、40Dから照射される青色光と同じ青色光を照射するための2つの第3灯具ユニット40E、40Fを備えている(すなわち第3灯具ユニット40Fは第3の光学系を構成している)ので、次のような作用効果を得ることができる。
【0071】
すなわち、これら2つの第3灯具ユニット40E、40Fの追加点灯により、レーンマーク照射用配光パターンPA1を左右両側上方へ拡げたレーンマーク照射用配光パターンPA2を形成することができる。そしてこれにより、直線路を走行していている場合だけでなく、曲線路を走行していている場合や下り坂の終点付近を走行している場合等においても、レーンマークLM1、LM2の視認性を高めることができる。
【0072】
さらに本実施形態においては、ロービーム用配光パターンPL1における対向車線側の水平カットオフラインCL1を跨ぐようにして上記青色光を照射するための第3の光学系として、2つの第3灯具ユニット40G、40Hを備えた構成となっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0073】
すなわち、これら2つの第3灯具ユニット40G、40Hの追加点灯により、レーンマーク照射用配光パターンPA2をさらに右上方へ拡げたレーンマーク照射用配光パターンPA3を形成することができる。そしてこれにより、右曲線路を走行していている場合におけるレーンマークLM1、LM2の視認性を一層高めることができる。なお、これら各第3灯具ユニット40G、40Hから照射される青色光は、その明るさが対向車ドライバにグレアを与えてしまわない程度の明るさであっても、レーンマークLM1、LM2の視認性を十分に高めることが可能である。
【0074】
本実施形態において、各レーンマーク照射用配光パターンPA1、PA2、PA3は、ロービーム用配光パターンPL1が形成される際に、常に重畳的に形成されるようにしてよいし、レーンマークLM1、LM2の視認性を高める必要があるときにのみ重畳的に形成されるようにしてもよい。
【0075】
上記実施形態においては、8つの配光パターンPA1A〜PA3Hが、いずれも同一形状で形成されるものとして説明したが、これらが互いに異なる形状で形成された構成とすることももちろん可能である。
【0076】
上記実施形態においては、各第3灯具ユニット40A〜40Hから照射される青色光のドミナント波長λdがλd=482nm付近の値に設定されているものとして説明したが、そのドミナント波長λdがλd=470〜500nmの範囲内の値に設定されていれば、白色光との混色により紫色とならない青色光を照射することが可能である。
【0077】
上記実施形態においては、各レーンマーク照射用配光パターンPA1、PA2、PA3がロービーム用配光パターンPL1が形成される際に重畳的に形成されるものとして説明したが、ハイビーム用配光パターンが形成される際に重畳的に形成される構成とすることも可能である。
【0078】
上記実施形態においては、車両用照明灯具10が、車両の左前端部に設けられるヘッドランプである場合について説明したが、車両の右前端部に設けられるヘッドランプである場合にも同様の作用効果を得ることができる。
【0079】
上記実施形態においては、左側通行で用いられる車両用照明灯具10の構成について説明したが、この車両用照明灯具10と左右対称の構成とすれば、これを右側通行に適したものとすることができる。
【0080】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0081】
まず、上記実施形態の第1変形例について説明する。
【0082】
図5は、本変形例に係る車両用照明灯具110を示す正面図である。
【0083】
同図に示すように、本変形例に係る車両用照明灯具110の基本的な構成は、上記実施形態の車両用照明灯具10と同様であるが、その第2灯具ユニット130の構成が上記実施形態の場合と異なっており、また、本変形例においては、上記実施形態のような8つの第3灯具ユニット40A〜40Hを備えていない構成となっている。
【0084】
本変形例の第2灯具ユニット130は、車両前後方向に延びる光軸Ax4上に配置された白色光源としてのハロゲンバルブ132と、このハロゲンバルブ132からの光を前方へ反射させる反射光学系としてのリフレクタ134とを備えたパラボラ型の灯具ユニットとして構成されている。
【0085】
この第2灯具ユニット130におけるリフレクタ134は、その反射面134aに、ハロゲンバルブ132からの光を前方へ向けて拡散偏向反射させる複数の反射素子134sが形成されている。
【0086】
この反射面134aにはアルミ蒸着による鏡面処理が施されているが、この反射面134aにおける光軸Ax4の上方に位置する領域は、青色の蒸着が施された青色反射領域134a1として形成されており、これにより第2の光学系を構成している。この青色反射領域134a1には、4つの反射素子134s1、134s2、134s3、134sが形成されている。
【0087】
図6は、車両用照明灯具110から前方へ照射される光により上記仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンPL2およびレーンマーク照射用配光パターンPBを透視的に示す、図2(a)と同様の図である。
【0088】
ロービーム用配光パターンPL2は、左配光のロービーム配光パターンであって、その上端縁に水平カットオフラインCL3および斜めカットオフラインCL4からなるカットオフラインを有している。その際、水平カットオフラインCL3は、V−V線に対して対向車線側に形成されており、一方、斜めカットオフラインCL4は、水平カットオフラインCL3とV−V線との交点から自車線側へ向けて斜め上方に立ち上がる(例えば15°で立ち上がる)ように形成されている。そして、水平カットオフラインCL3と斜めカットオフラインCL4との交点であるエルボ点Eは、H−Vの0.5〜0.6°程度下方に位置している。
【0089】
このロービーム用配光パターンPL2は、ハロゲンバルブ132を光源とする第2灯具ユニット130からの照射光により形成されるので、上記実施形態の第2灯具ユニット30から照射される白色光と略同じ色度[x1,y1](=[0.42,0.40]付近の値)の照射光で形成されることとなる。
【0090】
一方、レーンマーク照射用配光パターンPBは、ロービーム用配光パターンPL2の一部として、リフレクタ134の反射面134aにおける青色反射領域134a1からの反射光により形成されるようになっている。
【0091】
すなわち、このレーンマーク照射用配光パターンPBは、青色反射領域134a1に位置する4つの反射素子134s1、134s2、134s3、134s4からの照射光によって形成される4つのやや横長の略スポット状の配光パターンPB1、PB2、PB3、PB4で構成されている。
【0092】
その際、2つの配光パターンPB1、PB2は、自車線の路肩側のレーンマークLM1に沿って互いに部分的に重複するようにして形成されており、残り2つの配光パターンPB3、PB4は、センタラインのレーンマークLM2に沿って互いに部分的に重複するようにして形成されている。
【0093】
これら各配光パターンPB1、PB2、PB3、PB4は、青色の蒸着が施された青色反射領域134a1からの反射光により形成されるので、レーンマーク照射用配光パターンPBも青色の配光パターンとして形成されることとなる。
【0094】
その際、青色反射領域134a1から反射される青色光の色度[x2,y2]が、図4に示すCIExy色度図上において、上記実施形態における各第3灯具ユニット40A〜40Hから照射される青色光の色度[x2,y2](=[0.12,0.19]付近の値)と略同じ値となるように、青色反射領域134a1に施される青色の蒸着の色相が設定されている。
【0095】
本変形例の構成を採用した場合においても、CIExy色度図上において、リフレクタ134の反射面134aにおける青色反射領域134a1以外の領域から反射される白色光の色度[x1,y1]と、青色反射領域134a1から反射される青色光の色度[x2,y2]とを結ぶ直線L1が、上記紫色の色度範囲Zpから外れるように、青色反射領域134a1から反射される青色光のドミナント波長λdが設定されているので、ロービーム用配光パターンPL2の一部としてレーンマーク照射用配光パターンPBを形成したときに、紫色の照射光が生成されてしまうのを未然に防止することができる。したがって、自車ドライバに不快感を与えてしまうおそれをなくすことができ、これによりレーンマークLM1、LM2の視認性を良好な状態に維持することができる。
【0096】
次に、上記実施形態の第2変形例について説明する。
【0097】
図7は、本変形例に係る車両用照明灯具の第2灯具ユニット230を示す平断面図である。
【0098】
同図に示すように、本変形例の第2灯具ユニット230は、上記実施形態の第2灯具ユニット30と同様、プロジェクタ型の灯具ユニットとして構成されているが、その光源が白色発光ダイオード234で構成されているとともに、リフレクタ236からの反射光の一部を遮蔽するシェード238が、その上端縁から後方へ延びる上向き反射面238aを備えた構成となっている点で、上記実施形態の場合と異なっている。
【0099】
そして、この第2灯具ユニット230においては、そのシェード238の上向き反射面238aに、アルミ蒸着による鏡面処理が施されている。その際、この反射面238aにおける光軸Ax5から左右両側に離れた左右1対の領域は、青色の蒸着が施された青色反射領域238a1、238a2として形成されており、これにより第2の光学系を構成している。
【0100】
この第2灯具ユニット230において、リフレクタ236で反射した白色発光ダイオード234からの光は、その一部が直接投影レンズ232に到達し、残りはシェード238の上向き反射面238aで上向きに反射してから投影レンズ232に到達するようになっている。
【0101】
図8は、本変形例に係る車両用照明灯具から前方へ照射される光により上記仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンPL3およびレーンマーク照射用配光パターンPCを透視的に示す、図2(a)と同様の図である。
【0102】
ロービーム用配光パターンPL3は、図2(a)に示すロービーム用配光パターンPL1と略同様の形状で形成されている。
【0103】
レーンマーク照射用配光パターンPCは、ロービーム用配光パターンPL3の一部として、シェード238の上向き反射面238aにおける2箇所の青色反射領域238a1、238a2で上向きに反射してから投影レンズ232に到達した光によって形成される2つのやや横長の略スポット状の配光パターンPC1、PC2で構成されている。
【0104】
その際、一方の配光パターンPC1は、右側に位置する青色反射領域238a1からの反射光により、自車線の路肩側のレーンマークLM1に位置するようにして形成されており、他方の配光パターンPC2は、左側に位置する青色反射領域238a2からの反射光により、センタラインのレーンマークLM2に位置するようにして形成されている。
【0105】
これら各配光パターンPC1、PC2は、青色の蒸着が施された各青色反射領域238a1、238a2からの反射光により形成されるので、レーンマーク照射用配光パターンPCも青色の配光パターンとして形成されることとなる。
【0106】
その際、各青色反射領域238a1、238a2から反射される青色光の色度[x2,y2]が、図4に示すCIExy色度図上において、上記実施形態における各第3灯具ユニット40A〜40Hから照射される青色光の色度[x2,y2](=[0.12,0.19]付近の値)と略同じ値となるように、各青色反射領域238a1、238a2に施される青色の蒸着の色相が設定されている。
【0107】
一方、本変形例の第2灯具ユニット230は、その光源が白色発光ダイオード234で構成されているので、直接投影レンズ232に到達したリフレクタ236からの反射光およびシェード238における上向き反射面238a以外の領域で上向きに反射してから投影レンズ232に到達した白色光の色度[x1,y1]は、[x1,y1]=[0.35,0.37]付近の値となっている。
【0108】
なお、同図において、<比較例>で示す一般的な青色発光ダイオードを用いた場合には、白色光の色度[x1,y1]=[0.35,0.37]と青色光の色度[x2,y2]=[0.15,0.03]とを結ぶ直線L2´は、紫色の色度範囲Zpを通るので、レーンマーク照射用配光パターンPCがロービーム用配光パターンPL3に重畳して形成されたとき、紫色の配光パターンになる可能性があり、このため自車ドライバに違和感を与えてしまうおそれがある。
【0109】
これに対し、本変形例の構成を採用した場合には、CIExy色度図上において、直接投影レンズ232に到達したリフレクタ236からの反射光およびシェード238の上向き反射面238aにおける各青色反射領域238a1、238a2以外の領域で上向きに反射してから投影レンズ232に到達した白色光の色度[x1,y1]と、各青色反射領域238a1、238a2で反射してから投影レンズ232に到達した青色光の色度[x2,y2]とを結ぶ直線L2が、上記紫色の色度範囲Zpから外れるように、各青色反射領域238a1、238aから反射される青色光のドミナント波長λdが設定されているので、ロービーム用配光パターンPL2の一部としてレーンマーク照射用配光パターンPCを形成したときに、紫色の照射光が生成されてしまうのを未然に防止することができる。したがって、自車ドライバに不快感を与えてしまうおそれをなくすことができ、これによりレーンマークLM1、LM2の視認性を良好な状態に維持することができる。
【0110】
なお、上記実施形態および各変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【符号の説明】
【0111】
10、110 車両用照明灯具
12 ランプボディ
14 透光カバー
20 第1灯具ユニット
22、34、132 ハロゲンバルブ
24、36、134、236 リフレクタ
30、130、230 第2灯具ユニット
32、42、232 投影レンズ
38、238 シェード
40A、40B、40C、40D、40E、40F、40G、40H 第3灯具ユニット
44 青色発光ダイオード
134a 反射面
134a1、238a1、238a2 青色反射領域
134s、134s1、134s2、134s3、134s4 反射素子
234 白色発光ダイオード
238a 上向き反射面
Ax1、Ax2、Ax3、Ax4、Ax5 光軸
CL1、CL2、CL3 水平カットオフライン
CL4 斜めカットオフライン
E エルボ点
L1、L2 直線
LM1 自車線の路肩側のレーンマーク
LM2 センタラインのレーンマーク
LM3 対向車線の路肩側のレーンマーク
PA1、PA2、PA3、PB、PC レーンマーク照射用配光パターン
PA1A、PA1B、PA1C、PA1D、PA2E、PA2F、PA3G、PA3H、PB1、PB2、PB3、PB4、PC1、PC2 配光パターン
PL1、PL2、PL3 ロービーム用配光パターン
Zp 紫色の色度範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロービーム用配光パターンに対してレーンマーク照射用配光パターンを重畳して形成し得るように構成された車両用照明灯具において、
上記ロービーム用配光パターンを形成するための白色光を灯具前方へ照射する第1の光学系と、上記レーンマーク照射用配光パターンを形成するための青色光を灯具前方へ照射する第2の光学系とを備えており、
CIExy色度図上において、上記第1の光学系から照射される白色光の色度[x1,y1]と、上記第2の光学系から照射される青色光の色度[x2,y2]とを結ぶ直線が、
y<0.5x+0.05
y<2x−0.3
y<−0.93831x+0.625325
で規定される紫色の色度範囲の外側を通るように、上記第2の光学系から照射される青色光のドミナント波長λdが設定されている、ことを特徴とする車両用照明灯具。
【請求項2】
上記ロービーム用配光パターンにおける対向車線側の水平カットオフライン近傍領域に上記青色光を照射するための第3の光学系を備えている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用照明灯具。
【請求項3】
上記第1の光学系が、白色光源と、この白色光源からの光を灯具前方へ向けて反射させる反射光学系とを備えており、
上記第2の光学系が、上記反射光学系の一部を構成する反射面を青色に着色することにより構成されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用照明灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−206684(P2012−206684A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75567(P2011−75567)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】