説明

車両用照明装置

【課題】1つの光源によって複数のエリアを照明可能な車両用照明装置の提供を図る。
【解決手段】室内ランプ13は、1つの半導体型光源22と、該半導体型光源22の光を照明方向が異なる複数の光束L1,L2に分配するレンズ23と、を備えている。このレンズ23によって分配された複数の光束L1,L2により、それぞれ車室内の任意の領域を照明可能としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内を照明する車両用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のLED光源によって運転席、助手席、後部席等、固有のエリアを照明可能としたルーフ設置タイプの車両用照明装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−165383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の開示技術は、単一のランプユニットにおける複数のLED光源のうち、特定エリア照明用のLED光源によって、運転席、助手席、後部席等を切り換えて照明する構成としたものである。このため、複数のエリアを照明するためには、光軸をそれぞれ対象とする照明エリアに向けた複数のLED光源が必要となって、コスト的に不利となってしまう。
【0005】
そこで、本発明は1つの光源によって複数のエリアを照明可能な車両用照明装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用照明装置は、1つの光源と、この光源の光を照明方向が異なる複数の光束に分配するレンズと、を備えている。
【0007】
そして、このレンズによって分配された複数の光束により、それぞれ車室内の任意の領域を照明可能としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、単一の光源の光であっても、レンズによって照明方向が異なる複数の光束に分配されるため、この分配された光束をそれぞれ車室内の所要エリアに向けることによって、複数の領域を同時に明るく照明することが可能となる。
【0009】
この結果、部品点数を削減できてランプユニットを小型化できることは勿論、消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る車両用照明装置における室内ランプの配置状況を示す略示的平面説明図。
【図2】本発明の車両用照明装置の第1実施形態を示す略示的断面説明図。
【図3】第1実施形態の車室内照明状況を示す略示的説明図。
【図4】本発明の第2実施形態を示す略示的断面説明図。
【図5】第2実施形態の光束分布を示す説明図。
【図6】第2実施形態の車室内照明状況を示す略示的説明図。
【図7】本発明の第3実施形態を示す略示的断面説明図。
【図8】本発明の第4実施形態を示す略示的断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0012】
図1に示す実施形態の車両1は、運転席2および助手席3用の左右一対のマップランプ11と、該マップランプ11に併設したフロアセンターコンソール用のコンソールランプ12と、後席4用の左右一対のパーソナルランプ13等の室内ランプを備えている。
【0013】
これらの室内ランプ11,12,13は、例えば、エンジンルームに搭載したコントローラ10によって作動制御するようにしている。
【0014】
マップランプ11とコンソールランプ12は、フロントルーフレールの車両センター部に配設してある。また、パーソナルランプ13は、左右のルーフサイドレールの後席近傍位置に配設してある。
【0015】
室内ランプ11,12,13は、何れもLEDやELなど、半導体に電圧を印加することによって得られるルミネッセンスを利用した半導体型光源を用いている。
【0016】
そして、これら室内ランプ11,12,13を、コントローラ10によって点・消灯、PWM制御による照度調整や輝度調整、および配光モード制御等の各種の作動制御を行うようにしている。
【0017】
図2に、上述の室内ランプを代表してパーソナルランプ13の構造を断面として示している。
【0018】
パーソナルランプ13は、ランプケース21と、ランプケース21の基板に配設した1つの半導体型光源22と、この半導体型光源22の光を照明方向が異なる複数の光束L1,L2に分配するレンズ23と、を備えている。
【0019】
レンズ23はアクリル樹脂などの導光性に優れた素材で構成され、平坦な投光面23aと、投光面23aの反対側の側面に形成されて半導体型光源22を受容し、その出射光をレンズ23内に導光する入光部23bと、周側に設けられて表面反射により入光部23bから導光された光を所要の方向に向けて反射させる複数の反射面23cと、を備えている。
【0020】
図2に示す例では、レンズ23内に導光された半導体型光源22の光を、反射面23c,23cによって前,後2方向に分配して全反射させて、後席4の一側部に指向する光束L1と、前席2または3の背面に指向する光束L2と、を形成するようにしている。
【0021】
光束L1は、例えば図3に示すように後席4の一側部で、シートクッション4a上からシートバック4bの下側部に亘る領域を照明可能なビーム角θ1としている。
【0022】
一方、光束L2は、光束L1の前方で前席(運転席2または助手席3)の背面から後席4の乗員Pの足元周りを照明可能なビーム角θ2としている。
【0023】
この第1実施形態の構造によれば、1つの半導体型光源22の光であっても、レンズ23によって複数の照明方向が異なる光束L1,L2に分配されるため、この分配された光束L1,L2をそれぞれ車室内の所要エリアに向けることによって、複数の領域を同時に明るく照明することが可能となる。例えば、図2,3に示す例では、光束L1によって後席4のシートクッション4aにおける着座相当領域を照明し、光束L2によって後席乗員
Pの前方の前席2または3の背面から後席乗員Pの足元周りを照明するようにしている。
【0024】
これにより、後席乗員Pが車両1に乗り込む際に、光束L1,L2によってこれから座ろうとする部分と足元周りがスポット状に照明されて、後席4を全体的に照明した場合に較べてより明るく感じられる。従って、安心感をもって車室内に乗り込むことができると共に、着座したときには光束L2によって目の前の前席シートバック背面がスポット状に照明されているので、照度の割に明るく感じさせることができる。
【0025】
この結果、部品点数を削減できてランプユニットを小型化できることは勿論、消費電力を低減することができる。
【0026】
また、本実施形態では1つのレンズ23による導光作用および複数の反射面23cの表面全反射を利用した所謂エッジライト照明機能によって、1つの半導体型光源22の光を、照射方向が異なる複数の光束L1,L2として形成するようにしているので、構造を簡素化することができる。
【0027】
レンズ23の投光面23aにおける光束L1,L2の透過エリアは、反射面23c,23cの形成角度によって一義的に狭まるが、場合によって光束L1,L2の透過エリア間を不透光処理して、光束L1,L2の配光パターンの鮮明度を高めるようにしてもよい。
【0028】
図4〜図6は、本発明の第2実施形態を示すものである。
【0029】
本実施形態にあっては、レンズ23の投光面23aから照射される光束L1のビーム角θ1に対して、光束L2のビーム角θ2を小さく設定し、光束L1に対して光束L2の光量を小さくするようにしている。
【0030】
図4に示す例では、半導体型光源22およびこれを受容するレンズ23の入光部23bを、光束L1を形成する側の反射面23c(車両後方側)側に位置をずらして、レンズ23内における半導体型光源22の光の導光距離を前,後異ならせることによって、光束L1のビーム角θ1に対して光束L2のビーム角θ2を小さくするようにしている。
【0031】
このように光束L1,L2のビーム角θ1,θ2を異ならせることによって、図5に示すように照射面、即ち、本例にあっては後席4のシートクッション4aと、その前方の前席2または3の背面の照射範囲S1,S2を大,小異ならせ、明るさに変化を与えている。
【0032】
本実施形態のように、後席乗員Pの目の前の照射面である前席2または3の上端部背面(つまり、ヘッドレスト背面)の照射範囲S2を小さくすることによって、1つの半導体型光源22から出射される同じ照度の光であっても、照射面が光源から遠ざかる後席4のシートクッション4a上の大きな照射範囲S1に較べて明る過ぎる、即ち、まぶし過ぎるような違和感を与えるのを回避することができる。
【0033】
また、光束L2のビーム角θ2を小さくすれば、大きなビーム角θ1の光束L1よりもその分、光量が低くなって、上述の違和感の抑制効果が向上する。
【0034】
しかも、本実施形態によれば、このような光束L1,L2の光量調整,ビーム角調整を、光源位置の設定によるレンズ23内における導光距離の調整という簡単な手段で容易に行うことができる。
【0035】
図7は、本発明の第3実施形態を示すもので、レンズ22から車両前後方向に分配して
投光する光束L1とL2の色温度を、それぞれ異ならせたものである。
【0036】
本実施形態では、図4に示す第2実施形態の構造を基本構造としている。そして、レンズ23を、光束L1を形成するレンズ後部23Rと、光束L2を形成するレンズ前部23Fとに分割してそれぞれレンズ材質を変えている。このレンズ材質の相違により、レンズ後部23Rで形成される光束L1の色温度が高く、レンズ前部23Fで形成される光束L2の色温度が低くなるようにしている。
【0037】
このように、レンズ23を工夫して光束L1,L2に色温度差を付与することによっても、1つの半導体型光源22から出射される同じ照度の光であっても、光束L1の色温度を大きくして後席4のシートクッション4a上を明るく感じさせ、光束L2の色温度を小さくして後席乗員Pの目の前の前席2または3の上端部背面が明る過ぎるように見えるのを回避することができる。
【0038】
また、光束L1,L2の色温度を変えることで、光束L1,L2の色味が変わって複数のランプユニットで照明しているように見え、高級感などの雰囲気を演出することができる。
【0039】
図7に示す例では、レンズ23をレンズ後部23Rとレンズ前部23Fとの2分割構成としているが、レンズ23を分割することなく、投光面23aに色温度の異なる彩色フィルムを貼り付けたり、着色塗装を施して同様の照明効果を得ることも可能である。
【0040】
図8は、本発明の第3実施形態を示すもので、本実施形態にあっては、レンズ23として、半導体型光源22の光を複数の光束L1,L2に分離する第1のレンズ部31と、第1のレンズ部31で分離,形成された光束L1,L2のそれぞれを集光し、拡大して外部へ投光する第2のレンズ部32と、を備えた構成のものを用いている。
【0041】
第1のレンズ部31は、一側面に複数の反射用ウェッジを列設したプリズムレンズが用いられ、第2のレンズ部32は、屈折率分布型レンズを用いている。
【0042】
図8に示す例では、第1レンズ部31と第2レンズ部32とを別体構成としているが、これは一体成形することも可能である。
【0043】
本実施形態のように、1つの半導体型光源22の出射光を、第1のレンズ部31によって複数の光束L1,L2として分離形成することにより、光束L1,L2の鮮明度を高めることができると共に、第2のレンズ部32によってこれらの光束L1,L2を拡大して外部へ投光するので、照射範囲の拡大のニーズに応えることが可能となる。
【0044】
また、前述のようにプリズムレンズと屈折率分布型レンズとの組み合わせを用いれば、消灯時にランプユニットの外側からレンズ23を通して半導体型光源22が見えることがなく、品質感および見栄えを向上することもできる。
【0045】
なお、前記実施形態ではパーソナルランプ13を例に採って説明したが、マップランプ11,コンソールランプ12、あるいはその他の室内照明ランプに適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
1…車体
2…運転席
3…助手席
4…後席
10…コントローラ
11…マップランプ(室内ランプ)
12…コンソールランプ(室内ランプ)
13…パーソナルランプ(室内ランプ)
21…ランプケース
22…半導体型光源(光源)
23…レンズ
23a…投光面
23c…反射面
31…第1のレンズ部
32…第2のレンズ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの光源と、
前記光源の光を照明方向が異なる複数の光束に分配するレンズと、を備え、
前記レンズにより分配された複数の光束により、それぞれ車室内の任意の領域を照明可能としたことを特徴とする車両用照明装置。
【請求項2】
前記レンズは、該レンズ内に導光した前記光源の光を、該レンズ内で所要の方向に向けて反射させる複数の反射面を備え、これら反射面の反射作用により前記光束を形成することを特徴とする請求項1に記載の車両用照明装置。
【請求項3】
前記レンズから複数に分配して投光する光束の光量を、それぞれ異ならせたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用照明装置。
【請求項4】
前記レンズから複数に分配して投光する光束の色温度を、それぞれ異ならせたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の車両用照明装置。
【請求項5】
前記レンズから複数に分配して投光する光束のビーム角を、それぞれ異ならせたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の車両用照明装置。
【請求項6】
前記レンズから複数に分配して投光する光束のそれぞれの光量、ビーム角を、前記レンズ内における光源の光の導光距離を異ならせることによって設定したことを特徴とする請求項5に記載の車両用照明装置。
【請求項7】
前記レンズは、前記光源の光を複数の光束に分離する第1のレンズ部と、
前記第1のレンズ部で分離された光束のそれぞれを集光し、拡大して外部へ投光する第2のレンズ部と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の車両用照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−101726(P2012−101726A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253354(P2010−253354)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】