説明

車両用熱交換器

【課題】車両の走行状態や初期始動条件で変化する流入作動流体の温度によって、作動流体のウォームアップ機能と冷却機能を同時に行うことができるよるにする車両用熱交換器を提供する。
【解決手段】複数のプレート112が積層されて、第1、第2、第3連結流路114に第1、第2、第3作動流体がそれぞれ流入し、第1、第2、第3作動流体は互いに混合されずに循環する放熱部、第1、第2、第3作動流体のうちの一つを流入させるための流入孔116と、一つの作動流体を排出するための排出孔118とを連結し、一つの作動流体の温度によって一つの作動流体が放熱部をバイパスするようにする分岐部120、及び流入孔116に対応する位置に装着され、流入孔に流入した一つの作動流体の温度によって、放熱部110と分岐部120に選択的に一つの作動流体を流入させるバルブユニット130、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用熱交換器に係り、より詳しくは、それぞれの作動流体が内部に流入して、相互熱交換によって温度が調節される車両用熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱交換器は、温度の高い流体から伝熱壁を通して温度の低い流体へ熱を伝達するもので、加熱器、冷却器、蒸発器、凝縮器などに使用される。
このような熱交換器は、熱エネルギーを再使用するか、または流入する作動流体の温度を用途に応じて調節して、通常、車両の空調システムや変速機オイルクーラなどに適用され、エンジンルームに装着される。
ここで、熱交換器を限定された空間を有するエンジンルームに装着時、空間の確保及び装着の問題が発生するので、小型、軽量化、及び高効率・高機能化のための研究が続けられている。
【0003】
しかし、従来の熱交換器は、車両の状態によってそれぞれ作動流体の温度を調節して、車両のエンジンまたは変速機、空調装置に作動流体を供給しなければならないが、このためには流入する熱媒または冷媒として作用する作動流体の流路上に、別の分岐回路及びバルブを設置する必要があり、構成要素及び組立工数が増加し、レイアウトが複雑になるという問題点がある。
また、別の分岐回路及びバルブの未設置時には、作動流体の流量による熱交換効率の制御が不可能で、作動流体の効率的な温度調節ができないという問題点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−097276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、それぞれの作動流体が内部で相互熱交換による温度調節時に、車両の走行状態や初期始動条件により変化する流入作動流体の温度によって、作動流体のウォームアップ機能と冷却機能を同時に行う車両用熱交換器の提供を目的とする。
また、車両の状態によって作動流体の温度調節を可能にし、車両の燃費改善及び暖房性能を向上させることができ、構成が簡素で、組立工数が削減できる車両用熱交換器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る車両用熱交換器は、複数のプレートが積層されて第1、第2、第3連結流路を設定された順序に形成し、前記第1、第2、第3連結流路に第1、第2、第3作動流体がそれぞれ流入して、前記第1、第2、第3連結流路を通過しながら相互熱交換が行われて、第1、第2、第3連結流路に供給された第1、第2、第3作動流体は互いに混合されずに循環する放熱部、前記第1、第2、第3作動流体のうちの一つを流入させるための流入孔と、前記一つの作動流体を排出するための排出孔とを連結し、前記一つの作動流体の温度によって前記一つの作動流体が前記放熱部をバイパスするようにする分岐部、及び前記流入孔に対応する位置に装着され、前記流入孔に流入した一つの作動流体の温度によって、前記放熱部と分岐部に選択的に前記一つの作動流体を流入させるバルブユニット、を含むことを特徴とする。
【0007】
前記第1作動流体は第1流入孔を通して前記放熱部に流入し、第1排出孔を通して前記放熱部から流出し、前記第1流入孔と前記第1排出孔は第1連結流路によって連結され、前記第2作動流体は第2流入孔を通して前記放熱部に流入し、第2排出孔を通して前記放熱部から流出し、前記第2流入孔と前記第2排出孔は第2連結流路によって連結され、前記第3作動流体は第3流入孔を通して前記放熱部に流入し、第3排出孔を通して前記放熱部から流出し、前記第3流入孔と前記第3排出孔は第3連結流路によって連結され、前記第1、第2、第3流入孔は前記放熱部の長さ方向の一面の両側にそれぞれ形成され、前記第1、第2、第3排出孔は前記第1、第2、第3流入孔から離隔しており、前記放熱部の長さ方向に一面の両側に形成されることを特徴とする。
【0008】
前記分岐部は、前記第1流入孔と第1排出孔を連結し、前記放熱部の一面に突出するように形成されることを特徴とする。
【0009】
前記第1流入孔と第1排出孔は、前記放熱部の一面で対角線方向に互いに対向する角部に形成されることを特徴とする。
【0010】
前記第2流入孔と第2排出孔は、前記放熱部の一面で対角線方向に互いに対向する角部中、前記第1流入孔と第1排出孔が位置しない角部に形成されることを特徴とする。
【0011】
前記第3流入孔と第3排出孔は、前記放熱部の一面で前記第2流入孔と第2排出孔が形成された角部に形成され、前記第2流入孔と第2排出孔にそれぞれ離隔するように配置されることを特徴とする。
【0012】
前記第1作動流体はラジエータから流入する冷却水であり、前記第2作動流体は自動変速機から流入する変速機オイルであり、前記第3作動流体はエンジンから流入するエンジンオイルであることを特徴とする。
【0013】
前記冷却水は、第1流入孔、第1連結流路、及び第1排出孔を通して循環し、前記変速機オイルは第2流入孔、第2連結流路、及び第2排出孔を通して循環し、前記エンジンオイルは第3流入孔、第3連結流路、及び第3排出孔を通して循環して、前記第2連結流路は前記第1連結流路の下部に配置され、前記第3連結流路は前記第1連結流路の上部に配置されることを特徴とする。
【0014】
前記冷却水は第1流入孔、第1連結流路、及び第1排出孔を通して循環し、前記変速機オイルは第2流入孔、第2連結流路、及び第2排出孔を通して循環し、前記エンジンオイルは第3流入孔、第3連結流路、及び第3排出孔を通して循環して、隣接する二つの第1連結流路の間には第2連結流路または第3連結流路が配置され、前記第2連結流路及び第3連結流路は交互に配置されることを特徴とする。
【0015】
前記分岐部は、前記第1流入孔を通して分岐部に流入した冷却水を、前記第1排出孔に直ちに排出させるように形成されたバイパス流路を含むことを特徴とする。
【0016】
前記バルブユニットは、前記第1流入孔に対応して前記放熱部の他面に固定装着される装着キャップ、及び前記装着キャップに挿入されて、前記作動流体の温度によって弛緩と収縮が行われる変形部材、を含むことを特徴とする。
【0017】
前記変形部材は、その材質が作動流体の温度によって弛緩及び収縮変形される形状記憶合金素材であることを特徴とする。
【0018】
前記変形部材は、長さ方向の両端部に位置して、温度による変形がないように形成されている一対の固定部、及び前記一対の固定部の間で作動流体の温度によって弛緩及び収縮変形が行われる変形部、を含むことを特徴とする。
【0019】
前記変形部材は、互いに連結された複数の環状メンバーが、コイルスプリング形状に重なって接触するように形成されることを特徴とする。
【0020】
前記装着キャップは、前記放熱部に固定装着される装着部、及び前記装着部から前記第1流入孔に向かって延長形成されて、内部に挿入された前記変形部材の変形時に前記変形部材をガイドするガイド部、を含むことを特徴とする。
【0021】
前記装着部は、前記放熱部にねじ締結されるように、外周面上にねじ山が形成されることをを特徴とする。
【0022】
前記ガイド部の外周面には、少なくとも1つ以上の開口孔が形成されることを特徴とする。
【0023】
前記放熱部を通過する作動流体が外部に漏出することを防止するためのシーリングをさらに含み、前記シーリングは前記装着部とガイド部の間に装着されることを特徴とする。
【0024】
前記放熱部は、第1作動流体の流動と前記第2、第3作動流体の流動を対向流(counterflow)させて相互熱交換させることを特徴とする。
【0025】
前記放熱部は、複数のプレートが積層されるプレート型放熱部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の車両用熱交換器100によれば、車両の走行状態や初期始動条件によって流入する作動流体の温度を利用して作動流体のウォームアップ機能と冷却機能を同時に行うことによって、作動流体の温度調節を効率的に行うことができる。
また、形状記憶合金素材で製作された変形部材138を使用するため、バルブユニット130の構造が簡単である。バルブユニット130が作動流体の温度によって作動流体の流路を切り替えるので、作動流体の流れを正確に制御することができ、構成要素を簡素化して製作原価を節減するとともに、重量を低減させることができる。
そして、作動流体の温度に応じたバルブの開閉作動の応答性を向上させることができ、車両の状態による作動流体の温度調節を可能にすることによって、車両の燃費改善、及び暖房性能を向上させることができる。
一つの熱交換器によって2つの作動流体を冷却水とそれぞれ相互熱交換させることができるので、構成及び全体パッケージが簡素化され、組立工数の削減が可能である。
【0027】
また、別の分岐回路を必要としないので、製作原価の節減及び作業性の向上が図られ、狭いエンジンルームの内部における空間活用性を高め、連結ホースのレイアウトを簡素化することができる。
作動流体が自動変速機40の変速機オイルである場合、冷始動時に摩擦低減のためのウォームアップ機能と、走行時にスリップ防止及び耐久の維持のための冷却機能とを同時に行うことが可能であるので、燃費及び変速機の耐久性を向上させることができる。
さらに、冷却水を利用して変速機オイルとエンジンオイルをウォームアップまたは冷却できるので、空冷式熱交換器に比べて熱交換効率が向上し、車両冷房システムの全体的な冷房性能と暖房性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例に係る車両用熱交換器が適用される自動変速機の冷却システムの構成図である。
【図2】本発明の実施例に係る車両用熱交換器の斜視図である。
【図3】本発明の実施例に係る車両用熱交換器の部分切開斜視図である。
【図4】図2のA−A線に沿った断面図である。
【図5】図2のB−B線に沿った断面図である。
【図6】図2のC−C線に沿った断面図である。
【図7】本発明の実施例に係る車両用熱交換器における連結流路の配置関係を示す概略図である。
【図8】本発明の他の実施例に係る車両用熱交換器における連結流路の配置関係を示す概略図である。
【図9】本発明の実施例に係る車両用熱交換器に適用されるバルブユニットの斜視図である。
【図10】本発明の実施例によるバルブユニットの分解斜視図である。
【図11】本発明の実施例によるバルブユニットの作動状態図である。
【図12】本発明の実施例に係る車両用熱交換器の使用状態図である。
【図13】本発明の実施例に係る車両用熱交換器の使用状態図である。
【図14】本発明の実施例に係る車両用熱交換器の使用状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付した図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施例に係る車両用熱交換器が適用される自動変速機の冷却システムの構成図であり、図2及び図3は、本発明の実施例に係る車両用熱交換器の斜視図及び部分切開斜視図であり、図4は、図2のA−A線に沿った断面図であり、図5は、図2のB−B線に沿った断面図であり、図6は、図2のC−C線に沿った断面図であり、図7は、本発明の実施例に係る車両用熱交換器における連結流路の配置関係を示した図面である。
【0030】
図に示す通り、本発明の実施例に係る車両用熱交換器100は、車両の自動変速機の冷却システムに適用される。
前記自動変速機冷却システムは、基本的に、図1に示したように、ウォータポンプ10によって冷却ファン21が装着されたラジエータ20を通過しながら冷却された冷却水が、エンジン50を冷却させるための冷却ライン(Cooling Line:以下、「C.L」という)に備えられ、この冷却ライン(C.L)上には車両の暖房システム(図示せず)と連結されるヒータコア30が備えられている。
ここで、本発明の実施例に係る車両用熱交換器100は、それぞれの作動流体が熱交換器100の内部で相互熱交換による温度調節時、車両の走行状態や初期始動条件で変化する流入作動流体の温度によって、作動流体のウォームアップ機能と冷却機能を同時に行うことができる構造からなる。
【0031】
このために、車両用熱交換器100は、ウォータポンプ10とヒータコア30の間に設けられて、自動変速機40とエンジン50に第1オイルライン(O.L1)及び第2オイルライン(O.L2)によってそれぞれ相互連結される。
即ち、本実施例において、前記作動流体は、ラジエータ20から流入する冷却水、自動変速機40から流入する変速機オイル、及びエンジン50から流入するエンジンオイルから構成され、熱交換器100を通じて変速機オイル及びエンジンオイルを冷却水と相互熱交換させて、変速機オイル及びエンジンオイルの温度を調節する。
このような熱交換器100は、図2乃至図6に示したように、大きく放熱部110、分岐部120、及びバルブユニット130を含んで構成され、これについて各構成別にさらに詳細に説明する。
【0032】
まず、放熱部110は、複数のプレート112が積層されて形成され、隣接するプレート112の間には複数の連結流路114が形成される。また、隣接する三つの連結流路114のうちの一つには冷却水が流れ、隣接する三つの連結流路114のうちの他の一つには変速機オイルが流れ、隣接する三個の連結流路114のうちのまた他の一つにはエンジンオイルが流れる。この過程で、冷却水と、変速機オイル及びエンジンオイルとの間で熱交換が行われる。
また、一つの連結流路114に供給された作動流体は、他の一つの連結流路114に供給された他の作動流体と混合されないようになっている。
ここで、放熱部110は、冷却水と、変速機オイル及びエンジンオイルの流動を対向流(counterflow)させて相互熱交換させる。
【0033】
このように構成される放熱部110は、複数のプレート112が積層されるプレート型(または、「板型」’ともいう)放熱部に形成できる。
そして、分岐部120は、放熱部110で各作動流体を流入させるように形成された複数の流入孔116のいずれか一つの流入孔116と、放熱部110から各作動流体を排出させるように形成された複数の排出孔118のいずれか一つの排出孔118とを相互連結する。
このような分岐部120は、流入した作動流体の温度によって作動するバルブユニット130で作動流体をバイパスさせる。
本実施例において、各流入孔116は、放熱部110の長さ方向の一面の両側にそれぞれ形成される第1流入孔116a 、第2流入孔116b 、及び第3流入孔116cから構成される。
【0034】
そして、排出孔118は、放熱部110の長さ方向の一面の両側にそれぞれ形成される第1排出孔118a、第2排出孔118b、及び第3排出孔118cを含む。
第1排出孔118a、第2排出孔118b、及び第3排出孔118cは、第1流入孔116a 、第2流入孔116b 、及び第3流入孔116cに対応して、第1流入孔116a 、第2流入孔116b 、及び第3流入孔116cとそれぞれ離隔するように形成される。
このような各排出孔118は、放熱部110の内部でそれぞれの連結流路114と相互連結される。
ここで、第1流入孔116aと第1排出孔118aは、放熱部110の一面で対角線方向に各角部に形成される。
【0035】
本実施例において、第2流入孔116bと第2排出孔118bは、放熱部110の一面で対角線方向に各角部に形成され、第1流入孔116aと第1排出孔118aに互いに対向するように形成される。
そして、第3流入孔116cと第3排出孔118cは、放熱部110の一面で第2流入孔116bと第2排出孔118bが形成された各角部に形成され、第2流入孔116bと第2排出孔118bにそれぞれ離隔するように配置される。第3流入孔116cと第3排出孔118cは、第1流入孔116aと第1排出孔118aに互いに対向するように形成される。
【0036】
一方、分岐部120は、第1流入孔116aと第1排出孔118aを相互連結して、放熱部110の一面に突出するように形成される。
本実施例において、冷却水は、第1流入孔116aと第1排出孔118aを通して循環し、変速機オイルは、第2流入孔116bと第2排出孔118bを通して循環し、エンジンオイルは、第3流入孔116cと第3排出孔118cを通して循環する。
第1流入孔116a 、第2流入孔116b 、及び第3流入孔116cと、第1排出孔118a、第2排出孔118b、及び第3排出孔118cには、それぞれ連結ポットPが装着でき、連結ポットPに装着される連結ホースまたは連結配管などによってラジエータ20と自動変速機40及びエンジン50にそれぞれ連結される。
第2流入孔116b及び第3流入孔116cと第2排出孔118b及び第3排出孔118cに装着される連結ポットは、図示していない。
【0037】
本実施例において、各連結流路114は、図7に示したように、第1連結流路114a、第2連結流路114b、及び第3連結流路114cを含み、これについては以下でさらに詳細に説明する。
最初に、第1連結流路114aは、第1流入孔116aを通じて放熱部110の内部に流入した冷却水が移動するようになっている。
本実施例において、第2連結流路114bは、第1連結流路114aの下部に配置して、第2流入孔116bを通じて放熱部110の内部に流入した変速機オイルが移動するようになっている。
そして、第3連結流路114cは、第1連結流路114aの上部に配置して、第3流入孔116cを通じて放熱部110の内部に流入したエンジンオイルが移動するようになっている。
【0038】
ここで、第1連結流路114a、第1連結流路114aの下部に配置される第2連結流路114b、及び第1連結流路114aの上部に配置される第3連結流路114cが、一つのセットから構成される。放熱部110の内部には複数のセットの連結流路114が形成できる。
即ち、連結流路114は、冷却水が移動する第1連結流路114aを中心として、その下部と上部に第2連結流路114bと第3連結流路114cを配置して、冷却水と、変速機オイル及びエンジンオイルとを相互熱交換させる。
そのために、車両の初期始動及びアイドルモードで変速機オイルの温度を上昇させる場合、温度上昇が速い冷却水とエンジンオイルが流動する第1連結流路114a及び第3連結流路114cとの間に、変速機オイルが流動する第2連結流路114bを配置して、変速機オイルの温度を急速に上昇させる。
【0039】
一方、本発明の他の実施例に係る車両用熱交換器における連結流路の配置関係について、図8を参照して説明する。
図8は、本発明の他の実施例に係る車両用熱交換器における連結流路の配置関係を示す概略図である。
図面に示す通り、本発明の他の実施例によれば、冷却水が流れる第1連結流路214aが変速機オイル及びエンジンオイルが流れる第2連結流路214b及び第3連結流路214cとそれぞれ交番的に形成できる。即ち、隣接する二つの第1連結流路214aの間には第2連結流路214bまたは第3連結流路214cが配置され、第2連結流路214bと第3連結流路214cは交互に配置される。
第2連結流路214bまたは第3連結流路214cが、隣接する二つの第1連結流路214aの間に配置され、第2連結流路214b及び第3連結流路214cが交互に配置されることによって、第1連結流路214aを通過する冷却水と、第2連結流路214b及び第3連結流路214cを通過する変速機オイル及びエンジンオイルが、相互熱交換される。
【0040】
これによって、本発明の他の実施例に係る車両用熱交換器100は、車両の走行状態によって変速機オイルとエンジンオイルの冷却が必要な場合、冷却水が変速機オイルとエンジンオイルの上部と下部で流動しながら相互熱交換が行われて、冷却性能が向上する。
ここで、分岐部120には、第1流入孔116aと第1排出孔118bに近接した位置で、第1連結流路114aとは別に、第1流入孔116aに流入した冷却水を第1排出孔118aに直ちに排出させる別のバイパス流路122が設けられている。
そして、バルブユニット130は、第1流入孔116aに対応する放熱部110の位置に取り付けられ、冷却水の温度によって放熱部110の内部またはバイパス流路122に冷却水を流入させる。
【0041】
このようなバルブユニット130について、図9及び図10を参照して以下でさらに詳細に説明する。
図9及び図10は、本発明の実施例に係る車両用熱交換器に適用されるバルブユニットの斜視図及び分解斜視図である。
図面の通り、バルブユニット130は装着キャップ132と変形部材138を含み、これについて各構成別に説明する。
まず、装着キャップ132は、第1流入孔116aに対応して放熱部110の他面に固定装着される。
ここで、装着キャップ132は、放熱部110に固定装着される装着部134、及び装着部134から第1流入孔116aに向かって延長形成されて、その内部に変形部材138が挿入されるガイド部136から構成される。ガイド部136は、変形部材138の弛緩及び収縮変形時に、変形部材138をガイドする。
【0042】
ここで、装着部134は、放熱部110の内周面にねじ締結されるように外周面にねじ山(N)が形成され、第1流入孔116aに対応する放熱部110の他面には、その内周面が前記ねじ山(N)に対応してタップ加工される。
そして、ガイド部136の外周面には少なくとも1つ以上の開口孔137が形成される。これら開口孔137は、弛緩変形された変形部材138に流入した冷却水を、放熱部110の第1連結流路114aに円滑に流入させる機能を有する。
一方、本実施例において、装着キャップ132には冷却水が外部に漏出することを防止するためのシーリング146が装着される。シーリング146は装着部134とガイド部136の間に装着することができる。
【0043】
即ち、シーリング146は、作動流体が放熱部110に締結された装着部134のねじ山(N)に沿って放熱部110の外部に漏出することを防止するように、放熱部110の内周面と装着部134の外周面の間をシールする。
そして、変形部材138は装着キャップ132のガイド部136に挿入され、第1流入孔116aに流入した冷却水の温度によって弛緩と収縮が行われる。
このような変形部材138は、その材質が作動流体の温度によって弛緩及び収縮変形される形状記憶合金素材で形成することができる。
ここで、形状記憶合金(Shape Memory Alloy:SMA)とは、一定の温度で形状を記憶する合金をいう。形状記憶合金は、前記一定の温度と異なる温度ではその形状が変化するが、前記一定の温度に冷却するか、または加熱すれば、本来の形状に復元される。
【0044】
このような形状記憶合金素材からなる変形部材138は、一対の固定部142と変形部144で構成され、これについて以下でさらに詳細に説明する。
最初に、前記一対の固定部142は、変形部材138の長さ方向に両端部に配置し、温度によってその形状が変形しない。即ち、固定部142を形成する環状メンバーは溶接によって固定されている。
そして、変形部144は、固定部142の間で作動流体の温度によって弛緩及び収縮変形が行われる。即ち、変形部144を形成する環状メンバーは互いに弛緩または収縮可能に連結されている。
このような変形部材138は、円形のコイルスプリング形状と類似する形状に形成することができる。
【0045】
変形部材138は、収縮した状態で装着キャップ132のガイド部136の内部に挿入され、第1流入孔116aを通じて変形部材138の内部に流入する作動流体の温度によって変形して、第1連結流路114aを選択的に開閉する。
このようなバルブユニット130の作動について、図11を参照してさらに詳細に説明する。
図11は、本発明の実施例に係る車両用熱交換器に適用されるバルブユニットの作動状態図である。
即ち、バルブユニット130は、図11に示したように、設定温度を有する作動流体が流入すれば、変形部材138の変形部144が弛緩する。
そのために、変形部材138の変形部144を形成する環状メンバーは、互いに離隔して空間(Space:以下、「S」という)を形成するようになり、この空間Sを通じて作動流体が流出する。
この時、固定部142を形成する環状メンバーは互いに固定されることによって、弛緩しない状態を維持する。
反対に、設定温度以下の作動流体が第1流入孔116aに流入すれば、図9に示したような初期状態に変形部144が収縮変形し、空間Sは閉鎖される。
【0046】
以下、前記のように構成される本発明の実施例に係る車両用熱交換器100の作動及び作用について詳細に説明する。
図12乃至図14は、本発明の実施例に係る車両用熱交換器の段階別作動状態図である。
第1流入孔116aを通して流入する冷却水の温度が設定温度より低ければ、図12に示したように、バルブユニット130の変形部材138は変形することなく、初期装着状態を維持する。
このことにより、流入した冷却水は放熱部110の第1連結流路114aに流入せずに、分岐部120に形成されたバイパス流路122を通して流動して、第1排出孔118aに直接流れる。
【0047】
そのために、冷却水は放熱部110の第1連結流路114aに流入しない。
このことにより、変速機オイルとエンジンオイルは第2流入孔116b及び第3流入孔116cを通して流入して、放熱部110の第2連結流路114b及び第3連結流路114cをそれぞれ通過するが、第1連結流路114aに冷却水が流入しないことで、変速機オイル及びエンジンオイルと冷却水との相互熱交換が防止される。
即ち、バイパス流路122は、車両の走行状態やアイドルモード、または初期始動のような車両の状態やモードによって、変速機オイルとエンジンオイルのウォームアップが必要な場合、低温状態の冷却水が第1連結流路114aに流入することを防止するようにバイパスさせる。そのために、変速機オイル及びエンジンオイルが冷却水との熱交換によって温度が低下することを防止する。
【0048】
したがって、変速機オイルとエンジンオイルはウォームアップされた状態で、自動変速機40とエンジン50にそれぞれ供給されることによって、車両の暖房性能を向上させることができる。
反対に、冷却水の温度が設定温度より高い場合には、図13に示したように、バルブユニット130の変形部材138が弛緩変形して、変形部144を形成する環状メンバーの間に空間Sを形成する。
このことにより、第1流入孔116aを通して流入した冷却水は、各空間Sを通じて第1連結流路114aを通過し、第1排出孔118aを通して排出される。
そのために、冷却水は放熱部110の第1連結流路114aを通過し、第2流入孔116bと第3流入孔116cを通して自動変速機40とエンジン50からそれぞれ流入して、第2連結流路114b及び第3連結流路114cをそれぞれ通過する変速機オイル及びエンジンオイルは、第1連結流路114aを通過する冷却水と放熱部110の内部で相互熱交換されて、その温度が調節される。
【0049】
ここで、変速機オイルとエンジンオイルは、図14に示したように、第2流入孔116bと第3流入孔116cを通してそれぞれ流入する。
このような変速機オイルとエンジンオイルは、放熱部110の内部で第1連結流路114aの下部と上部にそれぞれ形成された第2連結流路114b及び第3連結流路114cをそれぞれ通過し、第2排出孔118bと第3排出孔118cを通して放熱部110から排出されて、自動変速機40とエンジン50に供給される。
この時、冷却水の温度によって作動するバルブユニット130によって、冷却水は第1連結流路114aに選択的に流入し、第2連結流路114b及び第3連結流路114cを通過する変速機オイル及びエンジンオイルと相互熱交換が行われる。
【0050】
ここで、冷却水と変速機オイルは互いに反対方向に流動しながら相互熱交換が行われ、冷却水とエンジンオイルも互いに反対方向に流動して相互熱交換が行われる。
そのために、変速機オイルとエンジンオイルは冷却水とさらに効率的に熱交換が行われる。
したがって、トルクコンバータの作動により発生する流体摩擦によって温度が上昇し、冷却が必要な変速機オイルと、エンジン50の作動で温度が上昇したエンジンオイルは、放熱部110で冷却水との相互熱交換によって冷却された後、自動変速機40とエンジン50にそれぞれ供給される。
即ち、熱交換器100は、車両の走行時に、エンジン50と高速に回転する自動変速機40に、冷却されたエンジンオイルと変速機オイルを供給することによって、自動変速機40のスリップ発生を防止し、エンジン50のノッキング(Knocking)及び酸敗(rancidity)現象が発生することを防止する。
【0051】
また、車両の始動後、中/高速運行時には、温度上昇が速い冷却水で放熱部110における熱交換によってエンジンオイルと変速機オイルの温度を上昇させる。その後、前記変速機オイルとエンジンオイルを自動変速機40とエンジン50に供給することによって、自動変速機40とエンジン50に摩擦損失を低減させて、燃費を上昇させることができる。
一方、本発明の実施例に係る車両用熱交換器100の説明において、作動流体として冷却水、変速機オイル、及びエンジンオイルを例示しているが、これらに限定されることではなく、熱交換によって冷却または温度上昇が必要な作動流体には全て適用が可能である。
そして、本発明の実施例に係る車両用熱交換器の説明において、図面上には複数のプレート112が単純に積層されて構成されるものを一実施例として説明しているが、これに限定されることではなく、熱交換器の装着を考慮して、一面と他面にそれぞれ他部品との接触による破損を防止するか、或いは他部品またはエンジンルームの内部に固定させるためのカバー、ブラケットなどが装着されてもよい。
【0052】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の属する技術分野を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0053】
10 ウォータポンプ
20 ラジエータ
21 冷却ファン
30 ヒーターコア
40 自動変速機
50 エンジン
100 車両用熱交換器
110 放熱部
112 プレート
114 連結流路
114a、114b、114c 第1、第2、第3連結流路
116 流入孔
116a、116b、116c 第1、第2、第3流入孔
118 排出孔
118a、118b、118c 第1、第2、第3排出孔
120 分岐部
122 バイパス流路
130 バルブユニット
132 装着キャップ
134 装着部
136 ガイド部
137 開口孔
138 変形部材
142 固定部
144 変形部
146 シーリング
P 連結ポット
214a、214b、214c 第1、第2、第3連結流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプレートが積層されて第1、第2、第3連結流路を設定された順序に形成し、前記第1、第2、第3連結流路に第1、第2、第3作動流体がそれぞれ流入して、前記第1、第2、第3連結流路を通過しながら相互熱交換が行われて、第1、第2、第3連結流路に供給された第1、第2、第3作動流体は互いに混合されずに循環する放熱部、
前記第1、第2、第3作動流体のうちの一つを流入させるための流入孔と、前記一つの作動流体を排出するための排出孔とを連結し、前記一つの作動流体の温度によって前記一つの作動流体が前記放熱部をバイパスするようにする分岐部、及び
前記流入孔に対応する位置に装着され、前記流入孔に流入した一つの作動流体の温度によって、前記放熱部と分岐部に選択的に前記一つの作動流体を流入させるバルブユニット、
を含むことを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項2】
前記第1作動流体は第1流入孔を通して前記放熱部に流入し、第1排出孔を通して前記放熱部から流出し、前記第1流入孔と前記第1排出孔は第1連結流路によって連結され、
前記第2作動流体は第2流入孔を通して前記放熱部に流入し、第2排出孔を通して前記放熱部から流出し、前記第2流入孔と前記第2排出孔は第2連結流路によって連結され、
前記第3作動流体は第3流入孔を通して前記放熱部に流入し、第3排出孔を通して前記放熱部から流出し、前記第3流入孔と前記第3排出孔は第3連結流路によって連結され、
前記第1、第2、第3流入孔は前記放熱部の長さ方向の一面の両側にそれぞれ形成され、
前記第1、第2、第3排出孔は前記第1、第2、第3流入孔から離隔しており、前記放熱部の長さ方向に一面の両側に形成されることを特徴とする請求項1に記載の車両用熱交換器。
【請求項3】
前記分岐部は、前記第1流入孔と第1排出孔を連結し、前記放熱部の一面に突出するように形成されることを特徴とする請求項2に記載の車両用熱交換器。
【請求項4】
前記第1流入孔と第1排出孔は、前記放熱部の一面で対角線方向に互いに対向する角部に形成されることを特徴とする請求項2に記載の車両用熱交換器。
【請求項5】
前記第2流入孔と第2排出孔は、前記放熱部の一面で対角線方向に互いに対向する角部中、前記第1流入孔と第1排出孔が位置しない角部に形成されることを特徴とする請求項2に記載の車両用熱交換器。
【請求項6】
前記第3流入孔と第3排出孔は、前記放熱部の一面で前記第2流入孔と第2排出孔が形成された角部に形成され、前記第2流入孔と第2排出孔にそれぞれ離隔するように配置されることを特徴とする請求項2に記載の車両用熱交換器。
【請求項7】
前記第1作動流体はラジエータから流入する冷却水であり、前記第2作動流体は自動変速機から流入する変速機オイルであり、前記第3作動流体はエンジンから流入するエンジンオイルであることを特徴とする請求項2に記載の車両用熱交換器。
【請求項8】
前記冷却水は、第1流入孔、第1連結流路、及び第1排出孔を通して循環し、前記変速機オイルは第2流入孔、第2連結流路、及び第2排出孔を通して循環し、前記エンジンオイルは第3流入孔、第3連結流路、及び第3排出孔を通して循環して、
前記第2連結流路は前記第1連結流路の下部に配置され、前記第3連結流路は前記第1連結流路の上部に配置されることを特徴とする請求項7に記載の車両用熱交換器。
【請求項9】
前記冷却水は第1流入孔、第1連結流路、及び第1排出孔を通して循環し、前記変速機オイルは第2流入孔、第2連結流路、及び第2排出孔を通して循環し、前記エンジンオイルは第3流入孔、第3連結流路、及び第3排出孔を通して循環して、
隣接する二つの第1連結流路の間には第2連結流路または第3連結流路が配置され、前記第2連結流路及び第3連結流路は交互に配置されることを特徴とする請求項7に記載の車両用熱交換器。
【請求項10】
前記分岐部は、前記第1流入孔を通して分岐部に流入した冷却水を、前記第1排出孔に直ちに排出させるように形成されたバイパス流路を含むことを特徴とする請求項7に記載の車両用熱交換器。
【請求項11】
前記バルブユニットは、
前記第1流入孔に対応して前記放熱部の他面に固定装着される装着キャップ、及び
前記装着キャップに挿入されて、前記作動流体の温度によって弛緩と収縮が行われる変形部材、
を含むことを特徴とする請求項2に記載の車両用熱交換器。
【請求項12】
前記変形部材は、その材質が作動流体の温度によって弛緩及び収縮変形される形状記憶合金素材であることを特徴とする請求項11に記載の車両用熱交換器。
【請求項13】
前記変形部材は、
長さ方向の両端部に位置して、温度による変形がないように形成されている一対の固定部、及び
前記一対の固定部の間で作動流体の温度によって弛緩及び収縮変形が行われる変形部、
を含むことを特徴とする請求項11に記載の車両用熱交換器。
【請求項14】
前記変形部材は、互いに連結された複数の環状メンバーが、コイルスプリング形状に重なって接触するように形成されることを特徴とする請求項11に記載の車両用熱交換器。
【請求項15】
前記装着キャップは、
前記放熱部に固定装着される装着部、及び
前記装着部から前記第1流入孔に向かって延長形成されて、内部に挿入された前記変形部材の変形時に前記変形部材をガイドするガイド部、
を含むことを特徴とする請求項11に記載の車両用熱交換器。
【請求項16】
前記装着部は、前記放熱部にねじ締結されるように、外周面上にねじ山が形成されることをを特徴とする請求項15に記載の車両用熱交換器
【請求項17】
前記ガイド部の外周面には、少なくとも1つ以上の開口孔が形成されることを特徴とする請求項15に記載の車両用熱交換器。
【請求項18】
前記放熱部を通過する作動流体が外部に漏出することを防止するためのシーリングをさらに含み、
前記シーリングは前記装着部とガイド部の間に装着されることを特徴とする請求項15に記載の車両用熱交換器。
【請求項19】
前記放熱部は、第1作動流体の流動と前記第2、第3作動流体の流動を対向流(counterflow)させて相互熱交換させることを特徴とする請求項1に記載の車両用熱交換器。
【請求項20】
前記放熱部は、複数のプレートが積層されるプレート型放熱部であることを特徴とする請求項1に記載の車両用熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−113578(P2013−113578A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−128579(P2012−128579)
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【Fターム(参考)】